(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040038
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】構造材の接合構造
(51)【国際特許分類】
F16B 7/18 20060101AFI20240315BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240315BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16B7/18 E
E04B1/58 505F
E04B1/58 505Z
E04B1/24 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144852
(22)【出願日】2022-09-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】522121218
【氏名又は名称】株式会社BRAING
(71)【出願人】
【識別番号】515075669
【氏名又は名称】株式会社鶴元製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸介
(72)【発明者】
【氏名】鶴元 清一郎
【テーマコード(参考)】
2E125
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AA02
2E125AA12
2E125AB02
2E125AC13
2E125AC21
2E125AG03
2E125AG12
2E125CA05
3J039AA07
3J039BB02
3J039GA07
(57)【要約】
【課題】安定した高い強度でXYZ方向に延設された3つの構造材を接合して、構造体の角部を形成することができる構造材の接合構造を提供する。
【解決手段】ボルト及びナットをそれぞれ備えた3組の固定具10~14と、直角に屈曲された隣り合う平板部を有する構造材本体と、構造材本体の先方に設けられ、直角に屈曲された隣り合う平板部の両外縁から中心屈曲部に向かって傾斜して形成された隣り合う傾斜平板部を有する傾斜板と、傾斜板のそれぞれの傾斜平板部の傾斜辺を折り曲げ線として傾斜平板部に対して内側に垂直に折り曲げられると共に、固定具10~14を挿通可能な固定孔を有する接合板と、をそれぞれ備えた3つの構造材X1,Y1,Z1と、を少なくとも用い、3つの構造材X1,Y1,Z1がそれぞれXYZ方向に延設されて構造体の角部を形成する構造材の接合構造1である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト及びナットをそれぞれ備えた3組の固定具と、
直角に屈曲された隣り合う平板部を有する構造材本体と、該構造材本体の先方に設けられ、前記直角に屈曲された隣り合う平板部の両外縁から中心屈曲部に向かって傾斜して先端にそれぞれ頂角を形成する隣り合う傾斜平板部を有する傾斜板と、前記傾斜板のそれぞれの傾斜平板部の傾斜辺を折り曲げ線として前記傾斜平板部に対して内側に垂直に折り曲げられると共に、前記固定具を挿通可能な固定孔を有する接合板と、をそれぞれ備えた3つの構造材と、
を少なくとも用い、前記3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設されて構造体の角部を形成する構造材の接合構造であって、
前記3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が互いに当接され、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設するよう、3つの構造材の端部が突き合わされることにより、
X方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、
X方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Y方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、
Y方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、
前記ボルト及びナットが前記構造材の固定孔に挿通状態で固定されることにより、前記3つの構造材が接合されることを特徴とする構造材の接合構造。
【請求項2】
少なくとも3つの屈曲支持板をさらに用いた構造材の接合構造であって、
前記屈曲支持板は、120°に屈曲された隣り合う平板部と、前記平板部にそれぞれ形成された前記固定具を挿通する挿通孔とを備えており、
前記3つの屈曲支持板が、前記3つの構造材から形成される角部の頂点を通る内方中心線にそれぞれの屈曲部が近接するように、かつ、前記3つの構造材にそれぞれ対応して周方向に配設され、
前記屈曲支持板の挿通孔及び構造材の固定孔に固定具が挿通されて固定されることを特徴とする請求項1記載の構造材の接合構造。
【請求項3】
前記構造材に設けられた1対の接合板がそれぞれ延設されて、該延設端部が、前記3つの構造材から形成される角部の頂点を通る内方中心線で、近接、当接又は接着されていることを特徴とする請求項1記載の構造材の接合構造。
【請求項4】
前記XYZ方向の3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の先端の頂角が45°であることを特徴とする請求項1記載の構造材の接合構造。
【請求項5】
前記構造材が、傾斜平板部1つに対して2つ以上の固定孔を有し、該2つ以上の固定孔に挿通状態で固定される固定具を備えていることを特徴とする請求項1記載の構造材の接合構造。
【請求項6】
前記構造材本体が、所定の長さを有する断面L字状の部材であることを特徴とする請求項1記載の構造材の接合構造。
【請求項7】
前記構造材本体が、その後方にXYZ方向に延在される3つの長尺部材を固定する長尺部材固定部を備えていることを特徴とする請求項1記載の構造材の接合構造。
【請求項8】
前記構造材の接合板の固定孔の中心線と交差する構造材本体に、前記ボルト及びナットを締結する締結具を挿入するための締結具挿入孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の構造材の接合構造。
