(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004015
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】シート材の分断方法及びシート材の分断装置
(51)【国際特許分類】
C03B 33/033 20060101AFI20240109BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20240109BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20240109BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C03B33/033
B28D5/00 Z
B28D7/04
B26F3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103438
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 貴博
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敏広
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝伸
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
4G015
【Fターム(参考)】
3C060AA08
3C060AA10
3C060CC13
3C069AA03
3C069BA01
3C069BB01
3C069CA05
3C069CA11
3C069CB01
3C069EA05
4G015FA04
4G015FB01
4G015FB02
4G015FC02
4G015FC11
(57)【要約】
【課題】 分断不良を防止して、脆性材料層を有するシート材を脆弱線に従って良好に分断する。
【解決手段】 本発明のシート材の分断方法は、第1方向に延びる脆弱線4が形成された脆性材料層2を有する柔軟なシート材11を準備する準備工程、前記シート材11のうち前記脆弱線4の周辺領域11Cを、側面視で凹弧状に撓ませた状態とし、前記凹弧状の周辺領域11Cの凹内に分断補助具8の先端部81を配置する設置工程、前記周辺領域11Cに対して前記第1方向と直交する方向である第2方向に引張り力を作用させることにより、前記凹弧状の周辺領域11Cを前記分断補助具8の先端部81側へと戻し、前記シート材11を前記脆弱線4に沿って分断する分断工程、を有する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる脆弱線が形成された脆性材料層を有する柔軟なシート材を準備する準備工程、
前記シート材のうち前記脆弱線の周辺領域を、側面視で凹弧状に撓ませた状態とし、前記凹弧状の周辺領域の凹内に分断補助具の先端部を配置する設置工程、
前記周辺領域に対して前記第1方向と直交する方向である第2方向に引張り力を作用させることにより、前記凹弧状の周辺領域を前記分断補助具の先端部側へと戻し、前記シート材を前記脆弱線に沿って分断する分断工程、
を有する、シート材の分断方法。
【請求項2】
前記分断補助具の先端部が、側面視で曲率半径1mm以上6mm以下の弧状に形成されている、請求項1に記載のシート材の分断方法。
【請求項3】
前記設置工程において、前記分断補助具の弧状の先端部が平面視で第1方向に延びる直線状であり、前記先端部が平面視で前記脆弱線に重なるように、前記分断補助具の先端部を配置する、請求項2に記載のシート材の分断方法。
【請求項4】
前記分断工程において、前記シート材のうち前記周辺領域よりも第2方向右側の領域及び第2方向左側の領域をそれぞれ保持し、前記右側の領域と左側の領域を相反する方向にそれぞれ引張ることによって、前記周辺領域に対して前記第2方向に引張り力を作用させる、請求項1または2に記載のシート材の分断方法。
【請求項5】
前記右側の領域と左側の領域を、等速度で引張る、請求項4に記載のシート材の分断方法。
【請求項6】
前記右側の領域と左側の領域の引張り速度が、5mm/秒以上50mm/秒以下である、請求項5に記載のシート材の分断方法。
【請求項7】
前記設置工程において、前記周辺領域の撓み量が、2mm以上20mm以下である、請求項1または2に記載のシート材の分断方法。
【請求項8】
前記脆性材料層が、厚み20μm以上120μm以下のガラスである、請求項1または2に記載のシート材の分断方法。
【請求項9】
第1方向に延びる脆弱線が形成された脆性材料層を有する柔軟なシート材を、前記脆弱線に沿って分断する分断装置において、
前記シート材を載せる載置台と、
前記シート材のうち前記脆弱線の周辺領域に対して前記第1方向と直交する方向である第2方向に引張り力を作用させる引張り機構部と、
先端部を有する分断補助具と、を有し、
前記載置台が、前記第2方向右側に配置された右ステージ部と、前記第2方向左側に配置された左ステージ部と、を有し、
前記右ステージ部と左ステージ部の間には、前記周辺領域を側面視で凹弧状に撓ませるために、前記撓ませた周辺領域を受け入れる空間部が設けられており、
前記分断補助具の先端部が前記空間部に進入可能とされている、シート材の分断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料層を有するシート材を分断する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、テレビ、パーソナルコンピュータなどの画像表示装置の最表面側には、多くの場合、保護材が配置されている。保護材として、例えば、ガラスを含むシート材が使用されている。かかるシート材は、用途に応じた所定形状・所定寸法に分断される。
【0003】
特許文献1の[0017]及び
図7には、弾性体11aを備えたテーブル10aと弾性材11bを備えたテーブル10bがバネ15により互いに離反する方向に加圧された状態で、その弾性体11a及び弾性体11bの上にガラス基板1を設置し、押圧部材14によりガラス基板1を割目Sの反対側の中央部から押圧することにより、ガラス基板1を分断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
一般に、ガラスなどの脆性材料層を分断して2つの分割片を形成すると、分断面(分割面は、分割片の端面である)に微細なクラックが生じることがある。
上記特許文献の分断方法にあっては、前記分断面に生じるクラックを十分に防止することができないおそれがある。また、上記特許文献の分断方法にあっては、割目(脆弱線)から逸れて分断されるおそれがある。以下、クラックが発生すること及び脆弱線から逸れて分断されることを総称して「分断不良」という場合がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、分断不良を防止して、脆性材料層を有するシート材を良好に分断できるシート材の分断方法及び分断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート材の第1の分断方法は、第1方向に延びる脆弱線が形成された脆性材料層を有する柔軟なシート材を準備する準備工程、前記シート材のうち前記脆弱線の周辺領域を、側面視で凹弧状に撓ませた状態とし、前記凹弧状の周辺領域の凹内に分断補助具の先端部を配置する設置工程、前記周辺領域に対して前記第1方向と直交する方向である第2方向に引張り力を作用させることにより、前記凹弧状の周辺領域を前記分断補助具の先端部側へと戻し、前記シート材を前記脆弱線に沿って分断する分断工程、を有する。
【0008】
本発明の第2の分断方法は、前記第1の分断方法において、前記分断補助具の先端部が、側面視で曲率半径1mm以上6mm以下の弧状に形成されている。
本発明の第3の分断方法は、前記第1又は第2の分断方法において、前記分断補助具の弧状の先端部が平面視で第1方向に延びる直線状であり、前記先端部が平面視で前記脆弱線に重なるように、前記分断補助具の先端部を配置する。
本発明の第4の分断方法は、前記第1乃至第3のいずれかの分断方法において、前記シート材のうち前記周辺領域よりも第2方向右側の領域及び第2方向左側の領域をそれぞれ保持し、前記右側の領域と左側の領域を相反する方向にそれぞれ引張ることによって、前記周辺領域に対して前記第2方向に引張り力を作用させる。
本発明の第5の分断方法は、前記第4の分断方法において、前記右側の領域と左側の領域を、等速度で引張る。
本発明の第6の分断方法は、前記第4又は第5の分断方法において、前記右側の領域と左側の領域の引張り速度が、5mm/秒以上50mm/秒以下である。
本発明の第7の分断方法は、前記第1乃至第6のいずれかの分断方法において、前記周辺領域の撓み量が、2mm以上20mm以下である。
本発明の第8の分断方法は、前記第1乃至第7のいずれかの分断方法において、前記脆性材料層が、厚み20μm以上120μm以下のガラスである。
【0009】
本発明の別の局面によれば、シート材の分断装置を提供する。
