(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040142
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】真空成形用化粧シートおよび化粧部材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20240315BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B32B27/30 101
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148167
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2023032575の分割
【原出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2022144543
(32)【優先日】2022-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】臼井 寛詠
(72)【発明者】
【氏名】杉田 夏生
(72)【発明者】
【氏名】新里 栄美
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 美智子
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AH02
4F100AH02A
4F100AH02C
4F100AJ06
4F100AK15
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK25
4F100AK51
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA04
4F100CA04A
4F100CA04C
4F100DD01
4F100EJ39
4F100EJ65
4F100GB07
4F100HB00B
4F100HB01
4F100HB31
4F100JK12
4F100JK12C
4F100JK13
4F100JK13A
4F100JL01
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な加工適性および高い耐傷性を備え、低温環境による耐衝撃性の低下および加工適性の低下を抑制可能な真空成型用化粧シートを提供する。
【解決手段】第1塩化ビニル系樹脂層1と、意匠層2と、第2塩化ビニル系樹脂層3と、表面保護層4とを、厚さ方向において、この順に有し、上記第1塩化ビニル系樹脂層および上記第2塩化ビニル系樹脂層は、それぞれ、塩化ビニル系樹脂および脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有し、上記第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、160MPa以下であり、上記第2塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、165MPa以上である、真空成形用化粧シートを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1塩化ビニル系樹脂層と、
意匠層と、
第2塩化ビニル系樹脂層と、
表面保護層とを、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1塩化ビニル系樹脂層および前記第2塩化ビニル系樹脂層は、それぞれ、塩化ビニル系樹脂および脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有し、
前記第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、160MPa以下であり、
前記第2塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、165MPa以上である、真空成形用化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空成形用化粧シートおよび化粧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建材に用いられる内装部材または外装部材として、基体および化粧シートを有する化粧部材が知られている。立体形状を有する基体に、化粧シートを用いて意匠性を付与するための方法の一つとして、真空成形法が知られている。真空成形法による化粧部材の製造方法は、例えば、加熱で軟化させた化粧シートを立体形状に成形された基体に減圧操作により真空吸着させることによって、化粧シートを基体の立体形状に沿って成形し、かつ貼付する方法である。
【0003】
例えば、特許文献1には、表層から、表面がエンボスされたフッ素系樹脂フィルム、合成樹脂接着剤層、所定の量の可塑剤を含有する硬質塩化ビニル系樹脂シート及び意匠層の順に積層して成ることを特徴とするメンブレン成形用化粧シートが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、及びポリ塩化ビニル系樹脂基材の少なくとも一方の面側に絵柄層を備える成形用化粧シートであって、ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、可塑剤として、フタル酸ジイソノニルを12質量部以上含有することを特徴とする成形用化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録3030051号公報
【特許文献2】特開2019-177681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空成形用化粧シートには、基体の立体形状に沿って成形しかつ貼付するため、柔軟性が求められている。また、従来、複数の層を有する化粧シートは、真空成形時の加工適性の観点からは、各層の柔軟性は同等である方が良いと考えられている。一方、化粧シートの全体に高い柔軟性を付与すると、化粧シートの耐傷性が悪化する場合がある。また、冬場および寒冷地等の低温環境においては、化粧シートの柔軟性が低下することにより耐衝撃性が低下し、化粧シートの運搬時または保管時に、化粧シートが受ける衝撃によって化粧シートが割れやすくなる場合がある。また、真空成型時の加工適性低下にも繋がる場合がある。なお、真空成型時の加工適性低下を防ぐため、一般的には、真空成型時には化粧シートを加熱するが、加熱前に低温環境でシートが受けた衝撃や張力によって、成形時に化粧シートが割れる場合がある。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、良好な加工適性および高い耐傷性を備え、低温環境による耐衝撃性の低下および加工適性の低下を抑制可能な真空成形用化粧シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示においては、第1塩化ビニル系樹脂層と、意匠層と、第2塩化ビニル系樹脂層と、表面保護層とを、厚さ方向において、この順に有し、上記第1塩化ビニル系樹脂層および上記第2塩化ビニル系樹脂層は、それぞれ、塩化ビニル系樹脂および可塑剤を含有し、上記可塑剤が、脂肪族二塩基酸系可塑剤であり、上記第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、160MPa以下であり、上記第2塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、165MPa以上である、真空成形用化粧シートを提供する。
【0009】
本開示においては、第1塩化ビニル系樹脂層の一方の面に、意匠層を形成する意匠層形成工程と、上記意匠層の上記第1塩化ビニル系樹脂層側とは反対の面側に、第2塩化ビニル系樹脂層を配置する配置工程と、上記第2塩化ビニル系樹脂層の上記意匠層側とは反対の面側に、表面保護層を形成する表面保護層形成工程と、を有し、上記第1塩化ビニル系樹脂層および上記第2塩化ビニル系樹脂層は、それぞれ、塩化ビニル系樹脂および脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有し、上記第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、160MPa以下であり、上記第2塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、165MPa以上である、真空成形用化粧シートの製造方法を提供する。
【0010】
また、本開示においては、基体と、上述の真空成形用化粧シートと、を有する、化粧部材を提供する。
【0011】
本開示においては、上述に記載の化粧部材の製造方法であって、基体および上記真空成形用化粧シートを準備する準備工程と、上記真空成形用化粧シートを加熱することによって軟化させる軟化工程と、軟化させた上記真空成形用化粧シートを上記基体の形状に減圧操作により真空吸着させる真空吸着工程と、を有する化粧部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示においては、良好な加工適性および高い耐傷性を備え、低温環境による耐衝撃性の低下および加工適性の低下を抑制可能な真空成形用化粧シートを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示における真空成形用化粧シートを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における真空成形用化粧シートを例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における第2塩化ビニル系樹脂層の凹凸形状を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における第2塩化ビニル系樹脂層の凹凸形状を例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における第2塩化ビニル系樹脂層の凹凸形状を例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における真空成形用化粧シートを例示する概略断面図である。
【
図7】本開示における第2塩化ビニル系樹脂層および光輝層を例示する概略断面図である。
【
図8】本開示における第2塩化ビニル系樹脂層および光輝層を例示する概略断面図である。
【
図9】本開示における真空成形用化粧シートを例示する概略断面図である。
【
図10】本開示における化粧シートの製造方法を例示する概略断面図である。
【
図11】本開示における化粧部材を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記に、図面等を参照しながら、実施の形態を説明する。ただし、本開示は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状について模式的に表す場合があるが、これはあくまで一例であり、限定して解釈されない。
【0015】
本明細書において、ある部材に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。
【0016】
A.真空成形用化粧シート
以下、本開示における真空成形用化粧シートについて、詳細に説明する。
図1および
図2は、本開示における真空成形用化粧シートを例示する概略断面図である。
図1に示す真空成形用化粧シート10は、第1塩化ビニル系樹脂層1と、意匠層2と、第2塩化ビニル系樹脂層3と、表面保護層4とを、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。第1塩化ビニル系樹脂層1および第2塩化ビニル系樹脂層3は、それぞれ、塩化ビニル系樹脂および脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有する。さらに、本開示においては、第1塩化ビニル系樹脂層1の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、160MPa以下であり、第2塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、165MPa以上である。また、
図2に示す真空成形用化粧シート10は、厚さ方向D
Tにおいて、裏面プライマー層6、第1塩化ビニル系樹脂層1、意匠層2、第2塩化ビニル系樹脂層3、および表面保護層4を、この順に有する。また、
図2に示す真空成形用化粧シート10は、表面保護層4側の表面に、凹凸形状を有する。
【0017】
