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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004003
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】3次元モデル生成システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/10 20060101AFI20240109BHJP
   E02D 23/06 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E02D23/10
E02D23/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103416
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】利根 誠
(72)【発明者】
【氏名】新井 碧
(57)【要約】
【課題】ニューマチックケーソン工法における作業室内の3次元モデルが簡単かつ正確に生成できるようにするとともに、開口率が簡単かつ正確に算出できるようにする。
【解決手段】3次元モデル生成システムを、作業室Mの天井面に取り付けられ、その取付位置の座標が書き込まれたコード画像10を鉛直下向きに映写する投影装置11と、前記投影装置11によって映写されたコード画像10を含む作業室M内を撮像する撮像装置12と、前記撮像装置12によって撮像された画像データを画像処理し、作業室M内の3次元モデルを生成する解析装置13とで構成する。前記コード画像10が特徴点となって、画像処理におけるドーミング現象が防止できる。前記コード画像10に書き込まれた座標を読み取ることにより、スケールの整った3次元モデルが生成できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックケーソン工法における作業室内の3次元モデルを生成するシステムであって、
作業室の天井面に取り付けられ、その取付位置の座標が書き込まれたコード画像を鉛直下向きに映写する投影装置と、前記投影装置によって映写されたコード画像を含む作業室内を撮像する撮像装置と、前記撮像装置によって撮像された画像データを画像処理し、作業室内の3次元モデルを生成する解析装置とからなることを特徴とする3次元モデル生成システム。
【請求項2】
前記撮像装置は、ケーソンの刃口が延びる方向に沿って間隔を空けて複数設けられている請求項1記載の3次元モデル生成システム。
【請求項3】
前記撮像装置は、ケーソンの刃口が延びる方向に沿って間隔を空けて複数設けられた撮像装置列が、ケーソンの刃口が延びる方向と直交する方向に複数列で設けられている請求項1記載の3次元モデル生成システム。
【請求項4】
前記投影装置から前記コード画像までの鉛直方向の距離を計測する高さ計測装置が、前記投影装置又はその近傍に備えられている請求項1記載の3次元モデル生成システム。
【請求項5】
前記投影装置は、前記コード画像以外の領域に、画像処理の際に特徴点となり得る特徴画像を映写している請求項1記載の3次元モデル生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法における作業室内の3次元モデル生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ニューマチックケーソン工法は、ケーソン下部に気密な作業室を設け、そこに地盤の間隙水圧に見合った圧縮空気を送り込むことにより地下水の浸入を防ぎ、ドライな状態で土砂を掘削・搬出しながら、地上で構築したケーソンを徐々に沈設する工法である。前記ニューマチックケーソン工法では、掘削および搬出の機械化が進み、作業員が高気圧下の作業室に入るのは、掘削機械の点検や整備等ごく限られた作業のみとする無人化施工または機械化施工が進められており、これまでに多くの実績をあげている。
【0003】
ケーソンの沈設に当たっては、作業室底面の土砂を掘削して函外に排土することにより、刃口部分の支持力を減じて、ケーソンの自重等によってケーソンを沈下させる沈下掘削が行われる。ケーソンの沈下に伴って、作業室周縁部の掘残し土が隆起し、刃口部分の支持力が上昇することにより、この支持力等がケーソンの自重等とほぼ釣り合ったところで、ケーソンの沈下が停止する。
【0004】
