IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テレフレックス ライフ サイエンシズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図1
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図2A
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図2B
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図3A
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図3B
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図4
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図5A
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図5B
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図6
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図7
  • 特開-器具の配備不良を防止する装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040184
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】器具の配備不良を防止する装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20240315BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61B17/04
A61B17/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024003368
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2022522645の分割
【原出願日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/979,903
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520118876
【氏名又は名称】テレフレックス ライフ サイエンシズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】レッサード ケヴィン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ザラー クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】カッツ ジョリーン
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン アレクサンダー チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ラオ マヘシュワラ
(72)【発明者】
【氏名】バーラム ミッチェル シー
(57)【要約】
【課題】器具の配備不良を防止する装置を提供する。
【解決手段】本発明は治療器具に設けられ又は治療器具と装置ハンドルとの間に設けられた力制限要素を介して治療器具の可動部分の配備不良又は損傷を防止する装置である。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療器具に対する損傷を軽減する装置であって、
治療ツールを有し、前記治療ツールは、前記治療ツールの近位側の部分で可動組立体に結合され、
前記治療ツールの前記近位部分に連結され且つ前記可動組立体に連結された力制限要素を有し、
前記力制限要素は、前記可動組立体に対する近位側の方向における前記治療ツールの前記近位部分の運動を可能にする一方で、前記治療ツールの受ける力が力の所定の大きさまで増大しても前記可動組立体と前記治療ツールの前記近位部分との前記結合を維持する、装置。
【請求項2】
前記力制限要素は、ばねから成る、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記力制限要素は、可逆的に係合可能なコネクタから成る、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記力制限要素は、ばねと可逆的に係合可能なコネクタの両方から成る、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記力の所定の大きさは、前記ばねを伸長させるのに必要な力の大きさである、請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記力の所定の大きさは、前記可逆的に係合可能なコネクタを外すのに必要な力の大きさである、請求項3記載の装置。
