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特開2024-40114半導体装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040114
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20240315BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240315BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H01L29/78 655A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652C
H01L29/78 652J
H01L29/78 655E
H01L29/78 658A
H01L29/78 658F
H01L29/78 655G
H01L29/78 658H
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109122
(22)【出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022144245
(32)【優先日】2022-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 雅史
(72)【発明者】
【氏名】松浦 仁
(57)【要約】
【課題】P型フローティング領域内の正孔蓄積を抑制して、絶縁ゲート型バーポーラトランジスタなどの半導体装置のスイッチング時間を改善するための技術を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板に形成されたトレンチゲートおよびトレンチエミッタと、トレンチゲートおよびトレンチエミッタに挟まれた半導体基板に形成された第1導電型のフローティング領域と、を有する。フローティング領域の底部は、トレンチゲートおよびトレンチエミッタの底部より下側に位置しており、フローティング領域は、フローティング領域の表面側に、結晶欠陥形成領域を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面、および前記第1主面と反対側の第2主面を有する半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第1トレンチ、および第2トレンチと、
前記第1トレンチに、第1ゲート絶縁膜を介して埋め込まれた、第1トレンチエミッタと、
前記第2トレンチに、第2ゲート絶縁膜を介して埋め込まれた、第1トレンチゲートと、
前記第1トレンチエミッタと第1トレンチゲートとの間の前記半導体基板に形成された、フローティング領域と、
前記フローティング領域内の前記第1主面に近い位置に局所的に形成された、結晶欠陥を含む結晶欠陥領域と、を有し、
断面視において、前記フローティング領域は、前記第1トレンチの底面と、前記第2トレンチの底面とを覆うように形成され、
平面視、および断面視において、前記結晶欠陥領域は、前記第1トレンチ、および前記第2トレンチから離間して設けられている、半導体装置。
【請求項2】
前記結晶欠陥領域は、前記フローティング領域内に位置し、前記第1トレンチ、および前記第2トレンチと接していない、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
平面視において、前記第1トレンチの前記第2トレンチが形成された方向とは反対の方向の、前記半導体基板に形成された第3トレンチと、
前記第3トレンチに、第3ゲート絶縁膜を介して埋め込まれた、第2トレンチエミッタと、
前記第1トレンチエミッタと前記第2トレンチエミッタとの間の前記第1主面に形成された第1ベース領域と、
前記第1トレンチエミッタ、前記第2トレンチエミッタ、前記第1トレンチゲート、前記第1ベース領域、および前記結晶欠陥領域を覆うように前記第1主面上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜を貫通し、前記第1主面に達する第1コンタクト部材と、
前記層間絶縁膜上に形成されたエミッタ電極と、
をさらに備え、
前記第1コンタクト部材は、前記第1トレンチエミッタ、前記第2トレンチエミッタ、前記第1ベース領域、および前記エミッタ電極と接続する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記結晶欠陥領域内の結晶欠陥の密度が最大となる箇所は、前記第1主面の近くに位置する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記結晶欠陥の密度の最大は、10個/cm2以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
平面視において、前記第1トレンチエミッタ、および前記第1トレンチゲートは第一方向に延在され、前記第一方向と交差する第二方向に並んで配置される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記層間絶縁膜を貫通し、前記第1主面に達するコンタクトホールと、
前記コンタクトホール内において、前記第1主面から前記第2主面に向かって形成され、平面視において、前記第1トレンチエミッタ、前記第1ベース領域、および前記第2トレンチエミッタを跨ぐように形成されたリセスをさらに備え、
前記第1コンタクト部材は、前記コンタクトホールと前記リセスとに埋め込まれて形成される、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項8】
平面視において、前記第2トレンチの前記第1トレンチが形成された方向とは反対の方向の、前記半導体基板に形成された第4トレンチと、
前記第4トレンチに、第4ゲート絶縁膜を介して埋め込まれた、第2トレンチゲートと、
前記第1トレンチゲートと前記第2トレンチゲートとの間の前記半導体基板に形成された第2ベース領域と、
前記第2ベース領域上の、前記第1主面に形成された、エミッタ領域と、
前記層間絶縁膜を貫通し、前記第1主面に達する第2コンタクト部材と、
をさらに備え、
前記第2コンタクト部材は、前記第2ベース領域および前記エミッタ領域と接続する、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1主面上に形成され、前記第1トレンチゲートおよび前記第2トレンチゲートと電気的に接続するゲート電極と、
前記第2主面上に形成されたコレクタ電極と、
をさらに備え、
前記エミッタ電極は前記第1トレンチエミッタ、前記第2トレンチエミッタ、前記第1ベース領域、前記第2ベース領域および、前記エミッタ領域と電気的に接続し、
前記エミッタ電極、前記ゲート電極、および前記コレクタ電極は、IGBTを構成する、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記結晶欠陥領域は、前記IGBTのオフ状態において、前記フローティング領域が空乏化しない領域に形成される、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
(a)第1主面、および前記第1主面と反対側の第2主面を有する半導体基板に、第2導電型の第1ホールバリア領域および前記第2導電型の第2ホールバリア領域を形成する工程、
(b)前記第1ホールバリア領域と前記第2ホールバリア領域との間の前記半導体基板に、前記第2導電型とは反対の第1導電型のフローティング領域を形成する工程、
(c)前記フローティング領域内の前記第1主面に近い位置に局所的に形成された、結晶欠陥を含む結晶欠陥領域を形成する工程、
(d)平面視において、前記フローティング領域を挟むように形成された第1トレンチおよび、第2トレンチを形成する工程、
(e)前記(d)工程後、前記第1トレンチの側面、および前記第2トレンチの側面に、それぞれ第1ゲート絶縁膜、および第2ゲート絶縁膜を形成する工程、
