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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040054
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】油溶性色素乳化製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/41 20160101AFI20240315BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20240315BHJP
   A23L 5/44 20160101ALI20240315BHJP
【FI】
A23L5/41
A23L29/219
A23L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144885
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】深澤 拓也
【テーマコード(参考)】
4B018
4B025
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018LE05
4B018MA01
4B018MB03
4B018MB05
4B018MC01
4B018MC04
4B018MF02
4B025LD03
4B025LG11
4B025LG14
4B025LG21
4B025LG32
4B025LG41
4B025LG42
4B025LG43
4B025LG53
4B025LG54
4B025LG56
4B025LK01
4B025LP01
4B025LP10
(57)【要約】
【課題】pH調整をすることなく、製造工程中に凝集物が発生せず、粘度の増加が抑制されていることに加え、乳化安定性及び色調安定性が高い油溶性色素の乳化製剤が得られる油溶性色素の乳化製剤の製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程(A)及び(B)を実施する工程を含む、油溶性色素乳化製剤の製造方法。
(A):アルケニルコハク酸エステル化澱粉並びに重量平均分子量2000以下のペプチドを含有する組成物を70℃以上で加熱処理する工程
(B):工程(A)で処理した組成物及び油溶性色素を含有する水中油型乳化組成物を調製する工程
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(A)及び(B)を実施する工程を含む、油溶性色素乳化製剤の製造方法。
(A):アルケニルコハク酸エステル化澱粉並びに重量平均分子量2000以下のペプチドを含有する組成物を70℃以上で加熱処理する工程
(B):工程(A)で処理した組成物及び油溶性色素を含有する水中油型乳化組成物を調製する工程
【請求項2】
油溶性色素がカロテノイドである、請求項1に記載の油溶性色素乳化製剤の製造方法。
【請求項3】
アルケニルコハク酸エステル化澱粉がオクテニルコハク酸エステル化澱粉である、請求項1又は2に記載の油溶性色素乳化製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油溶性色素乳化製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油溶性色素は、カロテノイド、クロロフィル、クルクミン等があり、天然に広く分布しており、多くの食品に特徴的な色調を付与している。油溶性色素の中でも、β-カロテン、主成分がルテイン及びルテイン脂肪酸エステルであるマリーゴールド色素、クルクミン等は、食品添加物として広範な食品の着色に用いられている他、栄養強化や健康機能の付与の目的でも用いられている。
【0003】
油溶性色素を用いて、清涼飲料水、製菓、冷菓、パン、洋菓子、和洋菓子、麺類等の水性食品を着色するため、各種乳化素材を用いて調製した様々なタイプの着色料製剤が用いられている。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン等の乳化剤、アラビアガム、アルケニルコハク酸エステル化澱粉、界面活性タンパク質等を用いて調製した油溶性色素の乳化製剤、当該乳化液を乾燥・粉末化した製剤、又はゼラチンを膜形成物質として油溶性色素をマイクロカプセル化した製剤等が通常用いられる。
【0004】
昨今、加工食品の海外輸出量が増加してきており、それに伴い輸出先の各国での法規制に遵守した着色料製剤の需要が高まっている。前記乳化素材の中でも、特にアルケニルコハク酸エステル化澱粉と食品素材でもある界面活性タンパク質は、各国の法規制に幅広く合致するため、海外輸出向け食品の着色に用いる着色料製剤への配合に適している。
【0005】
このため、アルケニルコハク酸エステル化澱粉及び界面活性タンパク質を併用し、乳化安定性に優れた乳化製剤を調製する技術が多く知られている。例えば、界面活性タンパク質及びオクテニルコハク酸澱粉ナトリウム等の多糖類を1:a(aが5以上である)の比率で含む組成物を加熱処理した後、水相に分散させ、カロテノイド等を含む油相を乳化させることで、長期安定なエマルジョンを得る方法(特許文献1)、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム等の乳化性澱粉及び界面活性能を有する小麦タンパク分解物を用いることで、高塩分、低pH域の条件における、加熱処理に対する耐性が強い水中油型乳化油脂組成物を得る方法(特許文献2)等が知られている。
