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特開2024-40110情報処理装置、方法、システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040110
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、方法、システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/40 20120101AFI20240315BHJP
【FI】
G06Q20/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089353
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2022144235の分割
【原出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】522200476
【氏名又は名称】スラッシュ フィンテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸介
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA73
(57)【要約】
【課題】ユーザが、必要に応じて、取引相手に対して自身の身元が確かであること、または特定のプロファイルを備えることを容易に証明できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様のプログラムは、コンピュータを、デジタルウォレットのユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報を取得する手段、ユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報の取得に応じて、デジタルウォレットに対してユーザの本人確認が正常に完了したことを証明し、かつ譲渡不可能である本人確認トークンを発行する手段、として機能させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
デジタルウォレットのユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報を取得する手段、
前記ユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報の取得に応じて、前記デジタルウォレットに対して前記ユーザの本人確認が正常に完了したことを証明し、かつ譲渡不可能である本人確認トークンを発行する手段、
として機能させる、プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、第1ユーザが使用する第1デジタルウォレットを介した取引を許容するための取引条件に、前記第1ユーザの取引相手となる第2ユーザが使用する第2デジタルウォレット上に前記第2ユーザの本人確認が正常に完了したことを証明する本人確認トークンが保有されていることを含めるか否かを、前記第1ユーザからの指示に応じて設定する手段、として機能させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、前記第2デジタルウォレット上に前記本人確認トークンが保有されておらず、かつ前記第2デジタルウォレット上に前記本人確認トークンが保有されていることが前記取引条件に含められている場合に、前記第2デジタルウォレットから前記第1デジタルウォレットへの暗号資産の移転に関する取引の要求を拒否する手段、として機能させる、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記コンピュータを、前記第2ユーザの使用するクライアント装置に、前記第1デジタルウォレットに対して設定されている取引条件の内容を示す情報を提示する手段、として機能させる、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記コンピュータを、前記第2デジタルウォレット上に前記本人確認トークンが保有されておらず、かつ前記第2デジタルウォレット上に前記本人確認トークンが保有されていることが前記取引条件に含められている場合に、前記第2ユーザに本人確認の実施を推奨する手段、として機能させる、
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記コンピュータを、
前記本人確認トークンの発行時に、所定の特典付与条件が成立するか否かを判定する手段、
前記特典付与条件が成立する場合に、前記本人確認トークンが発行されるデジタルウォレットに特典に相当するトークンを付与する手段、
として機能させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記特典に相当するトークンは、所定の決済システムにおける決済手数料の割引を受ける権利を証明するトークンである、
請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記特典に相当するトークンは、特定のトークンを鋳造する権利を証明するトークンである、
請求項6に記載のプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを、所定の特典配布条件が成立した場合に、前記本人確認トークンを保有するデジタルウォレットのうち少なくとも1つにトークンを配布する手段、として機能させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを、所定の決済システムにおける前記デジタルウォレットによる決済金額に基づいて、当該デジタルウォレットを使用するユーザの顧客ランクを証明し、かつ譲渡不可能である顧客ランクトークンを発行する手段、として機能させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを、第1ユーザが使用する第1デジタルウォレット上に第2ユーザによって指定された種別の譲渡不可能なトークンを保有し、かつ当該第1デジタルウォレットを経由して前記第2ユーザに支払が行われる場合に、前記第2ユーザによって指定された条件で当該第1デジタルウォレットに特典を付与する手段、として機能させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項12】
前記コンピュータを、
前記本人確認トークンを保有する第1デジタルウォレットの持ち主である第1ユーザから、寄付先の選択を受け付ける手段、
