(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040122
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】粒子状吸水性樹脂組成物、トイレ用固化剤及びトイレ
(51)【国際特許分類】
C08L 33/02 20060101AFI20240315BHJP
C08K 5/19 20060101ALI20240315BHJP
C08K 7/22 20060101ALI20240315BHJP
A47K 11/04 20060101ALI20240315BHJP
A47K 11/06 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C08L33/02
C08K5/19
C08K7/22
A47K11/04
A47K11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143456
(22)【出願日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2022144288
(32)【優先日】2022-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥山 博史
(72)【発明者】
【氏名】吉本 遼
【テーマコード(参考)】
2D036
4J002
【Fターム(参考)】
2D036HA01
2D036HA12
2D036HA51
2D036HA77
4J002BG011
4J002DL007
4J002EN136
4J002FA097
4J002FD017
4J002FD186
4J002GC00
4J002HA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の目的は、固形排泄物等の処理に使用する場合や固化助剤を併用する場合にも高い抗菌及び消臭効果が得られ、かつ抗菌効果が長期間持続し、更に使用後のゲルの長期安定性にも優れる粒子状吸水性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と水溶性抗菌剤(B)とを含有する粒子状吸水性樹脂組成物であって、前記架橋重合体(A)の重量に基づく前記水溶性抗菌剤(B)の含有量が0.01~1重量%であり、前記内部架橋剤(b)の前記水溶性抗菌剤(B)に対する重量比率[(b)/(B)]が0.2~50である粒子状吸水性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と水溶性抗菌剤(B)とを含有する粒子状吸水性樹脂組成物であって、前記架橋重合体(A)の重量に基づく前記水溶性抗菌剤(B)の含有量が0.01~1重量%であり、前記内部架橋剤(b)の前記水溶性抗菌剤(B)に対する重量比率[(b)/(B)]が0.2~50である粒子状吸水性樹脂組成物。
【請求項2】
粒子状吸水性樹脂組成物のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(X)と粒子状吸水性樹脂組成物を更に粉砕した後のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(Y)が下記式(I)式を満たす請求項1記載の粒子状吸水性樹脂組成物。
X/Y≧0.6 ・・・(I)
【請求項3】
耐鉄分解性試験におけるゲル残存率が70重量%以上である請求項1記載の粒子状吸水性樹脂組成物。
【請求項4】
耐アルカリ分解性試験におけるゲル残存率が50重量%以上である請求項1記載の粒子状吸水性樹脂組成物。
【請求項5】
更に無機質粉末(C)を含有する請求項1記載の粒子状吸水性樹脂組成物。
【請求項6】
吸湿ブロッキング率が15重量%以下である請求項1記載の粒子状吸水性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子状吸水性樹脂組成物を含有するトイレ用固化剤。
【請求項8】
請求項7記載のトイレ用固化剤が用いられた簡易トイレ及び携帯トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状吸水性樹脂組成物、トイレ用固化剤及びトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
簡易トイレや携帯トイレは、水洗トイレと異なり、排泄物を一時的にトイレ内に溜めておき、別途廃棄する必要がある。一般的に、排泄物は吸水性樹脂等を含んだ固化剤で固化(ゲル化)して保管されるが、廃棄物由来の臭気が発生し、その廃棄作業を困難にしている。そのため、前記固化剤に各種消臭剤や抗菌剤を添加する対策がなされてきたが、抗菌及び消臭効果が短時間で消失してしまったり、固形物である便を処理する場合、固形物の表面全体に抗菌剤を十分に行き届かせることができず、抗菌及び消臭効果が低下しやすいという問題があった。また、吸水性樹脂以外に固化助剤を併用した場合にも、その固化助剤表面に抗菌剤が十分に行き届かず抗菌及び消臭効果が低下することがあった。
消臭効果を長時間維持できる簡易トイレ用消臭剤として、例えば特許文献1では、架橋型ポリアクリル酸又はその塩、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩、及び香料を含有する組成物である簡易トイレ用消臭及び飛散防止剤が提案されている。特許文献1に記載の組成物は、24時間後には消臭効果が一定レベル維持されているものの、それより長期間保管される場合の消臭及び抗菌効果については十分とはいえなかった。また、使用後のゲルの経時安定性が低く、回収時に衛生上やハンドリング上の問題が起こることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、固形排泄物等の処理に使用する場合や固化助剤を併用する場合にも高い抗菌性及び消臭効果が得られ、かつ消臭及び抗菌効果が長期間持続し、更に使用後のゲルの長期安定性にも優れる粒子状吸水性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と水溶性抗菌剤(B)とを含有する粒子状吸水性樹脂組成物であって、前記架橋重合体(A)の重量に基づく前記水溶性抗菌剤(B)の含有量が0.01~1重量%であり、前記内部架橋剤(b)の前記水溶性抗菌剤(B)に対する重量比率[(b)/(B)]が0.2~50である粒子状吸水性樹脂組成物;前記粒子状吸水性樹脂組成物を含有するトイレ用固化剤;前記トイレ用固化剤が用いられた簡易トイレ及び携帯トイレである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物は、固形排泄物等の処理に使用する場合や固化助剤を併用する場合にも高い抗菌性及び消臭効果が得られ、かつ抗菌及び消臭効果が長期間持続するという効果を奏する。更に使用後のゲルの長期安定性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<架橋重合体(A)>
本発明における架橋重合体(A)は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位として含有する。
【0008】
本発明における水溶性ビニルモノマー(a1)とは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つビニルモノマーを意味し、例えば特開2005-075982号公報に記載の水溶性ビニルモノマーが挙げられる。
本発明における加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)としては、例えば特開2005-075982号公報に記載の加水分解性ビニルモノマーが挙げられる。なお、「加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となる」とは、50℃の水及び必要により触媒(酸又は塩基等)の作用により加水分解され水溶性ビニルモノマー(a1)になる性質を意味する。加水分解は、重合中、重合後又はこれらの両方のいずれの時期に行ってもよいが、得られる架橋重合体(A)の分子量の観点等から重合後が好ましい。
【0009】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)のうち、排泄物等の固化性と使用後のゲルの長期安定性の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましく、更に好ましくはアニオン性ビニルモノマー(カルボキシ基を有するビニルモノマー、スルホ基を有するビニルモノマー及びホスホノ基を有するビニルモノマー等)、特に好ましくは炭素数3~30のビニル基含有カルボン酸(塩){不飽和モノカルボン酸(塩)[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びこれらの塩等];不飽和ジカルボン酸(塩)(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸及びこれらの塩等);及び前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステル等)}、とりわけ好ましくは不飽和モノカルボン酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0010】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「・・・酸(塩)」とは「・・・酸」及び/又は「・・・酸塩」を意味する。塩としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩が含まれる。
