(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039977
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】注出口栓及びこれを用いた包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20240315BHJP
B65D 47/36 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B65D47/08 110
B65D47/36 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144760
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝昌
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA05
3E084AA15
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB01
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA01
3E084FD13
3E084GA06
3E084GB06
3E084KA13
3E084KB01
3E084LA01
3E084LA18
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】ヒンジで開閉できる蓋を備え、既存の製造設備で製造可能であり、バージン性の担保も可能な注出口栓及びこれを用いた包装容器を提供する。
【解決手段】スパウトとキャップとを備え、スパウトは、筒形状を有する筒状部と、筒状部の外周面に設けられる複数の第1凸部とを含み、キャップは、筒状部を取り囲む周壁部と、周壁部の一部に、弱化線及びヒンジを介して接続される蓋部と、周壁部と蓋部との間において、周壁部の周方向に延びるように設けられ、その外周縁に沿って一方端から他方端に向かって切断除去が可能なタンパーバンドと、周壁部の内周面に設けられる複数の第2凸部とを含み、複数の第1凸部及び複数の第2凸部は、相互に嵌合しており、タンパーバンドの一方端から他方端に向かう方向へのキャップの回転を阻止し、タンパーバンドの他方端から一方端に向かう方向へのキャップの回転を許容するラチェット機構を構成する、注出口栓。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウトと前記スパウトに取り付けられたキャップとを備える注出口栓であって、
前記スパウトは、
筒形状を有する筒状部と、
前記筒状部の外周面に周方向に並べて設けられる複数の第1凸部とを含み、
前記キャップは、
前記筒状部を取り囲む周壁部と、
前記周壁部の一部に、弱化線及びヒンジを介して接続され、前記筒状部の開放端を閉鎖する蓋部と、
前記周壁部の前記一部以外の部分と前記蓋部との間において、前記周壁部の周方向に延びるように設けられ、その外周縁に沿って一方端から他方端に向かって切断を進行させることにより前記周壁部及び前記蓋部から分離除去が可能なタンパーバンドと、
前記周壁部の内周面に周方向に並べて設けられる複数の第2凸部とを含み、
前記複数の第1凸部及び前記複数の第2凸部は、相互に嵌合しており、前記タンパーバンドの前記一方端から前記他方端に向かう方向への前記キャップの回転を阻止し、前記タンパーバンドの前記他方端から前記一方端に向かう方向への前記キャップの回転を許容するラチェット機構を構成する、注出口栓。
【請求項2】
前記周壁部の一部及び当該一部と対向する他の一部のそれぞれの外面に複数のリブが設けられる、請求項1に記載の注出口栓。
【請求項3】
前記筒状部の開放端に外側に向かって湾曲するカール部が設けられる、請求項1に記載の注出口栓。
【請求項4】
前記蓋部の内面に、前記蓋部を閉じた状態で前記筒状部の内部に嵌合するインナーリングが設けられており、
前記インナーリングにおける前記ヒンジ側の一部の長さが他の部分より長く、前記蓋部を開いた状態で前記インナーリングの前記ヒンジ側の前記一部が前記筒状部に乗り上げて前記蓋部が所定位置に維持される、請求項1に記載の注出口栓。
