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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040015
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】移動式エアコン及びその移動方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0003 20190101AFI20240315BHJP
   F24F 1/005 20190101ALI20240315BHJP
   F24F 1/60 20110101ALI20240315BHJP
【FI】
F24F1/0003
F24F1/005
F24F1/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144817
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】522348217
【氏名又は名称】株式会社サンエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由貴
【テーマコード(参考)】
3L049
【Fターム(参考)】
3L049BA00
(57)【要約】
【課題】エアコンを必要に応じて必要な場所に自由に導入し、かつ自由に移動させ得るようにする。
【解決手段】リフトアップ穴131を側面に備えたパレット101上に、空調システム12を構成する室内機31及び室外機51と、ダクト部71とを固定して一体化する。室内機31は、パレット101に固定された第1のハウジング32内に第1の熱交換器を内蔵する。室外機51は、パレット101に固定された第2のハウジング52内に減圧器と圧縮機と第2の熱交換器とを内蔵し、第2の吸込口58から吸い込んで第2の熱交換器に接触させた空気を第2の吹出口から吹き出す。ダクト部71は、第2の吹出口から吹き出された空気を取り込み、上方に向けて開口する排気ダクト73の排気口74から排気する。排気ダクト73は、パレット101が設置される床面Fから2メートル以上、好ましくは3メートル程度の位置に排気口74を配置している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフトアップ穴を側面に備えたパレットと、
前記パレットに取り付けられた第1のハウジング内に、第1の熱交換器を内蔵する空調システムの室内機と、
前記パレットに取り付けられた第2のハウジング内に、減圧器と圧縮機と第2の熱交換器とを内蔵し、第2の吸込口から吸い込んで前記第2の熱交換器に接触させた空気を第2の吹出口から吹き出す前記空調システムの室外機と、
前記第1の熱交換器と前記減圧器及び前記圧縮機とを連結する配管と、
前記パレット側に取り付けられ、前記第2の吹出口から吹き出された空気を取り込み、上方に向けて開口する排気ダクトの排気口から排気するダクト部と、
を備える移動式エアコン。
【請求項2】
前記ダクト部は、前記パレットが設置される床面から2メートル以上の高さの位置に前記排気ダクトの排気口を配置している、
請求項1に記載の移動式エアコン。
【請求項3】
前記排気ダクトの外周面は、断熱材で覆われている、
請求項1に記載の移動式エアコン。
【請求項4】
前記室内機と前記室外機とは、フォークリフト用の30アンペアコンセントに適合する電源プラグが接続された単一の電源コードを介して給電される、
請求項1に記載の移動式エアコン。
【請求項5】
前記電源コードによる給電経路には、漏電ブレーカが設けられている、
請求項4に記載の移動式エアコン。
【請求項6】
前記ダクト部は、前記パレットに取り付けられている、
請求項1ないし5のいずれか一に記載の移動式エアコン。
【請求項7】
前記室内機は、前記第1のハウジングのフロントパネルの下方位置に第1の吸込口を有し、前記第1の吸込口から離れた前記フロントパネルの上方位置に第1の吹出口を有する縦型形状を有している、
請求項1ないし5のいずれか一に記載の移動式エアコン。
【請求項8】
前記室内機と前記室外機とは、前記第1のハウジングの正面と前記第2のハウジングの側面とが横並びに並んで平面視L字形をなすように前記パレットに配置され、
