(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040087
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ヘッドレスト及びヘッドレストの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/80 20180101AFI20240315BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B60N2/80
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144935
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖尋
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DD07
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】樹脂を含むステーの破片の飛散を抑制すること。
【解決手段】本開示のヘッドレストは、ヘッドレストのステーに、樹脂製のステー本体と、前記ステー本体を覆いかつ前記ステー本体よりも耐衝撃性が強い樹脂製の外側層と、が含まれているヘッドレストである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストのステーに、樹脂製のステー本体と、前記ステー本体を覆いかつ前記ステー本体よりも耐衝撃性が強い樹脂製の外側層と、が含まれているヘッドレスト。
【請求項2】
前記外側層は、前記ステー本体に巻き付けられたフィルムを含む請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記外側層は、前記ステー本体の材料よりも動摩擦係数が小さい材料からなる請求項1又は2に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記ステー本体は、前記外側層の材料よりも引張弾性率が大きい材料からなる請求項1又は2に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
着座者の頭部を受ける樹脂製のヘッドレスト本体に、前記ステー本体が一体形成されている請求項1又は2に記載のヘッドレスト。
【請求項6】
請求項2に記載のヘッドレストを製造する製造方法であって、
前記ステーの軸方向と交差する方向に圧力をかけながら前記フィルムを前記ステー本体に巻き付けるヘッドレストの製造方法。
【請求項7】
請求項2に記載のヘッドレストを製造する製造方法であって、
前記ステー本体は、中空の筒状とされており、その外周面には径方向に延びて前記ステー本体の中空部に至る横孔が設けられており、
前記中空部に負圧をかけながら前記フィルムを前記ステー本体に巻き付けるヘッドレストの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載のヘッドレストを製造する製造方法であって、
二色成形により前記ステー本体の外側に前記外側層を形成するヘッドレストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドレストのステーが金属からなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6461654(段落[0014]、
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のヘッドレストに対して、加工性や軽量化等の観点から、樹脂を含むステーを採用することが考えられるが、この場合、ヘッドレストに大きな衝撃が加わったときにステーが壊れやすくなり、ステーの破片が飛散し易くなるという問題が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の第1態様は、ヘッドレストのステーに、樹脂製のステー本体と、前記ステー本体を覆いかつ前記ステー本体よりも耐衝撃性が強い樹脂製の外側層と、が含まれているヘッドレストである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】(A)ステーの平断面図、(B)ステーの正断面図
【
図4】フィルムが巻き付けられるステー本体の平断面図
【
図5】他の実施形態においてフィルムが巻き付けられるステー本体の正断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係るヘッドレスト10は、車両等のシート90に設けられる。ヘッドレスト10は、着座者の頭部を受けるヘッドレスト本体11と、ヘッドレスト本体11を支持するステー20とを有する。
【0008】
図2に示すように、例えば、ヘッドレスト本体11は、複数の部材が合わさってなる中空構造をなし、本実施形態の例では、前側に開口する本体ケース13と、その開口を前側から覆うカバー14と、を有している。例えば、本体ケース13とカバー14は、樹脂製になっている。カバー14の前面には、クッション性を有するパッドが設けられてもよい。なお、ヘッドレスト本体11の内部が樹脂等で埋められていてもよい。
【0009】
