(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040119
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】導電性組成物
(51)【国際特許分類】
H01B 1/24 20060101AFI20240315BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20240315BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20240315BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240315BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20240315BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240315BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H01B1/24 A
C08L101/12
C08L101/02
C08L65/00
C08L79/00 A
C08K3/04
H01B5/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142437
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2022144678
(32)【優先日】2022-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竜治
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AA032
4J002BB061
4J002BC031
4J002BC041
4J002BC061
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4J002GQ02
5G301DA18
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5G307FC10
(57)【要約】
【課題】導電性と透明性を両立した導電性塗膜を形成するための、導電性組成物を提供する。
【解決手段】導電性高分子、カーボン材料、およびバインダーを含有し、全固形分に対する導電性高分子とカーボン材料の合計固形分の割合が1%以下である導電性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子、カーボン材料、およびバインダーを含有し、全固形分に対する導電性高分子とカーボン材料の合計固形分の割合が1%以下である導電性組成物。
【請求項2】
前記導電性高分子が、ポリチオフェン、ポリピロール、およびポリアニリンからなる群より選択される1以上である、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記カーボン材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびフラーレンからなる群より選択される1以上である、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記バインダーが、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、およびフッ素系樹脂からなる群より選択される1以上である、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記導電性高分子の平均粒子径が0.1~1000nmである、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記導電性高分子の導電率が0.05~2000S/cmである、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記カーボン材料の導電率が0.5~5000S/cmである、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項8】
固形分率が1~50%である、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項9】
膜厚0.2~10μmにおいて、表面抵抗率が1.0×103~9.9×1013Ω/□であり、全光線透過率が80~99.9%であり、明度が70~99.9である、請求項1に記載の導電性組成物からなる導電性塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、および導電性塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は導電性に優れた材料である。導電性高分子を含む導電性塗膜は、電子機器のタッチパネルなどの導電性が求められる用途に広く展開されている。
【0003】
導電性高分子は着色を有する傾向があるため、薄膜の透明導電性塗膜への応用は進んでいるものの、厚膜にすると塗膜の透明度が低下する傾向がある。また、透明度を向上させるために導電性高分子の配合量を低減すると、塗膜中の導電パスの形成が困難となり、導電性が損なわれる傾向があった。
【0004】
特許文献1は、織物基材上に、カーボンナノチューブと導電性高分子を含む塗膜を形成し、産業資材用膜材として使用することを開示している。塗膜中の導電性高分子の配合量が多いため、塗膜の透明性は十分なものとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、導電性と透明性を両立した導電性塗膜を形成するための、導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、導電性高分子およびカーボン材料を含む導電性組成物が、導電性と透明性を両立した導電性塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、導電性高分子、カーボン材料、およびバインダーを含有し、全固形分に対する導電性高分子とカーボン材料の合計固形分の割合が1%以下である導電性組成物に関する。