前記室外機は、前記室内機と重ならない位置に前記第2の吹出口を備え、
前記ダクト部は、前記パレット上面の残余の空間に取り付けられている、
請求項7に記載の移動式エアコン。
【請求項9】
前記室内機と前記室外機と前記ダクト部とは、平面視矩形形状をなしている、
請求項8に記載の移動式エアコン。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれか一に記載の移動式エアコンを移動させる方法であって、
前記パレットのリフトアップ穴にハンドリフトの爪を差し込み、
前記ハンドリフトの爪を上昇させて前記パレットを床面から浮かせ、
前記パレットが床面から浮いた状態で前記ハンドリフトを走行させる、
移動式エアコンの移動方法。
【請求項11】
請求項1ないし5のいずれか一に記載の移動式エアコンを移動させる方法であって、
前記パレットのリフトアップ穴に前記フォークリフトの爪を差し込み、
前記フォークリフトの爪を上昇させて前記パレットを床面から浮かせ、
前記パレットが床面から浮いた状態で前記フォークリフトを走行させる、
移動式エアコンの移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動式エアコン及びその移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が急速に進み、熱中症問題が深刻の度合いを増している。真夏になると、日本全国いたる場所で35度以上にまで気温が上昇することも日常化し、エアコンディショナー(エアコン)なしで過ごせる地域は、わが国から姿を消しつつある。
【0003】
エアコンは、室内機と室外機とを組にして初めて動作する。室外機のためにはある程度の設置スペースを必要とするし、室外機と室内機との接続を要する設置工事は素人の手に負えない。そこでより手軽に設置できるエアコンとして、室内機と室外機とを同じハウジング内に収めた室内設置型のエアコンが提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、一つのハウジング(外装体(10))の内部を直立壁(23)によって蒸発器室(24)と凝縮器室(26)とに分割し、蒸発器室(24)では室内機の動作を、凝縮器室(26)では室外機の動作を担わせるようにした室内用空気調和機が開示されている(特許文献1の第6欄第3段落、第10欄第2-3段落参照)。
【0005】
そのほか特許文献2、3にも同種の装置が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平05-034569号公報
【特許文献2】特開平07-063372号公報
【特許文献3】特開平06-347058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1-3に開示されたエアコン(特許文献1の「室内用空気調和機」、特許文献2の「システム型空気調和機」、特許文献3の「空調用床置形換気ユニット」)は、室内機と室外機とが一体化されているため、屋外に室外機の設置スペースを必要とせず、また室内機と室外機との接続作業が不要で設置作業の容易化にも貢献する。
【0008】
その一方で、特許文献1、2に記載されたエアコンはおそらくは壁付け型、特許文献3に記載されたエアコンは床置き型であるという違いはあるものの、いずれも特定の設置場所に設置した状態で使用するいわば定置式であり、自由に移動して使用することはできない。
【0009】
エアコンを必要に応じて必要な場所に自由に導入し、かつ自由に移動させたいという要望は、例えば倉庫や工場、とりわけ大型倉庫において切実である。
【0010】
大型倉庫は広く容積が大きいため、空間全体を空調するには大規模な設備が必要である一方、物を保管するという本来の目的から、電源や室外機の設置場所などが設計段階から考えられていないことが多い。
【0011】
ところが近年、インターネットを利用した通信販売事業の急速な普及という社会構造の変化から、大型の物流倉庫は大規模物流センターへと使用用途が転換され、多くの人々が長時間働く場として使用される事態が常態化している。空調設備の整備が遅れている大型倉庫では、夏場、労働者たちが過酷な環境で労働を強いられている姿も珍しくない。熱中症予防の観点からも、エアコンを手軽に導入でき、かつ必要な場所に自由に移動可能とすることが切望される。