本開示の真空成形用化粧シートは、第1塩化ビニル系樹脂層1の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが所定の値以下であることにより、第1塩化ビニル系樹脂層1が柔軟性に優れるため、真空成形時の加工適性に優れる。さらに、第2塩化ビニル系樹脂層3の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが所定の値以上であることにより、耐傷性に優れる。
【0018】
本開示における真空成形用化粧シートは、第1塩化ビニル系樹脂層および第2塩化ビニル系樹脂層が、脂肪族二塩基酸系可塑剤を有することにより、耐寒性が向上する。そのため、冬場および寒冷地等の低温環境で運搬または保管する際にも、柔軟性の低下を抑制できる。そのため、耐衝撃性の低下が抑制され、真空成形時の加工適性の低下を抑制することができる。また、表面保護層が配置されていることにより、可塑剤のブリードアウトを抑制することができる。
【0019】
1.第1塩化ビニル系樹脂層
本開示における第1塩化ビニル系樹脂層は、塩化ビニル系樹脂および脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有し、厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、所定の値以下である。
【0020】
1-1.ナノインデンテーション硬さ
本開示における第1塩化ビニル系樹脂層は、厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、通常、160MPa以下であり、150MPa以下であってもよく、120MPa以下であってもよい。第1塩化ビニル系樹脂層の上記ナノインデンテーション硬さが高い場合、第1塩化ビニル系樹脂層の柔軟性が低いため、化粧シートの真空成形時の加工適性が低下する。一方、第1塩化ビニル系樹脂層の上記ナノインデンテーション硬さは、例えば、30MPa以上であり、60MPa以上であってもよく、100MPa以上であってもよい。
【0021】
第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さは、ナノインデンテーション法による硬度測定によって得られる圧子の負荷から除荷までの荷重-変位曲線から求められる値である。第1塩化ビニル系樹脂層のインデンテーション硬さは、第1塩化ビニル系樹脂層の断面が露出した測定用のサンプルを以下の方法で作製し、常温で以下の方法で測定する。
【0022】
(測定用サンプル作製)
真空成形用化粧シートを任意の大きさに切断することにより、カットサンプルを作製する。カットサンプルを樹脂(常温硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させることにより、カットサンプルを樹脂で包埋してなる包埋サンプルを作製する。
【0023】
切断装置を用いて包埋サンプルを垂直に切断し、真空成形用化粧シートの断面が露出してなる、ナノインデンテーション硬さ測定用のサンプルを作製する。上記切断装置としては、例えば、ライカマイクロシステムズ社製の商品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」が挙げられる。
【0024】
(測定方法)
インデンテーション法は、試料表面に圧子をある荷重まで押し込んだ後、その圧子を取り除くまでの荷重と変位の関係を測定する方法である。インデンテーション法では、最大押し込み時の圧痕の大きさからインデンテーション硬さHITを算出する。
【0025】
具体的に、上述した測定用サンプルの切断面に対して、下記ナノインデンターを用いて、バーコビッチ圧子(材質:ダイヤモンド三角錐)を垂直に押し込んで測定する。測定装置及び測定条件は以下の通りである。ここで、バーコビッチ圧子を押し込む位置は、第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の略中心とすることが好ましい。略中心とは、第1塩化ビニル系樹脂層の厚さをT[μm]と定義した際に、第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の中心からのズレが±0.1T以内であることを意味する。
【0026】
・使用装置:ナノインデンター(TI 950 TriboIndenter、BRUKER社製)
・使用圧子:バーコビッチ圧子(型番:TI-0039、BRUKER社製)
・押し込み条件:荷重制御方式
・最大荷重:200μN
・荷重印加時間:20秒間(0μN→200μN 荷重変化率:10μN/sec)
・保持時間:10秒間
・保持荷重:200μN
・荷重除荷時間:20秒間(200μN→0μN 荷重変化率:-10μN/sec)
【0027】
第1塩化ビニル系樹脂層のインデンテーション硬さは、下記のようにして算出することができる。まず、押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成する。作成した荷重-変位曲線を解析し、最大押し込み荷重Fmax(N)を、そのときの圧子と第1塩化ビニル系樹脂層とが接している投影面積Ap(mm2)で除した値として、インデンテーション硬さHITを算出することができる(下記式(1))。
HIT=Fmax/Ap …(1)
ここで、Apは標準試料の溶融石英(BRUKER社製の5-0098)を用いてOliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積である。
【0028】
本明細書において、第1塩化ビニル系樹脂層のインデンテーション硬さは、10箇所の測定値の算術平均値を意味する。ここで、上記10箇所は、上述した第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の略中心において、厚さ方向とは垂直方向に10μmずつ間隔を開けた位置とする。例えば、第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の略中心における所定の箇所で1箇所目の測定を行った後、バーコビッチ圧子を厚さ方向とは垂直方向に10μmずらし、第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の略中心で2箇所目の測定を行う。2箇所目の測定を行った後、バーコビッチ圧子を厚さ方向とは垂直方向に10μmずらし、第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の略中心で3箇所目の測定を行う。これを繰り返すことにより10箇所の測定を行う。またインデンテーション硬さの測定の雰囲気は、温度23℃±5℃、湿度40~65%とする。
【0029】
第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さは、例えば、脂肪族二塩基酸系可塑剤の含有量の調整を行う方法等によって調整することができる。具体的には、脂肪族二塩基酸系可塑剤の含有量を少なくすることで、ナノインデンテーション硬さの数値を上げることができ、脂肪族二塩基酸系可塑剤の含有量を多くすることにより、ナノインデンテーション硬さの数値を下げることができる。また、脂肪族二塩基酸系可塑剤の種類を変更する方法によっても、ナノインデンテーション硬さを調整することができる。
【0030】
1-2.第1塩化ビニル系樹脂層の組成
(1)塩化ビニル系樹脂
本開示における第1塩化ビニル系樹脂層は、塩化ビニル系樹脂を含有する。塩化ビニル系樹脂は、-(CH2-CHCl)-の単位構造を有することが好ましい。さらに、塩化ビニル系樹脂は、-(CH2-CHCl)-の単位構造を、主たる単位構造として有することが好ましい。塩化ビニル系樹脂としては、例えば、以下の(i)~(iii)が挙げられる。
(i)塩化ビニルモノマーの単独重合体
(ii)塩素化塩化ビニル系樹脂
(iii)塩化ビニルモノマーに、他のモノマーを共重合させた塩化ビニル共重合体
【0031】
上記(iii)における他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、エチレン、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが挙げられる。第1塩化ビニル系樹脂層は、塩化ビニル系樹脂を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。例えば、第1塩化ビニル系樹脂層は、上記(i)~(iii)のうち、2種以上の塩化ビニル系樹脂を含有していてもよい。
【0032】
第1塩化ビニル系樹脂層は、樹脂として、塩化ビニル系樹脂のみを含有していてもよく、塩化ビニル系樹脂以外の樹脂をさらに含有していてもよい。後者の場合、第1塩化ビニル系樹脂層は、樹脂の主成分(質量割合が最も多い成分)として、塩化ビニル系樹脂を含有することが好ましい。第1塩化ビニル系樹脂層に含まれる全ての樹脂に対する塩化ビニル系樹脂の割合は、例えば50質量%以上であり、70質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。塩化ビニル系樹脂以外の樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体が挙げられる。
【0033】
第1塩化ビニル系樹脂層は、通常、塩化ビニル系樹脂を主成分として含有する。第1塩化ビニル系樹脂層における塩化ビニル系樹脂の割合は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上であってもよい。
【0034】
(2)脂肪族二塩基酸系可塑剤
本開示における第1塩化ビニル系樹脂層は、脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有する。脂肪族二塩基酸系可塑剤を用いることにより、例えば、フタル酸系可塑剤に比べ、低温下での柔軟性が良好となり、耐寒性に優れる化粧シートとなる。
【0035】
塩化ビニル系樹脂層の耐寒性は、JIS K 6773に記載のクラッシュベルグ柔軟温度試験により評価することができる。例えば、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOP)、またはフタル酸ジイソデシル(DIDP)等のフタル酸系可塑剤を50phr含む厚さ1mmの軟質塩化ビニルシートのクラッシュベルグ柔軟温度は-25℃前後であるのに対し、脂肪族二塩基酸系可塑剤であるアジピン酸ジイソノニル(DINA)を50phr含む厚さ1mmの軟質塩化ビニルシートのクラッシュベルグ柔軟温度は-50℃前後である。なお、クラッシュベルグ柔軟温度試験は、主に軟質塩化ビニル樹脂の低温下でのねじり剛性を評価する試験である。試験片を-55℃に冷却後、温度を5℃間隔で昇温し、各温度で一定のトルクをかけねじれ角度を測定し、温度-剛性率曲線から剛性率310MPa時の温度を柔軟温度として求める試験である。クラッシュベルグ柔軟温度が低いほど、耐寒性が良好となる。これにより、脂肪族二塩基酸系可塑剤を用いることにより、フタル酸系可塑剤を用いた場合に比べ、低温下での柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂層が得られると推察される。
【0036】
脂肪族二塩基酸系可塑剤としては、例えば、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル及びアゼライン酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。また、これらのエステルにおいて、脱水縮合によりエステルを構成するアルコールとしては、炭素数が3以上13以下の脂肪族アルコールなどを用いることができる。また、これらのアルコールは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
脂肪族二塩基酸系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)及びアゼライン酸ジオクチル(DOZ)からなる群より選択される少なくとも一つを用いることができる。中でも、耐寒性が特に優れる点からアジピン酸エステルが好ましく、アジピン酸ジイソノニルが特に好ましい。
【0037】
第1塩化ビニル系樹脂層に脂肪族二塩基酸系可塑剤が含まれていることは、例えば、FT-IRにより確認することができる。
【0038】
また、第1塩化ビニル系樹脂層における脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量は、後述する第2塩化ビニル系樹脂層における脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量よりも多いことが好ましい。具体的に、第1塩化ビニル系樹脂層における、塩化ビニル系樹脂100質量部に対する脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量は、第2塩化ビニル系樹脂層における、塩化ビニル系樹脂100質量部に対する脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量よりも多いことが好ましい。