【0009】
前記導電性高分子が、ポリチオフェン、ポリピロール、およびポリアニリンからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0010】
前記カーボン材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびフラーレンからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0011】
前記バインダーが、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、およびフッ素系樹脂からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0012】
前記導電性高分子の平均粒子径が0.1~1000nmであることが好ましい。
【0013】
前記導電性高分子の導電率が0.05~2000S/cmであることが好ましい。
【0014】
前記カーボン材料の導電率が0.5~5000S/cmであることが好ましい。
【0015】
固形分率が1~50%であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、膜厚0.2~10μmにおいて、表面抵抗率が1.0×103~9.9×1013Ω/□であり、全光線透過率が80~99.9%であり、明度が70~99.9である、前記導電性組成物からなる導電性塗膜に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性組成物は、導電性と透明性を両立した導電性塗膜を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<導電性組成物>>
本発明の導電性組成物は、導電性高分子、カーボン材料、およびバインダーを含有し、全固形分に対する導電性高分子とカーボン材料の合計固形分の割合が1%以下であることを特徴とする。
【0019】
<導電性高分子>
導電性高分子としては従来公知のものを用いることができ、具体例としてはポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、これらの誘導体、及び、これらとドーパントとの複合体等が挙げられる。
【0020】
導電性高分子は、分子内にチオフェン環を少なくとも1つ含む導電性高分子が好ましい。その理由は、チオフェン環を分子内に含むことで導電性が高い分子ができやすいからである。導電性高分子としては、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4-二置換チオフェン)と、ドーパントであるポリ陰イオンとの複合体がより好ましい。その理由は、導電性や化学的安定性に極めて優れているからである。また、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4-二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体を含有する場合、低温かつ短時間で帯電防止層を形成でき、生産性にも優れる。
【0021】
ポリ(3,4-二置換チオフェン)としては、ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)としては、以下の式(I):
【0022】
【0023】
で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンが好ましい。ここで、R1及びR2は相互に独立して水素原子又はC1-4のアルキル基を表すか、又は、R1及びR2が結合している場合にはC1-4のアルキレン基を表す。C1-4のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。また、R1及びR2が結合している場合、C1-4のアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-エチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基等が挙げられる。これらの中では、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基が好ましく、1,2-エチレン基がより好ましい。C1-4のアルキル基、及び、C1-4のアルキレン基は、その水素の一部が置換されていてもよい。C1-4のアルキレン基を有するポリチオフェンとしては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
【0024】
ドーパントとしてはポリ陰イオンを用いることが好ましい。ポリ陰イオンは、ポリチオフェン(誘導体)とイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェン(誘導体)を水中に安定に分散させることができる。ポリ陰イオンとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類及びスルホン酸ポリマー類はまた、ビニルカルボン酸類及びビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。これらの中では、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0025】
ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が1000~2000000であることが好ましく、2000~500000であることがより好ましい。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、ポリチオフェン系導電性高分子の水に対する分散安定性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
