(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040023
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】スライドレール装置及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20240315BHJP
B60N 2/07 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B60N2/08
B60N2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144829
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 祐輔
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BC04
3B087BC05
3B087BC08
3B087BC16
(57)【要約】
【課題】レバーブラケットからの操作レバーの不用意な脱落を防止する。
【解決手段】スライドレール装置20は、ロアレール24と、ロアレール24に対してスライド可能に支持されるアッパレール26と、前記スライドをロックするロック機構と、前記ロックを許容するロック許容位置と前記ロックを解除するロック解除位置との間でアッパレール26に対して回転可能に支持されるレバーブラケット42と、レバーブラケット42を回転可能にレバーブラケット24に連結される操作レバー46と、レバーブラケット42に取り付けられ、操作レバー46をレバーブラケット42に係止する第1ストッパ64と、レバーブラケット42に取り付けられ、操作レバー46をレバーブラケット42に係止する第2ストッパ66と、を備えている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアレールと、
前記ロアレールに対してスライド可能に支持されるアッパレールと、
前記スライドをロックするロック機構と、
前記ロックを許容するロック許容位置と前記ロックを解除するロック解除位置との間で前記アッパレールに対して回転可能に支持されるレバーブラケットと、
前記レバーブラケットを回転可能に前記レバーブラケットに連結される操作レバーと、
前記レバーブラケットに取り付けられ、前記操作レバーを前記レバーブラケットに係止する第1ストッパと、
前記レバーブラケットに取り付けられ、前記操作レバーを前記レバーブラケットに係止する第2ストッパと、
を備えたスライドレール装置。
【請求項2】
前記第2ストッパは、前記操作レバーが前記レバーブラケットに連結される際に前記レバーブラケットに設けられた傾斜面と摺動して弾性変形した後に弾性復帰し、前記操作レバーに形成された係止部に係止される請求項1に記載のスライドレール装置。
【請求項3】
前記第2ストッパは、前記傾斜面と摺動する部位が前記傾斜面と同様の方向に傾斜している請求項2に記載のスライドレール装置。
【請求項4】
前記係止部は、前記操作レバーに形成された貫通孔であり、
前記第2ストッパは、前記弾性復帰によって先端部が前記貫通孔に挿入される請求項2又は請求項3に記載のスライドレール装置。
【請求項5】
前記ロアレールは、車体の床部と連結され、
前記アッパレールは、車両用シートのシートクッションと連結され、
前記ロアレールに対する前記アッパレールのスライド範囲の一端側へ前記アッパレール及び前記シートクッションをスライドさせることにより、前記貫通孔が前記車両用シートの上方側へ露出する請求項4に記載のスライドレール装置。
【請求項6】
シートクッションと、
前記シートクッションの後端部に下端部が連結されたシートバックと、
前記シートクッションが前記アッパレールと連結され、前記ロアレールが車体の床部と連結される請求項1又は請求項2に記載のスライドレール装置と、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に車両用シートが備えるスライドレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートを前後にスライドさせて所定位置に位置決めするためのスライドレール装置が開示されている。このスライドレール装置は、ロアレールと、ロアレールに対してスライド可能に支持されたアッパレールと、ロアレールに対するアッパレールのスライドをロックするロック機構と、前記ロックを許容する許容位置と前記ロックを解除するロック解除位置との間で回転可能にアッパレールに支持されたレバーブラケットと、レバーブラケットに連結される操作レバーと、操作レバーを押圧するレバースプリングとを備えている。