(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040074
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】アライメント方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
H01L21/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144919
(22)【出願日】2022-09-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー ・産業技術総合開発機構、「ポスト5G情報通信システム基盤強 化研究開発事業/先導研究(委託)/フロントホール向け大容量 光リンク技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条 の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】品田 聡
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047FA08
5F047FA72
5F047FA77
5F047FA83
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い精度で,対象物を任意の位置にアライメントできるアライメント方法を提供する。
【解決手段】アライメント方法は,透明基板3上に設けられた第1の透明基板上マーク5と,第1の対象物7上に設けられ,第1の透明基板上マーク5と対応したマークである第1の対象物マーク9とのアライメントを取りつつ,透明基板3に,第1の対象物を吸着させるための工程である第1の吸着工程を含む。透明基板3は,第1の対象物7を吸着するための吸着部10を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に設けられた第1の透明基板上マークと,第1の対象物上に設けられ,前記第1の透明基板上マークと対応したマークである第1の対象物マークとのアライメントを取りつつ,前記透明基板に,前記第1の対象物を吸着させるための工程である第1の吸着工程を含む,アライメント方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって,
前記透明基板は,前記第1の対象物を吸着するための吸着部を有する,方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって,
前記第1の吸着工程は,
前記透明基板の一方の面から前記第1の透明基板上マーク及び前記第1の対象物マークを観察手段で観察しつつ,前記第1の透明基板と前記第1の対象物との相対位置を調整することで,前記第1の透明基板上マーク及び前記第1の対象物マークのアライメントを取りつつ,前記透明基板に,前記第1の対象物を吸着させる工程である,
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって,
前記第1の対象物は,アレイ状光学素子の基板である,方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって,
前記第1の対象物を吸着した前記透明基板を設置用基板に近づけ,前記設置用基板に前記第1の対象物を固定するための工程である対象物固定工程をさらに含む,方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって,
前記透明基板上に設けられた第2の透明基板上マークと,第2の対象物上に設けられ,前記第2の透明基板上マークと対応したマークである第2の対象物マークとのアライメントを取りつつ,前記透明基板に,前記第2の対象物を吸着させるための工程である第2の吸着工程をさらに含む,方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,アライメント方法に関する。より詳しく説明すると,この発明は,光デバイスなどをアライメントする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-50470号公報には,素子実装装置や素子実装方法が記載されている。この方法は,複数の光デバイカメラで2点(素子と実装先)を観測しアライメントする一般的なチップボンディングの技術を用いたものである。この素子実装装置では,アライメント精度が高くない。例えば,一般的なボンディング装置の位置合わせ精度は,±5μm程度であること。このため,一般的なボンディング装置を用いても,例えば,複数の光デバイスをアレイ間隔が固定のファイバアレイに対して同時に結合させることは困難である。このため,一般的なボンディング装置を超える精度で,基板(特に複数の基板)を任意の位置にアライメントとして固定できるアライメント方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この明細書は,高い精度で,対象物を任意の位置にアライメントできるアライメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は,透明基板の所定位置に第1の対象物を吸着させるためのアライメント方法に関する。
