(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004007
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】2液硬化型樹脂の吹付施工システム及び2液硬化型樹脂の吹付施工方法
(51)【国際特許分類】
B05B 7/24 20060101AFI20240109BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20240109BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240109BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20240109BHJP
B05B 7/14 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B05B7/24
B05D1/02 Z
B05D7/24 301U
B05D7/24 303A
B05B7/04
B05B7/14
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103420
(22)【出願日】2022-06-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】390006758
【氏名又は名称】株式会社立花マテリアル
(71)【出願人】
【識別番号】592060237
【氏名又は名称】株式会社鈴裕化学
(71)【出願人】
【識別番号】303020451
【氏名又は名称】千代田建工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】足立 達彦
(72)【発明者】
【氏名】富田 正文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 瞬
(72)【発明者】
【氏名】樋口 忠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩
【テーマコード(参考)】
4D075
4F033
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA71
4D075CA18
4D075EA27
4D075EB38
4D075EB45
4D075EC01
4D075EC02
4F033QA01
4F033QA08
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB05
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD07
4F033QD15
4F033QD16
4F033QE15
4F033QF07Y
4F033QF15Y
4F033QH02
4F033QH04
4F033QH05
4F033QH10
4F033QK18X
4F033QK18Y
4F033QK22X
4F033QK22Y
4F033QK23X
(57)【要約】
【課題】2液(A液及びB液)の混合バランスを適正に保ちつつ、難燃剤や不燃剤等の粉体が均一に分散配合された2液硬化型樹脂を簡易に吹付施工することが可能な2液硬化型樹脂の吹付施工システムを提供する。
【解決手段】2液硬化型樹脂を形成するA液及びB液を含む硬化前液状物12を外部へと噴射するスプレーノズル8を有するスプレーガン10と、A液及びB液をスプレーガン10へとそれぞれ圧送して供給する液体供給系20,30と、を備える2液硬化型樹脂の吹付施工システム100である。不燃剤及び難燃剤の少なくともいずれかを含む粉体22をスプレーガン10へと圧送して供給する粉体供給系50をさらに備え、スプレーガン10が、A液とB液の混合後に粉体22を混合して、粉体22を含む硬化前液状物12を生成する構成を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2液硬化型樹脂を形成するA液及びB液を含む硬化前液状物を外部へと噴射するスプレーノズルを有するスプレーガンと、
前記A液及び前記B液を前記スプレーガンへとそれぞれ圧送して供給する液体供給系と、を備える2液硬化型樹脂の吹付施工システムであって、
不燃剤及び難燃剤の少なくともいずれかを含む粉体を前記スプレーガンへと圧送して供給する粉体供給系をさらに備え、