操作レバーには、レバーブラケットに設けられた切り起こし部と嵌合可能な溝部と、レバースプリングの先端に設けられた曲部を挿入可能な挿入部とが設けられている。レバースプリングの曲部が操作レバーの挿入部に挿入されることにより、操作レバーがレバーブラケットに抜け止め(係止)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のスライドレール装置では、例えばレバースプリングの曲部と操作レバーの挿入部との寸法精度が低い場合、車両衝突時に操作レバーに対して過大な慣性力が作用した際に、操作レバーがレバーブラケットから脱落する懸念がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、レバーブラケットからの操作レバーの不用意な脱落を防止することができるスライドレール装置及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のスライドレール装置は、ロアレールと、前記ロアレールに対してスライド可能に支持されるアッパレールと、前記スライドをロックするロック機構と、前記ロックを許容するロック許容位置と前記ロックを解除するロック解除位置との間で前記アッパレールに対して回転可能に支持されるレバーブラケットと、前記レバーブラケットを回転可能に前記レバーブラケットに連結される操作レバーと、前記レバーブラケットに取り付けられ、前記操作レバーを前記レバーブラケットに係止する第1ストッパと、前記レバーブラケットに取り付けられ、前記操作レバーを前記レバーブラケットに係止する第2ストッパと、を備えている。
【0007】
第1の態様のスライドレール装置では、ロアレールに対するアッパレールのスライドがロック機構によってロックされる。アッパレールには、レバーブラケットが回転可能に支持されており、レバーブラケットには、操作レバーが連結されている。操作レバーの操作によってレバーブラケットがロック許容位置からロック解除位置へと回転されると、ロック機構による上記のロックが解除される。これにより、ロアレールに対してアッパレールがスライド可能となる。上記の操作レバーは、第1ストッパによってレバーブラケットに係止されると共に、第2ストッパによってもレバーブラケットに係止されている。これにより、操作レバーに対して過大な慣性力が作用した場合でも、操作レバーがレバーブラケットから不用意に脱落することを防止可能となる。
【0008】
第2の態様のスライドレール装置は、第1の態様において、前記第2ストッパは、前記操作レバーが前記レバーブラケットに連結される際に前記レバーブラケットに設けられた傾斜面と摺動して弾性変形した後に弾性復帰し、前記操作レバーに形成された係止部に係止される。
【0009】
第2の態様のスライドレール装置によれば、操作レバーがレバーブラケットに連結される際には、第2ストッパがレバーブラケットに設けられた傾斜面と摺動し、弾性変形する。第2ストッパは、弾性変形した後に弾性復帰し、操作レバーに形成された係止部に係止される。これにより、操作レバーを容易に第2ストッパによってレバーブラケットに係止することができる。
【0010】
第3の態様のスライドレール装置は、第2の態様において、前記第2ストッパは、前記傾斜面と摺動する部位が前記傾斜面と同様の方向に傾斜している。
【0011】
第3の態様のスライドレール装置によれば、第2ストッパにおいて、操作レバーの傾斜面と摺動する部位は、当該傾斜面と同様の方向に傾斜している。これにより、操作レバーと傾斜面とをスムーズに摺動させることができるので、操作レバーがレバーブラケットと連結される際に、第2ストッパをスムーズに弾性変形させることができる。
【0012】
第4の態様のスライドレール装置は、第2の態様又は第3の態様において、前記係止部は、前記操作レバーに形成された貫通孔であり、前記第2ストッパは、前記弾性復帰によって先端部が前記貫通孔に挿入される。
【0013】
第4の態様のスライドレール装置によれば、操作レバーがレバーブラケットに連結される際には、操作レバーの傾斜面との摺動によって弾性変形した第2ストッパが弾性復帰することにより、操作レバーに形成された貫通孔に第2ストッパの先端部が挿入される。このように、操作レバーに形成された貫通孔が係止部であるため、係止部を容易に形成することができる。
【0014】
