(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040126
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ及び対応する制御方法を備えた道路車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20240315BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20240315BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240315BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240315BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240315BHJP
【FI】
B60W20/00
B60K6/485 ZHV
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023145800
(22)【出願日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】102022000018462
(32)【優先日】2022-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ スカンドゥーラ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエーレ ジェノヴァ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス トロンコソ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ サルトーニ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ ルギーニ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ベッロ
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB00
3D202BB12
3D202BB23
3D202BB24
3D202CC42
3D202DD22
3D202DD45
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB05
5H125BB09
5H125BC29
5H125BD17
5H125CA02
5H125EE31
5H125EE47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単かつ低コストの方法で製造し、実施することができる、道路車両及び対応する制御方法を提供する。
【解決手段】内燃機関と、始動モータ(20)と、第1の蓄電システム(14)が設けられた高電圧電気回路(16)と、第2の蓄電システム(24)が設けられ、始動モータ(20)に直接接続された低電圧電気回路(17)と、低電圧電気回路と高電圧電気回路を互いに接続するDC/DCコンバータ(23)と、道路車両が始動状態であり、かつ内燃機関が停止しているとき、内燃機関がコールドスタート状態である場合にのみ、始動モータに少なくとも部分的に供給されるべき電力を、高電圧電気回路から低電圧電気回路に伝送するように、DC/DCコンバータを作動させるように構成された制御ユニットと、を備える、道路車両。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路車両(1)であって、
内燃機関(5)と、
前記内燃機関(5)に結合され、前記内燃機関(5)を始動させるように動作することができる始動モータ(20)と、
第1の蓄電システム(14)を備える高電圧電気回路(16)と、
前記始動モータ(20)と同じ公称電圧を有し、変換装置を介在させることなく、前記始動モータ(20)に直接給電するために、前記始動モータ(20)に直接接続された、第2の蓄電システム(24)を備える低電圧電気回路(17)と、
前記高電圧電気回路(16)から前記低電圧電気回路(17)に電力を伝送するために、前記低電圧電気回路(17)と前記高電圧電気回路(16)とを互いに接続するDC/DCコンバータ(23)と、
前記道路車両(1)の始動状態を検出し、かつ前記内燃機関(5)のコールドスタート状態を検出するように構成された制御ユニット(26)と、
を備え、
前記内燃機関(5)のコールドスタート状態が成立しない場合、前記始動モータ(20)に供給されるべき電力が、専ら前記第2の蓄電システム(24)によってのみ供給され、