【請求項9】
前記構造材が、一枚の金属板を折り曲げて形成されていることを特徴とする請求項1記載の構造材の接合構造。
【請求項10】
前記請求項1~9のいずれか記載の接合構造を角部に備えていることを特徴とする構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設されて構造体の角部を形成する構造材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設されて構造体の角部を形成する構造材の接合構造としては、例えば、3本の金属製構造材の端部同士が溶接により接合されたものが知られている(
図12参照)。しかしながら、溶接は、熟練した技術が必要であり、製品の品質が作業者の技量に左右されやすく、その接合強度の検知(不良品の検知)も難しいといった問題がある。したがって、これらの問題を解決できる溶接を必要としない新たな構造材の接合構造が望まれている。
【0003】
溶接を必要としない構造材の接合構造としては、例えば、第1,第2,第3の各構造材におけるそれぞれの端部を互に交差した状態に組合せた構造材端部の接合構造であって、第2構造材における第1辺の端部に備えた係合凹部又は係合凸部に、第3構造材における第2辺の端部に備えた係合凸部又は係合凹部を係合して備え、第2構造材における第2辺の端部に備えた係合凹部又は係合凸部に、第1構造材における第1辺の端部に備えた係合凸部又は係合凹部を係合して備え、第3構造材における第1辺の端部に備えた係合凹部又は係合凸部に、第1構造材における第2辺の端部に備えた係合凸部又は係合凹部を係合して備えている構造材端部の接合構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、安定した高い強度でXYZ方向に延設された3つの構造材を接合して、構造体の角部を形成することができる構造材の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、溶接を必要としない、構造体の角部を形成する構造材の接合構造について鋭意検討した結果、新たな構造材の接合構造を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]ボルト及びナットをそれぞれ備えた3組の固定具と、
直角に屈曲された隣り合う平板部を有する構造材本体と、該構造材本体の先方に設けられ、前記直角に屈曲された隣り合う平板部の両外縁から中心屈曲部に向かって傾斜して先端にそれぞれ頂角を形成する隣り合う傾斜平板部を有する傾斜板と、前記傾斜板のそれぞれの傾斜平板部の傾斜辺を折り曲げ線として前記傾斜平板部に対して内側に垂直に折り曲げられると共に、前記固定具を挿通可能な固定孔を有する接合板と、をそれぞれ備えた3つの構造材と、
を少なくとも用い、前記3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設されて構造体の角部を形成する構造材の接合構造であって、
前記3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が互いに当接され、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設するよう、3つの構造材の端部が突き合わされることにより、
X方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、
X方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Y方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、
Y方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、
前記ボルト及びナットが前記構造材の固定孔に挿通状態で固定されることにより、前記3つの構造材が接合されることを特徴とする構造材の接合構造。
【0008】
[2]少なくとも3つの屈曲支持板をさらに用いた構造材の接合構造であって、
前記屈曲支持板は、120°に屈曲された隣り合う平板部と、前記平板部にそれぞれ形成された前記固定具を挿通する挿通孔とを備えており、
前記3つの屈曲支持板が、前記3つの構造材から形成される角部の頂点を通る内方中心線にそれぞれの屈曲部が近接するように、かつ、前記3つの構造材にそれぞれ対応して周方向に配設され、
前記屈曲支持板の挿通孔及び構造材の固定孔に固定具が挿通されて固定されることを特徴とする上記[1]記載の構造材の接合構造。
【0009】
[3]前記構造材に設けられた1対の接合板がそれぞれ延設されて、該延設端部が、前記3つの構造材から形成される角部の頂点を通る内方中心線で、近接、当接又は接着されていることを特徴とする上記[1]記載の構造材の接合構造。
【0010】
[4]前記XYZ方向の3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の先端の頂角が45°であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか記載の構造材の接合構造。
[5]前記構造材が、傾斜平板部1つに対して2つ以上の固定孔を有し、該2つ以上の固定孔に挿通状態で固定される固定具を備えていることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか記載の構造材の接合構造。
[6]前記構造材本体が、所定の長さを有する断面L字状の部材であることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか記載の構造材の接合構造。
[7]前記構造材本体が、その後方にXYZ方向に延在される3つの長尺部材を固定する長尺部材固定部を備えていることを特徴とする上記[1]~[6]のいずれか記載の構造材の接合構造。
[8]前記構造材の接合板の固定孔の中心線と交差する構造材本体に、前記ボルト及びナットを締結する締結具を挿入するための締結具挿入孔が設けられていることを特徴とする上記[1]~[7]のいずれか記載の構造材の接合構造。