第5の態様のスライドレール装置は、第4の態様において、前記ロアレールは、車体の床部と連結され、前記アッパレールは、車両用シートのシートクッションと連結され、前記ロアレールに対する前記アッパレールのスライド範囲の一端側へ前記アッパレール及び前記シートクッションをスライドさせることにより、前記貫通孔が前記車両用シートの上方側へ露出する。
【0015】
第5の態様のスライドレール装置では、車両用シートのシートクッションが連結されるアッパレールが、車体の床部と連結されるロアレールに対してスライド範囲の一端側へスライドされると、操作レバーに形成された貫通孔が車両用シートの上方側へ露出する。これにより、貫通孔に対する第2ストッパの先端部の挿入状態を工具等により解除することが可能となる。
【0016】
第6の態様の車両用シートは、シートクッションと、前記シートクッションの後端部に下端部が連結されたシートバックと、前記シートクッションが前記アッパレールと連結され、前記ロアレールが車体の床部と連結される第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様のスライドレール装置と、を備えている。
【0017】
第6の態様の車両用シートでは、スライドレール装置のロアレールが車体の床部と連結され、スライドレール装置のアッパレールがシートクッションと連結され、シートクッションの後端部にシートバックの下端部が連結されている。上記のスライドレール装置は、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様のものであるため、前記何れか1つの態様と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係るスライドレール装置及び車両用シートでは、レバーブラケットからの操作レバーの不用意な脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る車両用シートを示す側面図である。
【
図2】実施形態に係るスライドレール装置を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るスライドレール装置を示す平面図である。
【
図4】
図3のF3-F3線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図6】操作レバーの操作について説明するための
図4に対応した断面図である。
【
図7】レバーブラケットへの操作レバーの連結方法を説明するための第1の断面図である。
【
図8】レバーブラケットへの操作レバーの連結方法を説明するための第2の断面図である。
【
図9】レバーブラケットへの操作レバーの連結方法を説明するための第3の断面図である。
【
図10】レバーブラケットへの操作レバーの連結方法を説明するための第4の断面図である。
【
図11】実施形態に係るスライドレール装置の一部を示す斜視図である。
【
図12】
図5に示される構成の一部を示す断面図である。
【
図13】第2ストッパの固定構造の変形例を示す
図12に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1~
図13を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート10の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両用シート10の前後、左右、上下の方向を示すものとする。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、車両の乗員が着座するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、シートクッション12を車体の床部18に対して前後方向にスライド可能に連結するスライドレール装置20とを備えている。シートクッション12の後端部には、シートバック14の下端部が連結されており、シートバック14の上端部には、ヘッドレスト16が連結されている。この車両用シート10の前後、左右、上下の方向は、車両の前後、左右、上下の方向と一致している。
【0022】
図2及び
図3に示されるように、スライドレール装置20は、左右一対のスライドレール22と、操作レバー46とを備えている。左右のスライドレール22は、シートクッション12の左右の側部の下方に配置されている。左右のスライドレール22はそれぞれ、ロアレール24とアッパレール26とを有している。左右のロアレール24はそれぞれ、前後一対のブラケット28、30(