この方法は,第1の吸着工程を含む。第1の吸着工程は,透明基板3上に設けられた第1の透明基板上マーク5と,第1の対象物7上に設けられ,第1の透明基板上マーク5と対応したマークである第1の対象物マーク9とのアライメントを取りつつ,透明基板3に,第1の対象物7を吸着させるための工程である。
【0006】
透明基板3は,好ましくは,第1の対象物7を吸着するための吸着部10を有する。
【0007】
第1の吸着工程の好ましい例は,
透明基板3の一方の面から第1の透明基板上マーク5及び第1の対象物マーク9を観察手段11(例えば顕微鏡又はカメラ)で観察しつつ,第1の透明基板3と第1の対象物7との相対位置を調整することで,第1の透明基板上マーク5及び第1の対象物マーク9のアライメントを取りつつ,透明基板3に,第1の対象物7を吸着させる。
【0008】
第1の対象物7の例は,アレイ状光学素子の基板である。つまり,この方法は,光学素子のアライメントや光学素子の組み立てに好ましく用いることができる。
【0009】
この方法は,好ましくは,対象物固定工程をさらに含む。対象物固定工程は,第1の対象物7を吸着した透明基板3を設置用基板15に近づけ,設置用基板15に第1の対象物7を固定するための工程である。
【0010】
この方法は,好ましくは,第2の吸着工程をさらに含む。
第2の吸着工程は,透明基板3上に設けられた第2の透明基板上マーク21と,第2の対象物23上に設けられ,第2の透明基板上マーク21と対応したマークである第2の対象物マーク25とのアライメントを取りつつ,透明基板3に,第2の対象物23を吸着させる工程である。
【発明の効果】
【0011】
高い精度で,対象物を任意の位置にアライメントできるアライメント方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は,アライメント方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】
図2は,透明基板を説明するための概念図である。
図2(a)は透明基板の外観図の例を示し,
図2(b)は透明基板の断面図の例を示す。
【
図3】
図3は,アライメントシステムの例を示す概念図である。
【
図4】
図4は,アライメント方法の各工程を説明するための概念図である。
図4(a)は,第1の対象物を透明基板とアライメントをとりつつ吸着した様子を示す概念図である。
図4(b)は,設置用基板を透明基板とアライメントをとりつつ,第1の対象物を設置用基板に設置した様子を示す概念図である。
【
図5】
図5は,アライメント方法の例を説明するためのフローチャートである。
【
図6-1】
図6(a)は,第1の対象物を透明基板とアライメントをとりつつ吸着した様子を示す概念図である。
図6(b)は,アライメントの取れていない対象物である第2の対象物を透明基板から放し,第2の対象物をステージに搭載し直した例を示す。
図6(c)は,第2の対象物を透明基板とアライメントをとりつつ吸着した様子を示す概念図である。
【
図6-2】
図6(d)は,第1の対象物及び第2の対象物を設置用基板に設置する様子を示す概念図である。
図6(e)は,透明基板を第1の対象物及び第2の対象物から取り除いた様子を示す概念図である。
【
図7】
図7は,アライメント方法の例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は,この発明のアライメント方法の利用例を示す概念図である。
図8(a)は,双方向通信モジュールの例を示す概念図である。
図8(b)は,WDMレーザーモジュールの例を示す概念図である。
図8(c)は,シリコンフォトニクス実装の例を示す概念図である。
【
図9】
図9は,吸着機能付きガラスマスクを示す図面に代わる写真である。
【
図10】
図10は,アライメントマーク付き透明基板の例を示す図面に代わる写真である。
図10(a)は基板全体を示し,
図10(b)は開口部の例を示す部分拡大図であり,
図10(c)は基板上マークの例を示す。
【
図11】