[9]前記構造材が、一枚の金属板を折り曲げて形成されていることを特徴とする上記[1]~[8]のいずれか記載の構造材の接合構造。
[10]上記[1]~[9]のいずれか記載の接合構造を角部に備えていることを特徴とする構造体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構造材の接合構造は、安定した高い強度でXYZ方向に延設された3つの構造材を接合して、構造体の角部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の第一実施形態に係る構造材の接合構造の説明図であって、構造材が接合している状態の概略図である。
【
図2】
図2は、
図1Bに示す構造材の接合構造のXYZ方向の構造材が接合される前の概略図であり、YZ方向の構造材の端部が突き合わされている状態の図である。
【
図3A】
図1に示す構造材の接合構造のX方向の構造材X1(アングル材X1)の斜視図である。
【
図3B】
図1に示す構造材の接合構造のアングル材X1の正面図である。
【
図3C】
図1に示す構造材の接合構造のアングル材X1の右側面図である。
【
図3D】
図1に示す構造材の接合構造のアングル材X1の平面図である。
【
図4】
図1に示す構造材の接合構造のアングル材X1の展開図である。
【
図5A】
図1に示す構造材の接合構造の屈曲支持板の正面図である。
【
図5B】
図1に示す構造材の接合構造の屈曲支持板の右側面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る構造材の接合構造の概略図であり、構造材X1及び構造材Z1(アングル材X1及びアングル材Z1)を外方側から見た図である。
【
図7A】本発明の第二実施形態に係る構造材の接合構造の概略図であり、内方側から見た斜視図である。
【
図7B】本発明の第二実施形態に係る構造材の接合構造の概略図であり、外方側から見た斜視図である。
【
図8】本発明の第三実施形態に係る構造材の接合構造の概略図である。
【
図9】実施例において製造した本発明の構造材の接合構造を角部に備える構造体の写真である。
【
図10】
図9に示す接合構造を角部に備える構造体の内方側から見た角部の写真である。
【
図11】参考例に係る溶接による構造材の接合構造の概略図である。
【
図12】従来の溶接による構造材の接合構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の構造材の接合構造は、ボルト及びナットをそれぞれ備えた3組の固定具と、直角に屈曲された隣り合う平板部を有する構造材本体と、構造材本体の先方に設けられ、直角に屈曲された隣り合う平板部の両外縁から中心屈曲部に向かって傾斜して先端にそれぞれ頂角を形成する隣り合う傾斜平板部を有する傾斜板と、傾斜板のそれぞれの傾斜平板部の傾斜辺を折り曲げ線として傾斜平板部に対して内側に垂直に折り曲げられると共に、固定具を挿通可能な固定孔を有する接合板と、をそれぞれ備えた3つの構造材と、を少なくとも用い、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設されて構造体の角部を形成する構造材の接合構造であって、3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が互いに当接され、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設するよう、3つの構造材の端部が突き合わされることにより、X方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、X方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Y方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、Y方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、ボルト及びナットが構造材の固定孔に挿通状態で固定されることにより、3つの構造材が接合されることを特徴とする。
【0014】
本発明の構造材の接合構造は、溶接を必要とすることなく、安定した高い強度でXYZ方向に延設された3つの構造材が接合され、安定した高い強度の構造体の角部を形成することができる。すなわち、本発明の構造材の接合構造は、ボルト及びナットなどの固定具を用いた接合であるため、熟練した技術が必要である従来の溶接による接合と異なり、製品の品質が作業者の技量に左右されることがなく、安定して高い強度の接合構造が形成される。また、簡単な構造であることから、構造体の製造工程の簡略化や製造コストを抑えることができ、作業効率を向上させることができる。さらに、高熱処理を要しないことから、溶接に適さない耐熱性の低い構造材を用いることができる。
【0015】
本発明の構造材の接合構造は、例えば、架台、フレーム、筐体、テーブル、建屋、仮設プレハブ等の構造体の角部を形成する接合構造として用いることができる。
【0016】
[固定具]
まず、本発明の固定具について説明する。
本発明の構造材の接合構造は、ボルト及びナットをそれぞれ備えた3組の固定具を少なくとも備えている。ボルト及びナットが構造材の接合板の固定孔に挿通状態で固定されることにより、3つの構造材が接合される。ボルト及びナットは、構造材の接合板と別体であってもよいし、ボルト及びナットのいずれか一方が構造材と一体に成形されたものであってもよい。なお、3組の固定具とは、XYZ方向に延設された3つの構造材に対応する最低数の固定具であり、XYZ方向の構造材の固定孔の数に応じて3組以上の固定具を備えていてもよい。
【0017】
(ボルト及びナットの形状及び材質)
ボルト及びナットの形状及び材質としては、構造材の固定孔に挿通状態で固定できるものであれば特に制限されるものではない。ボルト及びナットの材質としては、例えば、金属、プラスチック(合成樹脂)を挙げることができ、金属が好ましい。
【0018】
[構造材]
続いて、本発明の構造材について説明する。