(f)前記(e)工程後、前記第1トレンチ内に前記第1ゲート絶縁膜を介して第1トレンチエミッタを形成し、前記第2トレンチ内に前記第2ゲート絶縁膜を介して第1トレンチゲートを形成する工程、
断面視において、前記フローティング領域は、前記第1トレンチの底面と、前記第2トレンチの底面とを覆うように形成され
平面視、および断面視において、前記結晶欠陥領域は、前記第1トレンチ、および前記第2トレンチから離間して設けられる、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記結晶欠陥領域は、前記フローティング領域内に位置し、前記第1トレンチ、および前記第2トレンチと接していない、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
(g)前記(f)工程後、前記第1ホールバリア領域上の前記第1主面に前記第2導電型の第1ベース領域を形成する工程、
(h)前記(g)工程後、前記第1トレンチエミッタ、前記第2トレンチエミッタ、前記第1トレンチゲート、および前記結晶欠陥領域を覆うように前記第1主面上に形成された層間絶縁膜を形成する工程、
(i)前記(h)工程後、前記第1ベース領域上の前記層間絶縁膜を貫通し、前記第1主面に達する第1コンタクトホールを形成する工程、
(j)前記(i)工程後、前記第1コンタクトホール内に第1コンタクト部材を形成する工程、
(k)前記(j)工程後、前記層間絶縁膜上にエミッタ電極を形成する工程、
をさらに備え、
前記(d)工程では、平面視において、前記第1ホールバリア領域を前記第1トレンチと挟むように形成された第3トレンチをさらに形成し、
前記(e)工程では、前記第3トレンチの側面に第3ゲート絶縁膜をさらに形成し、
前記(f)工程では、前記第3トレンチ内に前記第3ゲート絶縁膜を介して第2トレンチエミッタをさらに形成し、
前記第1コンタクト部材は、前記第1トレンチエミッタ、前記第1ベース領域、前記第2トレンチエミッタおよび前記エミッタ電極と接続される、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記(d)工程では、前記第2ホールバリア領域を前記第2トレンチと挟むように形成された第4トレンチをさらに形成し、
前記(e)工程では、前記第4トレンチ内に第4ゲート絶縁膜をさらに形成し、
前記(f)工程では、前記第4トレンチ内に前記第4ゲート絶縁膜を介して第2トレンチゲートをさらに形成し、
前記(g)工程では、前記第2ホールバリア領域上の前記第1主面に前記第2導電型の第2ベース領域をさらに形成し、
前記(i)工程では、前記第2ベース領域上の前記層間絶縁膜を貫通し前記第1主面に達する第2開口部をさらに形成し、
前記(j)工程では、前記第2開口部内に第2コンタクト部材をさらに形成し、
前記(h)工程では、前記層間絶縁膜は、さらに前記第2トレンチゲートを覆うように前記第1主面上に形成され、
(l)前記(g)工程後、前記(h)工程前に、前記第2ベース領域上の前記第1主面に前記第1導電型のエミッタ領域を形成する工程、
をさらに備え、
前記第2コンタクト部材は、前記第2ベース領域、前記エミッタ領域、および前記エミッタ電極と接続される、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記(i)工程は、
(i1)前記第1コンタクトホール内において、前記半導体基板に前記第1主面から前記第2主面に向かって形成され、平面視において、前記第1トレンチエミッタ、前記第1ベース領域、および前記第2トレンチエミッタを跨ぐように形成されたリセスをさらに備え、
前記第1コンタクト部材は、前記開口部と前記リセスとに埋め込まれて形成される、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記(b)工程は、イオン種をボロンとし、ドーズ量を6.0×1012/cm2から1.25×1013/cm2とし、注入エネルギーを300keVから1.25MeVとする、イオン注入によって行われ、
前記(c)工程は、
(c1)イオン種をボロンとし、ドーズ量を1.0×1013/cm2から2.75×1013/cm2とし、注入エネルギーを300keVから1.25MeVとする、イオン注入工程と、
(c2)処理温度を900℃とする、アニール工程と、によって行われる、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記結晶欠陥領域内の結晶欠陥の密度が最大となる箇所は、前記第1主面から前記第2主面に向う方向において、前記第1主面側に位置する、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記結晶欠陥領域の結晶欠陥の密度は、10個/cm2以下である、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
平面視において、前記第1トレンチエミッタ、前記第2トレンチエミッタ、前記第1トレンチゲート、および前記第2トレンチゲートは第一方向に延在し、前記第一方向と交差する第二方向に並んで配置される、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、トレンチゲートとP型フローティング領域とを有する絶縁ゲート型バイーポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー系半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ゲート型バイーポーラトランジスタ(IGBT)として、IE(Injection Enhancement)効果を利用可能としたIE型IGBTが開発されている。IE効果とは、IGBTがオン状態のときに正孔が排出されにくくすることでドリフト領域に蓄積される電荷の濃度を高めて、IGBTのオン電圧を下げる効果である。このようなIE型IGBTとして、GG型構造、GGEE型構造やGE-S型構造などがある(特開2019-029434号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-029434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GG型構造、GGEE型構造やGE-S型構造のIE型IGBTにおいて、ゲートトレンチとゲートトレンチとの間(GG型構造におけるG-G間)、または、ゲートトレンチとエミッタトレンチとの間(GGEE型構造およびGE-S型構造におけるG-E間)にP型フローティング領域を有する場合がある。ドリフト領域だけでなく、G-GおよびG-Eの各トレンチ間のP型フローティング領域内に蓄積された正孔の排出しやすさも、IGBTのスイッチング時間に影響を与える。スイッチング特性をさらに高めるためには、P型フローティング領域に対する正孔蓄積効果の制御が必要である。ゲートトレンチとは、トレンチ内に形成された電極がゲート電極に接続され、ゲート電極として機能するトレンチ領域である。また、エミッタトレンチとは、トレンチ内に形成された電極がエミッタ電極に接続され、エミッタ電極として機能するトレンチ領域である。
【0005】
本開示は、P型フローティング領域内の正孔蓄積を抑制して、絶縁ゲート型バーポーラトランジスタなどの半導体装置のスイッチング時間を改善するための技術を提供することにある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
一実施の形態に係る半導体装置は、
第1主面、および前記第1主面と反対側の第2主面を有する半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第1トレンチ、および第2トレンチと、
前記第1トレンチに、第1ゲート絶縁膜を介して埋め込まれた、第1トレンチエミッタと、
前記第2トレンチに、第2ゲート絶縁膜を介して埋め込まれた、第1トレンチゲートと、