【請求項5】
前記スパウトは、前記筒状部の内部を閉鎖し、環状の薄肉部が形成された隔壁と、前記環状の薄肉部の内側に接続されるプルリングとを有する、請求項1に記載の注出口栓。
【請求項6】
前記スパウトは、一方端を前記筒状部の外方に向けて前記筒状部の内部に設けられた管状のノズル部と、前記ノズル部の他方端と前記筒状部の内周面とを接続し、前記ノズル部を除く前記筒状部の内部を閉鎖する隔壁とを有する、請求項1に記載の注出口栓。
【請求項7】
前記スパウトは、一方端を前記筒状部の外方に向けて前記筒状部の内部に設けられた管状のノズル部と、前記ノズル部の他方端と前記筒状部の内周面とを接続する隔壁と、前記隔壁に設けられた開口部とを有し、
前記隔壁は、前記ノズル部及び前記開口部を除く前記筒状部の内部を閉鎖する、請求項1に記載の注出口栓。
【請求項8】
容器本体と、
前記容器本体に取り付けられた、請求項1~7のいずれかに記載の注出口栓とを備える、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出口栓及びこれを用いた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体用の包装容器として、ゲーベルトップ型またはブリック型の紙容器に、スパウト及びスパウトに螺合するキャップを有する注出口栓を取り付けた構成が広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献2には、液体用紙容器に取り付ける注出口栓として、注出口栓本体とヒンジキャップを一体成形した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-002758号公報
【特許文献2】特開2013-237451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載されるようなヒンジキャップを備えた注出口栓は、容器本体に溶着する際、正面となる部分(ヒンジと反対側の部分)の回転位置を調節する必要がある。そのため、充填機に位置決め装置が不可欠であり、新たに専用の充填設備を設けたり、既存の充填設備を改造したりする必要があるという問題があった。
【0005】
また、紙容器に注出口栓を設けた包装容器には、バージン性を担保するために、シュリンクフィルムを設ける必要があった。近年、省資源化や環境保護の観点で樹脂使用量の削減が求められており、シュリンクフィルムがなくともバージン性が担保できる包装容器が要望されている。
【0006】
それ故に、本発明は、ヒンジで開閉できる蓋を備え、既存の製造設備で製造可能であり、バージン性の担保も可能な注出口栓及びこれを用いた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る注出口栓は、スパウトとスパウトに取り付けられたキャップとを備える。スパウトは、筒形状を有する筒状部と、筒状部の外周面に周方向に並べて設けられる複数の第1凸部とを含む。キャップは、筒状部を取り囲む周壁部と、周壁部の一部に、弱化線及びヒンジを介して接続され、筒状部の開放端を閉鎖する蓋部と、周壁部の一部以外の部分と蓋部との間において、周壁部の周方向に延びるように設けられ、その外周縁に沿って一方端から他方端に向かって切断を進行させることにより周壁部及び蓋部から分離除去が可能なタンパーバンドと、周壁部の内周面に周方向に並べて設けられる複数の第2凸部とを含む。複数の第1凸部及び複数の第2凸部は、相互に嵌合しており、タンパーバンドの一方端から他方端に向かう方向へのキャップの回転を阻止し、タンパーバンドの他方端から一方端に向かう方向へのキャップの回転を許容するラチェット機構を構成する。
【0008】
本発明に係る包装容器は、容器本体と、容器本体に取り付けられた上記の注出口栓とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒンジで開閉できる蓋を備え、既存の製造設備で製造可能であり、バージン性の担保も可能な注出口栓及びこれを用いた包装容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る注出口栓の平面図であり、
図2は、第1の実施形態に係る注出口栓の右側面図であり、