本発明の構造材の接合構造は、構造材本体と、傾斜板と、接合板とを備えた構造材を3つ備えている。構造材、傾斜板及び接合板は、通常一体のものである。3つの構造材は、それぞれXYZ方向に延設するよう、端部が突き合わされ、構造体の角部を形成する(
図1A参照)。
【0019】
(構造材本体)
構造材本体は、直角に屈曲された隣り合う平板部を有している(
図3Aの22a及び22b参照)。すなわち、構造材本体は、屈曲角度が90°の断面L字状に形成された隣り合う2つの平板部を少なくとも有している。隣り合う2つの平板部は、異なる形状であってもよいし、同一形状であってもよいが、同一形状であることが好ましい。すなわち、構造材本体は、中心屈曲部を中心に対称(等辺山形)に形成されていることが好ましい。また、平板部の一方の端部又は両端部に、補強のための縁返し部が設けられていてもよい。構造材本体の横断面形状としては、具体的に例えば、L字状(等辺山形状)、四角形状、直角三角形状、U字状等を挙げることができ、アングル材のような断面L字状(等辺山形状)が好ましい。なお、例えば、断面L字状(等辺山形状)の部材とは、断面L字状の部位が主体となる部材をいい、補強のための縁返し部が設けられたものなども含む(
図3A参照)。構造材本体は、平板部の先端側が後述の傾斜板と連続している。
【0020】
(傾斜板)
傾斜板は、構造材本体の先方に設けられた部材であって、直角に屈曲された隣り合う平板部の両外縁から中心屈曲部に向かって傾斜して先端にそれぞれ頂角を形成する隣り合う傾斜平板部を有している。すなわち、傾斜板は、中心屈曲部を中心線として両側に90°の屈曲角度で直角三角形の傾斜平板部を有しており、直角三角形の先端角が頂角である。なお、傾斜板の先端部は欠けていてもよく、その場合、傾斜平板部の傾斜辺と、中心屈曲部との延長線上で頂角が形成される。
【0021】
(接合板)
接合板は、傾斜板のそれぞれの傾斜平板部の傾斜辺を折り曲げ線として傾斜平板部に対して内側に垂直に折り曲げられると共に、固定具を挿通可能な固定孔を有している。この接合板は、傾斜平板部1つに対して少なくとも1つ以上設けられており、傾斜板は隣り合う2つの傾斜平板部を有することから、傾斜板1つに対して接合板は2つ以上設けられていることになる。接合板は、傾斜平板部1つに対して2つ以上設けられていてもよい。また、1つの接合板において、2つ以上の固定孔を有していてもよい。すなわち、傾斜板の傾斜平板部1つに対して固定孔が2つ以上(傾斜板1つに対して4つ以上)設けられていてもよく、これにより、より強固に接合することが可能となる。なお、後述する屈曲支持板を用いる場合は、固定孔の数に対応して、屈曲支持板に挿通孔を複数設けたり、用いる屈曲支持板の数を増やしたりして、接合構造の強度をより高めることができる。
【0022】
(構造材の材質)
構造材の材質としては、例えば、金属、プラスチック(合成樹脂)を挙げることができ、金属が好ましい。金属としては、具体的に例えば、普通鋼(炭素鋼)等の鉄鋼、合金鋼・特殊用途鋼・工具鋼等の特殊鋼、アルミニウム合金、銅合金、チタン、マグネシウム等の非鉄などを挙げることができる。プラスチックとしては、具体的に例えば、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、PEEK、フッ化ビニリデン樹脂、四フッ化エチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、PA46、ポリアセタール、ガラス繊維強化ポリアミド、FRP、セラミック、シリコン、ポリイミド等を挙げることができる。
【0023】
(構造材の態様)
本発明の構造材は、構造材本体の先方に傾斜板(及び接合板)が設けられているものであるが、構造材本体の後方にも傾斜板(及び接合板)が設けられているものが好ましい。これにより、構造体のすべての角部を本発明の接合構造により構成することが可能となる。また、本発明の構造材は、構造材本体が所定の長さを有する断面L字状の部材等の長尺部材から構成される態様であってもよいし、構造材本体が長尺部材を取り付け可能に構成される態様であってもよい。このような構造材本体としては、例えば、アングル材(等辺山形鋼)の他、角形鋼管等を挙げることができるが、アングル材が好ましい。また、XYZ方向の構造材は、それぞれ同一形状の部材であってもよいし、異なる形状の部材であってもよいが、同一形状の部材が好ましい。
【0024】
構造材本体が長尺部材を取り付け可能に構成される態様としては、例えば、構造材本体が、その後方にXYZ方向に延在される3つの長尺部材を固定する長尺部材固定部を備えている態様を挙げることができる。この態様の場合、本発明の構造材の接合構造は、XYZ方向に延在される3つの部材を固定する三方コーナー固定具として機能する。
【0025】
(構造材の大きさ)
構造材の長さとしては、用途によって適宜設定することができ、構造材本体が所定の長さを有する長尺部材から構成される態様の場合には、200~2000mmであることが好ましく、300~1500mmであることがより好ましく、500~1200mmであることがさらに好ましい。また、構造材本体が長尺部材を取り付け可能に構成される態様の場合(三方コーナー固定具として機能する場合)には、50~500mmであることが好ましく、80~300mmであることがより好ましく、100~200mmであることがさらに好ましい。また、その幅(構造材本体の平板部の幅)としては、10~150mmであることが好ましく、15~120mmであることがより好ましく、20~100mmであることがさらに好ましい。また、その厚さとしては、0.5~30mmであることが好ましく、1~20mmであることがより好ましく、2~15mmであることがさらに好ましい。
【0026】
(構造材の製造)
構造材の材質が金属の場合、構造材は、一枚の金属板を折り曲げて形成されることが好ましい(
図4参照)。これにより、構造材の成形が容易となり、製造工程の簡略化や製造コストを抑えることができる。
【0027】
(締結具挿入孔)
本発明の構造材の接合構造においては、構造材の接合板の固定孔の中心線と交差する構造材本体に、ボルト及びナットを締結する締結具を挿入するための締結具挿入孔が設けられていることが好ましい(
図3Aの49参照)。これにより、ボルト及びナットの取り付けが容易となる。締結具としては、通常、ボルト及びナットの締結に用いられるものを挙げることができ、例えば、ドライバー、ナットドライバー、電動ドライバー、六角棒スパナ等を挙げることができる。