【請求項7】
前記治療ツールの前記近位部分は、前記可動組立体に対する前記治療ツールの前記近位部分の運動を条件次第で阻止する摩擦要素をさらに有する、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記力制限要素は、前記治療ツールの受ける力が前記力の所定の大きさを下回って減少すると、前記治療ツールの前記近位部分を前記可動組立体に対して遠位側の方向に動かすのを助ける、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記治療ツールは、縫合糸である、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記治療ツールは、針である、請求項1記載の装置。
【請求項11】
表示器をさらに有し、前記表示器は、前記治療ツールが完全に配備された時点を表示する、請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記表示器は、視覚、聴覚、又は触覚表示器から成る、請求項11記載の装置。
【請求項13】
治療器具の損傷の恐れを減少させる装置であって、
治療器具ハンドルから前進可能な治療ツールと、
前記治療ツールの近位部分を前記治療器具ハンドルに結合するよう構成された制限要素とを有し、前記制限要素は、前記治療ツールの遠位部分が所定の大きさを上回る力を受けると、前記治療ツールの前記近位部分の近位側への運動を可能にするよう働く、装置。
【請求項14】
前記制限要素は、調節可能、圧縮可能、伸長可能、又はリセット可能な要素である、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記治療ツールは、針、切れ刃、真空装置、把持アーム組立体、拡張型切断部材、鈍切開器具、ヌース又は結紮クリップ、一体形又は引っ込み可能なブレードを備えた関節運動ヘッド、螺旋ブレード、高周波エネルギー送出電極、切断ワイヤ又はリング、電気焼灼プローブ、又はステープル若しくは縫合具送り出しヘッドから選択される、請求項13記載の装置。
【請求項16】
前記制限要素は、前記治療ツールの遠位部分が非標的組織に接触したときに前記治療ツールの前記近位部分の近位側への運動を可能にするよう働く、請求項14記載の装置。
【請求項17】
前記非標的組織は、骨である、請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記制限要素は、さらに、前記治療ツールを遠位側に動かすよう構成されている、請求項13記載の装置。
【請求項19】
表示器をさらに有し、前記表示器は、前記治療ツールが完全に配備された時点を表示する、請求項13記載の装置。
【請求項20】
前記表示器は、視覚、聴覚、又は触覚表示器から成る、請求項19記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療器具、特に、治療器具の可動部分の配備不良を防止する装置に関し、この場合、可動部分は、疾患又は障害の治療目的で患者としてのヒト又は動物の体内の組織又は解剖学的構造を処置する際に関与する。
【背景技術】
【0002】
軟組織及び解剖学的臓器、例えば子宮、腸、及び前立腺の種々の疾患又は障害には、異常な、疾患のある、肥大した、又は過剰成長した組織を処置し又は除去するための治療器具による外科的介入が必要な場合がある。かかる手技を実施すると、内科医又は外科医は、特に介入部位が軟‐硬組織インターフェースに密接して位置する場合に患者の介入部位のところでの治療器具の導入又は操作中に非標的組織、例えば骨、石灰化部、又は他の硬い又は充実性の解剖学的構造に当たる場合がある。
【0003】
軟‐硬組織のインターフェースを含む1つのかかる介入部位は、泌尿器疾患又は障害、例えば、良性前立腺過形成(Benign Prostatic Hyperplasia:BPH)の治療のために一般的に言って前立腺切除手技中にアクセスされる尿道前立腺部、前立腺、及び骨盤骨により定められる解剖学的領域である。BPHは、男性、特に高齢の男性に見られる最もありふれた病態のうちの1つである。米国では、60歳までに男性全体の過半数がBPHの組織病理学的エビデンスを呈し、85歳までには10人中ほぼ9人までの男性がこの病態に悩まされる。さらに、BPHの発症率及び有病率は、先進諸国人口の平均寿命が高くなるにつれて増大することが見込まれる。
【0004】
