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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039997
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】距離測定装置及び、距離測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240315BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G01S7/497
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144784
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄司 武
(72)【発明者】
【氏名】馬場 洋一
(72)【発明者】
【氏名】吉武 修
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA15
2F112CA12
2F112DA05
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA25
2F112EA05
5J084AA05
5J084AA10
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA31
5J084BA49
5J084BB02
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA23
5J084DA08
5J084EA17
(57)【要約】
【課題】ウィンドウ部に汚損が付着している場合に、当該汚損を測定対象の物体として測定し、本来測定したい物体の距離が測定できなくなることを防止すること及び、直近に人がいると判断し、近くの製造装置等を停止してしまうことを防止することを可能とする、TOF方式を用いた距離測定装置及び、距離測定方法を提供する。
【解決手段】上記の距離測定装置は、光源と、受光強度に応じた信号を出力するための受光部と、検出光の出射時間と、反射光の受光時間とに基づいて、対象物までの距離を算出する距離算出部と、光源と対象物の間に配置され、検出光を透過可能なウィンドウ部と、を備え、距離が所定の第1閾値以下であり、かつ、受光強度が所定の第2閾値以下であり、かつ、受光強度が所定の第2閾値より値が小さい所定の第3閾値より大きい場合に、反射光はウィンドウ部の汚損によるものであると判定し、警告を出力する警告部を備えることを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状の検出光を出射する光源と、
前記検出光の対象物による反射光を受光し、受光強度に応じた信号を出力するための受光部と、
前記検出光の出射時間と、前記受光部が出力する信号から得られる前記反射光の受光時間とに基づいて、前記対象物までの距離を算出する距離算出部と、
前記光源と前記対象物の間に配置され、前記検出光を透過可能なウィンドウ部と、を備えた距離測定装置であって、
前記距離算出部が算出した距離が所定の第1閾値以下であり、かつ、前記受光部における前記受光強度が所定の第2閾値以下であり、かつ、前記受光部における前記受光強度が当該所定の第2閾値より値が小さい所定の第3閾値より大きい場合に、前記反射光は前記ウィンドウ部の汚損によるものであると判定し、警告を出力する警告部を備えることを特徴とする、距離測定装置。
【請求項2】
前記所定の第3閾値は、前記所定の第1閾値以下の距離に対象物を配置した場合の前記受光部における最低レベルの受光強度以下であり、かつ、前記ウィンドウ部に汚損が無い場合の前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度以上であることを特徴とする、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記所定の第3閾値は、前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度と、前記受光強度の検出精度との関係に基づいて許容できる最大の、前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度以下であり、かつ、前記ウィンドウ部に汚損が無い場合の前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度以上であることを特徴とする、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記光源は、前記光源の周方向に沿って前記検出光を出射し、