【0012】
本開示の課題は、エアコンを必要に応じて必要な場所に自由に導入し、かつ自由に移動させ得るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
移動用エアコンの一つの態様は、リフトアップ穴を側面に備えたパレットと、前記パレットに取り付けられた第1のハウジング内に、第1の熱交換器を内蔵する空調システムの室内機と、前記パレットに取り付けられた第2のハウジング内に、減圧器と圧縮機と第2の熱交換器とを内蔵し、第2の吸込口から吸い込んで前記第2の熱交換器に接触させた空気を第2の吹出口から吹き出す前記空調システムの室外機と、前記第1の熱交換器と前記減圧器及び前記圧縮機とを連結する配管と、前記パレット側に取り付けられ、前記第2の吹出口から吹き出された空気を取り込み、上方に向けて開口する排気ダクトの排気口から排気するダクト部と、を備える。
【0014】
上記移動式エアコンを移動させる方法の一つの態様は、前記パレットのリフトアップ穴にハンドリフトの爪を差し込み、前記ハンドリフトの爪を上昇させて前記パレットを床面から浮かせ、前記パレットが床面から浮いた状態で前記ハンドリフトを走行させる。
【0015】
上記移動式エアコンを移動させる方法の別の態様は、前記パレットのリフトアップ穴に前記フォークリフトの爪を差し込み、前記フォークリフトの爪を上昇させて前記パレットを床面から浮かせ、前記パレットが床面から浮いた状態で前記フォークリフトを走行させる。
【発明の効果】
【0016】
エアコンを必要に応じて必要な場所に自由に導入し、かつ自由に移動させ得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】移動式エアコンの実施の形態を示す正面図。
図2】パレットの斜視図。
図3】移動式エアコンの平面図。
図4】移動式エアコンの右側面図。
図5】移動式エアコンの左側面図。
図6】移動式エアコンの背面図。
図7】移動式エアコンの内部構造を説明するための模式図。
図8】ハンドリフトで移動式エアコンを移動させる際の正面図。
図9】ハンドリフトで移動式エアコンを移動させる際の右側面図。
図10】ハンドリフトで移動式エアコンを移動させる際の平面図。
図11】フォークリフトで移動式エアコンを移動させる際の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
移動用エアコン、及びその移動方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。説明は以下の項目順で行なう。

1.構成
(1)パレット
(イ)合成樹脂製パレット
(ロ)木製パレット
(ハ)金属製パレット
(ニ)その他
(2)室内機
(3)室外機
(4)ダクト部
(5)レイアウト
(6)給電
2.作用効果
(1)基本的な動作
(2)移動方法
(3)各種の作用効果
(イ)移動運搬の利便性
(ロ)初期導入
(ハ)原状復帰
(ニ)運転性能
(ホ)移動用エアコン及びその移動方法の意義
3.変形例
【0019】
1.構成
図1に示すように、本実施の形態の移動用エアコン11は、パレット101上に、空調システム12を構成する室内機31及び室外機51と、ダクト部71とを取り付け、これらの各部を一体化している。以下パレット101、室内機31、室外機51、及びダクト部71の外観態様、及び空調システム12の内部構造について説明する。
【0020】
(1)パレット
図2に示すように、パレット101は、底板111と上板112との間に複数の脚部113を配置して全体を一体化した平べったい矩形形状をした部材である。パレット101の側面には、隣接する脚部113同士の間に、ハンドリフト201の爪211(図8図10参照)、又はフォークリフト301の爪311(図11参照)を差し込むためのリフトアップ穴131が備えられている。これらのリフトアップ穴131は、例えば三つの側面、あるいは四面すべての側面に、二つずつ設けられている。
【0021】
互いに対面する底板111及び上板112の裏面には、強度を向上させるためのリブ114が設けられている。図1では底板111の裏面側に設けられたリブ114しか示されていないが、上板112の裏面側にも同様のリブ114が設けられている。これらのリブ114は、格子形状やハニカム形状など、様々な形状で実現することが可能である。