前記第1デジタルウォレットから所定の決済システムを介して行われた送金に対して徴収された決済手数料の一部を前記第1ユーザによって選択された寄付先へ送金する手段、
として機能させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項13】
前記コンピュータを、
外部装置から特定のデジタルウォレットにおける前記本人確認トークンの保有状況に関する問い合わせを受け付ける手段、
前記問い合わせに対する回答を前記外部装置へ送信する手段、
として機能させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項14】
前記本人確認トークンは、当該本人確認トークンによって本人確認が正常に完了したことが証明されるユーザの個人情報を含まない、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項15】
デジタルウォレットのユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報を取得する手段と、
前記ユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報の取得に応じて、前記デジタルウォレットに対して前記ユーザの本人確認が正常に完了したことを証明し、かつ譲渡不可能である本人確認トークンを発行する手段と
を具備する、情報処理装置。
【請求項16】
コンピュータが、
デジタルウォレットのユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報を取得するステップと、
前記ユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報の取得に応じて、前記デジタルウォレットに対して前記ユーザの本人確認が正常に完了したことを証明し、かつ譲渡不可能である本人確認トークンを発行するステップと
を実行する方法。
【請求項17】
第1コンピュータと、第2コンピュータとを具備し、
前記第1コンピュータは、
デジタルウォレットのユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報を前記第2コンピュータから取得する手段と、
前記ユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報の取得に応じて、前記デジタルウォレットに対して前記ユーザの本人確認が正常に完了したことを証明し、かつ譲渡不可能である本人確認トークンを発行する手段と
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、方法、システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばマネーロンダリング防止の観点から、銀行口座の開設時にeKYC(electronic Know Your Customer)処理が行われることがある。このようにして開設された銀行口座は、その持ち主の身元が確かであると推定できるので、取引者は安心して当該口座に送金したり、当該口座からの送金を受け取ったりすることができる。
【0003】
しかしながら、例えばメタマスクなどのデジタルウォレットは、ユーザが自由に作成可能である。故に、デジタルウォレットは、その持ち主の身元は通常不明であるため、取引者は当該ウォレットに対して送金したり、当該ウォレットからの送金を受け取ったりすることに不安を感じるおそれがある。
【0004】
特許文献1には、暗号資産アプリケーションのID取得(利用開始)の条件として、交換所に対するKYCを課す技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-072359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、KYCを行わなければ暗号資産アプリケーションの利用を開始できないため、ユーザは暗号資産アプリケーションを気軽に試すことができない。つまり、KYCが暗号資産アプリケーションの利用者獲得の障害となるおそれがある。
【0007】
本開示の目的は、ユーザが、必要に応じて、取引相手に対して自身の身元が確かであること、または特定のプロファイルを備えることを容易に証明できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様のプログラムは、コンピュータを、デジタルウォレットのユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報を取得する手段、ユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報の取得に応じて、デジタルウォレットに対してユーザの本人確認が正常に完了したことを証明し、かつ譲渡不可能である本人確認トークンを発行する手段、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態のクライアント装置の構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態のサーバの構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態の分散型台帳システムの構成を示す図である。
図5】本実施形態の一態様の説明図である。
図6】本実施形態のトークン発行処理のフローチャートである。
図7】本実施形態の取引条件設定処理のフローチャートである。
図8】本実施形態の取引処理のフローチャートである。
図9】本実施形態の取引処理において表示される画面例を示す図である。
図10】本実施形態の取引処理において表示される画面例を示す図である。
図11】本実施形態の取引処理において表示される画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
(1)情報処理システムの構成
情報処理システムの構成について説明する。図1は、本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、情報処理システム1は、クライアント装置10と、サーバ30と、分散型台帳システム50とを備える。
クライアント装置10及びサーバ30は、ネットワーク(例えば、インターネット又はイントラネット)NWを介して接続される。
クライアント装置10及び分散型台帳システム50は、ネットワークNWを介して接続される。
サーバ30及び分散型台帳システム50は、ネットワークNWを介して接続される。
【0013】