【0028】
[接合態様]
本発明の構造材の接合構造は、上記3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が互いに当接され、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設するよう、3つの構造材の端部が突き合わされることにより、X方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、X方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Y方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、Y方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成する(
図1B及び
図6参照)。
【0029】
本発明の構造材の接合構造は、XYZ方向の3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が互いに当接された状態で、隣り合う傾斜平板部の先端の頂角の合計が直角(90°)となることから、3つの構造材をXYZ方向に正確に接合することできる。また、本発明の構造材の接合構造は、XYZ方向のすべての方向で直角が形成されて接合されていることから意匠的にも優れている。
【0030】
頂角の組み合わせの態様としては、例えば、XYZ方向の3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の先端のすべての頂角が等しい角度(45°)に形成されたものを組みわせた態様や、XYZ方向の1つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の先端の頂角が45°よりも小さい角度に形成されると共に、XYZ方向の残りの2つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の先端の頂角が45°よりも大きく互いに等しい角度に形成されたものを組み合わせた態様や、XYZ方向の構造材の傾斜板の傾斜平板部の先端の頂角がそれぞれ異なる角度に形成されたものを組み合わせた態様等を挙げることができる。すなわち、XYZ方向の構造材の幅(構造材本体の平板部の幅)にあわせて、頂角の角度を適宜設定することが好ましい。
【0031】
例えば、XYZ方向の構造材の幅が同一の場合、XYZ方向の3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の先端の頂角を45°に設定することができ、この態様の場合、XYZ方向の構造材を全て同一形状の部材とすることができることから、大量生産が可能となり、製造コストを抑えることができる。
【0032】
また、幅の異なる構造材を接合する場合、例えば、Z方向の構造材の幅が小さい場合、Z方向の1つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の先端の頂角が45°よりも小さい角度に形成されると共に、XY方向の構造材の傾斜板の傾斜平板部の先端の頂角が45°よりも大きい角度に形成され、互いに当接する3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺の長さを同一にすることにより、良好な角部が形成される。具体的には、傾斜板の頂角が30°に形成された幅の短いZ方向の構造材と、傾斜板の頂角が60°に形成されたZ方向の構造材よりも幅が長いX方向及びY方向の構造材とが接合されたものを挙げることができる(
図7A及び
図7B参照)。
【0033】
さらに、3つの構造材の端部が突き合わされた状態で、上記ボルト及びナットが構造材の固定孔に挿通状態で固定されることにより、3つの構造材が接合される。構造材の固定孔は、傾斜平板部に対して1つであってもよいが、2つ以上有しているものであってもよく、具体的に例えば、XYZ方向の3つの構造材の接合板がそれぞれ2つの固定孔を有し、2つの固定孔に挿通状態で固定される6組の固定具を備えているものを挙げることができる(
図8参照)。なお、固定具(ボルト及びナット)は、固定孔の数に応じて用いられる。
【0034】
上記のとおり、本発明の構造材の接合構造は、3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が互いに当接され、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設するよう、3つの構造材の端部が突き合わされた状態で、ボルト及びナットが構造材の固定孔に挿通状態で固定されることにより、3つの構造材が接合されるものであり、これにより、安定した高い強度でXYZ方向に延設された3つの構造材を接合することができ、安定した高い強度で構造体の角部を形成することができる。
【0035】
[構造材の接合構造の補強構造を備える態様]
本発明の構造材の接合構造は、より強固に構造材を接合するため、さらに補強構造を備えていることが好ましい。
【0036】
具体的に、本発明の構造材の接合構造の補強構造を備える態様としては、少なくとも3つの屈曲支持板をさらに用いた構造材の接合構造であって、屈曲支持板は、120°に屈曲された隣り合う平板部と、平板部にそれぞれ形成された固定具を挿通する挿通孔とを備えており、3つの屈曲支持板が、3つの構造材から形成される角部の頂点を通る内方中心線にそれぞれの屈曲部が近接するように、かつ、3つの構造材にそれぞれ対応して周方向に配設され、屈曲支持板の挿通孔及び構造材の固定孔に固定具が挿通されて固定される態様を挙げることができる。
【0037】
(屈曲支持板)
本態様の本発明の構造材の接合構造は、120°に屈曲された隣り合う平板部と、平板部にそれぞれ形成された固定具を挿通する挿通孔とを備えた少なくとも3つの屈曲支持板を備えている。
【0038】
屈曲支持板の材質としては、例えば、金属、プラスチック(合成樹脂)を挙げることができ、金属が好ましい。具体的には、構造材で挙げた材料を挙げることができ、構造材と同一の材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0039】
