(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039995
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】壁の強度試験方法及び強度試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/20 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
G01N3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144782
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000177139
【氏名又は名称】三洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 達也
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AB01
2G061BA01
2G061CB01
2G061DA01
2G061EA02
(57)【要約】
【課題】コスト及び労力を抑えて高壁に対して集中荷重試験を行う。
【解決手段】本開示にかかる壁の壁の強度試験方法は、幅方向よりも高さ方向に長い壁の試験体1Aの幅方向の一側を下方とし、他側を上方とした横倒し状態で、試験体1Aの高さ方向の両端部を、強度試験装置10の1対の保持部材11a,11bによって支持して、試験体1Aを横倒し状態に保持する第1ステップと、強度試験装置10の加圧部材13によって、横倒し状態の試験体1Aの高さ方向の所定位置に対して試験体1Aの一面側から荷重を加える第2ステップと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向よりも高さ方向に長い壁の試験体の前記幅方向の一側を下方とし、他側を上方とした横倒し状態で、前記試験体の前記高さ方向の両端部を支持して、前記試験体を前記横倒し状態に保持する第1ステップと、
前記横倒し状態の前記試験体の前記高さ方向の所定位置に対して前記試験体の一面側から荷重を加える第2ステップと、を含む
ことを特徴とする壁の強度試験方法。
【請求項2】
前記第1ステップにおいて、前記試験体の前記幅方向の前記一側の一端縁部を基台から上方へ浮かせた状態に保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の壁の強度試験方法。
【請求項3】
前記第1ステップにおいて、前記基台に対して前記試験体と交叉する方向に移動可能な支持部材を、前記試験体の前記一端縁部と前記基台との間に配置し、前記支持部材によって前記試験体を下方から支持する
ことを特徴とする請求項2に記載の壁の強度試験方法。
【請求項4】
前記第2ステップにおいて前記試験体に対して荷重を加える領域は、前記試験体の前記所定位置で前記幅方向に延びる領域である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の壁の強度試験方法。
【請求項5】
幅方向よりも高さ方向に長い壁の試験体の前記幅方向の一側を下方とし、他側を上方とした横倒し状態で、前記試験体の前記高さ方向の両端部を支持して、前記試験体を起立した状態に保持する1対の保持部材と、
前記1対の保持部材に支持された前記試験体に対して、前記試験体と交叉する方向に前記試験体の一面側から荷重を加える加圧部材と、を備える
ことを特徴とする壁の強度試験装置。
【請求項6】
前記試験体を下方から支持する支持部材を備え、
前記1対の保持部材は、前記試験体の前記幅方向の前記一側の一端縁部を基台から上方へ浮かせた状態に保持し、
