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特開2024-40020画像処理装置、画像処理システム、及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040020
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理システム、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240315BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G06F3/12 308
G06F3/12 344
G06F3/12 378
G06T1/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144825
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 匠哉
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057BA23
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB17
5B057CC03
5B057CE03
5B057CE11
5B057CE17
5B057DA08
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5B057DC04
5B057DC09
(57)【要約】
【課題】常に全てのオブジェクトに対して画質調整を行う場合よりも画質調整にかける時間を短縮しつつ、ユーザに画質調整を行うオブジェクトを全て選択させる場合よりも画質調整の設定にかかるユーザの手間を軽減させることが可能な画像処理装置、画像処理システム、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】印刷前処理装置は、複数のオブジェクトを有する印刷ジョブを取得し、印刷ジョブに含まれるオブジェクトの画質調整に対して許容する時間を受け付け、印刷ジョブに含まれる複数のオブジェクトを予め定められた優先順序で処理した場合、受け付けた時間内に処理可能なオブジェクトを提示する処理を行う。例えば、処理時間の増加許容範囲の設定と、適用範囲プレビューを表示し、印刷ジョブのサムネイルに矩形画像等を重ねることで補正対象であることを表示する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、前記プロセッサは、
複数のオブジェクトを有する印刷ジョブを取得し、
前記印刷ジョブに含まれるオブジェクトの画質調整に対して許容する時間を受け付け、
前記印刷ジョブに含まれる複数のオブジェクトを予め定められた優先順序で処理した場合、前記時間内に処理可能なオブジェクトを提示する処理を行う画像処理装置。
【請求項2】
前記優先順序は、画質調整の効果が大きい順、前記オブジェクトの大きさが大きい順、画質調整の処理時間が多い順、または処理時間が必要な画質調整の種類順である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、オブジェクト毎に行う画質調整内容を決定し、決定した画質調整内容に必要な時間を算出して、前記時間内に処理可能なオブジェクトを提示する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記時間を受け付けるための画面を表示し、前記画面から前記時間を受け付ける請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画面は、移動可能に設けられた、前記時間を設定するスライドスイッチを含む請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記スライドスイッチの移動に合わせて、提示する前記オブジェクトを変更する請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記時間内に処理可能なオブジェクトを他のオブジェクトとは異なる表示態様で表示する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記時間として、印刷の予約時間を受け付ける請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、提示した前記時間内に処理可能なオブジェクトに対して画質調整を行って、印刷ジョブを用いた印刷を指示する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置の指示により前記印刷ジョブの印刷を実行する印刷実行装置と、
を含む画像処理システム。
【請求項11】
コンピュータに、
複数のオブジェクトを有する印刷ジョブを取得し、
前記印刷ジョブに含まれるオブジェクトの画質調整に対して許容する時間を受け付け、