【0026】
導電性高分子として、ポリアニリンを使用することもできる。ポリアニリンは、自己ドープされたものや、ドーパントとの複合体が好ましい。自己ドープされたアニリンとしては、自己ドープされたポリアニリンスルホン酸が挙げられる。ドーパントとしては、トルエンスルホン酸や酢酸などの有機酸、塩酸や硫酸などの無機酸が挙げられる。
【0027】
導電性高分子は、透明性及び導電性が優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体であることが特に好ましい。
【0028】
導電性高分子の平均粒子径は、0.1~1000nmが好ましく、0.5~100nmがより好ましく、1~10nmがさらに好ましく、1~5nmが特に好ましい。上記範囲内では、導電性塗膜が導電性に優れる傾向がある。なお、本発明における平均粒子径は、動的光散乱法により測定したときの累積体積50%における粒径(Dn50)である。
【0029】
導電性高分子の導電率は、0.05~2000S/cmが好ましく、0.5~2000S/cmがより好ましく、100~2000S/cmがさらに好ましく、200~2000S/cmがさらにより好ましい。上記範囲内では、導電性塗膜が導電性に優れる傾向がある。
【0030】
<カーボン材料>
カーボン材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0031】
カーボンナノチューブの種類は特に限定されず、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長法(CVD法)等の各種公知技術により製造されたカーボンナノチューブを適宜選択して用いることができる。単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブおよびこれらを任意の割合で含む混合物のいずれも使用可能である。導電性に優れる点から、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0032】
カーボンナノチューブの長さは、0.1~2000μmが好ましく、0.5~1000μmがより好ましく、0.5~500μmがさらに好ましい。2000μmを超えると、カーボンナノチューブの凝集、切断、破壊が生じる傾向がある。0.1μm未満では、導電経路の形成が不十分となる傾向がある。
【0033】
カーボンナノチューブの直径は、0.1~50nmが好ましく、0.3~20nmがより好ましく、0.5~10nmがさらに好ましい。50nmを超えると、導電性が低下する傾向がある。0.1nm未満のカーボンナノチューブは製造することが困難である。また、カーボンナノチューブは一次粒子の凝集体であってもよく、その場合、凝集体の平均粒子径は50~2000nmが好ましく、100~1500nmがより好ましい。
【0034】
グラフェンは、平均粒子径が50~4000nmが好ましく、100~2000nmがより好ましい。
【0035】
カーボンナノ材料の導電率は、0.5~5000S/cmが好ましく、1~2000S/cmがより好ましい。上記範囲内では、導電性塗膜が導電性に優れる傾向がある。
【0036】
導電性組成物の全固形分に対する導電性高分子とカーボン材料の合計固形分の割合は、1%以下であるが、0.05~0.75%が好ましく、0.1~0.5%がより好ましい。導電性組成物における導電性高分子とカーボン材料の割合をこの範囲とすることにより、導電性と透明性を両立した導電性塗膜を形成できる。
【0037】
導電性組成物の全固形分に対する導電性高分子とカーボン材料の合計固形分の割合が1%以下である限り、導電性高分子とカーボン材料の配合量は特に限定されないが、導電性高分子の固形分100重量部に対し、カーボン材料の固形分が0.1~10000重量部であることが好ましく、0.1~1000重量部であることがより好ましく、0.5~100重量部であることがさらに好ましい。
【0038】
導電性組成物の全固形分に対する導電性高分子の固形分の割合は0.01~0.99%が好ましく、0.05~0.99%がより好ましい。導電性組成物の全固形分に対するカーボン材料の固形分の割合は0.001~0.99%が好ましく、0.01~0.95%がより好ましい。
【0039】
カーボン材料は、あらかじめ分散されたものを用いることが好ましい。カーボン材料の分散方法としては、例えば、分散剤の存在下、カーボン材料を溶媒中で分散処理する方法が挙げられる。分散処理を行う際の溶媒としては、導電性組成物に任意で含まれる溶媒として後述する物質を使用することができるが、水が好ましい。
【0040】
カーボン材料の分散に用いる分散剤としては、例えば、陽イオン性分散剤、陰イオン性分散剤、両イオン性分散剤、非イオン性分散剤、高分子系分散剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、分散剤としては、HLB値が12以上のものが好ましく、14以上のものがより好ましい。なお、本明細書におけるHLB値は、以下の数式により算出することができる:
グリフィン法:HLB値=[(親水部分の分子量)÷(全体の分子量)]×20
【0041】
陽イオン性分散剤としては、例えば、ステアリルアミンアセテート等の炭素数8~22のアルキル基を有するアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0042】
陰イオン性分散剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の炭素数8~18のアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の炭素数8~18のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、β―ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0043】
両イオン性分散剤としては、例えば、炭素数8~22のアルキル基を有するアルキルベタイン、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルアミンオキサイドなどが挙げられる。