前記制御ユニット(26)は、前記道路車両(1)が始動状態であり、かつ前記内燃機関(5)が停止しているときに、前記内燃機関(5)が前記コールドスタート状態である場合にのみ、前記始動モータ(20)に少なくとも部分的に供給されるべき電力を、前記高電圧電気回路(16)から前記低電圧電気回路(17)に伝送するように、前記DC/DCコンバータ(23)を作動させるように構成されることを特徴とする、道路車両(1)。
【請求項2】
前記制御ユニット(26)は、前記道路車両(1)が始動状態であり、かつ前記内燃機関(5)が停止しているときに、前記内燃機関(5)の前記コールドスタート状態が成立していない場合には、前記始動モータ(20)に少なくとも部分的に供給されるべき電力を、前記高電圧電気回路(16)から前記低電圧電気回路(17)に伝送しないように、前記DC/DCコンバータ(23)を停止したままにするように構成される、請求項1に記載の道路車両(1)。
【請求項3】
前記制御ユニット(26)は、前記第1の蓄電システム(14)の充電レベルを特定し、前記内燃機関(5)がコールドスタート状態である場合に、前記第1の蓄電システム(14)の充電レベルが閾値を超えている場合にのみ、前記DC/DCコンバータ(23)を作動させるように構成される、請求項1に記載の道路車両(1)。
【請求項4】
前記制御ユニット(26)は、前記内燃機関(5)が始動されるとすぐに、前記DC/DCコンバータ(23)を停止させるように構成される、請求項1に記載の道路車両(1)。
【請求項5】
前記制御ユニット(26)は、前記内燃機関(5)がコールドスタート状態である場合に、前記内燃機関(5)の始動が実際に作動された瞬間にのみ、前記DC/DCコンバータ(23)を作動させるように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の道路車両(1)。
【請求項6】
前記制御ユニット(26)は、前記内燃機関(5)がコールドスタート状態である場合に、前記道路車両(1)の始動状態が検出されるとすぐに、前記DC/DCコンバータ(23)を作動させるように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の道路車両(1)。
【請求項7】
前記制御ユニット(26)は、前記道路車両(1)が始動されてから所定の時間量が経過した後に、前記内燃機関(5)の始動要求がなければ、前記DC/DCコンバータ(23)を停止するように構成される、請求項6に記載の道路車両(1)。
【請求項8】
前記制御ユニット(26)は、前記内燃機関(5)がコールドスタート状態である場合に、前記道路車両(1)の始動状態が検出されるとすぐに、前記第1の蓄電システム(14)の保護接点(25)を閉成するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の道路車両(1)。
【請求項9】
前記制御ユニット(26)は、前記保護接点(25)が閉成してから所定の時間量が経過した後に、前記内燃機関(5)の始動要求がなければ、前記第1の蓄電システム(14)の前記保護接点(25)を開放するように構成される、請求項8に記載の道路車両(1)。
【請求項10】
道路車両(1)を制御する制御方法であって、前記道路車両(1)は、
内燃機関(5)と、
前記内燃機関(5)に結合され、前記内燃機関(5)を始動させるように動作することができる始動モータ(20)と、
第1の蓄電システム(14)を備える高電圧電気回路(16)と、
前記始動モータ(20)と同じ公称電圧を有し、変換装置を介在させることなく、前記始動モータ(20)に直接給電するために、前記始動モータ(20)に直接接続された、第2の蓄電システム(24)を備える低電圧電気回路(17)と、
前記高電圧電気回路(16)から前記低電圧電気回路(17)に電力を伝送するために、前記低電圧電気回路(17)と前記高電圧電気回路(16)とを互いに接続するDC/DCコンバータ(23)と、
を備え、
前記制御方法は、前記道路車両(1)の始動状態、及び、前記内燃機関(5)のコールドスタート状態を検出するステップを含み、
前記内燃機関(5)のコールドスタート状態が成立しない場合、前記始動モータ(20)に供給されるべき電力が、専ら前記第2の蓄電システム(24)によってのみ供給され、
前記制御方法は、前記道路車両(1)が始動状態であり、かつ前記内燃機関(5)が停止しているとき、前記内燃機関(5)が前記コールドスタート状態である場合にのみ、前記始動モータ(20)に少なくとも部分的に供給されるべき電力を、前記高電圧電気回路(16)から前記低電圧電気回路(17)に伝送するように、前記DC/DCコンバータ(23)を作動させる、更なるステップを含むことを特徴とする、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路車両及び対応する制御方法に関する。
【0002】