【0006】
しかし、アルケニルコハク酸エステル化澱粉及び界面活性タンパク質を用いて乳化する乳化製剤の製造方法は、製造工程中にタンパク質の凝集物が発生し、当該凝集物のろ過工程の導入のための労力が発生する問題、及び製剤の粘度が高くなりハンドリング性が悪くなる問題がある。なお、前者の問題に対しては、水相のpHを調整することでタンパクの凝集物の発生を抑制する技術(特許文献3)が知られているが、pH調整剤の配合によって処方や製造工程が複雑になることが弱点である。
【0007】
また、上記のような乳化製剤では、長期保存を可能にするため、更なる乳化安定性が求められており、特に、油溶性色素を配合する場合においては、色調安定性(即ち、保存中の色調変化が少ないこと)も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-193890号公報
【特許文献2】特開2009-232751号公報
【特許文献3】特願2019-550917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、pH調整をすることなく、製造工程中に凝集物が発生せず、粘度の増加が抑制されていることに加え、乳化安定性及び色調安定性が高い油溶性色素の乳化製剤が得られる油溶性色素の乳化製剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に対して鋭意・検討を行った結果、アルケニルコハク酸エステル化澱粉並びに重量平均分子量2000以下のペプチドを含有する組成物を70℃以上で加熱処理する工程を経て、その組成物を乳化に用いることで、前記課題が解決されることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、次の(1)~(3)からなっている。
(1)下記工程(A)及び(B)を実施する工程を含む、油溶性色素乳化製剤の製造方法。
(A):アルケニルコハク酸エステル化澱粉並びに重量平均分子量2000以下のペプチドを含有する組成物を70℃以上で加熱処理する工程
(B):工程(A)で処理した組成物及び油溶性色素を含有する水中油型乳化組成物を調製する工程
(2)油溶性色素がカロテノイドである、前記(1)に記載の油溶性色素乳化製剤の製造方法。
(3)アルケニルコハク酸エステル化澱粉がオクテニルコハク酸エステル化澱粉である、前記(1)又は(2)に記載の油溶性色素乳化製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、pH調整をすることなく、製造工程中に凝集物が発生せず、粘度の増加が抑制されていることに加え、乳化安定性及び色調安定性が高い油溶性色素の乳化製剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いられる油溶性色素は、着色料として利用可能な油溶性の化合物であれば特に制限はなく、例えば、β-カロテン、β-アポ-8′-カロテナール、カンタキサンチン、銅クロロフィル、アナトー色素、オレンジ色素、デュナリエラカロテン、トウガラシ色素(別名:パプリカ色素)、トマト色素、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、ファフィア色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素、ウコン色素、クロロフィル等が挙げられる。これら油溶性色素の中でも、カロテノイドであるβ-カロテン、β-アポ-8′-カロテナール、カンタキサンチン、アナトー色素、オレンジ色素、デュナリエラカロテン、トウガラシ色素(別名:パプリカ色素)、トマト色素、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、ファフィア色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素が好ましい。これら油溶性色素は、1種単独で又は2種以上を任意で組合せて使用することができる。
【0014】
本発明で用いられるアルケニルコハク酸エステル化澱粉は、澱粉とコハク酸のアルケニル誘導体とのエステルであり、アルカリ触媒の存在下で澱粉とコハク酸のアルケニル誘導体とをエステル化反応させて得ることができる。澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉等の天然澱粉、又はこれらの化工澱粉(酸分解澱粉、酸化澱粉、酵素分解澱粉、エーテル化、エステル化、架橋化等の澱粉誘導体、湿熱処理澱粉、アルファー化澱粉等)が挙げられる。コハク酸のアルケニル誘導体としては、例えば、アルケニルの炭素数が2~22、好ましくは6~14の無水アルケニルコハク酸が好ましく、その具体例としては、ヘキセニル無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、デセニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、テトラデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニル無水コハク酸、オクタデセニル無水コハク酸等が挙げられる。