【0044】
非イオン性分散剤としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキルフェノールポリエチレングリコールエーテル、炭素数2~4のアルキレン基を有するポリカルボキシレートエーテル等のポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0045】
高分子系分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース、炭素数の1~8のアルキル基を有するヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、デンプン、ゼラチン、アクリル系コポリマー、ポリカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。高分子スルホン酸としては、ポリスチレンスルホン酸又はその塩、スルホン酸を有するフッ素系ポリマーが挙げられるが、スルホン酸を有するフッ素系ポリマーが好ましく、パーフルオルスルホン酸ポリマー、部分フッ素化スルホン酸ポリマーがより好ましい。具体例としては、ナフィオン(NAFION(登録商標)、デュポン製)、アクイヴィオン(AQUIVION(登録商標)、Solvay Specialty Polymers製)が挙げられる。
【0046】
分散剤の使用量は、分散性と透明性の両立の点から、カーボン材料の1重量部に対して0.01~100重量部であることが好ましく、0.2~40重量部であることがより好ましく、0.5~10重量部であることがさらに好ましい。
【0047】
カーボン材料の分散は、例えば、振動ミル、遊星ミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ジェットミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置等を用いて行うことができる。高い導電性と透明性を発揮し得る導電性組成物を得るために、超音波ホモジナイザー又は高圧ホモジナイザーのいずれか少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0048】
カーボン材料の分散時のpH条件は0.5~9.0が好ましく、1.5~8.0がより好ましい。温度条件は0~40℃が好ましく、5~30℃がより好ましい。分散時間は0.02~2時間が好ましく、0.2~1時間がより好ましい。
【0049】
分散処理の前に、前処理として、カーボン材料を高速攪拌処理に供してもよい。高速攪拌処理は、超音波ホモジナイザー等を用いた分散処理よりも比較的強度の低い条件での分散処理であり、攪拌体の高速回転により、カーボン材料の凝集を緩める効果がある。高速攪拌処理を分散処理の前に行っておくことにより、カーボン材料の分散処理をより効率的に行うことができる。
【0050】
必要に応じて、カーボン材料の分散処理後に、遠心分離処理やフィルター処理により、分散液に残存する凝集体等を除去してもよい。
【0051】
<バインダー>
バインダーは、樹脂バインダーであれば特に限定されないが、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。これらのバインダーは導電性高分子との相溶性が高く、また、これらのバインダーを含む導電性組成物からなる導電性塗膜は、基材に対する親和性が良好である。これらのバインダーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
アクリル系樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。これらのアクリル樹脂は、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、燐酸基などの酸基を有する重合性単量体を構成モノマーとして含む重合体であってもよく、例えば、酸基を有する重合性単量体の単独又は共重合体、酸基を有する重合性単量体と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を主たる構成モノマー(例えば、50モル%以上)として含んでいれば共重合性単量体と重合していてもよく、この場合、(メタ)アクリル系単量体及び共重合性単量体のうち、少なくとも一方が酸基を有していればよい。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、酸基を有する(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド等]又はその共重合体、酸基を有していてもよい(メタ)アクリル系単量体と、酸基を有する他の重合性単量体[他の重合性カルボン酸、重合性多価カルボン酸又は無水物、ビニル芳香族スルホン酸等]及び/又は共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル単量体等]との共重合体、酸基を有する他の重合体単量体と(メタ)アクリル系共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等]との共重合体、ロジン変性ウレタンアクリレート、特殊変性アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートエマルジョン等が挙げられる。
【0054】
これらの(メタ)アクリル系樹脂の中では、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体等)、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル-スチレン共重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル-スチレン共重合体等)等が好ましい。
【0055】
