(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003999
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】基板検査装置および基板検査方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20240109BHJP
【FI】
G01R31/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103407
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雄
(72)【発明者】
【氏名】村山 林太郎
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA03
2G014AA15
2G014AB59
2G014AC09
(57)【要約】
【課題】複数の導体パターン間の絶縁状態を短時間で検査可能とする。
【解決手段】相互に絶縁されているべき複数の導体パターンが形成された検査対象基板Xを検査する際に、8本のプローブ2を別個独立して移動させて各プローブ2を8個の導体パターンにそれぞれ接触させ、かつ8個の導体パターンのうちの1個の導体パターンと、1個の導体パターンに対する絶縁状態の検査対象から除外する予め規定された除外条件を満たす導体パターンを除くM個の導体パターンとの間の被測定量を測定すると共に、測定した被測定量に基づいて1個の導体パターンとM個の導体パターンとの間の絶縁状態を検査する検査処理を1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せを予め規定された変更手順に従って変更して複数回実行することで8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に絶縁されているべき複数の導体パターンが形成された検査対象基板における当該各導体パターンに接触させたプローブを介して当該各導体パターン間についての予め規定された被測定量を測定すると共に、測定した当該被測定量に基づいて当該各導体パターン間の絶縁状態を検査可能に構成された基板検査装置であって、
Na本(Naは、3以上の予め規定された自然数)の前記プローブと、
前記Na本のプローブを別個独立して移動可能に構成されたNa個のプローブ移動機構と、
前記被測定量を測定する測定部と、
前記プローブ移動機構による前記プローブの移動および前記測定部による前記被測定量の測定を制御すると共に、測定された前記被測定量に基づいて前記各導体パターン間の絶縁状態を検査する処理部を備え、
前記処理部は、前記各プローブ移動機構を制御して前記Na本のプローブをNa個の前記導体パターンにそれぞれ接触させ、かつ当該Na個の導体パターンのうちの1個の当該導体パターンと、当該1個の導体パターンに対する絶縁状態の検査対象から除外する予め規定された除外条件を満たす当該導体パターンを除くM個の当該導体パターンとの間の前記被測定量を前記測定部に測定させると共に、測定された当該被測定量に基づいて当該1個の導体パターンと当該M個の導体パターンとの間の絶縁状態を検査する検査処理を当該1個の導体パターンおよび当該M個の導体パターンの組合せを予め規定された変更手順に従って変更して複数回実行することで前記Na個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する基板検査装置。
【請求項2】
Nb本(Nbは、4以上の自然数)の前記プローブおよびNb個の前記プローブ移動機構を備え、
前記処理部は、前記変更手順として、前記1個の導体パターンおよび前記M個の導体パターンの組合せが複数存在するときに当該M個の導体パターンの数が最も少数となる組合せを除く組合せを優先して前記検査処理を実行するとの手順に従ってNb個の前記導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する請求項1記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記変更手順として、前記1個の導体パターンおよび前記M個の導体パターンの組合せが複数存在するときに当該M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せを優先して前記検査処理を実行するとの手順に従って前記Nb個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する請求項2記載の基板検査装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記1個の導体パターンに対する最短離間部位の離間距離が予め規定された距離を超える前記導体パターンを前記除外条件を満たす導体パターンとする請求項1から3のいずれかに記載の基板検査装置。
【請求項5】
相互に絶縁されているべき複数の導体パターンが形成された検査対象基板における当該各導体パターンに接触させたプローブを介して当該各導体パターン間についての予め規定された被測定量を測定すると共に、測定した当該被測定量に基づいて当該各導体パターン間の絶縁状態を検査する基板検査方法であって、
Na本(Naは、3以上の予め規定された自然数)の前記プローブを別個独立して移動させて当該Na本のプローブをNa個の前記導体パターンにそれぞれ接触させ、かつ当該Na個の導体パターンのうちの1個の当該導体パターンと、当該1個の導体パターンに対する絶縁状態の検査対象から除外する予め規定された除外条件を満たす当該導体パターンを除くM個の当該導体パターンとの間の前記被測定量を測定すると共に、測定した当該被測定量に基づいて当該1個の導体パターンと当該M個の導体パターンとの間の絶縁状態を検査する検査処理を当該1個の導体パターンおよび当該M個の導体パターンの組合せを予め規定された変更手順に従って変更して複数回実行することで前記Na個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する基板検査方法。
【請求項6】
Nb本(Nbは、4以上の自然数)の前記プローブをNb個の前記導体パターンにそれぞれ接触させると共に、前記変更手順として、前記1個の導体パターンおよび前記M個の導体パターンの組合せが複数存在するときに当該M個の導体パターンの数が最も少数となる組合せを除く組合せを優先して前記検査処理を実行するとの手順に従ってNb個の前記導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する請求項5記載の基板検査方法。
【請求項7】
前記変更手順として、前記1個の導体パターンおよび前記M個の導体パターンの組合せが複数存在するときに当該M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せを優先して前記検査処理を実行するとの手順に従って前記Nb個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する請求項6記載の基板検査方法。
【請求項8】
