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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040156
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】落雷抑制型風力発電設備
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20240315BHJP
   H05F 3/02 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F03D80/30
H05F3/02 P
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219546
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2020171541の分割
【原出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】511019144
【氏名又は名称】株式会社落雷抑制システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏男
(57)【要約】
【課題】本発明は、前述した従来の要望に鑑みてなされたもので、発電効率に大きく影響するブレード形状を保持して発電効率を維持しつつ落雷抑制作用を実現することができる風力発電設備を提供する。
【解決手段】立設された支柱5と、この支柱の上部に設けられた発電機Gと、この発電機を回転駆動する駆動軸Sに設けられたハブHと、このハブに駆動軸を中心として放射状に設けられた複数のブレード7と、これらのブレードの先端に設けられた帯電体8と、ハブの内部空間に設けられたキャパシタ9とを備え、キャパシタが、接地された第1電極体18と、この第1電極体に電気絶縁層を介して対峙され、前記帯電体に接続された第2電極体20とを有することを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設された支柱と、この支柱の上部に設けられた発電機と、この発電機を回転駆動する駆動軸に設けられたハブと、このハブに前記駆動軸を中心として放射状に設けられた複数のブレードと、これらのブレードの先端に設けられた帯電体と、前記ハブの内部空間に設けられたキャパシタと、を備え、
前記キャパシタが、接地された第1電極体と、この第1電極体に電気絶縁層を介して対峙され、前記帯電体に接続された第2電極体と、を有し、
前記第1電極体と、前記第2電極体と、は同芯状に配置された径の異なる筒状体であって、
前記第2電極体は、前記第1電極体の外側に設けられている、落雷抑制型風力発電設備。
【請求項2】
前記第1電極体と、前記第2電極体と、は同芯状に配置された径の異なる円筒状体である、請求項1に記載の落雷抑制型風力発電設備。
【請求項3】
前記第1電極体と第2電極体の間に単位キャパシタが複数配置されている、請求項2に記載の落雷抑制型風力発電設備。
【請求項4】
前記単位キャパシタが、互いに間隔をおいて配置された二つの単位電極体と、それら単位電極体どうしの間隔を保持する絶縁性の保持体と、を有し、前記単位電極体の一方が第
1電極体に接続され、他方が第2電極体に接続されている、請求項3に記載の落雷抑制型
風力発電設備。
【請求項5】
前記単位キャパシタが、絶縁性の筒状の保持体と、その筒状の保持体の両端に設けられた二つの単位電極体と、を有し、前記筒状の保持体内の前記二つの単位電極体間に空気層が形成されている、請求項4に記載の落雷抑制型風力発電設備。
【請求項6】
前記複数の単位キャパシタが、前記第1電極体と前記第2電極体との間に、これらの中心線を中心として放射状に配置されている、請求項4に記載の落雷抑制型風力発電設備。
【請求項7】
前記第1電極体および前記第2電極体に、前記ハブと前記ブレードとの接続部へ連通させられた点検口が形成されている、請求項1ないし請求項6の何れかに記載の落雷抑制型風力発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備への落雷を抑制して、風力発電設備を雷害から保護する機能を備えた落雷抑制型風力発電設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