前立腺は、男性の一生を通じて肥大する。人によっては、前立腺周りの前立腺被膜が前立腺のそれ以上の肥大を阻止する場合がある。このことによって前立腺の内側域が尿道を締め付ける。尿道に加わるこの圧力は、前立腺によって包囲された尿道の領域を通る尿の流れに対する抵抗を増大させる。かくして、膀胱は、尿道の抵抗の増大により尿を押し出すためにより高い圧力を及ぼさなければならない。慢性的な過剰の労作により、膀胱の筋壁が変形して硬くなる。このように尿の流れに対する尿道の抵抗の増大と膀胱壁の硬直化及び肥厚が合併することにより、患者の生活の質(クオリティオブライフ)を著しく低下させる場合のある種々の下部尿路症状(LUTS)が生じる。これらの症状としては、排尿中の尿勢低下又は尿線途絶、排尿の際のいきみ、尿の流れの開始前におけるもたつき、膀胱が排尿後であっても完全に空になってはいないという感覚(残尿感)、排尿終了時における滴り(ドリップ)又はその後の尿漏れ、特に夜間における排尿頻度の増加、及び尿意切迫感が挙げられる。
【0005】
BPHのある患者に加えて、LUTSはまた、前立腺癌に罹患している患者、前立腺感染症に罹患している患者、及び特に前立腺肥大のある男性に尿閉を生じさせるある特定の薬物(例えば、エフェドリン、シュードエフェドリン、フェニルプロパノールアミン、抗ヒスタミン薬、例えばジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンなど)を慢性的に使用している患者に生じる場合がある。
【0006】
BPHは、生命を脅かすことはまれであるが、BPHにより多くの臨床的病態が生じる場合があり、かかる臨床的病態としては、尿閉、腎不全、再発性尿路感染症、失禁、血尿及び膀胱結石が挙げられる。
【0007】
先進諸国では、患者人口の大部分がBPH症状の治療を受けている。80歳までに米国における男性人口の約25%がなんらかの形のBPH治療を受けている。現時点において、BPHに対する利用可能な治療選択肢としては、経過観察、薬物治療(フィトセラピー及び処方薬)、手術、及び低侵襲手技が挙げられる。
【0008】
経過観察オプションを選択する患者に関して言えば、患者に即時治療は施されないが、患者は、疾患の経過をモニタするために定期的な検査を受ける。これは、特に厄介とは言えない最小限度の症状をもつ患者に対して行われるのが通例である。
【0009】
BPH症状を治療する外科的処置としては、経尿道的切除術(TURP)、経尿道的前立腺電気蒸散術(TVP)、前立腺の経尿道的切開術(TUIP)、レーザー前立腺切除術及び直視下前立腺切除術が挙げられる。
【0010】
BPH症状を治療するための低侵襲手技としては、経尿道的マイクロ波熱療法(TUMT)、経尿道的針焼灼術(TUNA)、組織内レーザー凝固法(ILC)、及び前立腺ステント留置が挙げられる。
【0011】
BPHを治療する多くの現行の方法の実施にあたっては副作用のリスクが高い。これら方法及び器具は、全身麻酔若しくは脊椎麻酔を必要とするか、各種手技が手術室内で実施され、その後に患者の入院を必要とする潜在的にマイナスな影響を生じさせるかのいずれかである。術後悪影響リスクの低いBPHの治療方法は、症状スコアの低減とも関連している。これら手技のうちの幾つかは、診療所設備内において局所無痛法を伴って実施可能であるが、患者は、即座に楽になるわけではなく、事実、体が回復し始めるまでその手技後に数週間にわたって症状の悪化を生じる場合が多い。加うるに、器具を用いた多くのやり方では、尿道カテーテルを場合によっては数週間にわたり膀胱内に挿入したままにすることが必要になる。場合によってカテーテル留置が必要となり、と言うのは、この療法は、実際には、術後のある期間にわたって閉塞を生じさせるからであり、また場合によっては、術後出血や潜在的に閉塞性の血塊形成を理由としてカテーテル留置が適応となる。薬剤治療における投薬は、容易であるが、結果は、それほどでもなく、効果を得るのに相当長い時間を必要とし、しかも望ましくない副作用を伴う場合が多い。
【0012】
前立腺組織を別個の手技で又はBPHの治療と組み合わせて持ち上げ、圧迫し、支え、正常な位置に戻し、除去し、あるいは違ったやり方で変えるための種々の手技について新規な器具及び方法が開発された。かかる器具及び方法は、米国特許第7,645,286号明細書、同第7,758,594号明細書、同第7,766,923号明細書、同第7,905,889号明細書、同第7,951,158号明細書、同第8,007,503号明細書、同第8,157,815号明細書、同第8,216,254号明細書、同第8,333,776号明細書、同第8,343,187号明細書、同第8,394,110号明細書、同第8,425,535号明細書、同第8,663,243号明細書、同第8,715,239号明細書、同第8,715,298号明細書、同第8,900,252号明細書、同第8,936,609号明細書、同第8,939,996号明細書、同第9,320,511号明細書、同第9,549,739号明細書、同第10,105,132号明細書、及び同第10,299,780号明細書に開示されている。これら特許文献を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。幾つかの手技の実施中、治療器具の可動部分は、骨、石灰化部、又は他の充実性の又は硬い解剖学的構造に当たる場合があり、それにより、可動部分に作動的に連結されている治療器具の可動部分又は他の部品に対する損傷、例えば破断、湾曲、又は座屈が生じる。かかる損傷は、適正な治療を阻害する場合がある。