前記スプレーガンが、前記A液と前記B液の混合後に前記粉体を混合して、前記粉体を含む前記硬化前液状物を生成する構成を有する2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
【請求項2】
前記スプレーガンが、
前記A液と前記B液を混合して液状混合物を形成するメインチャンバーと、
前記メインチャンバーの下流側かつ前記スプレーノズルの上流側に設けられる、前記液状混合物と前記粉体を衝突混合して前記硬化前液状物を生成し、前記スプレーノズルへと送るアフターチャンバーと、
を備える請求項1に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
【請求項3】
前記粉体供給系が、
その内部に前記粉体を収容する加圧式の貯蔵タンクと、
前記貯蔵タンク内にエアーを供給して前記粉体を送出するエアー供給手段と、
を備える請求項1に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
【請求項4】
前記粉体供給系が、さらに、
前記貯蔵タンクから送出された前記粉体が流通する、上流側と下流側との差圧を維持するパッキン機能を持った粉体送出手段を経路中に有する粉体流通ラインと、
エアーが流通する、前記粉体流通ラインと合流するエアー供給ラインと、
前記粉体流通ライン及び前記エアー供給ラインの合流後に、前記エアーとともに前記粉体を流通させて前記スプレーガンへと供給する主配管と、
を備える請求項3に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
【請求項5】
前記硬化前液状物中の前記粉体の含有量を、下記(i)~(iii)の少なくともいずれかを制御して調整する請求項3に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
(i)前記貯蔵タンクの内圧
(ii)前記粉体流通ラインにおける前記粉体送出手段の上流側と下流側との差圧
(iii)前記エアー供給ラインに流通させる前記エアーの流量
【請求項6】
前記(i)~(iii)の少なくともいずれかを制御する電子制御手段をさらに備える請求項5に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
【請求項7】
前記液体供給系における、前記A液及び前記B液をそれぞれ圧送する圧力が、4.0~25.0MPaであり、
前記粉体供給系が、内径8mm以上及び全長100m以下のラインを含む請求項1に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
【請求項8】
前記不燃剤及び前記難燃剤が、赤リン、リン酸エステル、ホスフィン酸金属塩、ホスフィンオキシド、ホスファゼン、リン・窒素塩含有物、リン・金属塩含有物、リン・ハロゲン含有物、臭素含有物、ホウ素含有物、膨張黒鉛、及び金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
【請求項9】
前記粉体が、流動化剤をさらに含む請求項1に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の吹付施工システムを使用して、被施工箇所に2液硬化型樹脂を吹付施工する工程を有する2液硬化型樹脂の吹付施工方法。
【請求項11】
前記A液及び前記B液の合計100質量部に対して、前記粉体5~80質量部を混合して、前記2液硬化型樹脂を形成する請求項10に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液硬化型樹脂の吹付施工システム、及びそれを用いる2液硬化型樹脂の吹付施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレアや発泡フォームを形成するポリウレタン等の樹脂は、いずれも、ポリイソシアネートを主成分とするA液と、ポリオール又はポリアミンを主成分とするB液とで構成される2液を混合し、化学反応させることによって形成される、いわゆる2液硬化型樹脂である。
【0003】