本発明の分断装置は、第1方向に延びる脆弱線が形成された脆性材料層を有する柔軟なシート材を、前記脆弱線に沿って分断する分断装置であって、前記シート材を載せる載置台と、前記シート材のうち前記脆弱線の周辺領域に対して前記第1方向と直交する方向である第2方向に引張り力を作用させる引張り機構部と、先端部を有する分断補助具と、を有し、前記載置台が、前記第2方向右側に配置された右ステージ部と、前記第2方向左側に配置された左ステージ部と、を有し、前記右ステージ部と左ステージ部の間には、前記周辺領域を側面視で凹弧状に撓ませるために、前記撓ませた周辺領域を受け入れる空間部が設けられており、前記分断補助具の先端部が前記空間部に進入可能とされている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法及び装置によれば、クラックの発生や脆弱線から逸れが生じ難く、脆性材料層を有するシート材を良好に分断できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態のシート材の第1例を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態のシート材の第2例を示す斜視図。
【
図4】第1実施形態のシート材の第3例を示す斜視図。
【
図6】脆性材料層と樹脂層が積層された複合材を示す斜視図。
【
図7】脆性材料層に脆弱線を形成する工程を模式的に説明した説明図。
【
図8】
図7に示す超短パルスレーザ光源から発振するレーザ光の焦点の設定方法の一例を模式的に説明した説明図。
【
図13】(a)は、分断装置の載置面にシート材を載せた状態を示す側面図、(b)は、前記シート材の周辺領域を凹弧状に撓ませた状態を示す側面図。
【
図14】凹弧状に撓ませた周辺領域の凹内に分断補助具の先端部を配置した状態を示す要部拡大図を含む側面図。
【
図15】凹弧状に撓ませた周辺領域に引張り力を作用させた状態を示す要部拡大図を含む側面図。
【
図16】シート材が2つに分断された状態を示す側面図。
【
図17】第2実施形態のシート材の第4例を示す斜視図。
【
図18】
図17のXVIII-XVIII線で切断した断面図。
【
図19】第2実施形態のシート材の第5例を示す断面図。
【
図20】第2実施形態のシート材の第6例を示す断面図。
【
図21】第2実施形態のシート材を作製する際の欠損部の形成方法を模式的に説明した説明図。
【
図22】第2実施形態のシート材を分断装置の載置面に載せ且つそのシート材の周辺領域を凹弧状に撓ませた状態を示す側面図。
【
図23】第3実施形態の分断装置の載置面にシート材を載せ且つそのシート材の周辺領域を凹弧状に撓ませた状態を示す側面図。
【
図24】第4実施形態の分断装置の載置面にシート材を載せ且つそのシート材の周辺領域を凹弧状に撓ませた状態を示す断面図。
【
図25】第5実施形態の分断装置の載置面にシート材を載せ且つそのシート材の周辺領域を凹弧状に撓ませた状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、第1方向と第2方向は、シート材の面内において直交する方向をいう。本明細書において「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を含むことを意味する。本明細書において「平面視」は、シート材の表面に対して直交する方向から見ることをいい、「側面視」は、シート材の厚み面(端面)に対して直交する方向から見ることであって、第1方向一方側から反対側に向かって見ることをいう。平面視形状及び側面視形状は、平面視及び側面視での対象物の形状をいう。
本明細書において、下限値以上上限値以下などの数値範囲が、別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値以上任意の上限値以下」の数値範囲を設定できるものとする。
なお、各図に示される層、部分及び部材の寸法、縮尺及び形状などは、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0013】
本発明のシート材の分断方法は、第1方向に延びる脆弱線が形成された脆性材料層を有する柔軟なシート材を、前記脆弱線に沿って分断する方法である。
本発明のシート材の分断方法は、脆弱線が形成された脆性材料層を有する柔軟なシート材を準備する準備工程、シート材の脆弱線の周辺領域を、側面視で凹弧状に撓ませた状態とし、凹弧状の周辺領域の凹内に分断補助具の先端部を配置する設置工程、周辺領域に対して第2方向に引張り力を作用させることにより、凹弧状の周辺領域を分断補助具の先端部側へと引き戻し、シート材を脆弱線に沿って分断する分断工程、を有する。
分断対象であるシート材は、第1方向に延びる脆弱線が形成された脆性材料層を有し、必要に応じて、樹脂層などの任意の層をさらに有していてもよい。
このように側面視で凹弧状に撓んだ周辺領域を引張って分断補助具の先端部側へと戻すことにより、シート材が脆弱線に沿って良好に分断される。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態は、脆性材料層のみからなる柔軟なシート材を分断する場合を説明する。
シート材は、撓ませることができる柔軟性を有し、本実施形態においては、シート材は、脆弱線が形成された脆性材料層のみからなる。
【0015】
[シート材]
図1及び
図2は、分断前のシート材11(分断対象であるシート材)の第1例を示している。
分断対象であるシート材11は、例えば、枚葉状である。前記シート材11の平面視形状は、例えば、略長方形状、略正方形状などの略矩形状である。ただし、シート材の平面視形状は、平面視略矩形状に限られず、例えば、略円形状、略楕円形状、略三角形状、略六角形状などの略多角形状などであってもよい。
シート材11は、脆性材料層2からなる。前記脆性材料層2には、第1方向に延びる脆弱線4が形成されている。脆弱線4は、脆性材料層2の一部分(脆弱線4が形成されている箇所)を割断し易くさせるために、脆性材料層2を加工することによって形成される。脆弱線4としては、溝、ミシン目線などが挙げられる。溝は、脆性材料層2の厚み方向に貫通することなく、脆性材料層2の厚み方向中途部にまで刻まれた切込みが連続的に繋がって延在するものである。第1方向に延びる溝は、前記切込みが第1方向に連続的に繋がって延びるものである。ミシン目線は、脆性材料層2を貫通する小さな貫通孔又は非貫通の小さな穴が断続的に並んでいるものである。第1方向に延びるミシン目線は、前記貫通孔又は穴の複数が第1方向に僅かな間隔を開けて連続的に並んだものである。
【0016】
図1及び
図2に示す第1例のシート材11は、脆性材料層2の一方面に、脆弱線4として溝41が形成されている。前記溝41(脆弱線4)は、脆性材料層2の第1方向一方端縁aから第1方向反対端縁bにまで延在されている。また、前記溝41(脆弱線4)は、平面視で略直線状に形成されている。なお、前記溝41(脆弱線4)は、平面視略直線状に限定されず、平面視略曲線状などであってもよい。前記溝41は一方面側において開口(開放)されている。図示例では、第1例のシート材11にあっては、脆性材料層の一方面側が、溝が形成された側であり、その反対面側が、溝が形成されていない側である。以下、溝が形成された側を「形成側」といい、溝が形成されていない側を「非形成側」という場合がある。
前記溝41の深さは、特に限定されず、例えば、1μm以上で且つ脆性材料層2の厚みの半分未満であり、好ましくは1μm以上10μm以下である。
【0017】
図3乃至
図5は、分断前のシート材のその他の例(第2例及び第3例)を示している。
図3乃至
図5の説明において、上記第1例のシート材11と同様な構成については、その説明を省略する場合がある。
図3に示す第2例のシート材12は、脆性材料層2の一方面及び反対面(反対面は、一方面とは反対側の面)にそれぞれ溝41,42(脆弱線4)が形成されている点を除いて、上記第1例のシート材11と同様である。第2例のシート材12にあっては、脆性材料層2の一方面側及び反対面側がいずれも形成側である。この場合、一方の溝41は、一方面側において開口(開放)され、もう一方の溝42は、反対面側において開口(開放)されている。
前記溝42の深さは、特に限定されず、例えば、0.2μm以上で且つ脆性材料層2の厚みの1/4以下であり、好ましくは0.5μm以上2μm以下である。
【0018】
図4及び
図5に示す第3例のシート材13は、脆弱線4としてミシン目線43が形成されている点を除いて、上記第1例のシート材11と同様である。図示例では、複数の貫通孔が僅かな間隔を開けて並んだミシン目線43(複数の貫通孔が第1方向に断続的に形成されているミシン目線43)を例示している。第3例のシート材13にあっては、脆性材料層2の一方面側及び反対面側がいずれも形成側である。
なお、シート材11,12,13には、第1方向に延びる脆弱線4が少なくとも1本形成されていればよい。従って、シート材11,12,13には、第1方向に延びる脆弱線4が第2方向において間隔を開けて2本以上形成されていてもよく、或いは、第1方向に延びる脆弱線4が1本又は2本以上間隔を開けて形成され且つ第2方向に延びる脆弱線4が1本又は2本以上間隔を開けて形成されていてもよい(いずれも図示せず)。
【0019】
脆性材料層2は、脆性材料をシート状に形成することによって得られる。
脆性材料層2を形成する脆性材料としては、例えば、ガラス、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどが挙げられる。
ガラスとしては、組成による分類によれば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス、及びサファイアガラスを例示できる。また、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスを例示できる。ガラスのアルカリ金属成分(例えば、Na2O、K2O、Li2O)の含有量は、好ましくは15重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
【0020】