【0011】
架橋重合体(A)に含まれる上記アニオン性ビニルモノマーに由来する構成単位は、未中和体であっても、中和体(アニオン性ビニルモノマー塩の単位)であってもよいが、架橋重合体(A)及び吸水性樹脂組成物の吸水ゲルのゲル強度の観点からは、一部又は全てが中和されていることが好ましい。
アニオン性ビニルモノマー(a1)に由来する構成単位の中和を行う場合は、一般的に水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、有機アミン及びこれらの水溶液を添加することにより行われる。重合前のモノマー段階で中和してから重合を行ってもよく、重合後の含水ゲルにアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア及び有機アミン等を添加することによって中和してもよい。
【0012】
架橋重合体(A)に含まれるアニオン性ビニルモノマーに由来する構成単位の最終的な中和度{アニオン性ビニルモノマーのアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数に基づく、アニオン塩基の含有量(モル%)}は、10~100モル%が好ましく、更に好ましくは40~100モル%、特に好ましくは70~100モル%、最も好ましくは80~100モル%である。この範囲であると、架橋重合体(A)及び吸水性樹脂組成物の吸水ゲルのゲル強度が更に高くなり、かつ架橋重合体(A)の生産性の観点からも好ましい。なお、アニオン塩基とは中和されたアニオン基を意味する。
【0013】
架橋重合体(A)中の水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)の合計含有量は、架橋重合体(A)の吸収能の観点から、架橋重合体(A)の全構成単位の合計モル数に基づき95.0モル%以上であることが好ましく、99.5モル%以上であることが更に好ましい。
【0014】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)のうち、排泄物等の固化性の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単独及び水溶性ビニルモノマー(a1)とビニルモノマー(a2)の併用が好ましく、更に好ましいのは水溶性ビニルモノマー(a1)単独である。
架橋重合体(A)が、水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の両方を構成単位として含有する場合、これらのビニルモノマーに由来する単位のモル比{(a1)/(a2)}は、排泄物等の固化性の観点から、75/25~99/1が好ましく、更に好ましくは85/15~99/1、最も好ましくは90/10~99/1である。
【0015】
架橋重合体(A)は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)の他に、これらと共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)を構成単位とすることができる。その他のビニルモノマー(a3)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)としては特に限定はなく、例えば下記の(i)~(iii)のビニルモノマー等が使用できる。
(i)炭素数8~30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン類、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2~20の脂肪族エチレン性モノマー
アルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等);並びにアルカジエン(ブタジエン及びイソプレン等)等。
(iii)炭素数5~15の脂環式エチレン性モノマー
モノエチレン性不飽和モノマー(ピネン、リモネン及びインデン等);並びにポリエチレン性ビニルモノマー[シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等]等。
【0017】
架橋重合体(A)におけるその他のビニルモノマー(a3)単位の含有量(モル%)は、架橋重合体(A)の吸収能及び架橋重合体(A)及び吸水性樹脂組成物の吸水ゲルのゲル強度等の観点から、架橋重合体(A)の全構成単位の合計モル数に基づいて、0~5モル%が好ましく、更に好ましくは0~3モル%、特に好ましくは0~2モル%、とりわけ好ましくは0~1.5モル%であり、0モル%であることが最も好ましい。
【0018】
架橋重合体(A)は、内部架橋剤(b)を必須構成単位とし、架橋構造を有する。内部架橋剤(b)としては特に限定はないが、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、N,N-メチレンビスアクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、テトラアリロキシエタン及びトリメチロールプロパンジアリルエーテル等の1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、グルコース、マンニット、マンニタン、ショ糖及びブドウ糖等の多価アルコール;エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル及びグリセリントリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物などが使用できる。
これらのうち、架橋重合体(A)の水吸収能、吸水性樹脂組成物の排泄物等の固化性、ゲルの耐鉄分解性及び耐アルカリ分解性等の観点から、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が好ましく、更に好ましいのはトリアリルイソシアヌレート及びポリ(メタ)アリルエーテルであり、特に好ましいのはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルであり、最も好ましいのはペンタエリスリトールトリアリルエーテルである。
【0019】
内部架橋剤(b)単位の含有量(モル%)は、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)単位の合計モル数に基づいて、0.001~5モル%が好ましく、更に好ましくは0.005~3モル%、特に好ましくは0.01~1モル%であり、最も好ましくは0.09~0.9モル%である。この範囲であると、架橋重合体(A)の吸水速度及び吸収倍率等のバランスを取りやすくなり、また吸水性樹脂組成物の抗菌性及び抗菌効果の持続性が更に良好となる。
【0020】
架橋重合体(A)は、公知の溶液重合(断熱重合、薄膜重合及び噴霧重合法等;特開昭55-133413号公報等)や、公知の逆相懸濁重合(特公昭54-30710号公報、特開昭56-26909号公報等)と同様にして製造することができる。これらの重合方法のうち、好ましいのは溶液重合法であり、有機溶媒等を使用する必要がなく生産コスト面で有利なことから、特に好ましいのは水溶液重合法である。
重合時の単量体濃度である重合濃度は、反応溶液の重量に基づき通常10~60重量%、好ましくは20~50重量%である。重合濃度が上記範囲であると、架橋重合体(A)の分子量制御や反応温度等のコントロールがしやすくなる。
【0021】
水溶液重合法で製造した場合、重合によって得られる含水ゲル[架橋重合体(A)と水とからなる]は、必要に応じて細断することができる。細断後のゲルの大きさ(最長径)は50μm~10cmが好ましく、更に好ましくは100μm~2cm、特に好ましくは1mm~1cmである。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性が更に良好となる。
細断は、公知の方法で行うことができ、一般的な細断装置(例えば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機)等を使用して細断できる。
【0022】
重合に溶媒(有機溶媒及び水等)を使用する場合、重合後に溶媒を除去することが好ましい。溶媒に有機溶媒を含む場合、溶媒を除去した後の有機溶媒の含有量(重量%)は、架橋重合体(A)の重量に基づいて、0~10重量%が好ましく、更に好ましくは0~5重量%、特に好ましくは0~3重量%、最も好ましくは0~1重量%である。この範囲であると、架橋重合体(A)の水吸収能及び保水能が更に良好となる。
【0023】
溶媒に水を含む場合、溶媒を除去した後の含水率(重量%)は、架橋重合体(A)の重量に基づいて、20重量%以下が好ましく、更に好ましくは1~20重量%、特に好ましくは2~15重量%、最も好ましくは3~10重量%である。この範囲であると、架橋重合体(A)の水吸収能や吸水性組成物の排泄物等の固化性及びハンドリング性等が更に良好となる。
【0024】