【0039】
第1塩化ビニル系樹脂層における脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましい。可塑剤の割合が少ないと、柔軟性が低下する可能性があり、真空成形時の加工適性が低下する可能性がある。一方、脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましい。可塑剤の割合が多いと、可塑剤のブリードアウトが発生する場合がある。
【0040】
上記塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤の割合は、以下の方法で測定される。すなわち、第1塩化ビニル系樹脂層をマイクロカンナで削り出し、約10mgをサンプリングし、50mLのサンプル管ビンに入れる。次に、サンプル管ビンに、アセトンおよびヘキサンの混合溶媒(アセトン:ヘキサン=7:3、体積比)を20mL加え、フタをして、12時間以上振とうする。振とう後、メッシュサイズ0.2μmのフィルターで加圧ろ過し、ろ液を、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により測定する。これにより、塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤の割合が求められる。
【0041】
本開示における第1塩化ビニル系樹脂層は、脂肪族二塩基酸系可塑剤以外の可塑剤を含まないことが好ましいが、脂肪族二塩基酸系可塑剤以外の可塑剤を含んでもよい。後者の場合、第1塩化ビニル系樹脂層に含まれる脂肪族二塩基酸系可塑剤以外の可塑剤は、第1塩化ビニル系樹脂層に含まれる可塑剤の総量に対して、例えば、5質量%以下であり、3質量%以下であってもよく、1質量%以下であってもよい。脂肪族二塩基酸系可塑剤以外の可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、リン酸系可塑剤等が挙げられる。
【0042】
(3)その他
第1塩化ビニル系樹脂層は、着色剤を含有することが好ましい。化粧シートの隠蔽性を向上させることができ、基体の色および模様の影響を受けにくい化粧シートとなる。第1塩化ビニル系樹脂層は、例えば、灰色、茶色、赤色、青色、緑色などの所望の色に着色されている。着色剤としては、公知の各種顔料、染料等から選択すればよい。例えば、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料や、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、ニッケル-アゾ錯体、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料等の有機顔料又は有機染料等が使用できる。
【0043】
また、第1塩化ビニル系樹脂層は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、界面活性剤、充填剤、帯電防止剤が挙げられる。
【0044】
1-3.第1塩化ビニル系樹脂層
第1塩化ビニル系樹脂層は、透明(有色透明または無色透明)であってもよく、不透明であってもよいが、不透明であることが好ましい。第1塩化ビニル系樹脂層の厚さは、例えば200μm以下であり、180μm以下であってもよい。第1塩化ビニル系樹脂層が厚いと、真空成形時の加工適性が低下する可能性がある。一方、第1塩化ビニル系樹脂層の厚さは、例えば60μm以上であり、80μm以上であってもよい。第1塩化ビニル系樹脂層の厚さが薄いと、所望の隠蔽性が得られない場合がある。
【0045】
2.第2塩化ビニル系樹脂層
本開示における第2塩化ビニル系樹脂層は、表面保護層と意匠層との間に配置される。第2塩化ビニル系樹脂層を配置することにより、摩耗や薬品汚染等による意匠層の劣化を抑制することができる。第2塩化ビニル系樹脂層は、塩化ビニル系樹脂および脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有する。また、第2塩化ビニル系樹脂層は、厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが所定の値以上であることにより、耐傷性が向上する。
【0046】
2-1.ナノインデンテーション硬さ
本開示における第2塩化ビニル系樹脂層は、厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、通常、165MPa以上であり、170MPa以上であってもよく、180MPa以上であってもよい。第2塩化ビニル系樹脂層の上記ナノインデンテーション硬さが低い場合、化粧シートの耐傷性が悪化する。
【0047】
一方、第2塩化ビニル系樹脂層の上記ナノインデンテーション硬さは、例えば、250MPa以下であり、220MPa以下であってもよく、200MPa以下であってもよい。第2塩化ビニル系樹脂層の上記ナノインデンテーション硬さが高い場合、真空成形時の加工適性が低下する場合がある。また、第2塩化ビニル系樹脂層の上記ナノインデンテーション硬さが上記値以下であることにより、エンボス加工が容易となり、後述の凹凸形状を賦形しやすくなる。
【0048】
第2塩化ビニル系樹脂層のナノインデンテーション硬さの測定方法は、第1塩化ビニル系樹脂層のナノインデンテーション硬さの測定方法と同様である。
【0049】
第2塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さは、例えば、脂肪族二塩基酸系可塑剤の含有量の調整を行う方法等によって調整することができる。具体的には、脂肪族二塩基酸系可塑剤の含有量を少なくすることで、ナノインデンテーション硬さの数値を上げることができ、脂肪族二塩基酸系可塑剤の含有量を多くすることにより、ナノインデンテーション硬さの数値を下げることができる。また、脂肪族二塩基酸系可塑剤の種類を変更する方法によっても、ナノインデンテーション硬さを調整することができる。
【0050】
2-2.第2塩化ビニル系樹脂層の組成
(1)塩化ビニル系樹脂
本開示における第2塩化ビニル系樹脂層は、塩化ビニル系樹脂を含有する。第2塩化ビニル系樹脂層に含まれる塩化ビニル系樹脂としては、上記第1塩化ビニル系樹脂層で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0051】
第2塩化ビニル系樹脂層は、樹脂として、塩化ビニル系樹脂のみを含有していてもよく、塩化ビニル系樹脂以外の樹脂をさらに含有していてもよい。後者の場合、第2塩化ビニル系樹脂層は、樹脂の主成分(質量割合が最も多い成分)として、塩化ビニル系樹脂を含有することが好ましい。第2塩化ビニル系樹脂層に含まれる全ての樹脂に対する塩化ビニル系樹脂の割合は、例えば50質量%以上であり、70質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。塩化ビニル系樹脂以外の樹脂としては、上記第1塩化ビニル系樹脂層で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0052】
第2塩化ビニル系樹脂層は、通常、塩化ビニル系樹脂を主成分として含有する。第2塩化ビニル系樹脂層における塩化ビニル系樹脂の割合は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上であってもよい。
【0053】
(2)脂肪族二塩基酸系可塑剤
本開示における第2塩化ビニル系樹脂層は、脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有する。第2塩化ビニル系樹脂層に含まれる脂肪族二塩基酸系可塑剤としては、上記第1塩化ビニル系樹脂層で例示したものと同様のものが挙げられる。中でも、耐寒性が特に優れる点からアジピン酸エステルが好ましい。さらに、アジピン酸ジイソノニルはブリードアウトしにくく、透明性が高いため、第2塩化ビニル系樹脂層として特に好ましい。
【0054】
第2塩化ビニル系樹脂層における脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、例えば、1質量部以上であり、2質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましい。可塑剤の割合が少ないと、真空成形時の加工適性が低下する可能性がある。一方、上記第2塩化ビニル系樹脂層における脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、例えば、15質量部未満であり、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。可塑剤の割合が多いと、耐傷性が悪化する場合があり、また、可塑剤のブリードアウトが発生する可能性がある。
【0055】
本開示における第2塩化ビニル系樹脂層は、脂肪族二塩基酸系可塑剤以外の可塑剤を含まないことが好ましいが、脂肪族二塩基酸系可塑剤以外の可塑剤を含んでもよい。後者の場合、第2塩化ビニル系樹脂層に含まれる脂肪族二塩基酸系可塑剤以外の可塑剤は、第2塩化ビニル系樹脂層に含まれる可塑剤の総量に対して、例えば、5質量%以下であり、3質量%以下であってもよく、1質量%以下であってもよい。脂肪族二塩基酸系可塑剤以外の可塑剤としては、上記第1塩化ビニル系樹脂層で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0056】
(3)その他
また、第2塩化ビニル系樹脂層は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、界面活性剤、充填剤、帯電防止剤が挙げられる。
【0057】
紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤であってもよく、無機系紫外線吸収剤であってもよい。有機系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-(4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-フ2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のヒドロキフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等のトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。一方、無機系紫外線吸収剤としては、例えば、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄等の金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物粒子の平均粒径は、例えば200nm以下である。
【0058】
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-)4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートが挙げられる。
【0059】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
【0060】
2-3.第2塩化ビニル系樹脂層
第2塩化ビニル系樹脂層の厚さは、例えば250μm以下であり、200μm以下であってもよく、180μm以下であってもよい。第2塩化ビニル系樹脂層が厚いと、例えば、曲面部を有する基体に対する真空成形時の加工適性が低下する可能性がある。一方、第2塩化ビニル系樹脂層の厚さは、例えば100μm以上であり、120μm以上であってもよく、140μm以上であってもよい。第2塩化ビニル系樹脂層の厚さが薄いと、耐傷性が低下する可能性がある。また、第2塩化ビニル系樹脂層の厚さが上記値以上であることにより、エンボス加工が容易となり、凹凸形状を賦形しやすくなる。
【0061】
第2塩化ビニル系樹脂層は、意匠層を識別可能な透明性を有していることが好ましい。また、第2塩化ビニル系樹脂層は、表面保護層側の面に、凸部と凹部とを有する凹凸形状を有していてもよい。
【0062】
第2塩化ビニル系樹脂層の凸部および凹部は、以下のように定義される。すなわち、
図3(a)に示すように、第2塩化ビニル系樹脂層3の意匠層2とは反対側の面のうち、凹凸が形成されていない面を基準面Bとする。凸部Xとは、厚さ方向D