【0015】
アルケニルコハク酸エステル化澱粉の具体例としては、例えば、オクテニルコハク酸エステル化澱粉、デセニルコハク酸エステル化澱粉、ドデセニルコハク酸エステル化澱粉、テトラデセニルコハク酸エステル化澱粉、ヘキサデセニルコハク酸エステル化澱粉、及びオクタデセニルコハク酸エステル化澱粉、並びにこれら澱粉をα化又は加水分解等の処理をしたもの又はこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、とりわけα化オクテニルコハク酸エステル化澱粉又はその塩が好ましい。
【0016】
本発明で用いられる重量平均分子量2000以下のペプチドは、食用可能なペプチドであって、重量平均分子量が2000以下のものであれば特に制限はない。該ペプチドとしては、例えば、エンドウマメタンパク、大豆タンパク、ヒヨコマメタンパク、ソラマメタンパク、トウモロコシタンパク、小麦タンパク、ジャガイモタンパク、乳タンパク、酵母タンパク、魚タンパク、シルクタンパク、ケラチンタンパク、ゼラチン等の食品由来のタンパク質の分解物、合成ペプチド等であって重量平均分子量が2000以下のものが挙げられる。
【0017】
ここで、ペプチドの重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィーにより下記分析条件で測定することができる。
<ゲルろ過クロマトグラフィー分析条件>
測定機器:AgilentLC1260 Infinity(アジレント・テクノロジー社製)
カラム:TSKgelG2500PWxl(東ソー社製)
カラム温度:40℃
移動相:水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸(55/45/0.1)(V/V/V)
流量:0.5mL/min
測定波長:220nm
標準品:Cytochrome C、Aprotinin、Bacitracin、AngiotensinII、Gly-Gly-Tyr-Arg、Gly-Gly―Gly-Gly
【0018】
尚、重量平均分子量2000以下のペプチドは、本発明の効果が十分に得られる観点から、界面活性能を有しないものが好ましい。重量平均分子量2000以下のペプチドであれば、界面活性能を有しない可能性が高いが、それを確認するため、界面活性能の有無の確認試験を実施できる。その試験の具体例は、実施例において後述する。
【0019】
本発明の油溶性色素乳化製剤の製造方法は、下記工程(A)及び(B)を実施する工程を含む。
(A):アルケニルコハク酸エステル化澱粉並びに重量平均分子量2000以下のペプチドを含有する組成物を70℃以上で加熱処理する工程
(B):工程(A)で処理した組成物及び油溶性色素を含有する水中油型乳化組成物を調製する工程
【0020】
本発明の油溶性色素乳化製剤の製造方法は、より具体的には、加熱処理の方法により、下記方法1又は2のいずれかの方法に分けられる。
【0021】
[方法1:水系加熱法]
方法1は、アルケニルコハク酸エステル化澱粉と重量平均分子量2000以下のペプチドとを水の存在下で加熱処理する工程を含む方法である。方法1における工程(A)及び(B)を以下に示す。
【0022】
<工程(A)>
例えば、先ず、アルケニルコハク酸エステル化澱粉と重量平均分子量2000以下のペプチドとを水に加えて得た組成物を70~100℃、好ましくは90~100℃で、30分間~8時間、好ましくは1時間~3時間加熱して溶解し水相とする。
【0023】
<工程(B)>
次いで、15~100℃、好ましくは55~70℃に調整した該水相を撹拌しながら、ここに油相として40~160℃、好ましくは55~100℃の油溶性色素を加えて撹拌し、水相中に油相を均一に分散させて水中油型乳化組成物を得る。
【0024】
[方法2:非水系加熱法]
方法2は、アルケニルコハク酸エステル化澱粉と重量平均分子量2000以下のペプチドとを水が存在しない状態で加熱処理する工程を含む方法である。方法2における工程(A)及び(B)を以下に示す。
【0025】
<工程(A)>
例えば、先ず、粉体のアルケニルコハク酸エステル化澱粉と粉体の重量平均分子量2000以下のペプチドとを混合して得た組成物を70~300℃、好ましくは100℃~200℃で、5分間~8時間、好ましくは5分間~2時間加熱する。
【0026】
<工程(B)>
工程(A)で得た組成物を水に溶解又は分散させて水相とする。水相は、配合成分の溶解のために加熱処理することが好ましい。加熱処理は、40~100℃、より好ましくは50~80℃で、15分~8時間、好ましくは20分~2時間で実施することが好ましい。次いで、15~100℃、好ましくは55~70℃に調整した該水相を撹拌しながら、ここに油相として40~160℃、好ましくは55~100℃の油溶性色素を加えて撹拌し、水相中に油相を均一に分散させて水中油型乳化組成物を得る。
【0027】
上記方法1及び2で用いられる水としては、飲用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、蒸留水、イオン交換樹脂処理水、逆浸透膜(RO)処理水及び限外ろ過膜(UF)処理水等の精製水、水道水、地下水又は涌水等の天然水、並びにアルカリイオン水等が挙げられる。
【0028】