図1参照)を介して車体の床部18に連結(ここでは固定)されている。左右のアッパレール26はそれぞれ、シートクッション12に連結(ここでは固定)されている。なお、左右のロアレール24と床部18との間にサスペンション装置が設けられる構成にしてもよい。また、左右のアッパレール26とシートクッション12との間にリフタ機構が設けられる構成にしてもよい。
【0023】
ロアレール24及びアッパレール26は、例えば鋼板がプレス成形されて製造されたものであり、前後方向を長手とする長尺状をなしている。ロアレール24は、前後方向から見て上方側が開放された略C字状の断面を有している。アッパレール26は、前後方向から見て略ハット状(略Ω字状)の断面を有している。アッパレール26の一部は、ロアレールの内側に挿入されている。ロアレール24とアッパレール26との間には、図示しない複数のボールリテーナが介在しており、アッパレール26は、ロアレール24に対して前後方向にスライド可能に支持されている。
【0024】
図4に示されるように、ロアレール24の下壁部24Aには、前後のブラケット28、30が複数のリベット32を用いて固定されている。アッパレール26の上壁部26Aには、複数のウェルドボルト34が固定されている。これらのウェルドボルト34を用いてシートクッション12がアッパレール26に固定される。なお、アッパレール26とシートクッション12との間にリフタ機構が設けられる場合には、リフタ機構の構成要素であるライザブラケットがウェルドボルト34を用いてアッパレール26に固定される。
【0025】
アッパレール26の内側には、ロアレール24に対するアッパレール26のスライドをロックするロック機構36と、ロック機構36と操作レバー46との間に配置されるレバーブラケット42とが設けられている。ロック機構36は、アッパレール26の前後方向中央より若干後方側に配置されている。このロック機構36は、ロック部材38と、前後一対の支持ピン40と、図示しない付勢部材(ここでは前後一対の圧縮コイルスプリング)とを備えている。
【0026】
ロック部材38は、例えば鋼板がプレス成形されて製造されたものであり、左右方向から見て逆ハット状の断面を有している。ロック部材38の前後方向両端部は、ロック部材38の前後方向中間部よりも上方側に位置している。ロック部材38の前後両端部には、前後の支持ピン40が貫通している。前後の支持ピン40は、上下方向を軸線方向とする円柱状をなしており、カシメ等の手段でアッパレール26の上壁部26Aに固定されている。
【0027】
前後の支持ピン40は、上壁部26Aから下方側へ垂下しており、各支持ピン40の下端部には下端フランジ部(符号省略)が形成されている。ロック部材38は、前後の支持ピン40によって上下方向にスライド可能に支持されている。具体的には、ロック部材38は、
図4に示されるロック位置と、該ロック位置よりも下方側に設定されたアンロック位置との間で上下にスライド可能とされている。前後の支持ピン40の下端フランジ部とロック部材38の前後両端部との間には、それぞれ圧縮コイルスプリングが配置されている。各圧縮コイルスプリングは、各支持ピン40と同軸状に配置されており、ロック部材38を上方すなわちロック位置へ付勢している。
【0028】
ロック部材38の前後方向中間部の左右両端部には、図示しない複数の歯が形成されている。ロック部材38がロック位置に位置する状態では、ロック部材38に形成された複数の歯が、ロアレール24の左右両側部に形成された複数の歯24B(
図2参照)と噛み合う。これにより、ロアレール24に対するアッパレール26のスライドがロックされる。ロック部材38がアンロック位置に位置する状態では、上記の噛み合いが解除され、ロアレール24に対するアッパレール26のスライドが可能となる。
【0029】
レバーブラケット42は、ロック部材38に対する前方側でアッパレール26内に配置されている。レバーブラケット42は、例えば鋼板がプレス成形されて製造されたものであり、前後方向に長尺状をなしている。レバーブラケット42は、左右方向に対向する左右一対の側壁42A(左側の側壁42Aは図示省略)を備えている。左右の側壁42Aの前後方向中間部(長手方向中間部)は、左右方向を軸方向とする回転軸44を介してアッパレール26に支持されている。
【0030】