ポリウレタンやポリウレア等の2液硬化型樹脂を建築現場等で吹付施工する際には、例えば、A液及びB液をそれぞれ収容するタンクと、タンクから圧送されてきたA液及びB液を圧力空気によって混合するとともに、壁面等の対象箇所へと直ちに吐出するスプレーガンとを備える吹付装置が使用される(特許文献1)。なお、2液硬化型樹脂は、2液の混合時に生ずる化学反応により硬化して形成される。硬化不良、及び硬化時間や樹脂の特性等のバラツキを抑制するには、2液の量比や混合具合等を適切に制御する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリウレタンやポリウレア等の2液硬化型樹脂の難燃性や不燃性等の性質を向上させる、又は2液硬化型樹脂にこれらの性質を付与するには、通常、不燃剤や難燃剤等の粉状物又は粒状物(以下、纏めて「粉体」とも記す)を配合する必要がある。例えば、特許文献1で提案された吹付装置を使用して難燃剤等の粉体が配合された2液硬化型樹脂を吹付施工するには、A液及びB液の少なくともいずれかに粉体を混合しておくことになる。但し、A液の主成分であるポリイソシアネートは、酸化作用が強く、経時劣化しやすい成分であるため、難燃剤等の粉体を混合すると凝固しやすい。したがって、難燃剤等の粉体をあらかじめA液に混合しておくことは実用的であるとはいえない。
【0006】
一方、難燃剤等の粉体をB液にのみ混合すると、A液とB液の粘度等の性質のバランスが崩れることになる。このため、スプレーガンにおける2液の混合量比や混合具合の制御が困難になり、硬化不良が生じたり、樹脂の特性や硬化までの時間等にバラツキが生じたりすることになる。特に、タンクからスプレーガンまでのラインが長い場合(例えば、数十メートル以上)には、スプレーガンにおける2液の混合量比や混合具合の制御がより困難になる。さらに、難燃剤等の粉体を添加したB液の保存安定性が低下するとともに、形成した2液硬化型樹脂中における難燃剤等の粉体の分布状態が不均一になるといった不具合も生じやすくなる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、2液(A液及びB液)の混合バランスを適正に保ちつつ、難燃剤や不燃剤等の粉体が均一に分散配合された2液硬化型樹脂を簡易に吹付施工することが可能な2液硬化型樹脂の吹付施工システム、及びこのシステムを使用する2液硬化型樹脂の吹付施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す2液硬化型樹脂の吹付施工システムが提供される。
[1]2液硬化型樹脂を形成するA液及びB液を含む硬化前液状物を外部へと噴射するスプレーノズルを有するスプレーガンと、前記A液及び前記B液を前記スプレーガンへとそれぞれ圧送して供給する液体供給系と、を備える2液硬化型樹脂の吹付施工システムであって、不燃剤及び難燃剤の少なくともいずれかを含む粉体を前記スプレーガンへと圧送して供給する粉体供給系をさらに備え、前記スプレーガンが、前記A液と前記B液の混合後に前記粉体を混合して、前記粉体を含む前記硬化前液状物を生成する構成を有する2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
[2]前記スプレーガンが、前記A液と前記B液を混合して液状混合物を形成するメインチャンバーと、前記メインチャンバーの下流側かつ前記スプレーノズルの上流側に設けられる、前記液状混合物と前記粉体を衝突混合して前記硬化前液状物を生成し、前記スプレーノズルへと送るアフターチャンバーと、を備える前記[1]に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
[3]前記粉体供給系が、その内部に前記粉体を収容する加圧式の貯蔵タンクと、前記貯蔵タンク内にエアーを供給して前記粉体を送出するエアー供給手段と、を備える前記[1]又は[2]に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
[4]前記粉体供給系が、さらに、前記貯蔵タンクから送出された前記粉体が流通する、上流側と下流側との差圧を維持するパッキン機能を持った粉体送出手段を経路中に有する粉体流通ラインと、エアーが流通する、前記粉体流通ラインと合流するエアー供給ラインと、前記粉体流通ライン及び前記エアー供給ラインの合流後に、前記エアーとともに前記粉体を流通させて前記スプレーガンへと供給する主配管と、を備える前記[3]に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
[5]前記硬化前液状物中の前記粉体の含有量を、下記(i)~(iii)の少なくともいずれかを制御して調整する前記[3]又は[4]に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