前記警告部は、前記光源が所定の方向に出射した前記検出光の前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度が、前記所定の第3閾値より大きくかつ前記所定の第2閾値未満である場合に、前記所定の方向に対応して点灯する表示灯を含むことを特徴とする、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項5】
パルス状の検出光を出射する光源と、
前記検出光の対象物による反射光を受光し、受光強度に応じた信号を出力するための受光部と、
前記検出光の出射時間と、前記受光部が出力する信号から得られる前記反射光の受光時間とに基づいて、前記対象物までの距離を算出する距離算出部と、
前記光源と前記対象物の間に配置され、前記検出光を透過可能なウィンドウ部と、を備えた距離測定装置における距離測定方法であって、
前記距離算出部が算出した距離を、所定の第1閾値と比較する第1の比較工程と、
前記第1の比較工程において前記距離算出部が算出した距離が前記所定の第1閾値以下である場合に、前記受光部における前記受光強度を、所定の第2閾値と比較する第2の比較工程と、
前記第2の比較工程において前記受光部における前記受光強度が前記所定の第2閾値以下である場合は、前記受光強度を、前記所定の第2閾値より値が小さい所定の第3閾値と比較する第3の比較工程と、
前記第3の比較工程において前記受光強度が前記所定の第3閾値より大きい場合に、前記反射光は前記ウィンドウ部の汚損によるものであると判定し、警告を出力する警告工程と、を有することを特徴とする、距離測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TOF(Time Of Flight)方式を用いて対象物までの距離を測定する距離測定装置及び、距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送信波の照射から反射波の受信までの時間を計測する計測手段と、受信信号から反射波の強度を検出する強度検出手段と、第1の所定数以上の送信波に関して、計測手段の計測時間が所定計測時間より短く、かつ強度検出手段によって検出される反射波の強度が所定強度以上であることを条件として、レーダ手段に汚れが付着していると判定する判定手段とを備える車両用物体認識装置が公知である。当該車両用物体認識装置によって、レーダ手段の表面に、送信波が内部を伝播したり、送信波を散乱させたりする汚れが付着した時であっても、その汚れの付着を検出することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記のような汚れ(以下、「汚損」という)の付着を検出することが可能であったとしても、例えば当該汚損に送信波を照射した際に生じる当該汚損の反射波の強度が所定の閾値を超えた場合に、当該汚損が物体として誤認識される虞がある。例えば、レーザー光源や回転機構、受光素子等が格納されたケースの窓部(ウィンドウ部)を透過させてレーザー光を投光し、反射光を受光することによって、ある対象物までの距離を測定する、走査型の距離測定装置において、このウィンドウ部に上記のような汚損が付着しており、当該汚損の反射波の強度が所定の閾値を超えた場合、物体が距離測定装置の近くにあるものとして当該汚損までの距離を計測し、本来計測したい物体の距離が計測できなくなる虞がある。また、工場の製造装置の周辺に距離測定装置を設置し、製造装置に人が近づいた場合に製造装置を停止し、人の安全を確保することが知られている。そのような使い方をすると、当該汚損に起因して、距離測定装置が直近に人がいると判断し、距離測定装置の近くの製造装置等を停止してしまい、生産性が低下する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-010094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、ウィンドウ部に汚損が付着している場合に、当該汚損を測定対象の物体として測定し、本来測定したい物体の距離が測定できなくなることを防止すること及び、直近に人がいると判断し、近くの製造装置等を停止してしまうことを防止することを可能とする、TOF方式を用いた距離測定装置及び、距離測定方法を提供することを最終的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本開示は、
パルス状の検出光を出射する光源と、
前記検出光の対象物による反射光を受光し、受光強度に応じた信号を出力するための受光部と、
前記検出光の出射時間と、前記受光部が出力する信号から得られる前記反射光の受光時間とに基づいて、前記対象物までの距離を算出する距離算出部と、
前記光源と前記対象物の間に配置され、前記検出光を透過可能なウィンドウ部と、を備
えた距離測定装置であって、