なお、架橋重合体(A)の有機溶媒の含有量及び含水率は、赤外水分測定器[(株)KETT社製JE400等]を用いて120±5℃で30分間(加熱前の雰囲気湿度:50±10%RH、ランプ仕様:100V、40W)加熱したときの加熱前後の測定試料の重量減量から求められる。
【0025】
溶媒(水を含む)を除去する方法(乾燥方法)としては、80~230℃の温度の熱風で加熱して除去(乾燥)する方法、100~230℃に加熱されたドラムドライヤー等によって除去する薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過等が適用できる。
【0026】
架橋重合体(A)は、必要な粒度分布や見掛け密度に調整するために、乾燥後に粉砕することができる。粉砕方法については、特に限定はなく、一般的な粉砕装置{例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機}やジューサーミキサー等が使用できる。
【0027】
架橋重合体(A)は、必要によりふるい分け等により粒度調整できる。必要によりふるい分けした場合の架橋重合体(A)の重量平均粒子径(μm)は、100~800μmが好ましく、更に好ましくは200~700μm、特に好ましくは250~600μm、とりわけ好ましくは300~500μm、最も好ましくは350~450μm、とりわけ最も好ましくは380~400μmである。この範囲であると、水吸収能が更に良好となる。
【0028】
なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験ふるい振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801-1:2019)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。即ち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μm、受け皿の順に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験ふるい振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、合計重量に対する各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率の累計値]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径(μm)とする。
【0029】
また、微粒子の含有量は少ない方が水吸収能が良好となるため、全粒子に占める粒子径150μm以下の微粒子の含有量は3重量%以下が好ましく、更に好ましくは1重量%以下である。全粒子に占める粒子径106μm以下の微粒子の含有量は2重量%以下が好ましく、更に好ましくは1重量%以下である。なお、全粒子に占める微粒子の含有量(重量%)は、上記の重量平均粒子径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。
【0030】
架橋重合体(A)の見掛け密度(g/ml)は、0.54~0.70g/mlが好ましく、更に好ましくは0.56~0.65g/ml、特に好ましくは0.58~0.60g/mlである。この範囲であると、水吸収能が更に良好となる。なお、見掛け密度は、JIS K7365:1999に準拠して、25℃で測定される。
【0031】
架橋重合体(A)の粒子形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられるが、後述する粒子状吸水性樹脂組成物の使用後(排泄物等の処理対象物を固化させた後の)ゲルのゲル強度の観点からは不定形破砕状が好ましい。
【0032】
さらに、架橋重合体(A)に残留する未反応の単量体成分を減少させるために、上記架橋重合体(A)の含水ゲル又はその乾燥物を、還元剤を用いて処理してもよい。架橋重合体(A)に残留する未反応の単量体成分を減少させることで、溶出成分を低減でき、粒子状吸水性樹脂組成物の安全性等をより一層向上させることができる。
上記還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム、L-アスコルビン酸、アンモニア、モノエタノーアミン及びグルコース等が挙げられる。これらの還元剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の還元剤のうち、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、及びチオ硫酸ナトリウムがより好ましい。
還元剤の使用量は、特に限定されるものではないが、用いた全単量体の合計モル数に基づいて0.01~2モル%の範囲内が好ましく、0.1~1モル%の範囲内が更に好ましい。
【0033】
架橋重合体(A)は、吸水性樹脂組成物の粒子が使用前にブロッキングすることを抑制する(以下、耐吸湿ブロッキング性と記載)観点から、架橋重合体(A)が表面架橋剤により表面架橋されたものであることが好ましい。表面架橋剤としては、特開昭59-189103号公報等に記載の多価グリシジル、特開昭58-180233号公報及び特開昭61-16903号公報等に記載の多価アルコール、多価アミン、多価アジリジン及び多価イソシアネート、特開昭61-211305号公報及び特開昭61-252212号公報等に記載のシランカップリング剤並びに特開昭51-136588号公報及び特開昭61-257235号公報等に記載の多価金属等が挙げられる。
これらの表面架橋剤のうち、吸水性樹脂組成物の耐吸湿ブロッキング性の観点から、多価グリシジル、多価アミン及びシランカップリング剤が好ましく、更に好ましいのは多価グリシジル及びシランカップリング剤、特に好ましいのは多価グリシジルである。また、多価グリシジル中でも、好ましいのはエチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリンジグリシジルエーテル、特に好ましいのはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0034】
表面架橋剤の使用量(重量%)は、吸水性樹脂組成物の耐吸湿ブロッキング性等の観点から、架橋重合体(A)の重量に基づいて、0.01~0.20重量%が好ましく、更に好ましくは0.03~0.15重量%、特に好ましくは0.05~0.10重量%である。
【0035】
表面架橋は、公知の方法(例えば、特開平13-2935号公報、特開2003-147005号公報及び特開2003-165883号公報に開示された方法)等で行うことができる。
【0036】
表面架橋の工程は、2回以上繰り返して行ってもよい。即ち、表面架橋剤で表面架橋して得られた架橋重合体(A)を、1回目の表面架橋剤と同種又は異種の表面架橋剤で追加の表面架橋を施すことができる。追加の表面架橋剤の含有量、処理方法、処理温度、処理時間等は1回目の場合と同様である。
【0037】
<粒子状吸水性樹脂組成物>
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と水溶性抗菌剤(B)とを含有する粒子状吸水性樹脂組成物であって、上記架橋重合体(A)の重量に基づく上記水溶性抗菌剤(B)の含有量が0.01~1重量%であり、上記内部架橋剤(b)の上記水溶性抗菌剤(B)に対する重量比率[(b)/(B)]が0.2~50である粒子状吸水性樹脂組成物である。
架橋重合体(A)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明における水溶性抗菌剤(B)は、25℃のイオン交換水1Lに対する溶解度が2g以上であるカチオン系抗菌剤であり、その溶解度は好ましくは3g以上、更に好ましくは5g以上である。
溶解度は、次の方法によって測定することができる。2Lビーカーに入れた25℃のイオン交換水1Lに対して、十分乾燥させた測定対象(抗菌剤)を投入し、長さ20mm、幅7mmのスターラーチップを入れ、マグネチックスターラーを用いて600rpmで撹拌し、1時間撹拌しても溶解できない直前の投入量を、当該抗菌剤の25℃の水に対する溶解度とする。なお、マグネチックスターラーとしてはアズワン株式会社製HPS-100等を使用できる。
【0039】
水溶性抗菌剤(B)としては、菌との親和性の観点から、有機性かつカチオン性の抗菌剤が好ましく、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を特に好ましく使用することができる。具体例としては、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。
これらのうち、アンモニア産生菌に対する抗菌効果と抗菌及び消臭効果の持続性の観点から更に好ましいのは、塩化ジデシルジメチルアンモニウムである。
水溶性抗菌剤(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物における前記架橋重合体(A)の重量に基づく前記水溶性抗菌剤(B)の含有量は、0.01~1重量%である。0.01重量%未満であると抗菌及び消臭効果が不足する傾向があり、1重量%超であると耐吸湿ブロッキング性等が悪化する傾向がある。上記範囲は、好ましくは0.02~1重量%であり、更に好ましくは0.02~0.8重量%であり、特に好ましくは0.03~0.8重量%である。