前記1個の導体パターンに対する最短離間部位の離間距離が予め規定された距離を超える前記導体パターンを前記除外条件を満たす導体パターンとする請求項5から7のいずれかに記載の基板検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象基板に形成された各導体パターンに接触させたプローブを介して各導体パターン間の絶縁状態を検査する基板検査装置および基板検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板検査装置および基板検査方法として、出願人は、一対の検査用プローブを介して検査対象の回路基板(以下、「検査対象基板」ともいう)における2個の導体パターン間の抵抗値を測定し、測定した抵抗値に基づいて両導体パターン間の絶縁状態を検査可能な回路基板検査装置、およびその回路基板検査方法(以下、単に「基板検査装置」および「基板検査方法」ともいう)を下記の特許文献に開示している。
【0003】
この基板検査装置による検査対象基板の検査に際しては、最初に、電極部の上に載置した検査対象基板において絶縁状態を検査すべき2個の導体パターン(検査位置)に対して2本の検査用プローブをそれぞれ接触させる。次いで、一方の検査用プローブを接触させた導体パターンと電極との間の静電容量、および他方の検査用プローブを接触させた導体パターンと電極との間の静電容量を測定し、測定した静電容量と接触状態判別用データとを比較することによって検査用プローブと導体パターンとの接触状態をそれぞれ判別する。
【0004】
この際に、接触状態が良好であると判別したときには、両検査用プローブを介して両導体パターン間の抵抗値を測定し、測定した抵抗値と検査用基準データの値とを比較することによって両導体パターン間の絶縁状態を検査する。このような検査処理を、両検査用プローブを接触させる導体パターンの組合せを変更して順次実行することにより、検査対象基板に形成されている各導体パターンの相互間の絶縁状態が検査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-242211号公報(第3-5頁、第1,2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、出願人が開示している基板検査装置、およびその基板検査方法には、以下のような改善すべき課題が存在する。具体的には、出願人が開示している基板検査装置および基板検査方法では、別個独立して移動可能に配設された一対の検査用プローブを使用し、両検査用プローブを接触させる導体パターン(検査位置)の組合せを変更して抵抗値を順次測定して検査用基準データの値と比較することで各導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する構成・方法が採用されている。
【0007】
このため、この基板検査装置および基板検査方法では、絶縁状態を検査すべき2個の導体パターンの組合せの数だけ、検査用プローブの移動および抵抗値の測定を実行する必要がある。一例として、検査対象基板における8個の導体パターンを対象として相互間の絶縁状態を検査するには、検査用プローブの移動および抵抗値の測定を28回実行する必要がある。したがって、出願人が開示している基板検査装置および基板検査方法では、検査対象基板に形成されている導体パターンの数が多数のときに、1枚の検査対象基板の良否を検査するのに要する時間が長時間となっている現状があり、この点を改善するのが好ましい。
【0008】
本発明は、かかる改善すべき問題に鑑みてなされたものであり、複数の導体パターン間の絶縁状態を短時間で検査し得る基板検査装置および基板検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板検査装置は、相互に絶縁されているべき複数の導体パターンが形成された検査対象基板における当該各導体パターンに接触させたプローブを介して当該各導体パターン間についての予め規定された被測定量を測定すると共に、測定した当該被測定量に基づいて当該各導体パターン間の絶縁状態を検査可能に構成された基板検査装置であって、Na本(Naは、3以上の予め規定された自然数)の前記プローブと、前記Na本のプローブを別個独立して移動可能に構成されたNa個のプローブ移動機構と、前記被測定量を測定する測定部と、前記プローブ移動機構による前記プローブの移動および前記測定部による前記被測定量の測定を制御すると共に、測定された前記被測定量に基づいて前記各導体パターン間の絶縁状態を検査する処理部を備え、前記処理部は、前記各プローブ移動機構を制御して前記Na本のプローブをNa個の前記導体パターンにそれぞれ接触させ、かつ当該Na個の導体パターンのうちの1個の当該導体パターンと、当該1個の導体パターンに対する絶縁状態の検査対象から除外する予め規定された除外条件を満たす当該導体パターンを除くM個の当該導体パターンとの間の前記被測定量を前記測定部に測定させると共に、測定された当該被測定量に基づいて当該1個の導体パターンと当該M個の導体パターンとの間の絶縁状態を検査する検査処理を当該1個の導体パターンおよび当該M個の導体パターンの組合せを予め規定された変更手順に従って変更して複数回実行することで前記Na個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【0010】
また、本発明に係る基板検査方法は、相互に絶縁されているべき複数の導体パターンが形成された検査対象基板における当該各導体パターンに接触させたプローブを介して当該各導体パターン間についての予め規定された被測定量を測定すると共に、測定した当該被測定量に基づいて当該各導体パターン間の絶縁状態を検査する基板検査方法であって、Na本(Naは、3以上の予め規定された自然数)の前記プローブを別個独立して移動させて当該Na本のプローブをNa個の前記導体パターンにそれぞれ接触させ、かつ当該Na個の導体パターンのうちの1個の当該導体パターンと、当該1個の導体パターンに対する絶縁状態の検査対象から除外する予め規定された除外条件を満たす当該導体パターンを除くM個の当該導体パターンとの間の前記被測定量を測定すると共に、測定した当該被測定量に基づいて当該1個の導体パターンと当該M個の導体パターンとの間の絶縁状態を検査する検査処理を当該1個の導体パターンおよび当該M個の導体パターンの組合せを予め規定された変更手順に従って変更して複数回実行することで前記Na個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【0011】
したがって、本発明に係る基板検査装置および基板検査方法によれば、複数の導体パターンが形成されている検査対象基板の検査に際して、2個の導体パターン間の絶縁状態を個別に検査する構成・方法と比較して、1つの導体パターンと、M個の導体パターンとの間の絶縁状態を一括して検査することで、1枚の検査対象基板の検査に要する検査処理の回数を充分に少数化することができる。これにより、この基板検査装置および基板検査方法によれば、複数の導体パターン間の絶縁状態を短時間で検査することができる。
【0012】