前記印刷ジョブに含まれる複数のオブジェクトを予め定められた優先順序で処理した場合、前記時間内に処理可能なオブジェクトを提示する処理を実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、画像処理システム、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラスタ画像処理を用いてカラー原画像を印刷装置の画像処理装置に入力し、出力画像の画質に影響を及ぼす画像処理装置の少なくとも1つの画像処理パラメータを変更し、前記少なくとも1つの画像処理パラメータの変更に基づいて、消費する材料の費用を決定し、ジョブに関する費用と所望の画質とに基づいて、出力画像を選択することが提案されている。
【0003】
特許文献2では、入力画像データを取得する画像取得部と、入力画像データを画像変換して、複数の出力条件それぞれに対応する出力画像データを生成する画像変換部と、画像変換の前後の画像データから、各画素の色特徴の変化量である色特徴量を算出する色特徴量算出部と、出力条件および出力画像データに基づいて、複数の出力条件それぞれに対応する出力画像データのコストを示すコスト情報を算出するコスト算出部と、色特徴量と、コスト情報と、出力条件の項目に対する重みが設定された重み付けテーブルとを参照して費用対効果を算出し、出力に用いる出力条件を決定する出力条件決定部と、を備える画像処理装置が提案されている。
【0004】
特許文献3には、利用者がプリンタドライバ上で「お試し印刷」を指示して原稿中の対象ページを選択すると、描画オブジェクトが含まれるか否かを解析し、描画オブジェクトがあり、かつ有効な機能がある場合に印刷品質を向上できる可能性の高い組み合わせとして推奨印刷設定を複数生成して、その中から実際に出力する推奨印刷設定を選択させ、お試し印刷を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-003263号公報
【特許文献2】特開2018-196114号公報
【特許文献3】特開2015-032262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像の画質調整を行う場合、画質調整に要する時間に対して画質調整の効果がユーザの意図するものにならない場合がある。また、画像中の全てのオブジェクトに対して画質調整を行ったのでは、時間がかかる上に、ユーザにとって不要な画質調整が行われる場合がある。
【0007】
一方、個々のオブジェクトに対して画質調整の有無をユーザが判断する場合、ユーザはジョブを受け付けるたびにその中のオブジェクトを確認し、選択を行う手間があった。
【0008】
そこで、本開示は、常に全てのオブジェクトに対して画質調整を行う場合よりも画質調整にかける時間を短縮しつつ、ユーザに画質調整を行うオブジェクトを全て選択させる場合よりも画質調整の設定にかかるユーザの手間を軽減させることが可能な画像処理装置、画像処理システム、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1態様に係る画像処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、複数のオブジェクトを有する印刷ジョブを取得し、前記印刷ジョブに含まれるオブジェクトの画質調整に対して許容する時間を受け付け、前記印刷ジョブに含まれる複数のオブジェクトを予め定められた優先順序で処理した場合、前記時間内に処理可能なオブジェクトを提示する処理を行う。
【0010】
第2態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記優先順序は、画質調整の効果が大きい順、前記オブジェクトの大きさが大きい順、画質調整の処理時間が多い順、または処理時間が必要な画質調整の種類順である。
【0011】
第3態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサは、オブジェクト毎に行う画質調整内容を決定し、決定した画質調整内容に必要な時間を算出して、前記時間内に処理可能なオブジェクトを提示する。
【0012】
第4態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサは、前記時間を受け付けるための画面を表示し、前記画面から前記時間を受け付ける。
【0013】
第5態様に係る画像処理装置は、第4態様に係る画像処理装置において、前記画面は、移動可能に設けられた、前記時間を設定するスライドスイッチを含む。
【0014】
第6態様に係る画像処理装置は、第5態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサは、前記スライドスイッチの移動に合わせて、提示する前記オブジェクトを変更する。
【0015】
第7態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサは、前記時間内に処理可能なオブジェクトを他のオブジェクトとは異なる表示態様で表示する。
【0016】
第8態様に係るがぞう処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサは、前記時間として、印刷の予約時間を受け付ける。
【0017】