(i)前記貯蔵タンクの内圧
(ii)前記粉体流通ラインにおける前記粉体送出手段の上流側と下流側との差圧
(iii)前記エアー供給ラインに流通させる前記エアーの流量
[6]前記(i)~(iii)の少なくともいずれかを制御する電子制御手段をさらに備える前記[5]に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
[7]前記液体供給系における、前記A液及び前記B液をそれぞれ圧送する圧力が、4.0~25.0MPaであり、前記粉体供給系が、内径8mm以上及び全長100m以下のラインを含む前記[1]~[6]のいずれかに記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
[8]前記不燃剤及び前記難燃剤が、赤リン、リン酸エステル、ホスフィン酸金属塩、ホスフィンオキシド、ホスファゼン、リン・窒素塩含有物、リン・金属塩含有物、リン・ハロゲン含有物、臭素含有物、ホウ素含有物、膨張黒鉛、及び金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]~[7]のいずれかに記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
[9]前記粉体が、流動化剤をさらに含む前記[1]~[8]のいずれかに記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。
【0009】
さらに、本発明によれば、以下に示す2液硬化型樹脂の吹付施工方法が提供される。
[10]請求項1~9のいずれか一項に記載の吹付施工システムを使用して、被施工箇所に2液硬化型樹脂を吹付施工する工程を有する2液硬化型樹脂の吹付施工方法。
[11]前記A液及び前記B液の合計100質量部に対して、前記粉体5~80質量部を混合して、前記2液硬化型樹脂を形成する前記[10]に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2液(A液及びB液)の混合バランスを適正に保ちつつ、難燃剤や不燃剤等の粉体が均一に分散配合された2液硬化型樹脂を簡易に吹付施工することが可能な2液硬化型樹脂の吹付施工システム、及びこのシステムを使用する2液硬化型樹脂の吹付施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の2液硬化型樹脂の吹付施工システムの一実施形態を示すフロー図である。
【
図2】スプレーガンに設けられるミキシング機構の一例を示す模式図である。
【
図3A】ミキシング機構を構成する部材の一例を示す模式図である。
【
図3B】ミキシング機構を構成する部材の一例を示す模式図である。
【
図3C】ミキシング機構を構成する部材の一例を示す模式図である。
【
図4】粉体圧送時の各条件と、粉体の吐出量との関係を示すグラフである。
【
図5】エアー供給ラインのエアー流量と、粉体の吐出量との関係を示すグラフである。
【
図6】差圧A-Bと、粉体の吐出量との関係を示すグラフである。
【
図7】最下流のバルブの開度と、粉体の吐出量との関係を示すグラフである。
【
図8】硬化前液状物中のリン元素(P)濃度(%)と、施工(硬化)後の樹脂中のリン元素(P)濃度(%)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の2液硬化型樹脂の吹付施工システムの一実施形態を示すフロー図である。
図1に示すように、本実施形態の吹付施工システム100は、2液硬化型樹脂を形成するA液及びB液を含む硬化前液状物12を外部へと噴射するスプレーノズル8を有するスプレーガン10と、A液及びB液をスプレーガン10へとそれぞれ圧送して供給する液体供給系20,30とを備える。吹付施工システム100は、さらに、不燃剤及び難燃剤の少なくともいずれかを含む粉体22をスプレーガン10へと圧送して供給する粉体供給系50を備える。そして、スプレーガン10は、A液とB液の混合後に粉体22を混合して、粉体22を含む硬化前液状物12を生成する構成を有する。
【0013】
スプレーガン10は、メインチャンバー2と、メインチャンバー2の下流側かつスプレーノズル8の上流側に設けられるアフターチャンバー4とを備える。メインチャンバー2は、液体供給系20,30からそれぞれ供給されるA液及びB液を混合して液状混合物を形成するスタティックミキサー等の部材で構成される。形成された液状混合物は、メインチャンバー2の下流側に設けられた液状混合物吐出ノズル6からアフターチャンバー4内へと吐出される。アフターチャンバー4内に吐出された液状混合物は、粉体供給系50から圧送されてアフターチャンバー4に導入された粉体22と連続的に衝突混合し、硬化前液状物12が生成される。