ポリウレタン系樹脂としては、イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物を共重合させて得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エステル・エーテル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0056】
ポリエステル系樹脂としては、2以上のカルボキシル基を分子内に有する化合物と、2以上のヒドロキシル基を有する化合物とを重縮合して得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0057】
スチレン系樹脂は、スチレンを主成分とする樹脂であれば特に限定されず、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等が挙げられる。
【0058】
エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ベンゼン環を多数有した多官能型であるテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型又はトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、ビフェニル型、トリフェノールメタン型、ナフタレン型、オルソノボラック型、ジシクロペンタジエン型、アミノフェノール型、脂環式等のエポキシ樹脂、シリコーンエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0059】
酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの重合により得られる樹脂であれば特に限定されず、例えばポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0060】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルの重合により得られる樹脂であれば特に限定されず、例えばポリ塩化ビニル、エチレン塩化ビニル共重合体、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0061】
シリコーン系樹脂としては、下記式(II)により表されるアルコキシシランのモノマー同士が縮合することで形成される、シロキサン結合(Si-O-Si)を1分子内に1個以上有するアルコキシシランオリゴマーが挙げられる。アルコキシシランオリゴマーの構造は特に限定されず、直鎖状であってもよく、分岐状でもよい。また、アルコキシシランオリゴマーは、式(II)により表される化合物を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
SiR4(II)
(式中、Rは、水素、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基である。但し、4つのRのうち少なくとも1個は炭素数1~4のアルコキシ基又は水酸基である)
【0062】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。
【0063】
導電性組成物の全固形分におけるバインダーの固形分の割合は、79~99.99重量%が好ましく、89.25~99.9重量%がより好ましく、89.5~99.9重量%がさらに好ましい。また、バインダーの固形分の含有量は、導電性高分子とカーボン材料の固形分の合計量100重量部に対して9900~100000重量部が好ましく、10000~80000重量部がより好ましく、10000~69000重量部がさらに好ましい。この範囲内では、導電性塗膜に十分な強度と導電性を持たせることができる。
【0064】
導電性組成物の固形分率は特に限定されないが、1~50%が好ましく、2~50%がより好ましく、3~40%がさらに好ましく、3.5~39%がさらにより好ましい。固形分率が上記範囲外であると、導電性塗膜の透明性や明度が低くなる傾向がある。導電性組成物の固形分率は、後述する高沸点溶媒や希釈剤の配合量により調節できる。
【0065】
<任意成分>
導電性組成物は、導電性高分子、カーボン材料、バインダーに加えて、高沸点溶媒、希釈剤、架橋剤、触媒、界面活性剤及び/又はレベリング剤、水溶性酸化防止剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤、中和剤、増粘剤、無機フィラー等を含有していてもよい。
【0066】
高沸点溶媒は、沸点が110℃以上の溶媒のことを指し、沸点は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。沸点の上限は一般的に300℃である。高沸点溶媒を配合することにより、導電性組成物の導電性を向上することができる。高沸点溶媒の具体例としては、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン等のアミド化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリグリセリン、フェノール類縁体等のヒドロキシル基含有化合物;イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトギ酸エチル等のカルボニル基含有化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホ基を有する化合物等が挙げられる。高沸点溶媒の配合量は、前述した導電性組成物の固形分率を実現できる配合量とすればよいが、導電性組成物中、0~80重量%が好ましく、2~60重量%がより好ましく、5~40重量%がより好ましい。
【0067】