脆性材料層2の厚みは、特に限定されないが、例えば、20μm以上120μm以下であり、好ましくは30μm以上110μm以下であり、より好ましくは30μm以上100μm以下である。
【0021】
脆性材料層2を形成する脆性材料がガラスである場合、脆性材料層2の波長550nmにおける光透過率は、好ましくは85%以上である。脆性材料層2を形成する脆性材料がガラスである場合、脆性材料層2の波長550nmにおける屈折率は、好ましくは1.4以上1.65以下である。脆性材料層2を形成する脆性材料がガラスである場合、脆性材料層2の密度は、好ましくは2.3g/cm3以上3.0g/cm3以下であり、より好ましくは2.3g/cm3以上2.7g/cm3以下である。
【0022】
脆性材料層2を形成する脆性材料がガラスである場合、脆性材料層2として、市販のガラス板をそのまま用いてもよく、市販のガラス板を所望の厚みになるように研磨して用いてもよい。市販のガラス板としては、例えば、コーニング社製「7059」、「1737」又は「EAGLE2000」、旭硝子社製「AN100」、NHテクノグラス社製「NA-35」、日本電気硝子社製「OA-10」、ショット社製「D263」又は「AF45」が挙げられる。
【0023】
[脆弱線が形成されたシート材の準備工程]
準備工程は、第1方向に延びる脆弱線が形成された脆性材料層を有する柔軟なシート材を準備する工程である。
上記様々な例のシート材は、脆性材料層に脆弱線を形成することによって得られる。例えば、
図1及び
図2に示す第1例のシート材11の製造方法を具体的に説明する。
第1例のような溝41(脆弱線4)が設けられているシート材11は、脆性材料層と樹脂層が接合された複合材に対して、脆弱線の形成及び樹脂層の除去を行なうことによって得られる。
【0024】
<複合材>
図6に示すように、脆性材料層2と樹脂層3とを有する複合材10を準備する。
脆性材料層2及び樹脂層3を有する複合材10の製造にあたっては、例えば、脆性材料層2と樹脂層3を、任意の適切な方法によって積層する。例えば、脆性材料層2と樹脂層3は、いわゆるロール・ツー・ロール方式によって積層可能である。すなわち、長尺状の脆性材料層2と長尺状の樹脂層3とを長手方向に搬送しながら、互いの長手方向を揃えるようにして互いに貼り合わせることで、脆性材料層2と樹脂層3が積層された長尺状の複合材10を得ることができる。得られた長尺状の複合材10を平面視所定形状に切断することによって、
図6に示すような、枚葉状の複合材10を得ることができる。
また、例えば、脆性材料層2と樹脂層3とをそれぞれ平面視所定形状に切断した後に積層することによって、枚葉状の複合材10を得ることもできる。
【0025】
脆性材料層2は、上述のように、例えば、ガラス、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどの脆性材料から形成された層である。
樹脂層3は、樹脂フィルム層31を有し、必要に応じて、接合層32などを有していてもよい。樹脂フィルム層31及び接合層32を有する樹脂層3は、その接合層32を介して脆性材料層2に積層接合される。前記接合層32としては、任意の適切なものが使用されるが、代表的には、樹脂材料を含む粘着剤や接着剤などが挙げられる。前記粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられ、前記接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
樹脂フィルム層31を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリアミド(PA)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー、各種の樹脂発泡体などが挙げられる。
樹脂フィルム層31は、単層でもよく、或いは、同種又は異種の複数の層からなる複層であってもよい。樹脂フィルム層31が複層からなる場合、各層が直接的に接合されていてもよく、或いは、粘着剤層又は接着剤層を介して接合されていてもよい。
樹脂フィルム層31の厚みは、特に限定されないが、例えば、20μm以上500μm以下である。
【0026】
<脆弱線(溝)の形成>
図7に示すように、溝が形成される前の複合材10の脆性材料層2に対向するように(
図7(a)に示す例では脆性材料層2の上側に)、超短パルスレーザ光源51を配置する。そして、超短パルスレーザ光源51から発振(パルス発振)したレーザ光C1(超短パルスレーザ光)を複合材10の脆性材料層2側から複合材10の分断予定線に沿って複合材10に照射する。前記レーザ光C1にて脆性材料層2を形成する脆性材料を除去することによって、溝41を形成する。本実施形態では、
図7(b)に示すように、溝41は、分断予定線に沿って一体的に繋がって形成されている。
図7に示す例では、複合材10の面内(XY2次元平面内)の直交する2方向(X方向及びY方向)のうち、Y方向に延びる直線DLが分断予定線である場合を図示している。分断予定線DLは、視覚的に認識できる表示として実際に複合材10に描くことも可能であるし、レーザ光C1と複合材10とのXY2次元平面上での相対的な位置関係を制御する制御装置(図示せず)にその座標を予め入力しておくことも可能である。
図7に示す分断予定線DLは、制御装置にその座標が予め入力されており、実際には複合材10に描かれていない仮想線である。なお、分断予定線DLは、直線に限るものではなく、曲線であってもよい。この場合、平面視略曲線状の溝41が形成される。シート材の用途に応じて分断予定線DLを決定することで、シート材を分断することにより、任意の形状の分割片を得ることができる。
【0027】
レーザ光C1を複合材10の分断予定線DLに沿って照射する態様(レーザ光C1を走査する態様)としては、例えば、枚葉状の複合材10をXY2軸ステージ(図示せず)に載置して固定(例えば、吸着固定)し、制御装置からの制御信号によってXY2軸ステージを駆動することで、レーザ光C1に対する複合材10のXY2次元平面上での相対的な位置を変更することが考えられる。また、複合材10の位置を固定し、制御装置からの制御信号によって駆動するガルバノミラーやポリゴンミラーを用いて超短パルスレーザ光源51から発振したレーザ光C1を偏向させることによって、複合材10に照射されるレーザ光C1のXY2次元平面上での位置を変更することも考えられる。更には、上記のXY2軸ステージを用いた複合材10の走査と、ガルバノミラー等を用いたレーザ光C1の走査との双方を併用することも可能である。
【0028】
脆性材料層2を形成する脆性材料は、超短パルスレーザ光源51から発振したレーザ光C1のフィラメンテーション現象を利用して、或いは、超短パルスレーザ光源51にマルチ焦点光学系(図示せず)又はベッセルビーム光学系(図示せず)を適用することで、除去される。
なお、超短パルスレーザ光のフィラメンテーション現象を利用することや、超短パルスレーザ光源にマルチ焦点光学系又はベッセルビーム光学系を適用することについては、ジョン ロペス(John Lopez)他、“超短パルスベッセルビームを用いたガラス切断(GLASS CUTTING USING ULTRASHORT PULSED BESSEL BEAMS)”、[online]、2015年10月、International Congress on Applications of Lasers & Electro-Optics (ICALEO)、[令和2年7月17日検索]、インターネット(URL:https://www.researchgate.net/publication/284617626_GLASS_CUTTING_USING_ULTRASHORT_PULSED_BESSEL_BEAMS)に記載されている。また、ドイツのTrumpf社から、超短パルスレーザ光源にマルチ焦点光学系を適用したガラス加工に関する製品が販売されている。このように、超短パルスレーザ光のフィラメンテーション現象を利用することや、超短パルスレーザ光源にマルチ焦点光学系又はベッセルビーム光学系を適用することについては公知であるため、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0029】
超短パルスレーザ光源51から発振され、複合材10に照射されるレーザ光C1は、接合層32に吸収され、脆性材料層2に吸収されない波長を有することが好ましい。具体的には、レーザ光C1の波長は、脆性材料層2を形成する脆性材料がガラスである場合に高い光透過率を示す500nm以上2500nm以下であることが好ましい。非線形光学現象(多光子吸収)を効果的に引き起こすため、レーザ光C1のパルス幅は、100ピコ秒以下であることが好ましく、50ピコ秒以下であることがより好ましい。レーザ光C1のパルス幅は、例えば、350フェムト秒以上10000フェムト秒以下に設定される。レーザ光C1の発振形態は、シングルパルス発振でも、バーストモードのマルチパルス発振でもよい。
【0030】
超短パルスレーザ光源51から発振され、複合材10に照射されるレーザ光C1の焦点が、超短パルスレーザ光源51が配置された側と反対側(
図7(a)に示す例では下側)の脆性材料層2の面(すなわち、
図7(a)に示す例では接合層32との界面)又は当該面よりも超短パルスレーザ光源51から離れた位置(
図7(a)に示す例では下方の位置)に位置するように設定されている。これにより、形成される溝41は、接合層32側で開口し、脆性材料層2の厚み方向(Z方向)中央に向けて延びる非貫通(接合層32側と反対側では開口していない)の加工痕になる。