上記方法1及び2では、油相として、油溶性色素と油脂が混合されているものを用いても良い。該油脂としては、食用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油及びハイオレイックヒマワリ油等の植物油脂、牛脂、ラード、魚油及び乳脂等の動物油脂、更にこれら動植物油脂を分別、水素添加又はエステル交換したもの、並びに中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられ、好ましくは大豆油、綿実油、コーン油、落花生油又はオリーブ油等の植物油脂である。
【0029】
上記の場合において、油相中の油溶性色素と油脂の配合比率に特に制限はないが、例えば、0.1/99.9~99.9/0.1(W/W)であり、好ましくは5/95~95/5(W/W)である。かかる油相の調製は、自体公知の方法に従って実施することができ、例えば、油溶性色素と油脂の混合物を、撹拌条件下で、60~160℃、好ましくは65~145℃で1~60分間、好ましくは5~45分間加熱することにより調製できる。
【0030】
上記方法1及び2により得られる水中油型乳化組成物100質量%中、アルケニルコハク酸エステル化澱粉(以下「A成分」ともいう)と重量平均分子量2000以下のペプチド(以下「B成分」ともいう)との含有量の合計量は、2~35質量%、好ましくは5~10質量%であり、油溶性色素の含有量は、0.1~35質量%、好ましくは0.5~25質量%であり、水の含有量は、5~50質量%、好ましくは10~40質量%であり、後述の賦形剤の含有量は、10~90質量%、好ましくは20~80質量%である。また、該水中油型乳化組成物において、A成分とB成分の比率(A/B)は、200/1~1/1(W/W)、好ましくは100/1~5/1(W/W)であり、油相と水相の比率(油相/水相)は、1/99~40/60(W/W)、好ましくは5/95~30/70(W/W)である。
【0031】
上記方法1及び2で撹拌に用いる装置としては特に限定されず、例えば、撹拌機、加熱用のジャケット及び邪魔板等を備えた通常の撹拌・混合槽を用いることができる。装備する撹拌機としては、TKホモミクサー(プライミクス社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)等の高速回転式ホモジナイザーが好ましく用いられる。高速回転式ホモジナイザーを用いる場合の撹拌条件は、回転数が4000~20000rpm、撹拌時間が30~90分間であることが好ましい。また、これらの装置で処理した液は、高圧式均質化処理機を用いて更に均質化してもよい。ここで、高圧式均質化処理機としては、例えば、APVゴーリンホモジナイザー(APV社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製)、スターバスト(スギノマシン社製)、ナノマイザー(大和製罐社製)等を好ましく用いることができる。上記高圧式均質化処理機に代えて、例えば超音波乳化機等の均質化処理機を用いてもよい。
【0032】
本発明の製造方法により調製される水中油型乳化組成物(即ち、油溶性色素乳化製剤)には、本発明の目的・効果を阻害しない範囲で、例えば、食品用乳化剤、酸化防止剤、賦形剤等を配合することができる。
【0033】
食品用乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの他、グリセリン酢酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が含まれる。またレシチンには、分別レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等が含まれる。
【0034】
酸化防止剤としては、例えば、抽出トコフェロール、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸及びその塩類、カテキン類、酵素処理ルチン、ヒマワリ種子抽出物、ブドウ種子抽出物及び酵素分解リンゴ抽出物などが挙げられる。
【0035】
賦形剤としては、例えばソルビトール、マンニトール、マルチトール、果糖ブドウ糖液糖、還元水飴及び還元パラチノースなどの糖アルコール類、グリセリンやプロピレングリコール等が挙げられる。
【0036】
本発明の製造方法により得られる油溶性色素乳化製剤は、食品及び医薬品の着色に用いることができる。着色の対象となる食品に特に制限はなく、例えば、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類、乳飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、粉末飲料、アルコール飲料、コーヒー飲料、茶飲料等の飲料類、プリン、ゼリー、ヨーグルト等のデザート類、チューインガム、チョコレート、ドロップ、キャンディ、クッキー、せんべい、グミ等の菓子類、ジャム類、スープ類、漬物類、ドレッシング、たれ等の調味料、ハム、ソーセージ等の畜肉加工品、魚肉ソーセージ、かまぼこ等の水産練り製品等が挙げられる。また、着色の対象となる医薬品に特に限定はなく、例えば、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、交感神経興奮剤、副交感神経遮断剤、中枢興奮薬、H2ブロッカー、制酸剤、消炎酵素剤、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗菌剤、鎮咳剤、去痰剤、抗コリン剤、止しゃ剤、催眠鎮静薬、利胆薬、血圧降下剤、骨格筋弛緩薬、乗り物酔い予防・治療薬等、ビタミン類、生薬類等が挙げられる。