左右の側壁42Aの後端部には、ロック部材38の前後方向中央部に対して上方から係合(接触)した左右一対の係合部42Bが設けられている。左右の側壁42Aの前部の下端は、上下方向を板厚方向とする下壁42Cによって左右方向に連結されている。下壁42Cは、左右の側壁42Aよりも前方側へ延びている。左右の側壁42Aのうちの一方は、左右の側壁42Aのうちの他方よりも前方へ延びている。一方の側壁42Aの前端部からは、下壁42Cに対して上方から隙間をあけて対向する対向壁42Dが延出されている。下壁42Cの後端からは、上方へ向けて縦壁42Eが延出されている。
【0031】
上記構成のレバーブラケット42には、操作レバー46が連結されている。
図2~
図4に示されるように、操作レバー46は、乗員が把持する把持部48と、把持部48の左右方向両端部から左右方向の両外側へ延びる左右一対の横延部50と、左右一対の横延部50の左右方向両端部から後方へ延びる左右一対の後延部52とによって構成されている。
【0032】
把持部48は、例えば金属製のパイプ材が曲げ加工されて製造されたものであり、平面視で後方側が開放されたU字状をなしている。左右の横延部50は、例えば鋼板がプレス成形されて製造されたものであり、前後方向を板厚方向とする板状をなしている。左右の横延部50の左右方向内側端部には、把持部48の左右両端部が溶接等の手段で固定されている。左右の後延部52は、例えば鋼板がプレス成形されて製造されたものであり、前後方向を長手とする長尺状をなしている。各後延部52は、前後方向から見て下方側が開放された略U字状の断面を有している。
【0033】
左右の後延部52の後部は、左右のアッパレール26の内側に前方側から挿入されている。左右の後延部52の後部はそれぞれ、レバーブラケット42の下壁42Cと対向壁42Dとの間に挿入されており、左右の後延部52の後端は、レバーブラケット42の縦壁42Eに対して前方から当接している。これにより、左右の後延部52すなわち操作レバー46が、左右のアッパレール26内で左右のレバーブラケット42に連結されている。
【0034】
各レバーブラケット42には、左右の後延部52を各レバーブラケット42に係止(抜け止め)するための第1ストッパ64及び第2ストッパ66が取り付けられている。第1ストッパ64は、例えばばね材からなる板材がプレス成形されて製造されたものであり、前後方向を長手とする長尺状をなしている。第1ストッパ64の後部は、前後方向から見て下方側が開放された略U字状をなす固定部64Aとされている。固定部64Aは、レバーブラケット42の前後方向中間部に対して上方側から嵌合している。固定部64Aの左右の側壁には、回転軸44が貫通しており、回転軸44を用いて固定部64Aがレバーブラケット42に固定されている。固定部64Aの前端からは、前方斜め下方へ向けて弾性変形部64Bが延出されている。弾性変形部64Bの先端部は、左右方向から見て略U字状に曲げられている。
【0035】
図5に示されるように、操作レバー46の後延部52の後端部には、上下方向に貫通した第1係止孔54が形成されている。後延部52の後端がレバーブラケット42の縦壁42Eに当たった状態では、第1ストッパ64の弾性変形部64Bの先端部が第1係止孔54に挿入される。これにより、後延部52すなわち操作レバー46が第1ストッパ64によってレバーブラケット42に係止される。後延部52の後端部は、下方側へ向けて斜めに屈曲されている。後延部52の後端部の上面には、後方側へ向かって下り勾配に傾斜した第1傾斜面56が形成されている。操作レバー46がレバーブラケット42に連結される際には、弾性変形部64Bの先端部が上記の第1傾斜面56と摺動する。これにより、弾性変形部64Bが上方側へ弾性変形した後に下方側へ弾性復帰することで、弾性変形部64Bの先端部が第1係止孔54に挿入される。
【0036】
第2ストッパ66は、第1ストッパ64よりも前方側に配置されている。第2ストッパ66は、例えばばね材からなる板材がプレス成形されて製造されたものであり、前後方向を長手とする長尺状をなしている。第2ストッパ66は、上下方向を板厚方向とする板状をなしている。第2ストッパ66の後部は、レバーブラケット42の下壁部42Cの上面に重ね合わされており、前後一対のリベット68を用いて下壁部42Cに固定されている。第2ストッパ66の前部は、下壁部42Cよりも前方へ延びており、上下方向に弾性変形可能とされている。第2ストッパ66の前端部には、上方側へ屈曲された屈曲部66Aが設けられている。屈曲部66Aは、上下方向に対して若干後傾している。
【0037】