ケーソンの沈下掘削において、ケーソンを傾斜や過沈下させることなく正しく沈下させるため、ケーソン底面積Aに対して、この底面積Aから作業室周縁部の掘残し土の面積A’を差し引いた開口部の面積A-A’の割合である開口率(A-A’)/Aという指標を用いて刃口部分の支持力を管理している。
【0005】
前記開口率の算出には掘残し土の面積を正確に測定することが重要となるが、従来は、潜函工が作業室に入り込み、スケール等で掘残し土の幅を計測し、地上で手作業または電子計算機に組み込まれた表計算ソフトによって開口率を算出していた。
【0006】
しかし、近年では、潜函工が高圧下の作業室に入ることによる健康被害を防止するとともに、作業室内の掘削状況をリアルタイムで把握できるようにするため、掘残し土を自動で計測する技術や作業室内の3次元モデルを自動で生成する技術が開発されつつある。
【0007】
例えば下記特許文献1には、ケーソンの底版の下面側の基準点に設けられ、掘削される下面側の土砂のケーソン刃口近傍の掘残し部の法面から前記基準点までの距離を測定する、レーザーなどの測距装置が備えられたものが開示されている。
【0008】
また、下記特許文献2には、掘残し土の表面形状をリアルタイムに計測する計測システムとして、掘削機の旋回体の旋回角をリアルタイムに計測して、その計測値を出力する旋回角計測器と、掘削機の旋回体に設けられ、作業室の周縁に向けてレーザー光を照射しながら前記レーザー光を上下方向に偏向することによって、前記レーザー光の入射箇所までの距離と前記レーザー光の照射方向の抑俯角とをリアルタイムに計測し、その計測値を出力する距離・抑俯角計測器とを備える計測システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-229826号公報
【特許文献2】特開2020-90798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1、2記載のシステムでは、測距装置としてレーザーを用いているため、レーザー光が照射される全ての物体が点群化され、開口率の算定に不要な物体(例えば仮置土、重機、走行レール等)を削除する処理に手間と時間を要する。さらに、ケーソン函内の掘削面に水溜まりが存在すると、レーザー光の反射特性より、距離の測定が困難となるなどの問題がある。
【0011】
また、特許文献1では、レーザーを発する測距装置が、作業室の天井面に設けられたレールに沿って走行するようになっているが、この作業室の天井面にはケーソンショベル機やアースバケット等が備えられ常時稼働しているため、掘削時とレーザーによる計測時の段取り替えが非常に煩雑となる欠点がある。
【0012】
そこで本発明の主たる課題は、ニューマチックケーソン工法における作業室内の3次元モデルが簡単かつ正確に生成できるとともに、開口率が簡単かつ正確にに算出できる3次元モデル生成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、ニューマチックケーソン工法における作業室内の3次元モデルを生成するシステムであって、
作業室の天井面に取り付けられ、その取付位置の座標が書き込まれたコード画像を鉛直下向きに映写する投影装置と、前記投影装置によって映写されたコード画像を含む作業室内を撮像する撮像装置と、前記撮像装置によって撮像された画像データを画像処理し、作業室内の3次元モデルを生成する解析装置とからなることを特徴とする3次元モデル生成システムが提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明では、前記撮像装置によって撮像された画像データを前記解析装置で画像処理することによって、作業室内の3次元モデルを生成し、この3次元モデルから開口率を求めている。
【0015】
画像処理において、画像データに特徴点が少ないと、端に行くに従って歪みが強くなるドーミング現象が発生し、3次元モデルの生成に失敗するおそれがある。そこで本発明では、前記撮像装置によって撮像された画像データに、前記投影装置によって映写されたコード画像を含めることにより、明確な特徴点を付加している。これによって、画像処理におけるドーミング現象が防止でき、3次元モデルが簡単かつ正確に生成できるようになる。
【0016】
また、前記撮像装置で撮像された画像データは無次元数であるため、開口率を求めるには実寸サイズに調整する必要がある。そこで本発明では、前記コード画像に座標を書き込み、その書き込まれた座標を読み取ることにより、速やかにスケールの整った3次元モデルが簡単かつ正確に生成できるようにしている。