【0014】
このように、A液とB液を混合した後に、難燃性や不燃性を含む粉体をさらに混合して硬化前液状物を生成する構成を有するスプレーガンを使用することで、予め粉体を混合したA液やB液をスプレーガンに導入して混合する場合と異なり、これら2液の混合量比や混合具合を厳密かつ簡易に制御することができる。これにより、硬化不良が発生することを抑制することができるとともに、硬化時間や、形成される2液硬化型樹脂の特性等のバラツキを抑制することが可能となる。また、2液の混合量比や混合具合を適切に制御することができるので、形成される2液硬化型樹脂中における難燃剤等の粉体の分布状態を均一にすることができる。さらに、スプレーガンに導入する前のA液及びB液のいずれにも粉体を混合しないので、A液及びB液の保存安定性の低下を抑制することができる。
【0015】
図2は、スプレーガンに設けられるミキシング機構の一例を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。また、
図3A、3B、及び3Cは、それぞれ、ミキシング機構を構成する部材の一例を示す模式図である。
図3A、3B、及び3C中、(a)は各部材の側面図であり、(b)は各部材の正面図である。ミキシング機構15は、メインチャンバー用部材13、アフターチャンバー用部材14、及びこれらの部材を連結する連結部材16を備える。メインチャンバー用部材13の基部から導入された液状混合物は、液状混合物吐出ノズル6からアフターチャンバー用部材14によって形成されるアフターチャンバー4内へと吐出される。一方、アフターチャンバー4内には、連結部材16の粉体導入口25から粉体が導入されるとともに、アシストエアー導入口27からアシストエアーが導入される。このため、アフターチャンバー4内では、アシストエアーの作用によって形成される粉体の渦流が液状混合物と衝突混合し、粉体が均一に分散した状態で含まれる硬化前液状物が生成する。そして、生成した硬化前液状物はスプレーノズル8から外部に吐出され、壁面等の被施工箇所へと吹付けられる。
【0016】
図2及び3Bに示すように、粉体導入口25及びアシストエアー導入口27は、液状混合物及び硬化前液状物の吐出方向軸の相互に対向する接線方向から、アフターチャンバー4内に粉体及びアシストエアーをそれぞれ導入するように設けられていることが好ましい。これにより、粉体の渦流が液状混合物とより効率的に衝突混合し、粉体がさらに均一に分散した状態で含まれる硬化前液状物が生成するので、粉体がより均一に分散配合された2液硬化型樹脂を吹付けることが可能になるとともに、吐出時の発塵を抑制することができる。
【0017】
液体供給系20,30は、A液及びB液をスプレーガン10へとそれぞれ圧送して供給する系である(
図1)。スプレーガン10には、A液及びB液の混合によって形成された液状混合物を吐出方向(下流側)へと押し出す圧縮空気を流通させる圧縮空気供給系40がさらに接続されている。また、スプレーガン10のアフターチャンバー4には、粉体を導入する粉体供給系50(主配管60)、及びアシストエアーを導入するアシストエアー供給系70が接続されている。粉体供給系50(主配管60)、液体供給系20,30、圧縮空気供給系40、及びアシストエアー供給系70の開閉状態は、トリガー75によって一括制御することができる。
【0018】
図1に示すように、粉体供給系50は、その内部に粉体22を収容する加圧式の貯蔵タンク24と、貯蔵タンク24内にエアーを供給して粉体22を送出するコンプレッサー28等のエアー供給手段とを備える。すなわち、粉体22は、エアー供給手段から供給されるエアーの圧力(空気流)によってスプレーガン10へと圧送される。貯蔵タンク24には、タンクの内圧を検知する圧力センサー32、及びタンク内の粉体の量を検知する計量器34が設けられている。コンプレッサー28から送出したエアーは、レギュレーター36、エアー流量計38、及びコントロール弁42を備えた流路を通じて貯蔵タンク24内に供給される。そして、供給されたエアーの圧力によって、貯蔵タンク24外へと粉体を送出することができる。
【0019】