クライアント装置10は、サーバ30にリクエストを送信する情報処理装置の一例である。クライアント装置10は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又は、パーソナルコンピュータである。クライアント装置10のユーザは、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムにおいて例えば暗号資産の移転に関する取引(トランザクション)を行う者である。ここで、「暗号資産」とは、独自のブロックチェーン(ネットワーク)上で発行される暗号資産(狭義の暗号資産であり、プラットフォームトークンとも呼ばれる)に限られず、既存のブロックチェーン技術を用いて発行された独自の暗号資産(いわゆるトークン)を包含する意味で用いられる。
【0014】
サーバ30は、クライアント装置10から送信されたリクエストに応じたレスポンスをクライアント装置10に提供する情報処理装置の一例である。サーバ30は、例えば、サーバコンピュータである。
【0015】
分散型台帳システム50は、分散型台帳を管理する。一例として、分散型台帳システム50は、暗号資産またはトークン(NFT(Non-Fungible Token)を含み得る)の移転に関する取引の履歴を管理する。分散型台帳は、例えばブロックチェーンである。分散型台帳システム50は、相互に接続された複数のコンピュータ(クライアント装置10、またはサーバ30を含み得る)を含む。また、分散型台帳システム50には、決済システムの各機能を実現するためのスマートコントラクトが保存されており、クライアント装置10からの要求に応じて当該スマートコントラクトが実行される。
【0016】
(1-1)クライアント装置の構成
クライアント装置の構成について説明する。図2は、本実施形態のクライアント装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、クライアント装置10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14とを備える。クライアント装置10は、ディスプレイ21に接続される。
【0018】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0019】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ、または決済アプリケーション)のプログラム
【0020】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0021】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、クライアント装置10の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ12は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU(Central Processing Unit)
・GPU(Graphic Processing Unit)
・ASIC(Application Specific Integrated Circuit)
・FPGA(Field Programmable Array)
【0022】
入出力インタフェース13は、クライアント装置10に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、クライアント装置10に接続される出力デバイスに情報(例えば画像)を出力するように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ21、スピーカ、又は、それらの組合せである。
【0023】
通信インタフェース14は、クライアント装置10と外部装置(例えば、サーバ30、または分散型台帳システム50)との間の通信を制御するように構成される。
【0024】
ディスプレイ21は、画像(静止画、または動画)を表示するように構成される。ディスプレイ21は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイである。
【0025】
(1-2)サーバの構成
サーバの構成について説明する。図3は、本実施形態のサーバの構成を示すブロック図である。
【0026】
図3に示すように、サーバ30は、記憶装置31と、プロセッサ32と、入出力インタフェース33と、通信インタフェース34とを備える。
【0027】
記憶装置31は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置31は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0028】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0029】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0030】
プロセッサ32は、記憶装置31に記憶されたプログラムを起動することによって、サーバ30の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ32は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU
・GPU
・ASIC
・FPGA
【0031】
入出力インタフェース33は、サーバ30に接続される入力デバイスから情報(例えばユーザの指示)を取得し、かつ、サーバ30に接続される出力デバイスに情報(例えば画像)を出力するように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0032】
通信インタフェース34は、サーバ30と外部装置(例えば、クライアント装置10、または分散型台帳システム50)との間の通信を制御するように構成される。
【0033】
(1-3)分散型台帳システムの構成
分散型台帳システムの構成について説明する。図4は、本実施形態の分散型台帳システムの構成を示す図である。
【0034】
図4に示すように、分散型台帳システム50は、複数のノードコンピュータ55-1~55-4を備える。
【0035】
ノードコンピュータ55は、ネットワーク(図1のネットワークNWを含み得る)を介して互いに接続される。本実施形態では、ネットワークは、公衆網、プライベートネットワーク、専用線、VPN(Virtual Private Network)、またはそれらの組み合わせを含み得る。ノードコンピュータ55は、ネットワークと、例えば、有線または無線により接続されている。ノードコンピュータ55は、ピア・ツー・ピア方式で互いに通信する。
【0036】
ノードコンピュータ55は、例えばブロックチェーン技術を用いて分散型台帳を管理する。