Tにおいて、基準面Bと同じ位置、および、基準面Bより突出した位置にある部位をいう。凹部Yとは、厚さ方向D
Tにおいて、基準面Bより凹んだ位置にある部位をいう。
図3(a)では、いずれの凸部Xも、厚さ方向D
Tにおいて、基準面Bと同じ位置になる平坦面のみを有している。一方、
図3(b)では、中央の凸部Xは、厚さ方向D
Tにおいて、基準面Bより突出している。左側の凸部Xおよび右側の凸部Xは、厚さ方向D
Tにおいて、基準面Bと同じ位置になる平坦面のみを有している。また、
図3(c)では、いずれの凸部Xも、中央に、厚さ方向D
Tにおいて、基準面Bと同じ位置になる平坦面を有しているが、凸部Xの端部は、厚さ方向D
Tにおいて、基準面Bより突出している。
【0063】
第2塩化ビニル系樹脂層における凸部または凹部は、意匠層に絵柄に対応して配置されてもよい。第2塩化ビニル系樹脂層が凹凸形状を有することにより、見た目の凹凸感の他、触感、グロスマット感等が得られる。
【0064】
凹部の断面視形状は、特に限定されない。
図4および
図5は、本開示における第2塩化ビニル系樹脂層の凹凸形状を例示する概略断面図である。
図4(a)に示すように、第2塩化ビニル系樹脂層3の凹部Yの断面視形状は、台形状であってもよい。また、
図4(b)~(d)に示すように、第2塩化ビニル系樹脂層3の凹部Yの断面視形状は、矩形状であってもよく(
図4(b))、三角形状であってもよく(
図4(c))、角部が曲率を有する形状(例えばU字形状)であってもよい(
図4(d))。また、1つの凹部Yにおいて壁面の傾斜角が異なっていてもよい(
図5(a))。また、底面が傾斜していてもよい(
図5(b))。
【0065】
凹部の平面視形状は、特に限定されない。凹部の平面視形状は、ライン状であってもよくドット状であってもよい。各ドットの平面視形状としては、例えば、円状、楕円状、三角形状、矩形状が挙げられる。凹部の模様の具体例としては、例えば木目板導管溝、石板表面、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝が挙げられる。
【0066】
図4および
図5に示すように、凹部Yの幅をWとする。幅Wは、例えば20μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。一方、幅Wは、例えば1cm以下であり、5mm以下であってもよく、2mm以下であってもよい。凹部Yの幅Wとは、凹部Yの開口の長さ(厚さ方向D
Tに直交する方向D
Cにおける開口の長さ)である。
【0067】
図4および
図5に示すように、凹部Yの深さをHとする。深さHは、例えば、5μm以上であり、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。一方、深さHは、例えば400μm以下であり、300μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。凹部Yの深さHとは、凹部Yの底部と、凹部Yおよび凸部Xの境界との最大距離(厚さ方向D
Tにおける距離)である。
【0068】
具体的には、後述の光輝層が、樹脂成分としてアクリル系樹脂を含む場合、第2塩化ビニル系樹脂層の凹部Yの深さHは、例えば、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。意匠性を発現しつつ、第2塩化ビニル系樹脂層と光輝層との密着性がより良好となるためである。
【0069】
後述する光輝層が、樹脂成分としてアクリル系樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合体とを含む場合、真空成形における加熱伸長時に、光輝層が第2塩化ビニル系樹脂層の伸びに追従しやすくなる。この場合、第2塩化ビニル系樹脂層の凹部Yの深さが深くても、第2塩化ビニル系樹脂層と光輝層との密着性が良好な化粧シートとなる。この場合における凹部Yの深さは、例えば、10μm以上、400μm以下とすることができ、20μm以上、350μm以下であってもよい。上記範囲であれば、意匠性を発現しつつ、化粧シート表面の凹部に詰まった汚れが除去しやすくなる。
【0070】
図4および
図5に示すように、隣接する凹部Yの間のピッチをPとする。ピッチPは、例えば、5μm以上であり、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。一方、ピッチPは、例えば5cm以下であり、1cm以下であってもよく、5mm以下であってもよい。隣接する凹部Yの間のピッチPとは、隣接する凹部Yの中心間距離(厚さ方向D
Tに直交する方向D
cにおける中心間距離)である。
【0071】
表面に凹凸形状を有する第2塩化ビニル系樹脂層の形成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、意匠層上に第2塩化ビニル系樹脂層をラミネート形成し、意匠層とは反対側の面に凹凸形状(凸部および凹部)を形成する方法が挙げられる。
【0072】
凹凸を形成する方法については、特に限定されないが、例えばエンボス加工が挙げられる。エンボス加工では、例えば、加熱ドラム上で第2塩化ビニル系樹脂層を加熱軟化させた後、さらに赤外線輻射ヒーターで加熱し、所望の形の凹凸模様を設けたエンボス板で加圧、賦形し、冷却固定することで、凹凸形状を有する第2塩化ビニル系樹脂層が得られる。加熱温度は、例えば、80℃以上、260℃以下であり、85℃以上、200℃以下であってもよく、100℃以上、180℃以下であってもよい。エンボス加工は、例えば、枚葉式エンボス機または輪転式エンボス機を用いて行うことができる。また、意匠層上に第2塩化ビニル系樹脂層を積層する工程で、同時にエンボス加工を行う方法(いわゆるダブリングエンボス法)を用いてもよい。
【0073】
3.意匠層
本開示における意匠層は、第1塩化ビニル系樹脂層と第2塩化ビニル系樹脂層との間に配置され、化粧シートに意匠性を付与する。意匠層は、単層であってもよく、同種または異種の複数層の積層体であってもよい。意匠層は、例えば、ベタ層および絵柄層の少なくとも一方を有し、ベタ層および絵柄層の両方を有することが好ましい。本開示において、ベタ層とは、多孔質基材の一方の面の全面に形成された層を意味する。また、絵柄層とは、多孔質基材の一方の面に部分的(特にパターン状)に形成された層を意味する。
【0074】
絵柄層における絵柄(模様)としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様が挙げられる。
【0075】
意匠層は、通常、着色剤およびバインダー樹脂を含有する。着色剤としては、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料(染料を含む)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等のパール顔料が挙げられる。
【0076】
意匠層における着色剤の配合量は、バインダー樹脂100質量部に対し、例えば、0質量部以上であり、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。一方、上記着色剤の配合量は、例えば、50質量部以下であり、45質量部以下であることが好ましい。上記範囲とすることにより、第1塩化ビニル系樹脂層と第2塩化ビニル系樹脂層との密着性を損なわずに意匠層を配置することができる。
【0077】
バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルーアクリル共重合体、塩素化プロピレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。意匠層は、バインダー樹脂を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。意匠層は、アクリルポリオール系樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合体とを有することが好ましい。第1塩化ビニル系樹脂層と第2塩化ビニル系樹脂層との密着性を損なわずに意匠層を配置することができるためである。
【0078】
意匠層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤、可塑剤、触媒等の添加剤を含有していてもよい。意匠層の厚さは、例えば、0.5μm以上、20μm以下であり、1μm以上、10μm以下であってもよく、2μm以上、5μm以下であってもよい。また、意匠層の形成方法としては、例えば、着色剤、バインダー樹脂および溶剤を含有するインキを塗工し、その後、乾燥する方法が挙げられる。
【0079】
4.表面保護層
本開示における真空成形用化粧シートは、第2塩化ビニル系樹脂層の意匠層とは反対側の面に表面保護層を有する。表面保護層を有することにより、第2塩化ビニル系樹脂層に含まれる可塑剤のブリードアウトを抑制することができる。
【0080】
表面保護層は、通常、バインダー樹脂を含有する。バインダー樹脂として、硬化性樹脂組成物の硬化物(特に、熱硬化性樹脂組成物の硬化物)を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する組成物である。熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリルポリオール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。また、熱硬化性樹脂組成物は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加したものであってもよい。本開示においては、熱硬化性樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルおよびアクリルポリオール系樹脂を含むことが好ましい。真空成形時の加熱伸張性が良好となるためである。
【0081】
表面保護層におけるバインダー樹脂の割合は、例えば70質量%以上である。表面保護層は、添加剤として、艶消し剤(マット剤)、酸化防止剤、光安定剤および紫外線吸収剤の少なくとも一つをさらに含有していてもよい。艶消し剤としては、例えばシリカが挙げられる。酸化防止剤、光安定剤および紫外線吸収剤としては、第2塩化ビニル系樹脂層で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0082】
表面保護層の厚さは、10μm以下が好ましい。表面保護層の厚さが上記値以下であれば、真空成形時の加工適性がより良好となる。一方、表面保護層の厚さは、1μm以上であってもよいし、3μm以上であってもよい。
【0083】
本開示における表面保護層は、化粧シートの全面に配置されていてもよいし、化粧シートの一部に配置されていてもよい。
表面保護層の形成方法としては、例えば、樹脂成分と、添加物とを含有する混合物を、耐候層の面に塗工し、乾燥し、硬化させる方法が挙げられる。
【0084】
5.光輝層
本開示においては、
図6に示すように、第2塩化ビニル系樹脂層3が、意匠層2とは反対側の面(第2塩化ビニル系樹脂層の表面保護層側の面)に、凸部Xと凹部Yとを有する凹凸形状を有する場合、化粧シート10は、第2塩化ビニル系樹脂層3の意匠層2とは反対側の面に、光輝性顔料および樹脂成分を含有する光輝層5を有していてもよい。光輝層5は、凹部Yに配置されている。本開示においては、意匠層および光輝層を組み合わせることで、高い意匠性が得られる。
図6に示す化粧シート10は、厚さ方向D
Tに断面視した場合に、凸部Xおよび凹部Yは、厚さ方向D
Tに直交する方向D
cにおいて、交互に配置されている。
【0085】
従来、樹脂層の凹部に光輝性インキが充填されて形成された光輝層は、例えば、非光輝性インキが充填されて形成された非光輝層よりも、樹脂層との密着性が低くなりやすい。これは、光輝性インキに含まれる光輝性顔料は、通常、非光輝性顔料よりも粒径が大きいため、樹脂層への溶剤アタック性が低下するためである。このような化粧シートは、真空成形用の化粧シートとして用いた場合に、真空成形の際の加熱伸長時において、光輝層の剥離や光輝層に含まれる光輝性顔料の脱離等の加工不良が生じる場合がある。
【0086】
本開示においては、凹凸形状を有する樹脂層として従来使用されているポリオレフィン系樹脂と比較して、溶剤アタック性が高い塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂層(第2塩化ビニル系樹脂層)を用いる。これにより、第2塩化ビニル系樹脂層の凹部に光輝性インキを充填した際に、光輝性インキの溶剤が第2塩化ビニル系樹脂層に浸透しやすくなり、第2塩化ビニル系樹脂層と光輝層との密着性が向上する。
【0087】