前記第1トレンチエミッタと第1トレンチゲートとの間の前記半導体基板に形成された、フローティング領域と、
前記フローティング領域内の前記第1主面に近い位置に局所的に形成された、結晶欠陥を含む結晶欠陥領域と、を有する。
【0009】
断面視において、前記フローティング領域は、前記第1トレンチの底面と、前記第2トレンチの底面とを覆うように形成され、
平面視、および断面視において、前記結晶欠陥領域は、前記第1トレンチ、および前記第2トレンチから離間して設けられている。
【発明の効果】
【0010】
上記一実施の形態に係る半導体装置によれば、P型フローティング領域内の正孔蓄積を抑制して、スイッチング時間を改善することできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る半導体チップの全体の平面図である。
図2図2は、図1に示すセル領域RRの要部断面図である。
図3図3は、図1のセル領域RRの要部平面図である。
図4図4は、実施の形態に係るp型フローティング領域の製造方法を説明するフロー図である。
図5図5は、図1に示すセル領域RRの他の構成例による要部断面図である。
図6図6は、図2および図5の結晶欠陥領域の構成を説明する図である。
図7図7は、スイッチング特性を説明する図である。
図8図8は、実施の形態に係る結晶欠陥の評価結果を説明する図である。
図9図9は、実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図10図10は、図9に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図11図11は、図10に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図12図12は、図11に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図13図13は、図12に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図14図14は、図13に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図15図15は、図14に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図16図16は、図15に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図17図17は、図16に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図18図18は、図17に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図19図19は、図18に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図20図20は、図19に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図21図21は、図20に続く半導体装置の製造方法を説明する図である。
図22図22は、図1に示すセル領域RRの他の構成例による要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
また、実施の形態で用いる図面においては、図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0015】
本願明細書では、半導体の導電型がp型であるとは、正孔の濃度が電子の濃度よりも高く、正孔が主要な電荷キャリアであることを意味する。また、p型の半導体は、ボロンやガリウムなどの不純物が含まれた半導体の領域を意味する。本願明細書において、半導体の導電型がn型であるとは、電子の濃度が正孔の濃度よりも高く、電子が主要な電荷キャリアであることを意味する。また、n型の半導体は、例えばリンや砒素などの不純物が含まれた半導体の領域を意味する。
【0016】
また、本願明細書では、IGBTがオフ状態からオン状態に切り替わるスイッチング動作を、「ターンオン」と称し、IGBTがオン状態からオフ状態に切り替わるスイッチング動作を、「ターンオフ」と称する。なお、これらの切り替わりは一瞬のうちに生じるものではなく、IGBTが接続された外部回路も含めて、時間的な順序関係を持った複数の段階を含み得る。
【0017】
(実施の形態)
以下、図面を参照しながら実施の形態の半導体装置について詳細に説明する。本実施の形態の半導体装置100は、例えば、IGBTを備えた半導体チップCHPを有する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る半導体チップCHPの全体の平面図である。図1に示すように、半導体装置100の半導体チップCHPの大部分はエミッタ電位電極EEで覆われる。また、エミッタ電位電極EEの外周には、エミッタ電位電極EEを囲うようにゲート電位電極GEが形成される。エミッタ電位電極EEの中央部付近にある破線で囲まれた領域はエミッタパッドEPであり、ゲート電位電極GEの破線で囲まれた領域はゲートパッドGPである。半導体チップCHPの上面は保護膜PIQ(図1では不図示)によって覆われるが、エミッタパッドEPおよびゲートパッドGPの上面は保護膜PIQが除去される。エミッタパッドEPおよびゲートパッドGPにはワイヤボンディングまたはクリップなどの外部接続端子が接続され、半導体チップCHPは外部接続端子を通して他チップまたは配線基板などと電気的に接続する。
【0019】
(IE型IGBTを含む半導体装置の構成例1:GGEE型構造)
図2は、図1に示すセル領域RRの要部断面図である。図3は、図1のセル領域RRの要部平面図である。図4は、実施の形態に係るp型フローティング領域FLの製造方法を説明するフローチャートである。
【0020】
図2に示すように、IE型IGBTを含む半導体装置100は、GGEE型のセル構造を有している。GGEE型のセル構造は、半導体基板SUBの第1主面USに、トレンチゲートTG、トレンチエミッタTE、p型ベース領域BL、n型エミッタ領域EL、p型フローティング領域FL及びn型ホールバリア領域HBLを有する。IE型IGBT100は、更に、n型ホールバリア領域HBLの下部に配置されたn型ドリフト領域DLと、n型ドリフト領域DLの下部に配置されたn型フィールドストップ層FSLと、n型フィールドストップ層FSLの下部に配置されたp型コレクタ層CLと、p型コレクタ層CLの下部に配置されたコレクタ電極CEを有する。p型ベース領域BLとn型エミッタ領域ELには、層間絶縁膜ILに形成された接続孔CH1内のコンタクト部材またはプラグを介して、エミッタ電極EEが電気的に接続されている。尚、符号BCは、p型ベース領域BLの表面に形成された高濃度のp型ベースコンタクト層である。また、エミッタ電極EEは、層間絶縁膜ILに形成された接続孔CH2内のコンタクト部材またはプラグを介して、トレンチエミッタTE間に形成されたp型ベース領域BLと、トレンチエミッタTEとに電気的に接続されている。絶縁膜FPFがエミッタ電極EEの上側に形成されている。絶縁膜FPFは、例えばポリイミドを主要な成分とする有機絶縁膜などからなるファイナルパッシべーション膜である。なお、p型を第1導電型とした場合、n型は第1導電型と反対の第2導電型ということができる。
【0021】
p型フローティング領域FLには、四角の点線で示される局所的に結晶欠陥が形成された結晶欠陥領域CDRが形成されている。p型フローティング領域FLの深さが、例えば約6μmである場合、p型フローティング領域FLの表面から深さ方向に0~1μmの領域に結晶欠陥領域CDRが設けられる。ここで、表面からの深さ0~1μmの範囲内における結晶欠陥密度は、例えば、1×10個/cm程度である。IGBTのターンオフ時、エミッタ-ドレイン間に逆バイアスが掛かった際に、p型フローティング領域FLが空乏化される領域、すなわち、前記第1主面USからの深さが3μm~6μmのp型フローティング領域FLの領域の結晶欠陥密度は、半導体基板SUBの結晶欠陥密度と同程度である。