第9態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサは、提示した前記時間内に処理可能なオブジェクトに対して画質調整を行って、印刷ジョブを用いた印刷を指示する。
【0018】
第10態様に係る画像処理システムは、第9態様に係る画像処理装置と、前記画像処理装置の指示により前記印刷ジョブの印刷を実行する印刷実行装置と、を含む。
【0019】
第11態様に係る画像処理プログラムは、コンピュータに、複数のオブジェクトを有する印刷ジョブを取得し、前記印刷ジョブに含まれるオブジェクトの画質調整に対して許容する時間を受け付け、前記印刷ジョブに含まれる複数のオブジェクトを予め定められた優先順序で処理した場合、前記時間内に処理可能なオブジェクトを提示する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0020】
第1態様によれば、常に全てのオブジェクトに対して画質調整を行う場合よりも画質調整にかける時間を短縮しつつ、ユーザに画質調整を行うオブジェクトを全て選択させる場合よりも画質調整の設定にかかるユーザの手間を軽減させることが可能な画像処理装置を提供できる。
【0021】
第2態様によれば、画質調整の効果が確認しやすいオブジェクトについて画質調整を確認できる。
【0022】
第3態様によれば、オブジェクト毎の画質調整内容で、設定された時間内に処理可能なオブジェクトを提示できる。
【0023】
第4態様によれば、ユーザが画面に対する操作を行うことで、画質調整に対して許容する時間を設定することが可能となる。
【0024】
第5態様によれば、時間を入力するよりも簡単に時間を設定できる。
【0025】
第6態様によれば、画質調整に対して許容する時間内に処理可能なオブジェクトを、時間の変更に合せてリアルタイムに確認できる。
【0026】
第7態様によれば、画質調整に対して許容する時間内に処理可能なオブジェクトと、他のオブジェクトを区別して認識できる。
【0027】
第8態様によれば、印刷の予約時間までに画質調整可能なオブジェクトを提示できる。
【0028】
第9態様によれば、提示した前記時間内に処理可能なオブジェクトに対して画質調整を行ってから印刷することが可能となる。
【0029】
第10態様によれば、常に全てのオブジェクトに対して画質調整を行う場合よりも画質調整にかける時間を短縮しつつ、ユーザに画質調整を行うオブジェクトを全て選択させる場合よりも画質調整の設定にかかるユーザの手間を軽減させることが可能な画像処理システムを提供できる。
【0030】
第11態様によれば、常に全てのオブジェクトに対して画質調整を行う場合よりも画質調整にかける時間を短縮しつつ、ユーザに画質調整を行うオブジェクトを全て選択させる場合よりも画質調整の設定にかかるユーザの手間を軽減させることが可能な画像処理プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係る画像処理システムの概略構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る工程管理システム、印刷前処理装置、及び印刷制御装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る印刷前処理装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
図4】本実施形態に係る印刷前処理装置で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】有効な画質調整のレコメンドの一例を示す図である。
図6】有効な画質調整のレコメンドの他の例を示す図である。
図7】グラデーション補正の効果が期待される領域の一例を示す図である。
図8】グラデーション補正の処理時間が発生する領域を示す図である。
図9】、画質調整の処理時間及び効果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る画像処理システムの概略構成を示す図である。
【0033】
本実施形態に係る画像処理システム10は、工程管理システム12、画像処理装置の一例としての印刷前処理装置14、印刷制御装置16、及び印刷装置18を備えている。なお、図1では、印刷制御装置16及び印刷装置18は1つずつ示すが、1つに限るものではなく、印刷制御装置16と印刷装置18は1対1とされ、複数対備えてもよい。また、印刷制御装置16及び印刷装置18は印刷実行装置の一例に対応する。
【0034】
工程管理システム12は、印刷装置18により印刷する印刷ジョブの受注から発注までの工程を管理する工程管理システムとして機能する。なお、印刷ジョブとは、印刷を実行するために印刷装置18が実行する処理または処理の集まりをいう。
【0035】
印刷前処理装置14は、工程管理システム12から対象のジョブデータを受信して、ジョブデータを用いて、印刷前処理を行う。印刷前処理の一例としては、画質調整として、シャープネス補正、RGB写真補正(質感補正、ホワイトバランス補正、人肌補正、空色補正等)、エッジ濃度補正、グラデーション補正等の各種補正を行う。
【0036】