落雷は大気中で起こる放電現象であり、雷放電には雲内放電、雲間放電、雲-大地間放電等がある。雷放電で大きな被害を出すのは雲-大地間放電(以下落雷)である。落雷は、雷雲(雲底)と大地または大地等に建設された構造物の電界強度が非常に大きくなることにより、大気の絶縁破壊強度を超えたときに発生する自然現象である。
【0003】
この落雷現象の詳細な観察結果として、次のような現象が生じていることが報告されている。
夏季に起こる一般的な落雷(夏季雷)の場合、雷雲が成熟すると雷雲からステップトリーダが大気の放電しやすいところを選びながら大地に近づいてくる。
ステップトリーダが大地とある程度の距離になると大地または建造物(避雷針)、木などからステップトリーダに向かって、微弱電流の上向きストリーマ(お迎え放電)が伸びてくる。
このストリーマとステップトリーダが結合すると、その経路を通って、雷雲と大地間に大電流(帰還電流)が流れる。
これが落雷現象である。
【0004】
このような落雷現象に対し、従来の雷保護概念では、落雷は防止できないものとの観点から、落雷を突針型避雷針(フランクリンロッド)に受けて大地に流す方式が大半であった。
【0005】
これに対し、本発明者等は、落雷の発生を極力抑制することによって被保護体を保護すべく、特許文献1に示される落雷抑制装置を提案した。
【0006】
この落雷抑制装置は、電気絶縁体を挟んで配置される上部電極体及び下部電極体を有し、下部電極体のみを接地して構成したものである。
【0007】
そして、たとえばマイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、それとは逆の電荷(プラス電荷)が大地の表面に分布し、接地されている下部電極体もプラス電荷に帯電する。
この下部電極体の上には、空気層を含む絶縁体を介して上部電極体が配置されているため、これら上部電極体と下部電極体は、下部電極体が接地されたキャパシタとして機能することになる。
【0008】
この結果、お迎え放電を発生する電荷が大地の表面から上部電極体の上面まで流れることを、キャパシタの放電破壊が発生するまで抑え込み、落雷の発生原因となるお迎え放電を抑制する。
【0009】
このような作用により、落雷抑制装置と雷雲との間において前述した上向きストリーマの発生を起こりにくくして落雷の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5839331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した本発明者等による先の提案によって、落雷抑制装置を中心とした保護領域において落雷を抑制できるようになった。
【0012】
ところで、近年、再生可能エネルギーによる発電装置として、風力発電設備が取り上げられている。
【0013】
この風力発電設備は、支柱の上部にナセルによって覆われた発電機を設置し、この発電機に、この発電機を回転駆動するための複数のブレードを装着した構成となっている。前記ブレードは、大型のものでは60mを超える長さを有している。
【0014】
このように、風力発電設備の上部が雷雲に近い位置に位置させられ、特に、前記ブレードの先端は回転することにより雷雲に最も近い位置に近づくことから、このブレード先端に落雷しやすい。
【0015】
したがって、風力発電設備への落雷を抑制するには、ブレードの先端に前述した落雷抑制機能を付与することが効果的である。
この点、近年の風力発電設備においては、ブレードの先端部分に避雷針方式の受雷部を設けたものも見受けられるが、落雷抑制の観点からは有効な対策とは言えない。
【0016】
一方、ブレードは、風力のエネルギーを効率よく回転運動に変換するための形状となるように設計されている。
そして、ブレードに落雷抑制機能を付与する場合、この落雷抑制機能を実現するための諸機器をブレード内に組み込むことが必要となるが、ブレードの運動変換効率の低下を防止するために、ブレードの形状変化や重量変化による重心位置の変化等を抑制する必要がある。
さらに、この風力発電設備は、ブレードを含めて大型構造物となるため、制作性やメンテナンス性等にも十分に配慮する必要がある。
【0017】
本発明は、前述した従来の要望に鑑みてなされたもので、風力発電設備において発電効率の低下を防止しつつ落雷抑制効果を実現することができ、制作性やメンテナンス性等にも優れた風力発電設備を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の風力発電設備は、前述した課題を解決するために、立設された支柱と、この支柱の上部に設けられた発電機と、この発電機を回転駆動する駆動軸に設けられたハブと、このハブに前記駆動軸を中心として放射状に設けられた複数のブレードと、これらのブレードの先端に設けられた帯電体と、前記ハブの内部空間に設けられたキャパシタとを備え、前記キャパシタが、接地された第1電極体と、この第1電極体に電気絶縁層を介して対峙され、前記帯電体に接続された第2電極体と、を有することを特徴とする。