前記距離算出部が算出した距離が所定の第1閾値以下であり、かつ、前記受光部における前記受光強度が所定の第2閾値以下であり、かつ、前記受光部における前記受光強度が当該所定の第2閾値より値が小さい所定の第3閾値より大きい場合に、前記反射光は前記ウィンドウ部の汚損によるものであると判定し、警告を出力する警告部を備えることを特徴とする、距離測定装置を含む。
【0007】
受光部における受光強度が所定の第2閾値以下であり、かつ、所定の第3閾値より大きい場合に、警告部が警告を出力することによって、本来測定したい対象物の距離が測定できなくなることを防止することができる。例えばウィンドウ部に汚損が付着しており、当該汚損が光源と対象物の間に位置し、光源が出射する検出光が当該汚損に当たる場合、当該汚損が対象物として誤認識される虞がある。所定の第3閾値を設けることによって、このような誤認識を防止することができる。警告部が警告を出力することによって、ユーザはウィンドウ部に当該汚損が付着していることを把握することができ、当該汚損を除去するといった対策を取ることができる。
【0008】
また、本開示においては、前記所定の第3閾値は、前記所定の第1閾値以下の距離に対象物を配置した場合の前記受光部における最低レベルの受光強度以下であり、かつ、前記ウィンドウ部に汚損が無い場合の前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度以上であることを特徴とする、距離測定装置としてもよい。これによれば、所定の第3閾値を設定することが容易であり、所定の第3閾値を設定することによって、距離算出部が算出した距離が所定の第1閾値以下である場合の対象物が汚損として誤って判断されることを防止することができる。
【0009】
また、本開示においては、前記所定の第3閾値は、前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度と、前記受光強度の検出精度との関係に基づいて許容できる最大の、前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度以下であり、かつ、前記ウィンドウ部に汚損が無い場合の前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度以上であることを特徴とする、距離測定装置としてもよい。これによれば、所定の第3閾値を設定することが容易であり、所定の第3閾値を設定することによって、対象物の距離が所定の第1閾値以下である場合の対象物が汚損として誤って判断されることを防止することができる。
【0010】
また、本開示においては、前記光源は、前記光源の周方向に沿って前記検出光を出射し、前記警告部は、前記光源が所定の方向に出射した前記検出光の前記ウィンドウ部による前記反射光の前記受光強度が、前記所定の第3閾値より大きくかつ前記所定の第2閾値未満である場合に、前記所定の方向に対応して点灯する表示灯を含むことを特徴とする、距離測定装置としてもよい。これによれば、検出光を出射した方向の先にあるウィンドウ部上の箇所に汚損が付着していると把握することができる。
【0011】
また、本開示は、
パルス状の検出光を出射する光源と、
前記検出光の対象物による反射光を受光し、受光強度に応じた信号を出力するための受光部と、
前記検出光の出射時間と、前記受光部が出力する信号から得られる前記反射光の受光時間とに基づいて、前記対象物までの距離を算出する距離算出部と、
前記光源と前記対象物の間に配置され、前記検出光を透過可能なウィンドウ部と、を備えた距離測定装置における距離測定方法であって、
前記距離算出部が算出した距離を、所定の第1閾値と比較する第1の比較工程と、
前記第1の比較工程において前記距離算出部が算出した距離が前記所定の第1閾値以下である場合に、前記受光部における前記受光強度を、所定の第2閾値と比較する第2の比
較工程と、
前記第2の比較工程において前記受光部における前記受光強度が前記所定の第2閾値以下である場合は、前記受光強度を、前記所定の第2閾値より値が小さい所定の第3閾値と比較する第3の比較工程と、
前記第3の比較工程において前記受光強度が前記所定の第3閾値より大きい場合に、前記反射光は前記ウィンドウ部の汚損によるものであると判定し、警告を出力する警告工程と、を有することを特徴とする、距離測定方法を含んでもよい。
【0012】
これによれば、例えばウィンドウ部に汚損が付着している場合に、当該汚損が対象物として誤認識されることを防止することができる。
【0013】
なお、上記の課題を解決するための手段は、可能な限り互いに組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、TOF方式を用いた距離測定装置及び、距離測定方法において、本来測定したい物体の距離が測定できなくなることを防止すること及び、近くの製造装置等を停止し、生産性が低下することを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1A及びBは、実施例に係るレーザースキャナの概略構成図である。