【0022】
パレット101には、例えばJIS規格のT11型のものが用いられる。T11型は、1100mm×1100mm×144mmの平パレットとして規格化されており、イチイチの俗称で親しまれている。
【0023】
別の一例としては、アジアパレットシステム連盟(APSF)がT11型とともに共通規格として定めているT12型をパレット101として用いてもよい。T12型は、1000mm×1200mmの寸法である。
【0024】
パレット101の材質としては、合成樹脂製、木製、金属製、繊維製、発泡スチロール製など、各種の形成の採用が可能である。
【0025】
(イ)合成樹脂製パレット
例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどによって製造される。強度に優れ、大きな耐荷重が得られる。このため四面全ての側面にリフトアップ穴131を設けても、室内機31、室外機51、及びダクト部71を搭載するには十分な耐荷重を確保することができる。
【0026】
(ロ)木製パレット
木を材料として製造されたパレットである。強度及び耐荷重の面では、合成樹脂パレットや金属製パレットに一歩遅れをとるが、室内機31、室外機51、及びダクト部71を搭載する分には十分である。
【0027】
(ハ)金属製パレット
鉄やアルミニウムを材料として作られたパレットである。強度及び耐荷重の点では抜きんでた性能を持つため、室内機31、室外機51、及びダクト部71のような重量物の搭載にはうってつけであるといえる。
【0028】
(ニ)その他
特殊なクラフト紙などで作られた繊維製パレットは、製造技術の向上により、5トン程度までの重量に耐えられるものも登場している。室内機31、室外機51、及びダクト部71を搭載するには十分な耐荷重である。
【0029】
(2)室内機
図1図3図6に示すように、室内機31は、筐体状をした第1のハウジング32を備え、第1のハウジング32の内部に各部を収納している。
【0030】
図7に示すように、第1のハウジング32は、第1の熱交換器33を内蔵している。第1の熱交換器33は、室外機51との間で冷媒ガスGの循環に供する第1の冷媒経路34内に配置され、循環する冷媒ガスGを熱交換する。
【0031】
第1のハウジング32は、第1の吸込口35と第1の吹出口36とを備えている。室内機31は、第1の吸込口35から吸い込んだ空気を第1の熱交換器33に導き、第1の熱交換器33に接触させて第1の吹出口36から吹き出す。
【0032】
図1図3図6に示すように、室内機31の外観を定める第1のハウジング32は、縦長の縦型形状を有している。大きさ一例としては、高さ1800~2200mm、幅500~700mm、奥行250~350mm程度の寸法である。
【0033】
第1のハウジング32は、正面(前面)にフロントパネル37を有している。第1の吸込口35は、フロントパネル37の下方位置に配置され、第1の吹出口36は、第1の吸込口35から離れたフロントパネル37の上方位置に配置されている。第1の吹出口36のすぐ下方の位置には操作パネル38が設けられている。室内機31は、操作パネル38によって各種の操作を可能にする。
【0034】
室内機31の第1のハウジング32は、パレット101に対して、例えばボルト止め、フック止めとボルト止めとの併用、パレット101に固定した図示しないレールへの嵌め込みなどの手法で、パレット101に固定的に取り付けられている。
【0035】
(3)室外機
図1図3図6に示すように、室外機51は、筐体状をした第2のハウジング52を備え、第2のハウジング52の内部に各部を収納している。
【0036】
図7に示すように、第2のハウジング52は、減圧器53、圧縮機54、及び第2の熱交換器55を内蔵している。これらの各部53、54、55は、室内機31との間で冷媒ガスGの循環に供する第2の冷媒経路56内に配置されている。圧縮機54と第2の熱交換器55とを連絡する第2の冷媒経路56中には四方弁57が設けられている。四方弁57は、冷媒ガスGの流れる方向を制御し、冷房動作と暖房動作とを切り替える。
【0037】
第2のハウジング52は、第2の吸込口58(図4参照)と第2の吹出口59とを備えている。室外機51は、ファン60によって第2の吸込口58から吸い込んだ空気を第2の熱交換器55に導き、第2の熱交換器55に接触させて第2の吹出口59から吹き出す。