希釈剤としては、特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類:酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類:ハロゲン類、アセトニトリル、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)、2種以上の有機溶媒の混合溶媒等が挙げられる。これらの中では沸点が110℃以下の希釈剤が好ましく、水やアルコール類、グリコールエーテル類がより好ましく、水と親水性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。希釈剤は、導電性組成物を用いて形成される導電性塗膜中には残留しないことが好ましい。希釈剤の配合量は、前述した導電性組成物の固形分率を実現できる配合量とすればよいが、導電性組成物中、1~99.9重量%が好ましく、10~99重量%がより好ましい。導電性組成物の液体成分中、水の配合量は20~100重量%が好ましく、50~100重量%がより好ましく、75~100重量%がさらに好ましく、95~100重量%が特に好ましい。
【0068】
また、高沸点溶媒と希釈剤は併用してもよい。高沸点溶媒と希釈剤を併用する場合、希釈剤の使用量は、高沸点溶媒100重量部に対して100~100000重量部が好ましく、500~50000重量部がより好ましく、2200~3000重量部がさらに好ましい。
【0069】
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系、イソシアネート系、アクリレート系等の架橋剤が挙げられる。導電性組成物が架橋剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、導電性組成物中30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。導電性組成物が熱硬化性のバインダー及び架橋剤を含有する場合、熱硬化性のバインダーを架橋させるための触媒としては、特に限定されず、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤等が挙げられる。
【0070】
導電性組成物に界面活性剤及び/又はレベリング剤を配合することにより、導電性組成物のレベリング性を向上させることができ、均一な導電性塗膜を形成できる。
【0071】
界面活性剤は、レベリング性向上効果を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩等のカルボン酸;リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。
【0072】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体等のポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。
【0073】
導電性組成物が界面活性剤及び/又はレベリング剤を含有する場合、導電性組成物の全固形分に対するレベリング剤の固形分の割合は、0.01~20重量%が好ましく、0.1~10重量%がより好ましい。
【0074】
導電性組成物に水溶性酸化防止剤を配合することにより、導電性塗膜の耐熱性、耐湿熱性を向上させることができる。水溶性酸化防止剤としては、還元性の水溶性酸化防止剤、非還元性の水溶性酸化防止剤等が挙げられる。導電性組成物が水溶性酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、導電性組成物中、1~20重量%が好ましく、5~10重量%がより好ましい。
【0075】
導電性組成物は、導電性高分子、カーボン材料、およびバインダー、ならびに必要に応じて任意成分を、任意の順序で混合することにより得られる。
【0076】
<<導電性塗膜>>
本発明の導電性塗膜は、膜厚0.2~10μmにおいて、表面抵抗率が1.0×103~9.9×1013Ω/□であり、全光線透過率が80~99.9%であり、明度が70~99.9であることを特徴とする。
【0077】
導電性塗膜の表面抵抗率は、1.0×103~9.9×1013Ω/□であるが、1.0×103~1.0×1012Ω/□が好ましく、1.0×103~1.0×1010Ω/□がより好ましく、1.0×103~1.0×109Ω/□がさらに好ましい。表面抵抗率は、基材フィルム上に形成された膜厚0.2~10μmの導電性塗膜について、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0078】
導電性塗膜の全光線透過率は、80~99.9%であるが、85~99.9%が好ましく、90~99.9%がより好ましい。全光線透過率は、基材フィルム上に形成された膜厚0.2~10μmの導電性塗膜について、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0079】
導電性塗膜の明度は、70~99.9であるが、70~95が好ましく、80~95がより好ましい。明度は、基材フィルム上に形成された膜厚0.2~10μmの導電性塗膜について、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0080】
導電性塗膜中の導電性高分子の含有量は、膜厚を8μmとしたときの換算で0.001~0.08mg/m2が好ましく、0.01~0.08mg/m2がより好ましい。導電性塗膜中のカーボン材料の含有量は、0.0001~0.08mg/m2が好ましく、0.0001~0.05mg/m2がより好ましい。導電性塗膜中の導電性高分子およびカーボン材料の含有量を以上の範囲内とすることにより、導電性塗膜に十分な導電性を付与することができ、かつ、塗膜の強度および成膜性も維持できる。
【0081】
導電性塗膜の厚みは0.1~1000μmが好ましく、0.1~100μmがより好ましく、0.1~20μmがさらに好ましい。なお、導電性塗膜の膜厚は、導電性組成物の固形分と基材への塗布量から算出される。
【0082】
導電性塗膜は、導電性高分子、カーボン材料、およびバインダーを含有し、全固形分に対する導電性高分子とカーボン材料の合計固形分の割合が1%以下である導電性組成物からなることが好ましい。導電性組成物の配合成分については前述したとおりである。
【0083】
導電性塗膜は、導電性組成物を基材の少なくとも一つの面上に塗布した後、加熱処理することにより得ることができる。基材の材質としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、銅やアルミに代表される金属等が挙げられる。