図2図2は、実施例に係るレーザースキャナの内部構造の概略図である。
図3図3A及びBは、実施例に係るウィンドウ反射光及び対象物による反射光の信号強度と距離との関係の類型を示す図である。図3Aは、ウィンドウ反射光による出力信号の強度が低く、且つ、対象物までの距離が充分に遠い場合を示している。図3Bは、ウィンドウ反射光による出力信号の強度がある程度高く、且つ、対象物までの距離が充分に遠い場合を示している。
図4図4Aは、実施例に係るウィンドウ反射光及び対象物による反射光の信号強度と距離との関係の類型を示す図である。図4Aは、ウィンドウ反射光による出力信号の強度がある程度高く、且つ、対象物までの距離が近い場合を示している。図4Bは、実施例に係るウィンドウ反射光の信号強度と距離との関係の類型を示す図である。図4Bは、ウィンドウ反射光による出力信号の強度が非常に高い場合を示している。
図5図5は、実施例に係る制御部の詳細な機能ブロック図である。
図6図6は、実施例に係る警告部と連動して用いられる複数の表示灯について説明するための概略図である。
図7図7は、実施例に係るレーザースキャナを用いた距離測定方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔適用例〕
以下に本開示の適用例の概要について一部の図面を用いて説明する。図1A及びBは、本開示が適用される対象の一例であるレーザースキャナ1(すなわち、本開示における距離測定装置に相当する)の概略構成図である。図1Aはレーザースキャナ1の正面図、図1Bは平面図である。本適用例におけるレーザースキャナ1は、その近傍に人などの障害物(以下、「対象物」ともいう。)が近づいたことを検出し、近づくと危険な製造装置を停止する等の安全制御のための装置である。レーザースキャナ1の投受光部3の側面はウィンドウ部を構成し、検出光および、対象物による反射光を透過可能な材質で形成されている。投受光部3からは、走査面3b上に投受光部3の径方向外側に向かってパルス状の検出光が出射される。この検出光は投受光部3の周方向に回転しながら、広い角度範囲に出射される。この回転する検出光が対象物に照射された場合に、その反射光を検出するこ
とで、対象物の存在を検出し、レーザースキャナ1からの距離を測定する。
【0017】
図2に示すように、レーザースキャナ1の内部には、検出光を出射する光源としてのレーザー光源33とミラー32が設けられている。レーザー光源33及びミラー32にはシャフト31を介してステッピングモータ等の回転アクチュエータ20が結合されている。この回転アクチュエータ20は、制御部22からの指令信号に基づいて回転する。この制御部22は、演算部、記憶部、通信部(いずれも不図示)などを備える通常のPCと同等または一部のハード構成を有し、センサユニット2内に備えられていてもよいし、外部PCを用いて構成されていてもよい。回転アクチュエータ20の回転に伴って、レーザー光源33及びミラー32は回転軸AX1の周りに回転する。その際、レーザー光源33が間欠的に発光することで、パルス状の検出光L1を走査面3b上に沿って回転させつつ照射する。
【0018】
対象物obに照射され反射された反射光は、再びウィンドウ部3aを通過して投受光部3の内部に入射し、ミラー32に反射されて光学系34を通過した後、受光素子35に受光される。レーザー光源33が検出光L1を照射してから反射光L3が検出されるまでの飛行時間(TOF:Time Of Flight)より、対象物obまでの距離を演算する。
【0019】
レーザー光源33からパルス状の検出光L1を照射した際に、その一部は、ウィンドウ部3aにおいて反射されて、ウィンドウ反射光L2となって受光素子35に検出される。そして、このウィンドウ反射光L2が検出されることにより、対象物obまでの距離測定の精度が低下する場合がある。
【0020】
ここで、図3A及びBと図4Aに、本開示が適用可能なウィンドウ反射光L2及び対象物obによる反射光L3の信号強度と距離との関係の類型を示す。なお、図3A及びBと図4A及びBにおいては、横軸は時間でなく、レーザースキャナ1の回転軸AX1からの距離としている。本開示において、例えば対象物obまでの距離は、パルス状の検出光L1の投光から反射光L3の受光までの飛行時間の1/2に光速を乗じることで算出されるので、時間を距離に変換しても同様の説明が可能である。
【0021】
図3Aは、ウィンドウ反射光L2による出力信号の強度が低く、且つ、対象物obまでの距離が充分に遠い場合を示している。この場合には、ウィンドウ反射光L2は、そもそも出力信号の強度が低いために検出されず、且つ、対象物obによる反射光L3による出力信号にも影響を及ぼさないので、ウィンドウ反射光L2は無視される。よって、対象物obによる反射光L3に基づいて、対象物obまでの距離は正確に算出される。図3Bは、ウィンドウ反射光L2による出力信号の強度がある程度高く、且つ、対象物obまでの距離が充分に遠い場合を示している。この場合には、ウィンドウ反射光L2は受光素子35によって検出されるが、ウィンドウ反射光L2による出力信号と対象物obによる反射光L3による出力信号とが充分に離れているため、ウィンドウ反射光L2による出力信号は、対象物obによる反射光L3による出力信号に影響を及ぼさない。よって、この場合も、対象物obによる反射光L3に基づいて、対象物obまでの距離は正確に算出される。