具体的には、いずれかのノードコンピュータ55は、記録すべき暗号資産またはトークンのトランザクションに関するデータを取得する。ノードコンピュータ55は、取得したデータを含むブロックを作成し、ブロックチェーンに追加する。ノードコンピュータ55は、追加したブロックの情報を他のノードコンピュータ55へ送信する。他のノードコンピュータ55は、受信したブロックの正しさを検証し、検証に成功すると、ブロックチェーンに当該ブロックを追加する。ノードコンピュータ55は、例えば、連結されるブロックの数(承認数)に従ってブロックチェーンを確定する。これにより、分散型台帳システム50を構成する複数のノードコンピュータ55に亘って、同一の分散型台帳が保存されることになる。なお、保存されるデータは、適宜に暗号化される。
【0037】
分散型台帳システム50の構成は、図4に示されるものに限定されない。例えば、分散型台帳システム50は、5台以上のノードコンピュータ55を備えていてもよいし、2台または3台のノードコンピュータ55を備えていてもよい。また、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータ55の数は、時間とともに変動してもよい。
【0038】
ノードコンピュータ55のハードウェア構成は、クライアント装置10と同一または類似であってよいので詳細な説明を省略する。一例として、ノードコンピュータ55は、プロセッサ、記憶装置、入出力インタフェース、通信インタフェース、入力デバイス、出力デバイス、またはそれらの組み合わせを備える。
【0039】
(2)実施形態の一態様
本実施形態の一態様について説明する。図5は、本実施形態の一態様の説明図である。
図5に示すように、クライアント装置10のユーザU11は、デジタルウォレット(Web3ウォレット)W12を保有している。分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムで取引を行う場合に、ユーザU11はウォレットW12から他のユーザのウォレットに暗号資産を譲渡(つまり送金または支払)したり、ウォレットW12によって他のユーザのウォレットから暗号資産を譲り受けたりすることができる。
【0040】
以下に説明するように、ユーザU11は、本人確認を行うことで、取引相手に対して自身の身元が確かであることを証明するためのトークンの発行を受け、当該トークンをウォレットW12上で保有できる。
【0041】
具体的には、サーバ30は、ユーザU11からの要求に応じて、当該ユーザU11に対して所定の本人確認処理(例えばeKYC処理)を行う。サーバ30は、本人確認が正常に完了した場合に、ユーザU11のウォレットW12宛に所定のトークン(以下、「KYCトークン」というが、「本人確認トークン」と呼ぶこともできる)を発行するよう分散型台帳システム50に要求する。
【0042】
分散型台帳システム50(具体的には、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータのうち、KYCトークンを発行するためのスマートコントラクトを実行するコンピュータ)は、指定されたウォレットW12宛にKYCトークンを発行する。なお、本人確認処理において収集されたユーザU11の個人情報は、サーバ30には保存され得るものの、KYCトークンには含められないし、KYCトークンに含められた情報から第三者が参照可能には構成されない(つまり公開されない)。
【0043】
ここで、KYCトークンは、例えばSBT(Soulbound Token)などの譲渡不可能なトークンである。このように、KYCトークンは、本人確認が正常に完了したことをトリガに発行され、かつ、譲渡不可能である。故に、ウォレットW12にKYCトークンが保有されていることは、ウォレットW12の持ち主であるユーザU11の本人確認が正常に完了した事実を証明する。つまり、ユーザU11は、KYCトークンの保有の事実により、自らの個人情報を取引相手に明かすことなく、自らの身元が確かであることを容易に証明することができる。したがって、取引相手は、安心してユーザU11との取引を行うことができる。
【0044】
(3)情報処理
本実施形態の情報処理について説明する。
【0045】
(3-1)トークン発行処理
本実施形態のトークン発行処理について説明する。図6は、本実施形態のトークン発行処理のフローチャートである。
【0046】
本実施形態のトークン発行処理は、例えば、サーバ30がクライアント装置10からユーザの本人確認の実行要求を受信することで開始する。
【0047】
図6に示すように、サーバ30は、本人確認(S130)を実行する。
具体的には、サーバ30は、クライアント装置10から例えば以下の少なくとも1つの情報を受け付ける。
・クライアント装置10のユーザの本人確認書類の情報(例えば、画像、またはICチップの情報)
・クライアント装置10のユーザの容貌の情報(例えば顔画像)
・クライアント装置10のユーザのウォレット(つまり、KYCトークンの発行先)を特定可能な情報(例えばウォレットアドレス)
【0048】
ステップS130において本人確認が正常に完了した後に、サーバ30は、トークンの発行要求(S131)を実行する。
具体的には、サーバ30は、KYCトークンの発行要求(「ユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報」の一例)を生成する。発行要求には、本人確認が行われたユーザのウォレットを特定可能な情報が含まれる。発行要求には、さらに、本人確認の実施者(例えば本人確認サービスの運営者)、本人確認の方法、またはそれらの組み合わせを特定可能な情報を含んでもよい。サーバ30は、発行要求を分散型台帳システム50へ送信する。これにより、サーバ30は、本人確認が行われたユーザのウォレット宛にKYCトークンを発行するよう分散型台帳システム50に要求する。一例として、サーバ30は、本人確認が行われたユーザのウォレットを特定可能な情報を引数として、KYCトークンを発行するためのスマートコントラクトの実行を分散型台帳システム50に要求する。
【0049】
他方、ステップS130において本人確認が正常に完了しなかった場合に、サーバ30は、トークンの発行要求(S131)を実行しない。
【0050】
ステップS131の後に、分散型台帳システム50は、トークンの発行(S150)を実行する。
具体的には、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、本人確認が行われたユーザのウォレット宛にKYCトークンを発行する。
【0051】
ステップS150の後に、分散型台帳システム50は、特典付与条件の判定(S151)を実行する。
具体的には、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、ステップS150において発行したKYCトークンについて、所定の特典付与条件が成立するか否かを判定する。特典付与条件は、例えば以下の少なくとも1つを含むことができる。