また、本発明に係る基板検査装置は、Nb本(Nbは、4以上の自然数)の前記プローブおよびNb個の前記プローブ移動機構を備え、前記処理部は、前記変更手順として、前記1個の導体パターンおよび前記M個の導体パターンの組合せが複数存在するときに当該M個の導体パターンの数が最も少数となる組合せを除く組合せを優先して前記検査処理を実行するとの手順に従ってNb個の前記導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【0013】
また、本発明に係る基板検査方法は、Nb本(Nbは、4以上の自然数)の前記プローブをNb個の前記導体パターンにそれぞれ接触させると共に、前記変更手順として、前記1個の導体パターンおよび前記M個の導体パターンの組合せが複数存在するときに当該M個の導体パターンの数が最も少数となる組合せを除く組合せを優先して前記検査処理を実行するとの手順に従ってNb個の前記導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【0014】
したがって、本発明に係る基板検査装置および基板検査方法によれば、M個の導体パターンの数が多数の組合せを優先することで、複数回の検査処理の早い段階において多数の導体パターン間の絶縁状態を確定することができるため、1枚の検査対象基板の検査に要する検査処理の回数を一層少数化することができる。これにより、この基板検査装置および基板検査方法によれば、複数の導体パターン間の絶縁状態を一層短時間で検査することができる。
【0015】
また、本発明に係る基板検査装置は、前記処理部は、前記変更手順として、前記1個の導体パターンおよび前記M個の導体パターンの組合せが複数存在するときに当該M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せを優先して前記検査処理を実行するとの手順に従って前記Nb個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【0016】
また、本発明に係る基板検査方法は、前記変更手順として、前記1個の導体パターンおよび前記M個の導体パターンの組合せが複数存在するときに当該M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せを優先して前記検査処理を実行するとの手順に従って前記Nb個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【0017】
したがって、本発明に係る基板検査装置および基板検査方法によれば、M個の導体パターンの数が最も多数の組合せを優先することで、複数回の検査処理の早い段階において多数の導体パターン間の絶縁状態を好適に確定することができるため、1枚の検査対象基板の検査に要する検査処理の回数を一層少数化することができる。これにより、この基板検査装置および基板検査方法によれば、複数の導体パターン間の絶縁状態を一層短時間で検査することができる。
【0018】
また、本発明に係る基板検査装置は、前記処理部は、前記1個の導体パターンに対する最短離間部位の離間距離が予め規定された距離を超える前記導体パターンを前記除外条件を満たす導体パターンとする。
【0019】
また、本発明に係る基板検査方法は、前記1個の導体パターンに対する最短離間部位の離間距離が予め規定された距離を超える前記導体パターンを前記除外条件を満たす導体パターンとする。
【0020】
したがって、本発明に係る基板検査装置および基板検査方法によれば、短絡が生じる可能性が充分に低い組合せについての検査処理を行わない分だけ、1枚の検査対象基板の検査に要する検査処理の回数を一層少数化することができる。これにより、この基板検査装置および基板検査方法によれば、複数の導体パターン間の絶縁状態を一層短時間で検査することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る基板検査装置および基板検査方法によれば、検査対象基板に形成されている複数の導体パターンに関し、1つの導体パターンと、M個の導体パターンとの間の絶縁状態を一括して検査することで、1枚の検査対象基板の検査に要する検査処理の回数を充分に少数化することができる。これにより、複数の導体パターン間の絶縁状態を短時間で検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するための説明図である。
【
図3】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するための他の説明図である。
【
図4】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図5】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図6】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図7】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図8】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図9】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図10】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図11】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図12】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図13】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図14】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図15】導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査する検査手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、基板検査装置および基板検査方法の一例について、添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示す基板検査装置1は、「基板検査装置」の一例であって、後述の「基板検査方法」に従って検査対象基板Xに形成されている導体パターンの絶縁状態などを検査可能に構成されている。この場合、検査対象基板Xは、「検査対象基板」の一例であって、相互に絶縁されているべき複数の導体パターン(図示せず)が形成されている。この基板検査装置1は、プローブ2,2・・、移動機構3,3・・、測定部4、処理部5および記憶部6を備えている。
【0025】
プローブ2は、「プローブ」の一例であって、移動機構3に取り付けられた状態で測定部4に接続されている。この場合、本例の基板検査装置1では、一例として、8本のプローブ2を備えて構成されている(「Na」および「Nb」が「8」である構成の例)。移動機構3は、「プローブ移動機構」の一例であって、処理部5の制御に従い、各プローブ2を別個独立して移動させて検査対象基板Xにおける導体パターンにプローブ2を接触させる。この場合、Na=Nb=8本のプローブ2を備えた本例の基板検査装置1では、各プローブ2を別個独立して移動可能に8個の移動機構3を備えて構成されている。