【0038】
図1図3図6に示すように、室外機51の外観を定める第2のハウジング52は、背の低い横長形状を有している。大きさの一例としては、高さ550~700mm、幅700~900mm、奥行250~350mm程度の寸法である。
【0039】
室外機51の第2のハウジング52は、パレット101に対して、例えばボルト止め、フック止めとボルト止めとの併用、パレット101に固定した図示しないレールへの嵌め込みなどの手法で、パレット101に固定的に取り付けられている。
【0040】
図7に示すように、室内機31の第1の冷媒経路34と、室外機51の第2の冷媒経路56とは、配管41を介して接続されている。その結果、室内機31に内蔵された第1の熱交換器33と、室外機51に内蔵された減圧器53及び圧縮機54とが連結される。
【0041】
配管41を介して互いに接続された第1の冷媒経路34と第2の冷媒経路56とは、空調システム12全体の冷媒経路GLを構成する。
【0042】
(4)ダクト部
図3図6に示すように、ダクト部71は、筐体状の第3のハウジング72を備えている。第3のハウジング72は、内部で排気ダクト73を保持し、上面から排気ダクト73を突出させている。排気ダクト73は、第3のハウジング72の上面から鉛直に延び、先端部に排気口74(図3参照)を開口している。
【0043】
排気ダクト73は、直管状のパイプ部材である。ダクト部71は、第3のハウジング72の内部に、排気ダクト73の下端部を室外機51が有する第2の吹出口59に連絡させる接続構造(図示せず)を有している。接続構造は、第2の吹出口59から排気される空気を漏らすことなく排気ダクト73に導くような密封構造を備えている。
【0044】
図3図6に示すように、第3のハウジング72は、幅と奥行きとがほぼ一致する直方体形状を有している。大きさの一例としては、高さ1800~2200mm、幅及び奥行500~700mm程度の寸法である。
【0045】
ダクト部71は、パレット101が設置される床面Fから2メートル以上の高さの位置に排気ダクト73の排気口74を配置している。したがって排気ダクト73は、床面Fから2メートル以上の高さで設置される。床面Fからの排気ダクト73の高さの下限値は、移動用エアコン11が持ち込まれる施設内にいる人が、室外機51から放出されて排気ダクト73の排気口74から排気される暖められた空気を不快と感じるか否かの観点から定められる。一例として、床面Fからの排気ダクト73の高さは、例えば3メートル程度に設定することができる。
【0046】
同様の趣旨から、排気ダクト73の外周面には断熱処理が施されている。断熱処理は、例えば排気ダクト73の外周面を断熱材75で被覆することによってなされる。これによって排気ダクト73の外周面から放出される熱を遮断することが可能である。
【0047】
排気ダクト73の高さの上限値に関しては、移動用エアコン11の全体の重量バランスの観点、あるいは移動用エアコン11を導入しようとする施設の天井高などの各種事情を考慮して決定される。移動用エアコン11の全体の重量、排気ダクト73単体の重量などは、排気ダクト73の高さの上限値を決定する要因になり得る。一例として、床面Fからの排気ダクト73の高さの上限値は、例えば4~5メートルである。
【0048】
ダクト部71の第3のハウジング72は、パレット101に対して、例えばボルト止め、フック止めとボルト止めとの併用、パレット101に固定した図示しないレールへの嵌め込みなどの手法で、パレット101に固定的に取り付けられている。
【0049】
(5)レイアウト
図3に示すように、パレット101には、左側前方に寄せて、フロントパネル37を正面(前方)に向けて室内機31が配置される。室外機51は、第2の吸込口58を右側に向けるようにして室内機31の右側に配置される。これによって室内機31と室外機51とは、第1のハウジング32のフロントパネル37と第2のハウジング52の側面とが横並びに並び、平面視L字形をなすようにパレット101に配置される。
【0050】
このとき室外機51は、室内機31とL字形状をなすことから、室内機31と重ならない位置に第2の吹出口59を位置付ける。そこで第2の吹出口59が位置づけられるパレット101上の残余の空間に、ダクト部71が取り付けられる。