本発明は、ハイブリッド道路車両において有利な用途を見出すものであり、以下の説明において、それを明示的に参照するが、そのために一般性を失うものではない。
[関連出願の相互参照]
【0003】
本特許出願は、2022年9月12日に出願されたイタリア特許出願第102022000018462号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
ハイブリッド車両は、トランスミッションを備えたドライブトレインによって、駆動輪にトルクを伝達する内燃熱機関、並びに、蓄電システムに電気的に接続され、駆動輪に機械的に接続された、少なくとも1つの電気機械を備える。
【0005】
ハイブリッド車両の電気システムは、高電圧及び高電力を有する電気回路を備え、そこに電気機械が接続される(相対的に言えば、高電圧とは、単に48ボルトの公称電圧でもあり得る)。この高電圧電気システムは、(少なくとも1つの化学電池のパックを備えた)蓄電装置、並びに、直流側で蓄電装置に接続され、交流側で電気機械に接続され、電気機械を制御する機能を果たす、双方向DC/ACコンバータを備える。
【0006】
ハイブリッド車両の電気システムは、更に、全ての補助的な電力供給先(例えば、制御ユニット、インフォテインメントシステム、盗難防止システム、車室照明システム、外部照明、熱機関の始動モータなど)が接続される、(公称電圧12ボルトの)低電圧及び低電力の電気回路を備える。一般的に言えば、低電圧電気回路は、熱機関の始動モータに(数秒間)供給するのに必要な、高い突入電流(電力)を有する、それ自体の蓄電装置を備える(この装置は、比較的重く、大型の、1つの単電池を備える)。更に、一般的には、DC/DCコンバータが設けられる。DC/DCコンバータは、高電圧電気回路から低電圧電気回路に電力を伝送し、又は車載マネジメント方法が許せば、その逆にも電力を伝送するために、低電圧電気回路と高電圧電気回路とを互いに接続する。
【0007】
低電圧電気回路の軽量化及び小型化を試みるために、低電圧電気回路の蓄電装置を排除し、DC/DCコンバータによって供給することのできる電力を増加させることができる。しかしながら、この設計ソリューションでは、DC/DCコンバータの公称電力を、(車両の通常の走行中に、全ての電気負荷に供給するために必要な)約2kWから、(エンジンの作動を開始するわずかな瞬間に、始動モータに必要とされる)10kWを超えて増加させなければならないため、節約される総重量は、わずかであることが判明している(一方、総製造コストは大幅に増加する)。
【0008】
更に、低電圧電気回路の蓄電装置を削除した場合、DC/DCコンバータは、常に給電される必要がある電気負荷(典型的には、車両の駐車中に常にアクティブである、盗難防止システム、及び、車両の駐車中に遠方から又は遠隔支援センタから車両の所有者と対話することができる、インフォテインメントシステム)に、必要な電力を供給するために、車両が駐車しているときでも常にアクティブのままでなければならない。結果として、DC/DCコンバータは、継続的にストレスを受け(正確には、常に動作する必要があり)、したがって、(車両の最低寿命が、少なくとも10年であるという事実を考慮すると)相当な長時間にわたり、継続して動作することを可能にするために、より高価な設計が必要となる。
【0009】
欧州特許出願第2065268号には、ハイブリッド車両における、内燃機関のコールドスタートのためのソリューションが開示されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、上述した欠点がなく、同時に、簡単かつ低コストの方法で製造し、実施することができる、道路車両及び対応する制御方法を提供することである。
【0011】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載の、道路車両及び対応する制御方法が提供される。
【0012】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を説明し、説明の不可欠な部分を構成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を示す、添付の図面を参照して、本発明の説明を行う。
【
図1】本発明によるハイブリッド道路車両の、概略平面図である。
【
図2】
図1の道路車両の、電気システムの概略図である。
【
図3】本発明による、熱機関駆動のみを有する道路車両の、概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、符号1は、全体として、ハイブリッドパワートレインシステム4からトルクを受ける、2つの前輪2及び2つの後駆動輪3を備えた、ハイブリッド道路車両を示す。
【0015】