【0013】
BPHを治療するための器具及び方法に加えて、他の病態を治療するための器具及び方法が存在し、これらの器具及び方法では、治療器具が疾患又は障害の治療目的で患者としてのヒト又は動物の体内の組織又は解剖学的構造を処置するために可動部分を用いる。かかる方法及び器具は、可動部分又は可動部分に作動的に連結された治療器具の他の部分が充実性の又は硬い解剖学的構造に接触することによって、可動部分が損傷を受け又は意図した治療が思うように進められない状況に遭遇する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,645,286号明細書
【特許文献2】米国特許第7,758,594号明細書
【特許文献3】米国特許第7,766,923号明細書
【特許文献4】米国特許第7,905,889号明細書
【特許文献5】米国特許第7,951,158号明細書
【特許文献6】米国特許第8,007,503号明細書
【特許文献7】米国特許第8,157,815号明細書
【特許文献8】米国特許第8,216,254号明細書
【特許文献9】米国特許第8,333,776号明細書
【特許文献10】米国特許第8,343,187号明細書
【特許文献11】米国特許第8,394,110号明細書
【特許文献12】米国特許第8,425,535号明細書
【特許文献13】米国特許第8,663,243号明細書
【特許文献14】米国特許第8,715,239号明細書
【特許文献15】米国特許第8,715,298号明細書
【特許文献16】米国特許第8,900,252号明細書
【特許文献17】米国特許第8,936,609号明細書
【特許文献18】米国特許第8,939,996号明細書
【特許文献19】米国特許第9,320,511号明細書
【特許文献20】米国特許第9,549,739号明細書
【特許文献21】米国特許第10,105,132号明細書
【特許文献22】米国特許第10,299,780号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
治療器具の可動部分又はこの可動部分に作動的に連結された他の部品が非標的組織又は構造に当たったときに治療器具の可動部品の損傷を防止する新規なシステムの開発が要望されている。本発明は、これらの要望に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の諸実施形態は、疾患又は障害の治療目的で患者としてのヒト又は動物の体内の組織又は解剖学的構造を処置するための治療器具の損傷を防止する装置に関する。
【0017】
本発明の実施形態は、治療器具に対する損傷を軽減する装置を含み、本装置は、治療ツールを有し、治療ツールは、治療ツールの近位側の部分で可動組立体に結合され、本装置は、治療ツールの近位部分に連結され且つ可動組立体に連結された力制限要素をさらに有する。力制限要素は、可動組立体に対する近位側の方向における治療ツールの近位部分の運動を可能にする一方で、治療ツールの受ける力が力の所定の大きさまで増大しても可動組立体と治療ツールの近位部分との結合を維持する。
【0018】
幾つかの実施形態では、力制限要素は、ばね、可逆的に係合可能なコネクタ又はこれら両方から成る。幾つかの実施形態では、力の所定の大きさは、ばねを伸長させるのに必要な力の大きさである。幾つかの実施形態では、力の所定の大きさは、可逆的に係合可能なコネクタを外すのに必要な力の大きさである。
【0019】
幾つかの実施形態では、治療ツールの近位部分は、可動組立体に対する治療ツールの近位部分の運動を条件次第で阻止する摩擦要素をさらに有する。幾つかの実施形態では、力制限要素は、治療ツールの受ける力が力の所定の大きさを下回って減少すると、治療ツールの近位部分を可動組立体に対して遠位側の方向に動かすのを助ける。
【0020】
幾つかの実施形態では、治療ツールは、縫合糸又は針である。
【0021】
幾つかの実施形態では、本装置は、表示器をさらに有し、表示器は、治療ツールが完全に配備された時点を表示する。幾つかの実施形態では、表示器は、視覚、聴覚、又は触覚表示器から成る。
【0022】
本発明の実施形態の他の特徴及び他の利点は、添付の図面と関連して行われる以下の説明から明らかになり、添付の図面は、例示として本発明のある特定の原理を説明している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】良性前立腺過形成を治療するためのシステムのハンドルの分解組立等角図である。
図2A】良性前立腺過形成を治療するためのシステムのカートリッジの等角図である。
図2B図2Aのカートリッジのカートリッジハウジング組立体の拡大等角図である。
図3A】本発明の実施形態に係る力制限組立体の等角図である。
図3B】本発明の実施形態に係る力制限組立体の等角図である。
図4】本発明の実施形態に係る力制限組立体の一部分の等角図である。
図5A】本発明の別の実施形態に係る力制限組立体の平面図である。