【0051】
一例として、パレット101にはJIS規格T11型のものを用い、室内機31の第1のハウジング32、室外機51の第2のハウジング52、及びダクト部71の第3のハウジング72に、つぎの寸法のものを用いると仮定する。
・室内機 :幅600mm、奥行300mm
・室外機 :幅900mm、奥行350mm
・ダクト部:幅及び奥行600mm
【0052】
室内機31と室外機51との間に50mm程度の間隙を設けて配置すると全幅1000mm、奥行900mmとなる。そこで室内機31と室外機51とダクト部71とは、平面視矩形形状をなし、1100mm×1100mmサイズのパレット101にちょうど良く収まる。
【0053】
(6)給電
図7に示すように、室内機31と室外機51とは、単一の電源コード42を介して給電される。電源コード42には、フォークリフト用の30アンペアコンセントに適合する電源プラグ43が接続されている。
【0054】
電源コード42による給電経路44には、漏電ブレーカ45が設けられている。
【0055】
2.作用効果
(1)基本的な動作
図7に示すように、室内に設置された移動用エアコン11が冷房運転を実行する際、冷媒経路GL内の冷媒ガスGは、室外機51の減圧器53で低温の液体にされる。液体になった冷媒ガスGは、冷媒経路GLを通って室内機31に運ばれ、第1の熱交換器33を冷やす。室内機31は、第1の吸込口35から吸い込んだ室内の空気を第1の熱交換器33に接触させて熱を奪う。こうして空気は冷やされ、冷えた空気は第1の吹出口36から室内に吹き出されて室内を冷房する。
【0056】
第1の熱交換器33によって熱を吸収した冷媒ガスGは、冷媒経路GLを通って室外機51に戻され、圧縮機54によって高温の気体に変化する。高温の気体に変化した冷媒ガスGは第2の熱交換器55に導かれ、ファン60によって冷却される。冷却された冷媒ガスGは、減圧器53で再び低温の液体にされる。
【0057】
第2の熱交換器55をファン60によって冷却する際、第2の吸込口58から室内の空気が吸い込まれ、第2の熱交換器55を通って第2の吹出口59から放出される。このとき第2の熱交換器55には高温の気体が流通しているため、第2の吹出口59からは温風が吹き出される。吹き出された温風は、排気ダクト73を通って排気口74から室内に排気される。
【0058】
移動用エアコン11は、室内機31のフロントパネル37に設けられた操作パネル38の操作によって、冷房運転から暖房運転への切り替えを可能にする。
【0059】
暖房運転が指示されると、室外機51は四方弁57を切り替え、冷媒経路GL内の冷媒ガスGの流れを反転させる。室外機51においては、室内の空気の熱を吸収して第2の熱交換器55を温め、圧縮機54で高温の気体にした冷媒ガスGを室内機31に送る。室内機31では、冷媒ガスGの熱によって第1の熱交換器33が暖められるので、第1の熱交換器33に接触して暖まった空気を第1の吹出口36から噴き出し、室内を暖房する。
【0060】
第1の熱交換器33において室内の空気の熱を取り込んだ冷媒ガスGは、室外機51の減圧器53に送られて低温の液体になり、第2の吸込口58から取り込んだ室内の空気の熱を吸収している第2の熱交換器55で気体になる。このとき第2の熱交換器55に接触させた空気は、冷風となって第2の吹出口59から噴き出され、排気ダクト73を通って排気口74から室内に排気される。
【0061】
(2)移動方法
移動用エアコン11は、ハンドリフト201、又はフォークリフト301を用いて、自由に移動させることができる。
【0062】
図8図10に示すように、ハンドリフト201を用いて移動用エアコン11を移動させるには、まずパレット101のリフトアップ穴131に、ハンドリフト201の爪211を差し込む。
【0063】
ついでリフトアップ機構212を操作し、爪211を上昇させてパレット101を床面Fから浮かせる。
【0064】
そしてパレット101が床面Fから浮いた状態を維持したまま、ハンドリフト201を走行させる。このときハンドリフト201は、四隅に設けられた車輪213によって円滑に走行し、作業者の作業負担を軽減する。
【0065】
図11に示すように、フォークリフト301を用いて移動用エアコン11を移動させるには、まずパレット101のリフトアップ穴131に、フォークリフト301の爪311を差し込む。