ハイブリッドパワートレインシステム4は、前方位置に配置され、クランクシャフト6を備えた内燃機関5、並びに、内燃機関5によって生成されたトルクを後駆動輪3に伝達する、ドライブトレイン7、並びに、ドライブトレイン7に機械的に接続され、可逆的である(すなわち、電気モータとして、電気エネルギーを吸収して機械的トルクを発生させ、発電機として、機械的エネルギーを吸収して電気エネルギーを発生させることができる)電気機械8を備える。
【0016】
ドライブトレイン7はドライブシャフト9を備え、ドライブシャフト9は、一方の側ではクランクシャフト6と角度的に一体であり、他方の側ではトランスミッション10に機械的に接続される。トランスミッションは、後方位置に配置され、ディファレンシャル12から運動を受け取る2つのアクスルシャフト11を用いて、後駆動輪3に運動を伝達する。
【0017】
電気機械8は、トランスミッション10に機械的に接続され、化学電池を備える蓄電システム14に接続された、DC/ACコンバータ13(すなわち、「インバータ」)によって制御される。本出願では、DC/ACコンバータ13は、双方向電力コンバータであり、蓄電システム14に接続された直流側、及び電気機械8に接続された三相交流側を備える。
【0018】
図2によれば、道路車両1には電気システム15が設けられており、電気システムは、(相対的に)高電圧であり、公称電圧48ボルトの高電力を有する電気回路16、並びに、低電圧であり、公称電圧12ボルトの低電力を有する、電気回路17を備える。電気回路16は、電気回路17の公称電圧(12ボルト)よりも大きい公称電圧(48ボルト)を有するため、「高電圧」回路と定義されることを、指摘しておかなければならない。すなわち、「高電圧」という定義は、電気システム15にのみ関するものとして、12ボルトの公称電圧を有する、電気回路17を基準に解釈すべきである。
【0019】
高電圧電気回路16は、蓄電システム14、及びDC/ACコンバータ13を備え、DC/ACコンバータは、片側で蓄電システム14に接続され、反対側では電気機械8に(すなわち、電気機械8のステータ巻線に)接続される。
【0020】
低電圧電気回路17は、複数の電気負荷を備え、それぞれが、それ自体の動作のために電力を吸収する。特に、電気負荷には、電力吸収がわずかであり、道路車両1の使用に関係なく、常に給電しなければならない(すなわち、道路車両1の駐車中にも、常に給電しなければならない)、(優先度の高い)連続的な電気負荷、並びに、道路車両1の使用中にのみ、多くの場合、限られた時間量でのみ給電しなければならない、(優先度の低い)不定期な電気負荷がある。
【0021】
(優先度の高い)連続的な電気負荷には、例えば、警報システム18及びインフォテインメントシステム19がある。明らかに、給電が中断された場合に、それらが再開されたときにエラーメッセージを生成する電子制御ユニットなど、上述したもの以外の、更なる連続的な電気負荷を提供することもできる(正確には、スタンバイモード及び低エネルギーモードで動作することができるが、常に連続的して給電する必要があり、そうでなければ、それらが再起動されたときにエラーを生成する電子制御ユニット)。一方、不定期な電気負荷には、例えば、始動モータ20(これは、低電圧電気回路17に直接接続されているため、低電圧電気回路17と明らかに同じ公称電圧を有する)、車室照明システム21、外部照明22、空調システム(図示せず)、別の電子制御ユニット(図示せず)がある。明らかに、上述したもの以外にも、更なる不定期な電気負荷を提供することができる。
【0022】
電気システム15は、DC/DCコンバータ23を備え、DC/DCコンバータは、高電圧電気回路16から低電圧電気回路17に電力を伝送するために、低電圧電気回路17と高電圧電気回路16とを互いに接続する(又は、車載マネジメント方法が許せば、逆もまた同様である)。低電圧電気回路17は、DC/DCコンバータ23の外部にある(独立している)、それ自体の蓄電システム24を備える。蓄電システム24は、低電圧電気回路17に直接接続されているため、当然ながら、蓄電システム24も低電圧電気回路17と同じ公称電圧を有し、したがって、蓄電システム24は、始動モータ20と同じ公称電圧を有する。言い換えれば、蓄電システム24は、いかなる種類の変換装置も介在させることなく、始動モータ20に直接接続され、始動モータ20に直接給電するように設計される。
【0023】
好ましい実施形態によれば、蓄電システム14は、高電圧電気回路16の蓄電システム14に直列に配置された、電気的に動作する(すなわち、電気アクチュエータを介して遠隔制御することができる)、保護接点25を備える。保護接点25は、通常は開放されたままであり、蓄電システム14と電力を交換しなければならない場合にのみ、閉成される。
【0024】
とりわけ、DC/DCコンバータ23及び保護接点25を制御する、制御ユニット26が設けられる。