【0022】
IE型IGBT100は、p型フローティング領域FLをソース領域、p型ベース領域BLをドレイン領域、トレンチエミッタTEをゲート電極とする寄生Pチャネル型MOSFETを内包している。n型ホールバリア領域HBLは、寄生Pチャネル型MOSFETのチャネル形成領域を構成する。コレクタ電極CEは、p型コレクタ層CL、n型フィールドストップ層FSL、n型ドリフト領域DL、n型ホールバリア領域HBLを介して、寄生Pチャネル型MOSFETのバックゲートとして作用する。この寄生Pチャネル型MOSFETによって、IGBTのスイッチング時にp型フローティング領域FLに蓄積されたホールが、エミッタ電極EEに短い経路で排出されることにより、スイッチング時間を短縮することができる。また、p型フローティング領域FLの電位変動が抑制されるので、トレンチゲートTGの電位が安定化し、スイッチング時のスイッチング損失を抑制することができる。
【0023】
以下、IE型IGBT100の構成を説明する。
【0024】
まず、半導体基板SUBは、リン(P)等のn型不純物が導入された単結晶シリコンで形成されている。半導体基板SUBの不純物濃度はそのままドリフト領域DLの不純物濃度である。
【0025】
n型ホールバリア領域HBLは、半導体基板SUBの表面US側からn型不純物を導入することによって形成される。このn型不純物の導入は、例えばイオン種をリンとして例示することができる。また、n型ホールバリア領域HBLは、IE型IGBTの動作時に、正孔がp型ベース領域BLに達して排出されることを抑制し、正孔に対しバリアとして機能する。n型ホールバリア領域HBLの不純物濃度は、n型ドリフト領域DLにおけるn型の不純物濃度よりも高く、かつ、後述するn型エミッタ領域ELのn型の不純物濃度よりも低く設定される。
【0026】
p型フローティング領域FLは、半導体基板SUBの表面US側からp型不純物を導入することによって形成される。図4に示すように、p型フローティング領域FLは、第1イオン注入工程S1と、第2イオン注入工程S2と、アニール工程S3とを用いた、多段イオン注入方法を好適な製造方法として例示することができる。第1イオン注入工程S1と第2イオン注入工程S2とのイオン注入は、半導体基板SUBの表面USの同一の領域(所望の領域)に対して行われる。
【0027】
第1イオン注入工程S1は、例えば、イオン種(第1導電型のイオン種)をボロン(B)とし、ドーズ量を6.0×1012/cmから1.25×1013/cmとし、注入エネルギーを300keVから1.25MeVとして行われる。
【0028】
第2イオン注入工程S2は、例えば、イオン種をボロン(B)とし、ドーズ量を1.0×1013/cmから2.75×1013/cmとし、注入エネルギーを300keVから1.25MeVとして行われる。
【0029】
そして、アニール工程S3が第1イオン注入工程S1と第2イオン注入工程S2の後に行われる。アニール工程S3は、例えば、900℃、30sec(秒)程度の熱処理を行う。これにより、第1イオン注入工程S1と第2イオン注入工程S2により注入されたイオンが熱処理によって活性化されて、先に説明した結晶欠陥領域CDRが形成されたp型フローティング領域FLが形成される。また、アニール工程S3が1回とできるので、アニール工程削減によるコスト削減が可能である。
【0030】
なお、p型フローティング領域FLの厚さが不足する場合は、追加の熱処理によって、当該イオン注入された不純物(ボロン)を拡散させることにしてもよい。あるいは、当該イオン注入された不純物(ボロン)を拡散させる熱処理工程が、アニール工程S3を兼ねることにしてもよい。
【0031】
トレンチゲートTG及びトレンチエミッタTEは、半導体基板SUBの第1主面にエッチングによって形成されたトレンチ内に埋め込むように形成されたn型不純物ドープの多結晶シリコン層で構成されている。トレンチゲートTG及びトレンチエミッタTEは、ゲート絶縁膜GIによって、半導体基板SUBに形成された半導体層と電気的に分離されている。ゲート絶縁膜GIの厚さは、例えば0.10~0.12μmである。
【0032】
トレンチの深さは、例えば、3.0~3.5μmを好適な値として例示でき、トレンチの幅は、例えば、0.5~1.0μmを好適な値として例示することができる。また、トレンチは、平面視において、ストライプ状に形成され、トレンチゲートTG及びトレンチエミッタTEの各々は、ホールバリア領域HBLを挟むように互い対向するように配置される。レンチゲートTGとトレンチエミッタTEの間には、フローティング領域FLが配置される。p型フローティング領域FLの厚さ(または、深さ)は、例えば、5~6μmを好適な値として例示することができ、p型フローティング領域FLの底面部はトレンチの底面部を覆うように形成され、トレンチゲートTGの底面における電界集中を緩和する。
【0033】
p型ベース領域BLは、半導体基板SUBの表面US側からp型不純物を導入することによって形成される。このp型不純物は、例えば、ボロンである。p型ベース領域BLのイオン注入の加速エネルギーは低く設定されるため、イオン注入ダメージは小さく、結晶欠陥は残りにくい。
【0034】
p型ベース領域BLは、トレンチゲートTGの一側面にゲート絶縁膜GIを介して接するように、n型ホールバリア領域HBL上に形成される。また、p型ベース領域BLは、トレンチエミッタTEの一側面にゲート絶縁膜GIを介して接するように、n型ホールバリア領域HBL上に形成される。
【0035】
また、このp型ベース領域BLを形成するためのイオン注入は、n型ホールバリア領域HBL上だけでなく、p型フローティング領域FL上にも実施されてもよい。ただし、この場合は、p型フローティング領域FL表面の濃度が高くなるのみで、p型フローティング領域FLとしての機能に変化はない。n型ホールバリア領域HBL上のみにイオン注入する場合に比べて、微細なマスクパターンを必要としない利点がある。
【0036】
n型エミッタ領域ELは、p型ベース領域BLの表面にn型不純物を導入することによって形成される。このp型不純物は、例えば、砒素である。
【0037】
層間絶縁膜ILは、n型エミッタ領域EL、p型ベース領域BL、p型フローティング領域FLを覆うように半導体基板SUBの第1主面上に形成される。層間絶縁膜ILは、例えばCVD法等により形成された酸化シリコン膜やPSG(Phosphorus Silicate Glass)膜である。層間絶縁膜ILの厚さは、例えば0.6μm程度である。この層間絶縁膜ILの材料としては、酸化シリコン膜、PSG膜のほか、BPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass)膜、NSG(Non-doped Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜、またはこれらの複合膜等を好適なものとして例示することができる。
【0038】
層間絶縁膜ILには、接続孔CH1及びCH2が形成されている。接続孔CH1及びCH2は、異方性ドライエッチングで形成することができる。異方性ドライエッチングにより、接続孔CH1及びCH2から露出する半導体基板SUBの第1主面の一部がエッチングされ、p型ベース領域BLおよびトレンチエミッタTEの途中まで達する接続孔CH1及びCH2が形成される。
【0039】
p型ベースコンタクト層BCは、接続孔CH1及びCH2を通して、半導体基板SUBの表面にp型不純物を導入することにより形成することができる。このp型不純物は、例えば、ボロンである。
【0040】
エミッタ電極EEは、接続孔CH1及びCH2の内部を含む層間絶縁膜IL上に形成される。エミッタ電極EEは、スパッタリング法により、アルミニウム膜で形成することができる。あるいは、エミッタ電極EEは、例えば以下のような手順で、積層膜として形成してもよい。まず、例えばスパッタリング法により、半導体基板SUBの第1主面上に、バリアメタル膜としてチタンタングステン膜を形成する。チタンタングステン膜の厚さは、例えば0.2μm程度である。