さらに、本開示における真空成形用化粧シートは、上述したように、第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが所定の値以下であることにより、良好な加工適性を有する。このように加工適性が良好な化粧シートは、真空成形の際の加熱伸長時において、光輝層の剥離や光輝層に含まれる光輝性顔料の脱離等の加工不良を抑制できる。
【0088】
さらに、塩化ビニル系樹脂層と光輝層との密着性は、低温環境下で低下しやすい。これは、塩化ビニル系樹脂層が低温環境下で硬くなり、柔軟性が低下するためと推察される。これに対し、本開示の真空成形用化粧シートは、第2塩化ビニル系樹脂層が脂肪族二塩基酸系可塑剤を含む。従って、真空成形用化粧シートを冬場および寒冷地等の低温環境で運搬または保管する際にも、真空成形時の加工不良を抑制することができる。
【0089】
(1)光輝層の組成
光輝層は、光輝性顔料および樹脂成分を含有する。
【0090】
(a)樹脂
光輝層は、樹脂成分を含有する。樹脂成分としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。アクリル系樹脂を含むことにより、真空成形の際の加熱伸長時であっても、光輝性顔料が樹脂成分で十分にバインドされるため、光輝性顔料がさらに脱離しにくくなる。溶剤アタック性が高い第2塩化ビニル系樹脂層を用い、かつ、アクリル系樹脂を含む光輝層を用いることにより、第2塩化ビニル系樹脂層と、光輝層に含まれる樹脂成分と、光輝層に含まれる光輝性顔料との結着力が向上する。従って、光輝層と第2塩化ビニル系樹脂層との密着性が良好となり、真空成形時の光輝層の剥離や光輝層に含まれる光輝性顔料の脱離等の加工不良をより抑制できる。アクリル系樹脂の具体例としては、好ましくはアクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂などが挙げられる。本開示においては、アクリルポリオール樹脂が好ましい。
【0091】
アクリルポリオール樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させて得られるものが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0092】
また、アクリル樹脂としては、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成単位とするアクリル樹脂が好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。アクリル樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリルまたはメタクリル」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
【0093】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸セカンダリーブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体としては、上記例示されたものから選ばれる2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が例示され、これらの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0094】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合体を形成する他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なものであれば特に限定されないが、本発明では、(メタ)アクリル酸、スチレン、(無水)マレイン酸、フマル酸、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル、アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、イソブテン、1-ブテン、2-ブテン、N-ビニル-2-ピロリドン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ノルボルネン類などの脂環式オレフィンモノマー、ビニルカプロラクタム、シトラコン酸無水物、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド類、ビニルエーテル類などが好ましく挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0095】
光輝層に含まれるアクリル系樹脂の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、例えば、30質量部以上、100質量部以下であり、40質量部以上、90質量部以下であってもよく、50質量部以上、80質量部以下であってもよい。上記範囲であれば、真空成形における加熱伸長時であっても、光輝性顔料と樹脂成分との結着力がより向上し、光輝性顔料が剥離しにくくなる。
【0096】
光輝層は、樹脂成分として、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましい。真空成形における加熱伸長時に、化粧シート、特に、第2塩化ビニル系樹脂層の伸びに追従しやすくなり、光輝層の剥離の発生等の加工不良をより抑制できるためである。特に、光輝層は、上述したアクリル系樹脂に加え、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましい。
【0097】
光輝層に含まれる塩化ビニル酢酸ビニル共重合体の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、例えば、0質量部以上、70質量部以下であり、10質量部以上、60質量部以下であってもよく、20質量部以上、50質量部以下であってもよい。
【0098】
光輝層は、他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂とは、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化プロピレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。光輝層は、樹脂を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0099】
光輝層は、樹脂成分として、樹脂の硬化物を含有していてもよい。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤が挙げられる。光輝層は、アクリルポリオール樹脂の硬化物を含むことが好ましく、特に、アクリルポリオール樹脂を硬化剤で架橋硬化した硬化物を含むことが好ましい。
【0100】
光輝層は、樹脂成分として、(i)塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体)およびアクリルポリオール樹脂の混合樹脂を含む、または、(ii)アクリルポリオール樹脂を硬化剤で架橋硬化した硬化物を含むことが好ましい。
【0101】
(b)光輝性顔料
光輝性顔料としては、酸化チタン又は酸化鉄の薄膜で表面を被覆したマイカ(雲母)、真珠貝等の貝殻、酸塩化ビスマス、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなるパール顔料(真珠光沢顔料)、あるいはアルミニウム、真鍮、金、銀、銅、錫、ニッケル等の金属の鱗片状箔片、金属蒸着した樹脂フィルムの鱗片状箔片、互に屈折率の異なる樹脂フィルムを多層積層して干渉光沢を発現せしめたものの鱗片状箔片等を用いることができる。
【0102】
光輝性顔料の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、5μm以上、60μm以下であり、5μm以上、25μm以下であってもよい。
【0103】
光輝層が、樹脂成分としてアクリル系樹脂を含む場合、光輝性顔料の平均粒径は、例えば、25μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。光輝層と第2塩化ビニル系樹脂層との密着性がより良好となるためである。一方、この場合における光輝性顔料の平均粒径は、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。
【0104】
光輝層が、樹脂成分としてアクリル系樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合体とを含む場合、真空成形における加熱伸長時に、化粧シート、特に、第2塩化ビニル系樹脂層の伸びに追従しやすくなる。従って、光輝層は、比較的大きいサイズの光輝性顔料を含有していても、第2塩化ビニル系樹脂層と光輝層との密着性が良好な化粧シートとなる。従って、十分な高輝度感を発現可能な化粧シートが得られる。この場合における光輝性顔料の平均粒径は、例えば、60μm以下とすることができ、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。一方、光輝性顔料の平均粒径は、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。
【0105】
ここで、粒子の平均粒径は、化粧シートの表面保護層側の表面を光学顕微鏡観察で観察し、10個の光輝性顔料の粒径の平均値とする。
【0106】
光輝層における光輝性顔料の含有量は、例えば、樹脂成分100質量部に対して、0質量部より多く、100質量部以下であり、0質量部より多く、80質量部以下であってもよい。
【0107】
光輝層が、樹脂成分としてアクリル系樹脂を含む場合、光輝層における光輝性顔料の含有量は、例えば、後述する樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下であってもよい。光輝層と第2塩化ビニル系樹脂層との密着性がより良好となるためである。一方、光輝性顔料の含有量は、0質量部より多く、30質量部以上であってもよい。
【0108】
また、光輝層が、樹脂成分として、アクリル系樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合体とを含む場合、同様の理由により、光輝性顔料の含有量が多くても、第2塩化ビニル系樹脂層と光輝層との密着性が良好な化粧シートとなる。従って、十分な高輝度感を発現可能な化粧シートとなる。この場合における光輝層における光輝性顔料の含有量は、例えば、後述する樹脂成分100質量部に対して、80質量部以下とすることができ、70質量部以下であってもよい。一方、上記光輝性顔料の含有量は、0質量部より多く、30質量部以上であってもよい。
【0109】
(c)その他
光輝層は、光輝性がなく(非光輝性)、所望の色相を有する着色剤を含めてもよい。着色剤としては、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料が挙げられる。光輝層は、光輝性顔料と着色剤とを含有することにより、光輝性顔料に起因する金属光沢、真珠光沢、あるいはこれらに類似する光沢を得ることに加えて、着色剤に起因する色相を発現することにより、いわゆる「カラーメタリック調」あるいは「カラーパール調」の意匠外観を呈するものとなる。光輝層における着色剤の含有量は、意匠に応じて適宜選択すれば良い。
【0110】
光輝層は、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、抗菌剤、抗ウイルス剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0111】
(3)光輝層の構造
図7(a)~(d)および
図8に示すように、光輝層5は、凹部Yに配置されている。凹部Yに配置された光輝層5を充填部51と称する場合がある。
【0112】
図7(a)に示すように、充填部51の厚さをTとし、第2塩化ビニル系樹脂3の凹部Yの深さをHとする。厚さTは、例えば1μm以上であり、3μm以上であってもよい。一方、厚さTは、例えば100μm以下であり、80μm以下であってもよい。また、深さHに対する厚さTの割合(T/H)は、例えば2%以上であり、5%以上であってもよく、10%以上であってもよい。一方、T/Hは、例えば100%以下であり、50%以下であってもよく、30%以下であってもよい。T/Hが小さいほど、後述する表面保護層によって覆われていない充填部が発生しやすい。
【0113】
図7(b)に示すように、充填部51は、凹部Yの底面に配置された底面部51aと、凹部Yの壁面に配置された壁面部51bと、を有していてもよい。
図7(b)において、底面部51aおよび壁面部51bは、連続的に配置されている。
【0114】
