(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040005
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】振動低減装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240315BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144801
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 千隼
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 誉之
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BD01
3J048CB01
3J048CB24
3J048DA01
3J048EA07
3J066AA26
3J066BA01
3J066BB01
3J066BC03
3J066BD05
(57)【要約】
【課題】輸送対象の状態により共振周波数が変化する場合であっても輸送対象の振動を抑制する。
【解決手段】緩衝材16、及び調整機17は、対象物2と支持材3との間に配置される。緩衝材16は、与えられた熱、環境の温度に応じて硬度が可逆的に変化するハイドロゲル等の温度応答性高分子を含む。調整機17は、緩衝材16の環境を調整することにより、緩衝材16の硬度を調整する。対象物振動センサ181は、対象物2の1以上の箇所に取付けられ、対象物2が受ける振動を計測する。制御部11は、対象物振動センサ181から対象物2の振動状態を示す振動データを取得し、この振動状態に応じて、対象物2が支持材3から受ける振動を低減させるように調整機17を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物と該対象物を支持する支持材との間に配置され、環境に応答して弾性率を可逆的に変化させる緩衝材と、
前記対象物が前記支持材から受ける振動を低減させるように前記緩衝材の環境を調整する調整機と、を有する振動低減装置。
【請求項2】
前記緩衝材は温度応答性高分子を含み、
前記調整機は、前記環境のうち、前記緩衝材の温度を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の振動低減装置。
【請求項3】
前記調整機は、前記弾性率を前記対象物、及び前記支持材の形状に基づいて予め算出された共振周波数に対応する範囲の所定弾性率にして前記振動を低減させるように前記環境を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の振動低減装置。
【請求項4】
前記対象物が前記支持材から受ける振動を感知するセンサを有し、
前記調整機は、前記センサにより感知された前記振動を低減させるように前記環境を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の振動低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動低減装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
精密機器は、例えば、輸送時等に振動を受けて故障し易いものが多い。比較的重量のある精密機器を防振するための技術として、例えば、特許文献1、2等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-37039号公報
【特許文献2】特開2015-21574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載された技術は、機械的構造の工夫により、特定の振動を減衰させる構造を有する。しかし、これらの技術は、例えば、輸送時の状態により共振周波数が変化するような場合には対応できないことがある。
【0005】
本発明の目的の一つは、輸送対象の状態により共振周波数が変化する場合であっても輸送対象の振動を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対象物と該対象物を支持する支持材との間に配置され、環境に応答して弾性率を可逆的に変化させる緩衝材と、前記対象物が前記支持材から受ける振動を低減させるように前記緩衝材の環境を調整する調整機と、を有する振動低減装置、を第1の態様として提供する。
【0007】
第1の態様の振動低減装置によれば、輸送対象の状態により共振周波数が変化する場合であっても輸送対象の振動を抑制することができる。
【0008】
