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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040047
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】透過型砂防堰堤及び緩衝部材
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144871
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】國領 ひろし
(72)【発明者】
【氏名】大隅 久
(57)【要約】
【課題】堰堤本体の損傷を抑制できる透過型砂防堰堤を提供する。
【解決手段】実施形態における透過型砂防堰堤100は、堰堤本体8と、緩衝部材1と、を備える。堰堤本体8は、本体鋼管80を有し、緩衝部材1は、本体鋼管80に沿って配置される緩衝鋼管10と、本体鋼管80に緩衝鋼管10を着脱自在に取り付ける取付機構2と、を有する。本体鋼管80は、上下方向Zに延びる第1本体鋼管81を有し、緩衝鋼管80は、第1本体鋼管81の上流側X1に配置される第1緩衝鋼管11を有する。第1緩衝鋼管11の外径は、第1本体鋼管81の外径以上であり、第1緩衝鋼管11の板厚は、第1本体鋼管81の板厚未満である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堰堤本体と、前記堰堤本体に取り付けられる緩衝部材と、を備えた透過型砂防堰堤であって、
前記堰堤本体は、本体鋼管を有し、
前記緩衝部材は、前記本体鋼管に沿って配置される緩衝鋼管と、前記本体鋼管に前記緩衝鋼管を着脱自在に取り付ける取付機構と、を有し、
前記緩衝鋼管の板厚は、前記本体鋼管の板厚未満であること
を特徴とする透過型砂防堰堤。
【請求項2】
前記本体鋼管は、上下方向に延びる第1本体鋼管を有し、
前記緩衝鋼管は、前記第1本体鋼管の上流側に配置される第1緩衝鋼管を有し、
前記第1緩衝鋼管の外径は、前記第1本体鋼管の外径以上であり、
前記第1緩衝鋼管の板厚は、前記第1本体鋼管の板厚未満であること
を特徴とする請求項1記載の透過型砂防堰堤。
【請求項3】
前記本体鋼管は、前記第1本体鋼管よりも下流側に、流下方向に延びる第2本体鋼管を有し、
前記緩衝鋼管は、前記第2本体鋼管の上方側に配置される第2緩衝鋼管を有し、
前記第2緩衝鋼管の板厚は、前記第2本体鋼管の板厚未満であること
を特徴とする請求項1又は2記載の透過型砂防堰堤。
【請求項4】
前記緩衝鋼管は、前記第1本体鋼管よりも上方側に配置され、流下方向に沿って延びる第3緩衝鋼管を有すること
を特徴とする請求項1又は2記載の透過型砂防堰堤。
【請求項5】
透過型砂防堰堤の堰堤本体に取り付けられる緩衝部材であって、
前記堰堤本体を構成する本体鋼管に沿って配置される緩衝鋼管と、前記本体鋼管に前記緩衝鋼管を着脱自在に取り付ける取付機構と、を備え、
前記緩衝鋼管の板厚は、前記本体鋼管の板厚未満であること
を特徴とする緩衝部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型砂防堰堤及び緩衝部材に関する。
【背景技術】
【0002】
土砂・流木による災害を防止する透過型砂防堰堤に関する技術として、ダム本体に緩衝部材が取り付けられた特許文献1~3の開示技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の透過型砂防ダムは、洪水時の巨礫の衝突エネルギーを吸収するための断面形状が閉断面の緩衝手段がダム本体の上流面に、前記ダム本体に対して着脱自在に取り付けられ、前記緩衝手段には、巨礫の衝突による前記緩衝手段の変形を拘束するための変形拘束手段が設けられ、前記変形拘束手段は、前記緩衝手段の両端に設けられていることを特徴とする。
【0004】
特許文献2の透過型砂防ダムは、洪水時の巨礫の衝突エネルギーを吸収するための緩衝手段がダム本体の上流面に、前記ダム本体に対してブラケットを介して着脱自在に取り付けられ、前記ダム本体は、基礎コンクリート上または地盤上に固定された鋼製支柱と、前記支柱間に固定された鋼製梁材とからなり、前記支柱と前記梁材とは、多面体の鋼製箱型結合エレメントを介して互いに結合され、前記柱材および前記梁材の軸芯は、前記鋼製箱型結合エレメント内の一点に集中していることを特徴とする。
【0005】
特許文献3の透過型砂防ダムは、洪水時の巨礫の衝突エネルギーを吸収するための緩衝手段がダム本体の上流面に、前記ダム本体に対してブラケットを介して着脱自在に取り付けられ、前記ブラケットは、前記緩衝手段の下流面側に面して取り付けられ、上流面側には露出しておらず、前記緩衝手段は、縦方向に複数本に分割されていることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3270744号公報
【特許文献2】特許3289827号公報
【特許文献3】特許3946028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の透過型砂防ダムでは、緩衝手段の両端に緩衝手段の過度な変形を拘束する手段を設ける。しかしながら、拘束手段を用いることよる緩衝手段の変形抑制率(緩衝効果の低減、へこみ変形の抑制率)が定かではなく、緩衝効果が十分に発揮できないおそれがある。