なお、本発明の粒子状吸水性樹脂組成物における架橋重合体(A)の含有量は、粒子状吸水性樹脂組成物の重量に基づいて、80~100重量%であることが好ましく、更に好ましくは80~99重量%、特に好ましくは80~98重量%、最も好ましくは85~97重量%である。この範囲であると、本発明の粒子状吸水性樹脂組成物の物性を所望の範囲としやすい。
【0041】
前記内部架橋剤(b)の前記水溶性抗菌剤(B)に対する重量比率[(b)/(B)]は、0.2~50である。[(b)/(B)]が0.2未満であると粒子状吸水性樹脂組成物のハンドリング性や使用前の保管安定性等が不足する傾向があり、50超であると抗菌及び消臭効果が悪化する傾向がある。上記範囲は、好ましくは0.5~50であり、更に好ましくは0.5~30であり、特に好ましくは1.0~30であり、最も好ましくは2.0~30である。
【0042】
水溶性抗菌剤(B)は、架橋重合体(A)を製造する各工程{重合工程、細断工程、中和工程、乾燥工程、粉砕工程、表面架橋工程時及び/又はこれらの工程の前後等}であれば任意の工程で添加することができるが、抗菌性能及び後述するメタノール抽出試験における抽出量の比[X/Y]の調整しやすさ等の観点からは、表面架橋工程を行った後に添加することが好ましい。
水溶性抗菌剤(B)の添加は、水溶性抗菌剤(B)が可溶の溶媒(水及び/又はメタノール等)に水溶性抗菌剤(B)を溶解した溶液を、無機質粉末(C)と架橋重合体(A)とを均一混合する工程に、無機質粉末(C)と同時に添加し混合すること等で行う事が好ましい。
【0043】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物は、耐吸湿ブロッキング性の観点からは、更に無機質粉末(C)を含有することが好ましく、架橋重合体(A)の粒子表面に無機質粉末(C)が付着した形態で含有することが特に好ましい。
無機質粉末(C)としては、親水性無機粒子(C1)及び疎水性無機粒子(C2)等が挙げられる。
親水性無機粒子(C1)としては、ガラス、シリカゲル、シリカ及びクレー等の粒子が挙げられる。
疎水性無機粒子(C2)としては、炭素繊維、カオリン、タルク、マイカ、ベントナイト、セリサイト、アスベスト及びシラス等の粒子が挙げられる。
これらの内、親水性無機粒子(C1)が好ましく、最も好ましいのはシリカである。
【0044】
親水性無機粒子(C1)及び疎水性無機粒子(C2)の形状としては、不定形(破砕状)、球状、フィルム状、棒状及び繊維状等のいずれでもよいが、不定形(破砕状)又は球状が好ましく、更に好ましいのは球状である。
【0045】
親水性無機粒子(C1)及び疎水性無機粒子(C2)の比表面積(m2/g)は、5~700m2/gが好ましく、更に好ましくは20~500m2/g、特に好ましくは40~400m2/gであり、最も好ましくは150~250m2/gである。
【0046】
無機質粉末(C)の含有量(重量%)は、架橋重合体(A)の重量に基づいて、0.01~5.00重量%が好ましく、更に好ましくは0.10~5.00重量%、次に好ましくは0.20~5.00重量%、特に好ましくは0.27~5.00重量%、最も好ましくは0.30~3.00重量%である。この範囲であると、耐吸湿ブロッキング性が更に良好となる。
【0047】
無機質粉末(C)を架橋重合体(A)の表面に付着させる方法としては、一般的な混合機を使用して均一混合する方法等が挙げられる。使用される装置としては、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、V型混合機、リボン型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等が挙げられる。
また、混合の温度(℃)としては特に限定ないが、20~120℃が好ましく、更に好ましくは30~100℃、特に好ましくは40~90℃である。この範囲であると、架橋重合体(A)表面への無機質粉末(C)の付着性が良好となる。尚、無機質粉末(C)を架橋重合体(A)の表面に付着させる工程は、付着効率の観点から、架橋重合体(A)を製造する各工程{重合工程、細断工程、中和工程、乾燥工程、粉砕工程、表面架橋工程時}及び/又はこれらの工程の前後等の内、乾燥工程、粉砕工程、表面架橋工程の前後等において行うことが好ましい。
【0048】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物には、性能を損なわない範囲で無機質粉末(C)以外の添加物を添加することができる。添加物としては、疎水性有機化合物(D){炭化水素基を有する疎水性有機化合物(ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂誘導体、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂誘導体、ワックス、疎水部及び親水部からなる化合物)、フッ素原子と炭化水素基とを有する疎水性有機化合物及びポリシロキサン構造を有する疎水性有機化合物等}や、公知(例えば特開2003-225565号公報)の添加剤(防腐剤、防かび剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、消臭剤及び有機質繊維状物等)等が使用でき、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。
添加時期は特に限定されず、架橋重合体(A)の製造工程における任意の段階(重合工程、乾燥工程、表面架橋工程時及び/又はこれらの工程の前後)において添加することがで
きる。
【0049】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物は、粒子状吸水性樹脂組成物のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(X)と粒子状吸水性樹脂組成物を粉砕した後のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(Y)が下記式(I)式を満たすことが好ましい。
X/Y≧0.6 ・・・(I)
上記メタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(X)と上記粉砕した後のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(Y)が(I)式を満たす場合、水溶性抗菌剤(B)が粒子状吸水性樹脂組成物の表面近傍に多く存在し拡散性が良好であることを意味し、本発明の「固形排泄物等の処理に使用する場合や固化助剤を併用する場合にも高い消臭及び抗菌効果が得られる」という効果がより顕著となる。また、少量の水分によって水溶性抗菌剤(B)を処理対象物全体に効果的に拡散させることが可能なため、尿中に含まれる水分だけでも十分な抗菌及び消臭効果を得ることができ、大量の水が用意できない災害時の簡易トイレや自動車の車内等で使用される携帯トイレ用に使用する場合に、非常に好ましい。上記比[X/Y]は、更に好ましくは0.6~0.95であり、特に好ましくは0.65~0.9である。
粒子状吸水性樹脂組成物のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(X)と粒子状吸水性樹脂組成物を粉砕した後のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(Y)の比[X/Y]を大きくする方法としては、上記内部架橋剤(b)の含有量を少なくする、水溶性抗菌剤(B)を水溶性の高いものにする、水溶性抗菌剤(B)の添加を架橋重合体(A)の表面架橋工程後に行う等の方法が挙げられる。一方、上記比[X/Y]を小さくする方法としては、内部架橋剤(b)の含有量を多くする、水溶性抗菌剤(B)を水溶性があまり高くないものにする、水溶性抗菌剤(B)を架橋重合体(A)の重合工程時に添加する等の方法が挙げられる。
なお、粒子状吸水性樹脂組成物のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(X)と粒子状吸水性樹脂組成物を粉砕した後のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(Y)は、下記測定方法で求められた値である。
【0050】
<メタノール抽出試験による抗菌剤抽出量の測定方法>
粒子状吸水性樹脂組成物40gを精秤して三角フラスコへ入れた後、メタノール200mlを投入する。さらに撹拌子を入れてマグネチックスターラーを用いて350rpmで30分間撹拌して試料中の水溶性抗菌剤(B)を抽出する。撹拌終了後、上澄み液5mlを採取し100mlエプトン管に入れ、更にクロロホルム15ml及びメチレンブルー指示薬25mlを加え30秒間振とうする。ビュレット又はマイクロシリンジから0.0035Mラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液を数滴滴下し、栓をして振とうする。下層が上層よりも淡色であることを確認し、更に数滴ずつ滴下しその都度栓をして激しく振った後静置し、上層と下層の色を比較する。両層の色相の差が縮まれば逐次滴下量を減らし、終点近くでは1滴毎に両層の色の変化を確認し、白色板を背景として両層の青さが同一になった点を終点とする。また、上層が濃い状態で1滴滴下し、下層の方が濃くなった場合には、1滴滴下前を終点とする。終点までに要した0.0035Mラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液のml数を記録する。