【0022】
図4Aは、ウィンドウ反射光L2による出力信号の強度がある程度高く、且つ、対象物obまでの距離が近い場合を示している。この場合には、ウィンドウ反射光L2による出力信号が、対象物obによる反射光L3による出力信号と一部重なるため、対象物obによる反射光L3の出力信号のピーク位置の検出に影響を及ぼす。よって、この場合は、対象物obによる反射光L3に基づいて、対象物obまでの距離が算出されるが、ウィンドウ反射光L2の影響も考慮されるため、図3A及びBに示す場合と比較して、対象物ob
までの距離の算出精度は低下する。
【0023】
図4Bは、本開示が適用可能なウィンドウ反射光L2の信号強度と距離との関係の類型を示す。ここで、図4Bは、ウィンドウ反射光L2による出力信号の強度が非常に高い場合を示している。そのため、図3A及びBと図4Aに示す場合と異なり、対象物obによる反射光L3の信号強度と距離との関係については考慮しない。ウィンドウ反射光L2による出力信号の強度が非常に高い場合の一例として、ウィンドウ部3aに汚損が付着しており、レーザー光源33から出射された検出光が汚損の付着した箇所をほとんど透過せず、受光素子35が汚損による反射光を受光する場合が挙げられる。このことに起因して、汚損による反射光が対象物obによる反射光L3として誤認識され、レーザースキャナ1の付近に対象物obがあると誤って判断される虞がある。
【0024】
本適用例においては、以下の態様によって、汚損による反射光が対象物obによる反射光L3として誤認識され、レーザースキャナ1の付近に対象物obがあると誤って判断されることや、この誤った判断によって近くの製造装置等を停止してしまい、生産性が低下することを防止することが可能となる。すなわち、受光素子35が受光する対象物obによる反射光L3の強度に対して所定の第2閾値を設け、対象物obによる反射光L3の強度が所定の第2閾値以下である場合には、受光素子35が受光する反射光をウィンドウ反射光L2と判断する。さらに、ウィンドウ反射光L2に対して所定の第2閾値より値が小さい所定の第3閾値を設け、受光素子35が受光するウィンドウ反射光L2の強度が所定の第3閾値より大きい場合に、警告部22d(以下の図5に図示)がユーザにその旨を報知する警告を出力する。ユーザはこの警告の出力に基づいて、対象物obがあるという誤判断の原因となり得る上述の汚損を事前に除去することが可能となる。さらには、対象物obまでの距離の算出精度を向上させることも可能となる。なお、所定の第2閾値及び所定の第3閾値については、以下の図7に示すフローチャートにおいて説明する。
【0025】
〔実施例〕
以下、本開示の実施例に係るレーザースキャナ1及び、レーザースキャナ1を用いた距離測定方法について、図面(上記の適用例で一旦説明した図面も含む)を用いてより詳細に説明する。なお、本開示の実施例に係るレーザースキャナ1及び、レーザースキャナ1を用いた距離測定方法は、以下の構成に限定する趣旨のものではない。
【0026】
<装置構成>
ここで、図1A及びBの説明に戻る。本実施例に係るレーザースキャナ1は、適用例において説明したレーザースキャナ1と同様の構成や機能を有するため、適用例において説明した内容については、詳細な説明は省略する。また、本明細書では同一の構成要素については同一の符号を用いて説明を行う。
【0027】
本実施例におけるレーザースキャナ1は、図1Bの平面図に示すように、センサユニット2と、I/Oユニット4を備え、センサユニット2にI/Oユニット4を結合することで稼働可能な状態となる。I/Oユニット4には、外部との制御信号、検出信号の授受のための情報端子4aと、電力供給のための電源端子4bが設けられている。レーザースキャナ1で測定した対象物との距離は、情報端子4aを通じて出力される。
【0028】
センサユニット2には、投受光部3が備えられている。投受光部3は、略円柱形の形状を有し、側面は下に行くほど縮径するテーパ形状を有する。また、投受光部3の側面はウィンドウ部3aを構成し、検出光および、対象物による反射光を透過可能な材質で形成されている。投受光部3からは、図1Aに示すように、水平面である走査面3b上に投受光部3の径方向外側に向かって検出光が出射される。この検出光は、図1Bに示すように、投受光部3の周方向に回転しながら、広い角度範囲において所定角度毎に出射される。こ
の回転する検出光が対象物に照射された場合に、その反射光を検出することで、対象物の存在と、レーザースキャナ1からの距離を検出する。このレーザースキャナ1からの距離は厳密には、回転軸AX1からの距離でもよいし、レーザー光源33からの距離であってもよい。