図11は,VCSELアレイに対して,PDアレイをアライメントした例を示す図面に代わる写真である。写真には適宜説明を追記している。
図11(a)は,PDアレイのみアライメントが完了し,透明基板に吸着された様子を示す。
図11(b)は,さらにVCSELアレイのアライメントが完了した様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0014】
図1は,アライメント方法を説明するためのフローチャートである。この例は,第1の吸着工程(S101)と対象物固定工程(S102)を含む。
アライメント方法は,透明基板3の所定位置に第1の対象物7を吸着させるための方法に関する。アライメント方法は,主に光学素子を設置する際に用いられる。このアライメント方法の好ましい使用例は,レーザ,PD(ダイオード,光検出器),アレイ状光学素子,及び光学フィルタのいずれか1種又は2種以上を所定の基板に設置するものである。
【0015】
透明基板の例は,ガラス基板,ITO基板,及びプラスチック基板である。
図2は,透明基板を説明するための概念図である。
図2(a)は透明基板を含むアライメントシステムの外観図の例を示し,
図2(b)は透明基板の断面図の例を示す。
図2(a)に示されるように,透明基板3は,第1の透明基板上マーク5と,吸着部10とを有する。透明基板3は,第2の透明基板上マーク21をさらに有してもよい。透明基板3は,複数の対象物に設けられたマークに対応したマークをさらに有してもよい。透明基板3は後述する設置用基板15に対応したマークが設けられていてもよい。透明基板3は,設置用基板用マーク43を有し,設置用基板15は,設置用基板用マークに対応したアライメント用マーク45を有してもよい。そして,設置用基板用マーク43と,アライメント用マークとのアライメント45を取りながら,透明基板3と設置用基板15との相対位置を制御してもよい。
【0016】
図2(b)に示されるように,第1の透明基板上マーク5は,好ましくは,透明基板3の下面(対象物に面した面)に設けられる。第1の透明基板上マーク5は,凹部又は凸部を有するものでもよい。この場合,後述する第1の対象物マーク9は,第1の透明基板上マーク5の凹部又は凸部と対応した形状を有する部位を有する。凹凸をかみ合わせることで,第1の対象物7と透明基板3とを固定できる。透明基板上マーク5は,例えば,リソグラフや,蒸着技術を用いることで,透明基板に描画できる。
【0017】
透明基板3は,好ましくは,第1の対象物7を吸着するための吸着部10を有する。吸着部10は,第1の対象物7を吸着するための要素である。なお,透明基板3が複数の対象物を吸着する場合,吸着部10は,それら複数の対象物を吸着するものであってもよい。この場合,複数の対象物のそれぞれを吸着する複数の吸着部10があることが好ましい。そして,それぞれの吸着部10は,それぞれの吸着用線路を有することが好ましい。複数の吸着用線路が集合して,一つの吸着ポンプに接続されてもよいし,複数の吸着用線路がそれぞれ,ことなる吸着ポンプに接続されてもよい。複数の吸着用線路を有する場合,吸着用線路の開閉を制御する開閉部を有することが好ましい。このような構成を有することで,複数の吸着用線路のいずれかを吸着することができ,いずれかを開放することができる。
図2(b)に示すものは,第1の対象物7を吸着するための吸着口31,真空ポンプなどの吸引手段と接続するための吸引接続部33,吸着口31と吸引接続部33とを空気の移動を可能な状態で接続するための吸着用線路35とを有する。吸着用線路35は,透明基板3内に設けられた空間であってもよい。通常,吸着口31は,透明基板3の下面に設けられる。吸引接続部33は,透明基板3の上面に設けられてもよい。もっとも,吸引接続部33は,観察手段11による観察の邪魔をしないように,透明基板3の縁部分に設けられることが好ましい。縁部分とは,透明基板上マーク5が設けられている領域よりも縁側の領域を意味する。
【0018】
図3は,アライメントシステムの例を示す概念図である。
図4は,アライメント方法の各工程を説明するための概念図である。
図4(a)は,第1の対象物を透明基板とアライメントをとりつつ吸着した様子を示す概念図である。
図4(b)は,設置用基板を透明基板とアライメントをとりつつ,第1の対象物を設置用基板に設置した様子を示す概念図である。
【0019】
第1の対象物7は,この方法によりアライメントされ,設置用基板に設置される対象物である。第1の対象物7の例は,レーザ,PD(ダイオード,光検出器),アレイ状光学素子,及び光学フィルタである。第1の対象物7が複数アライメントされ,光学素子のアレイを構成するものであってもよい。そのようなアレイの例は,垂直共振器面発光型レーザ(VCSEL)アレイや光検出器アレイである。つまり,この方法は,光学素子のアライメントや光学素子の組み立てに好ましく用いることができる。第1の対象物7は,第1の対象物マーク9を有する。第1の対象物マーク9は,第1の対象物7上に設けられたマークであり,第1の透明基板上マーク5と対応したマークである。