【0037】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0038】
[ペプチドの界面活性能評価試験]
(1)供試ペプチド
1)エンドウマメペプチドA(商品名:PRODIEM PEA 7028;重量平均分子量11660;Kerry社製)
2)エンドウマメペプチドB(商品名:PRODIEM PEA ADVANCE 7187;重量平均分子量6803;Kerry社製)
3)エンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)
4)エンドウマメペプチドD(商品名:RADIPURE E8001G;重量平均分子量8612;Cargill社製)
5)大豆ペプチド(商品名:WA-3;重量平均分子量138;三菱商事ライフサイエンス社製)
6)トウモロコシペプチド(商品名:HPP-3H3;重量平均分子量106;三菱商事ライフサイエンス社製)
7)ポテトペプチド(商品名:ポテ味;重量平均分子量647;コスモ社製)
8)小麦ペプチド(商品名:エンザップVP;重量平均分子量217;三菱商事ライフサイエンス社製)
9)乳ペプチドA(商品名:森永ペプチドC800;重量平均分子量5594;森永乳業社製)
10)乳ペプチドB(商品名:NZ森永ペプチドMKP;重量平均分子量666;森永乳業社製)
11)酵母ペプチド(商品名:HPP-213;重量平均分子量107;三菱商事ライフサイエンス社製)
12)魚ペプチド(商品名:フィッシュコラーゲンC;重量平均分子量1635;コスモ社製)
【0039】
(2)試験方法
ペプチドの界面活性能の有無を確認するために、各ペプチドを用いてパプリカ色素を含む油脂の乳化処理を試みた。先ず、グリセリン(商品名:食品添加物グリセリン;阪本薬品工業社製)80g、水70g、ペプチド10gを混合し、60℃で30分間加温及び溶解処理し、水相を調製した。一方、ナタネ油39.5g及びパプリカ色素(商品名:リケカラーパプリカAP-300;10万Color Value;理研ビタミン社製)0.5gを混合し、60℃で30分間加温処理し、油相を調製した。水相に油相を添加し、クレアミックス(型番:CLM-0.8S;エム・テクニック社製)を用い、10,000rpmの剪断力で5分間乳化処理した。乳化処理10分後に乳化状態を目視で確認し、水相と油相が分離していなければ界面活性能があるペプチド、水相と油相が分離していれば界面活性能がないペプチドであると判断した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果から明らかなように、重量平均分子量が2000以下のペプチドは界面活性能がなく、重量平均分子量が2000を超えるペプチドは界面活性能があることが確認された。
【0042】
[β-カロテン乳化製剤の製造]
[実施例1]
1)300mLのトールビーカーにグリセリン(商品名:食品添加物グリセリン;阪本薬品工業社製)50.0g、果糖ブドウ糖液糖(商品名:ハイフラクトースF-550;サンエイ糖化社製)70.0g、水49.0g、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム(商品名:PURITY GUM 2000;Ingredion社製)10.0g及びエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gを入れて混合した後、ウォーターバスを用いて95℃で2時間加熱処理し、水相を調製した。
2)50mLのステンレスビーカーにナタネ油(商品名:キャノーラ油;岡村製油社製)16.2g、β-カロテン(商品名:Carocare Nat.β-Carotene 30% S;DSM社製)2.2g、ミックストコフェロール(商品名:理研Eオイルスーパー80;理研ビタミン社製)1.6gを入れて混合した後、IHヒーター(型式:KZ-PH1;National社製)を用いて130~140℃で10分間加熱及び混合し、油相を調製した。
3)65℃に調整した1)の水相をクレアミックス(型式:CLM-0.8S;エム・テクニック社製)を用いて低速で撹拌しながら、そこに2)の80~90℃まで冷ました油相を徐々に加え、更に該クレアミックスを用いて10000rpmで30分間撹拌・乳化し、β-カロテン乳化製剤(実施例品1)200gを得た。
【0043】
[実施例2]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、大豆ペプチド(商品名:WA-3;重量平均分子量138;三菱商事ライフサイエンス社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(実施例品2)200gを得た。
【0044】
[実施例3]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、トウモロコシペプチド(商品名:HPP-3H3;重量平均分子量106;三菱商事ライフサイエンス社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(実施例品3)200gを得た。