印刷制御装置16は、印刷前処理が施されたジョブデータを受信し、印刷装置18を制御することにより、ジョブデータに基づく印刷を制御する。また、印刷制御装置16は、処理結果、及び印刷情報等を工程管理システム12に送信する。
【0037】
印刷装置18は、印刷制御装置16の制御により、ジョブデータに基づく印刷を実行する。印刷装置18は、例えば、商業印刷を行う印刷装置が適用される。
【0038】
続いて、工程管理システム12、印刷前処理装置14、及び印刷制御装置16の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る工程管理システム12、印刷前処理装置14、及び印刷制御装置16の電気系の要部構成を示すブロック図である。なお、工程管理システム12、印刷前処理装置14、及び印刷制御装置16は、一般的なコンピュータ構成であるため、以下では、代表して印刷前処理装置14を説明し、工程管理システム12及び印刷制御装置16の詳細な説明は省略する。
【0039】
本実施形態に係る印刷前処理装置14は、図2に示すように、CPU14A、ROM14B、RAM14C、HDD14D、操作部14E、ディスプレイ14F、及び通信回線I/F(インタフェース)部14Gを備えている。CPU14Aは、印刷前処理装置14の全体の動作を司る。ROM14Bは、各種制御プログラムや各種パラメータ等が予め記憶される。RAM14Cは、CPU14Aによる各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられる。HDD14Dは、各種のデータやアプリケーション・プログラム等が記憶される。操作部14Eはキーボードやマウス等が適用され、各種の情報を入力するために用いられる。操作部14Eは、各種の情報を表示するために用いられる。通信回線I/F部14Gは、各種通信回線に接続され、当該通信回線に接続された他の装置と各種データの送受信を行う。以上の印刷前処理装置14の各部はシステムバス14Hにより電気的に相互に接続されている。なお、本実施形態に係る印刷前処理装置14では、HDD14Dを記憶部として適用しているが、これに限らず、フラッシュメモリ等の他の不揮発性の記憶部を適用してもよい。
【0040】
以上の構成により、本実施形態に係る印刷前処理装置14は、CPU14Aにより、ROM14B、RAM14C、及びHDD14Dに対するアクセス、操作部14Eを介した各種データの取得、操作部14Eに対する各種情報の表示を各々実行する。また、印刷前処理装置14は、CPU14Aにより、通信回線I/F部14Gを介した通信データの送受信の制御を実行する。
【0041】
具体的には、印刷前処理装置14は、CPU14Aが、複数のオブジェクトを有する印刷ジョブを取得し、印刷ジョブに含まれるオブジェクトの画質調整に対して許容する時間を受け付け、印刷ジョブに含まれる複数のオブジェクトを予め定められた優先順序で処理した場合、受け付けた時間内に処理可能なオブジェクトを提示する処理を行う。
【0042】
当該処理を行うために本実施形態では、CPU14AがROM14BまたはHDD14Dに記憶された情報処理プログラムを実行することにより、図3に示す機能を有する。図3は、本実施形態に係る印刷前処理装置14の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0043】
本実施形態に係る印刷前処理装置14は、オブジェクト抽出部20、閾値設定部22、時間対効果算出部24、及び結果判定部26の機能を有する。
【0044】
オブジェクト抽出部20は、工程管理システム12から受信したジョブデータを解析し、ジョブデータからオブジェクトを抽出し、オブジェクトの種類と大きさで分類したオブジェクト情報を生成する。
【0045】
閾値設定部22は、画質調整機能を実行する際にユーザが許容する処理時間の増加許容範囲を設定する。例えば、ユーザから処理時間の増加許容範囲の閾値を受け付けて設定する。
【0046】
時間対効果算出部24は、オブジェクト情報をもとに、画質調整機能単位で処理時間と効果を算出することにより時間対効果を算出する。
【0047】
結果判定部26は、時間対効果と閾値設定部22により設定された閾値とを比較し、効果の期待できる画質調整機能を抽出する。
【0048】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る印刷前処理装置14で行われる具体的な処理について説明する。図4は、本実施形態に係る印刷前処理装置14で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図4の処理は、例えば、ユーザによって有効な画質調整のレコメンドの開始が指示された場合に開始する。
【0049】
ステップ100では、CPU14Aが、画質調整による処理時間の増加許容範囲の閾値を設定してステップ102へ移行する。すなわち、閾値設定部22が、画質調整機能を実行する際に許容する処理時間の増加許容範囲をユーザから受け付けて設定する。例えば、図5及び図6に示すような画面を表示し、処理時間の増加許容範囲を設定するスライドスイッチ30をユーザが操作して、画質調整による処理時間の増加許容範囲の閾値を受け付けて設定する。