前記支持部材は、前記試験体の前記一端縁部と前記基台との間に配置され、前記試験体を支持した状態で前記基台に対して前記試験体と交叉する方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項5に記載の壁の強度試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、壁の強度試験方法及び強度試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、小屋、防災備蓄倉庫等の倉庫、シェルターなどの建物で用いられ、衝突した物体の貫通を抑制することができ、軽量化を図ることが可能なパネル部材が開示されている。このパネル部材では、その強度を検証するために強度試験を行っている。パネル部材の強度試験は、パネル面部の一方面側を上向きにして、両端部を高さ200mmの架台にパネル部材を載せ、パネル部材の中央に荷重をかけてパネル本体を大きく変形させた後、パネル部材の破損の有無等を確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壁の強度試験では、一般に、特許文献1に記載のパネル部材の強度試験と同様に、壁を上下方向と交叉する状態にして試験を行う。例えば、JIS A 6517に規定される壁下地材の強度試験では、支持台を使用して床から浮かせた強固な枠内に、上下方向と交叉する状態に高壁を組み立てて、組み立てた高壁の所定の位置に上方から荷重を加え、荷重を取り除いた後の高壁の撓み量を測定する。
【0005】
ところで、床から天井までの高さが非常に高い倉庫等の建築物では、高さ方向に長い高壁が使用されることがある。この高壁の所定の高さ位置(例えば、高壁の高さを二等分する位置)に線状に荷重を加えて集中荷重試験を行いたい場合、特許文献1に記載のパネル部材の強度試験と同様に、壁を上下方向と交叉する状態にして試験を行うと、高壁には、その自重が等分布荷重として作用するので、集中荷重を加えた際の正確な検証を行うことが難しい。一方で、高壁を立てた状態で上記集中荷重試験を行うと、その試験を行う建屋自体の天井高が大きく必要となり、また、足場を組み立てた後、高壁を立てた状態に保持するための枠を組み立てるとともに、荷重を加えるための装置を高壁の上記所定の高さ位置に設置する必要があるので、コスト及び労力が増大してしまう。
【0006】
そこで、本開示は、コスト及び労力を抑えて高壁に対して集中荷重試験を行うことが可能な壁の強度試験方法及び強度試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様の壁の強度試験方法は、幅方向よりも高さ方向に長い壁の試験体の前記幅方向の一側を下方とし、他側を上方とした横倒し状態で、前記試験体の前記高さ方向の両端部を支持して、前記試験体を前記横倒し状態に保持する第1ステップと、前記横倒し状態の前記試験体の前記高さ方向の所定位置に対して前記試験体の一面側から荷重を加える第2ステップと、を含む。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の壁の強度試験方法であって、前記第1ステップにおいて、前記試験体の前記幅方向の前記一側の一端縁部を基台から上方へ浮かせた状態に保持する。
【0009】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様の壁の強度試験方法であって、前記第1ステップにおいて、前記基台に対して前記試験体と交叉する方向に移動可能な支持部材を、前記試験体の前記一端縁部と前記基台との間に配置し、前記支持部材によって前記試験体を下方から支持する。
【0010】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様から上記第3の態様のいずれかの壁の強度試験方法であって、前記第2ステップにおいて前記試験体に対して荷重を加える領域は、前記試験体の前記所定位置で前記幅方向に延びる領域である。
【0011】
本発明の第5の態様は、壁の強度試験装置であって、幅方向よりも高さ方向に長い壁の試験体の前記幅方向の一側を下方とし、他側を上方とした横倒し状態で、前記試験体の前記高さ方向の両端部を支持して、前記試験体を起立した状態に保持する1対の保持部材と、前記1対の保持部材に支持された前記試験体に対して、前記試験体と交叉する方向に前記試験体の一面側から荷重を加える加圧部材と、を備える。
【0012】