屈曲支持板は、例えば、2枚の直角台形状の平板部の斜辺同士が屈曲角度120°で接続されて断面V字状に形成されたものである(
図5A及び
図5B参照)。平板部の形状は適宜決定することができる。
【0040】
3つの屈曲支持板は、3つの構造材から形成される角部の頂点を通る内方中心線にそれぞれの屈曲部が近接するように、かつ、3つの構造材にそれぞれ対応して周方向に配設されている。すなわち、3つの屈曲支持板は、3つの構造材から形成される角部の頂点を原点とするXYZ直交座標系において、原点から内方に伸びるXYZ方向から等距離の点の集合体である中心線(内方中心線)を中心に放射状に配置されている(
図1B参照)。
【0041】
本態様では、例えば、3つの屈曲支持板の挿通孔と3つの構造材の固定孔とに3組の固定具を挿通して固定することで、3つの構造材を接合する。3つの屈曲支持板を介して3つの構造材を固定することで、3つの屈曲支持板が補強部材の役割を果たし、XYZ方向に延設された3つの構造材が内方側へ閉じるように変形することを防止し、3つの構造材をより強固に接合する。また、屈曲支持板の平板部の両外縁は、3つの構造材の傾斜板にそれぞれ当接していることが好ましく、傾斜板に対して垂直に当接していることがより好ましい。これにより、振動等の衝撃によるズレなどを防止して、3つの構造材をより安定した状態で支持することができる。
【0042】
屈曲支持板は、1つの屈曲支持板の各平板部において複数の挿通孔を備えていてもよく、例えば、構造材が傾斜平板部1つに対して複数の固定孔を有する場合、屈曲支持板が、構造材の固定孔に対応する複数の挿通孔を備えていることが好ましい。このような態様の本発明の構造材の接合構造としては、具体的に例えば、XYZ方向の3つの構造材の接合板がそれぞれ2つの固定孔を有し、3つの屈曲支持板の1つの平板部が構造材の2つの固定孔に対応するそれぞれ2つの挿通孔を備え、屈曲支持板の2つの挿通孔及び構造材の2つの固定孔に固定具(計6組)を挿通状態で固定する構造を挙げることができる。なお、構造材が傾斜平板部1つに対して複数の固定孔を有する場合、平板部に1つの挿通孔を有する屈曲支持板を複数用いてもよい。
【0043】
その他の本発明の構造材の接合構造の補強構造を備える態様としては、構造材に設けられた1対の接合板がそれぞれ延設されて、延設端部が、3つの構造材から形成される角部の頂点を通る内方中心線で、近接、当接又は接着されている態様を挙げることができる。接合板は、傾斜平板部の傾斜辺の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上の部分から延設されているものが、強度の点から好ましい。接合板は、例えば、その両側辺が傾斜辺に対して垂直に延びており、直角台形状となっている。また、接合板の延設端部の当接部における隣り合う接合板同士の隣接角度は120°となっている。本態様においては、構造材に設けられた1対の接合板が、上記3つの屈曲支持板の役目を果たすことにより、より強固に構造材を接合することができる。なお、接合板は、屈曲支持板同様、複数の挿通孔を備えていてもよい。
【0044】
次に、上記本発明の構造材の接合構造を用いた構造体について説明する。
本発明の構造体としては、上記接合構造を角部に備えている構造体を挙げることができる。このような構造体としては、例えば、本発明の構造材の接合構造を上下の4つの角部(計8つ)に備える直方体状架台や(
図9参照)、本発明の構造材の接合構造を上部の4つの角部に備えるテーブル状架台などを挙げることができる。
【0045】
以下、図面を用いて本発明の構造材の接合構造の第一~第三実施形態を具体的に説明するが、本発明は本実施形態に制限されるものではない。
【0046】
ここで、
図1Aは、本発明の第一実施形態に係る構造材の接合構造の説明図であって、構造材が接合している状態の概略図である。
図1Bは、
図1Aの構造材の接合構造の拡大図である。
図2は、
図1Bに示す構造材の接合構造のXYZ方向の構造材が接合される前の概略図であり、YZ方向の構造材の端部が突き合わされている状態の図である。
図3Aは、
図1に示す構造材の接合構造のX方向の構造材X1(アングル材X1)の斜視図である。
図3Bは、
図1に示す構造材の接合構造のアングル材X1の正面図である。
図3Cは、
図1に示す構造材の接合構造のアングル材X1の右側面図である。
図3Dは、
図1に示す構造材の接合構造のアングル材X1の平面図である。
図4は、
図1に示す構造材の接合構造のアングル材X1の展開図である。
図5Aは、
図1に示す構造材の接合構造の屈曲支持板の正面図である。
図5Bは、
図1に示す構造材の接合構造の屈曲支持板の右側面図である。
図6は、本発明の第一実施形態に係る構造材の接合構造の概略図であり、構造材X1及び構造材Z1(アングル材X1及びアングル材Z1)を外方側から見た図である。
【0047】
図1A及び
図1Bに示すように、本発明の第一実施形態に係る構造材の接合構造1は、XYZ方向に延設された3つの構造材としてのX方向のアングル材X1,Y方向のアングル材Y1,Z方向のアングル材Z1と、3組の固定具としてのアングル材X1,Z1を固定するボルト及びナット10、アングル材X1,Y1を固定するボルト及びナット12、アングル材Y1,Z1を固定するボルト及びナット14とを備えている。アングル材X1,Y1,Z1は、それぞれ同様の構成の部材である。また、ボルト及びナット10~14は、それぞれ同様の構成の部材である。
【0048】
さらに、構造材の接合構造1は、補強材として3つの屈曲支持板を備えており、アングル材X1を支持する屈曲支持板16と、アングル材Y1を支持する屈曲支持板18と、アングル材Z1を支持する屈曲支持板20とを備えている。屈曲支持板16~20は、それぞれ同様の構成の部材である。
【0049】
図2に示すように、構造材の接合構造1は、X方向のアングル材X1、Y方向のアングル材Y1、及びZ方向のアングル材Z1のそれぞれの端部が互いに突き合わされた状態で接合されることにより構造体の角部を形成している。
【0050】