第1の態様の振動低減装置において、前記緩衝材は温度応答性高分子を含み、前記調整機は、前記環境のうち、前記緩衝材の温度を調整することを特徴とする、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0009】
第2の態様の振動低減装置によれば、温度を調整することで、共振周波数が変化しても輸送対象の振動を抑制することができる。
【0010】
第1の態様の振動低減装置において、前記調整機は、前記弾性率を前記対象物、及び前記支持材の形状に基づいて予め算出された共振周波数に対応する範囲の所定弾性率にして前記振動を低減させるように前記環境を調整することを特徴とする、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0011】
第3の態様の振動低減装置によれば、緩衝材の環境は、対象物、及び支持材の形状に基づいて予め調整される。
【0012】
第1の態様の振動低減装置において、前記対象物が前記支持材から受ける振動を感知するセンサを有し、前記調整機は、前記センサにより感知された前記振動を低減させるように前記環境を調整することを特徴とする、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0013】
第4の態様の振動低減装置によれば、センサにより感知された振動を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る振動低減装置1の適用対象を示す図。
【
図3】振動低減装置1の構成の例を示すブロック図。
【
図7】振動低減装置1の動作の流れの例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
<振動低減装置の適用対象の構成>
以下、図において、各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を-x方向という。y、z成分についても、x成分と同様に定義される。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る振動低減装置1の適用対象を示す図である。振動低減装置1は、その少なくとも一部が対象物2と支持材3との間に配置され、対象物2が支持材3から受ける振動を低減させる。
【0017】
対象物2は、例えば、塗装、点検、修理、部品交換、洗浄、伐採等、各種の高所作業を行うロボットである。このロボットである対象物2は、例えば、鉄道事業者に利用され、線路上の高所にある構造物に対する作業を自動、又は半自動で行う。
【0018】
支持材3は、対象物2を支持する部材であり、例えばブームである。ここでブームとは、クレーンなどの腕に相当する構成部品であり、荷を吊る際に、起伏、伸縮、旋回等の機能を用い、作業半径、高さ等を確保するものである。
【0019】
トラック4は、支持材3が設置された輸送車両である。トラック4は、例えば、道路と軌道との両方を走ることができる軌陸車両である。
【0020】
図1において-z方向は下向き、つまり、重力の方向であり、+x方向はトラック4の右方向である。また、
図1において+y方向はトラック4の進行方向(前方)である。
【0021】
図1に示す通り、対象物2は、支持材3の先端に設置されている。対象物2は、精密機器であるロボット本体のほか、ロボットを制御する制御装置、及び、ロボットを駆動させる電力を供給するバッテリー等を備えるため、例えば、300キログラム以上の重量を有する場合がある。この重量物である対象物2は、作業時に比べて輸送時に大きな振動を受け易い。
【0022】
<振動低減装置の構成>
図2は、振動低減装置1の配置の例を示す図である。
図3は、振動低減装置1の構成の例を示すブロック図である。
図2、及び
図3に示す振動低減装置1は、制御部11、記憶部12、緩衝材16、調整機17、及びセンサ18を有する。このうち制御部11と、記憶部12、調整機17、及びセンサ18とは、例えば、バスで接続されている。
【0023】
なお、振動低減装置1は、その他の構成として、ユーザの操作を受付ける操作部、ユーザに情報を表示する表示部、を有してもよい。また、振動低減装置1は、支持材3をコントロールする操作盤、トラック4のコックピットに内蔵された制御装置等の外部機器と通信する通信部等を有してもよい。
【0024】
緩衝材16、及び調整機17は、対象物2と支持材3との間に配置される。これらは、例えば
図2に示す通り、下から上に向かって支持材3→緩衝材16→調整機17→対象物2の順序で並んでいる。なお、これらの順序は、上述したものに限定されない。
【0025】