【0017】
このように、本発明では、前記投影装置によって映写されたコード画像を含む領域の画像データを前記撮像装置によって撮像することにより、それぞれの画像データに特徴点が付加され、3次元モデルを生成したときのドーミング現象が抑制できるとともに、そのコード画像に書き込まれた座標を読み取ることにより3次元モデルのスケールが自動調整できるようになる。したがって、ニューマチックケーソン工法における作業室内の3次元モデルから、開口率が正確にかつ簡単に算出できるようになる。
【0018】
請求項2に係る本発明として、前記撮像装置は、ケーソンの刃口が延びる方向に沿って間隔を空けて複数設けられている請求項1記載の3次元モデル生成システムが提供される。
【0019】
上記請求項2記載の発明では、作業室周縁部の掘残し土の状況が正確に把握できるように、撮像装置をケーソンの刃口が延びる方向に沿って所定の間隔で複数設けている。
【0020】
請求項3に係る本発明として、前記撮像装置は、ケーソンの刃口が延びる方向に沿って間隔を空けて複数設けられた撮像装置列が、ケーソンの刃口が延びる方向と直交する方向に複数列で設けられている請求項1記載の3次元モデル生成システムが提供される。
【0021】
上記請求項3記載の発明では、ケーソンの刃口が延びる方向に沿って配列した撮像装置列を、ケーソンの刃口が延びる方向と直交する方向に複数列で設けている。このため、作業室周縁部の掘残し土の状況がより正確に把握できるようになる。
【0022】
請求項4に係る本発明として、前記投影装置から前記コード画像までの鉛直方向の距離を計測する高さ計測装置が、前記投影装置又はその近傍に備えられている請求項1記載の3次元モデル生成システムが提供される。
【0023】
上記請求項4記載の発明では、作業室の高さが掘削状況や地質等によって異なることから、前記コード画像には平面方向(x、y)の座標のみを書き込み、高さ方向(z)の座標は、別途高さ計測装置によって計測したデータを用いることとしている。この高さ計測装置としては、目盛りが付された紐状のものを天井面から垂下させたものや、レーザー距離計などを用いることができる。
【0024】
請求項5に係る本発明として、前記投影装置は、前記コード画像以外の領域に、画像処理の際に特徴点となり得る特徴画像を映写している請求項1記載の3次元モデル生成システムが提供される。
【0025】
前述したとおり、前記解析装置によって3次元モデルを生成する際、ドーミング現象の発生抑制のために撮像された画像データに特徴点が必要となる。上記請求項5記載の発明では、前述のコード画像に加えて、前記投影装置によって特徴画像を映写することで更に特徴点を増加させている。前記特徴画像としては、特徴的な画像であれば特に制限はないが、ランダムに配置された模様が好ましく、例えばまだら模様や唐草模様、アニマル柄等を用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上詳説のとおり本発明によれば、ニューマチックケーソン工法における作業室内の3次元モデルが簡単かつ正確に生成できるとともに、開口率が簡単かつ正確に算出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る3次元モデル生成システムを適用したニューマチックケーソン工法におけるケーソン1の下部を示す縦断面図である。
図2】開口率を説明する作業室Mの平面図である。
図3】作業室天井における機器の配置を示す平面図である。
図4】作業室Mの周縁部を示す部分斜視図である。
図5】撮像装置12による画像データの撮像エリアを示す図である。
図6】3次元モデル(メッシュモデル)の生成例を示す斜視図である。
図7】結合した3次元モデル(メッシュモデル)の生成例を示す斜視図である。
図8】特徴画像14を付加したコード画像10の映写画像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0029】
ニューマチックケーソン工法は、図1に示されるように、ケーソン1の底版1aとその周囲に垂下状に設けられた刃口1bとによって囲まれた気密性の空間を作業室Mとし、この作業室M内にケーソン1の側壁1c内に埋設された給気管3を介して圧縮空気を送り、地盤の間隙水圧と見合う気圧状態とすることにより湧水を防止しながら、作業室M内で地盤Gの掘削および土砂の搬出を行うとともに、地上において上部側に連結するケーソンを順次構築し、ケーソン1を徐々に所定の深さ位置まで沈設するものである。