図3に示される例では,第1の透明基板上マーク5は,二つの十字状の印からなる。そして,第1の対象物マーク9は,それぞれの十字状の印の4つの突起部を挟む位置に存在する4つの四角形状の印からなる。第1の透明基板上マーク5のひとつと,対応する第1の対象物マーク9があわさると正方形状となる。第1の対象物マーク9は,第1の透明基板上マーク5と対応したものであればよく,ドットパターンによるマーク,図柄,絵,及びキャラクターなどであってもよい。また,第1の対象物マーク9は,レーザの出射開口やPDの受光開口などの「構造体」であってもよい。
【0020】
第1の吸着工程(S101)
第1の吸着工程は,透明基板3上に設けられた第1の透明基板上マーク5と,第1の対象物7上に設けられ,第1の透明基板上マーク5と対応したマークである第1の対象物マーク9とのアライメントを取りつつ,透明基板3に,第1の対象物7を吸着させるための工程である。
【0021】
図3に示されるように,第1の吸着工程の好ましい例は,透明基板3の一方の面から第1の透明基板上マーク5及び第1の対象物マーク9を観察手段11(例えば顕微鏡又はカメラ)で観察しつつ,透明基板3と第1の対象物7との相対位置を調整することで,第1の透明基板上マーク5及び第1の対象物マーク9のアライメントを取りつつ,透明基板3に,第1の対象物7を吸着させる。この場合,例えば,第1の対象物7を搭載したステージ41を適宜回転させて,アライメントをとり,透明基板3に近づけて,第1の対象物7を透明基板3に吸着させればよい。すると,
図4(a)で示されるように,第1の対象物が,透明基板とアライメントをとりつつ吸着される。
【0022】
対象物固定工程(S102)
この方法は,好ましくは,対象物固定工程をさらに含む。対象物固定工程は,第1の対象物7を吸着した透明基板3を設置用基板15に近づけ,設置用基板15に第1の対象物7を固定するための工程である。設置用基板を透明基板とアライメントをとりつつ,第1の対象物を設置用基板に設置する。例えば,透明基板3は,設置用基板用マーク43を有し,設置用基板15は,設置用基板用マーク43に対応したアライメント用マーク45を有してもよい。そして,観察手段11を用いて,設置用基板用マーク43と,アライメント用マーク45とのアライメントを取りながら,透明基板3と設置用基板15との相対位置を制御してもよい。第1の対象物7と設置用基板15のアレイメントを実現するため,(間接的に)透明基板上のマーク43と設置用基板上のマーク45のアライメントをとってもよい。すると,
図4(b)に示されるように,適切なアライメントを取りつつ,第1の対象物が設置用基板に設置される。これら一連の動作がこのシステムの基本動作となる。そして,後述するように,このシステムは,複数の対象物を適切なアライメントを取りつつ設置用基板に設置できる。設置用基板15の例は,公知の光学基板である。光学基板の例は,マイクロレンズアレイ,及び半導体基板である。例えば,半導体基板の一方の面には,垂直共振器面発光型レーザ(VCSEL)アレイが形成され,裏面のVCSELアレイに対応した位置にはマルチコアファイバ(MCF)(特にシングルモードMCF)が接着されたものがあげられる。また,半導体基板の一方の面には,光検出器(PD)アレイが形成され,裏面のPDアレイに対応した位置にはマルチコアファイバ(MCF)(特にシングルモードMCF)が接着されたものがあげられる。この場合も,コアの位置と,アレイを構成するレーザやPDの位置が精密にアライメントを取ることができる。
【0023】
図5は,アライメント方法の例を説明するためのフローチャートである。この例は,第1の吸着工程(S201)と,第2の吸着工程(S202)と,対象物固定工程(S203)を含む。
図6は,アライメント方法の各工程を説明するための概念図である。
図6(a)は,第1の対象物を透明基板とアライメントをとりつつ吸着した様子を示す概念図である。
図6(b)は,アライメントの取れていない対象物である第2の対象物を透明基板から離し,第2の対象物をステージに搭載し直した例を示す。
図6(c)は,第2の対象物を透明基板とアライメントをとりつつ吸着した様子を示す概念図である。
図6(d)は,第1の対象物及び第2の対象物を設置用基板に設置する様子を示す概念図である。
図6(e)は,透明基板を第1の対象物及び第2の対象物から取り除いた様子を示す概念図である。
【0024】
第1の吸着工程(S201)
第1の吸着工程(S201)は,先に説明した工程と同様である。