以上の試験を、後述の方法で各粒子状吸水性樹脂組成物を粉砕した後の試料40gについて同様に行い、粉砕後の各吸水性樹脂組成物を用いた場合における、終点までに要した0.0035Mラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液のml数を記録する。さらに、測定試料を入れずに同様に試験を行い空試験とする。
下記式により、粉砕前後のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量[(X)及び(Y)]を求めた。
粒子状吸水性樹脂組成物のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(X)(%)=
4×(A1-B)×f×M/S
粒子状吸水性樹脂組成物を粉砕した後のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(Y)(%)=
4×(A2-B)×f×M/S
なお、式中の各記号は次のとおりである。
A1:測定試料として各吸水性樹脂組成物をそのまま用いた試験で終点までに要した0.0035Mラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液のml数
A2:測定試料として後述の方法で粉砕した後の各吸水性樹脂組成物を用いた試験で終点までに要した0.0035Mラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液のml数
B:空試験に要した0.0035Mラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液のml数
S: 精秤した測定試料の重量(g)
f:0.0035Mラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液のモル濃度(mol/l)
M:水溶性抗菌剤(B)の分子量(g/mol)
【0051】
上記「後述の方法で粉砕後の各吸水性樹脂組成物」における粉砕方法は、下記のように行う。
家庭用ミキサー等[例えば商品名「クラッシュミルサー」、消費電力210W、回転数2万回転/分、岩谷産業(株)製]の容器(容量約250mL)に各吸水性樹脂組成物100gを入れ、1分間粉砕を行う。
【0052】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物の耐鉄分解性試験におけるゲル残存率(重量%)は、70重量%以上であることが好ましく、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。
耐鉄分解性試験におけるゲル残存率(重量%)が上記範囲であると、微量の鉄分を含有する尿等を吸収させた場合にも吸水性樹脂組成物の性能低下がほとんど起こらず、吸水ゲルの長期安定性が更に良好となる。吸水ゲルの長期安定性が良好であると、災害時等、使用後の吸水ゲルをすぐに廃棄できず長期間保管する場合にもゲルの強度が低下せず、吸収した汚物等の再リリース等の問題が起こりにくく、ハンドリング性及び衛生上の問題が起こりにくい。
処理対象の汚物等が鉄分を含有するものである場合に起こることのある性能低下の原因ははっきりとは特定できていないが、架橋重合体(A)及び吸水性樹脂組成物の分解によるものと考えられる。
分解メカニズムは判明していないが、例えば、架橋重合体(A)の架橋剤の種類の選定や、重合時の架橋度や表面架橋での架橋度をコントロールすることにより耐鉄分解性試験におけるゲル残存率を調整することが可能である。例えば、ゲル残存率を上げる方法としては、反応性基濃度(架橋剤の単位重量に基づく架橋反応性を有する官能基のモル数)の高い架橋剤及び表面架橋剤を選択する、架橋剤及び表面架橋剤の量を増やす方法が挙げられる。一方、ゲル残存率を下げる方法としては、架橋剤の一部にエステル結合を有する架橋剤を用いる、反応性基濃度の低い架橋剤及び表面架橋剤を選択する、架橋剤及び表面架橋剤の量を減らす方法が挙げられる。
なお、粒子状吸水性樹脂組成物の耐鉄分解性試験におけるゲル残存率(重量%)は、下記測定方法で求められた値である。
【0053】
<耐鉄分解性試験におけるゲル残存率の測定方法>
FeCl30.242gに水999.758gを加え溶解させた(液1)を作成する。(液1)29.667gをスクリュー管瓶[50mL(胴径35mm×高さ78mm)]中に移し、粒子状吸水性樹脂組成物を0.333g加えた後密閉し、25℃で1時間膨潤させる。その後、50℃の循風乾燥機中で24時間静置後、スパチュラを用いて内容物を目開き2.8mmのJIS標準ふるい(内径7.5cm)上に移す。この際、ふるい面にまんべんなく内容物が触れるよう、スパチュラを用いて押し付けないようにしながら均一に広げた。ふるいに通して5分間静置し、ふるい上に残ったゲルの重量(g)及び、通過した液の重量(g)を測定する。
以下の式から、ゲル残存率を求める。
ゲル残存率(重量%)=(ふるい上に残ったゲルの重量)/(ふるい上に残ったゲルの重量+通過した液の重量)×100
【0054】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物の耐アルカリ分解性試験におけるゲル残存率は、50重量%以上であることが好ましく、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
耐アルカリ分解性試験におけるゲル残存率(重量%)が上記範囲であると、病気等の影響でアルカリ性の尿を吸収させた場合や、尿素が分解されて発生したアンモニアの存在下でも吸水ゲルの長期安定性が更に良好となる。
処理対象の尿等がアルカリ性である場合に起こることのある性能低下の原因ははっきりとは特定できていないが、架橋重合体(A)及び吸水性樹脂組成物の分解によるものと考えられる。
分解メカニズムは判明していないが、例えば、架橋重合体(A)の架橋剤の種類の選定や、重合時の架橋度や表面架橋での架橋度をコントロールすることにより耐アルカリ分解性試験におけるゲル残存率を調整することが可能である。例えば、ゲル残存率を上げる方法としては、反応性基濃度(架橋剤の単位重量に基づく架橋反応性を有する官能基のモル数)の高い架橋剤及び表面架橋剤を選択する、架橋剤及び表面架橋剤の量を増やす方法が挙げられる。一方、ゲル残存率を下げる方法としては、架橋剤の一部にエステル結合を有する架橋剤を用いる、反応性基濃度の低い架橋剤及び表面架橋剤を選択する、架橋剤及び表面架橋剤の量を減らす方法が挙げられる。
なお、粒子状吸水性樹脂組成物の耐アルカリ分解性試験におけるゲル残存率(重量%)は、下記測定方法で求められた値である。
【0055】
<耐アルカリ分解性試験におけるゲル残存率の測定法>
NaOH1.0gに水99gを加え溶解させた(液2)を作成する。(液2)29.4gをスクリュー管瓶[50mL(胴径35mm×高さ78mm)]中に移し、粒子状吸水性樹脂組成物0.6gを加えた後密閉し、25℃で1時間膨潤させる。その後、50℃の循風乾燥機中で72時間静置後、スパチュラを用いて内容物を目開き2.8mmのJIS標準ふるい(内径7.5cm)上に移した。この際、ふるい面に満遍なく内容物が触れるよう、スパチュラを用いて押し付けないようにしながら均一に広げた。ふるいに通して5分間静置し、ふるい上に残ったゲルの重量(g)及び、通過した液の重量(g)を測定する。
以下の式から、ゲル残存率を求める。
ゲル残存率(重量%)=(ふるい上に残ったゲルの重量)/(ふるい上に残ったゲルの重量+通過した液の重量)×100
【0056】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物の吸湿ブロッキング率(重量%)は、15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることが更に好ましく、6重量%以下であることが特に好ましい。
吸湿ブロッキング率(重量%)が上記範囲であると、吸水性樹脂組成物の耐吸湿ブロッキング性が良好となり、吸水性樹脂組成物の使用前の保管安定性が向上し、例えばトイレ固化剤として使用した場合に、固化不良等の性能低下を起こしにくい。
吸湿ブロッキング率を小さくする方法としては、例えば、架橋重合体(A)の表面架橋を行う、上記無機質粉末(C)を添加する等の方法が挙げられる。
なお、粒子状吸水性樹脂組成物の吸湿ブロッキング率(重量%)は、下記測定方法で求められた値である。
【0057】
<耐吸湿ブロッキング率の測定方法>
サンプル(吸水性樹脂組成物)5.0gを直径5cmのアルミ製の皿にスパチュラを用いてまんべんなく広がるように乗せ、30℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽中で3時間放置する。放置後のサンプルの重量(W1)を測定する。その後、目開き1.40mm、直径80mmの平織ふるい上でアルミカップを逆さにして試料を取り出す。その際にアルミカップに付着した試料もスパチュラを用いてできるだけ形を維持したまま取り出す。試料を取り出したアルミカップの重量(W0)を測定する。その後ふるいを緩やかに6回振とうしてふるい上に残った試料の重量(W2)を測定し、下式により吸湿ブロッキング率を求める。
吸湿ブロッキング率(重量%)={W2/(W1-W0)}×100
【0058】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物の含水率(重量%)は、粒子状吸水性樹脂組成物の重量に基づいて、20重量%以下が好ましく、更に好ましくは1~20重量%、特に好ましくは2~15重量%、最も好ましくは3~10重量%である。