図5B】本発明の別の実施形態に係る力制限組立体の平面図である。
図6】本発明の別の実施形態に係る力制限コネクタの等角図である。
図7】本発明の別の実施形態に係る配備表示器を含むハンドル・カートリッジシステムの等角図である。
図8】本発明の別の実施形態に係る配備表示器を有するハンドルの一区分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
多くの特定の細部がクレーム請求された発明内容の徹底的な理解をもたらすよう本明細書において記載されている。しかしながら、当業者であれば理解されるように、クレーム請求された発明は、これら特定の細部なしでも実施できる。他の場合、当業者によって知られていることであろう方法、装置、又はシステムは、クレーム請求された発明の内容を不明瞭にしないよう細部が記載されていない。
【0025】
本明細書において「~するようになった」又は「~するよう構成された」という表現は、追加のタスク又はステップを実行するようになった又はそのように構成された器具を除外しない非限定かつ包括的な言語とみなされる。本明細書において「近位」及び「遠位」という用語は、細長い低侵襲器具のユーザに対する相対位置を意味しており、「近位」は、ユーザに相対的に近い方を意味し、「遠位」は、ユーザから相対的に遠い方を意味している。本明細書に記載されている見出し、一覧表記、及び番号付けは、説明を容易にする目的でのみ用いられており、本発明を限定することを意味していない。
【0026】
一般に、本開示内容又は本発明の装置の実施形態は、治療器具に対する損傷を防止する。患者の介入部位に送り出された治療器具は、組織を処置し、除去し、又は違ったやり方で変える種々のツールを備えるのが良い。かかるツールとしては、針、切れ刃、真空装置、把持アーム組立体、拡張型切断部材、鈍切開器具、ヌース又は結紮クリップ、一体形又は引っ込み可能なブレードを備えた関節運動ヘッド、螺旋ブレード、高周波エネルギー送出電極、切断ワイヤ又はリング、電気焼灼プローブ、又はステープル若しくは縫合具送り出しヘッドが挙げられるが、これらには限定されない。これらツールを、作業チャネル、針、又は穿刺要素から治療器具の細長い部材の遠位端部のところに前進させることができ、その結果、ツールを細長い部材から抜き出すようになっている。幾つかの実施形態では、ツールは、細長い部材の遠位端部に取り付けられるのが良く、このツールは、抜き出しを必要としない。
【0027】
次に、例示として提供されていて本発明を限定するものではない図を参照すると、本発明の実施形態は、治療器具の可動部分に加えられる力を制限するとともに/あるいは減衰させる装置に関する。本発明のある特定の実施形態は、追加的に又は代替的に、治療器具の2つの可動部分が互いに対して動いているときのこれら2つの可動部分相互間の長さの相対変化に対応する装置に関する。多くの場合、本発明の実施形態は、治療器具が疾患又は障害の治療目的で患者としてのヒト又は動物の体内の組織又は解剖学的構造を処置するために用いられている間、治療器具の可動部分の損傷を防ぐことができる。開示した装置を種々の医療目的で採用された種々の治療器具で具体化することができ、医療目的としては、患者としてのヒト又は動物の体内に見受けられる組織、器官、解剖学的構造、グラフト、又は他の物体をレトラクトし、持ち上げ、圧迫し、接近させ、支持し、作り直し、再位置決めし、除去し、又は違ったやり方で変えることが挙げられるが、これらには限定されない。ある特定の実施例では、治療器具は、疾患又は障害、例えば良性前立腺過形成(BPH)の治療を容易にするよう前立腺の組織を変位させ、圧迫し、レトラクトし、又は破壊するようになっている。
【0028】
次に図1を参照すると、BPH治療器具ハンドル100が分解組立等角図で示されている。BPH治療器具ハンドル100は、右側ハンドルケース101、左側ハンドルケース102、及び左側ハンドルケース102内に形成されたカートリッジベイ103を有する。治療器具ハンドル100は、治療器具ハンドル100内に設けられた幾つかのばねに蓄えられているエネルギーをカートリッジ(図2Aに示されている)に伝えて患者の体内のBPHの治療を実施可能にするよう設計されている。
【0029】
治療器具ハンドル100は、ハンドルトリガ組立部品110を有し、このハンドルトリガ組立部品は、ハンドルトリガばね111に作動的に連結されており、その結果、ハンドルトリガばね111は、ハンドルトリガ組立部品110がユーザによって引き絞られ解除された後、ハンドルトリガ組立部品をその初期位置に戻すのに十分な力をもたらすようになっている。ラチェットばね115に連結されているラチェット114がハンドルトリガ組立部品110の動きに影響を及ぼし、その結果、ハンドルトリガ組立部品110は、ユーザによって所定の量に引き絞られる前に、その初期位置に戻ることがないようになっている。安全装置112がハンドルトリガ組立部品110に連結されており、それによりハンドルトリガ組立部品110が偶発的に作動されることがないようになっている。ハンドルトリガ組立部品110は、駆動歯車113に連結され、駆動歯車113は、カムホイール120に連結されている。