緩衝材16は、硬度を変化させることが可能な材料であり、例えば、与えられた熱、環境の温度に応じて硬度が可逆的に変化するハイドロゲル等の温度応答性高分子を含む。つまり、この緩衝材16は、温度応答性高分子を含む緩衝材の例である。この緩衝材16は、例えば、素材の混合率により、40℃から100℃の範囲で硬度が調整されるように設計される。この緩衝材16は、例えば、低温では柔らかいゴム状となり、高温になるほど、硬いガラス状に変化する。そして、この緩衝材16は、高温において硬いガラス状に変化した後、再び低温にするとゴム状に戻り、これを繰り返すことができる。この緩衝材16については、例えば、ポリアクリル酸と酢酸カルシウムから作製される既知の高分子ゲル(“極限相分離ハイドロゲル”北海道大学 ソフト&ウェットマター研究室 インターネット<http://altair.sci.hokudai.ac.jp/g2/thermo-stiffening.html> 令和4年9月12日検索)が採用可能である。なお、緩衝材16は、環境の温度に応じて硬度が可逆的に変化する材料であればよく、例えば、高温になるほど柔らかくなり、低温になるほど硬くなる材料でもよい。
【0026】
なお、ここでいう硬度は、材料の硬さを示す物理量であって、その材料の弾性率に換算可能な物理量である。
【0027】
調整機17は、緩衝材16の環境を調整することにより、緩衝材16の硬度を調整する。調整機17は、緩衝材16が上述した熱に応じて硬度が変化するハイドロゲルである場合、例えば、この緩衝材16に熱を与えるヒーターである。この場合、この調整機17は、環境のうち、緩衝材の温度を調整する調整機の例である。
【0028】
なお、緩衝材16、及び調整機17の組合せは、上述したものに限らない。例えば、緩衝材16は、受けた光に応じて硬度を可逆的に変化させる材料であってもよい。この場合、調整機17は、緩衝材16が受ける光量を調整する機器であればよい。要するに、緩衝材16は、熱、光等の環境に応答して弾性率を可逆的に変化させるものであればよい。また、調整機17は、緩衝材16の弾性率を可逆的に変化させる環境を調整するものであればよい。
【0029】
したがって、この緩衝材16は、対象物とこの対象物を支持する支持材との間に配置され、環境に応答して弾性率を可逆的に変化させる緩衝材の例である。
【0030】
センサ18は、対象物振動センサ181、支持材振動センサ182、対象物温度センサ183、支持材温度センサ184を有する。
【0031】
対象物振動センサ181は、対象物2の1以上の箇所に取付けられ、対象物2が受ける振動を計測する。この対象物振動センサ181は、対象物が支持材から受ける振動を感知するセンサの例である。支持材振動センサ182は、支持材3の1以上の箇所に取付けられ、支持材3が受ける振動を計測する。これらの振動センサは、例えば、加速度センサである。
【0032】
対象物温度センサ183は、対象物2の1以上の箇所に取付けられ、対象物2の温度を計測する。支持材温度センサ184は、支持材3の1以上の箇所に取付けられ、支持材3の温度を計測する。
【0033】
これら温度センサは、例えば、熱電対、バイメタル、サーミスタ等を用いて取付けられた箇所の温度を計測する。また、これらの温度センサは、非接触で、計測対象の箇所の温度を計測する放射温度計であってもよい。この場合、温度センサの取付け位置は計測対象でなくてもよい。
【0034】
制御部11は、記憶部12からプログラムを読出して実行することにより振動低減装置1を制御する。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。また、制御部11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、このプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【0035】
この制御部11は、センサ18から対象物2、又は支持材3の振動状態を示す振動データを取得し、この振動状態に応じて、対象物2が支持材3から受ける振動を低減させるように調整機17を制御する。この場合、この調整機17は、センサにより感知された対象物が支持材から受ける振動を低減させるように緩衝材の環境を調整する調整機、の例である。
【0036】
例えば、この制御部11は、対象物2及び支持材3の振動状態が、比較的、低周波の加速度が大きい場合、硬度が上がるように調整機17によって緩衝材16の温度を上げる。一方、この制御部11は、対象物2及び支持材3の振動状態が、比較的、高周波の加速度が大きい場合、硬度が下がるように調整機17によって緩衝材16の温度を下げる。
【0037】
この制御の結果、緩衝材16の弾性率は、支持材3から受ける対象物2の振動を低減させるように変化する。つまり、この制御部11に制御される調整機17は、対象物が支持材から受ける振動を低減させるように緩衝材の環境を調整する調整機の例である。