ステー20は、ヘッドレスト本体11の下面から垂下し、シート90のうち着座者の背中を受ける背もたれ部91の装着孔に挿入されて、上下にスライド可能に支持される。例えば、ステー20は、1対設けられ、少なくとも一方のステー20に、位置決め凹部27が形成されている(
図1参照)。位置決め凹部27は、ステー20のうち上下方向の複数位置に形成され、背もたれ部91の位置決め突部と何れかの位置決め凹部27が係合することで、ヘッドレスト10の高さが位置決めされる。なお、例えば、ステー20の位置決め凹部27は、上側に向かうにつれて徐々に深くなる形状になっている。
【0010】
ステー20は、ステー本体21と、それを外側から覆う外側層22と、を有している。本実施形態の例では、ステー本体21は、樹脂製になっていて、例えば、外側層22は、ステー本体21よりも耐衝撃性が強い樹脂製になっている。例えば、外側層22は、ステー本体21の材料よりも動摩擦係数が小さい材料からなることが好ましく(即ち、摺動性が高い材料からなることが好ましく)、外側層22の動摩擦係数は、0.04~0.20であることが好ましい。また、ステー本体21は、外側層22の材料よりも引張弾性率が大きい材料からなることが好ましい。なお、例えば、耐衝撃性は、JIS K7111に準拠して測定することができる。また、例えば、動摩擦係数は、JIS K7125に準拠して測定することができる。また、例えば、引張弾性率は、JIS K7161に準拠して測定することができる。
【0011】
本実施形態の例では、ステー本体21は、ヘッドレスト本体11(具体的には、本体ケース13)と一体形成されている。なお、例えば、ステー本体21とヘッドレスト本体11の材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0012】
図2及び
図3(A)に示すように、本実施形態では、ステー本体21は、筒状をなしていて、ステー本体21の内側には、中空部23が設けられている。本実施形態の例では、中空部23は、ヘッドレスト本体11の内部空間に連通し、上方に開放されている。なお、中空部23が設けられていなくてもよく、例えば、ステー本体21が柱状をなしていてもよい。
【0013】
本実施形態では、外側層22は、ステー本体21に巻き付けられたフィルム22A(
図4参照)を含んでいる。具体的には、本実施形態では、フィルム22Aは、ステー本体21に一巻きされていて、外側層22がステー本体21の周方向全体に設けられている。なお、フィルム22Aが、ステー本体21に一巻きより多く巻き付けられていてもよいし、フィルム22Aが、ステー本体21の周方向の一部にのみ配置されていてもよい。なお、例えば、フィルム22Aの材料としては、エンジニアリングプラスチックが挙げられ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等の摺動性の高いものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。フィルム22Aは、例えば、接着剤によりステー本体21に固定されていてもよく、例えばテープであってもよい。なお、例えば、
図3(B)に示すように、外側層22を構成するフィルム22Aは、位置決め凹部27を形成するためにステー本体21の凹凸面に追従するものが好ましい(追従する程度に薄く柔らかいものが好ましい)。
【0014】
本実施形態のヘッドレスト10は、例えば、以下のようにして製造される。まず、金型内で、ステー本体21と本体ケース13(
図2参照)とが、一体成形される。この際に、金型内に、中空部23に対応する位置にピンが挿入されることで、ステー本体21が筒状に形成される。また、カバー14も別に形成しておく。次に、フィルム22A(
図4参照)が、ステー本体21に巻き付けられて(例えば接着剤で固定されて)適宜カットされ、ステー20が形成されると共に、本体ケース13がカバー14(
図2参照)に前側から覆われる。これにより、ヘッドレスト10が得られる。
【0015】
ここで、
図4に示すように、ステー本体21へのフィルム22Aの巻き付けは、ステー20の(ステー本体21の)軸方向と交差する方向(例えばステー本体21の径方向)に圧力をかけながら(例えば風圧をかけながら)行うことが好ましい。このようにすることで、フィルム22Aに皺が生じることを抑制可能となると共に、ステー本体21の凹凸面にフィルム22Aを追従させて位置決め凹部27を形成し易くすることが可能となる。
【0016】
本実施形態のヘッドレスト10によれば、例えば以下の効果を奏することができる。本実施形態では、ステー本体21が樹脂製であるので、金属製である場合よりも、軽量であるとともに、位置決め凹部27を容易に形成することが可能となる。具体的には、ステー本体21が金属製であると、位置決め凹部27を切削加工により形成する必要があり手間がかかるが、ステー本体21を樹脂製とすることにより、金型でステー本体21の凹凸形状を形成することができ、位置決め凹部27の形成を容易にすることが可能となる。
【0017】
ここで、従来のヘッドレストでは、ステーが樹脂を含む場合、ヘッドレストに大きな衝撃が加わったときにステーが壊れやすくなり、ステーの破片が飛散し易くなるという問題が生じ得る。これに対し、本実施形態では、ステー20には、ステー本体21を覆いかつステー本体21よりも耐衝撃性が強い樹脂製の外側層22(フィルム22A)が含まれている。これにより、仮に、ステー本体21が割れたとしても、ステー本体21の破片が飛散することを抑制可能となる。例えば、本実施形態では、ステー本体21が、可撓性を有するフィルム22A(例えば、ステー本体21よりも軟質な樹脂のフィルム)で巻かれていることで、飛散を抑制可能となる。