【0045】
[実施例4]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、ポテトペプチド(商品名:ポテ味;重量平均分子量647;コスモ社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(実施例品4)200gを得た。
【0046】
[実施例5]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、小麦ペプチド(商品名:エンザップVP;重量平均分子量217;三菱商事ライフサイエンス社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(実施例品5)200gを得た。
【0047】
[実施例6]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、乳ペプチドB(商品名:NZ森永ペプチドMKP;重量平均分子量666;森永乳業社製)を使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(実施例品6)200gを得た。
【0048】
[実施例7]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、酵母ペプチド(商品名:HPP-213;重量平均分子量107;三菱商事ライフサイエンス社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(実施例品7)200gを得た。
【0049】
[実施例8]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、魚ペプチド(商品名:フィッシュコラーゲンC;重量平均分子量1635;コスモ社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(実施例品8)200gを得た。
【0050】
[実施例9]
実施例1において95℃で2時間加熱処理したことに替えて、75℃で2時間加熱処理したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(実施例品9)200gを得た。
【0051】
[実施例10]
1)オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム(商品名:PURITY GUM 2000;Ingredion社製)10.0gとエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gを乳鉢及び乳棒を用いて粉体の状態で混合した後、オーブンレンジを用いて160℃で30分加熱処理した。
2)300mLのトールビーカーにグリセリン(商品名:食品添加物グリセリン;阪本薬品工業社製)50.0g、果糖ブドウ糖液糖(商品名:ハイフラクトースF-550;サンエイ糖化社製)70.0g、水49.0g及び1)で得た組成物11.0gを混合した後、溶解のためウォーターバスを用いて60℃で30分間加熱処理し、水相を調製した。
3)50mLのステンレスビーカーにナタネ油(商品名:キャノーラ油;岡村製油社製)16.2g、β-カロテン(商品名:Carocare Nat.β-Carotene 30% S;DSM社製)2.2g、ミックストコフェロール(商品名:理研Eオイルスーパー80;理研ビタミン社製)1.6gを入れて混合した後、IHヒーター(型式:KZ-PH1;パナソニック社製)を用いて130~140℃で10分間加熱及び混合し、油相を調製した。
4)65℃に調整した2)の水相をクレアミックス(型式:CLM-0.8S;エム・テクニック社製)を用いて低速で撹拌しながら、そこに2)の80~90℃まで冷ました油相を徐々に加え、更に該クレアミックスを用いて10000rpmで30分間撹拌・乳化し、β-カロテン乳化製剤(実施例品10)200gを得た。
【0052】
[比較例1]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、エンドウマメペプチドA(商品名:PRODIEM PEA 7028;重量平均分子量11660;Kerry社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(比較例品1)200gを得た。
【0053】
[比較例2]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、エンドウマメペプチドB(商品名:PRODIEM PEA ADVANCE 7187;重量平均分子量6803;Kerry社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(比較例品2)200gを得た。
【0054】
[比較例3]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、エンドウマメペプチドD(商品名:RADIPURE E8001G;重量平均分子量8612;Cargill社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(比較例品3)200gを得た。
【0055】