【0008】
特許文献2の透過型砂防ダムでは、緩衝手段は、鋼製支柱の幅寸法より大きい外径を有する鋼管からなる。しかしながら、外径が大きいだけでは、鋼製支柱より剛性が高い鋼管となり、緩衝手段による緩衝効果が十分に得られず、ダム本体が損傷を受ける可能性がある。
【0009】
特許文献3の透過型砂防ダムでは、縦方向に分断された緩衝手段により堰堤本体を保護できる。しかしながら、緩衝手段の仕様(例えば、緩衝鋼管の直径や板厚など)によっては、緩衝手段による緩衝効果が十分に得られず、ダム本体が損傷を受ける可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、堰堤本体の損傷を抑制できる透過型砂防堰堤及び緩衝部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る透過型砂防堰堤は、堰堤本体と、前記堰堤本体に取り付けられる緩衝部材と、を備えた透過型砂防堰堤であって、前記堰堤本体は、本体鋼管を有し、前記緩衝部材は、前記本体鋼管に沿って配置される緩衝鋼管と、前記本体鋼管に前記緩衝鋼管を着脱自在に取り付ける取付機構と、を有し、前記緩衝鋼管の板厚は、前記本体鋼管の板厚未満であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る緩衝部材は、透過型砂防堰堤の堰堤本体に取り付けられる緩衝部材であって、前記堰堤本体を構成する本体鋼管に沿って配置される緩衝鋼管と、前記本体鋼管に前記緩衝鋼管を着脱自在に取り付ける取付機構と、を備え、前記緩衝鋼管の板厚は、前記本体鋼管の板厚未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、堰堤本体の損傷を抑制できる透過型砂防堰堤及び緩衝部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態における透過型砂防堰堤の一例を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態における透過型砂防堰堤の一例を示す側面図である。
図3図3は、第1実施形態における透過型砂防堰堤の一例において、第1本体鋼管の近傍を第1本体鋼管の管軸方向に直交する断面で切った断面図である。
図4図4(a)は、第1実施形態における透過型砂防堰堤の第1変形例を示す側面図であり、図4(b)は、第1実施形態における透過型砂防堰堤の第2変形例を示す側面図である。
図5図5(a)は、第1実施形態における透過型砂防堰堤の第3変形例を示す側面図であり、図5(b)は、第1実施形態における透過型砂防堰堤の第4変形例を示す側面図である。
図6図6は、第1実施形態における透過型砂防堰堤の第5変形例を示す斜視図である。
図7図7は、第1実施形態における透過型砂防堰堤の第6変形例を示す斜視図である。
図8図8は、第2実施形態における透過型砂防堰堤の一例を示す斜視図である。
図9図9は、第2実施形態における透過型砂防堰堤の一例を示す側面図である。
図10図10は、第2実施形態における透過型砂防堰堤の一例において、第2本体鋼管の近傍を第2本体鋼管の管軸方向に直交する断面で切った断面図である。
図11図11は、第2実施形態における透過型砂防堰堤の第1変形例において、第2本体鋼管の近傍を第2本体鋼管の管軸方向に直交する断面で切った断面図である。
図12図12は、第3実施形態における透過型砂防堰堤の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した透過型砂防堰堤及び緩衝部材を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、上下方向Zとし、流下物の流下する方向を流下方向Xとし、上下方向Zと流下方向Xに交わる方向を幅方向Yとする。流下方向Xは、上流側X1と、下流側X2と、を有する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る透過型砂防堰堤100の一例を示す斜視図である。図2は、第1実施形態における透過型砂防堰堤100の一例を示す側面図である。
【0017】
透過型砂防堰堤100は、礫、土砂等の流下物を捕捉する。透過型砂防堰堤100は、堰堤本体8と、堰堤本体8の上流側X1及び上方側の少なくとも何れかに着脱自在に取り付けられる緩衝部材1と、を備える。図1の例では、緩衝部材1は、堰堤本体8の上流側X1に着脱自在に取り付けられる。
【0018】
緩衝部材1は、巨大な礫等が衝突した際の衝突エネルギーを吸収し、堰堤本体8に伝達される衝突エネルギーを緩和させるものである。緩衝部材1が堰堤本体8に着脱自在に取り付けられるため、礫が衝突して緩衝部材1が破損した場合であっても、破損した緩衝部材1を新たな緩衝部材1に容易に交換できる。
【0019】
(堰堤本体8)
堰堤本体8は、コンクリート基礎や地盤などの基礎部9に立設される。堰堤本体8は、複数の本体鋼管80を有し、複数の本体鋼管80が組み合わされて構成される。本体鋼管80は、第1本体鋼管81と、第2本体鋼管82と、第3本体鋼管83と、を有する。
【0020】
第1本体鋼管81は、上下方向Zに延び、例えば鉛直方向に延びる。第1本体鋼管81は、堰堤本体8の最も上流側に配置され、下端が基礎部9に埋設固定される。第1本体鋼管81は、幅方向Yに離間して複数配置される。第1本体鋼管81は、幅方向Yに延びる横材89が、上下方向Zに複数設けられてもよい。第1本体鋼管81が横材89を有することにより、捕捉した礫等が堰堤本体8の下流側に流下するのを更に抑制できる。横材89は、例えば鋼管が用いられる。