【0050】
ステップ102では、CPU14Aが、オブジェクトサイズの閾値を算出してステップ104へ移行する。オブジェクトサイズの閾値を算出することにより、画質調整の処理単位にオブジェクトサイズの下限値を設ける。例えば、補正効果を視認できるかどうかを実験した実験値をもとに、各画質調整処理でオブジェクトサイズの閾値を予め設定しておく。サイズの閾値にはオブジェクトの面積を用いるが、面積に加えて短辺に最小値を設けてもよい。
【0051】
ステップ104では、CPU14Aが、ジョブデータからオブジェクト情報を抽出してステップ106へ移行する。すなわち、オブジェクト抽出部20が、工程管理システム12から受信したジョブデータを解析し、オブジェクトを抽出し、オブジェクトの種類と大きさで分類したオブジェクト情報を生成する。
【0052】
ステップ106では、CPU14Aが、抽出したオブジェクトの画質調整に要する処理時間を算出して加算してステップ108へ移行する。すなわち、時間対効果算出部24が、オブジェクト情報をもとに、画質調整機能単位で処理時間を算出して加算することにより合計の処理時間を求める。
【0053】
ステップ108では、CPU14Aが、オブジェクト種類が補正対象で、かつサイズが予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ110へ移行し、肯定された場合にはステップ112へ移行する。
【0054】
ステップ110では、CPU14Aが、ステップ106で加算した処理時間を減算してステップ104に戻って上述の処理を繰り返す。
【0055】
一方、ステップ112では、CPU14Aが、画質調整の効果を算出して加算し、ステップ114へ移行する。すなわち、時間対効果算出部24が、オブジェクト情報をもとに、画質調整機能の効果を算出して加算することにより効果の合計を求める。効果の算出は、例えば、画質調整の処理単位に、オブジェクト情報から効果スコアを算出する式を用意して、効果を算出する。具体的には、補正効果を視認できるかどうかの実験値をもとに、各画質調整処理で効果スコアの算出式を予め用意しておく。例えば、シャープネスは、α×s(α=シャープネスの効果係数、s=オブジェクトの面積(幅x高さ)/ページサイズ)により算出する。また、グラデーション補正は、β×s’(β=グラデーション補正の効果係数、s’=予め定めた輝度以上のハイライト部の面積/ページサイズ)により算出する。なお、予め定めた輝度の一例としては、輝度=0.299×R+G+0.114×B(R、G、Bは0以上100以下)とする。輝度の閾値は、システムで予め決めておくが、設定変更可能としてもよい。また、ハイライト部とシャドウ部とでは、視覚的に、シャドウ部に比べてハイライト部の補正効果が高く、グラデーション補正の効果が大きく異なる。そのため、シェードオブジェクトについては、グラデーション初期値、変化量(Δ)をもとにハイライト部のサイズを算出し、図7に示すグラデーション補正の効果が期待される領域を算出する。
【0056】
ステップ114では、CPU14Aが、全オブジェクトの処理が完了したか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ104に戻って他のオブジェクトを抽出して上述の処理を繰り返し、判定が肯定されたところでステップ116へ移行する。
【0057】
ステップ116では、CPU14Aが、時間対効果を算出してステップ118へ移行する。すなわち、時間対効果算出部24が時間対効果を算出する。具体的には、画質調整の処理単位に、オブジェクト情報から処理時間を算出する式を用意して処理時間を算出する。処理時間を算出する式は、実験値をもとに、画質調整処理毎に予め用意しておく。補正対象のオブジェクトでない場合の処理時間(オーバーヘッド)も実験値をもとに用意しておく。例えば、算出式は、シャープネスの場合の算出式は、a×S(a=シャープネスの処理時間係数,S=オブジェクトの面積(幅x高さ)/ページサイズ)とする。また、グラデーション補正の場合の算出式は、b×S’(b=グラデーション補正の処理時間係数、S’=オブジェクトの面積(幅x高さ)/ページサイズ)とする。グラデーション補正の効果算出においては、ハイライト部の面積に応じて効果スコアを算出するが、図8に示すように、補正処理はハイライト部だけでなくオブジェクト全体に対して行うため、処理時間はオブジェクトの面積で算出する。
【0058】
ステップ118では、CPU14Aが、有効な機能のレコメンド表示を行ってステップ120へ移行する。すなわち、結果判定部26が、時間対効果と閾値設定部22により設定された閾値とを比較し、効果の期待できる画質調整機能を抽出して、時間内に処理可能なオブジェクトを提示する。
【0059】
ここで、有効な機能をレコメンド表示する際に、レコメンドする画質調整の決定方法について説明する。
【0060】
オブジェクト毎に画質調整の処理時間及び効果を算出して記憶する。例えば、図9に示すように、各オブジェクトについて、画質調整の処理時間及び効果を算出する。また、後述するプレビュー用に、座標と大きさも記憶する。
【0061】
効果を降順にソートし、処理時間の増加許容値に収まる範囲内で効果が大きい順に画質調整を適用していく。