図7(c)に示すように、光輝層5の一部は、凸部Xに配置されていてもよい。凸部Xに配置された光輝層5の一部を残渣部52と称する場合がある。残渣部52は、凸部Xと、表面保護層(不図示)との間に配置される。また、壁面部51bおよび残渣部52は、連続的に配置されている。すなわち、充填部51および残渣部52は、連続的に配置されている。一方、
図7(b)に示すように、第2塩化ビニル系樹脂3の凸部Xに残渣部が配置されていなくてもよい。この場合、凸部Xと、表面保護層(不図示)とは、残渣部を介さずに配置される。凸部Xおよび表面保護層は、接触するように配置されていてもよく、例えばプライマー層を介して配置されていてもよい。
【0115】
図7(c)に示すように、底面部51aおよび壁面部51bは、厚さが同一であってもよい。厚さが同一であるとは、両者の厚さの差が3μm以下であることをいう。一方、
図7(b)に示すように、底面部51aの厚さは、壁面部51bの厚さより大きくてもよい。また、
図7(d)に示すように、底面部51aの厚さは、壁面部51bの厚さより小さくてもよい。両者の厚さの差は、通常、3μmより大きい。また、
図7(a)に示すように、充填部51は、底面部51aを有し、壁面部51bを有しなくてもよい。また、
図8に示すように、充填部51は、凹部Yを完全に充填していてもよく、
図7(a)に示すように、充填部51は、凹部Yを完全に充填していなくてもよい。
【0116】
本開示における化粧シートが、光輝層を有する場合、
図9に示すように、表面保護層4は、化粧シート10の一部に配置されていてもよい。この場合、本開示における表面保護層4は、充填部51の表面を覆わない部位を有していてもよい。この部位は、通常、意図的に形成されたものであってもよいし、意図せずに形成されたものであってもよい。
【0117】
表面保護層は、通常、化粧シートの全面に配置される。しかしながら、充填部に表面保護層が配置されると、充填部による意匠性向上効果が、表面保護層によって阻害され、十分に発揮されない場合がある。表面保護層によって被覆されていない充填部を有することにより、充填部による意匠性向上効果が良好に発揮された化粧シートとなる。
【0118】
ここで、化粧シートの断面観察により、凹部における充填部の状態を観察し、充填部の全体が表面保護層によって被覆されたもの(充填部が表面保護層によって完全に被覆されたもの)を充填部Aとし、充填部Aの個数をN1とし、充填部の少なくとも一部が表面保護層によって被覆されていないものを充填部Bとし、充填部Bの個数をN2とする。
【0119】
本開示においては、充填部Bを有していてもよい。このような充填部Bの比率、すなわち、N2/(N1+N2)は、10%以上であってもよく、30%以上であってもよく、50%以上であってもよい。一方、N2/(N1+N2)は、100%であってもよく、100%未満であってもよい。後者の場合、N2/(N1+N2)は、90%以下であってもよい。例えば、意匠層の絵柄によっては、表面保護層によって被覆されていない充填部を、目的通り製造することが困難な場合も想定される。
【0120】
N1およびN2の測定は、以下のように、断面を観察して行う。サンプル数は、少なくとも10以上であり、30以上であってもよく、50以上であってもよく、100以上であってもよい。サンプル数が多いほど、精度は向上する。測定箇所の選定は、可能な限り、偏りが生じないように留意する。
【0121】
<断面観察方法>
化粧シートから観察箇所を切り出し、光硬化性樹脂にて包埋した後、ミトクロームにより断面作製を行う(ダイヤモンドナイフ仕様、0.2μm切削仕上げ)。作製した断面を、SEM(日立ハイテクノロジーズ社製;S-4800 TYPE2)を用いて、加速電圧3.0kV、電流20μA、倍率5000倍にて観察する。
【0122】
図9に示すように、充填部51が表面保護層4から露出した領域の幅をRとする。幅Rは、例えば10μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。一方、幅Rは、例えば1cm以下であり、5mm以下であってもよく、2mm以下であってもよい。幅Rとは、充填部51が表面保護層4から露出した領域の長さ(厚さ方向D
Tに直交する方向D
Cにおける上記領域の長さ)である。
【0123】
本開示においては、第2塩化ビニル系樹脂層と光輝層との間には、プライマー層が配置されていてもよいし、配置されていなくてもよい。本開示においては、プライマー層を介さなくても、光輝層が上記樹脂成分を含有することにより、第2塩化ビニル系樹脂層と光輝層との密着性が優れる化粧シートとなる。
【0124】
6.他の層
本開示における真空成形用化粧シートは、第1塩化ビニル系樹脂層の意匠層とは反対側の面に、プライマー層(裏面プライマー層)を有していてもよい。裏面プライマー層を設けることにより、真空成形時に、後述する接着剤層を介しての第1塩化ビニル系樹脂層と基体との密着性を向上させることができる。
【0125】
プライマー層は、バインダー樹脂を少なくとも含有する。バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化プロピレン系樹脂、セルロール樹脂等が挙げられる。セルロール樹脂としては、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂が挙げられる。プライマー層は、樹脂を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。接着剤層との密着性の観点から、プライマー層は、ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。
【0126】
プライマー層は、バインダー樹脂の硬化物を含有していてもよい。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤が挙げられる。
【0127】
プライマー層は、プライマー剤を第1塩化ビニル系樹脂層の裏面(意匠層側とは反対側の面)に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤等が挙げられる。プライマー層の厚さは、特に限定されないが、例えば0.5μm以上、2.0μm以下が好ましい。プライマー層の厚さを上記厚さ以上とすることによって、後述する接着剤層との密着性が良好となる。上記厚さ以下とすることによって、ブロッキングの発生を抑制することができる。
【0128】
プライマー層は、シリカ等の無機微粒子を含有することが好ましい。化粧シートを巻き解く際にブロッキングを抑制することができるためである。なお、ブロッキングとは、ロール状に巻き上げられたフィルムが、その後に巻き解く際にフィルム同士が離れにくくなる現象である。
【0129】
7.真空成形用化粧シート
真空成形用化粧シートは、
図2に示すように、第1塩化ビニル系樹脂層1を基準として、表面保護層4側の最表面に、凹凸形状を有していてもよい。この真空成形用化粧シートの最表面の凹凸形状は、表面保護層4内に留まるものであってもよいし、また第2塩化ビニル系樹脂層3まで至るものであってもよい。凹凸形状を有することにより、見た目の凹凸感の他、触感、グロスマット感等が得られる。
【0130】
真空成形用化粧シートの最表面の凹凸形状の深さは、10μm以上、400μm以下が好ましい。本開示において、
図2に示すように、凹凸形状の深さH10とは、第2塩化ビニル系樹脂層3の意匠層2側の表面を基準として、厚さ方向に沿って、凹凸形状Xにおける最も遠い部分までの距離L1と、凹凸形状Xにおける最も近い部分までの距離L2との差とする。凹凸形状の深さが上記範囲であることにより、化粧シート表面の凹部に詰まった汚れが除去しやすくなる。凹凸形状の模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝が挙げられる。
【0131】
真空成形用化粧シートの最表面の凹凸形状の形成方法としては、例えば、真空成形用化粧シートを加熱し、エンボス版を押圧する方法が挙げられる。積層シートの加熱温度は、例えば、80℃以上、260℃以下であり、85℃以上、200℃以下であってもよく、100℃以上、180℃以下であってもよい。
【0132】
また、化粧シートを製造する過程において、後述するように、意匠層の第1塩化ビニル系樹脂層とは反対側の面に、第2塩化ビニル系樹脂層となる透明フィルムを貼り合わせる際に、貼り合わせと同時にエンボス版を押圧することによって、第2塩化ビニル系樹脂層の意匠層とは反対側の面に凹凸形状を賦形し、その後、表面保護層を形成してもよい。
【0133】
B.真空成形用化粧シートの製造方法
本開示においては、第1塩化ビニル系樹脂層の一方の面に、意匠層を形成する意匠層形成工程と、上記意匠層の上記第1塩化ビニル系樹脂層側とは反対の面側に、第2塩化ビニル系樹脂層を配置する配置工程と、上記第2塩化ビニル系樹脂層の上記意匠層側とは反対の面側に、表面保護層を形成する表面保護層形成工程と、を有し、上記第1塩化ビニル系樹脂層および上記第2塩化ビニル系樹脂層は、それぞれ、塩化ビニル系樹脂および脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有し、上記第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、160MPa以下であり、上記第2塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、165MPa以上である、真空成形用化粧シートの製造方法を提供する。本開示における真空成形用化粧シートの製造方法は、配置工程後、かつ、表面保護層工程前に、後述するエンボス加工工程および光輝層形成工程を有することが好ましい。
【0134】
1.意匠層形成工程
本工程では、第1塩化ビニル系樹脂層の一方の面に、意匠層を形成する。第1塩化ビニル系樹脂層は、上述した第1塩化ビニル系樹脂層の内容と同様である。意匠層の形成方法としては、上述した意匠層の形成方法と同様である。
【0135】
2.配置工程
本工程では、意匠層の第1塩化ビニル系樹脂層側とは反対の面側に、第2塩化ビニル系樹脂層を配置する。第2塩化ビニル系樹脂層は、上述した第2塩化ビニル系樹脂層の内容と同様である。意匠層と第2塩化ビニル系樹脂層とは熱ラミネートで貼合してもよい。また、意匠層と第2塩化ビニル系樹脂層との間には、接着剤を配置してもよいし、配置しなくてもよい。
【0136】
3.エンボス加工工程および光輝層形成工程
(1)エンボス加工工程
本開示における真空成形用化粧シートの製造方法は、
図10に示すように、上述した配置工程で得られる積層体20(
図10(a))に対し、第2塩化ビニル系樹脂層3の意匠層2とは反対側の面に、エンボス加工を施すことにより、凸部Xおよび凹部Yを有する凹凸形状を形成するエンボス加工工程(
図10(b))を含むことが好ましい。本工程は、上述の配置工程と同時に行ってもよい。エンボス加工方法については、上述した通りである。
【0137】
(2)光輝層形成工程
本開示における真空成形用化粧シートの製造方法は、
図10(c)に示すように、エンボス加工工程後に、光輝性インキを第2塩化ビニル系樹脂層3の表面に塗布し、ワイピングを行うことによって、光輝性インキを凹部に充填することにより光輝層5を形成する光輝層形成工程と、を有してもよい。
【0138】
光輝層の形成に用いる光輝性インキは、上述した光輝性顔料およびガラス転移温度が70℃より高い樹脂を含むことが好ましい。ガラス転移温度が70℃より高い樹脂としては、上述したアクリル系樹脂が挙げられ、特には、アクリルポリオール樹脂が好ましい。光輝性インキにガラス転移温度が70℃より高い樹脂を用いることによって、真空成形における加熱伸長時であっても、光輝性顔料が樹脂成分で十分にバインドされるため、輝性顔料がさらに脱離しにくくなる。溶剤アタック性が高い第2塩化ビニル系樹脂層を用い、かつ、ガラス転移温度が70℃より高い樹脂を含む光輝層を用いることにより、第2塩化ビニル系樹脂層と、光輝層に含まれる樹脂成分と、光輝層に含まれる光輝性顔料との結着力が向上する。従って、光輝層と第2塩化ビニル系樹脂層との密着性が良好となり、真空成形時の光輝層の剥離や光輝層に含まれる光輝性顔料の脱離等の加工不良をより抑制できる。
【0139】
また、光輝性インキは、更に、ガラス転移温度が70℃以下である樹脂を含むことが好ましい。ガラス転移温度が70℃以下である樹脂としては、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体が好ましい。光輝性インキにガラス転移温度が70℃以下である樹脂を用いることによって、真空成形における加熱伸長時における柔軟性が高く、第2塩化ビニル系樹脂層の伸びに追従しやすい化粧シートが得られる。
【0140】
光輝性インキは、樹脂組成物として、塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体)、及び、アクリルポリオール樹脂の混合樹脂を使用することが好ましい。