【0041】
次に、シリサイドアニールを行った後、チタンタングステン膜上の全面に、接続孔CH1及びCH2の内部を埋め込むように、例えばスパッタリング法により、アルミニウム系金属膜を形成する。アルミニウム系金属膜は、例えば数%シリコンおよび/または銅が添加されたアルミニウム膜で構成され、厚さは、5μm程度である。接続孔CH1及びCH2の内部に埋め込まれたアルミニウム系金属膜はコンタクト部材またはプラグとなる。
【0042】
次に、レジストパターンをマスクとしたドライエッチング法により所定のパターンに加工することによって、チタンタングステン膜とアルミニウム系金属膜の積層膜からなるエミッタ電極EEを形成することができる。
【0043】
エミッタ電極EEは、n型エミッタ領域EL、p型ベースコンタクト層BC及びトレンチエミッタTEの夫々に電気的に接続される。
【0044】
次に、ファイナルパッシベーション膜FPFがエミッタ電極EE上および層間絶縁膜IL上に形成される。ファイナルパッシベーション膜FPFは、たとえば、ポリイミドを主要な成分とする有機膜であり、たとえば、厚さ10μm程度である。ファイナルパッシベーション膜FPFは、この有機膜をエミッタ電極EE上および層間絶縁膜IL上へ全面的に塗布し、通常のリソグラフィ技術を用いて、エミッタパッドEPの部分とゲートパッドGPの部分とを開口することによって形成される。
【0045】
ファイナルパッシベーション膜FPF形成後、半導体基板SUBの第1主面と反対側の第2主面(裏面)BSに対し、バックグラインディング処理を施すことによって、半導体基板SUBを薄型化する。バックグラインディング処理は、厚さ800μm程度の半導体基板SUBを、例えば30μm~200μmにする。
【0046】
次に、薄型化された半導体基板SUBの第2主面(裏面)BSに、イオン注入法により、N型不純物を選択的に導入することによって、n型フィールドストップ層FSLを形成する。このn型不純物は、例えば、リンである。
【0047】
次に、薄型化された半導体基板SUBの第2主面(裏面)BSに、イオン注入法により、P型不純物を導入することによって、p型コレクタ層CLを形成する。このp型不純物は、例えば、ボロンである。なお、N型不純物およびP型不純物を順次導入し、半導体基板SUBの第2主面(裏面)BSに対して、レーザアニールを実施して、n型フィールドストップ層FSL、および、p型コレクタ層CLを形成しても良い。
【0048】
次に、例えばスパッタリング法により、p型コレクタ層CLの表面に、コレクタ電極CEを形成する。コレクタ電極CEは、例えば、半導体基板SUBの第2主面(裏面)BSから順にアルミニウム(Al)層、チタン(Ti)層、ニッケル(Ni)層および金(Au)層等の積層膜により、形成することができる。コレクタ電位電極CEは、スパッタリング法またはCVD法によって形成された、窒化チタン膜などの金属膜としてもよい。
【0049】
上記製造プロセスにより、図2に示したIE型IGBTを製造することができる。ここで、デバイス構造をより具体的に例示するために、デバイス各部の主要寸法の一例を示す。
【0050】
一対のトレンチゲートTGのトレンチピッチ間隔は1.8μm~2.0μmであり、一対のトレンチエミッタTEのトレンチピッチ間隔は0.9μm~1.1μm、p型フローティング領域FLの幅WFL(図6参照)は5.5~7μmであり、p型フローティング領域FLの深さは、4.5~6μmである。
【0051】
図3は、セル形成領域を説明する図であり、図1の領域RRの模式的な拡大平面図である。図2は、図3のB-B線に沿う模式的な断面図である。
【0052】
セル形成領域RRは、活性セル領域RCaと、非活性領域Riaと、ホールコレクタセル領域RCcと、を含む。活性セル領域RCa、非活性領域Ria、ホールコレクタセル領域RCcのおのおのは、第1方向Yに沿う様に、ストライプ状に延在する様に設けられている。また、活性セル領域RCa、非活性領域Ria、ホールコレクタセル領域RCc、非活性領域Riaの4つがこの順で1つのレイアウト単位とされて、第1方向Yと直交する第2方向Xに繰り返し配置されている。
【0053】
活性セル領域RCaには、活性セルCaが形成される。図3では、活性セルCaとして、第1方向Yに、ストライプ状に形成された一対のトレンチゲートTGと、一対のトレンチゲートTGの間に設けられたn型エミッタ領域ELとが模式的に描かれている。ホールコレクタセル領域RCcには、ホールコレクタセルCcが形成される。ホールコレクタセルCcは、図2で説明したように、p型フローティング領域FLをソース領域、p型ベース領域BLをドレイン領域、n型ホールバリア領域HBLをチャネル形成領域、トレンチエミッタTEをゲート電極とする寄生Pチャネル型MOSFETである。図3では、ホールコレクタセルCcとして、第1方向Yに、ストライプ状に形成された一対のトレンチエミッタTEと、一対のトレンチエミッタTEの間を接続する接続用トレンチエミッタTEaとが模式的に描かれている。非活性領域Riaには、図3では、p型フローティング領域FLが模式的に描かれている。なお、図2のように接続孔CH2を一対のトレンチエミッタTEの両方に接するように形成する場合は、接続用トレンチエミッタTEaは不要とすることができる。接続孔CH2を一対のトレンチエミッタTEの一方にのみ接するように形成する場合、接続用トレンチエミッタTEaを設けるのが好ましい。ここで、トレンチゲートTGとトレンチエミッタTEとは、平面視において第1方向Yに延在し、且つ、平面視において第1方向Yと直交(または交差)する第2方向Xにおいて互いに隣接していると見なすことができる。
【0054】
(IE型IGBTを含む半導体装置の構成例2:GE型構造)
図5は、図1に示すセル領域RRの他の構成例による要部断面図である。図2には、GGEE型構造のセル構造が示されたが、図5は、GE型構造(または、EG型構造、GE-S型構造)のセル構造を説明する断面図である。
【0055】
図5のGE型構造のセル構造が図2のGGEE型構造のセル構造と異なる点は、トレンチエミッタTEとトレンチゲートTGが一対となっており、この一対のトレンチエミッタTEとトレンチゲートTGは複数形成されている点である。エミッタ電極EEは、一対のトレンチエミッタTEとトレンチゲートTGの間において、層間絶縁膜ILに形成された接続孔(コンタクトホール)CH3内のコンタクト部材またはプラグを介して、n型エミッタ領域EL、p型ベースコンタクト層BC及びトレンチエミッタTEの夫々に電気的に接続される。図5のGE型構造のセル構造の他の構成は、図2のGGEE型構造のセル構造の他の構成と同じであり、重複する説明は省略することとする。図2および図5のp型フローティング領域FLおよび結晶欠陥領域CDRは、同様な製造方法により形成され、同様な構成とされている。
【0056】
(IE型IGBTを含む半導体装置の構成例3:GG型構造)
図22は、図1に示すセル領域RRの他の構成例による要部断面図である。図22は、GG型構造のセル構造を説明する断面図である。図22のGG型構造のセル構造が図2のGGEE型構造のセル構造と異なる点は、図2のGGEE型構造のEE側の部分(1対のトレンチエミッタTE部分)がGG側の部分(1対のトレンチゲートTG部分)と同一の構造(p型ベース領域BLとn型エミッタ領域ELとp型ベースコンタクト層BCとコンタクトホールCH1が設けられている)とされている点である。図22のGG型構造のセル構造の他の構成は、図2のGGEE型構造のセル構造の他の構成と同じであり、重複する説明は省略することとする。図2図5および図22のp型フローティング領域FLおよび結晶欠陥領域CDRは、同様な製造方法により形成され、同様な構成とされている。
【0057】
(結晶欠陥領域CDRの構成例)