【0019】
このような構成にすると、たとえば支柱を地面に立設した場合、風力発電設備に、マイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、それとは逆の電荷(プラス電荷)が地面の表面に分布し、同様に、接地されてキャパシタの一部を構成する第1電極体もプラス電荷に帯電する。
【0020】
この第1電極体には、電気絶縁層(空気層)を介して第2電極体が対峙させられているため、キャパシタの機能により第2電極体がマイナス電荷に帯電する。
そして、マイナス電荷に帯電した第2電極体に電気的に接続された帯電体もマイナス電荷に帯電する。
【0021】
このように、ブレード先端と雲底が同一電荷となると、落雷の発生原因となる、ブレード先端から雷雲に向かうお迎え放電を、キャパシタの放電破壊が発生するまで抑え込む。
【0022】
このような作用により、最高位置に位置させられるブレードの先端周辺からの上向きストリーマの発生が起こりにくくなり、ブレードおよびその周辺部への落雷が抑制される。
【0023】
本発明では、前述したお迎え放電の発生を押さえ込む機器の主要部を構成するキャパシタをハブの内部空間に設置している。
【0024】
ここで、前記ハブの内部空間は通常デッドスペースであることから、機器の設置に際し、新たな設置スペースを設けることなく設置することができる。
かつ、ブレードへの加工を行なうことなく設置することができる。
【0025】
さらに、落雷抑制のための機器を、ハブすなわちブレードによって回転させられる駆動軸の回転中心線上に位置させることができるので、機器の回転中心と駆動軸の回転中心を容易に一致させることができる。
【0026】
これによって、機器の重心が駆動軸の重心からずれることによって生じる駆動軸のがたつきを抑えることができるとともに、駆動軸を回転中心とするブレードの回転を円滑なものとするができる。
【0027】
この結果、ブレードのエネルギー変換効率の低下、すわなち、発電効率の低下を防止しつつ落雷抑制効果を確保することができる。
【0028】
前記キャパシタは、前記第1電極体および前記第2電極体を、導電性材料によって径の異なる筒状に形成し、これらの第1電極体と第2電極体を同芯状に配置することにより、これらの間に空気層を含む前記電気絶縁層を形成しつつ対峙させることによって構成することができる。
【0029】
このような構成とすることにより、電気絶縁層として絶縁効果の高い空気を用いることにより、電荷を各電極体へ確実に帯電させることができる。
【0030】
また、空気層によって電気絶縁層を形成することにより、キャパシタの構成部材を少なくして、すなわち、電気絶縁体の使用量を少なくして、キャパシタのコスト低減を図ることができる。さらに、製作性の点からも良好になる。
【0031】
本発明では、前記第1電極体および前記第2電極体を、導電性材料によってそれぞれ板状に形成し、これら第1電極体と第2電極体を互いに間隔をおいて同芯状に配置し、これら第1電極体と第2電極体の間に前記電気絶縁層を形成することで、前記キャパシタを構成することもできる。
【0032】
このように構成した場合、上記の効果に加えて、キャパシタ自体をシンプルにかつ、より低コストで制作することが可能になる。
【0033】
前記電気絶縁層は、導電性材料によって形成された一対の単位電極体を、電気絶縁材料によって形成された電気絶縁体によって所定間隔に保持することによって単位キャパシタを構成しておき、この単位キャパシタの複数を前記第1電極体と前記第2電極体の対峙する面間に配置するとともに、前記単位キャパシタの一方の単位電極体を前記第1電極体に導通状態で固定し、かつ、前記単位キャパシタの他方の単位電極体を前記第2電極体に導通状態で固定することによって形成することができる。
【0034】
このような構成とすることにより、第1電極体と第2電極体との間隔を均一かつ強固に連結して、電気絶縁層を確実に形成することができるとともに、キャパシタの剛性を高めることができる。
【0035】
前記単位キャパシタは、電気絶縁性材料によって形成された筒状の保持体の両端に、導電性材料によって形成された単位電極体をそれぞれ固着することにより、筒状の保持体内の二つの単位電極体間に空気層を形成することによって構成することができる。