【0062】
例えば、処理時間の増加許容範囲が30%で100ページのジョブデータの場合、許容される処理時間は、100×30%=30となる。
【0063】
処理時間の累積が30に達するまでに適用対象となった画質調整をレコメンドする。例えば、図9の例において、シャープネスとグラデーション補正の効果が上位を占めた場合には、エッジ濃度補正はレコメンドしない。
【0064】
なお、効果を降順にソートしたが、オブジェクトの大きさを降順にソートし、処理時間の増加許容値に収まる範囲内で大きい順に画質調整を適用してもよい。或いは、処理時間を降順ソートし、処理時間の増加許容値に収まる範囲内で処理時間が多い順に画質調整を適用してもよい。或いは、処理時間が必要な画質調整の種類順にソートし、処理時間の増加許容値に収まる範囲内で処理時間が必要な画質調整の種類順に画質調整を適用してもよい。
【0065】
レコメンドの表示方法としては、例えば、図5及び図6に示すように、処理時間の増加許容範囲の設定と、適用範囲プレビューを表示する。対象オブジェクトの座標及び大きさ情報に基づいて、印刷ジョブのサムネイルに矩形画像等を重ねることで補正対象であることを表現する。例えば、図5及び図6のハッチング部分のように、異なる表示態様で表示することにより補正対象であることを表示する。
【0066】
なお、処理時間の増加許容範囲は、処理時間の増加を考慮せず、画質を優先するオプションがあってもよい。例えば、図5及び図6に示す「処理時間の増加によらず画質を優先する」が選択された場合に、処理時間の増加を考慮せずに画質を優先する。
【0067】
また、許容範囲は、図5及び図6では、「%」で指定する例を示すが、分や時間等で指定する形態としてもよい。
【0068】
また、処理時間の増加判定は、印刷ジョブ単位に実施するものとし、全ての画質調整がオフのときの予測処理時間を1とする。
【0069】
図5及び図6の例では、20%の増加許容が設定された場合、印刷ジョブの処理時間が20%増に収まる範囲内で対象オブジェクトを選定し、適用範囲プレビューに表示した例を示す。オブジェクト単位に算出する処理時間と効果をもとに、時間対効果の大きいオブジェクトから優先して適用対象に選定していく。適用範囲プレビューは、例えば、印刷ジョブのサムネイルに色付けたり、ハッチング表示したりすることで、現設定で画質調整が適用されるオブジェクトを他のオブジェクトとは異なる表示態様で表示することでユーザが確認し易くなる。或いは、プレビュー生成ボタンを押下することで適用範囲を示すプレビューを表示してもよいし、図5及び図6に示すように設定変更に伴い動的に適用範囲をプレビューしてもよい。図5及び図6では、処理時間の増加許容範囲が20%から50%にした場合の適用プレビューの例を示す。
【0070】
ステップ120では、CPU14Aが、画質調整を決定したか否かを判定する。該判定は、現設定での印刷が指示されたか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ100に戻って上述の処理を繰り返し、判定が肯定された場合にはステップ122へ移行する。
【0071】
ステップ122では、CPU14Aが、現設定での画質調整を実行して一連の処理を終了する。すなわち、ユーザは適用プレビューを確認して画質調整を指示することで、印刷前処理装置14は、処理時間の増加許容範囲内で処理可能な画質調整を行って印刷制御装置16に印刷ジョブを出力する。これにより、印刷制御装置16では、画質調整が施されたジョブデータに基づいて、印刷装置18が制御されて印刷が行われる。
【0072】
なお、上記の実施形態では、スライドスイッチ30を操作することで、処理時間の増加許容範囲を設定し、増加許容範囲に収まるオブジェクトを抽出する例を説明したが、これに限るものではない。例えば、印刷ジョブの予約時間を設定し、予約時間までに処理可能なオブジェクトを抽出してもよい。
【0073】
また、上記の実施形態において、CPUをプロセッサの一例として説明したが、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU: Graphics Processing Unit、ASIC: Application Specific Integrated Circuit、FPGA: Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0074】
また、上記の実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0075】
また、上記の実施形態に係る印刷前処理装置14で行われる処理は、ソフトウエアで行われる処理としてもよいし、ハードウエアで行われる処理としてもよいし、双方を組み合わせた処理としてもよい。また、印刷前処理装置14で行われる処理は、プログラムとして記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0076】
また、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0077】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(((1)))