接合層32側で開口する非貫通の溝41が形成されるメカニズムは必ずしも明確ではないが、レーザ光C1の焦点を脆性材料層2と接合層32との界面又は界面よりも下方の位置に設定することで、レーザ光C1のエネルギーが接合層32の脆性材料層2との界面近傍に集中的に吸収されて発熱し、その熱が脆性材料層2に伝導することで、伝導した箇所の脆性材料が除去されて溝41が形成される、と推定される。
以下、レーザ光C1の焦点の設定方法について説明する。
【0031】
図8は、超短パルスレーザ光源51から発振するレーザ光C1の焦点の設定方法の一例を模式的に説明する説明図である。
図8に示す例では、超短パルスレーザ光源51にマルチ焦点光学系を適用している。具体的には、
図8に示すマルチ焦点光学系は、3つのアキシコンレンズ51a,51b,51cで構成されている。
図8に示すように、超短パルスレーザ光源51から発振するレーザ光C1の空間強度分布をガウシアン分布と仮定すれば、比較的強度の高い点Aから点Bまでの範囲で発振したレーザ光C1は、
図8において破線で示す光路を辿って、焦点AFで収束する。この際、接合層32の脆性材料層2との界面近傍に設定する焦点は、点Aから点Bまでの比較的強度の高い範囲で発振したレーザ光C1が収束する焦点AFである。点Aから点Bまでの範囲は、例えば、レーザ光C1の空間強度分布の最大強度の90%以上の強度となる範囲である。
このレーザ光C1の焦点AFの位置が、脆性材料層2と接合層32との界面又は界面よりも下方の位置(具体的には、界面から下方に距離H(H≧0)の位置)となるように、焦点AFと複合材10との位置関係を調整する。この距離Hは、好ましくは0μm~800μm、より好ましくは50μm~600μm、更に好ましくは200μm~400μmに設定される。
焦点AFにおけるレーザ光C1のスポット径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に設定される。
【0032】
なお、レーザ光C1のフィラメンテーション現象を利用する場合には、レーザ光C1が脆性材料層2を透過する際、カー効果によって自己収束することで、進行するほどスポット径が小さくなる。そして、脆性材料層2にアブレーションが生じるエネルギー閾値までレーザ光C1が収束したときに、脆性材料層2の脆性材料が除去されて溝41が形成されることになる。上記のように、アブレーションが生じるエネルギー閾値までレーザ光C1が収束する位置(前述の焦点AFに相当)を脆性材料層2と接合層32との界面又は界面よりも下方の位置に設定することで、接合層32側で開口し、脆性材料層2の厚み方向(Z方向)中央に向けて延びる非貫通の溝41を形成可能である。
【0033】
超短パルスレーザ光源51から発振するレーザ光C1のパワーや焦点AFの位置(距離H)を調整することによって、溝41を形成する(脆性材料を除去する)のに用いられるエネルギーの強弱(点Aから点Bまでの範囲の強度の大小)を調整することが可能である。これにより、溝41の深さを調整することが可能である。
同様にして、超短パルスレーザ光源51から発振するレーザ光C1のパワーや焦点AFの位置を調整することにより、脆性材料層2の接合層32との界面と反対側の面に、溝を形成したり、その溝の深さを調整することも可能である。このように反対面側にも溝42を形成した場合には、
図3に示すようなシート材12を得ることができる。
【0034】
<樹脂層のはく離>
溝41(必要に応じて溝42)を形成した後、複合材10から、はく離ローラ等の公知のはく離手段を用いて、樹脂層3(樹脂フィルム層31及び接合層32)をはく離する。このようにして、
図1に示すような、溝41が形成された脆性材料層2のみからなるシート材11、或いは、
図3に示すような、溝41及び溝42が形成された脆性材料層2のみからなるシート材12を得ることができる。
【0035】
<その他>
なお、
図4及び
図5に示すようなミシン目線43が形成されたシート材13は、例えば、本件出願人が出願したWO2019/138967に記載の方法によって得ることができる。
また、本発明のシート材は、レーザ光源を用いた方法によって製造される場合に限られない。例えば、脆性材料層をカッターホイールなどで削り取るなどの従来公知の機械的な加工法によって、溝などの脆弱線が形成された脆性材料層を有するシート材を得ることもできる。
【0036】
[分断装置]
ここで、本発明の分断方法を実施するために使用される分断装置を説明する。
図9は、シート材11の分断装置の第1例を示す側面図、
図10は、前記分断装置100の平面図、
図11は、前記分断装置100を第2方向に沿って切断した断面図、
図12は、前記分断装置100の参考斜視図である。なお、
図9及び
図10において、シート材11を破線で示している。
図9乃至
図12に示す分断装置100は、第1方向に延びる脆弱線4が形成された脆性材料層2を有する柔軟なシート材11を、前記脆弱線4に沿って分断するための装置である。
分断装置100は、分断対象であるシート材11を載せる載置台と、前記シート材11のうち脆弱線4の周辺領域11Cに対して第2方向に引張り力を作用させる引張り機構部と、先端部81を有する分断補助具8と、を有する。
載置台は、第2方向において2つに分かれている。載置台は、第2方向右側に配置された右ステージ部6と、前記第2方向左側に配置された左ステージ部7と、を有する。
前記右ステージ部6と左ステージ部7の間には、前記周辺領域11Cを側面視で凹弧状に撓ませるために、前記撓ませた周辺領域11Cを受け入れる空間部Sが設けられている。
分断補助具8は、その先端部81が前記空間部Sに進入可能となるように構成されている。
【0037】
具体的には、右ステージ部6は、シート材11の右側領域11Rの全部又は一部を載せる載置面を有する。本実施形態では、右ステージ部6は、右側領域11Rの一部を載せる第1右載置面61aを有する第1右ステージ部61と、右側領域11Rの他の部分を載せる第2右載置面62aを有する第2右ステージ部62と、を有する。第1右ステージ部61は、第2右ステージ部62の左側に配置されている。
第1右載置面61a及び第2右載置面62aが、右ステージ部6の載置面を構成している。第1右載置面61aと第2右載置面62aは、同一平面上であってもよく、何れか一方が他方よりも下側に少し下がっていてもよい。好ましくは、
図9に示すように、第1右載置面61aと第2右載置面62aは、同一平面上で且つ水平である。
第2右ステージ部62は、装置の固定部180に固定されている。装置の固定部180としては、装置設置場所に固着されたフレームなどが挙げられる。
第2右ステージ部62は、シート材11を保持する機能を有さない。従って、第2右ステージ部62の第2右載置面62aに載せたシート材11を、その第2右載置面62a上に沿って自由に動かすことができる。
【0038】
第1右ステージ部61は、引張り機構部を含んでいる。つまり、第1右ステージ部61は、シート材を載置する載置台を兼用する引張り機構部に相当する。
詳しくは、第1右ステージ部61は、シート材11の右側領域11Rを着脱自在に保持する右保持台部63と、前記右保持台部63を第2方向に平行移動させる右出退装置64と、を有する。
前記右保持台部63の表面が、前記第1右載置面61aを構成している。また、右保持台部63は右出退装置64と協働してシート材11の右側領域11Rを引張る引張り機構部を構成している。
前記右保持台部63は、例えば、第1方向に延びる中空状のケース体から構成されている。図示例では、右保持台部63は、例えば、第1方向に延びる中空状の直方体からなる。前記右保持台部63の表面には、右保持台部63の内外に連通する貫通孔である右通気孔65が複数形成されている。前記右保持台部63には、右保持台部63の内部に連通する右チューブ66が接続され、前記右チューブ66には、真空ポンプなどのエアー吸引器(図示せず)が接続されている。
右保持台部63の第1方向における長さ(以下、第1方向における長さを「第1方向長さ」という)は、右通気孔65がシート材11からはみ出ない範囲で適宜設定される。例えば、右保持台部63の第1方向長さは、シート材11の第1方向長さと略同等、又は、シート材11の第1方向長さよりも少し短い。
【0039】
右出退装置64は、右駆動部641と、右駆動部641によって第2方向右側及び左側に出退する右軸部642と、を有する。右駆動部641は、例えば、装置の固定部180に固定された第2右ステージ部62に固定されている。右軸部642の端部は、右保持台部63に取り付けられている。右駆動部641の駆動によって右軸部642が第2方向左側に進出すると、それに従動して右保持台部63は第2方向左側に平行移動する。他方、右駆動部641の駆動によって右軸部642が第2方向右側に後退すると、それに従動して右保持台部63は第2方向右側に平行移動する。前記右出退装置64としては、例えば、空圧又は油圧シリンダ、モーターによるシリンダ、ラックアンドピニオン機構、リンク機構、カム機構などを用いることができる。
【0040】
第1右載置面61aにシート材11を載せ、前記エアー吸引器を作動させてエアーを吸引することにより、右保持台部63内が負圧となる。このため、前記右通気孔65に面するシート材11の右側領域11Rが吸引され、前記右側領域11Rが右保持台部63の第1右載置面61aに保持される。右側領域11Rが右保持台部63に吸引保持された状態で、右出退装置64によって右保持台部63を第2方向左側及び右側に移動させることにより、右側領域11Rを第2方向左側及び右側に平行移動させることができる。そして、右側領域11Rを第2方向右側に平行移動させることにより、周辺領域11Cに対して引張り力を作用させることができる。右保持台部63の移動方向を、
図9及び
図10の白抜き太矢印で示している。