【0141】
光輝性インキは、通常、溶剤を含む。光輝性インキに含まれる溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示においては、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等が好ましい。第2塩化ビニル系樹脂層に対する溶剤アタック性が高いためである。
【0142】
4.表面保護層形成工程
本工程では、第2塩化ビニル系樹脂層の意匠層側とは反対の面側に、表面保護層を形成する。この際、表面保護層を、光輝層(充填部)を被覆しないように形成することが好ましい。表面保護層の形成方法としては、上述した通りである。表面保護層形成工程の前に、プライマー層形成工程を行ってもよい。
【0143】
C.化粧部材
本開示においては、基体と、上述の真空成形用化粧シートと、を有する、化粧部材を提供する。
図11(a)、(b)は、本開示における化粧部材を例示する概略断面図である。
図11(a)、(b)に示す化粧部材100は、基体30と、真空成形用化粧シート10とが、接着剤層20を介して密着しており、真空成形用化粧シート10の意匠層2を基準として、第1塩化ビニル系樹脂層1が基体30側となるように配置されている。
図11(a)の真空成形用化粧シート10は、厚さ方向D
Tにおいて、裏面プライマー層6、第1塩化ビニル系樹脂層1、意匠層2、第2塩化ビニル系樹脂層3、および表面保護層4を、この順に有する。
図11(b)の真空成形用化粧シート10は、厚さ方向D
Tにおいて、裏面プライマー層6、第1塩化ビニル系樹脂層1、意匠層2、第2塩化ビニル系樹脂層3、光輝層5および表面保護層4を、この順に有する。
【0144】
本開示によれば、上述した真空成形用化粧シートを有するため、真空成形時に品質不良が発生する可能性が低いものであり、高い耐傷性を備える化粧部材となる。
【0145】
1.真空成形用化粧シート
本開示における真空成形用化粧シートについては、上記「A.真空成形用化粧シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0146】
2.基体
本開示における基体は、真空成形用化粧シートにより装飾される部材である。基体の一例としては、樹脂部材が挙げられる。樹脂部材に用いられる樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(ABS系樹脂)、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂、ゴムが挙げられる。また、基体の他の例としては、木質部材が挙げられる。木質部材としては、例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、木質繊維板が挙げられる。木質部材に用いられる木材としては、例えば、杉、檜、松、ラワンが挙げられる。
【0147】
また、基体の他の例としては、金属部材が挙げられる。金属部材に用いられる金属としては、例えば、鉄、アルミニウムが挙げられる。また、基体の他の例としては、窯業部材が挙げられる。窯業部材の材料は、ガラス、陶磁器等のセラミックスであってもよく、石膏等の非セメント窯業系材料であってもよく、ALC(軽量気泡コンクリート)等の非陶磁器窯業系材料であってもよい。
【0148】
基体の形状は、特に限定されず、例えば、板状、シート状、立体形状等が挙げられるが、三次元立体形状が好ましい。また、基体は、平面部を有していてもよく、曲面部を有していてもよく、平面部および曲面部の両方を有していてもよい。また、基体は、凸部、凹部、凸条部、凹条部、貫通部の少なくとも一つを有していてもよい。
【0149】
3.接着剤層
本開示における化粧部材は、基体と、真空成形用化粧シートとの間に接着剤層を有していてもよい。接着剤層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができる。例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が挙げられる。接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合、スチレン-アクリル共重合が挙げられる。また、接着剤として、イソシアネート化合物を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、および、ポリエステル系接着剤を用いてもよい。
【0150】
本開示における接着剤層の厚さは、通常、2μm以上35μm以下であり、5μm以上30μm以下であってもよい。
【0151】
4.化粧部材
本開示における化粧部材は、種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装又は外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。
【0152】
本開示における化粧部材の製造方法は、特に限定されない。化粧部材の製造方法としては、例えば、基体、および上述の真空成形用化粧シートを準備する準備工程と、真空成形用化粧シートを加熱することによって、軟化させる軟化工程と、軟化させた真空成形用化粧シートを基体の形状に減圧操作により真空吸着させる真空吸着工程と、を備える方法が挙げられる。軟化工程においては、圧力を調整するため、成形後の化粧シートは、成形前よりも全体的に引き延ばされた状態となる。軟化工程においては、化粧シートを70℃より高い温度、例えば、通常80~130℃程度、好ましくは90~120℃程度に加熱することによって、化粧シートを軟化させることが好ましい。真空吸着工程においては、基体と真空成形用化粧シートとの間に接着剤層を配置することが好ましい。
【0153】
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0154】
[実施例1]
(真空成形用化粧シートの製造)
塩化ビニル系樹脂および可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)を含有する、厚さ100μmの着色基材フィルム(第1塩化ビニル系樹脂層)を準備した。第1塩化ビニル系樹脂層において、塩化ビニル系樹脂100質量部に対する可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量は、10質量部であった。次に、第1塩化ビニル系樹脂層の一方の面に、アクリル塩酢ビ樹脂を含有するインキを用い、石目絵柄模様をグラビア印刷し、意匠層を形成した。意匠層の第1塩化ビニル系樹脂層とは反対側の面に、塩化ビニル系樹脂および可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)を含有する、厚さ200μmの透明樹脂フィルム(第2塩化ビニル系樹脂層)を熱ラミネートエンボス方式にて貼り合わせた。熱ラミネート時に、レーザー彫刻法により製造された版深さ130μmのエンボス版を使用し、石目調の凹凸柄を第2塩化ビニル系樹脂層側の表面に賦形した。第2塩化ビニル系樹脂層において、塩化ビニル系樹脂100質量部に対する可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量は、4質量部であった。第2塩化ビニル系樹脂層の意匠層とは反対側の面に、塩ビ変性アクリルポリオール樹脂を含有する表面保護層を形成した。また、第1塩化ビニル系樹脂層の意匠層とは反対側の面(裏面)に、ウレタン系樹脂および硝化綿樹脂を含有するプライマー剤を用い、裏面プライマー層を形成した。これにより、裏面プライマー層、第1塩化ビニル系樹脂層、意匠層、第2塩化ビニル系樹脂層、および表面保護層を、厚さ方向においてこの順に有する真空成形用化粧シートを製造した。
【0155】
[実施例2]
第1塩化ビニル系樹脂層おける可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して12質量部に変更し、第2塩化ビニル系樹脂層における可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して3質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、真空成形用化粧シートを製造した。
【0156】
[比較例1]
第1塩化ビニル系樹脂層おける可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して7質量部に変更し、第2塩化ビニル系樹脂層における可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して2質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、真空成形用化粧シートを製造した。
【0157】
[比較例2]
第1塩化ビニル系樹脂層おける可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して2質量部に変更し、第2塩化ビニル系樹脂層における可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して3質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、真空成形用化粧シートを製造した。
【0158】
[比較例3]
第1塩化ビニル系樹脂層おける可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して12質量部に変更し、第2塩化ビニル系樹脂層における可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して12質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、真空成形用化粧シートを製造した。
【0159】
[比較例4]
第1塩化ビニル系樹脂層おける可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して28質量部に変更し、第2塩化ビニル系樹脂層における可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量を、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して25質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、真空成形用化粧シートを製造した。
【0160】
[ナノインデンテーション硬さの測定]
上記で得られた真空成形用化粧シートにおける第1塩化ビニル系樹脂層および第2塩化ビニル系樹脂層のナノインデンテーション硬さを、上述の方法により測定した。
【0161】
[評価]
(真空成形時の加工適性)
上記で得られた化粧シートを加熱して軟化させ、基体の形状に減圧操作により真空吸着させることにより、化粧部材を得た。得られた化粧部材における化粧シートの状態を目視にて観察し、以下の評価基準によって評価した。結果を表1に示す。
【0162】
評価基準
A:化粧シートが基体の形状に追従しており、化粧シート表面にクラックの発生なく加工出来ている。
B:化粧シートが基体の形状に追従しづらい、あるいは化粧シート表面にクラックが発生するなど加工時に不具合が発生している。
【0163】
(耐傷性)
1)ホフマンスクラッチテスターによる引掻き試験(試験1)
上記で製造した真空成形用化粧シートの表面保護層側の表面を、ホフマンスクラッチテスターを用いて引掻いた。ツヤの変化が発生した時の荷重を測定した。結果を表1に示す。
2)爪による引掻き試験(試験2)
上記で製造した真空成形用化粧シートの表面保護層側の表面を、爪で5往復して引掻き、外観のツヤの変化を比較した。以下の評価基準で評価した結果を表1に示す。
・評価基準
A:軽微なツヤ変化が生じた。
B:大きなツヤ変化が生じた。
C:白化傷が生じた。
【0164】
【0165】
表1に示されるように、本開示における実施例1および実施例2の化粧シートは、真空成形時の加工適性が良好であり、高い耐傷性を備えることが確認された。
【0166】
[実施例3]
(化粧シートの製造)