本発明の第6の態様は、上記第5の態様の壁の強度試験装置であって、前記試験体を下方から支持する支持部材を備え、前記1対の保持部材は、前記試験体の前記幅方向の前記一側の一端縁部を基台から上方へ浮かせた状態に保持し、前記支持部材は、前記試験体の前記一端縁部と前記基台との間に配置され、前記試験体を支持した状態で前記基台に対して前記試験体と交叉する方向に移動可能である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、コスト及び労力を抑えて高壁に対して集中荷重試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】壁の試験体の説明図であって、(a)は骨組みを正面から視た状態を、(b)は骨組みを側面から視た状態を、(c)は下張りをした状態を、(d)は上張りをした状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、UPは上方を、Xは高壁の高さ方向を、Yは高壁の幅方向を、Zは高壁の厚さ方向をそれぞれ示す。また、以下の説明において、上下方向は試験を行う場所における上下方向を意味し、高壁の高さ方向は、高壁を建築物に設置した際に上下方向となる方向を意味し、高壁の幅方向は、高壁を建築物に設置した際に上下方向及び高壁の厚さ方向の双方と交叉する方向を意味する。
【0016】
【0017】
本発明の一実施形態に係る強度試験方法及び強度試験装置は、壁の強度を検証するための方法及び装置であって、例えば、
図1に示すように、床から天井までの高さが住宅等の通常の建築物よりも高い倉庫等の建築物に設置される高壁(壁)1の強度を検証するために使用される。高壁1は、高い耐荷重性を要する倉庫等の間仕切壁として機能する。すなわち、本実施形態における壁1は、倉庫業法で規定された強度を満たし、2500N/m
2以上の荷重に耐えることができる高壁1である。
【0018】
高壁1は、上下のランナ2a,2bと、上下のランナ2a,2b間で起立する複数のスタッド3と、スタッド3に取り付けられる複数のスペーサ4と、複数の振れ止め部材5と、両面二層張りのボード6a,6bとを備える。
【0019】
上下のランナ2a,2bは、軽鉄(軽量鉄骨材)を断面C状の溝型に形成した長尺の部材であって、建築物の上下の躯体Sa,Sb(例えば、天井スラブSa及び床スラブSb)に固定されて、高壁1の幅方向(
図1におけるY方向)に延びる。上下のランナ2a,2bは、高壁1の上下の端部で高壁1の幅方向(以下、単に「幅方向」という。)に延び、高壁1の横方向(幅方向)の骨組みとして機能する。上側のランナ2aは、溝を下方へ開放した状態で、上側の躯体Saの下面に固定されて、上側の躯体Saの下面に沿って幅方向に延びる。下側のランナ2bは、溝を上方へ開放した状態で、下側の躯体Sbの上面に固定されて、下側の躯体Sbの上面に沿って幅方向に延びる。本実施形態では、上下のランナ2a,2bは、互いに略平行に配置される。
【0020】
スタッド3は、軽鉄(軽量鉄骨材)を断面C状の溝型に形成した上下方向に長尺の部材であって、上下のランナ2a,2b間で上下方向(
図1におけるX方向)に延び、高壁1の縦方向(上下方向)の骨組みとして機能する。複数のスタッド3の上端部は、上側のランナ2aの溝に挿入され、上側のランナ2aに固定される。複数のスタッド3の下端部は、下側のランナ2bの溝に挿入され、下側のランナ2bに固定される。本実施形態では、ウェブ同士を接触させて背中合わせにした2本のスタッド3を1組として使用される。
【0021】
スペーサ4は、スタッド3の溝の開放側の端部間のスペースを確保するための金具であって、スタッド3の溝の開放側の端部に上下方向に互いに離間した状態で取り付けられ、スタッド3を補強する。また、スペーサ4は、振れ止め部材5をスタッド3側へ取り付ける機能を有する。スペーサ4は、スタッド3に対して上下に所定の間隔(例えば600mm間隔)で取り付けられる。
【0022】
振れ止め部材5は、複数のスタッド3を連結してスタッド3を振れ止めする部材であって、スタッド3のウェブに設けられる開口(図示省略)を挿通した状態で、スタッド3に対してスペーサ4によって取り付けられる。振れ止め部材5は、スタッド3に対して上下に所定の間隔(例えば1200mm間隔)で取り付けられる。
【0023】