他方、前記エアーの吸引を解除することにより、右保持台部63によるシート材11の吸引保持が解除される。このため、エアーの吸引を行なわない状態では、シート材11を右保持台部63の第1右載置面61aに載せること、或いは、載せたシート材11を前記第1右載置面61aから取り外すことができる。
【0041】
左ステージ部7は、シート材11の左側領域11Lの全部又は一部を載せる載置面を有する。本実施形態では、左ステージ部7は、左側領域11Lの一部を載せる第1左載置面71aを有する第1左ステージ部71と、左側領域11Lの他の部分を載せる第2左載置面72aを有する第2左ステージ部72と、を有する。第1左ステージ部71は、第2左ステージ部72の右側に配置されている。
第1左載置面71a及び第2左載置面72aが、左ステージ部7の載置面を構成している。第1左載置面71aと第2左載置面72aは、同一平面上であってもよく、何れか一方が他方よりも下側に少し下がっていてもよい。好ましくは、
図9に示すように、第1左載置面71aと第2左載置面72aは、同一平面上で且つ水平である。
第2左ステージ部72は、装置の固定部180に固定されている。
第2左ステージ部72は、シート材11を保持する機能を有さない。従って、第2左ステージ部72の第2左載置面72aに載せたシート材11を、その第2左載置面72a上に沿って自由に動かすことができる。
【0042】
第1左ステージ部71は、引張り機構部を含んでいる。つまり、第1左ステージ部71は、シート材を載置する載置台を兼用する引張り機構部に相当する。
詳しくは、第1左ステージ部71は、シート材11の左側領域11Lを着脱自在に保持する左保持台部73と、前記左保持台部73を第2方向に平行移動させる左出退装置74と、を有する。
前記左保持台部73の表面が、前記第1左載置面71aを構成している。また、左保持台部73は左出退装置74と協働してシート材11の左側領域11Lを引張る引張り機構部を構成している。
前記左保持台部73は、例えば、第1方向に延びる中空状のケース体から構成されている。図示例では、左保持台部73は、例えば、第1方向に延びる中空状の直方体からなる。前記左保持台部73の表面には、左保持台部73の内外に連通する貫通孔である左通気孔75が複数形成されている。前記左保持台部73には、左保持台部73の内部に連通する左チューブ76が接続され、前記左チューブ76には、真空ポンプなどのエアー吸引器(図示せず)が接続されている。
左保持台部73の第1方向における長さ(以下、第1方向における長さを「第1方向長さ」という)は、左通気孔75がシート材11からはみ出ない範囲で適宜設定される。例えば、左保持台部73の第1方向長さは、シート材11の第1方向長さと略同等、又は、シート材11の第1方向長さよりも少し短い。
【0043】
左出退装置74は、左駆動部741と、左駆動部741によって第2方向右側及び左側に出退する左軸部742と、を有する。左駆動部741は、例えば、装置の固定部180に固定された第2左ステージ部72に固定されている。左軸部742の端部は、左保持台部73に取り付けられている。左駆動部741の駆動によって左軸部742が第2方向右側に進出すると、それに従動して左保持台部73は第2方向右側に平行移動する。他方、左駆動部741の駆動によって左軸部742が第2方向左側に後退すると、それに従動して左保持台部73は第2方向左側に平行移動する。前記左出退装置74としては、例えば、空圧又は油圧シリンダ、モーターによるシリンダ、ラックアンドピニオン機構、リンク機構、カム機構などを用いることができる。
【0044】
第1左載置面71aにシート材11を載せ、前記エアー吸引器を作動させてエアーを吸引することにより、左保持台部73内が負圧となる。このため、前記左通気孔75に面するシート材11の左側領域11Lが吸引され、前記左側領域11Lが左保持台部73の第1左載置面71aに保持される。左側領域11Lが左保持台部73に吸引保持された状態で、左出退装置74によって左保持台部73を第2方向右側及び左側に移動させることにより、左側領域11Lを第2方向右側及び左側に平行移動させることができる。そして、左側領域11Lを第2方向左側に平行移動させることにより、周辺領域11Cに対して引張り力を作用させることができる。左保持台部73の移動方向を、
図9及び
図10の白抜き太矢印で示している。
他方、前記エアーの吸引を解除することにより、左保持台部73によるシート材11の吸引保持が解除される。このため、エアーの吸引を行なわない状態では、シート材11を左保持台部73の第1左載置面71aに載せること、或いは、載せたシート材11を前記第1左載置面71aから取り外すことができる。
【0045】
前記第1右載置面61aと第1左載置面71aは、同一平面上であってもよく、何れか一方が他方よりも下側に少し下がっていてもよい。好ましくは、
図9に示すように、第1右載置面61aと第1左載置面71aは、同一平面上で且つ水平である。
【0046】
第1右ステージ部61(右ステージ部6)と第1左ステージ部71(左ステージ部7)の間には、空間部Sが設けられている。前記空間部Sは、第1右ステージ部61(右ステージ部6)の側面と第1左ステージ部71(左ステージ部7)の側面によって画成されたスペースである。
前記空間部Sは、周辺領域11Cが凹弧状に撓むことを阻害することなく、凹弧状に撓ませた周辺領域11Cを受け入れるスペースである。換言すると、空間部Sは、周辺領域11Cが凹弧状に撓むことを許容するスペースである。
空間部Sの幅は、右保持台部63及び左保持台部73を第2方向右側及び左側に移動させることにより、適宜調整できる。なお、空間部Sの幅は、空間部Sの第2方向における長さをいう。
【0047】
分断補助具8は、脆弱線4に沿ってシート材11を分断する際の、分断契機を引き起こさせる部材である。
分断補助具8は、引張られた周辺領域11Cが当接する先端部81と、前記先端部81が設けられた本体部82と、を有する。
分断補助具8は、第1方向に延びる平面視直線状である。分断補助具8の第1方向長さは、シート材11の第1方向長さよりも少し短くてもよいが、好ましくは、シート材11の第1方向長さと略同等、又は、シート材11の第1方向長さよりも少し長い。図示例では、分断補助具8の第1方向長さは、シート材11の第1方向長さよりも少し長い。
【0048】
本体部82は、例えば、第1方向に延びる板状体からなり、その板状体の端部に先端部81が設けられている。本体部82は、金属、硬質プラスチックなどの硬質材料から形成されている。
先端部81も金属や硬質プラスチックなどの硬質材料から形成されていてもよい。シート材11の周辺領域11Cに対する傷付きを防止するため、先端部81は、ゴムなどの弾性材料から形成されていることが好ましい。例えば、先端部81は、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレン(CR)などの合成ゴム;天然ゴム(NR);スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)などの共重合体ゴム;オレフィン系エラストマー;スチレンブタジエンスチレンエラストマー(SBS)などのスチレン系エラストマー;ウレタン系エラストマー;エステル系エラストマー;フッ素系エラストマー;ポリアミド系エラストマーなどから形成される。
【0049】
分断補助具8の先端部81は、側面視で弧状に形成されていることが好ましく、さらに、側面視で半円弧状に形成されていることがより好ましい。
前記分断補助具8の弧状の先端部81の曲率半径は、特に限定されない。シート材11を良好に分断できることから、前記先端部81は、側面視で曲率半径1mm以上10mm以下の弧状に形成されていることが好ましく、さらに、分断不良をより防止できることから、曲率半径1mm以上6mm以下の弧状に形成されていることがより好ましく、曲率半径2mm以上6mm以下がさらに好ましい。
また、分断補助具8は、空間部Sに対応して配置されている。
分断補助具8は、その先端部81の頂点81Tが空間部Sの幅方向中心点上に略位置するように配置されていてもよく、或いは、先端部81の頂点81Tが空間部Sの幅方向中心点よりも右寄り又は左寄りに位置するように配置されていてもよい。好ましくは、分断補助具8の先端部81の頂点81Tが空間部Sの幅方向中心点上に略位置するように、分断補助具8が配置される。なお、前記先端部81の頂点81Tは、側面視で弧状に形成されている先端部81の弧の先端をいい、図示例では、側面視で先端部81の下端が頂点81Tとなる。なお、前記先端部81の頂点81Tは、平面視では直線状である。
載置面に載せられるシート材11と分断補助具8の関係において、分断補助具8の弧状の先端部81が、平面視で前記シート材11の脆弱線4に重なるように、分断補助具8が配置されていることが好ましい。
【0050】
前記分断補助具8は、移動装置83を介して上下方向に平行移動させることができる。
図9に、分断補助具8の移動方向を太矢印で示している。
移動装置83は、駆動部831と、駆動部831によって上下に出退する軸部832と、を有する。駆動部831は、装置の固定部182に固定されており、軸部832の端部は分断補助具8に取り付けられている。図示例では、移動装置83の軸部832が、本体部82に取り付けられている。
前記移動装置83としては、例えば、空圧又は油圧シリンダ、モーターによるシリンダ、ラックアンドピニオン機構、リンク機構、カム機構などを用いることができる。
前記移動装置83によって分断補助具8を下方に平行移動させることにより、
図11に示すように、空間部S内に分断補助具8の先端部81を進入させることができる。また、前記移動装置83によって分断補助具8を上方に平行移動させることにより、
図11の一点鎖線で示すように、分断補助具8の先端部81を空間部Sから退出させることができる。
【0051】