・KYCトークンの累計発行数が所定の数値範囲(例えば、1~100など)内にある
・KYCトークンの発行日時が所定の期間内(例えば、KYCトークンの発行開始から1年間、またはキャンペーン期間)にある
・KYCトークンの累計発行数が所定の数値(例えば、1000など)に一致する
【0052】
ステップS151において特典付与条件が成立すると判定された場合に、分散型台帳システム50は、特典の付与(S152)を実行する。
具体的には、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、ステップS151において成立すると判定された特典付与条件に対応する特典を、ステップS150において発行したKYCトークンが発行されたユーザに付与する。一例として、ノードコンピュータは、KYCトークンとは別に、特典に相当するトークンを、本人確認が行われたユーザのウォレット宛に発行する。かかるトークンは、例えば以下の少なくとも1つを含むことができる。
・所定の決済システム(例えば分散型台帳システム50によって実現される決済システム)における決済手数料の割引を受ける権利を証明するトークン
・特定のトークンを鋳造(Mint)する権利を証明するトークン
【0053】
分散型台帳システム50は、ステップS152の完了を以て、トークン発行処理を終了する。
或いは、ステップS151において特典付与条件が成立しないと判定された場合に、分散型台帳システム50は、特典の付与(S152)を省略し、トークン発行処理を終了する。
【0054】
(3-2)取引条件設定処理
本実施形態の取引条件設定処理について説明する。図7は、本実施形態の取引条件設定処理のフローチャートである。
【0055】
図7に示すように、クライアント装置10は、取引条件の設定(S210)を実行する。
具体的には、クライアント装置10は、例えばユーザが使用するデジタルウォレット(以下、「ユーザウォレット」という)にログインした状態で、ユーザから取引条件の設定指示を受け付ける。取引条件は、例えば、ユーザがユーザウォレットを介した取引を許容するために、取引相手(または取引相手が使用するデジタルウォレット)に課す必要条件である。一例として、ユーザは、取引相手のデジタルウォレット(つまり、ユーザウォレットに対して送金を行うデジタルウォレット、ユーザウォレットからの送金を受け取るデジタルウォレット、またはそれらの組み合わせ)にKYCトークンが保有されていることを取引条件に含めるように、または含めないように設定するできる。
【0056】
ステップS210の後に、クライアント装置10は、コントラクトの作成要求(S211)を実行する。
具体的には、クライアント装置10は、ステップS210において受け付けた取引条件の設定指示に基づいて、ユーザウォレットの取引条件を管理するスマートコントラクトの作成要求を生成する。クライアント装置10は、作成要求を分散型台帳システム50へ送信する。
【0057】
ステップS211の後に、分散型台帳システム50は、コントラクトの作成(S250)を実行する。
具体的には、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、ステップS211においてクライアント装置10から送信された作成要求を受信する。ノードコンピュータは、作成要求に応じてコントラクトを作成し、分散型台帳システム50にデプロイする。
【0058】
なお、本実施形態の取引条件設定処理は、繰り返し実行可能である。例えば、ユーザは、取引相手のデジタルウォレットにKYCトークンが保有されていることを取引条件に含めるように設定した後に、当該設定を解除することができる。逆に、例えば、ユーザは、取引相手のデジタルウォレットにKYCトークンが保有されていることを取引条件に含めないように設定した後に、当該条件を取引条件に含めるように設定してもよい。取引条件設定処理を繰り返し実行する場合に、過去に作成したコントラクトが更新されてもよいし、当該コントラクトを破棄して新規コントラクトが作成されてもよい。
【0059】
(3-3)取引処理
本実施形態の取引処理について説明する。図8は、本実施形態の取引処理のフローチャートである。図9は、本実施形態の取引処理において表示される画面例を示す図である。図10は、本実施形態の取引処理において表示される画面例を示す図である。図11は、本実施形態の取引処理において表示される画面例を示す図である。
【0060】
本実施形態の取引処理は、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムによる決済時にユーザ指示に応じて呼び出される。第1例として、ユーザは、本決済システムのユーザとしての加盟店において支払を行う場合に、または本決済システムのユーザに任意の金額の送金を行う場合に、クライアント装置10において所定のアプリケーションを起動し、または所定のWebページにアクセスすることで、本実施形態の取引処理を開始させることができる。
【0061】
第2例として、ユーザは、外部システムの利用時に本決済システムによる支払を行う場合に、外部システム経由で本実施形態の取引処理を呼び出すことができる。外部システムは、例えば以下の少なくとも1つを含むことができる。
・EC(Electronic Commerce)システム
・サービス提供(例えば、コンテンツ配信、ゲーム、マッチングなど)システム
【0062】
一例として外部システムの利用時に、クライアント装置10のディスプレイ21に図9の画面が表示される。図9の画面は、オブジェクトJ20a~J20cを含む。
オブジェクトJ20aは、決済金額を表示する。
【0063】
オブジェクトJ20bは、決済方法を選択するためのユーザ指示を受け付ける。一例として、オブジェクトJ20bは、ラジオボタンを含む。
オブジェクトJ20cは、決済方法の選択を確定するためのユーザ指示を受け付ける。
【0064】
本例では、クライアント装置10のユーザが、上記所定の決済システムに対応する決済方法である「Web3.0ウォレット決済」をオブジェクトJ20bによって選択した状態で、オブジェクトJ20cを選択すると、本実施形態の取引処理が開始する。
【0065】
図8に示すように、クライアント装置10は、コントラクトの実行要求(S310)を実行する。
具体的には、クライアント装置10は、ユーザに要求された決済に相当する取引を開始するためのスマートコントラクトの実行を分散型台帳システム50に要求する。要求には、支払先となるデジタルウォレットに対応するスマートコントラクトを特定可能な情報(例えばコントラクトアドレス)が含まれる。
【0066】
ステップS310の後に、分散型台帳システム50は、コントラクト(S350)を実行する。