この範囲であると、排泄物等の固化性及びハンドリング性等が更に良好となる。なお、粒子状吸水性樹脂組成物の含水率は、上述の架橋重合体(A)の含水率と同様の方法で測定される値であり、架橋重合体(A)の含水率がほぼそのまま粒子状吸水性樹脂組成物の含水率に反映される。
【0059】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物の重量平均粒子径(μm)は、100~800μmが好ましく、更に好ましくは200~700μm、特に好ましくは250~600μm、とりわけ好ましくは300~500μm、最も好ましくは350~450μmである。上記範囲であると、吸水性樹脂組成物の水吸収能等が更に良好となる。
【0060】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物の重量平均粒子径(μm)は架橋重合体(A)の重量平均粒子径と同様にして測定できる。粒子状吸水性樹脂組成物の重量平均粒子径には、架橋重合体(A)の重量平均粒子径が大きく寄与するが、表面架橋の有無と程度等により多少変化する。
【0061】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物の全粒子に占める粒子径150μm以下の微粒子の含有量は水吸収能の観点から3重量%以下が好ましく、更に好ましくは1重量%以下である。全粒子に占める粒子径106μm以下の微粒子の含有量は2重量%以下が好ましく、更に好ましくは1重量%以下である。なお、粒子状吸水性樹脂組成物の全粒子に占める微粒子の含有量(重量%)は、上述の架橋重合体(A)の場合と同様に、重量平均粒子径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。粒子状吸水性樹脂組成物の全粒子に占める微粒子の含有量には、架橋重合体(A)の全粒子に占める微粒子の含有量が大きく寄与するが、表面架橋の有無と程度、無機質粉末(C)の有無と種類、及びその他の添加剤の有無と種類等により多少変化する。
【0062】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物の見掛け密度(g/ml)は、0.54~0.70g/mlが好ましく、更に好ましくは0.56~0.65g/ml、特に好ましくは0.58~0.60g/mlである。
この範囲であると、水吸収能が更に良好となる。なお、粒子状吸水性樹脂組成物の見掛け密度は架橋重合体(A)の見掛け密度と同様に、JIS K7365:1999に準拠して、25℃で測定される値であり、架橋重合体(A)の見掛け密度がほぼそのまま流動性向上剤の見かけ密度に反映される。
【0063】
粒子状吸水性樹脂組成物の粒子形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられるが、使用後(排泄物等の処理対象物を固化させた後の)ゲルのゲル強度及び流動性の観点からは不定形破砕状が好ましい。
なお、粒子状吸水性樹脂組成物の粒子形状には、架橋重合体(A)の粒子形状がほぼそのまま反映される。
【0064】
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物は、高い抗菌性及び消臭効果が得られ、かつ消臭及び抗菌効果が長期間持続し、更に使用後のゲルの長期安定性にも優れるため、トイレ用固化剤、汚物処理剤、嘔吐物処理剤、中身を飲用後の飲料缶の廃棄缶容器の抗菌用、食品廃棄物の抗菌用等の抗菌性が必要とされる用途に好適に使用できる。とりわけ、トイレ用固化剤として好適に使用できる。
【0065】
<トイレ用固化剤>
本発明のトイレ用固化剤は、上記粒子状吸水性樹脂組成物を含有する。
また本発明のトイレ用固化剤は、上記粒子状吸水性樹脂組成物のみをそのままトイレ用固化剤として用いても良く、更に固化助剤を含有しても良く、中でも上記粒子状吸水性樹脂組成物のみをそのままトイレ用固化剤として用いることが好ましい。固化助剤としては特に限定されないが、パルプ、おがくず等が挙げられる。固化助剤を含有する場合、、上記粒子状吸水性樹脂組成物と固化助剤とを公知の方法で混合することでトイレ用固化剤を得ることができる。
本発明のトイレ用固化剤には、1回に使用する分を小分けにしたタイプのものや、数回分をまとめて処理できるタイプのものが含まれる。
【0066】
<簡易トイレ及び携帯トイレ>
本発明の簡易トイレ及び携帯トイレは、上記トイレ用固化剤を用いたものが含まれる。
簡易トイレとしては、例えば、段ボール箱やプラスチック素材等で作られた簡易便座に排泄物処理袋をかけたものが挙げられ、災害時や、介護施設、病院、工事現場及びイベント会場等で使用される。排泄前あるいは排泄後に処理袋内にトイレ用固化剤を投入し、排泄物を固化(ゲル化)させた後、処理袋ごと回収することができる。
携帯トイレとしては、例えば、排泄物処理袋とトイレ用固化剤がセットになったものが挙げられ、災害時や、交通渋滞時等の自動車内、アウトドア等で使用される。排泄前あるいは排泄後に処理袋内にトイレ用固化剤を投入し、排泄物を固化(ゲル化)させた後、処理袋ごと廃棄することができる。
【0067】
本明細書には、以下の事項が開示されている。
【0068】
本開示(1)は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と水溶性抗菌剤(B)とを含有する粒子状吸水性樹脂組成物であって、前記架橋重合体(A)の重量に基づく前記水溶性抗菌剤(B)の含有量が0.01~1重量%であり、前記内部架橋剤(b)の前記水溶性抗菌剤(B)に対する重量比率[(b)/(B)]が0.2~50である粒子状吸水性樹脂組成物である。
【0069】
本開示(2)は、粉砕前のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(X)と粉砕後のメタノール抽出試験による抗菌剤抽出量(Y)が下記式(I)式を満たす、本開示(1)に記載の粒子状吸水性樹脂組成物である。
X/Y≧0.6 ・・・(I)
【0070】
本開示(3)は、耐鉄分解性試験におけるゲル残存率が70重量%以上である、本開示(1)又は(2)に記載の粒子状吸水性樹脂組成物である。
【0071】
本開示(4)は、耐アルカリ分解性試験におけるゲル残存率が50重量%以上である、本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組み合わせの粒子状吸水性樹脂組成物である。
【0072】
本開示(5)は、更に無機質粉末(C)を含有する、本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組み合わせの粒子状吸水性樹脂組成物である。
【0073】
本開示(6)は、吸湿ブロッキング率が15%以下である、本開示(1)~(5)のいずれかとの任意の組み合わせの粒子状吸水性樹脂組成物である。
【0074】
本開示(7)は、本開示(1)~(6)のいずれかに記載の粒子状吸水性樹脂組成物を含有するトイレ用固化剤である。
【0075】
本開示(8)は、本開示(7)に記載のトイレ用固化剤が用いられた簡易トイレ及び携帯トイレである。
【実施例0076】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
<実施例1>
水溶性ビニルモノマー(a1)としてのアクリル酸{三菱化学株式会社製、純度100%}155重量部(2.15モル部)、内部架橋剤(b)としてのペンタエリスリトールトリアリルエーテル{ダイソー株式会社製}0.504重量部(0.0020モル部)及び脱イオン水340.54重量部を撹拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1重量%過酸化水素水溶液0.465重量部、2重量%アスコルビン酸水溶液1.1625重量部及び2重量%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]水溶液2.325重量部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が80℃に達した後、85±2℃で約8時間重合することにより含水ゲルを得た。
次にこの含水ゲル500.00重量部をミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で細断しながら48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液127.84重量部を添加して混合し、細断ゲルを得た。更に細断ゲルを通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、不定形破砕状の乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き150μm及び710μmのふるいを用いて150~710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子を得た。この乾燥体粒子100重量部を高速撹拌(細川ミクロン製高速撹拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2重量%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の2.75重量部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、架橋重合体(A-1)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1){塩化ジデシルジメチルアンモニウムの80重量%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=1/1)、商品名「カチオンDDC-80」、三洋化成工業株式会社製}0.04重量部(有効成分の含有量:0.032重量部)および親水性無機粒子(C1)としてのアエロジル200{日本アエロジル株式会社製、比表面積200m2/g}0.300重量部を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-1)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-1)を得た。