【0038】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有し、コンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を記憶する。
【0039】
また、
図3に示す記憶部12は、形状DB121、姿勢DB122、及び弾性率対応表123を記憶する。これらは制御部11が処理を実行する際に用いられる。
【0040】
<形状DBの構成>
図4は、形状DB121の構成の例を示す図である。形状DB121は、構造物の種別ごとに、その型番、及びその形状を記憶するデータベースである。この形状DB121において、種別の欄は、対象物2、又は支持材3のいずれであるかを示す種別である。型番の欄は、対応する対象物2、又は支持材3の型を識別する識別情報である。形状の欄は、対応する対象物2、又は支持材3の形状を示すデータであり、例えば、輪郭、重心等を示す3Dデータである。形状DB121によれば、対象物2、及び支持材3のそれぞれの型番に応じて、その形状が特定される。
【0041】
<姿勢DBの構成>
図5は、姿勢DB122の構成の例を示す図である。姿勢DB122は、支持材3に対する対象物2の姿勢を示す姿勢情報と、支持材3に対してその姿勢を維持している対象物2に固有の共振周波数と、を対応付けて記憶するデータベースである。
【0042】
姿勢DB122における姿勢情報は、例えば、
図5に示す通り、「取付位置」及び「角度」等の組合せで表される。ここで「取付位置」は、例えば、対象物2が支持材3に取付けられた位置を示す。また「角度」は、例えば、対象物2の揺動する部材同士がなす角を示す。
【0043】
姿勢DB122における共振周波数は、例えば、
図5に示す通り、左右、前後、上下等の方向ごとに記憶される。姿勢DB122によれば、支持材3に対する対象物2の姿勢から、その姿勢を維持している対象物2に固有の共振周波数が特定される。
【0044】
<弾性率対応表の構成>
図6は、弾性率対応表123の構成の例を示す図である。弾性率対応表123は、対象物2と、その対象物2を支持する支持材3との間に配置された緩衝材16が、その対象物2がその支持材3から受ける振動を低減させるときの弾性率を、対象物に固有の共振周波数ごとに対応付けて記憶する表である。弾性率対応表123によれば、対象物2の共振周波数から、その対象物2の振動を低減させる緩衝材16の弾性率が特定される。
【0045】
<振動試験>
また、記憶部12は、振動試験の解析結果を記憶してもよい。この振動試験は、輸送時のトラック4に振動センサを設置して、上下、左右、前後の各方向について共振周波数を解析する試験である。
【0046】
振動試験の結果は例えば、横軸が、輸送時のトラック4に生じる振動の周波数[Hz]、縦軸が、輸送時のトラック4のパワースペクトル密度(PSD)[G2/Hz]をそれぞれ示すグラフで表される。
【0047】
例えば、振動試験の結果、輸送時のトラック4の共振周波数は、概ね100Hz以下であることがわかっている場合、振動低減装置1は、緩衝材16の周囲環境(この場合、温度)を調整して、その弾性率を変化させ、トラック4に搭載された支持材3に対する対象物2の共振周波数を100Hz以上にずらすことで、対象物2が支持材3から受ける振動を低減させることができる。また、輸送時のトラック4の共振周波数は、上下、左右、前後の各方向で異なる。そこで、振動低減装置1は、上下、左右、前後の方向ごとに対応する緩衝材16の環境を、その方向の共振周波数に応じて調整する。
【0048】
なお、この振動試験は、実際の物理試験ではなく、予め特定されている対象物2、及び支持材3の形状に基づくシミュレーションによって行ってもよい。この場合、調整機17は、緩衝材16の弾性率が、このシミュレーションにより算出された共振周波数に対応する範囲の弾性率になるように緩衝材16の環境を調整すればよい。つまり、この調整機17は、緩衝材の弾性率を対象物、及び支持材の形状に基づいて予め算出された共振周波数に対応する範囲の所定弾性率にして対象物が受ける振動を低減させるように緩衝材の環境を調整する調整機の例である。
【0049】
<振動低減装置の動作>
図7は、振動低減装置1の動作の流れの例を示すフロー図である。振動低減装置1の制御部11は、トラック4のエンジンが始動したか否かを判断する(ステップS101)。
【0050】
この制御部11は、例えば、上述した図示しない通信部を介して、トラック4の制御装置と通信し、エンジンの始動状況を示すデータを取得することでこの判断を行ってもよい。また、この制御部11は、例えば、図示しない回転数計により計測されたカムシャフトの回転数等に基づいて、この判断を行ってもよい。
【0051】
エンジンが始動していない、と判断する間(ステップS101;NO)、制御部11は、この判断を続ける。一方、エンジンが始動した、と判断すると(ステップS101;YES)、制御部11は、トラック4が走行を開始したか否かを判断する(ステップS102)。