図6は、図2および図5の結晶欠陥領域CDRの構成を説明する図である。図6には、図2のGGEE型構造のセル構造または図5のGE型構造のセル構造における、トレンチゲートTGとトレンチエミッタTEとの間の断面図と、p型フローティング領域FLに形成された結晶欠陥領域CDRの深さ方向および横方向の結晶欠陥密度のグラフが示されている。ここでは、p型フローティング領域FLの深さが、例えば約6μmである場合について例示的に説明する。p型フローティング領域FLの表面から深さ方向に0~1μmの領域に、選択的に結晶欠陥が形成された結晶欠陥領域CDRが設けられる。
【0058】
図6の結晶欠陥領域CDRの深さ方向(dp)の説明において、例えば、深さ0はp型フローティング領域FLの上端部または結晶欠陥領域CDRの上端部を示し、深さd1は結晶欠陥領域CDRの下端部を示し、深さd2はオフ状態(定格電圧時、あるいは、より好ましくはアバランシェ状態)の空乏層DEPの上端(または、上部)を示し、深さd3はp型フローティング領域FLの下端部を示すものとする。深さd3から下は、ドリフト領域DLの領域である。
【0059】
空乏層DEPはコレクタの印加電圧が高いほど伸びるが、アバランシェ状態にまでなっていなくても、定格電圧まで印加された状態で結晶欠陥領域CDRが空乏層DEPに入っていなければ、リークの点では問題はない。
【0060】
p型フローティング領域FLの底部は、トレンチゲートおよびトレンチエミッタの底部より下側に位置している。p型フローティング領域FLは、p型フローティング領域FLの表面側に、結晶欠陥領域CDRを有する。結晶欠陥領域CDRは、p型フローティング領域FLの表面(0)と空乏層DEPの上端(d2)とに間において、p型フローティング領域FLの表面側に設けられている。また、結晶欠陥領域CDRは、p型フローティング領域FLの表面と空乏層DEPの上部との間であって、かつ、空乏層DEPの形成されない領域に形成されている。結晶欠陥領域CDRがオフ時においても空乏層DEPに含まれない領域に存在する構成とすることで、オフ時のリーク電流増大のような電気的特性の悪化を抑制することができる。
【0061】
結晶欠陥領域CDRの深さ方向(dp)の結晶欠陥密度CDD1は、次の特徴を有する。
(1)p型フローティング領域FLの上部、例えば、表面から深さd1(例えば1μm)の0~1μmの範囲内においてその結晶欠陥密度が相対的に高(つまり、0~1μmの範囲内に、結晶欠陥密度が最大となる箇所がある)、深さd1(1μm)より深いp型フローティング領域FLの領域ではその結晶欠陥密度が減少するように構成されている。
(2)p型フローティング領域FLの表面からの深さ0~1μmの範囲内における結晶欠陥の密度は、例えば、1×10個/cm以下である。
(3)p型フローティング領域FLにおいて、IGBTのターンオフ時のゲート電圧印加時(アバランシェ時)に空乏層DEPとなる深さの領域、たとえば、d2(例えば3μm)~d3(例えば6μm)程度の範囲とされる深さの領域は、元の半導体結晶基板の欠陥密度と同程度の相対的に低い欠陥密度とされている。
【0062】
結晶欠陥領域CDRの横方向(wd)の結晶欠陥密度CDD2は、次の特徴を有する。
(4)結晶欠陥が形成されているのは(つまり、結晶欠陥領域CDRの形成領域の横方向の幅は)、p型フローティング領域FLの形成幅WFLの内部のみである。
(5)結晶欠陥領域CDRは、トレンチ(TE、TG)に接せず、あるいはゲート絶縁膜GIを貫通しないように形成されている。 すなわち、トレンチ(TE、TG)の側面やゲート絶縁膜GIには結晶欠陥が存在しないことが好ましい。この構成により、ゲート絶縁膜GIの信頼性低下など電気的特性の悪化を抑制することができる。結晶欠陥の数が増加するほど、結晶欠陥がゲート絶縁膜GIを貫通する可能性が高まるので、結晶欠陥密度は1×10(個/cm2)以下に抑えるのが好ましい。
(6)結晶欠陥領域CDRは、トレンチゲートTGおよびトレンチエミッタTEと接することなく、離間して設けられている。トレンチ(TE,TG)と結晶欠陥領域CDRとの間の距離w1は、例えば、0.1μm~0.3μmとされ、より好ましくは、0.2μm程度とされる。
【0063】
(スイッチング特性の向上の説明:結晶欠陥領域CDRの効果)
図7は、スイッチング特性を説明する図である。図7の(A)は、結晶欠陥領域CDRの形成されていない場合において、オフ状態からIGBTのゲート電極へのゲートバイアス印加開始時の正孔(ホールh)の状態を示している。ゲートバイアス印加に伴って、p型フローティング領域FL内の電位が上昇し、ホールhが誘起されるが、コレクタに高電圧が印加されているため、p型フローティング領域FLをソース領域、p型ベース領域BLをドレイン領域、トレンチエミッタTEをゲート電極とする寄生Pチャネル型MOSFETは基板バイアス効果によってオフ状態となっているので、誘起されたホールhが逃げられず、p型フローティング領域FL内に蓄積する。
【0064】
図7の(B1)は、結晶欠陥領域CDRの形成されている場合において、IGBTのゲート電極へのゲートバイアス印加開始時の正孔(ホールh)の状態を示しており、蓄積するホールhの一部は結晶欠陥(再結合中心)に捕獲される。
【0065】
図7の(B2)は、結晶欠陥領域CDRの形成されている場合において、IGBTのターンオフが進行し、コレクタ電圧が低下した後の正孔(ホールh)の状態を示している。p型フローティング領域FLをソース領域、p型ベース領域BLをドレイン領域、トレンチエミッタTEをゲート電極とする寄生Pチャネル型MOSFETが作動し始め、ホールhの排出が始まる。
【0066】
つまり、ゲートバイアス印加直後(ターンオフが進行してコレクタ電圧が低下する前)は寄生Pチャネル型MOSFETでのホールhの排出ができず、p型フローティング領域FL内にホールhが蓄積してしまう。ホールhを再結合させる場として結晶欠陥領域CDR内の結晶欠陥が利用されている。その後、しだいに、NW(n型ホールバリア領域HBL)にかかるバイアスが弱まり、寄生Pチャネル型MOSFETが作動し始める。そのため、トレンチエミッタTEの付近からエミッタ電極EE側へホールhが排出されることになる。
【0067】
なお、図22のGG型構造のセル構造においては、寄生Pチャネル型MOSFETを有しないため、エミッタ電極EE側へホールhを積極的に排出することができず、拡散によってホールhが放出されるのを待つ必要があるが、本構造にも結晶欠陥領域CDR内の結晶欠陥が利用されているため、ホールhの蓄積による影響を低減することが可能である。尚、図22に示したGG型構造は、図21に示したGGEE構造と比較してスイッチングスピードは劣るが、1対のトレンチエミッタTE部分からホールhが抜けることがないので、ドリフト領域内に効率的にホールhを蓄積することができるため、VCE(sat)を下げることができる利点がある。また、トレンチゲートTGの密度が高いので、オン状態における飽和電流を大きくすることができる利点がある。
【0068】
トレンチゲートTGとトレンチエミッタTEとの間のp型フローティング領域FL内に蓄積された正孔(h)の排出しやすさは、IGBTのスイッチング時間に影響を与える。スイッチング特性をさらに高めるためには、p型フローティング領域FLにおける正孔蓄積効果を抑制する必要がある。結晶欠陥領域CDR内の結晶欠陥を利用して、正孔蓄積効果を抑制させる。これにより、p型フローティング領域FL内に蓄積された正孔(h)の排出しやすさを向上させることができる。その結果、ターンオン特性の改善により、IGBTのスイッチングを高速化することができる。
【0069】
一方、オン状態においては、ドリフト領域内に正孔を蓄積するが、この際にp型フローティング領域FL内に再結合中心が必要以上に多くあると、ドリフト領域内に蓄積すべき正孔が濃度勾配に従ってp型フローティング領域FL内に拡散し、当該再結合中心で再結合することになるので、ドリフト領域内での正孔蓄積効果が減少し、VCE(sat)の増大のような、電気的特性の低下を招く。この観点からも、p型フローティング領域FL内の結晶欠陥の密度は、多くても、1×10(個/cm2)程度に抑えるのが好ましい。
【0070】
(結晶欠陥の評価結果の説明)