具体的には、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、ステップS310において要求されたスマートコントラクトを実行する。例えば、ノードコンピュータは、コントラクトを実行することで、支払先となるデジタルウォレットに対応する取引条件の情報を取得する。
【0067】
ステップS350の後に、分散型台帳システム50は、応答(S351)を実行する。
具体的には、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、ステップS350におけるスマートコントラクトの実行結果をクライアント装置10へ送信する。ここで、スマートコントラクトの実行結果は、取引相手のデジタルウォレットに対して設定されている取引条件の内容に応じて異なる。一例として、スマートコントラクトの実行結果は、少なくとも、取引相手のデジタルウォレットに対応する取引条件としてKYCトークンの保有が課されているか否かに応じて異なる。
【0068】
ステップS351の後に、クライアント装置10は、情報の提示(S311)を実行する。
具体的には、クライアント装置10は、ステップS351において分散型台帳システム50から送信された応答に基づいてユーザに情報を提示する。一例として、クライアント装置10は、図10または図11の画面をディスプレイ21に表示する。支払先となるデジタルウォレットの取引条件としてKYCトークンの保有が課されていない場合に、クライアント装置10は図10の画面をディスプレイ21に表示し得る。他方、支払先となるデジタルウォレットの取引条件としてKYCトークンの保有が課されている場合に、クライアント装置10は図11の画面をディスプレイ21に表示し得る。
【0069】
図10の画面は、オブジェクトJ21a~J21cを含む。
オブジェクトJ21aは、クライアント装置10のユーザに所定の決済システムによる取引相手への支払が可能であることを伝える情報を表示する。
【0070】
オブジェクトJ21bは、決済方法の選択画面に戻るためのユーザ指示を受け付ける。オブジェクトJ21bが選択された場合に、クライアント装置10は本実施形態の取引処理を終了する。
オブジェクトJ21cは、所定の決済システムによる支払を続行するためのユーザ指示を受け付ける。
【0071】
図11の画面は、オブジェクトJ22a~J22cを含む。
オブジェクトJ22aは、クライアント装置10のユーザに以下の事項を伝える情報を表示する。
・取引相手への支払には、KYCトークンの保有(すなわち本人確認の実施)が必要であること
・KYCトークンの獲得方法
・ユーザがKYCトークンを保有している場合には、所定の決済システムによる取引相手への支払が可能であること
【0072】
オブジェクトJ22bは、決済方法の選択画面に戻るためのユーザ指示を受け付ける。オブジェクトJ22bが選択された場合に、クライアント装置10は本実施形態の取引処理を終了する。
オブジェクトJ22cは、所定の決済システムによる支払を続行するためのユーザ指示を受け付ける。
【0073】
ステップS311の後に、クライアント装置10は、取引の実行要求(S312)を実行する。
具体的には、クライアント装置10は、ユーザ指示に応じて、デジタルウォレットにログインする。クライアント装置10は、暗号資産の移転に関する取引(支払または送金取引)の実行要求を分散型台帳システム50へ送信する。要求は、以下の情報を含むことができる。
・ユーザのデジタルウォレットを特定可能な情報(例えばウォレットアドレス)
・支払先となるデジタルウォレットを特定可能な情報(例えばウォレットアドレス)
・支払額(送金額)を特定可能な情報
・ガス代を特定可能な情報
【0074】
ステップS312の後に、分散型台帳システム50は、取引(S352)を実行する。
具体的には、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、ステップS312において要求された取引を実行する。ノードコンピュータは、ステップS350において取得した、取引相手のデジタルウォレットに対して設定されている取引条件に基づいて取引を行う。
【0075】
一例として、取引相手のデジタルウォレットに対応する取引条件としてKYCトークンの保有が課されている場合に、ノードコンピュータは、ユーザのデジタルウォレットにKYCトークンが保有されているか否かを確認する。ユーザのデジタルウォレットにKYCトークンが保有されている場合には、ノードコンピュータは取引を遂行する。他方、ユーザのデジタルウォレットにKYCトークンが保有されていない場合には、ノードコンピュータは取引を拒否する。
【0076】
(4)小括
以上説明したように、本実施形態の分散型台帳システム50は、デジタルウォレットのユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報を取得し、当該情報の取得に応じて、当該デジタルウォレットに対して、KYCトークンを発行する。これにより、ユーザは、デジタルウォレットにKYCトークンが保有されているという事実によって、自らの個人情報を取引相手に明かすことなく、自らの身元が確かであることを容易に証明することができる。したがって、取引相手は、安心してユーザとの取引を行うことができる。
【0077】
分散型台帳システム50は、第1ユーザが使用する第1デジタルウォレットを介した取引を許容するための取引条件に、第1ユーザの取引相手となる第2ユーザが使用する第2デジタルウォレット上に第2ユーザのKYCトークンが保有されていることを含めるか否かを、第1ユーザからの指示に応じて設定してもよい。これにより、身元の確かでない相手からの取引を忌避するユーザ(特に、大企業、公開会社などのコンプライアンス意識の高いユーザ)は、身元の確かなユーザのみを取引相手として選別することができる。つまり、マネーロンダリングのリスクがある従来の暗号資産による決済システムの導入に躊躇していたユーザに対しても、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムの導入を促進することができる。
【0078】
分散型台帳システム50は、第2デジタルウォレット上に本人確認トークンが保有されておらず、かつ当該第2デジタルウォレット上に本人確認トークンが保有されていることが、第1デジタルウォレットを介した取引を許容するための取引条件に含められている場合に、当該第2デジタルウォレットから当該第1デジタルウォレットへの暗号資産の移転に関する取引の要求を拒否してもよい。これにより、身元の確かでない相手からの取引を忌避するユーザが、身元の確かでないユーザから暗号資産の移転を受けることを防ぐことができる。つまり、マネーロンダリングのリスクがある従来の暗号資産による決済システムの導入に躊躇していたユーザに対しても、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムの導入を促進することができる。