【0021】
第2本体鋼管82は、第1本体鋼管81よりも流下方向Xの下流側X2に配置される。第2本体鋼管82は、流下方向Xに沿って配置される。第2本体鋼管82は、下流側X2に向かうにつれて下方に傾斜する斜材である。第2本体鋼管82は、上端が第1本体鋼管81に溶接等により連結され、下端が基礎部9に埋設固定される。第2本体鋼管82は、幅方向Yに離間して複数配置される。
【0022】
第3本体鋼管83は、幅方向Yに延びる。第3本体鋼管83は、幅方向Yに離間した複数の第1本体鋼管81同士を連結する。第3本体鋼管83は、第1本体鋼管81に溶接等により連結される。
【0023】
(緩衝部材1)
緩衝部材1は、緩衝鋼管10と、取付機構2と、を有する。
【0024】
図3は、第1実施形態における透過型砂防堰堤100の一例において、第1本体鋼管81の近傍を第1本体鋼管81の管軸方向に直交する断面で切った断面図である。図3に示すように、取付機構2は、本体鋼管80に緩衝鋼管10を着脱自在に取り付ける。取付機構2は、例えば本体鋼管80に固定される第1取付鋼管21と、緩衝鋼管10に固定される第2取付鋼管22と、を有する。第1取付鋼管21と第2取付鋼管22とは、端部にフランジ部が形成される。第1取付鋼管21と第2取付鋼管22とは、互いのフランジ部同士を接触させ、ボルトナット等の締結金具23により接合される。このほか、取付機構2は、例えばU字ボルトであってもよい。
【0025】
緩衝鋼管10は、本体鋼管80に沿って配置される。緩衝鋼管10は、例えば中空状であることが好ましい。これにより、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力を更に向上させることができ、本体鋼管80に伝達される支点反力を更に低減できる。
【0026】
緩衝鋼管10の長手方向の長さは、例えば最大で4.0m~6.0m程度であることが好ましい。これにより、緩衝鋼管10の車両での運搬性を向上でき、透過型砂防堰堤100の施工性を向上させることが可能となる。緩衝鋼管10の長手方向の長さは、例えば最小で1.0m程度である。
【0027】
緩衝鋼管10は、第1緩衝鋼管11を有する。第1緩衝鋼管11は、第1本体鋼管81よりも上流側X1に配置される。第1緩衝鋼管11は、下端が基礎部9から離間される。1本の第1緩衝鋼管11には、取付機構2が例えば2箇所に設けられる。第1緩衝鋼管11の外径D11は、第1本体鋼管81の外径D81以上である。第1緩衝鋼管11の板厚t11は、第1本体鋼管81の板厚t81未満である。
【0028】
本実施形態によれば、第1緩衝鋼管11の板厚t11は、第1本体鋼管81の板厚t81未満である。これにより、第1本体鋼管81に先行して第1緩衝鋼管11にへこみ変形を生じさせ、堰堤本体8に作用する土石流の衝突エネルギーを低減できる。すなわち、小さな荷重で大きな吸収能力エネルギーを得る緩衝効果を向上させることが可能となる。その結果、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0029】
本実施形態によれば、第1緩衝鋼管11の外径D11は、第1本体鋼管81の外径D81以上である。これにより、2つの第1緩衝鋼管11の外面同士の純間隔L11を、2つの第1本体鋼管81の外面同士の純間隔L81以下にできる。このため、流下方向に礫等が流下したとき、第1緩衝鋼管11により礫等を捕捉し易くなり、第1本体鋼管81に礫等が衝突するのを抑制できる。その結果、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0030】
本実施形態によれば、緩衝鋼管10の外径は、本体鋼管80の外径よりも大きい。これにより、緩衝鋼管10の外径が本体鋼管80の外径と同じ場合と比べて、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力を大きくしつつ、本体鋼管80に伝達される支点反力を小さくできる。このため、小さな荷重で大きな吸収能力エネルギーを得る緩衝効果を更に向上させることが可能となる。その結果、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0031】
以下、緩衝鋼管10の板厚を、本体鋼管80の板厚未満とする理由について詳細に説明する。
【0032】
鋼管からなる透過型砂防堰堤では、礫の衝突に伴って、鋼管にへこみ変形が生じることがある。鋼製砂防構造物設計便覧 平成21年版(財団法人 砂防・地すべり技術センター)」pp.219-224によれば、礫が衝突した際に吸収し得る鋼管のエネルギー吸収能力Edは、以下の数式(1)により表される。また、鋼管のへこみ変形に対応する荷重Plは、以下の数式(2)により表される。
【0033】
【数1】
d:鋼管のエネルギー吸収能力(kJ)
K:係数(161・(D0/D)0.11
σyd:鋼管の降伏応力度(N/mm2
t:鋼管の板厚(mm)
δd:へこみ変形(mm)
D:鋼管の外径(m)
【0034】
【数2】
l:鋼管のへこみ変形に対応する荷重(N)
K:係数(161・(D0/D)0.11
σyd:鋼管の降伏応力度(N/mm2
t:鋼管の板厚(mm)
δd:へこみ変形(mm)