図6(a)は,第1の対象物を透明基板とアライメントをとりつつ吸着した様子を示す概念図である。この時点で,第1の対象物7のみが,アライメントが完了して,透明基板3に吸引されている状態である。第2の対象物23は,アライメントされておらず,ステージ41の上にある。第2の対象物は第1の対象物において説明したと同様のものを適宜用いることができる。
【0025】
第2の吸着工程(S202)
第2の吸着工程は,透明基板3上に設けられた第2の透明基板上マーク21と,第2の対象物23上に設けられ,第2の透明基板上マーク21と対応したマークである第2の対象物マーク25とのアライメントを取りつつ,透明基板3に,第2の対象物23を吸着させる工程である。
図6(b)に示す例では,透明基板3とステージ41との相対位置を近づける。例えば,ステージ41を透明基板3の方に近づける。
図6(b)は透明基板3と第2の対象物23を離す工程(中央の黒矢印が下向き)である。
図6(b)に示されるように,アライメントの取れていない対象物である第2の対象物23が透明基板3から離され,第2の対象物23がステージ41上で,第2の透明基板上マーク21と第2の対象物マーク25とのアライメントをとることにより,透明基板3に対してアライメントをとる。
図6(c)は,第2の対象物を透明基板とアライメントをとりつつ吸着した様子を示す概念図である。この例では,第1の対象物7をアライメントが取れた状態で透明基板3に吸着した状態を維持しつつ,第2の対象物23のアライメントが完了し,第2の対象物23を透明基板3に吸着する。
【0026】
対象物固定工程(S203)
対象物固定工程(S203)は,先に説明した工程と同様である。
図6(d)に示す例では,透明基板3が第1の対象物7及び第2の対象物23を吸着した状態で,ステージ41と分離する。ステージ41が分離しても,透明基板3が第1の対象物7及び第2の対象物23を吸着しているので,第1の対象物7及び第2の対象物23は落下しない。第1の対象物7及び第2の対象物23と,設置用基板15との相対位置を近づける。設置基板15は,ステージ41とは異なるステージ上に載っていてもよい。接着剤として半田を使う際は,このステージにヒータ機能(温度制御機能)を付随させてもよい。例えば,設置用基板15を搭載するステージを第1の対象物7及び第2の対象物23に向けて移動させる。または,図示しない透明基板の位置制御装置を用いて,第1の対象物7及び第2の対象物23を設置用基板15に向けて移動させる。そして,第1の対象物7及び第2の対象物23を設置用基板15上に設置する。この際,例えば,設置用基板15の第1の対象物7及び第2の対象物23が設置される位置には,それぞれ接着剤が塗布されていてもよい。接着剤の例は,半田及び光(例えば紫外線)硬化樹脂である。半田使用時は,例えば,ステージを加熱した状態(設置用基板15上の半田が溶けた状態)で第1の対象物7および第2の対象物23を設置用基板15上に設置した後に,ステージを冷却し,半田が固まったことを確認してから透明基板3を放すこととなる。光硬化樹脂使用時は,第1の対象物7及び第2の対象物23を設置用基板15上に設置した後に,光を照射することで,接着剤を固化させ,第1の対象物7及び第2の対象物23を設置用基板15に固定できる。
図6(e)は,透明基板を第1の対象物及び第2の対象物から取り除いた様子を示す概念図である。第1の対象物7及び第2の対象物23は,設置用基板15に固定されている。このため,透明基板23の吸引を止めるか弱めると,透明基板3は,第1の対象物7及び第2の対象物23から離れることができる状態となる。吸着を止めた後に,透明基板3を移動させることで,設置用基板15に固定された第1の対象物7及び第2の対象物23と,透明基板3とを分離させることができる。その後,設置用基板15に固定された第1の対象物7及び第2の対象物23を移動させる。そして,上記の工程を繰り返すことで,設置用基板15に固定された第1の対象物7及び第2の対象物23を複数個製造できることとなる。
【0027】
上記の例では,第1の対象物7が透明基板3にすでにアライメントがとられて吸着されている状態で,第2の対象物23を透明基板3にアライメントを取りつつ吸着する方法や,さらに,第1の対象物7と第2の対象物23を設置用基板15に固定する方法にも応用できる。
【0028】
この例では,複数の対象物をアライメントした状態で透明基板に吸着させ,設置用基板に固定させることができる。なお,この例では,対象物を2種類とした。しかしながら,吸着工程を増やすことで,3以上の対象物をアライメントした状態で透明基板に吸着させ,設置用基板に固定させることができる。
【0029】