図8は、実施の形態に係る結晶欠陥の評価結果を説明する図である。具体的には、図8には、p型フローティング領域FLの深さ方向の結晶欠陥の評価結果を示している。p型フローティング領域FLは、図4で説明した製造方法により形成されたものである。ここで、結晶欠陥の評価方法は、「日本工業規格による規格(JIS H 0609)」を使用した。「JIS H 0609では、エッチング液として、JIS-G液を利用する。JIS-G液は、水126ml、70%硝酸254ml、50%フッ酸20mlの成分とされる。JIS-G液によるSiのエッチングレートは、1μm/min程度である。
【0071】
図8に示す結晶欠陥の評価結果Evrでは、p型フローティング領域FLをJIS-G液を用いてエッチングして、結晶欠陥を調べている。JIS-G液によるSiのエッチングレートと累積エッチング時間Tteから、おおよそのエッチング量(エッチング深さ:半導体基板表面からの深さds)を計算している。結晶欠陥の評価結果Evrにおいて、結晶欠陥がある場合は、斜めの黒い筋となって観察される。観察される黒い筋は、表面から当該エッチング深さまでに存在する結晶欠陥の合計となるので、エッチングと観察を繰り返すことにより、結晶欠陥を生じている深さを見積もることができる。
【0072】
図8の評価結果Evrの例では、累積エッチング時間Tteが、1min(半導体基板表面からの深さds:1μm程度)、2min(半導体基板表面からの深さds:2μm程度)、3min(半導体基板表面からdsの深さ:3μm程度)の3つについて、以下に示すような結晶欠陥の評価結果Evrが示されている。(1)累積エッチング時間Tteが1minの評価結果Evrは、表面から1μm程度の間で、僅かに結晶欠陥が形成されていることを示している。(2)累積エッチング時間Tteが2minの評価結果Evrは、1μm~2μm程度の間は、新たな結晶欠陥が形成されていないことを示している。(3)累積エッチング時間Tteが3minの評価結果Evrは、2μm~3μmの間では、新たな結晶欠陥が形成されていないことを示している。
【0073】
3min以降は、新たな結晶欠陥形成が認められないことから、p型フローティング領域FLの浅い領域にだけに選択的に結晶欠陥を形成できていることを示唆している。累積エッチング時間が1minの評価結果に基づいた計算により、結晶欠陥密度(CCD1)は1×10~1×10(個/cm2)であることが確かめられた。
つまり、図4で説明した製造方法により形成されたp型フローティング領域FLでは、p型フローティング領域FLの浅い領域(表面から0~1μmの領域)に、選択的に結晶欠陥(結晶欠陥領域CDR)を形成できることがわかった。これにより、上記で説明された効果を得ることができる。
【0074】
(IE型IGBTを含む半導体装置の製造方法)
つぎに、図9図21を参照して、IE型IGBTを含む半導体装置の製造方法を説明する。ここでは、例示的に、図2で説明したGGEE型構造のセル構造を有するIE型IGBTの製造方法を説明する。
【0075】
図9に示すように、半導体基板SUBにn型のドリフト領域DLを形成する。ドリフト領域DLは、予めn型の不純物が導入された半導体基板SUBを用意し、そのn型の半導体基板SUBをn型のドリフト領域DLとして用いることで形成される、または、p型の半導体基板SUBを用意し、そのp型の半導体基板SUB上にエピタキシャル法によってn型のドリフト領域DLを形成する。なお、本実施の形態では、ドリフト領域DLを半導体基板SUBとして説明することもある。
【0076】
次に、図10に示すように、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、ドリフト領域DLの表面に、n型のホールバリア領域HBLを形成する。ホールバリア領域HBLは、ドリフト領域DLよりも高い不純物濃度を有する。ホールバリア領域HBLを形成するための不純物は、例えばリン(P)であり、また、このイオン注入は、複数回に分けて行われてもよい。
【0077】
次に、図11に示すように、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、ドリフト領域DLの表面に、p型のフローティング領域FLを形成するためのボロン(B)のイオンを注入する。半導体基板SUBの表面USの所望の領域にマスクMK1を選択的に形成する。マスクMK1は、ホールバリア領域HBLの形成領域およびその両側を覆うように、かつ、p型のフローティング領域FLの形成領域にイオン注入が行えるように、半導体基板SUBの表面USに選択的に形成されている。p型のフローティング領域FLの形成するためのイオン注入は、図4で説明した、第1イオン注入工程S1と、第2イオン注入工程S2と、を用いて、半導体基板SUBの表面US側からドリフト領域DLの内部にボロン(B)を2回に分けて導入する。ここで、第1イオン注入工程S1は、例えば、イオン種をボロン(B)とし、ドーズ量を6.0×1012/cmから1.25×1013/cmとし、注入エネルギーを300keVから1.25MeVとして行われる。第2イオン注入工程S2は、例えば、イオン種をボロン(B)とし、ドーズ量を1.0×1013/cmから2.75×1013/cmとし、注入エネルギーを300keVから1.25MeVとして行われる。
【0078】
次に、図12に示すように、図4で説明したアニール工程を行って、p型のフローティング領域FLを形成する。ここで、p型のフローティング領域FLの表面US側には、結晶欠陥領域CDRが形成されることになる。
【0079】
なお、p型フローティング領域FLの厚さ(底部の存在する深さ)が不足する場合は、この後(直後に限らない)に追加の熱処理によって、ボロンを拡散させることにしてもよい。また、本工程においては上記アニールを行わず、ボロンを拡散させる当該熱処理が上記アニールを兼ねることにしてもよい。
【0080】
次に、図13に示すように、半導体基板SUB上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、例えば酸化シリコン膜のような絶縁膜を形成し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いて、絶縁膜をパターニングすることでマスクMK2を形成する。マスクMK2は、半導体基板SUBに第1トレンチT1(TG用トレンチ)および第2トレンチT2(TE用トレンチ)を形成するためのマスクに利用するので、半導体基板SUBの表面の第1トレンチT1および第2トレンチT2の形成領域が露出するように、半導体基板SUBの表面に選択的に形成されている。
【0081】
次に、図14に示すように、トレンチ形成工程が実施される。パターニングされたマスクMK2をハードマスクとして、半導体基板SUBをエッチングすることで、半導体基板SUBに第1トレンチT1および第2トレンチT2を形成する。その後、ウェットエッチング処理などによって、マスクMK2を除去する。
【0082】
ここで、必要に応じて、p型フローティング領域FLの厚さを所望の値とするべく、ボロンを拡散させる、熱処理を行ってもよい。トレンチ形成工程よりも後で拡散させることで、一対のトレンチの間隔が狭く、当該間隔の領域にp型フローティング領域FLが形成し難い場合であっても、当該拡散工程を使用することができる。
【0083】
なお、ボロンを拡散させる当該熱処理は、必ずしもこの工程フローに従う必要はなく、トレンチ形成工程より後であれば、上記の利点が得られる。たとえば、第1トレンチT1および第2トレンチT2の内部の導電性膜FGを形成した後に当該熱処理を行うことにしてもよく、さらには、両方の工程に分けて実施することにしてもよい。このようにすることで、トレンチ形成工程でのダメージ除去のための犠牲酸化や、本明細書には特に記載しないがゲート保護ダイオードを内蔵させるための熱処理のような、他の熱処理工程がある場合には、それらを兼ねることができるので、工程数を削減することができる。
【0084】
次に、図15に示すように、半導体基板SUBに対して熱酸化処理を行うことで、トレンチT1の内壁、トレンチT2の内壁、フローティング領域FL上面、および、ホールバリア領域HBLの上面に、例えば酸化シリコン膜からなる絶縁膜を形成する。トレンチT1の内壁、トレンチT2の内壁に形成される絶縁膜は、ゲート絶縁膜GIとされる。ゲート絶縁膜GIの厚さは、例えば100nmである。