【0030】
カムホイール120は、中心軸線回りに回転し、カムホイール120が回転しているときに、カムホイールに設けられた構造体及び特徴部を介して、治療器具ハンドル100内におけるある特定の動きをトリガする。カムホイール120に作動的に連結されている多数のそり部(sled)が設けられ、そり部は、治療器具ハンドル100の横方向軸線に沿って直線方向に動く。多数のばねが設けられており、これらばねは、上記の動きを生じさせる力を多数のそり部に及ぼすとともにBPHを治療するためのインプラントを送り出すのに十分に大きな機械的エネルギーをもたらす。カートリッジ(図2Aに示されている)が多数のタブ組立部品を有し、これらタブ組立部品は、そり部に設けられているスロットを介してそり部と嵌合し、その結果、ハンドル内の機構体(例えば、ばね)の作動によって与えられた動き及びエネルギーがカートリッジ内の機構体に伝達されるようになっている。
【0031】
具体的に説明すると、インプラントトリガ121がカムホイール120及びインプラントそり部160に作動的に連結されており、インプラントそり部160は、インプラントの送り出し又は運搬に関連したエネルギーをもたらすインプラントばね161に連結されている。針そり部140がカムホイール120に作動的に連結され、針そり部ばね141がインプラントの送り出しと関連したエネルギーをもたらす。縫合糸そり部150がカムホイール120に作動的に連結され、縫合糸そり部ばね151がインプラントの送り出しと関連したエネルギーをもたらす。これらの場合の各々において、そり部は、十分な速度で動くため、そり部に連結されているシステムの一部分が非標的硬組織又は他の硬質の障害物に当たった場合に器具の損傷が結果として生じる場合がある。
【0032】
治療器具ハンドル100は、種々の他の部品、例えば、カバープレート130、内視鏡管131、スコープロック170、シースロック180、及びハンドルを組み立てるための種々のねじ及び/又は締結具を有する。カバープレート130は、カートリッジベイ103のための内部ベースとなる。内視鏡管131、スコープロック170、及びシースロック180は、手技を容易にするよう内視鏡及び他の補助機器(例えば、外科用シース)を取り付けるための機能を発揮する。
【0033】
次に、等角図である図2Aを参照すると、カートリッジ200が治療器具ハンドル100と結合するよう構成されている。カートリッジハウジング組立体201が治療器具ハンドル100のカートリッジベイ103内に嵌まっており、カートリッジの細長い組立部品280が治療器具ハンドル100の内視鏡管131に平行に延びている。細長いカートリッジ組立部品280の遠位部分285は、針の出口ポートを有し、針は、インプラントの配置を容易にするよう構成されている。かくして、治療器具ハンドル100とカートリッジ200は、一緒になって、BPHを治療するためのインプラントを配置するシステムを構成している。治療器具ハンドル100中のばね及びそり部は、エネルギー及び運動をカートリッジハウジング組立体201内のタブ組立部品に伝達し、針を組織中に進め、そしてインプラントを配備する。
【0034】
図2Aの領域Xが図2Bの拡大等角図に示されている。カートリッジハウジング組立体201は、針タブ組立部品240、縫合糸タブ組立部品250、及びインプラントタブ組立部品260を有する。これらタブ組立部品は、治療器具ハンドル内のそり部及びばねと相互作用してBPHの治療のためのインプラントを送り出す。これらタブ組立部品の直線運動は、カートリッジの細長い組立部品280の遠位部分285のところでかつ場合によっては、これを越えたところで機械的運動に変わる。例えば、針タブ組立部品240の直線運動は、カートリッジの細長い組立部品280の遠位部分285内から組織中への穿通針の運動に関連し、そして、針タブ組立部品240のそれ以上の直線運動は、組織からカートリッジの細長い組立部品280の遠位部分285内への穿通針の引っ込めと関係づけられている。同様に、縫合糸タブ組立部品250の直線運動は、カートリッジの細長い組立部品280の遠位部分285内から組織中へのインプラントの運動に関連し、そして、縫合糸タブ組立部品250のそれ以上の直線運動は、組織中へのインプラントの配備に関係づけられている。さらに、インプラントタブ組立部品260の直線運動は、組織内におけるインプラントの組立に関連づけられ、この組立としては、インプラントの一部である縫合糸の切断を含む。
【0035】
インプラントは、針タブ組立部品240及び縫合糸タブ組立部品250の相対運動により組織中に配備される。第1ステップとして、針タブ組立部品240と縫合糸タブ組立部品250は、遠位側の方向に同一速度で一緒に動く。すなわち、針タブ組立部品240と縫合糸タブ組立部品250は、互いに対するこれらの相対位置を維持する。一緒に動くとき、針タブ組立部品240と縫合糸タブ組立部品250は、穿通針及びインプラントを患者の組織内の1つの位置まで前進させる。インプラントを縫合糸に連結し、この縫合糸を縫合糸タブ組立部品250に連結された縫合糸管に結合する。この第1ステップの実施中、針タブ組立部品240及び縫合糸タブ組立部品250は、互いに対するこれらの相対位置を維持してインプラントが針内のその定位置を保つようにするとともにインプラントを針から配備することができるようにすることが重要である。針及び針内のインプラントは、カートリッジの細長い組立部品280の遠位部分285から前進する。