そして、前記筒状の保持体は、たとえば、セラミックスによって形成される。
【0036】
前記複数の単位キャパシタは、第1電極体と第2電極体との間に、これらの中心線を中心として放射状に配置することが好ましい。
【0037】
このような構成とすることにより、第1電極体と第2電極体とによって構成されるキャパシタの静電容量に加えて、単位キャパシタの静電容量を加えて静電容量を増加させることができるとともに、単位キャパシタを第1電極体と第2電極体との間に形成される空気層内に効果的に配置することができる。さらに、単位キャパシタの重量を駆動軸の回転中心周りに容易に均一に配分して、ブレードや駆動軸の回転を円滑なものとすることができる。
【0038】
本発明では、前記第1電極体および前記第2電極体に、ハブとブレードとの接続部へ連通させられた点検口を形成しておくこともできる。
【0039】
このような構成とすることにより、ハブ内にキャパシタを設置することによって隠されるハブとブレードとの接続部へのアクセスを可能にして、その保守点検を容易にする。
【0040】
なお、第1電極体の接地方法としては、支柱自体に導電性を持たせて、その支柱を介して接地する方法、あるいは接地線を用いる方法などを採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明の風力発電設備によれば、ブレードへの加工をなくしてその形状や重心位置の変化をなくし、これによって、発電効率を維持しつつ落雷抑制機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第1の実施形態の風力発電設備を示す正面図である。
図2】本発明の第1の実施形態を示すもので、ブレードの先端部を示す拡大縦断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態を示すもので、風車の上部を示す斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態を示す要部の縦断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態を示す要部の縦断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態を示すもので、(a)は単位キャパシタの縦断面図、(b)はキャパシタの縦断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の第1の実施形態について、図1ないし図4を参照して説明する。
図1において、符号1は本実施形態に係る風力発電設備を示す。
【0044】
本実施形態の風力発電設備1は、発電を行なう風車2と、この風車2において発電された電力を、送電線3を介して送電する送電設備4と、によって構成されている。
【0045】
前記風車2は、図1ないし図3に示すように、地面Eに立設された支柱5と、この支柱5の上部に設けられた、発電機G、変速機I、変速機Iの駆動軸Sの途中に設けられた回転電気接点C、および、駆動軸Sの先端に設けられたハブHと、このハブHのそれぞれにフランジを介して放射状に接続された複数のブレード7と、これらを覆って設けられたナセル6と(図3参照)、このブレード7の先端に、その一部によって構成され、ハブHとブレード7の接続部に対して電気絶縁状態で装着された帯電体8(図2参照)と、ハブHの内部に設けられ、帯電体8に電荷を供給するキャパシタ9(後述する)と、を備えている。
【0046】
前記帯電体8は、ブレード7内に埋設された電線10を介して、キャパシタ9の一方の電極体に電気的に接続され、前記キャパシタ9は、その他方の電極体が接地線11(図1参照)を介して接地されている。
【0047】
前記ブレード7は、グラスファイバー等の繊維強化プラスチックによって形成され、図3に示すように、その内部にはほぼ全長にわたって中空部7aが形成され、また、図3に示すように、その基部にフランジ12が設けられており、このフランジ12がハブHに設けられているフランジ13に多数のボルト・ナット(図示略)によって締結されることにより、ブレード7がハブHに放射状に固定されている。
【0048】
前記ブレード7の先端に設けられる帯電体8は、電気絶縁体17を介してブレード7の先端に装着され、ブレード7の内側に掛け止めされた電気絶縁体16を挿通するロックボルト15によってブレード7に電気絶縁状態で固着されている。
【0049】