操作レバー46の後延部52の後部には、第1係止孔54よりも前方において、上下方向に貫通した第2係止孔60が形成されている。この第2係止孔60は、本発明の「貫通孔」及び「係止部」に相当する。後延部52の後端がレバーブラケット42の縦壁42Eに当たった状態では、第2ストッパ66の屈曲部66Aの上端部が第2係止孔60に挿入される。これにより、第2ストッパ66が第2係止孔60に引っ掛かり、後延部52すなわち操作レバー46が第2ストッパ66によってレバーブラケット42に係止される。後延部52において第2係止孔60が形成された箇所は、下方側へ凹んだ凹部58とされている。この凹部58は、操作レバー46の後延部52がレバーブラケット42に連結された状態で、アッパレール26の前端部に固定されたウェルドボルト34に対して下方側から対向する。
【0038】
上記凹部58の後部の下面には、前方側へ向かって下り勾配に傾斜した第2傾斜面62が形成されている。この第2傾斜面62は、本発明における「傾斜面」に相当する。操作レバー46がレバーブラケット42に連結される際には、第2ストッパ66の屈曲部66Aの上端部が第2傾斜面62と摺動する。これにより、第2ストッパ66の前部が下方側へ弾性変形した後に上方側へ弾性復帰することで、屈曲部66Aの上端部が第2係止孔60に挿入される。屈曲部66Aすなわち第2ストッパ66において第2傾斜面62と摺動する部位は、第2傾斜面62と同様の方向(前方へ向かって下る方向)に傾斜している。
【0039】
操作レバー46が連結されたレバーブラケット42は、操作レバー46の把持部を乗員が上方へ操作することによって、
図6に実線で示されるロック許容位置から
図6に二点鎖線で示されるとロック解除位置へと回転される。この際、凹部58によってウェルドボルト34と後延部52との干渉が防止される。レバーブラケット42がロック許容位置からロック解除位置へ回転されると、レバーブラケット42の係合部42Bが係合したロック部材38が
図4に示されるロック位置から図示しないアンロック位置へと移動される。これにより、左右のロアレール24に対する左右のアッパレール26のスライドが可能となり、乗員は車体の床部18に対する車両用シート10の前後位置を調整可能となる。乗員が操作レバー46の把持部48に対する操作をやめると、図示しない前後の圧縮コイルスプリングの付勢力によってロック部材38がアンロック位置からロック位置へと移動され、レバーブラケット42がロック解除位置からロック許容位置へと回転する。これにより、左右のロアレール24に対する左右のアッパレール26のスライドが再びロックされる。
【0040】
図7~
図10には、操作レバー46が左右のレバーブラケット42に連結される際の状況が図示されている。この連結の際には、先ず
図7に示されるように、操作レバー46の左右の後延部52が後方へ向かって下り勾配に傾斜して姿勢で、左右の後延部52の後端部が左右のレバーブラケット42の下壁42Cと対向壁42Dとの間に挿入される。その後、
図8~
図10に示されるように、操作レバー46が水平にされ、左右のレバーブラケット42に対して後方側へスライド(相対移動)される。このスライドの途中では、第1ストッパ64及び第2ストッパ66が第1傾斜面56及び第2傾斜面62と摺動して弾性変形する。その後、第1ストッパ64及び第2ストッパ66が弾性復帰し、弾性変形部64Bの先端部が第1係止孔54に挿入され、屈曲部66Aの上端部が第2係止孔60に挿入される(
図11参照)。アッパレール26及びシートクッション12が、ロアレール24に対するアッパレール26のスライド範囲の一端側(ここでは後端側)へスライドされると、第2係止孔60が上方側へ露出する(すなわち上方側から目視可能となる)ように構成されている。
【0041】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用シート10では、シートクッション12の後端部にシートバック14の下端部が連結され、シートクッション12がスライドレール装置20のアッパレール26に連結され、スライドレール装置20のロアレール24が車体の床部18に連結されている。
【0042】
上記のスライドレール装置20では、ロアレール24に対するアッパレール26のスライドがロック機構36によってロックされる。アッパレール26には、レバーブラケット42が回転可能に支持されており、レバーブラケット42には、操作レバー46が連結されている。操作レバー46の操作によってレバーブラケット42がロック許容位置からロック解除位置へと回転されると、ロック機構36による上記のロックが解除される。これにより、ロアレール24に対してアッパレール26がスライド可能となる。上記の操作レバー46は、第1ストッパ64によってレバーブラケット42に係止されると共に、第2ストッパ66によってもレバーブラケット42に係止されている。これにより、操作レバー46に対して過大な慣性力が作用した場合でも、操作レバー46がレバーブラケット42から不用意に脱落することを防止可能となる。