D:鋼管の外径(m)
【0035】
透過型砂防堰堤における鋼管の板厚や外径等の仕様は、想定される最大の礫が衝突した際、鋼管の外径Dに対して鋼管の局部変形(へこみ変形)δdをどの程度まで許容するかに応じて、設定される。鋼管のへこみ率=へこみ変形δd/鋼管の外径D×100としたとき、へこみ率10%を使用限界、へこみ率40%を修復限界、へこみ率70%を終局限界、ともいう。
【0036】
透過型砂防堰堤100では、鋼管として本体鋼管80と緩衝鋼管10とが用いられ、緩衝部材1により堰堤本体8へ伝達される衝突エネルギーを低減させて、堰堤本体8を保護するものである。堰堤本体8に先行させて緩衝部材1を破損させ、緩衝部材1が破損した場合に、新たな緩衝部材1に交換する。このため、交換が容易でない本体鋼管80はなるべく破損が生じないようにする。一方で、交換が容易である緩衝鋼管10は、ある程度の破損が許容される。
【0037】
本体鋼管80は、なるべく破損が生じないように、例えばへこみ率10%に設定する。緩衝鋼管10は、本体鋼管80で設定されるへこみ率よりも大きい、例えばへこみ率40%やへこみ率70%に設定することが好ましい。
【0038】
以下、具体例について説明する。衝突が想定される最大の礫の衝突エネルギーEは、礫の質量m(kg)とし、礫が流下する速度v(m/s)としたとき、E=mv2/2として表される。礫の直径を1.0mとし、質量mを1360(kg)とする。礫の流下する速度がv=8.0(m/s)の場合、礫の衝突エネルギーEは、44kJである。また、礫の流下する速度v=10.0(m/s)の場合、礫の衝突エネルギーEは、68kJである。
【0039】
以下、CASE1~3において、上記の礫が衝突したときに、本体鋼管80がへこみ率10%以下である使用限界の範囲内で使用できるか否かを判定した。
【0040】
CASE1では、緩衝鋼管10を用いずに本体鋼管80のみの場合に、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用か否かを判定した。本体鋼管80の板厚22mmとし、本体鋼管80の外径500mmとした。本体鋼管80として、例えばSTK490を用いた場合、鋼管の降伏応力度σydは、315N/mm2である。表1に、CASE1の詳細を示す。
【0041】
CASE1では、緩衝鋼管10が用いられていないため、流下した礫が直接本体鋼管80に衝突する。このため、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用か否かを判定するにあたり、従来のとおり、礫の衝突エネルギーEと本体鋼管80のエネルギー吸収能力Edとを比較した。
【0042】
表1に示すように、CASE1では、上記の数式(1)により、本体鋼管80のエネルギー吸収能力Edは、29kJとなる。上記の数式(2)により、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Plは、1050kNとなる。
【0043】
CASE1では、礫の衝突エネルギーE(44(kJ)及び68(kJ))が本体鋼管80のエネルギー吸収能力Ed(29(kJ))を超えるため、本体鋼管80を使用限界の範囲内で使用できない(表1において「×」で表記)。
【0044】
【表1】
【0045】
次に、CASE2-1~2-4、3-1~3-3では、本体鋼管80に緩衝鋼管10を2箇所の取付機構2を介して取り付け、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用できるか否かを判定した。本体鋼管80の外径500mmとし、本体鋼管80の板厚22mmとした。本体鋼管80として、例えばSTK490を用いた場合、鋼管の降伏応力度σydは、315N/mm2である。
【0046】
また、CASE2-1~2-4では、緩衝鋼管10の外径500mmとし、緩衝鋼管10の板厚と、緩衝鋼管10のへこみ率の上限と、パラメータとした。表2にCASE2の詳細を示す。また、CASE3-1~3-3では、緩衝鋼管10の外径600mmとし、緩衝鋼管10の板厚をパラメータとし、緩衝鋼管10のへこみ率の上限を40%とした。表3にCASE3の詳細を示す。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
CASE2-1~2-4、3-1~3-3では、本体鋼管80の上流側に緩衝鋼管10が取り付けられるため、流下した礫が先ずは緩衝鋼管10に衝突する。このため、礫の衝突エネルギーEが緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed以下である必要がある。
【0050】
また、CASE2-1~2-4、3-1~3-3では、本体鋼管80に緩衝鋼管10が取り付けられるため、緩衝鋼管10から本体鋼管80へ支点反力が伝達される。このため、礫の衝突エネルギーEの観点だけでなく、本体鋼管80への支点反力の観点についても検討した。
【0051】
したがって、CASE2-1~2-4、3-1~3-3では、要件(1)礫の衝突エネルギーEが緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed以下であり、かつ、要件(2)本体鋼管80への支点反力が、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Pl以下である場合に、本体鋼管80が使用限界の範囲内での使用と判定した。なお、判定に際して、要件(1)については、速度v=8.0(m/s)の場合における礫の衝突エネルギー(44kJ)を閾値とした。また、判定に際しては、要件(2)については、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Plは、CASE1を参照し、1050kNを閾値とした。