図3は、第1の実施形態に係る注出口栓の背面図であり、
図4は、
図1に示したIV-IVラインに沿う断面図であり、
図5は、
図2に示したV-Vラインに沿う拡大断面図である。
【0012】
注出口栓100は、容器本体に取り付けられ、容器本体に充填された内容物を注出できる包装容器を構成するために用いられる。注出口栓100は、スパウト11と、スパウト11に取り付けられたキャップ21とを備える。スパウト11及びキャップ21は、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により射出成形され、打栓により嵌合させることにより注出口栓100を構成する。容器本体の形態は特に限定されないが、例えば、ゲーベルトップ型またはブリック型の紙容器、パウチ、チューブ容器を挙げることができる。
【0013】
スパウト11は、筒形状の筒状部1と、複数の第1凸部10とを有する(
図4及び
図5)。複数の第1凸部10は、筒状部1の中心軸と直交する平面に沿った断面において、略三角形の断面を有し(
図5)、筒状部1の中心軸方向(
図5において紙面に直交する方向)に延びる凸条である。複数の第1凸部10は、筒状部1の外面に周方向に一定ピッチで並べて配置されている。筒状部1の開放端部分には、筒状部1の外側に向かって湾曲するカール部8が設けられている。カール部8を設けることによって、内容物を注出する際の液垂れを抑制し、液切れをしやすくすることができる。また、筒状部1の外周面には、キャップ21を嵌合させるために用いる凸条15が設けられている。更に、筒状部1の開放端と反対側の部分には、容器本体がシールされるフランジ部16が設けられている。
【0014】
キャップ21は、周壁部2と、蓋部3と、タンパーバンド6と、複数の第2凸部20とを有する。
【0015】
周壁部2は、スパウト11の筒状部1を取り囲む筒形状を有している。周壁部2の内周面には、筒状部1の外周面に設けられた凸条15と嵌合する凸条17が設けられている。また、
図2及び
図3に示すように、周壁部2の一部及びこれと対向する他の一部のそれぞれの外周面に、筒状部1の中心軸方向に延びる凸条からなる複数のリブ26a及び26bが設けられている。リブ26a及び26bは、周壁部2の左右にそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0016】
蓋部3は、周壁部2の一部に弱化線4及びヒンジ5を介して接続される。弱化線4は、ヒンジ5を除く部分に周方向に延びるように形成されている。本実施形態では、弱化線4は、スリットを複数のブリッジで断続的に接続することによって構成されている。ただし、弱化線4は、相対的に強度が弱められた部分が線状に配置され、タンパーバンド6を分離除去した後、蓋部3を開く操作に伴って切断可能であれば、その形態は特に限定されない。弱化線4は、例えば、連続するハーフカット、断続的なハーフカットであっても良い。蓋部3の周壁の内周面には、閉じたときに筒状部1のカール部8と嵌合する凸条38が設けられている。蓋部3は、タンパーバンド6を分離除去し、弱化線4を切断した後、
図4に示すように、ヒンジ5を介して開閉可能なヒンジ蓋となる。
図3に示すように、蓋部3の一部に、筒状部1の中心軸と平行な方向に延びる一対のスリット18a及び18bが、所定間隔を空けて配置され形成されている。ヒンジ5は、スリット18a及び18bで挟まれた蓋部3の外面を凹ませ、薄肉化することによって形成されている。
【0017】
蓋部3の天板の内面には、
図4に示すように、筒状のインナーリング9が設けられている。インナーリング9は、蓋部3を閉じた状態において、筒状部1の内部に嵌合して筒状部1を密閉する。本実施形態においては、インナーリング9のヒンジ5側の部分の長さ(筒状部1の中心軸方向の長さ)が、他の部分より長くなるように構成されている。したがって、蓋部3をヒンジ5の軸を中心として回転させ、蓋部3を開いた状態とすると、
図4(b)に示すように、インナーリング9のうち、ヒンジ5側の一部がスパウト11の筒状部1の開放端に乗り上げる。本実施形態では、ヒンジ5は折り目のない板状に形成されているため、蓋部3を開くとヒンジ5が円柱面状に湾曲、ヒンジ5に弾性力(反発力)が生じる。ヒンジ5の弾性力により、蓋部3はヒンジ5の回転軸を中心として閉じる方向に付勢される。この結果、インナーリング9がスパウト11の筒状部1の開放端に接触した状態が保たれ、蓋部3は、ヒンジ5を回転中心として閉じた状態から略90度回転した位置(