【0025】
制御ユニット26は、道路車両1の始動状態を検出するように構成される(正確には、運転者が道路車両1を「始動」させるとき、したがって、イグニッションキーを回すことによって、又は始動ボタンを押すことによって、内燃機関5の作動準備を行うときに検出する)。
【0026】
また、制御ユニット26は、内燃機関5がコールドスタート状態であること、すなわち、内燃機関5が「冷態」で、かつ停止している状態(したがって、内燃機関5を始動させることが、最も困難な状態)でることを検出するように構成される。例えば、制御ユニット26は、内燃機関5の冷却液の温度を特定し、冷却液の温度が所定の閾値を下回っている場合に、内燃機関5がコールドスタート状態であることを検出するように構成される。
【0027】
制御ユニット26は、内燃機関5が停止しているとき、内燃機関5のコールドスタート状態が成立していなければ、始動モータ20に少なくとも部分的に供給される電力を、高電圧電気回路16から低電圧電気回路17に伝送しないために、DC/DCコンバータ23を非作動状態に維持するように構成される。言い換えれば、道路車両1が始動状態(いわゆる「キーオン」状態)にあり、内燃機関5が「熱態」である場合(すなわち、内燃機関5のコールドスタート状態が成立していない場合)、制御ユニット26は、高電圧電気回路16から低電圧電気回路17へ電力伝送されないように、DC/DCコンバータ23の動作を停止させたままにする。実際に、内燃機関5が「熱態」であるとき(すなわち、内燃機関5のコールドスタート状態が成立していない場合)には、低電圧電気回路17の蓄電システム24は、内燃機関5の迅速かつ安全な始動に必要な全ての電力(エネルギー)を、始動モータ20に供給することが十分に可能である。
【0028】
制御ユニット26は、内燃機関5の停止時に、内燃機関5がコールドスタート状態であれば、始動モータ20に少なくとも部分的に供給される電力を、高電圧電気回路16から低電圧電気回路17に伝送するように、DC/DCコンバータ23を作動させるように構成される。言い換えれば、道路車両1が作動状態(いわゆる「キーオン」状態)にあり、内燃機関5が「冷態」である場合(すなわち、内燃機関5がコールドスタート状態である場合)、始動モータ20に少なくとも一部が供給される電力を、高電圧電気回路16から低電圧電気回路17に伝送するように、制御ユニット26は、DC/DCコンバータ23を作動させる。実際に、内燃機関5が「冷態」であるとき(すなわち、内燃機関5がコールドスタート状態である場合)には、低電圧電気回路17の蓄電システム24は、内燃機関5の迅速かつ安全な始動に必要な全ての電力(エネルギー)を、始動モータ20に供給することができないおそれがある。したがって、高電圧電気回路16の蓄電システム14は、少なくとも部分的に始動モータ20に供給される追加の電力(エネルギー)を、(DC/DCコンバータ23を介して)供給することによって、低電圧電気回路17の蓄電システム24を「支援」し、内燃機関5の迅速かつ安全な始動を保証する。
【0029】
好ましい実施形態によれば、制御ユニット26は、蓄電システム14の充電レベルを特定し、したがって、蓄電システム14の充電レベルが所定の閾値を超えている場合にのみ、内燃機関5のコールドスタート状態の場合に、DC/DCコンバータ23を作動させるように構成される。言い換えれば、内燃機関5がコールドスタート状態である場合、高電圧電気回路16の蓄電システム14は、蓄電システム14が適切な(すなわち、高すぎない)充電レベルである場合にのみ、低電圧電気回路17の蓄電システム24を「支援」する。
【0030】
好ましい実施形態によれば、制御ユニット26は、内燃機関5が始動され次第、DC/DCコンバータ23を停止するように構成される。言い換えれば、内燃機関5が始動され次第、低電圧電気回路17に追加の電力(エネルギー)をもはや供給する必要はなく、したがって、実際には不要な状態で、高電圧電気回路16の蓄電システム14をそれ以上放電させないように、DC/DCコンバータ23は停止される。
【0031】
好ましい実施形態によれば、制御ユニット26は、内燃機関5のコールドスタート状態の場合に、内燃機関5の始動が実際に作動される瞬間(始動が要求され、開始される瞬間)にのみ、DC/DCコンバータ23を作動させるように構成される。言い換えれば、DC/DCコンバータ23は、始動モータ20が電力(エネルギー)を吸収しているときにのみ(又は吸収を開始するときにのみ)、低電圧電気回路17に電力(エネルギー)を供給する。
【0032】
別の実施形態によれば、制御ユニット26は、内燃機関5がコールドスタート状態である場合に、道路車両1の始動状態が検出されるとすぐに、DC/DCコンバータ23を作動させるように構成される。言い換えれば、DC/DCコンバータ23は、始動モータ20が電力(エネルギー)を吸収し始める前であっても、低電圧電気回路17に電力(エネルギー)を供給する。この場合、制御ユニット26は、道路車両1が始動されてから所定の時間量(例えば、10秒)が経過した後に、内燃機関5の始動要求がなければ、DC/DCコンバータ23を停止するように構成される。