【0030】
また、掘削土砂の搬出のために、ケーソン1の底版1aより中空のマテリアルシャフト4が垂直に建てられるとともに、その隣接位置には、作業員の連絡のためのマンシャフト6が設けられている。
【0031】
作業室M内における地盤Gの掘削に際し、遠隔制御による掘削機、具体的には作業室Mの天井面(底版1aの下面)に配設固定した走行レール8に沿って移動可能としたショベル9が設置され、無人化施工が導入されている。前記ショベル9によって掘削された土砂は、図示しない自動積込み機により、前記マテリアルシャフト4を通して吊り降ろされたアースバケット(図示せず)に積み込まれ、外部に搬出される。
【0032】
前記ショベル9を遠隔操縦して、地盤Gの掘削を行うと、地盤Gのうち作業室Mの周縁部の掘残し土2から刃口1bの内周面に作用する支持力が減少することにより、ケーソン1の自重等(ケーソン1の内部に注入した荷重水等の重量も含む)によってケーソン1が沈下する。ケーソン1の沈下に伴い掘残し土2が隆起して、刃口1bにかかる支持力が上昇し、この支持力がケーソン1の自重等とほぼ釣り合ったところで、ケーソン1の沈下が停止する。
【0033】
図2に示されるように、ケーソン1の底面積Aに対して、この底面積Aから作業室Mの周縁部の掘残し土2の面積A’を差し引いた開口部の面積A-A’の割合を、開口率(A-A’)/Aと定義し、この開口率を用いてケーソン1の沈下掘削を管理している。
【0034】
本発明は、ニューマチックケーソン工法における作業室M内の3次元モデルを生成するシステムであり、これにより生成された、特に掘残し土2の3次元モデルから、掘残し土2の面積A’を測定することにより、開口率が簡単かつ正確に算出できるようにしたものである。
【0035】
本発明に係る3次元モデル生成システムは、図1及び図3に示されるように、作業室Mの天井面(底版1aの下面)に取り付けられ、その位置の座標が書き込まれたコード画像10(図4参照。)を鉛直下向きに映写する投影装置11と、前記投影装置11によって映写されたコード画像10を含む作業室M内を撮像する撮像装置12と、前記撮像装置12によって撮像された画像データを取り込んで画像処理し、作業室Mの3次元モデルを生成する解析装置13とから構成される。さらに、作業室M内を照明する照明装置(図示せず)が適宜設けられている。
【0036】
画像処理において、画像データに特徴点が少ないと、メッシュモデルのメッシュの頂点となる場所がずれ、端に行くに従って歪みが強くなるドーミング現象が発生し、3次元モデルの生成に失敗するおそれがある。そこで、本発明では、作業室M内に投影された前記コード画像10を含むように、前記撮像装置12により画像データを撮像することによって、画像データに明確な特徴点が設けられ、画像処理におけるドーミング現象が防止できる。ニューマチックケーソン工法では、掘削する深度の土質によって作業室M内の土砂の状況が逐一変化する。例えば、軟弱地盤を掘削する深度では作業室Mの壁面(刃口1bの内面)に土砂が盛られやすく、作業室Mの壁面が土砂で隠れる場合もある。このため、作業室Mの壁面に特徴的なマーカーを固定的に設けたのでは、盛り上がった土砂が障害となったり、泥はねなどの影響で正常に撮像できない場合がある。そこで、本発明では、投影装置11を用いて、特徴点となるコード画像10を地盤Gに投影することとした。これによって、土砂の状況に関係なく、また汚損などが生じない特徴点が付加できるようになる。
【0037】
前記撮像装置12によって撮像された画像データは無次元数であるため、掘残し土2の面積から開口率を求めるには実寸サイズに調整する必要がある。本発明では、作業室M内に投影された前記コード画像10に座標が書き込まれているため、この座標を読み取ることにより、速やかにスケールの整った3次元モデルが簡単かつ正確に生成できるようになる。
【0038】
以上の通り、本発明では、前記投影装置11によって映写されたコード画像10を含む画像データが前記撮像装置12によって撮像されるため、それぞれの画像データに明確な特徴点が付加され、3次元モデルを生成したときのドーミング現象が抑制できるとともに、そのコード画像10に書き込まれた座標を読み取ることにより3次元モデルのスケールが自動調整できる。したがって、ニューマチックケーソン工法における作業室M内の3次元モデルから、開口率が正確かつ簡単に算出できるようになる。
【0039】
次に、本発明に係る3次元モデル生成システムの各構成要素について、更に詳細に説明すると、