図4(b)に示す位置)に維持される。
【0018】
タンパーバンド6は、周壁部2におけるヒンジ5及び弱化線4が設けられていない部分と、蓋部3との間に、周壁部2の周方向に延びるように形成された帯状の部材である。タンパーバンド6の外周縁(すなわち、タンパーバンド6と、周壁部2及び蓋部3との境界線)は、相対的に強度が弱められ、手で切断可能なハーフカット等の弱化線となっている。タンパーバンド6は、一方の端部25aから他方の端部25bへ向かって外周縁の弱化線に沿って切断を進行させることにより、周壁部2及び蓋部3から分離除去することが可能である。タンパーバンド6の一方の端部25aの近傍には、摘まみ19が設けられており、摘まみ19を摘まむことによって、タンパーバンド6の切断がしやすくなっている。タンパーバンド6の長さは特に限定されないが、例えば、キャップ21の正面側の半分(筒状部1の中心軸から180度の範囲)に設けることができる。
【0019】
複数の第2凸部20は、筒状部1の中心軸と直交する平面に沿った断面において、第1凸部10と同じ略三角形の断面を有し(
図5)、筒状部1の中心軸方向(
図5において紙面に直交する方向)に延びる凸条である。複数の第2凸部20は、周壁部2の内面に周方向に、複数の第1凸部10と同じピッチで並べて配置されている。
【0020】
図5に示すように、複数の第1凸部10及び複数の第2凸部20は、相互に嵌合しており、筒状部1の中心軸を中心とする一方の回転方向への、スパウト11及びキャップ21の相対回転を阻止され、他方の回転方向への相対回転を許容するラチェット機構7を構成する。より詳細には、キャップ21を、タンパーバンド6の端部25aから端部25bに向かうd1方向(
図1~
図3参照)へと回転させた場合、第1凸部10及び第2凸部20のそれぞれの径方向に延びる面同士が当接し、第1凸部10及び第2凸部20が競り合う。したがって、スパウト11に対するキャップ21のd1方向への回転が阻止される。一方、キャップ21を、タンパーバンド6の端部25bから端部25aに向かうd2方向(
図1~
図3参照)へと回転させた場合、第2凸部20の傾斜面が第1凸部10の傾斜面に沿って移動し第1凸部10の頂部(稜線部分)を乗り越えることができる。したがって、スパウト11に対するキャップ21のd2方向への回転が許容される。
【0021】
注出口栓100を取り付けた包装容器を最初に開封する際、まず、タンパーバンド6を分離除去する。上述したように、タンパーバンド6の分離除去は、例えば、一方の手で容器本体を抑え、他方の手で摘まみ19を把持して、端部25a側から25bへと向かって外周縁の弱化線を切断することによって行う。尚、スパウト11は、容器本体に溶着されているため、容器本体と共に固定されている。仮に、
図5に示したラチェット機構7のような回転止めが設けられていない場合、タンパーバンド6の弱化線を切断する操作に伴い、固定されたスパウト11に対して、キャップ21がd1方向に回転してしまう。この場合、タンパーバンド6の切断除去が難しく、キャップ21も把持して固定するなどの対策が必要となり、開封操作が煩雑とある。これに対し、本実施形態係る注出口栓100においては、ラチェット機構7によりキャップ21のd1方向への回転が阻止されている。したがって、容器本体を固定しながらタンパーバンド6を端部25b側に引くだけで、タンパーバンド6を容易に切断除去することができる。
【0022】
注出口栓100は、紙容器等の容器本体に形成した開口部に挿入し、容器本体の内面のシーラント層をフランジ部16に溶着させることによって容器本体に取り付けられる。注出口栓100は、ヒンジ5を介して開閉可能な蓋部3を備えたものであるので、容器本体の開口部に挿入した後、開口部に対するヒンジ5の回転位置(ヒンジ5に対向する蓋部3の正面位置)を調節する必要がある。したがって、スクリューキャップを備えた注出口栓の溶着に用いる従来の製造設備をそのまま利用することができない。溶着前の回転位置調整を行うためには、充填機に位置決め装置が必要であり、専用の製造設備の新設や、既存の製造設備の改造などを要し、コストがかかるという問題があった。