粉体供給系50は、さらに、貯蔵タンク24から送出された粉体が流通する粉体流通ライン52と、エアーが流通する、粉体流通ライン52と合流するエアー供給ライン54と、粉体流通ライン52及びエアー供給ライン54の合流後に、エアーとともに粉体を流通させてスプレーガン10へと供給する主配管60と、を備える。粉体流通ライン52の経路中には、上流側と下流側との差圧を維持するパッキン機能を持った粉体送出手段62が設けられている。エアー供給ライン54は、レギュレーター36、エアー流量計38、及びコントロール弁42を備える、コンプレッサー28から送出したエアーが流れる流路であり、粉体流通ライン52と合流する。粉体流通ライン52から送出されてきた粉体は、エアー供給ライン54から送られてきたエアー(空気流)に乗って、圧力センサー32及びコントロール弁42が設けられた主配管60へと圧送される。
【0020】
パッキン機能を持った粉体送出手段62としては、例えば、INV盤65が接続されたスクリュー式又はロータリー式のポンプ等を用いることができる。このようなパッキン機能を持った粉体送出手段62を粉体流通ライン52の経路中に設けることで、粉体送出手段62の上流側と下流側の間に生ずる差圧を維持し、エアー供給ライン54からのエアーの流入(逆流)を防止しつつ、粉体を下流側へとより安定して定量的に送出することができる。
【0021】
主配管60へと圧送された粉体は、スプレーガン10のアフターチャンバー4内に導入され、液状混合物と衝突混合して硬化前液状物を形成する。硬化前液状物中の粉体の含有量は、下記(i)~(iii)の少なくともいずれかを制御することによって調整することができる。
(i)貯蔵タンク24の内圧
(ii)粉体流通ライン52における粉体送出手段62の上流側と下流側との差圧
(iii)エアー供給ライン54に流通させるエアーの流量
【0022】
例えば、貯蔵タンク24の内圧を高めることで、硬化前液状物に含まれる粉体の量を増加させることができる。また、粉体流通ライン52における粉体送出手段62の上流側と下流側との差圧を増大させる(上流側の圧力を相対的に増大させる)ことで、硬化前液状物に含まれる粉体の量を増加させることができる。さらに、エアー供給ライン54に流通させるエアーの流量を増減することで、硬化前液状物に含まれる粉体の量を制御することができる。
【0023】
上記(i)~(iii)の少なくともいずれかを制御するPLC盤68等の電子制御手段を設けることで、硬化前液状物中の粉体の含有量を自動制御することができる。PLC盤68には、各流路に設けられたレギュレーター36、エアー流量計38、コントロール弁42、圧力センサー32、及びINV盤65(粉体送出手段62)が接続されており、これらの制御装置やセンサー等を電子的に自動制御することができる。
【0024】
本実施形態の吹付施工システム100のうち、粉体供給系50、アフターチャンバー4、スプレーノズル8、及びアシストエアー供給系70以外の部分は、従来公知の2液硬化型樹脂の吹付施工システムと同様の構成を有する。すなわち、本実施形態の吹付施工システム100は、
図1に示すような粉体供給系50、アフターチャンバー4、スプレーノズル8、及びアシストエアー供給系70を従来公知の吹付施工システムを構成するスプレーガンに接続することで構成することができるため、極めて汎用性が高いシステムである。
【0025】
粉体は、不燃剤及び難燃剤の少なくともいずれかを含む。「不燃剤」は、配合対象物である樹脂の不燃性を向上させる成分である。また、「難燃剤」は、配合対象物である樹脂の不燃性を向上させる成分である。不燃剤及び難燃剤としては、赤リン、リン酸エステル、ホスフィン酸金属塩、ホスフィンオキシド、ホスファゼン、リン・窒素塩含有物、リン・金属塩含有物、リン・ハロゲン含有物、臭素含有物、ホウ素含有物、膨張黒鉛、及び金属水酸化物等を用いることができる。これらの不燃剤及び難燃剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