[シート材の設置工程]
設置工程は、前記シート材11のうち前記脆弱線4の周辺領域11Cを、側面視で凹弧状に撓ませた状態とし、前記凹弧状の周辺領域11Cの凹内に分断補助具8の先端部81を配置する工程である。
ここで、本発明の分断方法において、説明上、分断対象であるシート材11を、概念上、3つの領域に区分けしている。シート材11のうち、脆弱線4の周辺領域11Cは、分断する直前に凹弧状に撓ませる領域をいう。また、シート材11のうち、右側の領域は、前記周辺領域11Cよりも第2方向右側の領域をいう。シート材11のうち、左側の領域は、前記周辺領域11Cよりも第2方向左側の領域をいう。シート材11のうち「右側の領域」を「右側領域11R」、シート材11のうち「左側の領域」を「左側領域11L」という。
【0052】
図13(a)に示すように、分断補助具8の先端部81を空間部Sから退出させた状態で、シート材11の右側領域11Rを右ステージ部6の載置面(第1右載置面61a及び第2右載置面62a)に載せ且つシート材11の左側領域11Lを左ステージ部7の載置面(第1左載置面71a及び第2左載置面72a)に載せる。この際、分断補助具8の先端部81の下方にシート材11の脆弱線4が位置するようにして、シート材11を載置面に載せることが好ましい。例えば、分断補助具8の先端部81の頂点81Tが空間部Sの幅方向中心点上になるように配置している場合には、シート材11の脆弱線4が空間部Sの幅方向中心点上に略位置するようにして、シート材11を載置面に載せる。このようにすれば、比較的簡単に、分断補助具8の弧状の先端部81を平面視で脆弱線4に重なるように配置できる。
なお、シート材11は、脆弱線4の形成側を載置面に対面させる。換言すると、分断補助具8の先端部81側にシート材11の非形成側が対面するように、シート材11を載置面に載せる。なお、シート材11に代えて、第2例及び第3例のシート材12,13を分断対象とする場合には、それらのシート材12,13は一方面側及び反対面側がいずれも形成側であるので、いずれの側を載置面に対面させてもよい。
【0053】
エアーを吸引して、右保持台部63によってシート材11の右側領域11Rを保持し且つ左保持台部73によってシート材11の左側領域11Lを保持する。エアーの吸引圧は、シート材11を吸引保持できれば特に限定されず、例えば、0.1MPa以上であり、好ましくは0.15MPa以上である。
前記保持した状態で、同図(a)の白抜き太矢印で示すように、右保持台部63を第2方向左側へ平行移動させ且つ左保持台部73を第2方向右側へ平行移動させる。つまり、右保持台部63と左保持台部73の間隔(空間部Sの幅)が小さくなるように、右保持台部63と左保持台部73を互いに近づくように移動させる。シート材11を保持した右保持台部63と左保持台部73を平行移動させることにより、同図(b)に示すように、柔軟なシート材11のうち保持されていない周辺領域11Cが側面視で凹弧状に撓む。
詳しくは、右保持台部63と左保持台部73を互いに近づくように平行移動させることにより、周辺領域11Cが両側から押圧されて平坦状を維持できず、周辺領域11Cの自重によって周辺領域11Cが上向きに開放された凹弧状に変形する。分断装置100には、空間部Sが設けられているので、周辺領域11Cが凹弧状に撓むことが阻害されない。このため、同図(b)に示すように、側面視凹弧状に撓んだ周辺領域11Cは空間部S内に入り込む。
【0054】
側面視で凹弧状に撓んだ周辺領域11Cの脆弱線4が分断補助具8の弧状の先端部81と平面視で重なるように、シート材11を配置することが好ましい。
例えば、右保持台部63及び左保持台部73を等量移動させることにより(右保持台部63及び左保持台部73の移動長さを同じにすることにより)、凹弧状の幅方向略中心点に脆弱線4が位置するようになる。このため、分断補助具8の先端部81の頂点81Tが空間部Sの幅方向中心点上に略配置されている場合、側面視で凹弧状に撓んだ周辺領域11Cの脆弱線4が分断補助具8の先端部81と平面視で重なるようなる。
なお、右保持台部63及び左保持台部73の移動によって周辺領域11Cを側面視凹弧状に撓ませる方式に代えて、次のようにしてもよい。例えば、
図13(a)のようにシート材11の右側領域11Rを右ステージ部6の載置面61a,62aに載せ且つシート材11の左側領域11Lを左ステージ部7の載置面71a,72aに載せる。そして、指先で周辺領域11Cを空間部S側へ押すことによって、周辺領域11Cを凹弧状に撓ませた後、エアーを吸引して右保持台部63及び左保持台部73によって右側領域11R及び左側領域11Lを保持してもよい。
【0055】
図14は、前記凹弧状に撓んだ周辺領域11Cの凹内に、分断補助具8の先端部81が配置された状態を示している。
図14の拡大図を参照して、凹弧状に変形した周辺領域11Cの幅W1は、特に限定されないが、例えば、20mm以上70mm以下であり、好ましくは、25mm以上65mm以下である。前記周辺領域11Cの幅W1は、凹弧状に撓んだ周辺領域11Cの第2方向における長さをいう。図示例では、前記周辺領域11Cの幅W1は、空間部Sの幅に略等しい。ただし、前記幅W1が、空間部Sの幅よりも小さい場合もある。
また、
図14の拡大図を参照して、凹弧状に変形した周辺領域11Cの撓み量H1は、特に限定されない。ただし、周辺領域11Cの撓み量H1が、余りに小さいと実質的に凹弧状にならず、余りに大きいと曲げ応力にシート材11が耐えられず、脆弱線4からずれた箇所でシート材11が破断するおそれがある。かかる観点から、凹弧状に変形した周辺領域11Cの撓み量H1は、2mm以上35mm以下であり、分断不良をより防止できることから、3mm以上20mm以下が好ましく、さらに、5mm以上15mm以下がより好ましい。前記撓み量H1は、凹弧状の周辺領域11Cの凹底の表面と右側領域11Rの表面との間隔(上下方向長さ)をいう。
【0056】
周辺領域11Cを凹弧状に撓ませた後、右保持台部63及び左保持台部73で右側領域11R及び左側領域11Lを保持したままで、
図13(a)の太矢印で示すように、移動装置83を作動させて分断補助具8を下方に移動させ、その先端部81を周辺領域11Cの凹内に配置する(
図14参照)。
分断補助具8の先端部81を周辺領域11Cの凹内に進入させることにより、先端部81の頂点81Tが右側領域11Rの表面よりも下方に位置するようになる。分断補助具8の先端部81の進入量H2は、特に限定されず、例えば、0mmを超え30mm以下であり、好ましくは2mm以上19mm以下であり、より好ましくは4mm以上14mm以下である。前記進入量H2は、凹弧状の周辺領域11Cに進入させた先端部81と右側領域11Rの表面との間隔(上下方向長さ)をいう。
特に図示しないが、分断補助具8の先端部81が凹弧状の周辺領域11Cの表面に接するまで、分断補助具8を凹内に進入させてもよい。ただし、この場合、分断補助具8を進入させ過ぎることによって凹弧状の周辺領域11Cに応力が加わり、周辺領域11Cが不用意に破断することがないように注意する必要がある。かかる観点から、分断補助具8の先端部81が凹弧状の周辺領域11Cの表面に接触しない程度で、分断補助具8の先端部81を周辺領域11Cの凹内に配置することが好ましい。
【0057】
図示例では、分断補助具8の先端部81が凹弧状の周辺領域11Cの表面に接触しないように、分断補助具8の先端部81を周辺領域11Cの凹内に配置している。この場合、分断補助具8の先端部81と凹弧状の周辺領域11Cの凹底の表面の間隔H3は、特に限定されないが、これが大き過ぎると、脆弱線4に対する分断補助具8の先端部81の位置を合わせ難くなるおそれがある。かかる観点から、前記間隔H3は、例えば、0mmを超え10mm以下であり、さらに、分断不良をより防止できることから、1mm以上5mm以下であることが好ましい。なお、前記間隔H3が0mmの場合は、分断補助具8の先端部81が凹弧状の周辺領域11Cの表面に接触している場合である。
凹内に配置した分断補助具8は、シート材11の分断が完了するまで、その位置で動かないように位置を保っておく。
【0058】
[シート材の分断工程]
分断工程は、凹弧状に撓んだ周辺領域11Cに対して第2方向に引張り力を作用させることにより、前記凹弧状の周辺領域11Cを分断補助具8の先端部81側へと戻す工程である。この工程により、シート材11は脆弱線4に従って分断される。
図14に示す状態で、周辺領域11Cを第2方向右側及び又は第2方向左側に引張る。
具体的には、同図の白抜き太矢印で示すように、シート材11の右側領域11Rを保持した右保持台部63を第2方向右側へ平行移動させ、且つ、左側領域11Lを保持した左保持台部73を第2方向左側へ平行移動させる。つまり、右保持台部63と左保持台部73の間隔が大きくなるように、右保持台部63と左保持台部73を相反する方向に移動させる。従って、右保持台部63に保持された右側領域11Rと左保持台部73に保持された左側領域11Lが相反する方向に引張られるので、右側領域11R及び左側領域11Lに繋がる周辺領域11Cは、第2方向右側及び左側に引張られる。弧状に撓んだ周辺領域11Cに対して第2方向に引張り力が作用すると、凹弧状の周辺領域11Cは平坦状に戻るようになる。凹弧状の周辺領域11Cの凹内に分断補助具8の先端部81が配置されているので、
図15に示すように、周辺領域11Cが前記平坦状に戻る途中で分断補助具8の先端部81に当接し、さらに、周辺領域11Cが分断補助具8の先端部81に押し付けられる。
【0059】
右側領域11Rと左側領域11Lの各引張り速度(右保持台部63と左保持台部73の各移動速度)は、特に限定されず、両者は等速度でもよく、いずれか一方が他方よりも速くてもよい。