また、前記ロックボルト15は電線10の一端部を電気絶縁体16との間で挟持固定することにより、この電線10を帯電体8に電気的に接続している。
【0050】
前記キャパシタ9は、図4に示すように、ハブHの内部空間内に、このハブHと同芯状に組み込まれている。
【0051】
このキャパシタ9は、導電性材料によって形成された一つの円筒状の第1電極体18および第2電極体20と、絶縁性材料によって形成され、両電極体18・20を、所定間隔をおいて連結する電気絶縁体16と、絶縁性材料によって形成され、両電極体18・20をハブHに固定するスペーサ21とを備えている。
【0052】
前記第1電極体18および第2電極体20は、導電性材料によって円筒状に形成されており、第1電極体18の径が、第2電極体20の径よりも小さく形成され、これらの間に電気絶縁体16が介装されて両電極体18・20が固定されることにより、所定間隔でかつそれぞれの軸線が一致するように保持されている。
【0053】
また、第2電極体20の外周にはスペーサ21が取り付けられており、このスペーサ21をハブHの内面にボルトや接着剤等を利用して固定することにより、両電極体18・20がハブHの内部空間内に装着されている。
【0054】
このように装着された第1電極体18および第2電極体20は、その中心軸線が、駆動軸Sの回転軸線と一致させられている。
【0055】
さらに、第1電極体18には回転電気接点Cが取り付けられており、この回転電気接点Cを介して接地線11へ電気的に接続されている。
【0056】
また、第2電極体20は、帯電体8に電気的に接続された電線10が電気的に接続されて、帯電体8に電気的に接続されている。
【0057】
一方、第1電極体18および第2電極体20の側面には、これらの内部とキャパシタ9の外部とを連通する点検口22が形成されている。
【0058】
このように組み上げられた第1電極体18および第2電極体20により本実施形態のキャパシタ9が構成されている。
【0059】
このように構成された本実施形態に係る風力発電設備1では、風力エネルギーを複数のブレード7によって回転運動に変換し、この回転運動によって発電機Gを駆動することにより発電を行なう。
【0060】
そして、図1に示すように、マイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、それとは逆の電荷(プラス電荷)が地面Eの表面に分布し、キャパシタ9の、地面に接地された第1電極体18もプラス電荷に帯電する。
【0061】
これに伴い、第1電極体18に電気絶縁層(本実施形態では空気層)を介して対峙させられている第2電極体20が、キャパシタ9の作用によりマイナス電荷を帯びる。
【0062】
かつ、前記第2電極体20に電気的に接続されて地面Eに対し電気絶縁状態に保持されている帯電体8もマイナス電荷を帯びる。
【0063】
このように帯電体8がマイナス電荷を帯びると、ブレード7の先端回り、すなわち風力発電設備1上部にマイナス電荷が分布した領域が形成されるとともに雷雲の雲底に分布するマイナス電荷に対峙させられる。
【0064】
これによって、最高位置に位置させられるブレード7の先端周辺からの上向きストリーマの発生が起こりにくくなり、ブレード7およびその周辺部への落雷が抑制される。
【0065】
本発明では、前述したお迎え放電の発生を押さえ込む機器の主要部を構成するキャパシタ9をハブHの内部空間に設置している。
【0066】
ここで、前記ハブHの内部空間は通常デッドスペースであることから、機器の設置に際し、新たな設置スペースを設けることなく設置することができる。
かつ、ブレードへの加工を行なうことなく設置することができる。
【0067】
さらに、落雷抑制のための機器を、ハブHすなわちブレード7によって回転させられる駆動軸Sの回転中心線上に位置させることができるので、機器の回転中心と駆動軸の回転中心を容易に一致させることができる。
【0068】
これによって、機器の重心が駆動軸Sの重心からずれることによって生じる駆動軸Sのがたつきを抑えることができるとともに、駆動軸Sを回転中心とするブレード7の回転を円滑なものとするができる。
【0069】
この結果、ブレード7のエネルギー変換効率の低下、すわなち、発電効率の低下を防止しつつ落雷抑制効果を確保することができる。
【0070】
また、ブレード7の形状を変更することなくキャパシタ9を組み込むことができることにより、製作性を良好にして、風力発電設備1のコストの高騰を抑制することができる。
【0071】
第5図および第6図は、本発明の第2の実施形態を示し、キャパシタ30に変更を加えたものである。