【0052】
表2、表3において、礫の衝突エネルギーEが緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed以下の場合、「衝突エネルギーの判定」の欄において「〇」と表記し、それ以外の場合、「×」と表記する。表2、表3において、本体鋼管80への支点反力が、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Pl以下である場合、「支点反力の判定」の欄において「〇」と表記し、それ以外の場合は「×」と表記する。表2、表3において、要件(1)と要件(2)の両方を満たした場合、「総合判定」の欄で「〇」と表記し、それ以外の場合、「×」と表記する。
【0053】
本例では、緩衝鋼管10は2箇所の取付機構2を介して本体鋼管80に取り付けられるため、本体鋼管80への支点反力は、礫が衝突した際の緩衝鋼管10のへこみ変形に対応する荷重Plを、取付機構2の数(2箇所)で除した値となる。例えば、CASE2-1では、礫が衝突した際の緩衝鋼管10のへこみ変形に対応する荷重Plが3182(kN)であるから、本体鋼管80への支点反力は、3182(kN)を、取付機構2の数である2(箇所)で除した1591(kN)となる。
【0054】
CASE2-1では、速度v=8.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(44(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(354(kJ))以下であるため、要件(1)を満たす。一方、本体鋼管80への支点反力(1591(kN))は、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Pl(1050(kN))を超えるため、要件(2)は満たさない。よって、CASE2-1では、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用できない。
【0055】
CASE2-2では、速度v=8.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(44(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(105(kJ))以下であるため、要件(1)を満たす。また、本体鋼管80への支点反力(474(kN))は、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Pl(1050(kN))以下であるため、要件(2)は満たす。よって、CASE2-2では、本体鋼管80を使用限界の範囲内で使用できる。
【0056】
なお、CASE2-2では、速度v=10.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(68(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(105(kJ))以下であるため、より速度の大きい礫に対しても、使用限界の範囲内で使用できる。
【0057】
CASE2-3では、速度が8.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(44(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(59(kJ))以下であるため、要件(1)を満たす。また、本体鋼管80への支点反力(267(kN))は、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Pl(1050(kN))以下であるため、要件(2)は満たす。よって、CASE2-3では、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用できる。
【0058】
なお、CASE2-3では、速度v=10.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(68(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(59(kJ))を超えるため、より速度の大きい礫に対しては、本体鋼管80が使用限界の範囲を超過するおそれもある。
【0059】
CASE2-4では、速度が8.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(44(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(162(kJ))以下であるため、要件(1)を満たす。また、本体鋼管80への支点反力(417(kN))は、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Pl(1050(kN))以下であるため、要件(2)は満たす。よって、CASE2-4では、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用できる。