右側領域11Rと左側領域11Lを同じ引張り速度(等速度)で且つ同時に引張ることにより、周辺領域11Cが凹弧状から平坦状に戻る際に、脆弱線4が右側又は左側にずれることなくそのまま上方に偏位するようになる。このように等速度で且つ同時に引張ることにより、周辺領域11Cが分断補助具8の先端部81に当接した際に、分断補助具8の先端部81が脆弱線4に平面視で重なるようになる。前記平面視で重なるとは、分断補助具8の、弧状に形成された先端部81の略直下に脆弱線4が位置している状態をいう(換言すると、上方から下方に向かって平面視した際に、脆弱線4が前記曲率半径を有する弧状の先端部81に隠れて見えない状態をいう)。分断補助具8の先端部81が平面視で脆弱線4に重なるようにして、周辺領域11Cが分断補助具8の先端部81に当接することにより、シート材11を脆弱線4に従って良好に分断できる。なお、図示例では、分断補助具8の先端部81の頂点81Tが平面視で脆弱線4に重なるように、分断補助具8の先端部81が配置されている。ただし、先端部81の頂点81Tが脆弱線4に重なっている場合に限定されず、前記曲率半径を有する弧状の先端部81と脆弱線4が重なっていればよい。
右側領域11Rと左側領域11Lの具体的な引張り速度は、特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、5mm/秒以上50mm/秒以下であり、好ましくは7mm/秒以上40mm/秒以下であり、より好ましくは10mm/秒以上20mm/秒以下である。
【0060】
第2方向に引張られた周辺領域11Cが分断補助具8の先端部81に強く押し付けられると、
図16に示すように、シート材11は脆弱線4に従って割断し、2つの分割片111,112が生じる。シート材11を2つの分割片111,112に分断した後、エアーの吸引を解除することにより、右ステージ部6及び左ステージ部7から各分割片111,112を取り外すことができる。
【0061】
本発明の分断方法及び分断装置を用いれば、分割面にクラックが発生したり、或いは、脆弱線から逸れてシート材が分断されることを防止できる。
このように分割不良を防止して、脆性材料層を有するシート材を脆弱線に従って分断できるメカニズムは現状明確ではないが、次のように推定される。
引張り力によって周辺領域11Cが分断補助具8の先端部81に当接し且つさらにそれに押し付けられると、
図15の拡大図に示すように、凹弧状の周辺領域11Cの凹底側が分断補助具8の先端部81側に圧縮され(圧縮方向を細矢印で示す)、前記周辺領域11Cの凹底とは反対側が第2方向右側及び左側に引張られる(引張り方向を細破線矢印で示す)。特に、先端部81が側面視で弧状に形成されているので、脆弱線4の付近に略均一な曲げ応力を加えることができる。脆弱線4を基準にして、周辺領域11Cの凹底側が圧縮され且つその反対側が拡げられるので、分断補助具8の先端部81に当接したシート材11は脆弱線4において速やかに割断するようになる。さらに、シート材11に付加した引張り力により、割断と同時に、分割片111,112が離れる。
このため、クラックの発生や脆弱線から逸れて割断し難く、シート材11を脆弱線4に従って良好に分割できると推定される。さらに、
【0062】
以下、本発明の第2実施形態を説明するが、その説明に於いては、主として上述の実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語又は符号をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある(第3実施形態以降も同様である)。
【0063】
(第2実施形態)
第2実施形態は、分断対象であるシート材が、脆性材料層と、前記脆性材料層に積層された樹脂層と、を有する。樹脂層は、上記第1実施形態で説明したような、接合層と、樹脂フィルム層と、を有する。
脆性材料層には、第1方向に延びる脆弱線が形成されている。樹脂層には、その樹脂層の樹脂材料が存在しない欠損部が部分的に形成されている。この部分的に樹脂層を有さない欠損部は、前記脆弱線に重なって第1方向(すなわち脆弱線の延びる方向)に延在されている。
【0064】
図17及び
図18は、脆性材料層2と樹脂層3を有する、分断前のシート材14の第4例を示している。
図17及び
図18に示す第4例のシート材14は、脆性材料層2と、樹脂フィルム層31及び接合層32を有する樹脂層3と、を有する。脆性材料層2の一方面と樹脂フィルム層31とは、粘着剤などからなる接合層32を介して接合されている。
脆性材料層2の一方面には、第1方向に沿って延びる溝41(脆弱線4)が形成されている。前記溝41(脆弱線4)は、脆性材料層2の第1方向一方側の端縁から第1方向反対側の端縁にまで延在されている。
樹脂層3の面内には、欠損部45が形成されている。欠損部45は、厚み方向において前記溝41(脆弱線4)に重なる位置に形成されている。従って、一方面側から見て、樹脂層3が溝41に被さっておらず、前記溝41は一方面側において開口(開放)されている。図示例では、前記欠損部45の平面視形状は、前記溝41の平面視形状と略同じである。また、前記欠損部45の幅は、前記溝41の幅と略同じ又はそれよりも若干大きい。
第4例のシート材14にあっては、脆性材料層2の一方面側が、形成側であり、その反対面側が、非形成側である。
【0065】
図19は、分断前の第5例のシート材15を示している。
図19に示す第5例のシート材15は、脆性材料層2の反対面に溝42(脆弱線4)が形成されている点を除いて、上記第4例のシート材14と同様である。第5例のシート材15にあっては、脆性材料層2の反対面側が形成側であり、その一方面側が非形成側である。この場合、溝42は、反対面側において開口(開放)されている。
図20は、分断前の第6例のシート材16を示している。
図20に示す第6例のシート材16は、脆性材料層2の一方面に溝41(脆弱線4)が形成され且つ脆性材料層2の反対面に溝42(脆弱線4)が形成されている点を除いて、上記第4例のシート材14と同様である。第6例のシート材16にあっては、脆性材料層2の一方面側及び反対面側が、いずれも形成側である。
なお、特に図示しないが、第4例乃至第6例のシート材14,15,16の溝に代えて、脆弱線4としてミシン目線を用いてもよい。
【0066】
第2実施形態のような、脆弱線4が形成された脆性材料層2と欠損部45が形成された樹脂層3とを有するシート材14,15,16は、次のようにして得られる。
上記第1実施形態の[脆弱線が形成されたシート材の準備工程]の<複合材>及び<脆弱線(溝)の形成>の欄の説明と同様にして、溝41(必要に応じて溝42)が形成された複合材10を得る。次に、この複合材10から樹脂層3を剥離することなく、樹脂層3に欠損部45を形成することにより、第2実施形態のシート材を作製できる。
樹脂層3に欠損部45を形成する方法は、特に限定されないが、レーザ光を使用して樹脂層3の一部を除去することが挙げられる。簡単に説明すると、
図21に示すように、レーザ光源53から発振したレーザ光C2を複合材10の分断予定線DLに沿って樹脂層3に照射して樹脂を除去する。レーザ光源53として、例えば、発振するレーザ光C2の波長が赤外域の9μm以上11μm以下であるCO
2レーザ光源を用いることができる。CO
2レーザ光源53の発振形態は、パルス発振でも連続発振でもよい。レーザ光C2の空間強度分布は、ガウシアン分布でもよいし、レーザ光C2の除去対象外である脆性材料層2のダメージを抑制するため、回折光学素子(図示せず)等を用いて、フラットトップ分布に整形してもよい。レーザ光C2の偏光状態に制約はなく、直線偏光、円偏光及びランダム偏光の何れであってもよい。レーザ光C2を複合材10の分断予定線DLに沿って樹脂層3(樹脂フィルム層31及び粘着剤などの接合層32)に照射することで、レーザ光C2が照射された樹脂の赤外光吸収に伴う局所的な温度上昇が生じて当該樹脂が飛散する。これにより、分断予定線DLに沿った欠損部45が形成される。
【0067】
第2実施形態のシート材も、上記第1実施形態のシート材と同様に、分断装置100を用いて2つの分割片に分断できる。
図22は、例えば、第4例のシート材14を分断する場合を例示している。
図22に示すように、第2実施形態のシート材14を、分断装置100の載置面に載せ、周辺領域14Cを凹弧状に撓ませる。なお、シート材14は、その形成側を載置面に対面させる。凹弧状に撓ませた周辺領域14Cの凹内に分断補助具8の先端部81を配置する。そして、第1実施形態と同様にして、周辺領域14Cに対して第2方向に引張り力を作用させることにより、シート材14を脆弱線4に従って良好に分断できる。
【0068】
(第3実施形態)
上記第1実施形態の分断装置100は、第1右ステージ部61が第2右ステージ部62の左側に配置され且つ第1左ステージ部71が第2左ステージ部72の右側に配置されているが、
図23に示す分断装置101のように、第1右ステージ部61が第2右ステージ部62の右側に配置され且つ第1左ステージ部71が第2左ステージ部72の左側に配置されていてもよい。
この場合、右ステージ部6の第2右ステージ部62と左ステージ部7の第2左ステージ部72の間には、空間部Sが設けられる。つまり、この場合の空間部Sは、第2右ステージ部62の側面と第2左ステージ部72の側面によって画成されたスペースである。また、第2右ステージ部62及び第2左ステージ部72は装置の固定部180に固定されているため、第3実施形態の分断装置101の空間部Sの幅は一定である。
【0069】
(第4実施形態)
上記第1実施形態の分断装置100は、右ステージ部6が第1右ステージ部61及び第2右ステージ部62を有し且つ左ステージ部7が第1左ステージ部71及び第2左ステージ部72を有するが、