【0026】
測定部4は、「測定部」の一例であって、後述するように、処理部5の制御に従い、検査対象基板Xの導体パターンに接触させられているプローブ2,2・・間の抵抗値を「被測定量」として測定する。この場合、本例の基板検査装置1では、測定部4が処理部5の制御下で自身に対する各プローブ2の接続態様を変更可能な接続切替え部(図示せず)を備えて構成されている。
【0027】
処理部5は、「処理部」の一例であって、基板検査装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部5は、検査対象基板データD0に基づいて検査手順データD1を生成する処理、検査対象基板データD0や検査手順データD1に従って移動機構3によるプローブ2の移動や測定部4による抵抗値の測定を制御する処理、および測定された抵抗値と検査対象基板データD0に基づいて特定した比較値との比較によって導体パターン間の絶縁状態を検査して検査結果データD2を生成する処理などを実行可能に構成されている。
【0028】
この場合、本例の基板検査装置1では、後述するようにして、処理部5が、各移動機構3を制御してNa=Nb=8本のプローブ2をNa=Nb=8個の導体パターンにそれぞれ接触させ、かつ8個の導体パターンのうちの1個の導体パターンと、その1個の導体パターンに対する絶縁状態の検査対象から除外する予め規定された「除外条件」を満たす導体パターンを除くM個の導体パターンとの間の抵抗値を測定部4に測定させると共に、測定された抵抗値に基づき、上記の1個の導体パターンとM個の導体パターンとの間の絶縁状態を検査する検査処理を、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せを予め規定された変更手順に従って変更して複数回実行することで8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する構成が採用されている。
【0029】
記憶部6は、処理部5の動作プログラムや、検査対象基板Xにおける要検査箇所、および測定されるべき抵抗値などを特定可能な検査対象基板データD0、検査対象基板Xについての検査手順を特定可能な検査手順データD1、並びに処理部5による検査結果を特定可能な上記の検査結果データD2などを記憶する。この場合、検査対象基板データD0は、一例として、検査対象基板Xの製造者(設計者)によって外部処理装置において生成されるデータであって、各導体パターン間の絶縁状態の検査に際してプローブ2を接触させるべき座標、隣接する導体パターン間の最短離間距離(最短離間部位の離間距離)が予め規定された距離を下回る導体パターンを特定可能な情報(近接パターン情報)、および各導体パターン間について測定されるべき抵抗などを特定可能なデータで構成されている。
【0030】
この基板検査装置1による検査対象基板Xの検査に際しては、最初に、検査手順データD1を記憶部6に記憶させる。この検査手順データD1については、外部装置において生成して基板検査装置1に入力して記憶部6に記憶させることもできるが、本例では、検査対象基板データD0に基づいて処理部5が生成する例について説明する。なお、検査対象基板データD0については、予め記憶部6に記憶されているものとする。
【0031】
前述のように、別個独立して移動可能に配設された8本のプローブ2を備えている本例の基板検査装置1では、各移動機構3による8本のプローブ2の1回の移動によって検査対象基板Xに形成されている各導体パターンのうちの8個の導体パターン(以下、この8個の導体パターンについて「導体パターンX1~X8」ともいう)にプローブ2をそれぞれ接触させて各導体パターンX1~X8の相互間の絶縁状態を検査することができる。この導体パターンX1~X8間の絶縁状態を検査するための検査手順データD1を生成する際に、処理部5は、最初に、予め規定された「除外条件」を満たすパターンの組合せを検査対象から除外する。
【0032】
具体的には、処理部5は、検査対象基板データD0における前述の近接パターン情報に基づき、導体パターンX1~X8のうちの最低離間距離が予め規定された距離を超えるパターンを「除外条件」を満たすパターンの組合せとして特定する。なお、上記の「予め規定された距離」は、検査対象基板Xの板面方向および厚み方向において隣接する導体パターン間に短絡が生じるおそれのない距離として基板検査装置1の使用者(検査を実施する者)や検査対象基板Xの製造者などによって規定される。
【0033】
この場合、本例では、一例として、導体パターンX1-X2、導体パターンX1-X3、導体パターンX1-X4、導体パターンX1-X7、導体パターンX1-X8、導体パターンX2-X3、導体パターンX2-X5、導体パターンX2-X6、導体パターンX3-X5、導体パターンX3-X6、導体パターンX3-X7、導体パターンX4-X5、導体パターンX5-X6および導体パターンX6-X8において最短離間距離が予め規定された距離以下となっており、そのような近接パターン情報が検査対象基板データD0に基づいて特定されるものとする。
【0034】
したがって、
図2に示すように、処理部5は、検査対象基板データD0に基づき、導体パターンX1~X8のうちの導体パターンX1-X5、導体パターンX1-X6、導体パターンX2-X4、導体パターンX2-X7、導体パターンX2-X8、導体パターンX3-X4、導体パターンX3-X8、導体パターンX4-X6、導体パターンX4-X7、導体パターンX4-X8、導体パターンX5-X7、導体パターンX5-X8、導体パターンX6-X7および導体パターンX7-X8を「除外条件」を満たすパターン(相互間の絶縁状態の検査が不要なパターン)として特定する。なお、
図2、および後に参照する
図3~15では、「除外条件」を満たす導体パターンの組合せを「0」で表し、検査対象とすべき導体パターンの組合せを「1」で表している。
【0035】
つまり、
図2に示す例は、導体パターンX1について導体パターンX2,X3,X4,X7,X8の5個を絶縁状態の検査対象として検査する必要があり、導体パターンX2について導体パターンX1,X3,X5,X6の4個を絶縁状態の検査対象として検査する必要があり、導体パターンX3について導体パターンX1,X2,X5,X6,X7の5個を絶縁状態の検査対象として検査する必要があり、導体パターンX4について導体パターンX1,X5の2個を絶縁状態の検査対象として検査する必要があり、導体パターンX5について導体パターンX2,X3,X4,X6の4個を絶縁状態の検査対象として検査する必要があり、導体パターンX6について導体パターンX2,X3,X5,X8の4個を絶縁状態の検査対象として検査する必要があり、導体パターンX7について導体パターンX1,X3の2個を絶縁状態の検査対象として検査する必要があり、導体パターンX8について導体パターンX1,X6の2個を絶縁状態の検査対象として検査する必要があると処理部5が特定したことを示している。
【0036】
次いで、処理部5は、導体パターンX1~X8の8個を対象とする検査において、8個の導体パターンのうちの1個の導体パターンと他のM個の導体パターンとの間の絶縁状態を検査する検査処理を、1個の導体パターンとM個の導体パターンとの組合せを変更して複数回実行する際に、いずれの組合せを優先して検査処理を実行するかを特定する。