図3A~3Dに示すように、アングル材X1は、長さ1000mm程度の一般構造用圧延鋼材製であり、直角に屈曲された隣り合う平板部22a,22bを有する断面L字状の構造材本体24を備えている。各平板部の幅は40mm程度である。
【0051】
また、アングル材X1は、構造材本体24の先方に設けられ、直角に屈曲された隣り合う平板部22a,22bの両外縁から中心屈曲部26に向かって傾斜して形成された隣り合う傾斜平板部28a,28bを有する傾斜板30を備えている。傾斜平板部28a,28bは、先端にそれぞれ45°の頂角αを形成する。
【0052】
さらに、アングル材X1は、傾斜板30のそれぞれの傾斜平板部28a,28bの傾斜辺を折り曲げ線として傾斜平板部28a,28bに対して内側に垂直に折り曲げられた接合板34a、34bを備えている。接合板34a、34bは、それぞれ、ボルト及びナット10を挿通可能な直径10mm程度の固定孔32a、並びに固定孔32bを有する。
【0053】
また、構造材本体24の平板部28a,28bの両縁には、平板部28a,28bに対して垂直に立設する縁返し部36a,36bが設けられている。また、構造材本体24の後方には、傾斜板38、接合板40a,40bが形成されている。この傾斜板38、接合板40a,40bは、傾斜板30、接合板34a,34bと同様の構成であるため詳細を省略する。
【0054】
また、アングル材Y1,Z1は、アングル材X1とそれぞれ同様の構成の部材であることから、アングル材X1と同様の符号を付して説明を省略する。
【0055】
上記説明したアングル材X1は、
図4に示すように、一般構造用圧延鋼材製の金属板48を、切り抜き加工し、折り曲げて形成されている。
【0056】
図5A及び
図5Bに示すように、屈曲支持板16は、120°に屈曲された隣り合う屈曲支持板平板部42a,42bを備えている。屈曲支持板平板部42a,42bには、ボルト及びナット10を挿通する直径10mm程度の挿通孔44aと、ボルト及びナット12を挿通する直径10mm程度の挿通孔44bとが設けられている。屈曲支持板16は、2枚の直角台形状の屈曲支持板平板部42a,42bの斜辺同士が、屈曲部46で屈曲角度120°に屈曲されて接続されて断面V字状に形成されている。
【0057】
また、構造材の接合構造1は、アングル材X1,Y1,Z1の接合板34の固定孔32の中心線と交差する構造材本体24に、ボルト及びナット10~14を締結する締結具としてのドライバーを挿入するための締結具挿入孔49が設けられている。
【0058】
図1A及び
図1Bに示すように、構造材の接合構造1は、アングル材X1,Y1,Z1の傾斜板30の傾斜平板部28の傾斜辺が互いに当接され、アングル材X1,Y1,Z1がそれぞれXYZ方向に延設するよう、アングル材X1,Y1,Z1の端部が突き合わされ、構造体の角部を形成する。この際、
図6に示すように、アングル材X1のZ方向に立設した傾斜板30の傾斜平板部28aの先端の頂角α(45°)と、アングル材Z1のX方向に立設した傾斜板50(30)の傾斜平板部52(28)の先端の頂角β(45°)とで直角を形成する。また、図示しないが同様に、アングル材X1のY方向に立設した傾斜板30の傾斜平板部28の先端の頂角と、アングル材Y1のX方向に立設した傾斜板30の傾斜平板部28の先端の頂角とで直角を形成し、アングル材Y1のZ方向に立設した傾斜板30の傾斜平板部28の先端の頂角と、アングル材Z1のY方向に立設した傾斜板30の傾斜平板部28の先端の頂角とで直角を形成する。
【0059】
図1A及び
図1Bに示すように、構造材の接合構造1は、屈曲支持板16~20が、アングル材X1,Y1,Z1から形成される角部の頂点を通る内方中心線にそれぞれの屈曲部46が近接するように、かつ、アングル材X1,Y1,Z1にそれぞれ対応して周方向に配設されており、屈曲支持板16~20の挿通孔44及びアングル材X1,Y1,Z1の固定孔32にボルト及びナット10~14が挿通されて固定されることにより、アングル材X1,Y1,Z1が接合されている。
【0060】
上記説明した構造材の接合構造1は、アングル材X1,Y1,Z1の傾斜板30の傾斜平板部28の傾斜辺が互いに当接され、アングル材X1,Y1,Z1がそれぞれXYZ方向に延設されて構造体の角部を形成するよう、アングル材X1,Y1,Z1の端部が突き合わされると共に、3組のボルト及びナット10~14により固定されることから、安定した高い強度でXYZ方向に延設されたアングル材X1,Y1,Z1を接合することができる。また、構造材の接合構造1は、アングル材X1,Y1,Z1の傾斜板30の傾斜平板部28の傾斜辺が互いに当接された状態で隣り合う傾斜板30の傾斜平板部28の傾斜辺の先端の頂角の合計が直角(90°)となることから、アングル材X1,Y1,Z1をXYZ方向に正確に接合することでき、意匠的にも優れたものとなる。さらに、補強構造としての3つの屈曲支持板16~20がアングル材X1,Y1,Z1を支持することから、アングル材X1,Y1,Z1をより強固に接合することができる。
【0061】
続いて、本発明の第二実施形態に係る構造材の接合構造について詳細に説明する。本実施形態においては、Z方向のアングル材の幅がX方向及びY方向のアングル材の幅よりも短く形成されている点で第一実施形態と異なる。また、第一実施形態の構造材の接合構造1と同様の構成の部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
ここで、
図7Aは、本発明の第二実施形態に係る構造材の接合構造の概略図であり、内方側から見た斜視図である。
図7Bは、本発明の第二実施形態に係る構造材の接合構造の概略図であり、外方側から見た斜視図である。なお、
図7A及び
図7Bにおいては、屈曲支持板16~20及びボルト及びナット10~14を省略して、より容易に理解できるように記載している。
【0063】
図7A及び
図7Bに示すように、本発明の第二実施形態に係る構造材の接合構造2においては、Z方向のアングル材Z2は、その傾斜板54の頂角γが30°に形成されると共に、その平板部56の幅が23mm程度に形成されている。一方、X方向のアングル材X2及びY方向のアングル材Y2は、それぞれの傾斜板58の頂角δが60°に形成されると共に、その平板部60の幅が40mm程度に形成されている。また、Z方向のアングル材Z2の傾斜板54の傾斜平板部62の傾斜辺の長さと、アングル材X2及びアングル材Y2の傾斜板58の傾斜平板部64の傾斜辺の長さは同一の長さに形成されている。