前記投影装置11は、投影面に向けて光を照射して画像を映し出す、いわゆるプロジェクタである。前記投影装置11は、作業室Mの天井面(ケーソン1の底版1aの下面)をxy平面とする所定のxy座標位置に固定されており、そこからコード画像10を地盤Gの上面(地面)に対して鉛直下向きに映写する。なお、1つの投影装置11によって、1つのコード画像10が映写されており、コード画像10の中心が前記投影装置11のxy座標に一致する。
【0040】
前記投影装置11は、ケーソン1の刃口1bが延びる方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。このため、前記コード画像10は、刃口1b下端の刃先1dから所定の離隔距離を空けた作業室M内の地盤Gに、刃口1bが延びる方向に沿って間隔を空けて複数設けられるようになる。前記投影装置11の刃口1bが延びる方向に対する間隔は任意であるが、前記撮像装置12で撮像するそれぞれの画像データの中に、少なくとも1つのコード画像10が含まれるように配置するのが好ましい。前記投影装置11は、刃口1bが延びる方向と直交する方向に複数列で配置してもよい。
【0041】
前記コード画像10としては、書き込まれたデータが専用の読取り装置によって読み取り可能なコードであれば特に制限はないが、QRコード(登録商標)などの2次元コードやバーコードなどが用いられる。前記コード画像10に書き込まれた座標は、図3に示されるように、作業室天井の平面内(xy平面内)における前記投影装置11が設置された座標(x、y)である。
【0042】
一方、高さ座標(z座標)は、地盤Gの上面と作業室Mの天井面との距離が土質などによって変化するため、その都度測定する必要がある。このため、本発明では、前記投影装置11からコード画像10までの鉛直方向の距離を計測する高さ計測装置(図示せず)が、前記投影装置11又はその近傍に備えられている。前記高さ計測装置としては、目盛りが付された紐状のものを天井面から垂下させ、前記撮像装置12で撮像された画像データを解析することにより読み取るものや、レーザー距離計、超音波距離計などを用いることができる。この高さ計測装置は、前記投影装置11に内蔵させてもよいし、投影装置11とは別にその近傍に配置してもよい。
【0043】
前記撮像装置12による画像データの撮像は、連続的な静止画でもよいし、動画でもよい。前記撮像装置12は、デジタルカメラが用いられ、撮像した画像データを地上の解析装置13に電送可能な電送手段を備えている。この撮像装置12としては、例えば、カメラの向きを水平方向(パン)及び上下方向(チルト)に自動又は手動で遠隔操作することが可能な360度カメラを用いることができる。前記360度カメラとは、カメラの向きを、少なくとも水平方向のほぼ全周(350~360°)に亘って変化させることができるカメラであり、上下方向に対しては水平方向を0°としたとき下方向に約90°変化させることができるカメラである。
【0044】
前記撮像装置12は、作業室Mの天井面に取り付けられている。前記撮像装置12の取付けは、撮像装置12の定着面にマグネットが装備され、鋼板からなる作業室Mの天井に前記マグネットの磁力で固定できるようにするのが好ましい。これによって、天井面に対し容易に設置できるとともに、位置の微調整が容易となる。前記撮像装置12が作業室Mの天井面に固定されることにより、撮像装置12による撮像が走行レール8を移動するショベル9の掘削作業に影響を与えず、作業性が向上できる。
【0045】
前記撮像装置12は、図3に示されるように、ケーソン1の刃口1bが延びる方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。これによって、作業室Mの周縁部の掘残し土2の状況が正確に把握できる。
【0046】
図3に示される形態例では、前記撮像装置12は、ケーソン1の刃口1bが延びる方向に沿って間隔を空けて複数設けられた撮像装置列が、ケーソン1の刃口1bが延びる方向と直交する方向に複数列で設けられている。前記撮像装置列を複数列で設けることにより、作業室周縁部の掘残し土2の状況がより正確に把握できるとともに、支障物が存在したり、逆光で撮影できないなどの現場の環境変化にも対応可能となる。図3に示される形態例では、前記撮像装置列が2列で設けられているが、3列以上で設けてもよい。
【0047】