[比較例4]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、乳ペプチドA(商品名:森永ペプチドC800;重量平均分子量5594;森永乳業社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(比較例品4)200gを得た。
【0056】
[比較例5]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gに替えて、エンドウマメタンパク(商品名:有機エンドウマメタンパク;Nature Zen社製)1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(比較例品5)200gを得た。
【0057】
[比較例6]
実施例1において95℃で2時間加熱処理したことに替えて、溶解のため60℃で30分間加熱処理したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(比較例品6)200gを得た。
【0058】
[比較例7]
実施例1で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.0gを使用せず、実施例1で使用した水の量を49.0gから50.0gに変更したこと以外は実施例1と同様に実施し、β-カロテン乳化製剤(比較例品7)200gを得た。
【0059】
ここで、β-カロテン乳化製剤(実施例品1~10及び比較例品1~7)を得るために実施した実施例1~10及び比較例1~7について、使用したペプチド又はタンパク、ペプチドの重量平均分子量、70℃以上の加熱処理条件及び方法を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
[β-カロテン乳化製剤の製造方法の評価]
(1)凝集物発生の有無の評価
実施例1~10及び比較例1~7において、水相の調製の際に行った加熱処理の後に、凝集物発生の有無を目視で確認した。
【0062】
(2)粘度の評価
β-カロテン乳化製剤(実施例品1~10及び比較例品1~7)の製造直後の絶対粘度(mPa・s)を以下の条件で測定した。
<粘度測定条件>
測定装置:ViscoQC(アントンパール社製)
スピンドル:Measuring BOB B-CC12(アントンパール社製)
せん断速度:7.5 1/s
測定温度:20℃
【0063】
(3)乳化安定性の評価
β-カロテン乳化製剤(実施例品1~10及び比較例品1~7)を40℃のインキュベーターで1か月間保存する前と後のそれぞれにおいて、下記方法にて乳化粒子径を測定した。保存後の乳化粒子径が320nm以下であり、且つ保存前後の乳化粒子径の増大率が120%以下であれば乳化安定性が高い「〇」と判断し、それ以外は乳化安定性が低い「×」と判断した。
<乳化粒子径の測定方法>
β-カロテン乳化製剤(実施例品1~10及び比較例品1~7)を純水に1質量%の濃度で分散させた後、粒子径・ゼータ電位測定装置(型番:SZ-100;堀場製作所社製)を用いて、分散液中の乳化粒子の粒子径を3回測定し、平均値を算出した。粒子径の大きさの指標には、メジアン径を採用した。
【0064】
(4)色調安定性の評価
β-カロテン乳化製剤(実施例品1~10及び比較例品1~7)を40℃のインキュベーターで1か月間保存する前と後のそれぞれにおいて、下記方法にて色調を測定し、次式に基づいて、保存前後の色調変化の度合いを示すΔE*値を求めた。ΔE*値が小さいほど、色調安定性が高いことを表す。
<色調の測定方法>
β-カロテン乳化製剤(実施例品1~10及び比較例品1~7)を牛乳(商品名:おいしい雪印メグミルク牛乳;雪印メグミルク社製)に0.8質量%の濃度で添加した際の分散液の反射色調を測定した。測定は、分光色彩計(型式:SE7700;日本電色工業社製)を用いて実施し、L*a*b*表色系によるL*値、a*値及びb*値を算出した。
【0065】
【数1】
【0066】
上記式中、L`、a`、b`は、保存後の乳化製剤についてのL*値、a*値、b*値をそれぞれ表し、L、a、bは、保存前の乳化製剤についてのL*値、a*値、b*値をそれぞれ表す。
【0067】
(5)結果
(1)~(4)の評価結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
表3の結果から明らかなように、本発明の製造方法(実施例1~10)では凝集物が発生せず、これにより得られたβ-カロテン乳化製剤(実施例品1~10)は、粘度の増加が抑制されており、更に乳化安定性及び色調安定性にも優れることが分かった。これに対し、比較例の製造方法(比較例1~7)では、いずれかの評価項目において本発明の製造方法に比べて劣っていた。
【0070】
[パプリカ色素乳化製剤の製造]
[実施例11]
1)300mLのトールビーカーにグリセリン(商品名:食品添加物グリセリン;阪本薬品工業社製)50.0g、果糖ブドウ糖液糖(商品名:ハイフラクトースF-550;サンエイ糖化社製)45.0g、水44.5g、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム(商品名:PURITY GUM 2000;Ingredion社製)15.0g及びエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.5gを入れて混合した後、ウォーターバスを用いて95℃で2時間加熱処理し、水相を調製した。