【0079】
分散型台帳システム50は、第2ユーザの使用するクライアント装置に、第1デジタルウォレットに対して設定されている取引条件の内容を示す情報を提示してもよい。これにより、第2ユーザは、第1ユーザとの取引が可能であるか否か、また第1ユーザとの取引を続行するために必要な条件を認識することができる。
【0080】
分散型台帳システム50は、KYCトークンの発行時に、所定の特典付与条件が成立するか否かを判定し、成立する場合に、KYCトークンが発行されるウォレットに特典に相当するトークンを付与してもよい。特典に相当するトークンは、所定の決済システムにおける決済手数料の割引を受ける権利を証明するトークンであってもよいし、特定のトークンを鋳造する権利を証明するトークンであってもよい。これにより、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムのユーザに本人確認の実施を促すとともに、KYCトークンの発行を促すことができる。
【0081】
KYCトークンは、当該KYCトークンによって本人確認が正常に完了したことが証明されるユーザの個人情報を含まなくてもよい。これにより、KYCトークンの内容が公開されたとしても、ユーザの個人情報の漏洩は生じない。
【0082】
(5)その他の変形例
記憶装置11は、ネットワークNWを介して、クライアント装置10と接続されてもよい。ディスプレイ21は、クライアント装置10に内蔵されてもよい。記憶装置31は、ネットワークNWを介して、サーバ30と接続されてもよい。
【0083】
上記の情報処理の各ステップは、クライアント装置10、サーバ30、または分散型台帳システム50(を構成するノードコンピュータ)の何れでも実行可能である。例えば、いずれかの装置によって行われるとして説明された処理が別の装置によって行われたり、複数の装置のやり取りによって行われるとして説明された処理が単一の装置によって行われたりしてもよい。また、上記説明では、各処理において各ステップを特定の順序で実行する例を示したが、各ステップの実行順序は、依存関係がない限りは説明した例に制限されない。
【0084】
上記説明では、分散型台帳システム50が、クライアント装置10に、当該クライアント装置10のユーザが取引しようとするデジタルウォレットに対して設定されている取引条件の内容を示す情報を提示する例を示した。本例に関して、さらなる処理が可能である。すなわち、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、ユーザが使用するデジタルウォレットにおけるKYCトークンの保有状況を確認し、当該デジタルウォレット上にKYCトークンが保有されておらず、かつKYCトークンの保有が上記取引条件に含められている場合に、当該ユーザに本人確認の実施を推奨してもよい。これにより、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムのユーザに本人確認の実施を促すとともに、KYCトークンの発行を促すことができる。或いは、分散型台帳システム50は、かかる取引条件が定められたデジタルウォレットに対してKYCトークンを保有しないデジタルウォレットから取引の実行要求を受信した場合に、取引を拒否するとともにかかる推奨を行ってもよい。
【0085】
上記説明では、KYCトークンの発行時に特典を条件付きで付与する例を述べた。しかしながら、KYCトークンの発行時に限られず、KYCトークンを保有しているウォレットに対して特典を条件付きで配布(エアドロップ)してもよい。一例として、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、所定の特典配布条件が成立した場合に、KYCトークンを保有するデジタルウォレットの少なくとも1つ特典としてのトークンを配布してもよい。これにより、KYCトークンの魅力が高まるので、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムのユーザに本人確認の実施を促すとともに、KYCトークンの発行を促すことができる。
例えば、特典配布条件は、以下の少なくとも1つを含むことができる。
・KYCトークンの累計発行数が所定の数値範囲(例えば、1~100など)内にある
・KYCトークンの発行日時が所定の期間内(例えば、KYCトークンの発行開始から1年間、またはキャンペーン期間)にある
・KYCトークンの累計発行数が所定の数値(例えば、1000など)に一致する
・分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムにおける決済金額が所定値に達した
・分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムにおける決済取引の実行数が所定値に達した
トークンの配布先となるウォレットは、KYCトークンを保有する全てのウォレットであってもよいし、KYCトークンを保有する全てのウォレットから所定の条件により抽出されたウォレットであってもよい。例えば、トークンの配布先となるウォレットは、抽選により選出されてもよい。
【0086】
分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、当該分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムにおけるデジタルウォレットによる決済履歴(例えば、決済金額、または所定の決済システムによって指定された暗号資産のステーキング額)に基づいて、当該デジタルウォレットに顧客ランクトークンを発行してもよい。顧客ランクトークンは、デジタルウォレットを使用するユーザの顧客ランクを証明し、かつ譲渡不可能に構成される。ユーザは、顧客ランクトークンを保有することにより様々な特典(例えば、所定の決済システムにおける決済手数料の割引を受ける権利、特定のトークンを鋳造する権利、など)を得ることができる。また、顧客ランクトークンの保有の有無(および保有者に対する特典)が前述の取引条件の要素の1つとして設定されてもよい。顧客ランクトークンは、所定の条件を満たしたデジタルウォレットに対して自動的に付与されてもよい。或いは、ユーザは、所定の条件を満たすことで、顧客ランクトークンの鋳造を、クライアント装置10を介して分散型台帳システム50に要求できるようにしてもよい。これにより、ユーザは、所定の決済システムにおいて、デジタルウォレットに特定の顧客ランクトークンが保有されているという事実によって、自らの個人情報を明かすことなく、当該決済システムにおける自らの取引実績(ユーザのプロファイルの一例)を容易に証明することができる。また、顧客ランクトークンの保有することにより受けられる種々の便益がユーザにとって誘因として働くため、所定の決済システムの利用を促進することができる。