【0052】
この制御部11は、例えば、上述した図示しない通信部を介して、トラック4の制御装置と通信し、トラック4の走行状況を示すデータを取得することでこの判断を行ってもよい。また、この制御部11は、例えば、図示しないスピードメーターにより計測された速度等に基づいて、この判断を行ってもよい。
【0053】
トラック4が走行を開始していない、と判断する間(ステップS102;NO)、制御部11は、この判断を続ける。
【0054】
トラック4が走行を開始した、と判断すると(ステップS102;YES)、制御部11は、センサ18から、計測値を取得し(ステップS103)、この計測値のうち、振動計測値が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS104)。この振動計測値は、例えば、対象物振動センサ181によって計測された対象物2の振動を示す加速度、又は、支持材振動センサ182によって計測された支持材3の振動を示す加速度である。
【0055】
振動計測値が閾値以上でない、と判断すると(ステップS104;NO)、制御部11は、処理をステップS109に進める。
【0056】
一方、振動計測値が閾値以上である、と判断すると(ステップS104;YES)、制御部11は、この振動計測値から、対象物2、又は支持材3の共振周波数を推定する(ステップS105)。
【0057】
また、制御部11は、センサ18から、ステップS103で取得した計測値のうち、対象物2、又は支持材3の温度を特定し、これらの温度が上限値未満であるか否かを判断する(ステップS106)。
【0058】
これらの温度が上限値未満である、と判断する場合(ステップS106;YES)、制御部11は、推定した共振周波数に対応する弾性率を参照し、緩衝材16が対象物2の振動をより低減させるように、現在の設定温度を調整し(ステップS107)、その後、処理をステップS109に進める
【0059】
例えば、緩衝材16の弾性率を上昇させた方が対象物2の振動が低減する場合、制御部11は、調整機17を制御して緩衝材16の設定温度を、上述した弾性率に応じて決まる値だけ上昇させる。
【0060】
一方、上述したこれらの温度が上限値未満ではない(つまり、上限値以上である)、と判断する場合(ステップS106;NO)、制御部11は、振動に異常がある旨を警告し(ステップS108)、処理をステップS109に進める。
【0061】
ステップS109において、制御部11は、トラック4が走行を終了したか否かを判断する(ステップS109)。トラック4が走行を終了していない、と判断する場合(ステップS109;NO)、制御部11は、処理をステップS103に戻す。
【0062】
一方、トラック4が走行を終了した、と判断する場合(ステップS109;YES)、制御部11は、トラック4の制御装置に指示を出して、エンジンを停止させ(ステップS110)、処理を終了する。
【0063】
以上、説明した処理を実行することにより、振動低減装置1は、支持材3に支持されている対象物2の輸送時に、対象物2、又は支持材3が受ける振動周波数をセンサ18により計測するので、振動周波数の変化に応じて対象物2が受ける振動を低減させることができる。
【0064】
また、予め振動試験によりトラック4等の共振周波数を解析しておき、この共振周波数を避けるように緩衝材16の環境を調整することにより、振動低減装置1は、対象物2が受ける振動を低減させることができる。
【0065】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0066】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0067】
<1>
上述した実施形態において、センサ18は、対象物2が支持材3から受ける振動を感知する対象物振動センサ181を有していたが、対象物2が支持材3から受ける振動は、他の計測値、又は予め記憶部12に記憶された構造物の形状等に基づいて推測されてもよい。制御部11は、推測されたこの振動が低減するように調整機17により緩衝材16の環境を調整させればよい。
【0068】
<2>
上述した振動低減装置1の制御部11、及び記憶部12による実現する機能の少なくとも一部は、振動低減装置1の図示しない通信部により制御部11と通信可能に接続された外部装置により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…振動低減装置、11…制御部、12…記憶部、121…形状DB、122…姿勢DB、123…弾性率対応表、16…緩衝材、17…調整機、18…センサ、181…対象物振動センサ、182…支持材振動センサ、183…対象物温度センサ、184…支持材温度センサ、2…対象物、3…支持材。