【0018】
また、外側層22を、ステー本体21の材料よりも動摩擦係数が小さい材料からなるものとすれば、ステー20の上下のスライドをスムーズにすることが可能となる。例えば、フィルム22Aの動摩擦係数が0.04~0.20であると、ステー20の上下のスライドをよりスムーズにすることが可能となる。
【0019】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態において、ステー本体21とヘッドレスト本体11が、一体形成されたものでなくてもよく、別々に形成された後に一体化されたものであってもよい。
【0020】
(2)上記実施形態において、ステー20の中空部23が、上方に開放されていなくてもよく(
図5参照)、例えば、ステー20が一端有底の筒状であってもよい。このような場合、ステー本体21の外周面に、中空部23と連通する横孔28を開口させてもよい。横孔28は、例えばステー本体21の径方向に延び、例えば複数設けられる。例えば横孔28は、中空部23と同様に、金型内に、横孔28に対応する位置にピンが挿入されることで形成される。横孔28が設けられる構成では、中空部23に負圧をかけながら(例えば、中空部23の開放端である下端から真空引きしながら)フィルム22Aをステー本体21に巻き付けることで、フィルム22Aをステー本体21に密着させ易く(即ち、外側層22を形成し易く)することが可能となると共に、フィルム22Aの皺の発生を抑制してステー20の見栄えを良くすることも可能となる。この場合に、各位置決め凹部27に対応させて横孔28を設けておくことで、位置決め凹部27にフィルム22Aを密着させ易くすることが可能となり、位置決め凹部27を形成し易くすることが可能となる。
【0021】
(3)フィルム22Aは、筒状であってもよい。
【0022】
(4)上記実施形態において、外側層22をステー本体21の外側に金型内で成形してもよい(即ち、ステー20が二色成形されたものであってもよい)。
【0023】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0024】
例えば、以下の特徴群は、ヘッドレストに関し、「ヘッドレストのステーが金属からなるものが知られている(例えば、特許6461654(段落[0014]、
図1等)参照)。」という背景技術について、「上述した従来のヘッドレストに対して、加工性や軽量化等の観点から、樹脂を含むステーを採用することが考えられるが、この場合、ヘッドレストに大きな衝撃が加わったときにステーが壊れやすくなり、ステーの破片が飛散し易くなるという問題が生じ得る。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。また、従来から、新規なヘッドレストや新規なヘッドレストの製造方法が求められている。
【0025】
[特徴1]
ヘッドレストのステーに、樹脂製のステー本体と、前記ステー本体を覆いかつ前記ステー本体よりも耐衝撃性が強い樹脂製の外側層と、が含まれているヘッドレスト。
【0026】
本特徴によれば、ステーの破片の飛散を抑制可能となる。
【0027】
[特徴2]
前記外側層は、前記ステー本体に巻き付けられたフィルムを含む特徴1に記載のヘッドレスト。
【0028】
[特徴3]
前記外側層は、前記ステー本体の材料よりも動摩擦係数が小さい材料からなる特徴1又は2に記載のヘッドレスト。
【0029】
[特徴4]
前記ステー本体は、前記外側層の材料よりも引張弾性率が大きい材料からなる特徴1から3の何れか1の特徴に記載のヘッドレスト。
【0030】
[特徴5]
前記外側層は、エンジニアリングプラスチック製である特徴1から4の何れか1の特徴に記載のヘッドレスト。
【0031】
[特徴6]
着座者の頭部を受ける樹脂製のヘッドレスト本体に、前記ステー本体が一体形成されている特徴1から5の何れか1の特徴に記載のヘッドレスト。
【0032】
[特徴7]
特徴2、又は、特徴2を引用する特徴3から6の何れか1の特徴に記載のヘッドレストを製造する製造方法であって、
前記ステーの軸方向と交差する方向に圧力をかけながら前記フィルムを前記ステー本体に巻き付けるヘッドレストの製造方法。
【0033】
[特徴8]
特徴2、又は、特徴2を引用する特徴3から6の何れか1の特徴に記載のヘッドレストを製造する製造方法であって、
前記ステー本体は、中空の筒状とされており、その外周面には径方向に延びて前記ステー本体の中空部に至る横孔が設けられており、
前記中空部に負圧をかけながら前記フィルムを前記ステー本体に巻き付けるヘッドレストの製造方法。
【0034】
[特徴9]
特徴1、又は、特徴1を引用する特徴2から6の何れか1の特徴に記載のヘッドレストを製造する製造方法であって、
二色成形により前記ステー本体の外側に前記外側層を形成するヘッドレストの製造方法。
【0035】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0036】
10 ヘッドレスト
11 ヘッドレスト本体
20 ステー
21 ステー本体
22 外側層