【0078】
<実施例2>
実施例1と同様にして架橋重合体(A-1)を得た。次に、水溶性抗菌剤(B-1)の添加量を0.04重量部から0.025重量部(有効成分の含有量:0.02重量部)に変更する以外は実施例1と同様にして、架橋重合体(A-1)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-2)を得た。
【0079】
<実施例3>
実施例1と同様にして架橋重合体(A-1)を得た。その後、水溶性抗菌剤(B-1)の添加量を0.04重量部から0.05重量部(有効成分の含有量:0.04重量部)に変更する以外は実施例1と同様にして、架橋重合体(A-1)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-3)を得た。
【0080】
<実施例4>
内部架橋剤(b)としてのペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を0.504重量部(0.0020モル部)から0.775重量部(0.0030モル部)に変更する以外は実施例1と同様にして、不定形破砕状の乾燥体を得た。次に、得られ不定形破砕状の乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き150μm及び710μmのふるいを用いて150~710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子を得た。この乾燥体粒子100重量部を高速撹拌(細川ミクロン製高速撹拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2重量%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の2.75重量部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、架橋重合体(A-2)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1)0.0125重量部(有効成分の含有量:0.01重量部)および親水性無機粒子(C1)としてのアエロジル200(0.300重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-2)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-4)を得た。
【0081】
<実施例5>
内部架橋剤(b)としてのペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を0.504重量部(0.0020モル部)から0.310重量部(0.0012モル部)に変更する以外は実施例1と同様にして、不定形破砕状の乾燥体を得た。次に、得られた不定形破砕状の乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き150μm及び710μmのふるいを用いて150~710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子を得た。この乾燥体粒子100重量部を高速撹拌(細川ミクロン製高速撹拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2重量%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の2.75重量部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、架橋重合体(A-3)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1)1.25重量部(有効成分の含有量:1.00重量部)および親水性無機粒子(C1)としてのアエロジル200(0.300重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-3)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-5)を得た。
【0082】
<実施例6>
実施例5と同様にして架橋重合体(A-3)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1)1.25重量部(有効成分の含有量:1.00重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-3)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-6)を得た。
【0083】
<実施例7>
実施例4と同様にして架橋重合体(A-2)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1)1.25重量部(有効成分の含有量:1.00重量部)および親水性無機粒子(C1)としてのアエロジル200(0.300重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-2)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-7)を得た。
【0084】
<実施例8>
実施例4と同様にして架橋重合体(A-2)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1)1.25重量部(有効成分の含有量:1.00重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-2)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-8)を得た。
【0085】
<実施例9>
実施例5と同様にして架橋重合体(A-3)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1)0.125重量部(有効成分の含有量:0.10重量部)および親水性無機粒子(C1)としてのアエロジル200(0.300重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-3)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-9)を得た。
【0086】
<実施例10>
実施例4と同様にして架橋重合体(A-2)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1)0.125重量部(有効成分の含有量:0.10重量部)および親水性無機粒子(C1)としてのアエロジル200(0.300重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-2)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-10)を得た。
【0087】
<実施例11>
内部架橋剤(b)としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.504重量部(0.0020モル部)の代わりにトリメチロールプロパントリアクリレート0.543重量部(0.0018モル部)を用いる以外は実施例1と同様にして架橋重合体(A-4)を得た。
更に水溶性抗菌剤(B-1)0.050重量部(有効成分の含有量:0.04重量部)および親水性無機粒子(C1)としてのアエロジル200(0.300重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-4)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-11)を得た。
【0088】
<実施例12>
実施例1と同様にして架橋重合体(A-1)を得た。次に、水溶性抗菌剤(B)を(B-1)0.04重量部から塩化ベンザルコニウム(B-2)の50%水溶液0.064重量部(有効成分の含有量:0.032重量部)に変更する以外は実施例1と同様にして、架橋重合体(A-1)と水溶性抗菌剤(B-2)を含有する粒子状吸水性樹脂組成物(F-12)を得た。
【0089】
<比較例1>
実施例1と同様にして架橋重合体(A-1)を得た。更に、親水性無機粒子(C1)としてのアエロジル200{日本アエロジル株式会社製、比表面積200m2/g}0.300重量部を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-1)を含有し水溶性抗菌剤(B)を含有しない、比較の吸水性樹脂組成物(比F-1)を得た。