図24に示す分断装置102のように、右ステージ部6が第1右ステージ部61から構成され且つ左ステージ部7が第1左ステージ部71から構成されていてもよい。本実施形態においても、第1右ステージ部61及び第1左ステージ部71は、引張り機構部を具備している。つまり、第1右ステージ部61及び第1左ステージ部71は、上記第1実施形態と同様に、シート材を載置する載置台を兼用する引張り機構部とされている。
【0070】
(第5実施形態)
上記第1実施形態の分断装置100は、引張り機構部がシート材を吸引保持する右保持台部63及び左保持台部73とそれを移動させる右出退装置64及び左出退装置74から構成されているが、
図25に示す分断装置103のように、引張り機構部が右ステージ部6側に設けられた右送りローラ68及び左ステージ部7側に設けられた左送りローラ78から構成されていてもよい。
右送りローラ68は、例えば、一対のローラからなる。その一対のローラ間にシート材11の右側領域11Rを挟み込み、ローラを回転させることにより、シート材11の右側領域11Rを第2方向右側に平行移動させることができる。
左送りローラ78は、例えば、一対のローラからなり、同様に、シート材11の左側領域11Lを第2方向左側に平行移動させることができる。
【0071】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、エアー吸引を利用してシート材を右保持台部及び左保持台部にて保持しているが、エアー吸引に代えて又はこれと併用して、比較的粘着力の弱い粘着剤を介してシート材を右保持台部及び左保持台部にて保持するようにしてもよい(図示せず)。
また、上記実施形態では、シート材の右側領域を第2方向右側に引張り且つシート材の左側領域を第2方向左側に引張ることによって、周辺領域を第2方向右側及び左側に引っ張っているが、これに限られない。例えば、左側領域を固定しつつ右側領域を第2方向右側に引張ることにより、周辺領域に対して第2方向右側のみに引張り力を作用させてもよく、或いは、右側領域を固定しつつ左側領域を第2方向左側に引張ることにより、周辺領域に対して第2方向左側のみに引張り力を作用させてもよい。
また、上記分断装置の引張り機構部として、シート材を保持した右保持台部及び左保持台部を平行移動させる方式及び送りローラを用いた方式を例示したが、引張り機構部は、これらに限られない。凹弧状に撓んだ周辺領域を第2方向右側及び/又は左側に引張り力を作用させることができることを条件として、様々な構成の引張り機構部を採用できる。
【実施例0072】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0073】
[シート材]
実施例及び比較例においては、分断対象のシート材として、次のような柔軟なガラス板を使用した。
1辺が200mmの平面視正方形状の柔軟な無アルカリガラス板であって、厚みの異なる3種類の無アルカリガラス板を準備した(厚み30mm、厚み50mm、厚み100mm)。
前記各無アルカリガラス板の一方面の中央部には、深さ2μmの溝(脆弱線)が直線状に形成されている。
【0074】
[実施例1]
図9乃至
図12に示すような分断装置100を試作した。
この分断装置100の分断補助具8の先端部81は、アルミ製で、その先端部81の形状を曲率半径3mmの側面視半円弧状に形成した。
分断装置の載置台に、シート材として厚み30mmの無アルカリガラス板を載せ、
図14に示すように、その周辺領域11Cを凹弧状に撓ませた後、右保持台部63及び左保持台部73にて右側領域11R及び左側領域11Lを吸引保持した(エアー吸引圧:0.2MPa)。この際、分断補助具8の先端部81の頂点81Tの略直下に溝41が位置するように、周辺領域11Cを撓ませた。周辺領域11Cを撓ませた状態で、分断補助具8の先端部81の略頂点81Tの直下に、ガラス板の溝41が位置していた(つまり、分断補助具8の先端部81の頂点とガラス板の溝41は、平面視で略重なっていた)。
次に、分断補助具8を下降させ、その先端部81を前記凹弧状の周辺領域11Cの凹内に配置した。
凹弧状に撓ませた周辺領域11Cの幅W1を56mmとし、凹弧状に変形した周辺領域11Cの撓み量H1を、11mmとした。また、分断補助具8の先端部81の進入量H2が10mmとなるように、分断補助具8を下降させた。従って、分断補助具8の先端部81と凹弧状の周辺領域11Cの凹底の表面の間隔H3は、1mmであった。
【0075】
次に、前記凹内の所定位置に配置した分断補助具8を動かさず、一方で、右保持台部63及び左保持台部73を移動させ、右側領域11Rを右側に且つ左側領域11Lを左側に同時に引張った。前記引張りにより、周辺領域11Cの両側に対して相反する方向に引張り力を作用させ、周辺領域11Cを分断補助具8の先端部81側へと戻し、その先端部81に周辺領域11Cを当接させてガラス板を分断した。前記分断によって、ガラス板から分割片(ガラス板が2つに分断されたもの)を得た。なお、右側領域11R及び左側領域11Lの引張り速度は、いずれも10mm/sとした。
【0076】
分断が溝に一致しているか又は溝から逸れているかを確認するため、分割片の分割面を目視で観察した。さらに、クラックの有無を確認するため、前記分割面を100倍に拡大して観察した。同様にして、合計10枚のガラス板をそれぞれ分断し、前記目視観察及び拡大観察を行った。その結果を、表1に示す。
表1の分断逸れの欄の「○」は、10枚中、9枚以上のガラス板が溝に一致して分断されていたことを表し、「△」は、10枚中、5枚以上8枚以下のガラス板が溝に一致して分断されていたことを表す。
表1のクラックの欄の「○」は、10枚中、9枚以上のガラス板の分割片にクラックが生じなかったことを表し、「△」は、10枚中、5枚以上8枚以下の分割片にクラックが生じなかったことを表し、「×」は、全てのガラス板の分割片にクラックが生じていたことを表す。
【0077】
【0078】
[実施例2]
分断補助具8の先端部81の半円弧状を、表1に示す曲率半径に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、10枚のガラス板を分断し、分割片の状態を目視観察及び拡大観察した。その結果を表1に示す。
【0079】
[実施例3]
分断補助具8の先端部81の半円弧状を、表1に示す曲率半径に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、10枚のガラス板を分断し、分割片の状態を目視観察及び拡大観察した。その結果を表1に示す。
【0080】
[実施例4及び5]
ガラス板の周辺領域11Cの撓み量H1及び分断補助具の先端部81の進入量H2を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、10枚のガラス板を分断し、分割片の状態を目視観察及び拡大観察した。その結果を表1に示す。
【0081】
[実施例6及び7]
右側領域11R及び左側領域11Lの引張り速度を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、10枚のガラス板を分断し、分割片の状態を目視観察及び拡大観察した。その結果を表1に示す。
【0082】
[実施例8及び9]
分断補助具の先端部81の進入量H2を、表1に示すように変更したこと(従って、間隔H3を表1に示すように変更)以外は、実施例1と同様にして、10枚のガラス板を分断し、分割片の状態を目視観察及び拡大観察した。その結果を表1に示す。
【0083】
[実施例10]
表1に示す厚みのガラス板を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、10枚のガラス板を分断し、分割片の状態を目視観察及び拡大観察した。その結果を表1に示す。
【0084】
[実施例11]
表1に示す厚みのガラス板を使用したこと、並びに、ガラス板の周辺領域11Cの撓み量H1及び分断補助具の先端部81の進入量H2を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、10枚のガラス板を分断し、分割片の状態を目視観察及び拡大観察した。その結果を表1に示す。
【0085】
[比較例1]
比較例1では、右側領域11R及び左側領域11Lを引張らず、分断補助具を下降させてガラス板を分断した。
具体的には、比較例1では、実施例1と同様な分断装置100を使用した。この分断装置の載置台に、シート材として厚み30mmの無アルカリガラス板を載せ、
図14に示すように、周辺領域11Cを凹弧状に撓ませた後、右保持台部63及び左保持台部73にて右側領域11R及び左側領域11Lを吸引保持した(エアー吸引圧:0.2MPa)。周辺領域11Cを撓ませた状態で、分断補助具8の先端部81の頂点81Tの略直下に、ガラス板の溝が位置していた。凹弧状に撓ませた周辺領域11Cの幅W1は、56mm(実施例1と同じ)、凹弧状に変形した周辺領域11Cの撓み量H1は、実施例11mm(実施例1と同じ)とした。
次に、分断補助具8を約5mm/sの速度で下降させて、分断補助具8の先端部81によってガラス板の溝を押圧することにより、ガラス板を分断した。
比較例1についても、実施例1と同様に、合計10枚のガラス板をそれぞれ分断し、目視観察及び拡大観察を行った。その結果を、表1に示す。
【0086】
[評価]
実施例1乃至11のように、ガラス板の右側領域11R及び左側領域11Lを引張り、凹弧状の周辺領域を分断補助具側に戻してガラス板を分断した場合には、分断不良が生じ難かった。
一方、比較例1のように、ガラス板の右側領域11R及び左側領域11Lに引張り力を加えず、分断補助具によってガラス板を押圧して分断した場合には、クラックが生じた。