図7は,アライメント方法の例を説明するためのフローチャートである。この例は,第1の吸着工程(S301)と,対象物固定工程(S302)を含む。この例は,複数の対象物のアライメントを調整した後に,複数の対象物を透明基板に吸着する。そして,この例は,透明基板に吸着した複数の対象物を設置用基板に固定する。
【0030】
第1の吸着工程(S301)
この例では,ステージ41に搭載された第1の対象物7について,透明基板3の一方の面から第1の透明基板上マーク5及び第1の対象物マーク9を観察手段11(例えば顕微鏡又はカメラ)で観察しつつ,透明基板3と第1の対象物7との相対位置を調整することで,第1の透明基板上マーク5及び第1の対象物マーク9のアライメントを取りつつ,透明基板3に,第1の対象物7を吸着させる。この場合,例えば,第1の対象物7を搭載したステージ41上の第1の対象物7の位置を適宜調整させて,アライメントをとればよい。次に,第2の対象物23についても同様にして,第2の透明基板上マーク21を利用して,アライメントを取ればよい。第1の対象物7及び第2の対象物23のアライメントがとられた後は,先に説明したと同様にして,第1の対象物7及び第2の対象物23を透明基板3に吸着させればよい。
【0031】
対象物固定工程(S302)
対象物固定工程(S302)は,先に説明したと同様にすればよい。
【0032】
利用例
図8は,この発明のアライメント方法の利用例を示す概念図である。
図8(a)は,双方向通信モジュールの例を示す概念図である。
図8(b)は,WDMレーザーモジュールの例を示す概念図である。
図8(c)は,シリコンフォトニクス実装の例を示す概念図である。
図8(a)の例では,対象物がPD(ダイオード;光検出器),及びLD(レーザ)である。
図8(a)の例では,複数のPD及び複数のLDのアライメントを取ることができる。また,ひとつのマルチコアファイバ(MCF)に対し,複数のPD及び/又は複数のLDのアライメントを取ることができる。
図8(b)の例では,異なる波長の基板を1つの基板上に固定できる。
図8(c)の例では,シリコンフォトニクス基板上に複数の基板を固定できる。この例では,例えば,シリコンフォトニクス基板上(シリコン基板上の導波路や変調器)にLDやPDの異種基板を固定することに好ましく利用できる。
【0033】
具体的な利用例は,光トランシーバである。光トランシーバは,例えば,特開2020-27147号公報に記載されている。この光トランシーバは,第1の基板と,第1の基板の表面に設けられた垂直共振器面発光型レーザ(VCSEL)アレイと,第1の基板の裏面であってVCSELアレイに対応した位置に接着された第1のマルチコアファイバ(MCF)とを含む光トランシーバである。このアライメント技術を用いると,第1のMCFがシングルモードマルチコアファイバであっても好ましくアライメントを取ることができる。そして,第1の基板は,VCSELアレイから出射される光を透過する半導体基板である。また,この光トランシーバの好ましい例は,第2の基板と,第2の基板の表面に設けられた光検出器(PD)アレイと,第2の基板の裏面であってPDアレイに対応した位置に接着された第2のマルチコアファイバ(MCF)とを含み,第2の基板は,PDアレイに入射する光を透過する半導体基板であり,第1及び第2のマルチコアファイバは,第3の基板により固定される。このアライメント技術を用いることで,第1及び第2のマルチコアファイバがシングルモードマルチコアファイバであっても好ましくアライメントを取ることができる。
【0034】
具体的な利用例は,空間モード多重送信器である。空間モード多重送信器の例は,特許6979190号公報(特開2019-24029号公報)に記載されている。この空間モード多重送信器は,複数のモードを含む多モード光を出力する多モード光源と,多モード光から1つのモードを選択して単一モード光を出力すると共にそれ以外の不要なモード光を回折することによって除去するパターンが角度多重記録されたホログラムとが集積された,複数の単一高次モードレーザと,複数の単一高次モードレーザから出力された複数の単一モード光を合波して空間モード多重信号を出力するモード合波部と,を備え,複数の単一高次モードレーザの少なくとも一つは,他の単一高次モードレーザとは異なるモードを選択する。
【実施例0035】
複数の基板を任意の位置に高精度に実装するため,吸着機能付きガラスマスクを用いた(
図9)。