【0084】
基材の形状は特に限定されないが、例えば導電性塗膜を含む積層体を、電子機器のタッチパネル等に用いる場合、基材はフィルム状であることが好ましい。基材フィルムの厚みは、特に限定されないが、10~10000μmであることが好ましく、25~5000μmであることがより好ましい。また、基材フィルムの全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0085】
導電性塗膜は、導電性組成物を基材に直接塗布して形成してもよいし、プライマー層等の別の層を予め基材上に設けた後で、当該層の上に塗布して形成してもよい。
【0086】
導電性組成物を基材の少なくとも1面に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、スリットコート法、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、タンポ印刷法等を用いることができる。
【0087】
導電性組成物を基材の少なくとも一つの面上に塗布する前に、必要に応じて、あらかじめ基材の表面に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理、火炎処理等が挙げられる。
【0088】
導電性塗膜を形成する際の加熱処理は、特に限定されず公知の方法により行えばよく、例えば、送風オーブン、赤外線オーブン、真空オーブン等を用いて行えばよい。導電性組成物が溶媒を含有する場合、溶媒は、加熱処理により除去される。
【0089】
導電性塗膜を形成する際の加熱処理の温度条件は、60~200℃が好ましく、80~180℃がより好ましい。加熱処理の処理時間は、特に限定されないが、0.1~20分間が好ましく、1~5分間がより好ましい。
【0090】
本発明の導電性塗膜は、導電性と透明性に優れるため、偏光板、表面保護フィルム、透明導電性フィルム、帯電防止フィルム、ハードコート剤、粘着剤、3Dプリント樹脂、防汚コート剤、自己修復性コート剤、防曇コート剤、撥水撥油コート剤、親水性コート剤、離型コート剤、防水防湿コート剤、抗菌コート剤、波長カットコート剤、波長透過コート剤、生分解性コート剤、剥離プライマー、二次電池、キャパシタ、燃料電池等の導電助剤などの用途に好適に用いられる。
【実施例0091】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0092】
(1)使用材料
(1-1)導電性高分子
・PEDOT分散体1(ヘレウス社製、Clevios PH1000、固形分率1.1重量%、粒子径4.7nm、導電率824S/cm)
・PEDOT分散体2(製造例1にて作製、固形分率1.1%、粒子径2.9nm、導電率768S/cm)
・PEDOT分散体3(製造例2にて作製、固形分率1.1%、粒子径3.2nm、導電率108S/cm)
・PEDOT分散体4(ヘレウス社製、Clevios PT2、固形分率1.1%、粒子径100nm、導電率190S/cm)
・PEDOT類縁体(自己ドープ型溶剤溶解PEDOT、東ソー株式会社製、SELFTRON DN―500、固形分率1.0%(溶媒PGME)、導電率34S/cm)
・ポリアニリン類縁体(三菱ケミカル株式会社製、アクアパス01X、固形分率5.0%(溶媒:水)、導電率0.1S/cm)
【0093】
(1-2)カーボン材料
・カーボンナノチューブ分散体1(製造例3にて作成、固形分率0.7%、分散剤を除いた固形分率は0.1%、粒子径312nm、導電率153S/cm)
・カーボンナノチューブ分散体2(製造例4にて作製、固形分率0.7%、分散剤を除いた固形分率は0.1%、粒子径225nm、導電率100S/cm)
・カーボンナノチューブ分散体3(製造例5にて作製、アクイヴィオンタイプ、粒子径1019nm、導電率242S/cm)
・カーボンナノチューブ分散体4(Nanosolution社製、SATD―06M、固形分0.35%(分散媒PGME)、粒子径1852nm、導電率476S/cm)
【0094】
(1-3)バインダー
・アクリル系樹脂1(日本カーバイド社製、ニカゾールRX―7004E、固形分率35%)
・アクリル系樹脂2(日本カーバイド社製、KP-2525、固形分率18.0%)
・ポリエステル系樹脂(互応化学社製、プラスコートRZ―105、固形分率30%)
・バイオマスポリエステル系樹脂(互応化学社製、GXー1451、固形分率22%)
・ポリウレタン系樹脂(第一工業製薬社製、スーパーフレックス200、固形分率35%)
【0095】
(1-4)レベリング剤
・フッ素系化合物(デュポン株式会社製、CAPSTONE FS-3100)
・ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー社製、BYK―333)
(1-5)高沸点溶媒
・エチレングリコール
(1-6)希釈剤
・水
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、東京化成工業株式会社製)
【0096】
(2)PEDOT分散体2の製造(製造例1)
Clevios PH1000を、室温下、超音波ホモジナイザーにて60分間分散処理を行うことで製造した。
【0097】
(3)PEDOT分散体3の製造(製造例2)
Clevios PT2を、室温下、超音波ホモジナイザーにて60分間分散処理を行うことで製造した。
【0098】
カーボンナノチューブ分散体1の製造(製造例3)
平均長さ300μm、直径約4nmのカーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー株式会社製、ZEONANO SG101)0.1重量部、分散剤として非イオン性分散剤(BASF社製、Pluronic F108、HLB:24以上)を0.6重量部、エタノール30重量部、純水70重量部をガラスビーカーに入れ、超音波ホモジナイザー(hielscher社製、製品名「HP50H」)にて50W、周波数30kHzで30分間分散処理を行うことで、固形分率0.7%のカーボンナノチューブ分散体1を得た。