【0066】
ついでリフトアップ機構312を駆動し、爪311を上昇させてパレット101を床面Fから浮かせる。
【0067】
そしてパレット101が床面Fから浮いた状態を維持したまま、フォークリフト301を走行させる。このときフォークリフト301は、四隅に設けられた車輪313の一部、例えば後輪313Rが駆動されて円滑に走行し、作業者の作業負担を軽減する。
【0068】
(3)各種の作用効果
(イ)移動運搬の利便性
本実施の移動用エアコン11は、ハンドリフト201又はフォークリフト301によって容易に移動することができる。とりわけ運転に資格が求められるフォークリフト301と違い、ハンドリフト201については使用上の制約がないため、誰でも手軽に移動用エアコン11を移動することが可能である。
【0069】
このような移動の容易化に寄与している移動用エアコン11の構造的な要因は、つぎの通りである。
・パレット101を土台として、室内機31、室外機51、及びダクト部71のすべてをパレット101に固定し、一体化していること。
・縦型形状の室内機31と室外機51とを平面視L字形をなすように配置し、残余の空間にダクト部71を配置して、これらの室内機31、室外機51、及びダクト部71を平面視矩形形状にレイアウトしていることから、重量バランスに優れること。
【0070】
(ロ)初期導入
近年、インターネットを利用した通信販売事業が急速に普及し、いままでは物流倉庫としてもっぱら物の保管のために使用されていた大型倉庫は、大規模物流センターへと様変わりする姿がよく見られるようになってきた。ところが物の保管を本旨としていた大型倉庫では、電源や室外機の設置場所などが設計段階から考えられていないことが多く、主に経済的な側面から、冷暖房設備の導入のハードルを高くしている。
【0071】
その一方で、昨今の夏場の暑さは尋常ではなく、熱中症対策のためには、冷房設備の導入が急がれる。
【0072】
本実施の形態の移動用エアコン11は、上述したように容易かつ手軽に移動することができるため、冷暖房システムを導入するための設計がなされていない大型倉庫を利用した大規模物流センターのような場所であっても、速やかに搬入することができる。
【0073】
一般的に、そのような倉庫には、フォークリフト用の30アンペアコンセント(3相200V4Pコンセントメス)が随所に設置されている。本実施の形態の移動用エアコン11によれば、そのような30アンペアコンセントに適合する電源プラグ43が接続された電源コード42を介して、室内機31及び室外機51に手軽に給電することができる。したがって室内機31と室外機51との間の冷媒配管工事が不要であるばかりでなく、2次側電気工事も不要となり、冷暖房設備を初期導入する際のハードルを低くすることが可能である。
【0074】
また電源コード42による給電経路44には漏電ブレーカ45が設けられている。機器の故障や漏電の際には漏電ブレーカ45が作動し、人や機器を守ることができる。
【0075】
(ハ)原状復帰
社会的な事情として、大型物流倉庫は賃貸契約が多く、撤去時、借主は原状復帰義務を負う。原状復帰には工事に多額の費用がかかり、その中には電源関係の原状復帰工事費用も含まれている。
【0076】
本実施の形態の移動用エアコン11は、特別な2次側電気工事を要することなく初期導入することができるため、施設の原状復帰に際して、特別な工事を借主に課すことはない。したがって初期導入から運用、撤去に至るまで、経済性に優れた装置だといえる。
【0077】
(ニ)運転性能
大型倉庫や工場、大型物流倉庫を転用した大規模物流センターなどで移動用エアコン11を使用した際、室外機51から放出された熱は、排気ダクト73によって天井に向けて排気され、その種の設備には本来的に備わっている既設の有圧扇から外部に放出される。倉庫や工場の天井高は5.5メートル以上であることが多く、そこで働く人々の身長は高くても2メートル以下とみることができるため、排気ダクト73の高さを床面Fから3メートル程度に設定しておけば、排気熱による暑さを人々に感じさせることはない。冷気は下に下がり、暖かい空気は上昇して有圧扇から外部に放出されるからである。
【0078】