図9は,吸着機能付きガラスマスクを示す図面に代わる写真である。ガラスマスクは,下部に配置する基板を吸着するための開口(開口A)が下面に設けられており,(例えば,ガラス中の吸着用線路を通して)上面の開口(開口B)に接続されている。ガラスマスクの上面の開口Bは真空ポンプに接続されており,開口A下の基板を吸引可能である。ガラスマスク(下面)には,アライメントマーク(金属薄膜のパターン等)が設けてあり,ガラスマスク上面に配置された顕微鏡やカメラ等を用いて,ガラスを通して,金属薄膜パターンと基板A表面の任意のパターンとを合わせること(アライメント)により,ガラスマスク下面のアライメントマークに合わせて基板Aをピックアップ可能である。同様に,別の位置に配置された吸着用開口を用いれば,基板Bをアライメント後にピックアップ可能である。このように,複数の開口を用いて,複数の基板をガラスマスク下面のアライメントマークに対して正確に合わせて,ピックアップ可能である。このような状態を保ちながら,基板C上に持っていき,ガラスマスクを押し付ければ,半田や紫外線硬化樹脂等の接着剤を介して,基板Aおよび基板Bを基板C上に固定可能である。
【0036】
予め,基板Bを基板C上に固定しておき,基板B表面のアライメントマークに対してガラスマスク上のアライメントマークを合わせ,基板Aと基板Bのアライメントを行い,基板Aを基板C上に固定してもよい。
【0037】
また,アライメントマークを(金属薄膜パターンを厚く堆積し)突起状にすることにより,ガラスマスク側と基板側のアライメントマークの凹凸をかみ合わせることにより,ヒーター加熱時の熱膨張や,紫外線照射時の体積収縮による位置ずれを簡易的に抑える効果をもたせることができる。アライメントを可能とする透明なガラスマスクを通して基板を吸着することができる。レーザアレイやPDアレイの小さな基板(数mm角程度)に対して,アライメントマークと同時に,吸着用の開口を設けるには,微小な開口(例えば1mm以下)を形成することが好ましい。かつ顕微鏡やカメラ等の観察視野を遮らないような吸着配線を行うことが好ましい。昨今の機械加工技術では,1mm以下の開口や線路の形成が可能となっており,こうした微細な吸着構造も実現可能である。
【0038】
このガラスマスクに微細な吸着機能を設けることにより,複数の基板をガラスマスクに対してリソグラフィの精度で個別にアライメントができると考えられる。アライメント精度は,半導体のリソグラフィ技術と同様に,観察に用いる光学顕微鏡やカメラの倍率に依存するが,μmオーダで複数の基板を高精度に実装可能であると考える。
【0039】
アライメントマーク付き透明基板の例
図10は,アライメントマーク付き透明基板の例を示す図面に代わる写真である。
図10(a)は基板全体を示す。この例では,基板中央下部に下方の開口が存在し,下方の開口から右方向に下方の開口と接続された吸着用線路が基板内部に存在し,吸着用線路の右端部は,基板右上部に存在する上方に向けた開口と接続されている。
図10(b)は開口部の例を示す部分拡大図である。この例は,開口の直径が500μmであり,同様の技術を用いれば,この直径を適宜調整できる。
図10(c)は基板上マークの例を示す。この例における基板上マークは,250μmの間隔を有する格子点上に設けられた直径が20μmのドットアレイである。ドットアレイを,クロムを蒸着することにより作成した。この例は,VCSELアレイに対して,PDアレイをアライメントするものなので,下部開口及び上部開口はそれぞれ1つであった。このドットアレイをVCSELまたはPDの出射開口または受光開口に合わせることにより,VCSELアレイ基板とPDアレイ基板の間隔を正確に制御したアライメントが可能となる。
【0040】
VCSELアレイに対して,PDアレイをアライメントした例
図11は,VCSELアレイに対して,PDアレイをアライメントした例を示す図面に代わる写真である。
図11(a)は,PDアレイのみアライメントが完了し,透明基板に吸着された様子を示す。
図11(b)は,VCSELアレイの発光部のアライメントが完了し,透明基板に吸着された様子を示す。この例では,PDアレイが,第1の対象物7に相当し,VCSELアレイが,第2の対象物23に相当する。
図11(a)の状態では,ドットアレイとPDアレイの受光部が一致し,PDアレイのみアライメントが完了して,PDアレイが開口により透明基板に吸着された状態を示す。次に,
図11(b)に示されるように,ドットアレイとVCSELアレイの発光部を一致させると,全ての発光部と受光部が250μm間隔に保たれる。
この技術を用いると,ガラスマスク上のアライメントマークに対して,複数の基板をアライメントし,これを1枚の基板上に実装できるため,SDM用の送受信モジュールの簡易かつ低コストの実装技術として利用されうる。微小な吸着用開口は,複数設けることが容易であり,高精度な位置合わせが要求される光デバイス集積において拡張性のある技術になりうる。既存のボンディング装置やリソグラフィ装置のオプション機能としても,追加が容易な技術であると考える。この発明は,高精度な位置合わせが要求される光デバイス集積において高精度かつ低コストの実装技術として利用されうる。