【0029】
ここで、図2の説明に戻る。回転アクチュエータ20の回転に伴って、レーザー光源33及びミラー32は回転軸AX1の周りに回転する。その際、レーザー光源33が発光することで、パルス状の検出光L1を走査面3b上に沿って回転させつつ照射することが可能である。また、回転アクチュエータ20のシャフト31にはエンコーダ21が備えられており、回転角を計測して制御部22に送信する。このエンコーダ21により、対象物obの方向についての情報を得ることが可能であるとともに、レーザー光源33及びミラー32を所望の速度で等速回転させることができる。
【0030】
また、受光素子35においては、反射光の強度が電気信号に変換され、制御部22内の計測制御部22a(以下の図5に図示)に送信される。この制御部22では、レーザー光源3がパルス光L1を発光してから反射光L3が検出されるまでの飛行時間を計測し、この飛行時間より、対象物obまでの距離を演算する。なお、飛行時間の起点(出射時間)は、上記のようにレーザー光源3がパルス光を発光する時間、または、レーザー光源3に発光のための入力信号が印加された時間を、光学的または電気的に検知してもよいし、装置内に疑似対象物を設けておき、レーザー光源3から発光され疑似対象物から反射された反射光の受光時間を出射時間としてもよい。これによって、レーザー光源3の駆動回路の遅れ等の誤差要因を補正することができる。
【0031】
図5は、実施例に係る制御部22の詳細な機能ブロック図である。制御部22には、上述の投受光及び検出光の走査(スキャン)のための制御指令を行い、受光素子35からの出力信号を受信する計測制御部22aが設けられる。また、受光素子35からの出力信号に基づいて対象物obまでの距離を算出する距離算出部22bと、距離算出部22bで算出された距離を出力するモニター等の出力部22cが設けられる。
【0032】
また、距離算出部22bは、受光素子35の出力信号のピーク値を検知するピーク値検知部220と、受光素子35の出力信号のピーク値から、受光素子35の出力信号のピークのピーク幅W等を導出するピーク幅導出部221を備える。また、受光素子35の出力信号のピークの立下り時間を検知する立下がり時間検知部222と、上述のピーク幅W等と、立下り時間によって、反射光の受光時間を算出する受光時間算出部224を備える。さらに、上述の方法とは別に、ピークの立上り時間と立下り時間とからピークの時間を検知するピーク時間検知部223を備える。
【0033】
また、距離算出部22bが算出する距離に対しては、所定の第1閾値が設けられる。距離算出部22bが算出する距離は、ピーク時間検知部223によって検知された、受光素子35が取得した出力信号の立上り位置と立下り位置から算出されるピーク位置によって決定される。距離算出部22bが算出する距離、すなわちこのピーク位置の距離が所定の第1閾値以下である場合は、上述の通り、反射光の強度と所定の第2閾値を比較する。なお、所定の第1閾値については、以下の図7に示すフローチャートにおいて説明する。反射光の強度が所定の第2閾値以下である場合は、受光素子35が受光する反射光をウィンドウ反射光L2と判断し、ウィンドウ反射光L2の強度を所定の第3閾値と比較する。警告部22dは、ウィンドウ反射光L2の強度が所定の第2閾値以下であって所定の第3閾値より大きい場合に、ユーザにその旨を報知する警告を出力する。警告部22dの警告の出力を具体的に報知する方法として、例えばウィンドウ部3aに汚損が付着していることを示すメッセージを出力部22cに表示してもよい。
【0034】
図6は、実施例に係る警告部22dと連動して用いられる複数の表示灯5、5aについて説明するための概略図である。図1B同様、図6はレーザースキャナ1の平面図である(図1Bでは表示灯5は図示を省略している)。表示灯5、5aは、投受光部3の周方向に沿って略等間隔にセンサユニット2上に配置されている。上記の図1Bにおいて説明した通り、検出光は、投受光部3の周方向に回転しながら、広い角度範囲において所定角度毎にレーザー光源33から出射される。例えば図6の向きで下向きの点線の矢印を所定の基準方向として、当該所定の基準方向に対して一定の範囲の角度だけ回転させた方向に検出光を出射した際に、ウィンドウ反射光L2の強度が所定の第2閾値以下であって所定の第3閾値より大きいとする。このとき、警告部22dの警告の出力の態様として、例えば当該所定の基準方向に対して一定の範囲の角度だけ回転させた方向に位置する表示灯5aを点灯するようにしてもよい。これによって、点灯した表示灯5aの位置に基づいて、ユーザが検出光を出射した方向を把握できるため、検出光を出射した方向の先にあるウィンドウ部3a上の箇所に汚損が付着していると把握することができる。汚損が付着している箇所を把握できれば、汚損を除去することが容易である。なお、表示灯5、5aは、警告部22dと合わせて、本開示における警告部に相当する。