【0037】
この場合、本例の基板検査装置1、およびその基板検査方法では、8個の導体パターンのうちの1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が最も少数となる組合せを除く組合せを優先して検査処理を実行するとの手順(予め規定された「変更手順」の一例)に従って8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する構成・方法が採用されている。具体的には、本例の基板検査装置1、およびその基板検査方法では、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せを優先して検査処理を実行するとの手順(予め規定された「変更手順」の具体的な一例)に従って8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する構成・方法が採用されている。
【0038】
したがって、
図2に示す例において、処理部5は、M個の導体パターンの数が最も多数の5個となる導体パターンX1と導体パターンX2,X3,X4,X7,X8との組合せについての検査処理、および導体パターンX3と導体パターンX1,X2,X5,X6,X7との組合せについての検査処理を優先して実行すると特定する。この際には、一例として、導体パターンX1と導体パターンX2,X3,X4,X7,X8との組合せについての検査処理を最初に実行すると特定する。
【0039】
一方、上記の最初の検査処理を完了したときには、導体パターンX1-X2、導体パターンX1-X3、導体パターンX1-X4、導体パターンX1-X7および導体パターンX1-X8についての絶縁状態が確定し、これらの組合せについての絶縁状態についての検査が不要となる。したがって、
図3に示すように、処理部5は、2番目に実行する検査処理の特定に際して、最初の検査処理の完了によって検査が不要となる上記の導体パターンの組合せを「除外条件」と満たすパターンとして新たに特定する。
【0040】
次いで、処理部5は、M個の導体パターンの数が最も多数の4個となる導体パターンX3と導体パターンX2,X5,X6,X7との組合せについての検査処理、導体パターンX5と導体パターンX1,X3,X5,X8との組合せについての検査処理、および導体パターンX6と導体パターンX1,X2,X5,X8との組合せについての検査処理を優先して実行すると特定する。この際には、一例として、導体パターンX3と導体パターンX2,X5,X6,X7との組合せについての検査処理を2番目に実行すると特定する。
【0041】
また、上記の2番目の検査処理を完了したときには、導体パターンX3-X2、導体パターンX3-X5、導体パターンX3-X6および導体パターンX3-X7についての絶縁状態が確定し、これらの組合せについての絶縁状態についての検査が不要となる。したがって、
図4に示すように、処理部5は、3番目に実行する検査処理の特定に際して、2番目の検査処理の完了によって検査が不要となる上記の導体パターンの組合せを「除外条件」と満たすパターンとして新たに特定する。
【0042】
次いで、処理部5は、M個の導体パターンの数が最も多数の3個となる導体パターンX5と導体パターンX2,X4,X6との組合せについての検査処理、および導体パターンX6と導体パターンX2,X5,X8との組合せについての検査処理を優先して実行すると特定する。この際には、一例として、導体パターンX5と導体パターンX2,X4,X6との組合せについての検査処理を3番目に実行すると特定する。
【0043】
また、上記の3番目の検査処理を完了したときには、導体パターンX5-X2、導体パターンX5-X4および導体パターンX5-X6についての絶縁状態が確定し、これらの組合せについての絶縁状態についての検査が不要となる。したがって、
図5に示すように、処理部5は、4番目に実行する検査処理の特定に際して、3番目の検査処理の完了によって検査が不要となる上記の導体パターンの組合せを「除外条件」と満たすパターンとして新たに特定する。次いで、処理部5は、M個の導体パターンの数が最も多数の2個となる導体パターンX6と導体パターンX2,X8との組合せについての検査処理を4番目に実行すると特定する。
【0044】
これにより、
図6に示すように、上記の4番目の検査を完了させることで、導体パターンX1~X8の8個の導体パターンに関し、短絡が生じる可能性がある近距離に形成された各パターンの相互間の絶縁状態を確定させることが可能となる。したがって、処理部5は、上記の検査処理の実行順序を特定可能に検査手順データD1を生成し、生成した検査手順データD1を記憶部6に記憶させる。このように、8個の導体パターンについての相互間の絶縁状態を検査するための検査手順データD1を生成する処理を、検査対象基板Xに形成されている導体パターンのうちの絶縁状態を検査すべきすべての導体パターンを対象として繰り返し行うことにより、検査対象基板Xについての検査を開示する準備が整う。
【0045】
一方、検査対象基板Xの検査に際しては、処理部5が、上記の検査手順データD1に基づき、各プローブ2を接触させるべき8つの導体パターン(
図2~6の例における導体パターンX1~X8など)を特定すると共に、検査対象基板データD0に基づき、8つの導体パターンに対してプローブ2を接触させるべき位置(検査対象基板XにおけるX-Y-Z座標)を特定し、各移動機構3を制御して、特定した位置(導体パターン)に各プローブ2を接触させる。また、処理部5は、測定部4を制御して、プローブ2を接触させている各導体パターン間の抵抗値を測定させる。
【0046】
具体的には、
図2~6を参照しつつ説明をした前述の導体パターンX1~X8について、処理部5は、検査手順データD1に従い、導体パターンX1と導体パターンX2,X3,X4,X7,X8との間の抵抗値(導体パターンX1-X2間の抵抗値、導体パターンX1-X3間の抵抗値、導体パターンX1X4間の抵抗値、導体パターンX1X7間の抵抗値、および導体パターンX1-X8間の抵抗値の合成抵抗値)を測定部4に測定させる。
【0047】
また、処理部5は、検査対象基板データD0に基づき、導体パターンX1-X2間の抵抗値、導体パターンX1-X3間の抵抗値、導体パターンX1X4間の抵抗値、導体パターンX1-X7間の抵抗値、および導体パターンX1-X8間の抵抗値の合成抵抗値をそれぞれ特定して導体パターンX1と導体パターンX2,X3,X4,X7,X8との間の抵抗値(合成抵抗値)として測定されるべき値を演算する。さらに、処理部5は、演算した抵抗値と、測定部4によって測定された抵抗値とに基づき、導体パターンX1と導体パターンX2,X3,X4,X7,X8との間の絶縁状態が良好であるか否かを判別する。
【0048】
具体的には、測定された抵抗値が、検査対象基板データD0に基づいて演算した抵抗値に対する予め規定された許容範囲内を外れて小さな値であったときに、処理部5は、導体パターンX1-X2間、導体パターンX1-X3間、導体パターンX1X4間、導体パターンX1-X7間および導体パターンX1-X8間のいずれかの絶縁状態が不良であると判別する。この際に、処理部5は、一例として、測定部4を制御して導体パターンX1-X2間、導体パターンX1-X3間、導体パターンX1X4間、導体パターンX1-X7間および導体パターンX1-X8間の抵抗値をそれぞれ測定させ、測定された抵抗値と、検査対象基板データD0に基づいて特定される対応するパターン間の抵抗値とを比較することで、いずれのパターン間の絶縁状態が不良であるかを特定する。これにより、導体パターンX1~X8を対象とする最初の「検査処理」が完了する。