【0060】
なお、CASE2-4では、速度v=10.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(68(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(162(kJ))以下であるため、より速度の大きい礫に対しても、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用できる。
【0061】
CASE3-1では、速度v=8.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(44(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(416(kJ))以下であるため、要件(1)を満たす。一方、本体鋼管80への支点反力(1560(kN))は、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Pl(1050(kN))を超えるため、要件(2)は満たさない。よって、CASE3-1では、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用できない。
【0062】
CASE3-2では、速度v=8.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(44(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(124(kJ))以下であるため、要件(1)を満たす。また、本体鋼管80への支点反力(464(kN))は、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Pl(1050(kN))以下であるため、要件(2)は満たす。よって、CASE3-2では、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用できる。
【0063】
なお、CASE3-2では、速度v=10.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(68(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(124(kJ))以下であるため、より速度の大きい礫に対しても、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用できる。
【0064】
CASE3-3では、速度が8.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(44(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(70(kJ))以下であるため、要件(1)を満たす。また、本体鋼管80への支点反力(261(kN))は、本体鋼管80のへこみ変形に対応する荷重Pl(1050(kN))以下であるため、要件(2)は満たす。よって、CASE3-3では、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用にできる。
【0065】
なお、CASE3-3では、速度v=10.0(m/s)の場合の礫の衝突エネルギーE(68(kJ))は、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力Ed(70(kJ))以下であるため、より速度の大きい礫に対しても、本体鋼管80が使用限界の範囲内で使用できる。
【0066】
以上から、CASE2-1、CASE3-1に示すように、本体鋼管80の板厚と緩衝鋼管10の板厚とが同じである場合には、礫が緩衝鋼管10に衝突したとき、緩衝鋼管10から本体鋼管80に伝達される支点反力が大きくなるため、本体鋼管80を使用限界の範囲内で使用できない。
【0067】
これに対し、CASE2-2~2-4、CASE3-2~3-3に示すように、緩衝鋼管10の板厚が本体鋼管80の板厚未満である場合には、本体鋼管80を使用限界の範囲内で使用できる。よって、緩衝鋼管10の板厚が本体鋼管80の板厚未満である場合には、本体鋼管80に先行して緩衝鋼管10にへこみ変形を生じさせ、堰堤本体8に作用する土石流の衝突エネルギーを低減できる。すなわち、小さな荷重で大きな吸収能力エネルギーを得る緩衝効果を向上させることが可能となる。その結果、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0068】
また、緩衝鋼管10のへこみ率の上限値を大きくすることにより、エネルギー吸収能力を向上させるとともに、緩衝鋼管10のへこみ変形に対応する荷重も向上させることができる。このため、より大きな礫に対しても、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0069】
また、緩衝鋼管10の外径は、本体鋼管80の外径以上である。これにより、2つの緩衝鋼管10の外面同士の純間隔を小さくできる。このため、流下方向に礫等が流下したとき、緩衝鋼管10により礫等を捕捉し易くなり、本体鋼管80に礫等が衝突するのを抑制できる。その結果、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0070】