【0035】
<フローチャート>
図7は、実施例に係るレーザースキャナ1を用いた距離測定方法の手順を示すフローチャートである。本フローは、制御部22内の記憶部(不図示)に記憶されたプログラムが実行されることにより稼働するレーザースキャナ1の1スキャンに係るフローであり、当該フローが繰り返し稼働することで、常に対象物obの接近を検出することが可能である。
【0036】
本フローが実行されると、まず、ステップS101において、制御部22の計測制御部22aからの指令に基づいて1スキャンが開始される。これにより、レーザースキャナ1によってレーザー検査光L1が、走査面上を回転軸AX1周りに所定角度(例えば、270度)回転するスキャンが開始される。ステップS102においては、レーザー光源33からパルス状の検出光L1が出射されて投光がなされる。そして、ステップS103においては、対象物obまたはウィンドウ部3aで反射された反射光が受光素子35によって受光される。
【0037】
次に、ステップS104においては、制御部22において、投光から受光までの時間帯における受光素子35の出力信号が距離毎にサンプリングされ、デジタルデータ化される。より詳細には、受光素子35からの出力信号と時間との関係が、出力信号と距離との関係に比例換算されてデジタルデータ化される。そして、ステップS105においては、ピーク時間検知部223によって、得られた出力信号の立上り位置と立下り位置が検知され、ピーク位置が算出される。
【0038】
ステップS106においては、ピーク位置の距離が予め定められた所定の第1閾値より大きいか否かが判定される。ここで、ピーク位置の距離が所定の第1閾値より大きいと判定された場合(ステップS106でYesの場合)には、対象物obの距離が充分に遠いため、ピーク位置における出力信号のピークは、ウィンドウ反射光L2による出力信号のピークまたは、ウィンドウ反射光L2の影響を受けた反射光L3による出力信号のピークではないと判断されるので、ステップS108に進む。一方、ステップS106においてピーク位置の距離が所定の第1閾値以下と判定された場合(ステップS106でNoの場合)には、ピーク位置における出力信号のピークは、ウィンドウ反射光L2による出力信号のピークまたは、ウィンドウ反射光L2の影響を受けた反射光L3による出力信号のピークの虞があると判断されるので、ステップS107に進む。ここで、ステップS106は、本開示における第1の比較工程に相当する。
【0039】
ステップS108においては、ピーク位置の距離がそのまま、対象物obの距離として採用される。一方、ステップS107においては、反射光の強度が所定の第2閾値より大きいか否かが判定される。ここで、反射光の強度が所定の第2閾値より大きいと判定された場合(ステップS107でYesの場合)には、得られた反射光は、対象物obによる反射光L3であると判断されるので、ステップS108に進む。一方、ステップS107において、反射光の強度が所定の第2閾値以下と判定された場合(ステップS107でNoの場合)には、得られた反射光は、ウィンドウ反射光L2による反射光であると判断されるので、ステップS109に進む。ここで、ステップS107は、本開示における第2の比較工程に相当する。
【0040】
ステップS109においては、ウィンドウ反射光L2の強度が所定の第2閾値より値が小さい所定の第3閾値より大きいか否かが判定される。ここで、ウィンドウ反射光L2の強度が所定の第3閾値より大きいと判定された場合(ステップS109でYesの場合)には、例えばウィンドウ部3aに汚損が付着していると判断され、ステップS110に進む。一方、ステップS109において、ピーク位置における出力信号のピークの強度が所定の第3閾値以下と判定された場合(ステップS109でNoの場合)には、ステップS111に進む。ここで、ステップS109は、本開示における第3の比較工程に相当する。
【0041】
ここで、所定の第3閾値は、以下の二点の方法のうちいずれかの方法に従って設定される。一点目の方法としては、所定の第1閾値以下の距離に対象物(上記の対象物obと異なるものであってもよい)を配置した場合の受光素子35における最低レベルの強度以下であり、かつ、ウィンドウ部3aに汚損が付着していない場合のウィンドウ反射光L2に係るピークの強度(検出光が略完全にウィンドウ部3aを透過し、検出光がほとんど反射しないため、このときのピークの強度は略0である)以上に設定する。二点目の方法としては、ウィンドウ反射光L2の強度と、測距精度(例えば受光素子35が取得するSN比等)との関係に基づいて許容できる最大のウィンドウ反射光L2の強度以下であり、かつ、ウィンドウ部3aに汚損が付着していない場合のウィンドウ反射光L2の強度以上に所定の第3閾値を設定する。なお、いずれの方法によっても、所定の第3閾値を設定することで、ピーク位置の距離が所定の第1閾値以下である場合の対象物obが汚損として誤って判断されることを防止することができる。