2)100mLのビーカーにパプリカ色素(商品名:リケカラーパプリカAP-300;理研ビタミン社製)44.0gを入れ、ウォーターバスを用いて65~70℃で30分間加熱及び混合し、油相を調製した。
3)65℃に調整した1)の水相をクレアミックス(型式:CLM-0.8S;エム・テクニック社製)を用いて低速で撹拌しながら、そこに2)の65~70℃の油相を徐々に加え、更に該クレアミックスを用いて10000rpmで30分間撹拌・乳化し、パプリカ色素乳化製剤(実施例品11)200gを得た。
【0071】
[比較例8]
実施例11で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.5gに替えて、エンドウマメペプチドB(商品名:PRODIEM PEA ADVANCE 7187;重量平均分子量6803;Kerry社製)1.5gを使用したこと以外は実施例11と同様に実施し、パプリカ色素乳化製剤(比較例品8)200gを得た。
【0072】
[比較例9]
実施例11で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.5gに替えて、エンドウマメタンパク(商品名:有機エンドウマメタンパク;Nature Zen社製)1.5gを使用したこと以外は実施例11と同様に実施し、パプリカ色素乳化製剤(比較例品9)200gを得た。
【0073】
[比較例10]
実施例11において95℃で2時間加熱処理したことに替えて、溶解のため60℃で30分間加熱処理したこと以外は実施例11と同様に実施し、パプリカ色素乳化製剤(比較例品10)200gを得た。
【0074】
[比較例11]
実施例11で使用したエンドウマメペプチドC(商品名:PRODIEM REFRESH PEA 7304;重量平均分子量635;Kerry社製)1.5gを使用せず、実施例11で使用した水の量を44.5gから46.0gに変更したこと以外は実施例11と同様に実施し、パプリカ色素乳化製剤(比較例品11)200gを得た。
【0075】
ここで、パプリカ色素乳化製剤(実施例品11及び比較例品8~11)を得るために実施した実施例11及び比較例8~11について、使用したペプチド又はタンパク、ペプチドの重量平均分子量、70℃以上の加熱処理条件及び方法を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
[パプリカ色素乳化製剤の製造方法の評価]
(1)凝集物発生の有無の評価
実施例11及び比較例8~11において、水相の調製の際に行った加熱処理の後に、凝集物発生の有無を目視で確認した。
【0078】
(2)粘度の評価
パプリカ色素乳化製剤(実施例品11及び比較例品8~11)の製造直後の絶対粘度(mPa・s)を以下の条件で測定した。
<粘度測定条件>
測定装置:ViscoQC(アントンパール社製)
スピンドル:Measuring BOB B-CC12(アントンパール社製)
せん断速度:7.5 1/s
測定温度:20℃
【0079】
(3)乳化安定性の評価
パプリカ色素乳化製剤(実施例品11及び比較例品8~11)を40℃のインキュベーターで2週間保存する前と後のそれぞれにおいて、下記方法にて乳化粒子径を測定した。保存後の乳化粒子径が600nm以下であり、且つ保存前後の乳化粒子径の増大率が120%以下であれば乳化安定性が高い「〇」と判断し、それ以外は乳化安定性が低い「×」と判断した。
<乳化粒子径の測定方法>
パプリカ色素乳化製剤(実施例品11及び比較例品8~11)を純水に1質量%の濃度で分散させた後、粒子径・ゼータ電位測定装置(型番:SZ-100;堀場製作所社製)を用いて、分散液中の乳化粒子の粒子径を3回測定し、平均値を算出した。粒子径の大きさの指標には、メジアン径を採用した。
【0080】
(4)色調安定性の評価
パプリカ色素乳化製剤(実施例品11及び比較例品8~11)を40℃のインキュベーターで2週間保存する前と後のそれぞれにおいて、下記方法にて色調を測定し、次式に基づいて、保存前後の色調変化の度合いを示すΔE*値を求めた。ΔE*値が小さいほど、色調安定性が高いことを表す。
<色調の測定方法>
パプリカ色素乳化製剤(実施例品11及び比較例品8~11)を純水に0.3質量%の濃度で添加した際の分散液の反射色調を測定した。測定は、分光色彩計(型式:SE7700;日本電色工業社製)を用いて実施し、L*a*b*表色系によるL*値、a*値及びb*値を算出した。
【0081】
【数2】
【0082】
上記式中、L`、a`、b`は、保存後の乳化製剤についてのL*値、a*値、b*値をそれぞれ表し、L、a、bは、保存前の乳化製剤についてのL*値、a*値、b*値をそれぞれ表す。
【0083】
(5)結果
(1)~(4)の評価結果を表5に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
表5の結果から明らかなように、本発明の製造方法(実施例11)では凝集物が発生せず、これにより得られたパプリカ色素乳化製剤(実施例品11)は、粘度の増加が抑制されており、更に乳化安定性及び色調安定性にも優れることが分かった。これに対し、比較例の製造方法(比較例8~11)では、いずれかの評価項目において本発明の製造方法に比べて劣っていた。