【0033】
好ましい実施形態によれば、制御ユニット26は、内燃機関5がコールドスタート状態である場合に、道路車両1の始動状態が検出され次第、蓄電システム14の保護接点25を閉成するように構成される。
【0034】
好ましい実施形態によれば、制御ユニット26は、保護接点25が閉成されてから所定の時間量(例えば、10秒から30秒)が経過した後に、内燃機関5の始動要求がなければ、蓄電システム14の保護接点25を開放するように構成される。
【0035】
図1に示す実施形態では、高電圧電気回路16は、発電機としても機能することができる電気機械8を備え、したがって、それ自体の蓄電システム14を自律的に(すなわち、低電圧電気回路17とは独立して)充電することができる。この実施形態では、高電圧電気回路16は、DC/DCコンバータ23を介して、低電圧電気回路17にほぼ定期的に(連続的に)給電する。
【0036】
上記のために、内燃機関5のコールドスタート状態が成立していなければ、始動モータ20に必要な電力は、専ら低電圧電気回路17の蓄電システム24によってのみ供給されることは、明らかである(したがって、DC/DCコンバータ23を介して、高電圧電気回路16から始動モータ20に給電されない)。
【0037】
図3に示す代替実施形態では、道路車両1はハイブリッド車両ではなく、高電圧電気回路16は、発電機としても機能することができる電気機械8を含まず、したがって、それ自体の蓄電システム14を自律的に(すなわち、低電圧電気回路17とは独立して)充電することができない。この実施形態では、(明らかに、内燃機関5のクランクシャフト6によって動作する発電機に接続される)低電圧電気回路17は、DC/DCコンバータ23を介して、高電圧電気回路16に定期的に(連続的に)給電する。
図3に示す実施形態では、高電圧電気回路16は、例えば、アクティブサスペンションの電動アクチュエータなどの、関連する電気負荷に連続的に電力を供給するために使用される。
【0038】
低電圧電気回路17の公称電圧は、一般に常に12ボルトであるが、これは、この値が自動車用途の世界的な唯一の標準であるためである。一方、高電圧電気回路16の公称電圧は、48ボルトとは異なり得る(一般に、48ボルト超、最大数百ボルト、又は更には千ボルトの電圧)。
【0039】
本明細書に記載の実施形態は、互いに組み合わせることができ、そのために本発明の保護範囲を超えることはない。
【0040】
上述した道路車両1は、多くの利点を有する。
【0041】
第1に、上記に開示した道路車両1では、低電圧電気回路17の蓄電システム24の寸法及び重量を、大幅に低減することができる。この結果は、必要に応じて(すなわち、内燃機関5がコールドスタートである場合に)、低電圧電気回路17の蓄電システム24が、DC/DCコンバータ23を介して高電圧電気回路16の蓄電システム14によって「支援」されるため、低電圧電気回路17の蓄電システム24の小型化が実現することによって得られる。
【0042】
このように、上記に開示した道路車両1では、コールドスタートの場合であっても、常に内燃機関5を迅速かつ安全に始動させることができる。
【0043】
言い換えれば、上記に開示した道路車両1では、低電圧電気回路17の蓄電システム24を小型化した場合であっても、電力管理を最適化し、常に理想的な性能を保証するために、従来式の低電圧電気回路17は、高電圧電気回路16の蓄電システム14と一体化され、それらが協働するようになっている。実際に、内燃機関5がコールドスタートである場合、電気回路16の蓄電システム14は、始動モータ20に追加の電力(エネルギー)を供給し、この追加の電力(エネルギー)により、始動時間が短縮される(このことは、始動ノイズの改善にもつながる)。
【0044】
最後に、上述した電気システム15は、完全に市販の構成要素からなるものであるため、比較的に低コストで、比較的に単純であることを特徴とする。
【符号の説明】
【0045】
1 道路車両
2 前輪
3 後輪
4 パワートレインシステム
5 内燃機関
6 クランクシャフト
7 ドライブトレイン
8 電気機械
9 ドライブシャフト
10 機械的トランスミッション
11 アクスルシャフト
12 ディファレンシャル
13 DC/ACコンバータ
14 蓄電システム
15 電気システム
16 高電圧電気回路
17 低電圧電気回路
18 警報システム
19 インフォテインメントシステム
20 始動モータ
21 車室照明システム
22 外部照明
23 DC/DCコンバータ
24 蓄電システム
25 保護接点
26 制御ユニット
【外国語明細書】