【0023】
本実施形態に係る注出口栓100においては、ラチェット機構7により、キャップ21のd2方向への回転が許容されている。したがって、製造段階において注出口栓100の回転位置を調整しなくても、ユーザが使用時にキャップ21をd2方向に回転させることにより、適切な回転位置に位置合わせすることができる。したがって、注出口栓100は、ヒンジ5を介して開閉可能な蓋部3を備えながらも、回転位置の位置決めを行わない従来の製造設備を用いて容器本体に溶着することが可能となる。尚、ユーザがキャップ21を回転させる場合、
図2及び
図3に示した周壁部2の外周面のリブ26a及び26bの部分を把持すれば、指が滑りにくく、位置決めを容易に行うことができる。
【0024】
キャップ21には、タンパーバンド6が設けられているため、シュリンクフィルムを省略しても、視覚により容易にバージン性を確認することが可能である。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、ヒンジ5で開閉できる蓋部3を備え、既存の製造設備で製造可能であり、バージン性の担保も可能な注出口栓100及びこれを用いた包装容器を実現できる。
【0026】
また、キャップ21は、成形時に金型から無理抜きすることができるため、蓋部を開いた状態で成型する従来のヒンジキャップと比べて、キャビティが金型で占有する面積が小さくなる。したがって、1つの金型に多数のキャビティを設け、一度により多くのキャップ21を短サイクルで成型することができ、製造コストを低減できる。
【0027】
また、キャップ21は、打栓によりキャップ21にセットすることができるので、キャップ21のスパウト11へのセットを安価な設備で行うことができ、スクリューキャップをスパウトに螺合させる場合に必要なトルク管理も不要であり、品質管理がしやすい。
【0028】
また、本実施形態に係る注出口栓100においては、蓋部3を開いた際に、キャップ21の蓋部3に設けられたインナーリング9がスパウト11の筒状部1に乗り上げて、蓋部3が開いた状態を維持できる。したがって、開いた蓋部3が不安定に触れたりせず、内容物の注出がしやすい。また、蓋部が開いた状態を維持するために、バタフライヒンジやミラーヒンジと呼ばれる特殊な構造のヒンジを設ける手法もあるが、この場合、金型の構造が複雑になってしまう。本実施形態では、無理抜きが可能な簡易な構造のヒンジ5を採用しているため、金型の構造をシンプルにすることができる。
【0029】
スパウト11は、中心軸方向に無理抜きするのではなく、割型で成形することが好ましい。割り型で成形することにより、筒状部1の開放端に、大きく、形状崩れのないカール部8を形成することができ、液垂れ防止性及び液切れ性に優れる。
【0030】
以下、第2~第4の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0031】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る注出口栓の断面図である。
【0032】
注出口栓200は、スパウト12と、スパウト12に取り付けられたキャップ22とを備える。
【0033】
スパウト12は、
図4に示したスパウト11に加え、更に、筒状部1の内部を閉鎖する隔壁27と、隔壁27に取り付けられたプルリング29とを有する。隔壁27には、相対的に厚みが薄い環状の薄肉部28が設けられている。プルリング29は、環状の薄肉部28の内側、かつ、薄肉部28に沿う部分に接続されている。尚、キャップ22は、第1の実施形態のキャップ21と同一であるので、繰り返しの説明を省略する。
【0034】
注出口栓200を備えた包装容器の開封時には、まず、第1の実施形態と同様にして、タンパーバンド6を切断除去する。次に、プルリング29を指で引き抜くことにより、隔壁27に設けられた薄肉部28を破断させ、隔壁27のうち、薄肉部28で囲まれた部分を切断除去する。
【0035】