例えばCASE3-2における緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力は、CASE2-2のおける緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力よりも大きい。これにより、緩衝鋼管10の外径を本体鋼管80の外径よりも大きくすることで、緩衝鋼管10の外径が本体鋼管80の外径と同じ場合と比べて、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力を大きくできる。また、例えばCASE3-2における本体鋼管80への支点反力は、CASE2-2のおける本体鋼管80への支点反力よりも小さい。これにより、緩衝鋼管10の外径を本体鋼管80の外径よりも大きくすることで、緩衝鋼管10の外径が本体鋼管80の外径と同じ場合と比べて、本体鋼管80に伝達される支点反力を小さくできる。
【0071】
よって、緩衝鋼管10の外径を本体鋼管80の外径よりも大きくすることにより、緩衝鋼管10の外径が本体鋼管80の外径と同じ場合と比べて、緩衝鋼管10のエネルギー吸収能力を大きくしつつ、本体鋼管80に伝達される支点反力を小さくできる。このため、小さな荷重で大きな吸収能力エネルギーを得る緩衝効果を更に向上させることが可能となる。その結果、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0072】
なお、上述した例では、緩衝鋼管10が本体鋼管80の上流側に配置される場合を例示して説明したが、本体鋼管80の上方側に配置される場合であっても同様である。
【0073】
(第1実施形態の第1変形例)
図4(a)は、第1実施形態における透過型砂防堰堤100の第1変形例を示す側面図である。第1変形例では、第1緩衝鋼管11の下端が基礎部9に埋設して固定される。第1緩衝鋼管11は、取付機構2を介して第1本体鋼管81に着脱自在に取り付けられるため、第1緩衝鋼管11が破損した場合であっても、容易に交換できる。
【0074】
(第1実施形態の第2変形例)
図4(b)は、第1実施形態における透過型砂防堰堤100の第2変形例を示す側面図である。第2変形例では、第1緩衝鋼管11の下端がアンカー部材19を介して基礎部9に固定される。第1緩衝鋼管11は、取付機構2を介して第1本体鋼管81に着脱自在に取り付けられるため、第1緩衝鋼管11が破損した場合であっても、容易に交換できる。
【0075】
(第1実施形態の第3変形例)
図5(a)は、第1実施形態における透過型砂防堰堤100の第3変形例を示す側面図である。第3変形例では、第1緩衝鋼管11は、上下方向Zに複数に配置される。図5(a)の例では、第1緩衝鋼管11が上下方向Zに2つ配置される。本体鋼管80は、第1本体鋼管81と第2本体鋼管82とに溶接等により連結される連結本体鋼管84を更に有する。
【0076】
(第1実施形態の第4変形例)
図5(b)は、第1実施形態における透過型砂防堰堤100の第4変形例を示す側面図である。第4変形例では、第1本体鋼管81が上下方向Zに対して傾斜して配置される。第1緩衝鋼管11は、第1本体鋼管81に沿って配置される。
【0077】
(第1実施形態の第5変形例)
図6は、第1実施形態における透過型砂防堰堤100の第5変形例を示す斜視図である。第5変形例では、第1緩衝鋼管11は、幅方向Yに複数配置される。緩衝鋼管10は、第1緩衝鋼管11を繋ぐ連結緩衝鋼管18を更に有する。連結緩衝鋼管18は、幅方向Yに延び、上下方向Zに複数に配置される。幅方向Yに離間する第1緩衝鋼管11の外面同士の純間隔は、例えば衝突が想定される礫の径の2.0倍以上とし、上下方向Zに離間する連結緩衝鋼管18の外面同士の純間隔は、礫の径の1.0倍以下とするのが好ましい。
【0078】
(第1実施形態の第6変形例)
図7は、第1実施形態における透過型砂防堰堤100の第6変形例を示す斜視図である。第6変形例では、第1緩衝鋼管11は、幅方向Yに複数配置される。緩衝鋼管10は、第1緩衝鋼管11を繋ぐ連結緩衝鋼管18を更に有する。連結緩衝鋼管18は、幅方向Yに延び、上下方向Zに複数に配置される。幅方向Yに離間する第1緩衝鋼管11の外面同士の純間隔は、例えば衝突が想定される礫の径の1.0倍以下とし、上下方向Zに離間する連結緩衝鋼管18の外面同士の純間隔は、礫の径の1.0倍以下とするのが好ましい。
【0079】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態における透過型砂防堰堤100の一例を示す斜視図である。図9は、第2実施形態における透過型砂防堰堤100の一例を示す側面図である。図10は、第2実施形態における透過型砂防堰堤100の一例において、第2本体鋼管82の近傍を第2本体鋼管82の管軸方向に直交する断面で切った断面図である。
【0080】
第2実施形態における透過型砂防堰堤100は、更に堰堤本体8の上方側に緩衝部材1が設けられる点で、主に第1実施形態と相違する。
【0081】