隣り合う撮像装置12の間隔は任意であるが、1~5m、好ましくは2~3mである。この間隔が小さすぎると、撮像装置12の設置台数が多くなり、画像データが多くなりすぎて解析に時間がかかるとともに、費用が嵩む。一方、この間隔が大きすぎると、隣り合う撮像装置12によって撮像した画像データ同士のラップが小さくなって解析精度が低下するおそれがある。
【0048】
図5は、刃口1bに近い側の第1列目の撮像装置列による画像データの取得範囲D1と、刃口1bから遠い側の第2列目の撮像装置列による画像データの取得範囲D2とを示したものである。第1列目に配置された撮像装置12は、隣り合う撮像装置12同士で、半分以上、好ましくは60%以上の領域が重なるように画像データを撮像する。また、第2列目に配置された撮像装置12は、第1列目の画像データの範囲D1を全て包含し、これより広い範囲の画像データを撮像する。
【0049】
前記撮像装置12で撮像された画像データのうち、画像解析に不要な支障物等が映り込んだ画像データは、画像解析から除外するのが好ましく、これにより、作業室M内の掘削状況が適確に把握できるようになる。また、作業現場では、撮影対象エリアに支障物が現れるときがしばしばあるが、撮像装置12は常設されているため、一過性の支障物であれば、その支障物が過ぎ去った後に画像取得することで対処し、支障物がしばらく常駐するときでも、隣り合う撮像装置12の視差補間により、そのデータ欠損をカバーすることにより、作業室M内の3次元モデルを生成する際に支障物をできる限り除外するのが好ましい。
【0050】
前記撮像装置12によって撮像された画像データは、地上の操作室に設置されたコンピュータ等の解析装置13に電送され、この解析装置13で画像処理が行われる。この画像処理では、空中三角測量(AT)の原理を用いて、多数の画像データに基づいて、3次元のメッシュモデルを生成する。画像処理には、公知のSfM(Structure from Motion)系ソフトウェアを用いることにより自動的に3次元モデルを生成することが可能となる。
【0051】
前記画像処理(SfM処理)では、多数の画像データを解析して、それぞれの画像データの3次元座標及び撮像方向(撮像姿勢)を推定するとともに、それぞれの画像データに存在している特徴点(前記コード画像10など)を検出して、隣り合う画像データ同士に共通して存在する特徴点を利用して、画像データ同士のマッチングを行い、多視点画像計測による点群生成を行うことで、例えば図6に示されるような区画エリア毎の3次元モデル(3次元メッシュモデル)を生成する。生成した3次元メッシュモデルに、画像データから表面テクスチャを追加して、表面の外観を実物と一致させてもよい。
【0052】
前記画像処理は、比較的小型のケーソンであれば、作業室Mの全体に亘って連続した一体の3次元モデルを生成するように行われるが、比較的大型のケーソンの場合は、作業室Mを複数のエリアに区画し、各エリア毎に3次元モデルを生成した後、これらの3次元モデルを前記コード画像10の座標に基づいて結合するように行われる。図7に示される形態例では、作業室Mを3つのエリアM1、M2、M3に区画し、それぞれのエリア毎に3次元メッシュモデルを生成した後、これらを結合したものである。
【0053】
画像処理の際の特徴点を増やしてドーミング現象の発生を防止するとともに、画像処理精度の向上を図るため、図8に示されるように、前記コード画像10以外の領域に、画像処理の際に特徴点となり得る特徴画像14を映写するのが望ましい。前記特徴画像14は、特徴的な画像であれば特に制限はないが、ランダムに配置された模様などが好ましく、例えば、図示例のようなまだら模様や唐草模様、アニマル柄を挙げることができ、この他に、円、四角形、星形等の図形や文字、記号等をランダムに配置したものなどでもよい。
【0054】
以上の構成からなる3次元モデル生成システムを用いてケーソンの沈下掘削を行うには、前記撮像装置12によって画像データを取得し、前記解析装置13によって作業室M内の3次元モデルを生成した後、この3次元モデルから掘残し土2の面積を求め、開口率を算出する。算出した現在の開口率と設計値とを比較し、それに基づいて次の掘削計画を立て、ショベル9に掘削の指示を与える。所定の掘削を終えたら、再度、前記撮像装置12による画像データを取得するという手順を繰り返す。
【符号の説明】
【0055】
1…ケーソン、2…掘残し土、3…給気管、4…マテリアルシャフト、6…マンシャフト、8…走行レール、9…ショベル、10…コード画像、11…投影装置、12…撮像装置、13…解析装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8