【0049】
一方、測定部4測定された抵抗値(合成抵抗値)が、検査対象基板データD0に基づいて演算した抵抗値(合成抵抗値)に対する予め規定された許容範囲内の値であったときに、処理部5は、導体パターンX1-X2間、導体パターンX1-X3間、導体パターンX1X4間、導体パターンX1-X7間および導体パターンX1-X8間の絶縁状態が良好であると判別する。これにより、導体パターンX1~X8を対象とする最初の「検査処理」が完了する。
【0050】
次いで、処理部5は、上記の導体パターンX1と導体パターンX2,X3,X4,X7,X8との間の抵抗値(合成抵抗値)に基づく「検査処理」と同様にして、導体パターンX3と導体パターンX2,X5,X6,X7との間の抵抗値に基づく2番目の「検査処理」、導体パターンX5と導体パターンX2,X4,X6との間の抵抗値に基づく3番目の「検査処理」、および導体パターンX6と導体パターンX2,X8との間の抵抗値に基づく4番目の「検査処理」を順次実行する。これにより、導体パターンX1~X8の8個の導体パターンの相互間の絶縁状態がそれぞれ検査される。
【0051】
この場合、例えば、別個独立して移動可能に配設された8本のプローブ2を備えた本例の基板検査装置1であっても、8個の導体パターンを対象として、従来の検査方法と同様に2個の導体パターン間の抵抗値をそれぞれ測定して各導体パターン間の絶縁状態を検査したときには、8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査するために28回の検査処理を行う必要がある。このため、プローブを2本だけ備えた基板検査装置による検査と比較して、8本のプローブ2を同時に移動させることでプローブ2の移動に要する時間を2/8に短縮することができるものの、「被測定量(本例では、抵抗値)」の測定に要する時間(28回の測定の合計時間)については従来の構成・方法と同様であるため、1枚の検査対象基板Xの検査に要する時間を充分に短縮するのが困難となる。
【0052】
これに対して、上記の検査方法のように最低離間距離が予め規定された距離を超えるパターンを「除外条件」を満たすパターンとして検査対象から除外しない構成・方法であっても、1個の導体パターンと他の7個の導体パターンとの間の抵抗値を測定して1個の導体パターンと7個の導体パターンとの間の絶縁状態を一括して検査する方法を採用したときには、7回の抵抗値の測定を行うだけで、8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査することができる。したがって、別個独立して移動可能に配設された8本のプローブ2を備えたことでプローブ2の移動に要する時間を短縮することができることに加え、「被測定量(本例では、抵抗値)」の測定に要する時間(7回の測定の合計時間)についても十分に短縮することができるため、1枚の検査対象基板Xの検査に要する時間が充分に短縮される。
【0053】
また、上記の検査方法のように最低離間距離が予め規定された距離を超えるパターンや、完了した検査処理によって絶縁状態が確定するパターンを「除外条件」を満たすパターンとして検査対象から除外すると共に、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が最も少数となる組合せを除く組合せ(一例として、M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せ)を優先して検査処理を実行するとの「変更手順」に従って8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する本例の基板検査装置1およびその基板検査方法では、
図2~6に示す例において、4回の抵抗値の測定を行うだけで、8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査することができる。したがって、1枚の検査対象基板Xの検査に要する時間が一層短縮される。
【0054】
この後、処理部5は、検査対象基板Xに形成されている他の導体パターンについても上記の導体パターンX1~X8の8個の導体パターンの相互間の絶縁状態の検査時と同様にして順次「検査処理」を実行する。また、処理部5は、確定した絶縁状態を検査結果として検査結果データD2を生成して記憶部6に記憶させる。これにより、検査対象基板Xに形成されている導体パターンのうちの絶縁状態を検査すべき導体パターンについての検査が完了する。
【0055】
なお、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せを優先して「検査処理」を実行するとの手順に従ってNa=Nb=8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する構成・方法を例に挙げて説明したが、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せを優先しなくても、M個の導体パターンの数が最も少数となる組合せを除く組合せを優先して「検査処理」を実行する構成・方法であれば、8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査するのに要する「検査処理」の回数を少数回とすることができる。
【0056】
具体的には、検査手順データD1の生成に際して、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が最も少数の組合せ、およびM個の導体パターンの数が最も多数の組合せを除く組合せを優先して「検査処理」を実行するとの手順に従ってNa=Nb=8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する構成・方法を採用することができる。一例として、8個の導体パターンのうちの1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が2番目に多数となる組合せを優先して検査処理を実行するとの手順(予め規定された「変更手順」の他の一例)に従って8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査することができる。
【0057】
このような「変更手順」に従って検査対象基板Xにおける前述の検査対象基板X1~X8の相互間の絶縁状態を検査するための検査手順データD1を生成する際に、処理部5は、
図7に示す例において、M個の導体パターンの数が2番目に多数の4個となる導体パターンX2と導体パターンX1,X3,X5,X6との組合せについての検査処理、導体パターンX5と導体パターンX2,X3,X4,X6との組合せについての検査処理、および導体パターンX6と導体パターンX2,X3,X5,X8との組合せについての検査処理を優先して実行すると特定する。この際には、一例として、導体パターンX2と導体パターンX1,X3,X5,X6との組合せについての検査処理を最初に実行すると特定する。