【0085】
次に、図16に示すように、トレンチT1の内部およびトレンチT2の内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜からなる導電性膜FGを形成する。トレンチT1の内部の導電性膜FGがトレンチゲートTGのゲート電位電極(第1電極ともいう)となる。トレンチT2の内部の導電性膜FGがトレンチエミッタTEのエミッタ電位電極(第2電極とも言う)となる。
つぎに、図17に示すように、ベース領域(チャネル領域とも言う)BLおよびエミッタ領域(ソース領域とも言う)ELの形成工程を実施する。まず、ベース領域BLの形成工程を実施する。適宜、たとえばドライエッチング法やウェットエッチング法によって、半導体基板SUBの表面に露出したゲート絶縁膜GIを除去または薄化した後、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いることで、フローティング領域FLおよびホールバリア領域HBLの各々の表面に、p型のベース領域BLを形成する。ベース領域BLは、フローティング領域FLよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。ベース領域BLを形成するための不純物は、例えばボロン(B)である。
【0086】
次に、エミッタ領域ELの形成工程を実施する。フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いることで、アクティブセル領域のベース領域BLの表面に、n型のエミッタ領域ELを形成する。エミッタ領域ELは、ホールバリア領域HBLよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。この時、ホールコレクタセル領域のベース領域BLには、エミッタ領域ELを形成しない。エミッタ領域ELを形成するための不純物は、例えば砒素(As)である。
【0087】
つぎに、図18に示すように、層間絶縁膜ILの形成工程を実施する。まず、フローティング領域FL上面の絶縁膜、ホールバリア領域HBLの上面の絶縁膜、および、トレンチゲートTGおよびトレンチエミッタTEの上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜のような層間絶縁膜ILを形成する。
【0088】
次に、図19に示すように、コンタクトホール(接続孔)CH1、コンタクトホール(接続孔)CH2およびベースコンタクト層BCの形成工程を実行する。
【0089】
フォトリソグラフィ法およびドライエッチング処理、例えば、異方性ドライエッチング)を用いることで、アクティブセル領域において、層間絶縁膜ILおよびエミッタ領域ELを貫通し、且つ、ベース領域BLに達するコンタクトホールCH1を形成する。また、ホールコレクタセル領域において、層間絶縁膜ILを貫通し、トレンチエミッタTEとベース領域BLとを跨ぐように、半導体基板の第1主面USから第2主面(裏面)BSに向かって後退したリセスを含む、コンタクトホールCH2を形成する。
【0090】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いることで、コンタクトホールCH1およびコンタクトホールCH2の各々の下部のベース領域BL内に、p型のベースコンタクト層BCを形成する。ベースコンタクト層BCは、ベース領域BLよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。また、アクティブセル領域のベースコンタクト層BCは、n型のエミッタ領域ELに接しないように形成される。ベースコンタクト層BCを形成するための不純物は、例えばボロンであり、その後、各不純物領域を活性化させるための熱処理が行われる。なお、必要に応じて、これまでのイオン注入工程の一部または全部の後(直後に限らない)に、それぞれ不純物領域を活性化させ、所定の深さまで拡散させるための熱処理を行うことにしてもよい。
【0091】
次に、図20に示すように、エミッタ電位電極EEおよびファイナルパッシベーション膜FPFの形成工程を実施する。
【0092】
まず、コンタクトホールCH1およびコンタクトホールCH2を埋め込むように、絶縁膜IL上に、例えばスパッタリング法によって、例えばアルミニウム膜を形成する。それぞれのコンタクトホールCH1、CH2に埋め込まれたアルミニウム膜はコンタクト部材となる。その後、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング処理を用いて、このアルミニウム膜をパターニングすることで、エミッタ電位電極EEが形成される。同時に、図1に示されるゲート電位電極GEも、上記のアルミニウム膜をパターニングすることで形成される。また、上記アルミニウム膜の形成前に、例えば窒化チタン膜またはチタンタングステン膜からなるバリアメタル膜を形成し、このバリアメタル膜上に、上記アルミニウム膜を形成してもよい。すなわち、エミッタ電位電極EEなどを、バリアメタル膜とアルミニウム膜との積層膜としてもよい。
【0093】
次に、ファイナルパッシベーション膜FPFの形成工程を実施する。ファイナルパッシベーション膜FPFがエミッタ電極EEの上側および層間絶縁膜ILの上側に形成される。ファイナルパッシベーション膜FPFは、たとえば、ポリイミドを主要な成分とする有機膜であり、たとえば、厚さ10μm程度である。ファイナルパッシベーション膜FPFは、この有機膜をエミッタ電極EEの上側および層間絶縁膜ILの上側へ全面的に塗布し、通常のリソグラフィによって、エミッタパッドEPの部分とゲートパッドGPの部分とを開口することによって形成される。
【0094】
次に、図21に示すように、半導体基板SUBの第2主面(裏面)BS側に、フィールドストップ層FSL、コレクタ層CLおよびコレクタ電位電極CEを形成する。
【0095】
まず、必要に応じて、半導体基板SUBの第2主面(裏面)に対して研磨処理を実施し、半導体基板SUBの厚さを薄くする。次に、半導体基板SUBの第2主面(裏面)側からイオン注入を行う。このイオン注入により、n型のフィールドストップ領域FSLおよびp型のコレクタ領域CLが形成される。フィールドストップ領域FSLは、ドリフト領域DLよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。フィールドストップ領域FSLを形成するための不純物は、例えばリン(P)である。コレクタ領域PCを形成するための不純物は、例えばボロン(B)である。
【0096】
次に、半導体基板SUBの第2主面(裏面)側で露出しているコレクタ領域CLの表面に、例えばスパッタリング法またはCVD法によって、例えば半導体基板SUBの側から順にアルミニウム(Al)層、チタン(Ti)層、ニッケル(Ni)層および金(Au)層等の積層膜からなるコレクタ電位電極CEを形成する。
【0097】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0098】
100 半導体装置
CHP 半導体チップ
FL フローティング領域
TG トレンチゲート
TE トレンチエミッタ
CDR 結晶欠陥領域
CE コレクタ電位電極
CH1、CH2 コンタクトホール
EE エミッタ電位電極
EP エミッタパッド
GE ゲート電位電極
GI ゲート絶縁膜
GP ゲートパッド
IL 絶縁膜
EL エミッタ領域
HBL ホールバリア領域
FSL フィールドストップ層
DL ドリフト領域
BL ベース領域
CL コレクタ層
BC ベースコンタクト層
SUB 半導体基板
図1
図2
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図5
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