粉体の粒径は、粉体(不燃剤及び難燃剤)の種類によって異なる。例えば、赤リンの粒径は5~15μm程度、リン酸エステルの粒径は20~30μm程度、膨張黒鉛の粒径は100~150μm程度、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム)の粒径は1~10μm程度である。本実施形態の吹付施工システムでは粉体を空気で圧送するため、粉体の粒径が大きすぎると、施工する2液硬化型樹脂中に粉体を定量的に含有させることがやや困難になることがある。このため、粉体の粒径は200μm以下であることが好ましく、175μm以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本実施形態の吹付施工システムでは、空気流によって粉体を流路中で圧送する。このため、粉体は、不燃剤や難燃剤の流動性を向上させる流動化剤をさらに含むことが好ましい。流動化剤としては、シリカ、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、フライアッシュ、及びガラスビーズ等を用いることができる。これらの流動化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、流動性の向上効果が特に良好であることからシリカが好ましい。流動化剤の平均粒径(メジアン径)は、例えば、1~15μmであることが好ましく、3~10μmであることがさらに好ましい。粉体に含有させる流動化剤の量は、不燃剤及び難燃剤の合計100質量部に対して、1~10質量部とすることが好ましく、2~5質量部とすることがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態の吹付施工システムでは、液体供給系においてA液及びB液をそれぞれ圧送する圧力を、通常、4.0~25.0MPaとすることができる。なお、A液及びB液をそれぞれ圧送する圧力は、2液硬化型樹脂の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、2液硬化型樹脂がポリウレタンの場合、A液及びB液をそれぞれ圧送する圧力は、4.0~10.0MPaとすることが好ましく、6.0~8.0MPaとすることがさらに好ましい。2液硬化型樹脂がポリウレアの場合、A液及びB液をそれぞれ圧送する圧力は、10.0~25.0MPaとすることが好ましく、10.0~16.0MPaとすることがさらに好ましい。また、通常、内径8mm以上、好ましくは10mm以上、及び全長100m以下、好ましくは90m以下のラインを含む粉体供給系とすることができる。なお、粉体供給系に含まれる「ライン」とは、貯蔵タンク等の端部から、スプレーガンに接続する部分までの経路(流路)を意味する。
【0029】
本発明の2液硬化型樹脂の吹付施工方法の一実施形態は、前述の吹付施工システムを使用して、建築現場における壁面等の被施工箇所に2液硬化型樹脂を吹付施工する工程を有する。前述の通り、本実施形態の吹付施工システムは、不燃剤等の粉体をスプレーガンへと圧送して供給する粉体供給系を設け、2液(A液及びB液)の混合後に粉体を混合する構成を採用したシステムである。このため、2液の混合バランスを適正に保ちつつ、粉体が、たとえ高濃度であっても均一に分散配合された2液硬化型樹脂を簡易に吹付施工することができる。具体的には、A液及びB液の合計100質量部に対して、通常、粉体5~80質量部、好ましくは10~70質量部を混合して、2液硬化型樹脂を形成することができる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以降、「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0031】
<ポリウレタンフォームの吹付施工>
ポリウレタンフォームを形成するための市販のA液及びB液を用意した。また、不燃剤及び難燃剤として、赤リン(粒径約5~15μm)、リン酸エステル(粒径約20~30μm)、ホスフィン酸金属塩(粒径約1~4μm)、ホスフィンオキシド(粒径約1~30μm)、ホスファゼン(粒径約10~100μm)、及び膨張黒鉛(粒径約100~150μm)を用意した。さらに、流動化剤として、シリカ(粒径約1~15μm)を用意した。
図2に示すミキシング機構15を設けたスプレーガン10を備えた、
図1に示す構成の吹付施工システム100を準備した。この吹付施工システム100の粉体供給系50は、内径10mm、全長20mのラインを含む。A液及びB液をいずれも70℃に加温するとともに、0.7MPaの圧力を付加して液体供給系20,30にてそれぞれ圧送し、スプレーガン10に導入した。一方、表1に示す条件にしたがって粉体(赤リン、リン酸エステル、膨張黒鉛、及びシリカの混合物)を粉体供給系50にて圧送し、スプレーガン10に導入した。そして、A液及びB液の合計100部に対して、5~40部の粉体(赤リン、リン酸エステル、膨張黒鉛、及びシリカの混合物)を混合してスプレーノズル8から硬化前液状物12を吐出して被施工箇所へと吹付け、粉体の吐出量を連続的に計測しながら、粉体が均一に分散配合されたウレタンフォームを被施工箇所上に形成した。なお、表1に示す各条件は、電子制御手段であるPLC盤68によって自動的に制御した。