ボード6a,6bは、例えば、矩形状の石膏ボードであって、上下のランナ2a,2b及び複数のスタッド3に対して固定される。本実施形態では、上下のランナ2a,2b及び複数のスタッド3に対してビス(図示省略)によって固定される下張りボード6aと、下張りボード6aに対してステープル及び接着剤等によって固定される上張りボード6bとを有し、高壁1の両面に設けられる。下張りボード6aは、上下方向と交叉する方向(
図1中のY方向)に長尺となる状態で、上下のランナ2a,2b及び複数のスタッド3に対して固定される。上張りボード6bは、上下方向(
図1中のX方向)に長尺となる状態で、下張りボード6aに対して固定される。
【0024】
次に、本実施形態に係る強度試験方法及び強度試験装置の試験対象となる壁の試験体1A(以下、単に「試験体1A」という場合がある。)について説明する。
【0025】
図2は、壁の試験体の説明図であって、(a)は骨組みを正面から視た状態を、(b)は骨組みを側面から視た状態を、(c)は下張りをした状態を、(d)は上張りをした状態をそれぞれ示す。
【0026】
図2に示すように、高壁1の強度を検証する場合、先ず壁の試験体1Aを作成する。試験体1Aは、本実施形態に係る強度試験方法及び強度試験装置の試験対象となるものであって、幅方向(Y方向)よりも高さ方向(X方向)に長い試験体1Aである。本実施形態の試験体1Aは、上下のランナ2a,2bと、上下のランナ2a,2b間で起立する4組(2つで1組)のスタッド3と、スタッド3に取り付けられる複数のスペーサ4と、5本の振れ止め部材5と、両面二層張りのボード6a,6bとを備える。試験体1Aは、上下のランナ2a,2b、複数のスタッド3、複数のスペーサ4、及び複数の振れ止め部材5によって構成される骨組み(
図2(a)(b)参照)に対して、下張りボード6aを固定し(
図2(c)参照)、その後、上張りボード6bを固定することによって(
図2(d)参照)形成される。
【0027】
本実施形態では、試験体1Aの寸法を、高さ(X方向の長さ)7000mm~8000mm、幅(Y方向の長さ)910mm、厚さ(Z方向の長さ)150mmとしている。
【0028】
次に、本発明の一実施形態に係る強度試験装置10について説明する。
【0029】
図3は、強度試験装置の正面図である。
図4は、強度試験装置の斜視図である。
図5は、
図3のV-V矢視断面図である。
図6は、試験体を押圧する箇所の説明図である。
【0030】
図3~
図6に示すように、本実施形態に係る強度試験装置10は、試験体1Aの高さ方向(X方向)の両端部を支持する1対の保持部材11a,11bと、試験体1Aを下方から支持する1対の支持部材12a,12bと、試験体1Aに対して荷重を加えることが可能な加圧部材13と、を備える。
【0031】
1対の保持部材11a,11bは、試験体1Aの幅方向(Y方向)の一側を下方とし、他側を上方とした横倒し状態の試験体1Aの高さ方向の両端部を支持して、試験体1Aを横倒しで起立した状態(以下、単に「横倒し状態」という。)に保持する。すなわち、横倒し状態では、高壁1(試験体1A)の高さ方向(X方向)は、上下方向と交叉する方向(例えば水平方向)となり、高壁1(試験体1A)の幅方向(Y方向)は、上下方向となる。なお、以下の説明では、分かり易くするために、試験体1Aの高さ方向(X方向)を「長手方向」といい、試験体1Aの幅方向(Y方向)を「短手方向」という場合がある。
【0032】
本実施形態の1対の保持部材11a,11bは、床(基台)30に固定される台座部15a,15bと、台座部15a,15bに固定されるランナ支持部16a,16bとを有し、横倒し状態の高壁1の高さ方向の両側に配置される。1対のランナ支持部16a,16bは、上下方向に延びて互いに対向する対向面17a,17bを有する。1対のランナ支持部16a,16bの対向面17a,17bには、試験体1Aのランナ2a,2bが上下方向に延びる状態で固定される。1対の保持部材11a,11bは、試験体1Aの下端縁部(一端縁部)18を床30から上方へ浮かせた状態に保持する。なお、本実施形態では、床30を基台としたが、これに限定されるものではなく、例えば、床30とは別体に形成されて床30に載置される基台であってもよい。
【0033】