【0099】
カーボンナノチューブ分散体2の製造(製造例4)
平均長さ0.5~1μm、直径約2nmのカーボンナノチューブ(名城ナノカーボン株式会社製、EC―2.0)0.1重量部、分散剤として非イオン性分散剤(シグマ―アルドリッチ製、アクイヴィオン(登録商標)D72-25BS、固形分25%)を2.4重量部、エタノール30重量部、純水67.5重量部をガラスビーカーに入れ、超音波ホモジナイザーにて(hielscher社製、製品名「HP50H」)にて50W、周波数30kHzで30分間分散処理を行うことで、固形分率0.7%のカーボンナノチューブ分散体2を得た。
【0100】
カーボンナノチューブ分散体3の製造(製造例5)
平均長さ0.5~1μm、直径約1.4nmのカーボンナノチューブ(名城ナノカーボン株式会社製、EC―2.0)0.1重量部、分散剤としてアニオン性分散剤(シグマ―アルドリッチ製、アクイヴィオン)を0.6重量部、エタノール30重量部、純水70重量部をガラスビーカーに入れ、超音波ホモジナイザーにて(hielscher社製、製品名「HP50H」)にて50W、周波数30kHzで30分間分散処理を行うことで、固形分率0.7%のカーボンナノチューブ分散体3を得た。
【0101】
(4)導電性組成物の製造と、導電性塗膜の形成(実施例1~21、比較例1~3)
表1に記載した重量比で各成分を混合し、導電性組成物を作製した。なお、表1に記載の重量比は有姿の重量比であり、導電性組成物は、表に記載の全固形分となるように希釈剤を添加し作製した。カーボン材料の固形分の項目におけるカッコ内の数値は、分散剤を除いた固形分率である。導電性組成物を、ポリエステル樹脂製の基材フィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)の片面にバーコート法で塗布し、送風乾燥機を用いて120℃で5分乾燥させることにより、基材フィルム上に導電性塗膜を形成した。導電性塗膜の膜厚は、バーコータの番手を適宜選択することにより、実施例15は6μm、実施例16~18は0.3μm、実施例19~21は0.2μm、それ以外の実施例と比較例1~3は8μmとなるように調整した。
【0102】
実施例1~21、比較例1~3で得られた導電性塗膜について、後述する評価方法により全光線透過率(Tt)、明度、表面抵抗率を評価した。結果を表1に示す。
【0103】
【0104】
カーボン材料を含まない導電性組成物を使用した比較例1では、表面抵抗率が検出限界を超過した。導電性高分子を含まず、多量のカーボン材料を含む導電性組成物を使用した比較例2では、明度、透過率ともに低下した。全固形分中の導電性高分子とカーボン材料の合計固形分の割合が1%を超える比較例3は、明度、透過率ともに低下した。実施例1~21の導電性塗膜は、表面抵抗率が低く抑えられ、全光線透過率および明度が高かった。
【0105】
(5)評価方法
(5-1)全光線透過率
基材フィルムと導電性塗膜からなる積層体の全光線透過率を、JIS K7136に従い、ヘイズコンピュータ(スガ試験機社製、HZ-2)を用いて測定した。積層体の全光線透過率から、基材フィルム単体の全光線透過率を減算することにより、導電性塗膜の全光線透過率を算出した。
【0106】
(5-2)明度
基材フィルムと導電性塗膜からなる積層体を、セラミック標準白色板の上に置き、色彩色差計(コニカミノルタセンシング(株)製「カラーリーダーCR-20」)にて、明度L*を求めた。積層体のL*から、基材フィルム単体のL*を減算することにより、導電性塗膜のL*を算出した。
【0107】
(5-3)表面抵抗率
導電性塗膜の表面抵抗率は、抵抗率計(三菱化学株式会社製、ハイレスターUP(MCP-HT450型))のUAプローブおよび(三菱化学株式会社製、ロレスターGP(MCP-T600型))のESPプローブを用いて測定した。導電性塗膜の表面にプローブを押し当て、印加電圧10Vにて10秒間保った際の表面抵抗率を求めた。
【0108】
本開示(1)は導電性高分子、カーボン材料、およびバインダーを含有し、全固形分に対する導電性高分子とカーボン材料の合計固形分の割合が1%以下である導電性組成物である。
【0109】
本開示(2)は前記導電性高分子が、ポリチオフェン、ポリピロール、およびポリアニリンからなる群より選択される1以上である、本開示(1)に記載の導電性組成物である。
【0110】
本開示(3)は前記カーボン材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびフラーレンからなる群より選択される1以上である、本開示(1)または(2)に記載の導電性組成物である。
【0111】
本開示(4)は前記バインダーが、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、およびフッ素系樹脂からなる群より選択される1以上である、本開示(1)~(3)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0112】
本開示(5)は前記導電性高分子の平均粒子径が0.1~1000nmである、本開示(1)~(4)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0113】
本開示(6)は前記導電性高分子の導電率が0.05~2000S/cmである、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0114】
本開示(7)は前記カーボン材料の導電率が0.5~5000S/cmである、本開示(1)~(6)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0115】
本開示(8)は固形分率が1~50%である、本開示(1)~(7)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0116】
本開示(9)は膜厚0.2~10μmにおいて、表面抵抗率が1.0×103~9.9×1013Ω/□であり、全光線透過率が80~99.9%であり、明度が70.0~99.9である、本開示(1)~(8)のいずれかに記載の導電性組成物からなる導電性塗膜である。