【0087】
分散型台帳システム50を構成するコンピュータは、第1ユーザがデジタルウォレット上に第2ユーザによって指定された種別の譲渡不可能なトークンを保有し、かつ当該デジタルウォレットを経由して当該第2ユーザに支払いが行われる場合に、当該第2ユーザによって指定された条件で当該デジタルウォレットに特典を付与してもよい。かかる条件および特典は、第2ユーザの取引条件の一部として、スマートコントラクト上で管理され得る。ユーザは、第1ユーザは、所定の条件を満たすことで、または無条件に、かかるトークンの鋳造を、クライアント装置10を介して分散型台帳システム50に要求できる。これにより、第2ユーザは、自らの取引相手がかかるトークンを保有するよう促すことができ、また当該トークンを保有するユーザに自らとの取引を行うよう促すことができる。
第2ユーザによって指定された種別のトークンは、前述の譲渡不可能なトークンのいずれかであってもよいし、他の譲渡不可能なトークンであってもよい。他の譲渡不可能なトークンは、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムの運営者によって発行管理されてもよいし、第2ユーザによって発行管理されてもよい。例えば第2ユーザが事業者である場合に、当該事業者の会員カードに相当する譲渡不可能なトークンが第2ユーザによって指定された種別のトークンに含まれ得る。この場合に、ユーザは、かかるトークンが保有されているという事実によって、自らの個人情報を明かすことなく、自らが事業者の会員であること(ユーザのプロファイルの一例)を容易に証明することができる。
付与される特典は、前述のトークンのいずれかであってもよいし、送金額の一部のキャッシュバックであってもよい。
【0088】
上記説明では、送金に対してガス代を徴収する例を述べた。ガス代とは別に、システム利用に対する手数料を徴収することも可能である。具体的には、本実施形態の分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムは、当該システムを利用して行われた送金に対して、送金者のデジタルウォレットから決済手数料を徴収してもよい。そして、この決済手数料の一部は寄付されてもよく、この場合に送金者であるユーザが寄付先を選択可能としてもよい。
一例として、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、クライアント装置10を介してユーザから寄付先の選択を受け付ける。また、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、ユーザの使用するデジタルウォレットから所定の決済システムを介して行われた送金に対して手数料を徴収する。そして、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、ユーザから徴収した決済手数料の一部を当該ユーザによって選択された寄付先へ送金する。これにより、ユーザは、自らの支払った決済手数料の一部が自らの選択した寄付先に送金されるので、上記決済システムを利用することの納得感を高めることができる。
なお、寄付先は、取引毎に選択されてもよいし、前述の取引条件の要素の1つとして設定されてもよい。例えば、例えば、クライアント装置10は、寄付先の選択を受け付る。取引の実行要求(S312)において、選択された寄付先を特定可能な情報を取引要求に含めてもよい。或いは、選択された寄付先を特定可能な情報が、ステップS250において作成されるコントラクトに含められてもよい。
また、寄付先の選択は、KYCトークンを保有するデジタルウォレットについてのみ認められてもよい。すなわち、KYCトークンを保有することによる特典の1つとして寄付先の選択権が位置づけられてもよい。これにより、KYCトークンの魅力が高まるので、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムのユーザに本人確認の実施を促すとともに、KYCトークンの発行を促すことができる。
【0089】
KYCトークンの保有状況を照会するためのAPI(Application Programming Interface)を提供することも可能である。一例として、分散型台帳システム50を構成するノードコンピュータは、外部装置(例えば、外部システムを構成するサーバまたはクライアント装置)から、特定のデジタルウォレットにおけるKYCトークンの保有状況に関する問い合わせを受け付ける。問い合わせは、例えば特定のデジタルウォレットを識別する情報(例えばウォレットアドレス)を含むことができる。ノードコンピュータは、問い合わせに応じて、特定のデジタルウォレットにおけるKYCトークンの保有状況を確認し、確認結果を含む回答を外部装置へ送信する。これにより、ユーザは、分散型台帳システム50によって実現される所定の決済システムとは異なる外部システムにおいても、デジタルウォレットにKYCトークンが保有されているという事実によって、自らの個人情報を明かすことなく、自らの身元が確かであることを容易に証明することができる。また、外部システムの運営者は、自前で本人確認を行わずとも、ユーザの身元が確かであることを前提としたサービスを提供することができる。
【0090】
上記説明では、分散型台帳システム50が、デジタルウォレットのユーザの本人確認が正常に完了したことを示す情報をサーバ30から取得し、当該情報の取得に応じて、当該デジタルウォレットに対して、KYCトークンを発行する例を示した。しかしながら、サーバ30が、KYCトークンの発行を分散型台帳システム50に要求するのではなく、KYCトークンの発行をユーザに対して許可してもよい。この場合に、ユーザは、クライアント装置10を介して、分散型台帳システム50にKYCトークンの発行(或いは、「鋳造」(Mint))を要求する。そして、分散型台帳システム50は、クライアント装置10から送信されたKYCトークンの発行要求に応じて、KYCトークンを発行する。前述の特典に相当するトークンも同様に扱うことができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 :情報処理システム
10 :クライアント装置
11 :記憶装置
12 :プロセッサ
13 :入出力インタフェース
14 :通信インタフェース
21 :ディスプレイ
30 :サーバ
31 :記憶装置
32 :プロセッサ
33 :入出力インタフェース
34 :通信インタフェース
50 :分散型台帳システム
55 :ノードコンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11