プロセッサを備え、前記プロセッサは、
複数のオブジェクトを有する印刷ジョブを取得し、
前記印刷ジョブに含まれるオブジェクトの画質調整に対して許容する時間を受け付け、
前記印刷ジョブに含まれる複数のオブジェクトを予め定められた優先順序で処理した場合、前記時間内に処理可能なオブジェクトを提示する処理を行う画像処理装置。
【0078】
(((2)))
前記優先順序は、画質調整の効果が大きい順、前記オブジェクトの大きさが大きい順、画質調整の処理時間が多い順、または処理時間が必要な画質調整の種類順である(((19))に記載の画像処理装置。
【0079】
(((3)))
前記プロセッサは、オブジェクト毎に行う画質調整内容を決定し、決定した画質調整内容に必要な時間を算出して、前記時間内に処理可能なオブジェクトを提示する(((1)))又は(((2)))に記載の画像処理装置。
【0080】
(((4)))
前記プロセッサは、前記時間を受け付けるための画面を表示し、前記画面から前記時間を受け付ける(((1)))~(((3)))の何れか1つに記載の画像処理装置。
【0081】
(((5)))
前記画面は、移動可能に設けられた、前記時間を設定するスライドスイッチを含む(((4)))に記載の画像処理装置。
【0082】
(((6)))
前記プロセッサは、前記スライドスイッチの移動に合わせて、提示する前記オブジェクトを変更する(((5)))に記載の画像処理装置。
【0083】
(((7)))
前記プロセッサは、前記時間内に処理可能なオブジェクトを他のオブジェクトとは異なる表示態様で表示する(((1)))~(((6)))の何れか1つに記載の画像処理装置。
【0084】
(((8)))
前記プロセッサは、前記時間として、印刷の予約時間を受け付ける(((1)))~(((7)))の何れか1つに記載の画像処理装置。
【0085】
(((9)))
前記プロセッサは、提示した前記時間内に処理可能なオブジェクトに対して画質調整を行って、印刷ジョブを用いた印刷を指示する(((1)))~(((8)))の何れか1つに記載の画像処理装置。
【0086】
(((10)))
請求項9に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置の指示により前記印刷ジョブの印刷を実行する印刷実行装置と、
を含む画像処理システム。
【0087】
(((11)))
コンピュータに、
複数のオブジェクトを有する印刷ジョブを取得し、
前記印刷ジョブに含まれるオブジェクトの画質調整に対して許容する時間を受け付け、
前記印刷ジョブに含まれる複数のオブジェクトを予め定められた優先順序で処理した場合、前記時間内に処理可能なオブジェクトを提示する処理を実行させるための画像処理プログラム。
【0088】
(((1)))によれば、常に全てのオブジェクトに対して画質調整を行う場合よりも画質調整にかける時間を短縮しつつ、ユーザに画質調整を行うオブジェクトを全て選択させる場合よりも画質調整の設定にかかるユーザの手間を軽減させることが可能な画像処理装置を提供できる。
【0089】
(((2)))によれば、画質調整の効果が確認しやすいオブジェクトについて画質調整を確認できる。
【0090】
(((3)))によれば、オブジェクト毎の画質調整内容で、設定された時間内に処理可能なオブジェクトを提示できる。
【0091】
(((4)))によれば、ユーザが画面に対する操作を行うことで、画質調整に対して許容する時間を設定することが可能となる。
【0092】
(((5)))によれば、時間を入力するよりも簡単に時間を設定できる。
【0093】
(((6)))によれば、画質調整に対して許容する時間内に処理可能なオブジェクトを、時間の変更に合せてリアルタイムに確認できる。
【0094】
(((7)))によれば、画質調整に対して許容する時間内に処理可能なオブジェクトと、他のオブジェクトを区別して認識できる。
【0095】
(((8)))によれば、印刷の予約時間までに画質調整可能なオブジェクトを提示できる。
【0096】
(((9)))によれば、提示した前記時間内に処理可能なオブジェクトに対して画質調整を行ってから印刷することが可能となる。
【0097】
(((10)))によれば、常に全てのオブジェクトに対して画質調整を行う場合よりも画質調整にかける時間を短縮しつつ、ユーザに画質調整を行うオブジェクトを全て選択させる場合よりも画質調整の設定にかかるユーザの手間を軽減させることが可能な画像処理システムを提供できる。
【0098】
(((11)))によれば、常に全てのオブジェクトに対して画質調整を行う場合よりも画質調整にかける時間を短縮しつつ、ユーザに画質調整を行うオブジェクトを全て選択させる場合よりも画質調整の設定にかかるユーザの手間を軽減させることが可能な画像処理プログラムを提供できる。
【符号の説明】
【0099】
10 画像処理システム
14 印刷前処理装置
14A CPU
16 印刷制御装置
18 印刷装置
20 オブジェクト抽出部
22 閾値設定部
24 時間対効果算出部
26 結果判定部
30 スライドスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9