【0090】
<比較例2>
内部架橋剤(b)としてのペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を0.504重量部(0.0020モル部)から1.24重量部(0.0048モル部)に変更する以外は実施例1と同様にして、架橋重合体(A-5)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1)0.0125重量部(有効成分の含有量:0.010重量部)および親水性無機粒子(C1)としてのアエロジル200(0.300重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-5)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有するが、内部架橋剤(b)の前記水溶性抗菌剤(B)に対する重量比率[(b)/(B)]が上限外である、比較の吸水性樹脂組成物(比F-2)を得た。
【0091】
<比較例3>
内部架橋剤(b)としてのペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を0.504重量部(0.0020モル部)から0.155重量部(0.0006モル部)に変更する以外は実施例1と同様にして、架橋重合体(A-6)を得た。更に水溶性抗菌剤(B-1)1.25重量部(有効成分の含有量:1.00重量部)を加えてコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}を用いて80℃で均一混合することにより、架橋重合体(A-6)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有するが、内部架橋剤(b)の前記水溶性抗菌剤(B)に対する重量比率[(b)/(B)]が下限外である、比較の吸水性樹脂組成物(比F-3)を得た。
【0092】
<比較例4>
実施例1と同様にして架橋重合体(A-1)を得た。次に、水溶性抗菌剤(B-1)の添加量を0.04重量部から1.875重量部(有効成分の含有量:1.50重量部)に変更する以外は実施例1と同様にして、架橋重合体(A-1)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有するが、重量比率[(b)/(B)]が下限外である、比較の吸水性樹脂組成物(比F-4)を得た。
【0093】
<比較例5>
実施例1と同様にして架橋重合体(A-1)を得た。次に、水溶性抗菌剤(B-1)の添加量を0.04重量部から0.00625重量部(有効成分の含有量:0.005重量部)に変更する以外は実施例1と同様にして、架橋重合体(A-1)と水溶性抗菌剤(B-1)を含有するが、(A)の重量に基づく(B)の含有量が下限外かつ重量比率[(b)/(B)]が上限外である、比較の吸水性樹脂組成物(比F-5)を得た。
【0094】
得られた粒子状吸水性組成物(F-1)~(F-12)及び比較の吸水性樹脂組成物(比F-1)~(比F-4)について、架橋重合体(A)の重量に基づく水溶性抗菌剤(B)の含有量(重量%)、内部架橋剤(b)の上記水溶性抗菌剤(B)に対する重量比率[(b)/(B)]、メタノール抽出試験における粉砕前後の抗菌剤抽出量の比[X/Y]、耐鉄分解性試験におけるゲル残存率(重量%)、耐アルカリ分解性試験におけるゲル残存率(重量%)及び吸湿ブロッキング率(%)を上述の方法で測定した結果並びに下記方法により抗菌性、消臭及び抗菌効果の持続性、使用前の保管安定性、使用後のゲルの長期安定性を評価した結果を表1に示す。
なお、実施例及び比較例のメタノール抽出試験における吸水性樹脂組成物の粉砕は、家庭用ミキサー[商品名「クラッシュミルサー」、消費電力210W、回転数2万回転/分、岩谷産業(株)製]の容器(容量約250mL)に各吸水性樹脂組成物100gを入れ、1分間粉砕することにより行った。
【0095】
【0096】
<抗菌性試験方法>
300ccフラスコに感受性ブイヨン培地3.45gとイオン交換水150mlを入れ溶解した後、オートクレーブ滅菌する。滅菌後培地に各吸水性樹脂組成物1.0gを添加し撹拌しながら膨潤させた後、菌数が1×106個/mlとなるように大腸菌を接種した。このサンプルを37℃で振とう培養して、18時間後にサンプリングし、滅菌生理食塩水にて10倍希釈法による段階希釈を行い、10倍希釈系列を作成した。菌数測定は、混和平面培養法にて行う。上記希釈品を滅菌シャーレに1mlずつ入れた後、寒天培地を20ml注ぎ、シャーレ上に均一に分散固化させ、37℃で2日間培養した。培養後に、各吸水性樹脂組成物の希釈系列からコロニーカウントしやすい菌数(概ね30~300の範囲)のシャーレを選定してコロニーカウントし、希釈倍率をかけて「培養後生菌数」とした。また、大腸菌の場合と同様にしてアンモニア産生菌についても試験を行い、「培養後生菌数」を求めた。抗菌性の評価は、それぞれの菌について次式で求められる抗菌活性値に基づき、下記評価基準で総合評価した。なお、下記式中のlogは常用対数である。
抗菌活性値=log(ブランクの培養後生菌数)-log(培養後生菌数)
ブランク:吸水性樹脂組成物を添加していない培地で同様に培養したサンプル
[抗菌性の総合評価基準]
5:抗菌活性値(大腸菌)が3.0以上かつ抗菌活性値(アンモニア産生菌)が2.0以上
4:抗菌活性値(大腸菌)が2.5以上3.0未満かつ抗菌活性値(アンモニア産生菌)が2.0以上
3:抗菌活性値(大腸菌)が2.5以上かつ抗菌活性値(アンモニア産生菌)が0以上2.0未満、又は、抗菌活性値(大腸菌)が2.0以上2.5未満かつ抗菌活性値(アンモニア産生菌)が2.0以上
2:抗菌活性値(大腸菌)が2.0以上2.5未満かつ抗菌活性値(アンモニア産生菌)が0以上2.0未満
1:抗菌活性値(大腸菌)、抗菌活性値(アンモニア産生菌)ともに2.0未満、又は、抗菌活性値(大腸菌)、抗菌活性値(アンモニア産生菌)のいずれかが0未満
【0097】
<臭気官能試験(固形排泄物処理時の抗菌性及び消臭効果と消臭及び抗菌効果の持続性の評価)>
ビニール袋に各吸水性樹脂組成物10gを投入し、次にヒトの糞を入れ、続けてヒトの尿300mlを投入して25℃で静置する。その後の状況を18時間後、3日後、7日後に臭気をかぎ、下記基準で評価した。
○:臭気はほとんどしなかった。
△:多少、臭気がした。
×:かなり臭気がした。
なお、臭気は菌数の増加にともなって増大するため、消臭効果が高ければ抗菌効果も高いと評価できる。
【0098】
<使用前の保管安定性試験>
吸水性樹脂組成物がトイレ用固化剤等に使用される場合、使用前に、厳密な湿気対策等なしで長期保管される場合が多い。長期保管した場合の吸水性・固化性の低下の有無及び程度について下記方法でテストした。
チャック付ポリ袋[「ユニパック(登録商標)H-4」、縦240mm×横170mm×厚さ0.04mm、(株)生産日本社製]の中に吸水性樹脂組成物3gを入れ、ポリ袋の口を全開にした状態で30℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽中で30日間静置した。静置後、ビニール袋の中へ生理食塩水100gを投入し1分後の固化状態(ビニール袋の中のゲルの状態)を、下記基準により評価した。
[評価基準]
〇:ゲルに流動性がない。
△:ゲルに流動性があるが、離水はない。
×:ゲルからの離水がある。
なお、比較例3及び4の吸水性樹脂組成物(比F-4)はゲルからの離水が多く(すなわち保管による性能低下が大きく)、実使用できるレベルではないと判断した。
【0099】
<使用後のゲルの長期安定性試験>
チャック付ポリ袋[「ユニパック(登録商標)H-4」、縦240mm×横170mm×厚さ0.04mm、(株)生産日本社製]の中に吸水性樹脂組成物2gを入れ、鉄含有人工尿100gを投入してしばらく静置し、全体を固化(ゲル化)させた。次に、チャック付きポリ袋のチェックを閉じて密閉したのちに、30℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽中で30日間静置する。静置後、固化状態(ビニール袋の中のゲルの状態)を確認し、下記基準により評価した。
なお、上記鉄含有人工尿は、蒸留水1Lに対して、塩化ナトリウム9.0g、無水リン酸ナトリウム2.5g、塩化アンモニウム3.0g、リン酸二水素カリウム2.5g、クレアチニン2.0g、亜硫酸ナトリウム七水和物3.0g、及び塩化鉄(III)六水和物0.5gを溶解させたものである。
[評価基準]
〇:ゲルに流動性がない。
△:ゲルに流動性があるが、離水はない。
×:ゲルからの離水がある。
【0100】
表1の結果から、本発明の粒子状吸水性樹脂組成物(F-1)~(F-12)は、比較の吸水性樹脂組成物に比べ、抗菌性、固形排泄物処理時の消臭及び抗菌効果、消臭及び抗菌効果の持続性、使用前の保管安定性及び使用後のゲルの長期安定性に優れていることが分かる。
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物は、高い抗菌及び消臭効果が得られ、かつ抗菌及び消臭効果が長期間持続し、更に使用後のゲルの長期安定性にも優れるため、トイレ用固化剤、汚物処理剤、嘔吐物処理剤、中身を飲用後の飲料缶の廃棄缶容器の抗菌用、食品廃棄物の抗菌用等の抗菌性が必要とされる用途に好適に使用できる。とりわけ、トイレ用固化剤として好適に使用できる。