1対の支持部材12a,12bは、試験体1Aの下端縁部18と床30との間に配置され、試験体1Aを下方から支持する。一方の支持部材12aは、加圧部材13よりも長手方向の一方側に位置し、加圧部材13と一方の保持部材11aとの間に配置される。他方の支持部材12bは、加圧部材13よりも長手方向の他方側に位置し、加圧部材13と他方の保持部材11bとの間に配置される。すなわち、支持部材12a,12bは、試験体1Aの高さ方向において、加圧部材13と1対の保持部材11a,11bとの間に設けられる。
【0034】
1対の支持部材12a,12bは、試験体1Aを支持した状態で床30に対して試験体1Aの厚さ方向(Z方向(試験体と交叉する方向))に移動可能である。本実施形態の1対の支持部材12a,12bは、試験体1Aを支持する支持本体19と、支持本体19の下方に固定される複数のキャスター20とをそれぞれ有する。この複数のキャスター20によって、1対の支持部材12a,12bは、試験体1Aを支持した状態で床30に対して試験体1Aの厚さ方向に移動可能となっている。なお、本実施形態では、複数のキャスター20を設けることによって、1対の支持部材12a,12bを床30に対して試験体1Aの厚さ方向に移動可能としたが、これに限定されるものではない。例えば、基台側にレール等を設け、当該レールに1対の支持部材12a,12bをスライド移動可能に取り付けてもよい。
【0035】
加圧部材13は、試験体1Aの一面側に配置され、1対の保持部材11a,11bに支持された横倒し状態の試験体1Aに対して、試験体1Aの一面側から厚さ方向に荷重を加える。本実施形態の加圧部材13は、試験体1Aの長手方向の略中央に配置され、試験体1Aの長手方向の略中央に荷重を入力する。
【0036】
加圧部材13は、架台21と、架台21に支持されるアクチュエータ22と、アクチュエータ22によって押し出されて試験体1Aに圧力(荷重)を加える加圧部23と、試験体1Aに対して加えている荷重を検出する荷重検出部24とを有する。
【0037】
架台21は、試験体1Aの一面から離間した位置に配置されて、床30に対して固定される。架台21は、試験体1Aの一面に対向する対向面21aを有する。
【0038】
アクチュエータ22は、例えば、伸縮可能な油圧シリンダであって、架台21の対向面21aから試験体1Aの一面側へ延びる状態で架台21に支持される。なお、アクチュエータ22は、油圧シリンダに限定されるものではなく、架台21側から試験体1Aへ向かって加圧部23を移動させることが可能なアクチュエータであればよい。
【0039】
加圧部23は、試験体1Aの一面側を押圧する部材であって、アクチュエータ22の先端部に後述する荷重検出部24を介して固定される。加圧部23は、試験体1Aの一面に対向する当接面23aを有する。加圧部23の当接面23aは、加圧部23がアクチュエータ22によって試験体1A側(
図6に白抜き矢印で示す方向)へ移動すると、試験体1Aの一面に当接する(
図4参照)。本実施形態の加圧部23は、上下方向に延びる棒状に形成される。加圧部23の下端部は、複数のキャスター25を介して床30に支持される。これにより、加圧部23は、床30に対して試験体1Aの厚さ方向に移動可能な状態で、床30に支持される。加圧部23は、アクチュエータ22に押圧されることによって、試験体1Aに圧力(荷重)を加える。なお、加圧部23の形状は、上記に限定されるものではなく、試験の内容によって他の形状の加圧部23に変更することが可能である。
【0040】
荷重検出部24は、例えばロードセルであって、アクチュエータ22と加圧部23との間に配置され、アクチュエータ22及び加圧部23に対して固定される。荷重検出部24は、加圧部23が試験体1Aに圧力を加えた際に、試験体1Aに対して加えている荷重を検出する。荷重検出部24によって検出された荷重は、例えば、外部装置26のモニター等に表示出力されてもよいし、また紙に印刷出力されてもよい。なお、荷重検出部24は、試験体1Aに対して加えている荷重を検出可能であればよく、荷重検出部24の配置位置は、アクチュエータ22と加圧部23との間に限定されものではない。
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係る強度試験方法について説明する。