塩化ビニル系樹脂および可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)を含有する、厚さ100μmの着色基材フィルム(第1塩化ビニル系樹脂層)を準備した。第1塩化ビニル系樹脂層において、塩化ビニル系樹脂100質量部に対する可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量は、10質量部であった。次に、第1塩化ビニル系樹脂層の一方の面に、アクリル塩酢ビ樹脂を含有するインキを用い、石目絵柄模様をグラビア印刷し、意匠層を形成した。意匠層の第1塩化ビニル系樹脂層とは反対側の面に、塩化ビニル系樹脂および可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)を含有する、厚さ200μmの透明樹脂フィルム(第2塩化ビニル系樹脂層)を熱ラミネートエンボス方式にて貼り合わせた。熱ラミネート時に、レーザー彫刻法により製造されたエンボス版を使用し、石目調の凹凸柄を第2塩化ビニル系樹脂層側の表面に賦形した。凹部の深さは360μmであった。第2塩化ビニル系樹脂層において、塩化ビニル系樹脂100質量部に対する可塑剤(アジピン酸ジイソノニル)の配合量は、4質量部であった。第2塩化ビニル系樹脂層の表面(凹凸形状を有する面)に、下記の光輝層用インキを供給し、その後、基材層に対して垂直となるようにドクターブレードを押し当て、光輝層用インキを掻き取り、樹脂層の凹部にインキを押し込むとともに、余分なインキを除去した。次いで、インキを乾燥、硬化し、光輝層を形成した。第2塩化ビニル系樹脂層の意匠層とは反対側の面に、塩ビ変性アクリルポリオール樹脂を含有する表面保護層を形成した。これにより、化粧シートを製造した。
【0167】
第1塩化ビニル系樹脂層および第2塩化ビニル系樹脂層のナノインデンテーション硬さは、それぞれ、150MPaおよび180MPaであった。
【0168】
<光輝層用インキ>
・樹脂用組成物1
アクリルポリオール 50質量部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体 50質量部
・光輝性顔料
パール顔料(粒径5μm~25μm、平均粒径11μm) 上記樹脂用組成物100質量部に対して42質量部
・溶剤(メチルエチルケトン)460質量部
【0169】
[実施例4~実施例11]
第2塩化ビニル系樹脂層の凹部の深さ、および光輝層用インキにおけるパール顔料の粒径及び配合量、光輝層用インキにおける樹脂用組成物を、表2に示すように変更した以外は、実施例3と同様の方法で化粧シートを製造した。なお、樹脂用組成物1を使用した場合の表2中のパール顔料の配合量は、アクリルポリオールおよび塩化ビニル酢酸ビニル共重合体の含有量の合計100質量部に対する割合である。樹脂用組成物2を使用した場合の表2中のパール顔料の配合量は、アクリルポリオールの含有量100質量部に対する割合である。
【0170】
表2中、樹脂用組成物2は以下の通りである。
・樹脂用組成物2
アクリルポリオール 100質量部
硬化剤(ポリイソシアネート) 34質量部
【0171】
[比較例5]
第2塩化ビニル系樹脂層をポリプロピレン樹脂(PP)を含む透明樹脂層とし、第2塩化ビニル系樹脂層の凹部の深さ、および光輝層用インキにおけるパール顔料の粒径及び配合量、光輝層用インキにおける樹脂用組成物を、表2に示すように変更した以外は、実施例3と同様の方法で、真空成形用化粧シートを製造した。
【0172】
[評価]
(加熱伸長後の密着性評価)
上記で得られた化粧シートからサンプルを切り出し、サンプルに5cm間隔の線を引き、70℃の恒温槽内で、線間距離が10cm~11cmとなるように伸長した。伸長後のサンプルの基材フィルムとは反対側の面に、長さ60mmのセロハンテープ(ニチバン 幅24mm)を密着させ、角度45°で急速に剥がした。密着剥離させたセロテープ(登録商標)の面積S1(60mm×24mm)に対する、パールが付着した面積S2の割合(S2/S1)を算出した。これを10回繰り返し、10回の算術平均値を求め、以下の評価基準により評価した。
・評価基準
S:0~5%以下
A:5%より大きく、20%以下
B:20%より大きく、40%以下
C:40%より大きく、60%以下
D:60%より大きく、80%以下
E:80%より大きく、100%以下
【0173】
【0174】
表2に示されるように、実施例3~11の化粧シートは、比較例5に比べ、加熱伸長後の密着性評価結果が良好であった。
【0175】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0176】
[1]
第1塩化ビニル系樹脂層と、
意匠層と、
第2塩化ビニル系樹脂層と、
表面保護層とを、厚さ方向において、この順に有し、
上記第1塩化ビニル系樹脂層および上記第2塩化ビニル系樹脂層は、それぞれ、塩化ビニル系樹脂および脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有し、
上記第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、160MPa以下であり、
上記第2塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、165MPa以上である、真空成形用化粧シート。
【0177】
[2]
上記第1塩化ビニル系樹脂層および上記第2塩化ビニル系樹脂層は、それぞれ、上記脂肪族二塩基酸系可塑剤として、アジピン酸エステルを含有する、[1]に記載の真空成形用化粧シート。
【0178】
[3]
上記第1塩化ビニル系樹脂層および上記第2塩化ビニル系樹脂層は、それぞれ、上記脂肪族二塩基酸系可塑剤として、アジピン酸ジイソノニルを含有する、[1]または[2]に記載の真空成形用化粧シート。
【0179】
[4]
上記第1塩化ビニル系樹脂層における上記脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量が、上記第2塩化ビニル系樹脂層における上記脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量よりも多い、[1]から[3]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0180】
[5]
上記第1塩化ビニル系樹脂層における上記脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量は、上記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、5質量部以上15質量部以下であり、上記第2塩化ビニル系樹脂層における上記脂肪族二塩基酸系可塑剤の配合量は、上記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、1質量部以上15質量部未満である、[1]から[4]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0181】
[6]
上記第1塩化ビニル系樹脂層の厚さが、60μm以上、200μm以下である、[1]から[5]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0182】
[7]
上記第2塩化ビニル系樹脂層の厚さが、100μm以上、250μm以下である、[1]から[6]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0183】
[8]
上記表面保護層の厚さが、10μm以下である、[1]から[7]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0184】
[9]
上記第2塩化ビニル系樹脂層は、上記意匠層とは反対側の面に、凸部と凹部とを有する凹凸形状を有し、
上記化粧シートは、上記第2塩化ビニル系樹脂層の上記意匠層とは反対側の面に、光輝性顔料および樹脂成分を含有する光輝層を有し、
上記光輝層は、上記凹部に配置されている、[1]から[8]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0185】
[10]
上記光輝層は、上記樹脂成分として、アクリル系樹脂を含む、[9]に記載の化粧シート。
【0186】
[11]
上記光輝層における上記アクリル系樹脂の含有量は、上記樹脂成分の合計量100質量部に対して、30質量部以上、100質量部以下である、[10]に記載の化粧シート。
【0187】
[12]
上記光輝性顔料の平均粒径が、5μm以上、25μm以下である、[9]から[11]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0188】
[13]
上記光輝層における上記光輝性顔料の含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して、0質量部より多く、60質量部以下である、[9]から[12]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0189】
[14]
上記第2塩化ビニル系樹脂層における上記凹部の深さが、10μm以上、100μm以下である、[9]から[13]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0190】
[15]
上記光輝層は、上記樹脂成分として、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を含む、[9]から[14]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0191】
[16]
上記光輝層における上記塩化ビニル酢酸ビニル共重合体の含有量は、上記樹脂成分の合計量100質量部に対して、0質量部より多く、70質量部以下である、[15]に記載の化粧シート。
【0192】
[17]
上記光輝性顔料の平均粒径が、5μm以上、60μm以下である、[9]から[16]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0193】
[18]
上記光輝層における上記光輝性顔料の含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して、0質量部より多く、80質量部以下である、[9]から[17]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0194】
[19]
上記第2塩化ビニル系樹脂層における上記凹部の深さが、10μm以上、400μm以下である、[9]から[18]までのいずれかに記載の真空成形用化粧シート。
【0195】
[20]
第1塩化ビニル系樹脂層の一方の面に、意匠層を形成する意匠層形成工程と、
上記意匠層の上記第1塩化ビニル系樹脂層側とは反対の面側に、第2塩化ビニル系樹脂層を配置する配置工程と、
上記第2塩化ビニル系樹脂層の上記意匠層側とは反対の面側に、表面保護層を形成する表面保護層形成工程と、を有し、
上記第1塩化ビニル系樹脂層および上記第2塩化ビニル系樹脂層は、それぞれ、塩化ビニル系樹脂および脂肪族二塩基酸系可塑剤を含有し、
上記第1塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、160MPa以下であり、
上記第2塩化ビニル系樹脂層の厚さ方向の断面におけるナノインデンテーション硬さが、165MPa以上である、真空成形用化粧シートの製造方法。
【0196】
[21]
上記配置工程後に、上記第2塩化ビニル系樹脂層の上記意匠層とは反対側の面に、エンボス加工を施すことにより、凸部および凹部を有する凹凸形状を形成するエンボス加工工程と、
光輝性インキを上記第2塩化ビニル系樹脂層の表面に塗布し、ワイピングを行うことによって、上記光輝性インキを上記凹部に充填することにより光輝層を形成する光輝層形成工程と、を有し、
上記光輝層形成工程で用いる上記光輝性インキは、光輝性顔料およびガラス転移温度が70℃より高い樹脂を含む、[20]に記載の真空成形用化粧シートの製造方法。
【0197】
[22]
上記ガラス転移温度が70℃より高い樹脂は、アクリルポリオールを含む、[21]に記載の真空成形用化粧シートの製造方法。
【0198】
[23]
上記光輝性インキは、更に、ガラス転移温度が70℃以下である樹脂を含む、[21]または[22]に記載の真空成形用化粧シートの製造方法。
【0199】
[24]
上記ガラス転移温度が70℃以下である樹脂は、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を含む、[23]に記載の真空成形用化粧シートの製造方法。
【0200】
[25]
基体と、
[1]から[19]までのいずれかに記載のいずれかの請求項に記載の真空成形用化粧シートと、
を有する、化粧部材。
【0201】
[26]
[25]に記載の化粧部材の製造方法であって、
基体および上記真空成形用化粧シートを準備する準備工程と、
上記真空成形用化粧シートを加熱することによって軟化させる軟化工程と、
軟化させた上記真空成形用化粧シートを上記基体の形状に減圧操作により真空吸着させる真空吸着工程と、を有する化粧部材の製造方法。
【0202】
[27]
上記軟化工程において、上記真空成形用化粧シートを70℃より高い温度に加熱することによって、上記真空成形用化粧シートを軟化させる、[26]に記載の化粧部材の製造方法。