【0058】
一方、上記の最初の検査処理を完了したときには、導体パターンX2-X1、導体パターンX2-X3、導体パターンX2-X5および導体パターンX2-X6についての絶縁状態が確定し、これらの組合せについての絶縁状態についての検査が不要となる。したがって、
図8に示すように、処理部5は、2番目に実行する検査処理の特定に際して、最初の検査処理の完了によって検査が不要となる上記の導体パターンの組合せを「除外条件」と満たすパターンとして新たに特定する。
【0059】
次いで、処理部5は、M個の導体パターンの数が2番目に多数の3個となる導体パターンX5と導体パターンX3,X4,X6との組合せについての検査処理、および導体パターンX6と導体パターンX3,X5,X8との組合せについての検査処理を優先して実行すると特定する。この際には、一例として、導体パターンX5と導体パターンX3,X4,X6との組合せについての検査処理を2番目に実行すると特定する。
【0060】
また、上記の2番目の検査処理を完了したときには、導体パターンX5-X3、導体パターンX5-X4および導体パターンX5-X6についての絶縁状態が確定し、これらの組合せについての絶縁状態についての検査が不要となる。したがって、
図9に示すように、処理部5は、3番目に実行する検査処理の特定に際して、2番目の検査処理の完了によって検査が不要となる上記の導体パターンの組合せを「除外条件」と満たすパターンとして新たに特定する。
【0061】
次いで、処理部5は、M個の導体パターンの数が2番目に多数の3個となる導体パターンX3と導体パターンX1,X6,X7との組合せについての検査処理を優先し、この検査処理を3番目に実行すると特定する。また、3番目の検査処理を完了したときには、導体パターンX3-X1、導体パターンX3-X6および導体パターンX3-X7についての絶縁状態が確定し、これらの組合せについての絶縁状態についての検査が不要となる。したがって、
図10に示すように、処理部5は、4番目に実行する検査処理の特定に際して、3番目の検査処理の完了によって検査が不要となる上記の導体パターンの組合せを「除外条件」と満たすパターンとして新たに特定する。
【0062】
次いで、処理部5は、M個の導体パターンの数が2番目に多数の2個となる導体パターンX8と導体パターンX1,X6との組合せについての検査処理を優先し、この検査処理を4番目に実行すると特定する。また、4番目の検査処理を完了したときには、導体パターンX8-X1および導体パターンX8-X6についての絶縁状態が確定し、これらの組合せについての絶縁状態についての検査が不要となる。したがって、
図11に示すように、処理部5は、5番目に実行する検査処理の特定に際して、4番目の検査処理の完了によって検査が不要となる上記の導体パターンの組合せを「除外条件」と満たすパターンとして新たに特定する。
【0063】
次いで、処理部5は、M個の導体パターンの数が2番目に多数の1個となる導体パターンX4-X1についての検査処理、および導体パターンX7-X1についての検査処理を優先して実行すると特定する。この際には、一例として、導体パターンX4-X1についての検査処理を5番目に実行すると特定する。また、5番目の検査処理を完了したときには、導体パターンX4-X1についての絶縁状態が確定し、この導体パターンについての絶縁状態についての検査が不要となる。したがって、
図12に示すように、処理部5は、6番目に実行する検査処理の特定に際して、5番目の検査処理の完了によって検査が不要となる上記の導体パターンを「除外条件」と満たすパターンとして新たに特定する。
【0064】
この後、処理部5は、完了していない導体パターンX1-X7についての検査処理を6番目に実行すると特定する。これにより、
図13に示すように、上記の6番目の検査を完了させることで、導体パターンX1~X8の8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を確定させることが可能となる。
【0065】
したがって、処理部5は、上記の検査処理の実行順序を特定可能に検査手順データD1を生成し、生成した検査手順データD1を記憶部6に記憶させる。また、処理部5は、生成した検査手順データD1と記憶部6に記憶されている検査対象基板データD0とに基づき、導体パターンX1~X8を対象とする検査処理を順次実行する。これにより、
図7~13に示す例においては、6回の抵抗値の測定を行うだけで、8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査することができる。したがって、1枚の検査対象基板Xの検査に要する時間が充分に短縮される。
【0066】
また、詳細な説明を省略するが、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が最も少数となる組合せを除けば、M個の導体パターンの数が最も多数の組合せ、および2番目以降に多数の組合せのうちから任意に選択した組合せを優先して「検査処理」を実行することもできる。具体的には、一例として、最初の「検査処理」については、M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せで実行し、2番目の「検査処理」については、M個の導体パターンの数が2番目に多数となる組合せで実行するなど、優先して実行する「検査処理」の選択基準(変更手順)を任意に変更することができる。このような構成・方法を採用した場合においても、導体パターンの相互間の絶縁状態を検査するのに要する「検査処理」の回数を少数回とすることができる。
【0067】
この場合、
図2~6を参照しつつ説明した例のように、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が最も多数となる組合せを優先して「検査処理」を実行するとの手順に従ってNa=Nb=8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する構成・方法では、「除外条件」を満たす導体パターンの組合せによっては、非常に少ない回数の「検査処理」の実行によって8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査することができる。
【0068】
具体的には、一例として、導体パターンX1~X8のうちの導体パターンX1-X6、導体パターンX2-X6、導体パターンX3-X6、導体パターンX4-X6、導体パターンX5-X6、導体パターンX6-X7および導体パターンX6-X8において最短離間距離が予め規定された距離以下となっており(
図2~13を参照しつつ説明をした例よりも、近接パターンの数が少ない検査対象基板Xの例)、そのような近接パターン情報が検査対象基板データD0に基づいて特定されるものとする。
【0069】
このような例の検査対象基板Xに関し、
図14に示すように、処理部5は、検査対象基板データD0に基づき、上記の近接パターンを除くパターンを「除外条件」を満たすパターン(相互間の絶縁状態の検査が不要なパターン)として特定する。また、処理部5は、導体パターンX1~X5,X7,X8については、導体パターンX6だけをそれぞれ絶縁状態の検査対象として検査する必要があり、導体パターンX6については、X1~X5,X7,X8の7個を絶縁状態の検査対象として検査する必要があると特定する。