本実施形態に係る注出口栓200に、タンパーバンド6と、隔壁27及びプルリング29とによって、二重の改ざん防止機能が付与されている。また、第1の実施形態と比べて、未開封時における内容物の液漏れを抑制することができ、経時的な内容物の揮発も最小限にすることができる。更に、第1の実施形態と比べて、落下衝撃や保管時の温度変化等により生じる内圧変化に対する耐性も向上できるという利点がある。したがって、本実施形態に注出口栓200によれば、隔壁27及びプルリング29を設けたことにより、バージン性の担保レベルと内容物の保存性を向上させることが可能である。
【0036】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る注出口栓の断面図である。
【0037】
注出口栓300は、スパウト13と、スパウト13に取り付けられたキャップ23とを備える。
【0038】
スパウト13は、
図4に示したスパウト11に加え、更に、筒状部1の内部に設けられた管状のノズル部30と、隔壁31とを有する。ノズル部30は、筒状部1の中心軸と同軸となるように配置される。ノズル部30の開放端には、外方に向けて湾曲するカール部32が設けられ、液垂れ防止性及び液切れ性が付与されている。隔壁31は、ノズル部30の開放端と反対側の端部と筒状部1の内周面とを接続し、ノズル部30を除く筒状部1の内部を閉鎖している。キャップ23の天板内面の中心には、蓋部3を閉じた状態でノズル部30に嵌合する凸部33が設けられており、ノズル部30を密閉することができる。
【0039】
本実施形態に係る注出口栓300は、スパウト13の筒状部1の内部に小口径のノズル部30を有しており、ノズル部30から内容物を注出することができる。したがって、注出口栓300は、内容物の粘度や抽出量に応じてノズル部30の口径を変え、容器本体のスクイーズにより内容物を注出する形態の包装容器や、内容物を注ぎ出す形態の包装容器に適する。
【0040】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態に係る注出口栓の断面図である。
【0041】
注出口栓400は、スパウト14と、スパウト14に取り付けられたキャップ24とを備える。
【0042】
スパウト14は、
図7に示したスパウト13の隔壁31に代えて、開口部(貫通孔)34を有する隔壁35を設けたものである。隔壁35は、ノズル部30の開放端と反対側の端部と筒状部1の内周面とを接続し、ノズル部30及び開口部34を除く筒状部1の内部を閉鎖している。キャップ24の天板内面の中心には、蓋部3を閉じた状態でノズル部30に嵌合する小径のインナーリング36が設けられており、ノズル部30を密閉することができる。
【0043】
本実施形態に係る注出口栓400を包装容器に用いた場合、ノズル部30で液垂れした内容物を隔壁35に設けられた開口部34を通じて容器本体に戻すことができる。また、内容物の注出時に開口部34から容器本体内に空気が入り、ノズル部30からは空気が入らないので、内容物の脈動を抑制することができる。
【0044】
尚、上記の実施形態では、紙容器の開口部に溶着可能な構造の注出口栓を例として説明したが、容器本体の形態及び容器本体への取り付け方法はこれに限定されない。上記の実施形態に係る注出口栓は、紙容器、パウチ、チューブ容器の他、ボトル容器等に適用することも可能である。また、注出口栓の容器本体への取り付け方法は、打栓嵌合の他に、螺合、ヒートシール、接着等でも良く、容器本体の形態及び取り付け方法に応じて、筒状部1に接続される部分(フランジ部16に相当する部分)の構造を適宜選択すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば、食用油、ドレッシング、焼肉のたれ、めんつゆ等を包装する包装容器のように、液垂れ防止性と液切れ性が求められる包装容器の口栓として好適に利用でき、大口径及び小口径のいずれの注出口栓にも適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 筒状部
2 周壁部
3 蓋部
4 弱化線
5 ヒンジ
6 タンパーバンド
7 ラチェット機構
8 カール部
9 インナーリング
10 第1凸部
20 第2凸部
26a、26b リブ
27 隔壁
28 薄肉部
29 プルリング
30 ノズル部
31 隔壁
34 開口部
35 隔壁
11、12、13、14 スパウト
21、22、23、24 キャップ
100、200、300、400 注出口栓