緩衝鋼管10は、第2緩衝鋼管12を更に有する。第2緩衝鋼管12は、第2本体鋼管82の上方側に配置される。第2緩衝鋼管12は、下端が基礎部9から離間される。1本の第2緩衝鋼管12には、取付機構2が例えば2箇所に設けられる。第2緩衝鋼管12の外径D12は、第2本体鋼管82の外径D82以上である。第2緩衝鋼管12の板厚t12は、第2本体鋼管82の板厚t82未満である。
【0082】
本実施形態によれば、第2緩衝鋼管12の外径D12は、第2本体鋼管82の外径D82以上である。これにより、2つの第2緩衝鋼管12の外面同士の純間隔L12を、2つの第2本体鋼管82の外面同士の純間隔L82以下にできる。このため、流下方向に礫等が流下したとき、第1緩衝鋼管11を越流した礫を第2緩衝鋼管12に沿って流下させ易くなる。このため、第2本体鋼管82に礫等が衝突するのを抑制できる。その結果、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0083】
本実施形態によれば、第2緩衝鋼管12の板厚t12は、第2本体鋼管82の板厚t82未満である。これにより、第2本体鋼管82に先行して第2緩衝鋼管12にへこみ変形を生じさせ、堰堤本体8に作用する土石流の衝突エネルギーを低減できる。すなわち、小さな荷重で大きな吸収能力エネルギーを得る緩衝効果を向上させることが可能となる。その結果、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0084】
(第2実施形態の第1変形例)
図11は、第2実施形態における透過型砂防堰堤100の第1変形例において、第2本体鋼管82の近傍を第2本体鋼管82の管軸方向に直交する断面で切った断面図である。第1変形例では、第2緩衝鋼管12の外径D12は、第2本体鋼管82の外径D82未満である点で、主に第2実施形態の一例と相違する。
【0085】
本実施形態によれば、第2緩衝鋼管12の外径D12は、第2本体鋼管82の外径D82未満である。土石流が発生した場合、土石流の先端に径の大きな礫が存することが多いことから、第1緩衝鋼管11を越流する礫は、比較的径の小さいものが多い。越流した礫の径が小さい場合には、大きな緩衝効果がなくてもよいことから、第2緩衝鋼管12の外径D12は、第2本体鋼管82の外径D82未満としてもよい。
【0086】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係る透過型砂防堰堤100の一例を示す側面図である。
【0087】
第3実施形態における透過型砂防堰堤100は、更に堰堤本体8の上方側に緩衝部材1が設けられる点で、主に第1実施形態と相違する。
【0088】
緩衝鋼管10は、堰堤本体8の天端を保護する第3緩衝鋼管13を更に有する。第3緩衝鋼管13は、第1本体鋼管81の上方側に配置される。第3緩衝鋼管13は、流下方向Xに延びる。第3緩衝鋼管13の外径は、第1本体鋼管81の外径以上である。第3緩衝鋼管13の板厚は、第1本体鋼管81の板厚未満である。
【0089】
第3緩衝鋼管13の上流側X1の端部は、第1緩衝鋼管11の下流側X2の外側面に溶接により連結されることが好ましい。これにより、第3緩衝鋼管13の上流側X1の端部が上流側X1に露出せずに第1本体鋼管81により覆われる。このため、礫等の流下物が上流側X1から第3緩衝鋼管13に衝突するのを抑制できる。なお、図示は省略するが、第3緩衝鋼管13の下方側の外周面に、第1緩衝鋼管11の上端が溶接により連結されてもよい。
【0090】
本実施形態によれば、緩衝鋼管10は、第1本体鋼管81よりも上方側に配置され、流下方向Xに沿って延びる第3緩衝鋼管13を有する。これにより、第1緩衝鋼管11を越流した礫が第1本体鋼管81に衝突するのを抑制できる。
【0091】
本実施形態によれば、第3緩衝鋼管13の板厚t13は、第3本体鋼管83の板厚t83未満である。これにより、第3本体鋼管83に先行して第3緩衝鋼管13にへこみ変形を生じさせ、堰堤本体8に作用する土石流の衝突エネルギーを低減できる。すなわち、小さな荷重で大きな吸収能力エネルギーを得る緩衝効果を向上させることが可能となる。その結果、堰堤本体8の損傷を抑制できる。
【0092】
本実施形態によれば、第3緩衝鋼管13の上流側X1の端部は、第1緩衝鋼管11の下流側X2の外側面に溶接により連結される。これにより、第3緩衝鋼管13の上流側X1の端部が上流側X1に露出せずに第1本体鋼管81により覆われる。このため、礫等の流下物が上流側X1から第3緩衝鋼管13に衝突するのを抑制できる。
【0093】
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、この発明は、上記の実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記の実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
100 :透過型砂防堰堤
1 :緩衝部材
10 :緩衝鋼管
11 :第1緩衝鋼管
12 :第2緩衝鋼管
13 :第3緩衝鋼管
18 :連結緩衝鋼管
19 :アンカー部材
2 :取付機構
21 :第1取付鋼管
22 :第2取付鋼管
23 :締結金具
8 :堰堤本体
80 :本体鋼管
81 :第1本体鋼管
82 :第2本体鋼管
83 :第3本体鋼管
84 :連結本体鋼管
89 :横材
9 :基礎部
X :流下方向
X1 :上流側
X2 :下流側
Y :幅方向
Z :上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12