【0072】
本実施形態においては、第1電極体18と第2電極体20との間に配設され、これらの間隔を保持しつつ両電極体18・20を連結する単位キャパシタ31を用いてキャパシタ30を構成している。
【0073】
この単位キャパシタ31は、図6(a)に示すように、セラミックス等の電気絶縁性材料によって形成された円筒状の保持体32と、その保持体32の上端及び下端に設けられた単位電極体33および単位電極体34とを備えている。
【0074】
保持体32は円筒状に形成され、その周壁には防爆用の通気口35が設けられている。単位電極体33、34は、導電性金属により形成され、その上下の面には突起33a、33b、34a、34bがそれぞれ設けられている。また、突起33b、34bには、ねじ穴33c、34cがそれぞれ設けられている。
【0075】
この単位キャパシタ31は、図5および図6(b)に示すように、第1電極体18と第2電極体20との間に形成されている空間部に放射状に複数配置される。そして、外側の単位電極体33を第2電極体20にネジ止めし、また、内側の単位電極体34を第1電極体18にネジ止めすることにより、両電極体18・20を同芯状にかつ所定間隔を保持した状態で固定してキャパシタ30を構成している。
【0076】
本実施形態のキャパシタ30では、第1電極体18と第2電極体20とによって得られる静電容量に単位キャパシタ31で得られる静電容量を加えて静電容量を増加させることができるとともに、単位キャパシタ31を第1電極体18と第2電極体20との間に形成される空気層内に効果的に配置することができる。さらに、単位キャパシタの重量を駆動軸Sの回転中心周りに容易に均一に配分して、ブレード7や駆動軸Sの回転を円滑なものとすることができる。
【0077】
図7は本発明の第3の実施形態を示す、図5と同様の縦断面図である。なお、同図において、図5と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0078】
この実施形態では、キャパシタ30として、他の構造とした例を示すものである。この例では、2枚の円板状の導電性プレートを互いに間隔をおいて配置するとともに、一方を第1電極体18、他方を第2電極体20となるように、ハブH内に絶縁体を介して固定した構造としたものである。この場合、円板状の第1電極体18と第2電極体20は、図示例のように駆動軸Sと同軸配置とするのが回転バランスの点で好ましい。
【0079】
なお、第1電極体18及び第2電極体20の重心位置や回転中心位置などを調整することで、両電極体18、20を円板状に限らず、矩形状や多角形状、あるいは楕円状などに形成することもできる。
【0080】
この第1電極体18及び第2電極体20をハブH内に配置する構造においても、それら第1電極体18及び第2電極体20の間に、図7に示すように単位キャパシタ31を複数配置する構成を採用することができる。
【0081】
このように単位キャパシタ31を複数配置する場合には、第1電極体18及び第2電極体20の中心軸周りに環状に配置することで、多数配置とすることができる。同図において符号36は単位キャパシタ31の固定ボルトを示している。
【0082】
この実施形態においても、先の実施形態とほぼ同様の効果を得ることができるが、特に、キャパシタ自体をシンプルにかつ、より低コストで制作することが可能になる。
【0083】
なお、前記各実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸歩等は一例であって、設計要求やブレードの形状等に応じて種々変更可能である。
また、この風力発電設備が海上に設置される場合、前記支柱は浅い海では海底に立設され、深海では海上の浮体上に立設されて用いられる。
【符号の説明】
【0084】
1 風力発電設備
2 風車
3 送電線
4 送電設備
5 支柱
6 ナセル
7 ブレード
7a 中空部
8 帯電体
9 キャパシタ
10 電線
11 接地線
12 フランジ
13 フランジ
15 ロックボルト
16 電気絶縁体
17 電気絶縁体
18 第1電極体
19 電気絶縁体
20 第2電極体
21 スペーサ
22 点検口
23 点検口
30 キャパシタ
31 単位キャパシタ
32 保持体
33 単位電極体
33 突起
33 突起
33c ネジ穴
34 単位電極体
34a 突起
34b 突起
34c ネジ穴
35 通気口
C 回転電気接点
E 地面
G 発電機
H ハブ
I 変速機
S 駆動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7