【0036】
第2ステップとして、針タブ組立部品240は、縫合糸タブ組立部品250がその遠位側の位置に保持された状態で近位側に動く。縫合糸タブ組立部品250に対する針タブ組立部品240のこの相対運動により、針が引っ込められてインプラントが配備される。第3ステップとして、縫合糸タブ組立部品250は、インプラントを位置決めして張力をインプラントに結合されている縫合糸に加えるよう引っ込められる。第4ステップでは、インプラントタブ組立部品160は、遠位側に動いて近位側の部品を縫合糸に取り付けてインプラントを完成させるとともに縫合糸を切断し、それによりインプラントを完全に配備する。
【0037】
針タブ組立部品240、縫合糸タブ組立部品250、及びインプラントタブ組立部品260の運動は、これらタブ組立部品と治療器具ハンドル内のばね及びそり部との相互作用により達成される。ばね及びそり部は、治療器具ハンドル内のカムホイール及び他の特徴部と協働して本明細書に開示するステップにしたがってタブ組立部品を動かす。
【0038】
本明細書に開示されるタブ組立部品は、カートリッジの細長い組立部品280の全て又は一部に沿って延びる要素に連結される。例えば、針タブ組立部品は、針に連結され、縫合糸タブ組立部品は、縫合糸に連結され、針及び縫合糸は、針の少なくとも一部分及び縫合糸の少なくとも一部分がカートリッジの細長い組立部品280の遠位部分285を貫通して組織中に延びることができるよう構成されている。針タブ組立部品は、針に直接連結されても良く、そうでなくても良く、縫合糸タブ組立部品は、縫合糸に直接連結されても良く、そうでなくても良い。すなわち、カートリッジの細長い組立部品280の遠位部分285を貫通して組織中に延びる針の部分及び/又は縫合糸の部分を互いに連結する1つ以上の中間構造体が設けられる場合がある。例えば、縫合糸は、縫合糸管を介して縫合糸タブ組立部品に連結されても良く、縫合糸管は、比較的可撓性のある縫合糸に沿う押圧力の伝達を可能にするよう縫合糸よりも比較的剛性である材料で作られるのが良い。別の例として、針は、オーバーモールド成形区分により針タブ組立部品に連結されても良く、オーバーモールド成形区分を針の遠位部分よりも安価な材料で作ることができる。かくして、カートリッジの細長い組立部品の遠位端部のところでの諸タブ組立部品と諸要素との連結部は、管、オーバーモールド成形区分、又はこれらと等価な中間部分を含むことができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、タブ組立部品とカートリッジ及びインプラントの他の特徴部との固定された連結の結果として、ある特定の望ましくない結果が生じる場合がある。ある特定の状況では、カートリッジ及びインプラントの特徴部の相対運動が損なわれる場合があり、その結果として、インプラントの送達又は運搬が不完全になる場合がある。例えば、針は、針がカートリッジの細長い組立部品280の遠位部分285から前進しているときに非標的組織、例えば骨に当たる場合がある。この状況では、針が骨に当たったときに針が曲がり又は場合によっては座屈することがある。針が曲がり又は座屈すると、曲がった又は座屈した針に生じる高い摩擦力に起因して、針の端部と針内のインプラントとの相対位置が変化する場合がある。
【0040】
通常のインプラント送り出し状況では、針の内面とインプラントの外面との間に働く摩擦は、縫合糸そり部ばねから縫合糸そり部を通って縫合糸タブ組立部品に伝達されるばね力によってバランスが取られる。摩擦力とばね力のこのバランスは、インプラント及び縫合糸を針の端部に対する同一の位置に保つ。しかしながら、針が曲げられ又は座屈すると、摩擦力は、この摩擦力がばね力よりも大きくなるよう増大する場合がある。この場合、針は、針タブ組立部品によって引っ込められ、この大きな摩擦力は、インプラントが針の端部から配備されるのを阻止する。すなわち、ばね力よりも部分的に摩擦力の方が大きくなり、インプラントは、引っ込み中の針と一緒に近位側に動き、したがって針の端部から完全に出ることがない。他の場合、針の端部は、制止状態になる場合があり、インプラントは、針の遠位端部から出ることができない。
【0041】