【0042】
再びフローチャートの説明に戻る。ステップS110においては、ウィンドウ反射光L2の強度が所定の第2閾値以下であって所定の第3閾値より大きいことを報知するため、上記の図6において説明した態様で警告部22dが警告を出力する。ここで、ステップS110は、本開示における警告工程に相当する。ステップS111においては、受光素子35が微量のウィンドウ反射光L2を受光したものと判断され無視される。
【0043】
ステップS110またはステップS111の処理が終了すると、ステップS112に進む。ステップS112においては、ステップS102の投光及びステップS103の受光により得られた全ピークの距離の取得が完了したか否かが判定される。ここで、全ピーク(全対象物ob)の距離の取得が完了したと判定された場合(ステップS112でYesの場合)には、ステップS113に進む。一方、全ピークの距離の取得が完了していないと判定された場合(ステップS112でNoの場合)には、ステップS106の処理に戻り、次のピークの距離の取得を実行する。
【0044】
ステップS113においては、全スキャン角度が完了したか否かが判定される。ここで、本実施例におけるレーザースキャナ1では、例えば、スキャン角度毎に、投光及び受光が行われ、1回のスキャンで、投光と発光が例えば、500~5000回程度行われるので、全てのスキャン角度θについて、対象物obの距離が取得される。ステップS113
において、全スキャン角度における対象物obの距離の取得が完了したと判定された場合ステップS113でYesの場合)には、ステップS114に進み、1スキャンを完了とする。一方、全スキャン角度が完了していないと判定された場合(ステップS113でNoの場合)には、ステップS102に戻り、レーザー光源33から再度検出光L1が出射され、ステップS102以降の処理が繰り返される。
【0045】
なお、以下には本開示の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで付記しておく。
<付記1>
パルス状の検出光を出射する光源(33)と、
前記検出光の対象物による反射光を受光し、受光強度に応じた信号を出力するための受光部(35)と、
前記検出光の出射時間と、前記受光部が出力する信号から得られる前記反射光の受光時間とに基づいて、前記対象物までの距離を算出する距離算出部(22b)と、
前記光源と前記対象物の間に配置され、前記検出光を透過可能なウィンドウ部(3a)と、を備えた距離測定装置(1)であって、
前記距離算出部が算出した距離が所定の第1閾値以下であり、かつ、前記受光部における前記受光強度が所定の第2閾値以下であり、かつ、前記受光部における前記受光強度が当該所定の第2閾値より値が小さい所定の第3閾値より大きい場合に、前記反射光は前記ウィンドウ部の汚損によるものであると判定し、警告を出力する警告部(22d)を備えることを特徴とする、距離測定装置(1)。
<付記2>
パルス状の検出光を出射する光源(33)と、
前記検出光の対象物による反射光を受光し、受光強度に応じた信号を出力するための受光部(35)と、
前記検出光の出射時間と、前記受光部が出力する信号から得られる前記反射光の受光時間とに基づいて、前記対象物までの距離を算出する距離算出部(22b)と、
前記光源と前記対象物の間に配置され、前記検出光を透過可能なウィンドウ部(3a)と、を備えた距離測定装置(1)における距離測定方法であって、
前記距離算出部が算出した距離を、所定の第1閾値と比較する第1の比較工程(ステップS106)と、
前記第1の比較工程において前記距離算出部が算出した距離が前記所定の第1閾値以下である場合に、前記受光部における前記受光強度を、所定の第2閾値と比較する第2の比較工程(ステップS107)と、
前記第2の比較工程において前記受光部における前記受光強度が前記所定の第2閾値以下である場合は、前記受光強度を、前記所定の第2閾値より値が小さい所定の第3閾値と比較する第3の比較工程(ステップS109)と、
前記第3の比較工程において前記受光強度が前記所定の第3閾値より大きい場合に、前記反射光は前記ウィンドウ部の汚損によるものであると判定し、警告を出力する警告工程(ステップS110)と、を有することを特徴とする、距離測定方法。
【符号の説明】
【0046】
1・・・・・レーザースキャナ
2・・・・・センサユニット
3・・・・・投受光部
4・・・・・I/Oユニット
20・・・・回転アクチュエータ
21・・・・エンコーダ
22・・・・制御部
22a・・・計測制御部
22b・・・距離算出部
22c・・・出力部
22d・・・警告部
220・・・ピーク値検知部
221・・・ピーク幅導出部
222・・・立下り時間検知部
223・・・ピーク時間検知部
224・・・受光時間算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7