このとき排気ダクト73は、排気熱を通過させるため、その熱の伝道によって外周面を熱くする。本実施の形態では、排気ダクト73の外周面を断熱材75で覆っているので、排気ダクト73の外周面の熱を人々に感じさせることもない。
【0079】
したがって大型倉庫や工場、大型物流倉庫を転用した大規模物流センターなどに置かれた移動用エアコン11は、快適な空調環境を人々に提供することができる。
【0080】
本実施の形態の移動用エアコン11のもう一つの利点は、運転効率のよさである。
【0081】
冷房運転時には、室外機51に組み込まれた第2の熱交換器55に、ファン60で引き込んだ空気を接触させて冷却する。このときの空気の温度は、第2の熱交換器55の冷却効果に影響を与え、低いほど冷却効果を高める。一般的には室外機51は屋外に設置されているので、第2の熱交換器55に温度の高い外気が接触することになるのに対して、本実施の形態によれば、空調された比較的温度の低い屋内の空気を第2の熱交換器55に接触させることが可能である。このため冷房の運転効率を高めることができる。
【0082】
暖房運転時には、室外機51に組み込まれた第2の熱交換器55に、ファン60で引き込んだ空気を接触させて暖める。このときの空気の温度は、第2の熱交換器55を暖める効果に影響を与え、高いほど暖める効果を高める。一般的には室外機51は屋外に設置されているので、第2の熱交換器55に温度の低い外気が接触することになるのに対して、本実施の形態によれば、空調された比較的温度の高い屋内の空気を第2の熱交換器55に接触させることが可能である。このため暖房の運転効率を高めることができる。
【0083】
したがって本実施の形態の移動用エアコン11によれば、外気温度に左右されることのない効率のよい冷暖房運転を実行することができる。その結果、圧縮機54などの機器への負担を減らし、消費電力を抑えることも可能である。
【0084】
(ホ)移動用エアコン及びその移動方法の意義
以上説明したように、本実施の形態の移動用エアコン11及びその移動方法によれば、優れた作用効果が奏される。特に大型倉庫や工場、大型物流倉庫を転用した大規模物流センターなどでは、経営者側に初期導入費用の軽減という利益をもたらすため、これが移動用エアコン11を導入するきっかけになれば、そこで働く人々に、職場環境の改善という果実をもたらすことができる。
【0085】
したがって本実施の形態の移動用エアコン11及びその移動方法は、夏が訪れるたびに深刻さを増していく熱中症対策を一歩前進させることに貢献し、大きな社会的意義を果たすものとして期待される。
【0086】
3.変形例
実施に際しては、各種の変形や変更が許容される。
【0087】
例えば上記実施の形態では、パレット101の底板111及び上板112の表面を平滑な面として説明したが、実施に際しては、孔があけられた形態であってもよい。例えばリブ114の形状で孔が開けられているような形態に底板111及び上板112を形成することが可能である。
【0088】
また上記実施の形態では、各部の寸法について言及したが、いずれも例示にすぎず、実施に際して、その他の別の寸法を各部に与えることが可能である。
【0089】
その他実施に際しては、あらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
11 移動用エアコン
12 空調システム
31 室内機
32 第1のハウジング
33 第1の熱交換器
34 第1の冷媒経路
35 第1の吸込口
36 第1の吹出口
37 フロントパネル
38 操作パネル
41 配管
42 電源コード
43 電源プラグ
44 給電経路
45 漏電ブレーカ
51 室外機
52 第2のハウジング
53 減圧器
54 圧縮機
55 第2の熱交換器
56 第2の冷媒経路
57 四方弁
58 第2の吸込口
59 第2の吹出口
60 ファン
71 ダクト部
72 第3のハウジング
73 排気ダクト
74 排気口
75 断熱材
101 パレット
111 底板
112 上板
113 脚部
114 リブ
131 リフトアップ穴
201 ハンドリフト
211 爪
212 リフトアップ機構
213 車輪
301 フォークリフト
311 爪
312 リフトアップ機構
313 車輪
313R 後輪
F 床面
G 冷媒ガス
GL 冷媒経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11