【0042】
本実施形態に係る強度試験方法では、強度試験装置10を使用して高壁1の試験体1Aの強度試験を行い、これにより、高壁1の強度を検証する。
【0043】
高壁1の試験体1Aの強度試験を行う場合、先ず、強度試験装置10の1対の保持部材11a,11bによって、横倒し状態の試験体1Aの長手方向(高さ方向)の両端部を支持して、試験体1Aを横倒し状態に保持する(第1ステップ)。すなわち、第1ステップでは、横倒し状態の試験体1Aの長手方向(高さ方向)の両端部を支持して、試験体1Aを横倒し状態に保持する。なお、第1ステップでは、予め作成した試験体1Aを横倒しにして、強度試験装置10の1対の保持部材11a,11bに固定してもよいし、或いは、ランナ支持部16a,16bにランナ2a,2bを固定し、このランナ2a,2bに対して、複数のスタッド3、複数のスペーサ4、複数の振れ止め部材5、及び両面二層張りのボード6a,6bを取り付けて、試験体1Aを作成してもよい。
【0044】
第1ステップでは、試験体1Aの短手方向(幅方向)の下端縁部18を、床30から上方へ浮かせた状態に保持することが好ましい。また、この場合、支持部材12a,12bのうちの少なくとも一方の支持部材を、試験体1Aの下端縁部18と床30との間に配置し、支持部材によって試験体1Aを下方から支持することが好ましい。また、試験体1Aのうち、加圧部材13によって押圧される箇所(本実施形態では、長手方向の中央部)の長手方向の両側に支持部材12a,12bを配置することが更に好ましい。
【0045】
次に、強度試験装置10の加圧部材13のアクチュエータ22を作動して、加圧部23によって試験体1Aの一面を厚さ方向に押圧する(第2ステップ)。すなわち、第2ステップでは、横倒し状態の試験体1Aの長手方向(高さ方向)の所定位置に対して試験体1Aの一面側から荷重を加える。本実施形態では、加圧部23は、上下方向に延びる棒状に形成されるので、試験体1Aに対して荷重を加える領域は、試験体1Aの長手方向の上記所定位置で短手(幅方向)に延びる領域となる。なお、本実施形態では、加圧部材13の加圧部23を、上下方向に延びる棒状に形成し、加圧部23によって試験体1Aの短手(幅方向)に延びる領域(線状の領域)に荷重を加えたが、これに限定されるものではない。例えば、加圧部材13の加圧部23を円形状或いは矩形状に形成し、加圧部23によって試験体1Aの円形状或いは矩形状の所定のポイントに荷重を加えてもよい。
【0046】
本実施形態に係る強度試験では、最大耐力を検証するために、試験体1Aが損傷(例えば座屈)するまで、加圧部材13によって加圧する。試験体1Aの損傷前の加圧している最中には、荷重検出部24によって検出される荷重と試験体1Aの変位量とを測定することによって、荷重に対する試験体1Aの変位量を測定するとともに、目視によって試験体1Aの損傷を観察する。試験体1Aが損傷し、試験体1Aへの加圧を停止した後には、損傷時の荷重及び変位量を記録するとともに、目視によって試験体1Aの損傷箇所及び損傷具合を観察する。なお、試験体1Aの変位量は、試験体1Aの長手方向の中央部分の他に、試験体1Aの上下端部(幅方向の両端部)等の任意の箇所を測定してもよい。
【0047】
高壁1の強度は、上記強度試験で測定された試験体1Aの損傷時の荷重(入力荷重)や、所定の荷重の入力時の変位量等に基づいて検証される。例えば、高壁1の耐外力性能試験では、人がもたれた際の力である150kgf/mの水平力を加えた際の高壁1の撓み量(変位量)が高壁1の高さ(高さ方向の長さ)の200分の1以下である場合に、高壁1は耐面外力に対する強度を満たしていると結論付けてもよい。なお、強度試験によって検証する性能は、上記に例示した性能に限定されるものではない。
【0048】
上記のように構成された強度試験装置10及び強度試験方法では、1対の保持部材11a,11bによって試験体1Aの高さ方向の両端部を支持して、試験体1Aの幅方向(Y方向)の一側を下方とし、他側を上方とした横倒し状態で起立した状態に保持する。このように、試験体1Aを起立させているので、試験時の試験体1Aの自重による等分布荷重の影響を抑えることができる。このため、試験体1Aを上下方向と交叉する状態で試験を行う場合に比べて、集中荷重を加えた際の正確な検証を行うことができる。