【0043】
また、この実施形態では、操作レバー46がレバーブラケット42に連結される際には、第2ストッパ66の屈曲部66Aがレバーブラケット42に設けられた第2傾斜面62と摺動し、第2ストッパ66が弾性変形する。第2ストッパ66は、弾性変形した後に弾性復帰し、操作レバー46に形成された第2係止孔60に屈曲部66Aの先端部が挿入されて係止される。これにより、操作レバー46を容易に第2ストッパ66によってレバーブラケット42に係止することができる。
【0044】
また、この実施形態では、第2ストッパ66は、レバーブラケット42の第2傾斜面62と摺動する屈曲部66Aが、第2傾斜面62と同様の方向に傾斜している。これにより、屈曲部66Aと第2傾斜面62とをスムーズに摺動させることができるので、操作レバー46がレバーブラケット42に連結される際に、第2ストッパ66をスムーズに弾性変形させることができる。
【0045】
また、この実施形態では、第2ストッパ66の屈曲部66Aが係止される操作レバー46の係止部が、後延部52に形成された第2係止孔60(貫通孔)であるため、操作レバー46の後延部52を製造する際に、第2係止孔60を貫通形成すればよいので、上記係止部を容易に形成することができる。
【0046】
また、この実施形態では、車両用シート10のシートクッション12が連結されるアッパレール26が、車体の床部18と連結されるロアレール24に対してスライド範囲の一端側(後端側)へスライドされると、操作レバー46に形成された第2係止孔60が車両用シート10の上方側へ露出する。これにより、第2係止孔60に対する屈曲部66Aの先端部の挿入状態を工具等により解除することが可能となり、操作レバー46を容易にレバーブラケット42から取り外すことができる。
【0047】
また、この実施形態では、第2ストッパ66の屈曲部66Aが上下方向に対して後傾しているので、屈曲部66Aが垂直に起立している場合と比較して、レバーブラケット42の下壁部42Cの上面からの屈曲部66Aの突出量H(
図12参照)を小さくすることができる。これにより、操作レバー46がレバーブラケット42と連結される際に、後延部52の後端部と第2ストッパ66との干渉を少なくすることができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、第2ストッパ66が2つのリベット68を用いてレバーブラケット42に固定された構成にしたが、これに限らず、
図13に示されるように構成してもよい。
図13に示される構成では、第2ストッパ66が1つのリベット70を用いてレバーブラケット42に固定されている。第2ストッパ66の後端部には、下方側へ屈曲した回止部66Bが形成されている。この回止部66Bは、レバーブラケット42の下壁部42Cに形成された回止孔72に挿入されている。これにより、第2ストッパ66がレバーブラケット42に対するリベット70回りの相対回転を規制されている。
【0049】
また、上記実施形態では、第2ストッパ66の屈曲部66Aが上下方向に対して後傾した構成にしたが、これに限らず、屈曲部66Aが垂直に起立した構成にしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、操作レバー46の後延部52に形成された第2係止孔60(貫通孔)が係止部とされた場合について説明したが、これに限らず、操作レバー46の係止部は、後延部52に形成された段部等であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、操作レバー46の後延部52に形成された凹部58の下面に第2傾斜面62が形成された構成にしたが、これに限らず、凹部58及び第2傾斜面62が省略された構成にしてもよい。
【0052】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
18 床部
20 スライドレール装置
24 ロアレール
26 アッパレール
36 ロック機構
42 レバーブラケット
46 操作レバー
60 第2係止孔(係止部)
62 第2傾斜面(傾斜面)
64 第1ストッパ
66 第2ストッパ