【0032】
【0033】
また、粉体圧送時の各条件と、粉体の吐出量との関係を示すグラフ、エアー供給ラインのエアー流量と、粉体の吐出量との関係を示すグラフ、差圧A-Bと、粉体の吐出量との関係を示すグラフ、及び最下流のバルブの開度と、粉体の吐出量との関係を示すグラフを
図4~7に示す。
【0034】
図5に示すように、エアー供給ラインのエアー流量の増加に伴って粉体の吐出量が増加し、エアー流量が62L/minを超えたあたりで減少に転じたことがわかる。また、エアー流量約100~150L/minにかけて、粉体の吐出量が安定的に減少している。また、
図6に示すように、貯蔵タンクの内圧Aと、エアー供給ラインの内圧Bとの差圧(A-B)が大きいほど、粉体の吐出量が増加したことがわかる。さらに、
図7に示すように、最下流のバルブの開度が大きいほど、粉体の吐出量が増加したことがわかる。
【0035】
図4に示すように、エアー供給ラインのエアー流量が少なく、かつ、最下流のバルブの開度が大きいと、エアー供給ラインに供給されたエアーがラインの前方に解放されて差圧A-Bが増大し、粉体の吐出量が増加することがわかる。一方、エアー流量が増加するにしたがって逆の現象が生ずること、すなわち、粉体の吐出量が減少することがわかる。以上より、エアー供給ラインのエアー流量を90~155L/min、差圧A-Bを2~30Pa、及び最下流のバルブの開度を30~45%とした際に、粉体の吐出量をより安定的に確保できたことがわかる。
【0036】
(実施例1~9)
ポリウレタンフォームを形成するための市販のA液及びB液を用意した。また、不燃剤及び難燃剤として、赤リン(粒径約5~15μm)、リン酸エステル(粒径約20~30μm)、ホスフィン酸金属塩(粒径約1~4μm)、ホスフィンオキシド(粒径約1~30μm)、ホスファゼン(粒径約10~100μm)、及び膨張黒鉛(粒径約100~150μm)を用意した。さらに、流動化剤として、シリカ(粒径約1~15μm)を用意した。
図2に示すミキシング機構15を設けたスプレーガン10を備えた、
図1に示す構成の吹付施工システム100を準備した。この吹付施工システム100の粉体供給系50は、内径10mm、全長20mのラインを含む。A液及びB液をいずれも70℃に加温するとともに、0.7MPaの圧力を付加して液体供給系20,30にてそれぞれ圧送し、スプレーガン10に導入した。一方、以下に示す条件にしたがって粉体(赤リン、リン酸エステル、膨張黒鉛、及びシリカの混合物)を粉体供給系50にて圧送し、スプレーガン10に導入した。なお、蛍光X線元素分析法により分析することで、用いた粉体中のリン元素(P)濃度は予め把握しておいた。そして、硬化前液状物中のリン元素(P)濃度(%)が表2に示す値となるように、A液及びB液と、粉体(赤リン、リン酸エステル、膨張黒鉛、及びシリカの混合物)とを混合するとともに、スプレーノズル8から硬化前液状物12を吐出して被施工箇所へと吹付け、粉体が均一に分散配合されたウレタンフォームを被施工箇所上に形成した。
【0037】
蛍光X線元素分析法により、被施工箇所上に形成したウレタンフォーム(施工(硬化)後の樹脂)中の任意の3箇所におけるリン元素(P)濃度(%)を測定し、その平均値を算出した。結果を表2及び
図8に示す。
【0038】
【0039】
表2及び
図8に示すように、硬化前液状物中のリン元素(P)濃度(%)の増減に伴って、施工(硬化)後の樹脂中のリン元素(P)濃度(%)が増減しており、これらが高い相関関係を示すことがわかる。さらに、被施工箇所上に形成したウレタンフォーム中に粉体が均一に分散配合されたことが明らかである。
本発明の2液硬化型樹脂の吹付施工システムは、建築現場において、難燃性等の特性が付与されたポリウレタンやポリウレア等の2液硬化型樹脂を壁面等の被施工箇所に吹付施工するためのシステムとして有用である。
前記不燃剤及び前記難燃剤が、赤リン、リン酸エステル、ホスフィン酸金属塩、ホスフィンオキシド、ホスファゼン、リン・窒素塩含有物、リン・金属塩含有物、リン・ハロゲン含有物、臭素含有物、ホウ素含有物、膨張黒鉛、及び金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載の2液硬化型樹脂の吹付施工システム。