【0049】
また、試験体1Aを横倒し状態にしているので、通常の縦置き状態(高さ方向が上下方向となるように試験体1Aを立てている状態)にしている場合とは異なり、試験体1Aの重心を低い位置にすることができる。このため、試験体1Aを縦置き状態に保持する場合とは異なり、試験体1Aが倒れ難く、試験体1Aの倒れを防止するための構成を簡素化することができるので、コストを抑えることができ、試験体1Aを容易に保持することができる。
【0050】
また、試験体1Aを横倒し状態にしているので、試験を行う建屋自体の天井高が低くても試験を行うことができる。
【0051】
また、試験体1Aを横倒し状態にしているので、試験体1Aを縦置き状態に保持する場合とは異なり、試験体1Aに荷重を加える装置(本実施形態では、加圧部材13)を、高い位置まで持ち上げなくてもよい。このため、試験を行う際の労力を抑えることができる。
【0052】
また、試験体1Aを横倒し状態にしているので、試験体1Aに対して荷重を加える位置を、高さ方向(長手方向)に容易に変更することができる。このため、様々な高さの高壁1の強度の検証を容易に行うことができる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、コスト及び労力を抑えて高壁1に対して集中荷重試験を行うことができる。
【0054】
また、1対の保持部材11a,11bで、横倒し状態の試験体1Aの下端縁部18を床30から浮かせた状態に保持することによって、試験体1Aと床30との摩擦の影響を抑えることができる。
【0055】
また、横倒し状態の試験体1Aの下端縁部18を床30から浮かせた場合、試験体1Aの下端縁部18を支持部材12a,12bで下方から支持することによって、横倒し状態の試験体1Aの下方への撓みを抑えることができるので、集中荷重を加えた際の正確な検証を行うことができる。
【0056】
また、支持部材12a,12bは、床30に対して試験体1Aと交叉する方向(厚さ方向)移動可能であるので、試験体1Aの変形時に、試験体1Aを支持した状態で支持部材12a,12bを試験体1Aに追従させることができる。このため、横倒し状態の試験体1Aの下方への撓みを抑えるとともに、支持部材12a,12bと床30との摩擦の影響を抑えることができる。
【0057】
また、加圧部材13の加圧部23は、上下方向に延びる棒状に形成されるので、試験体1Aに対して荷重を加える領域は、試験体1Aの長手方向の上記所定位置で短手(幅方向)に延びる領域となる。これにより、試験体1Aの所定の高さ位置に荷重を入力する線荷重の集中荷重試験を行うことができる。また、加圧部23の下端部は、複数のキャスター25を介して床30に支持されるので、アクチュエータ22に掛かる加圧部23の重さを抑えることができるとともに、加圧部23と床30との摩擦の影響を抑えることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、試験体1Aのうち加圧部材13よりも長手方向の両側に支持部材12a,12bを設けたが、これに限定されるものではない。例えば、加圧部材13を、試験体1Aの長手方向の中央よりも一方側(例えば保持部材11a側など)に配置する場合には、支持部材を試験体1Aのうち加圧部材13よりも長手方向の他方側のみに設けてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、強度試験装置10の1対の保持部材11a,11b及び加圧部材13を、床30に固定したが、これに限定されるものではなく、例えば、強度試験装置10に専用の基台を設け、この基台に1対の保持部材11a,11b及び加圧部材13を固定的に設けてもよい。この場合、1対の支持部材12a,12bを、強度試験装置10専用の基台に対して試験体1Aと交叉する方向に移動可能に設けてもよい。
【0060】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1:高壁(壁)
1A:試験体
10:強度試験装置
11a,11b:1対の保持部材
12a,12b:支持部材
13:加圧部材
18:試験体の下端縁部(一端縁部)
30:床(基台)