【0070】
この際に、8個の導体パターンのうちの1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときに、M個の導体パターンの数が最も多数の組合せを優先して検査処理を実行するとの手順に従って8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する構成・方法では、M個の導体パターンの数が最も多数の7個となる導体パターンX6と導体パターンX1~X5,X7,X8との組合せについての検査処理を最初に実行すると特定することとなる。また、
図15に示すように、この検査対象基板Xの例では、導体パターンX6と導体パターンX1~X5,X7,X8との組合せについての検査処理を行うことで、導体パターンX1~X8の8個の導体パターンに関し、短絡が生じる可能性がある近距離に形成された各パターンの相互間の絶縁状態を確定させることが可能となる。
【0071】
このように、この基板検査装置1、およびその基板検査方法では、Na=8本のプローブ2を別個独立して移動させて8本のプローブ2をNa=8個の導体パターンにそれぞれ接触させ、かつ8個の導体パターンのうちの1個の導体パターンと、その1個の導体パターンに対する絶縁状態の検査対象から除外する予め規定された「除外条件」を満たす導体パターンを除くM個の導体パターンとの間の被測定量(抵抗値)を測定すると共に、測定した被測定量に基づいて1個の導体パターンとM個の導体パターンとの間の絶縁状態を検査する検査処理を1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せを予め規定された「変更手順」に従って変更して複数回実行することで8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【0072】
したがって、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、複数の導体パターンが形成されている検査対象基板Xの検査に際して、2個の導体パターン間の絶縁状態を個別に検査する構成・方法と比較して、1つの導体パターンと、M個の導体パターンとの間の絶縁状態を一括して検査することで、1枚の検査対象基板Xの検査に要する「検査処理」の回数を充分に少数化することができる。これにより、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、複数の導体パターン間の絶縁状態を短時間で検査することができる。
【0073】
また、この基板検査装置1、およびその基板検査方法では、Na=Nb=8本のプローブ2をNa=Nb=8個の導体パターンにそれぞれ接触させると共に、「変更手順」として、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときにM個の導体パターンの数が最も少数となる組合せを除く組合せを優先して検査処理を実行するとの手順に従って8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【0074】
したがって、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、M個の導体パターンの数が多数の組合せを優先することで、複数回の検査処理の早い段階において多数の導体パターン間の絶縁状態を確定することができるため、1枚の検査対象基板Xの検査に要する「検査処理」の回数を一層少数化することができる。これにより、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、複数の導体パターン間の絶縁状態を一層短時間で検査することができる。
【0075】
また、この基板検査装置1、およびその基板検査方法では、「変更手順」として、1個の導体パターンおよびM個の導体パターンの組合せが複数存在するときにM個の導体パターンの数が最も多数となる組合せを優先して検査処理を実行するとの手順に従って8個の導体パターンの相互間の絶縁状態を検査する。
【0076】
したがって、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、M個の導体パターンの数が最も多数の組合せを優先することで、複数回の検査処理の早い段階において多数の導体パターン間の絶縁状態を好適に確定することができるため、1枚の検査対象基板Xの検査に要する「検査処理」の回数を一層少数化することができる。これにより、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、複数の導体パターン間の絶縁状態を一層短時間で検査することができる。
【0077】
また、この基板検査装置1、およびその基板検査方法では、1個の導体パターンに対する最短離間部位の離間距離が予め規定された距離を超える導体パターンを「除外条件」を満たす導体パターンとする。したがって、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、短絡が生じる可能性が充分に低い組合せについての「検査処理」を行わない分だけ、1枚の検査対象基板Xの検査に要する「検査処理」の回数を一層少数化することができる。これにより、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、複数の導体パターン間の絶縁状態を一層短時間で検査することができる。
【0078】
なお、「基板検査装置」の構成、および「基板検査方法」の具体的な内容については、上記の基板検査装置1の構成、およびその基板検査方法の例に限定されない。例えば、導体パターンXについての検査を開始するのに先立って検査手順データD1を生成し、生成した検査手順データD1に従って検査処理を実行する構成・方法を例に挙げて説明したが、導体パターンXについての検査と検査手順データD1の生成(いずれの導体パターン間についての「絶縁検査」を優先して実行するかの決定)とを並行して実行することもできる。「被測定量」は、抵抗値に限定されず、電流値や電圧値などの任意の電気的パラメータを「被測定量」として測定する構成・方法を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、3本以上のプローブを使用して、1つの導体パターンと他の複数個の導体パターンとの間の絶縁状態を一括して検査することで、1枚の検査対象基板の検査に要する検査処理の回数を充分に少数化することができる。これにより、複数の導体パターン間の絶縁状態を短時間で検査することができるため、相互に絶縁されているべき複数の導体パターンが形成された検査対象基板を検査する基板検査装置および基板検査方法に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 基板検査装置
2 プローブ
3 移動機構
4 測定部
5 処理部
6 記憶部
D0 検査対象基板データ
D1 検査手順データ
D2 検査結果データ
X 検査対象基板
X1,X2・・ 導体パターン