【0064】
上記説明した本発明の第二実施形態に係る構造材の接合構造2は、傾斜平板部62,64の傾斜辺が互いに当接された状態で傾斜板54及び傾斜板58の先端の頂角γ,δの合計が直角となることから、幅の異なるアングル材X2,Y2,Z2をXYZ方向に正確に接合することできる。
【0065】
続いて、本発明の第三実施形態に係る構造材の接合構造について詳細に説明する。本実施形態においては、構造材の固定孔をそれぞれ2つ有する点で第一実施形態と異なる。また、第一実施形態の構造材の接合構造1と同様の構成の部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
ここで、
図8は、本発明の第三実施形態に係る構造材の接合構造の概略図である。
【0067】
図8に示すように、本発明の第三実施形態に係る構造材の接合構造3は、アングル材X3,Y3,Z3の接合板66が、それぞれ2つの固定孔32,32’を備えている。2つの固定孔32,32’を備える場合、接合板66は、傾斜平板部28の傾斜辺の70~80%に接続されている。また、固定孔32,32’に合わせて、6組のボルト及びナット10~14、10’~14’により固定されている。
【0068】
なお、本実施形態においては、屈曲支持板を備えていない態様を説明したが、屈曲支持板を備えていることが好ましく、この場合、屈曲支持板はアングル材X3,Y3,Z3の2つの固定孔32,32’に対応する2つの挿通孔(屈曲支持板に計4つ)を備えるものを採用することができ、また、屈曲支持板を計6枚用いてもよい。
【0069】
上記説明した本発明の第三実施形態に係る構造材の接合構造3は、アングル材X3,Y3,Z3の接合板が2つの固定孔32,32’を備えると共に、かかる固定孔32,32’に挿通状態で、6組のボルト及びナット10~14、10’~14’により固定することから、より安定した高い強度でアングル材X3,Y3,Z3を接合することができる。
【実施例0070】
本発明の構造材の接合構造を角部に備える構造体を製造した。
構造材には、両端に傾斜板及び接合板を備えた長さ100mmの断面L字状の一般構造用圧延鋼材製のアングル材と、両端に傾斜板及び接合板を備えた長さ80mmの断面等辺山形状の一般構造用圧延鋼材製のアングル材と、24本のボルト及びナット用いた。なお、アングル材の幅はすべて同じものを用いた。
【0071】
構造体の外方側から見た写真を
図9に示し、構造体の内方側から見た角部の写真を
図10に示す。
図9及び
図10に示すように、本発明の構造材の接合構造を角部に備える構造体は、直方体に形成されており、強い振動を与えてもアングル材同士にズレが生じることがなく、すべてのアングル材が強固かつXYZ方向に正確に接合されていることが確認できた。本発明の構造材の接合構造によれば、溶接を用いることなく安定した高い強度でXYZ方向に延設された3つの構造材を接合することができることがわかった。
【0072】
(参考例)
続いて、本発明の構造材と一部同様の構成部材を備える構造材を用いた溶接による構造材の接合構造の参考例を説明する。
参考例に係る構造材(アングル材)の接合構造においては、
直角に屈曲された隣り合う平板部を有する構造材本体と、該構造材本体の先方に設けられ、前記直角に屈曲された隣り合う平板部の両外縁から中心屈曲部に向かって傾斜して先端にそれぞれ頂角を形成する隣り合う傾斜平板部を有する傾斜板と、をそれぞれ備えた3つの構造材と、
を少なくとも用い、前記3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設されて構造体の角部を形成する構造材の接合構造であって、
前記3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が互いに当接され、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設するよう、3つの構造材の端部が突き合わされることにより、
X方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、
X方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Y方向の構造材のX方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、
Y方向の構造材のZ方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角と、Z方向の構造材のY方向に立設した傾斜平板部の先端の頂角とで直角を形成し、
前記3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が溶接されることにより、前記3つの構造材が接合されることを特徴とする。
【0073】
ここで、
図11は、参考例に係る溶接による構造材の接合構造の概略図である。
図12は、従来の溶接による構造材の接合構造の概略図である。なお、参考例に係る構造材の接合構造の構造材本体及び傾斜板の傾斜平板部は、本発明の構造材の接合構造の構造材の構造材本体及び傾斜板の傾斜平板部と同様の構成部材である。
【0074】
図11に示すとおり、参考例に係る溶接による構造材の接合構造は、3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が互いに当接され、3つの構造材がそれぞれXYZ方向に延設するよう、3つの構造材の端部が突き合わされた状態で、3つの構造材の傾斜板の傾斜平板部の傾斜辺が溶接されることにより、3つの構造材が接合されるものであり、これにより、安定した高い強度でXYZ方向に延設された3つの構造材を接合することができ、安定した高い強度で構造体の角部を形成することができる。特に、構造材同士の当接部が長いため、組み立て精度が良くなる。また、
図12に示す従来の構造材(アングル材)の接合構造に比べて、全体溶接長さが20%少なくなることから、作業効率を向上させることができる。また、全ての部材の加工が同一の加工で製造できることから、製造工程の簡略化や製造コストを抑えることができる。