摩擦力がばね力よりも大きいということから考えられる1つの結果は、縫合糸の近位端部のところ又はその近くにおける損傷が生じることである。例えば、縫合糸及び連結状態のインプラントが上述したように引っ込み中の針と一緒に近位側に動くが、縫合糸の近位端部は、縫合糸タブ組立部品によって固定状態に保持されたままである。縫合糸の近位端部は、縫合糸の遠位端部が近位側に動いている間、固定状態に保たれているので、縫合糸の近位端部は、座屈する場合があり又は違ったやり方で損傷を受ける場合がある。かかる損傷は、インプラントの配備時に別の試みを妨害する場合がある。すなわち、縫合糸が損傷を受けなかった場合、針は、引っ込められる場合があり、治療器具は、再位置決めされる場合があり、そして針は、配備の不良を生じさせる非標的組織を回避して再び配備される場合がある。しかしながら、縫合糸タブ組立部品のところ又はその近くにおける縫合糸の近位端部に対する損傷は、次の配備の試みの実施中、縫合糸タブ組立部品の適正な機能発揮を阻止する場合がある。かくして、縫合糸と縫合糸タブ組立部品との連結部を変えて、縫合糸の遠位端部のところの摩擦力が増大して縫合糸及び連結状態のインプラントが引っ込み中の針と一緒に近位側に動く状況に対応することが有用である。より一般的には、システムのばね押し機械的要素とそのばね押し力によって駆動されている要素との連結状態を、かかる被動要素が運動を阻止する高い摩擦力又は障害物に当たる場合に提供することが有用である。
【0042】
図3A及び図3Bは、本発明の実施形態に係る力制限組立体の等角図である。この実施形態では、力制限組立体は、本明細書において提供する縫合糸タブ組立部品を改造するよう構成されている。しかしながら、この力制限組立体の力制限観点は、針タブ組立部品、インプラントタブ組立部品、又は他の組立部品を改造するよう構成されていても良く、この場合、力制限観点がばね力又は他の力によって迅速に動かされている要素に対する損傷を阻止するのに有用である。図3A及び図3Bでは、縫合糸タブ組立部品350は、縫合糸管351の連結領域である縫合糸タブ組立部品連結ブロック352を含む。縫合糸管の近位端部分355は、縫合糸タブ組立部品連結ブロック352と結合するとともに力制限ばね356と結合している。図4に示されているように、縫合糸タブ組立部品連結ブロック352は、縫合糸タブ連結ブロック通路353を有するのが良い。この縫合糸タブ連結ブロック通路353は、図3A及び図3B中に存在しており(隠れているが)、縫合糸管近位端部分355は、縫合糸管351を縫合糸タブ組立部品350に結合する一手法として縫合糸タブ連結ブロック通路353を貫通している。縫合糸タブ連結ブロック通路353が縫合糸タブ組立部品連結ブロック352に設けられた穴として提供されているが、他の同様な構成例が本発明の範囲に含まれる。縫合糸タブ連結ブロック通路353は、縫合糸管351を縫合糸タブ組立部品350に結合するよう機能する一方で、依然として力制限ばね356がある特定の状況では働くことができるようにしている。力制限ばね356がある特定の状況において働くことができるようにするとともに縫合糸管351を縫合糸タブ組立部品350に結合する他の結合構成例を利用することができる。
【0043】
力制限ばね356は、縫合糸管近位端部分355に接合されるとともに縫合糸タブ組立部品350に接合されている。図3A及び図3Bでは、力制限ばね356は、縫合糸タブ組立部品連結ブロック通路352のところで縫合糸タブ組立部品350に接合された状態で示されている。しかしながら、力制限ばね356は、縫合糸タブ組立部品350の任意の部分に接合されても良く、ただし、力制限ばね356が本明細書において開示される力制限機能を発揮するよう構成されていることを条件とする。同様に、力制限ばね356は、任意の場所で縫合糸管351に接合されても良く、ただし、力制限ばね356が本明細書において開示する力制限機能を発揮するよう構成されていることを条件とする。力制限ばね356は、コイル型ばねとして図3A及び図3Bに示されているが、他形式のばねを採用することができ、ただし、かかるばねが本明細書において開示する力制限ばねとして機能するよう構成されていることを条件とする。
【0044】
図3A及び図3Bは、力制限ばね356が引っ張りばねであり、この引っ張りばねのコイルが縫合糸管351を挿通させるルーメンを作っていることを示している。かかる引っ張りばねの端部は、フック又はループ、例えば機械式フック、クロスオーバー型センターフック、サイドフック、オフセット彩度フック、Vフック、伸長フック、矩形フック、単撚り又は複撚りループ、開放又は閉鎖ループ、センターループ、又はサイドループ(これらには限定されない)を有するのが良い。他の実施形態では、力制限ばね356は、板ばね又は他のばね機構体である。確かなこととして、力制限ばね356は、説明上、力制限ばね356が縫合糸管の近位側への運動に対応し、次に縫合糸管がその初期位置に戻るのを助けることができる機構体であるということを意味している。
【0045】
図3Aは、力制限ばね356が弛緩位置にある形態で縫合糸タブ組立部品350を示している。この位置では、力制限ばね356は、縫合糸管351に加わるどのような力をも制限するように働いてはいない。図3Bは、力制限ばね356が伸長位置にある形態で縫合糸管組立部品350を示している。力制限ばね356は、縫合糸の遠位端部に加わる摩擦力の増加によって伸長状態にある。摩擦力の増加は、針が曲がり又は座屈していることに起因して、あるいは、針の遠位端部が制止されていることに起因して生じているといって良く、その結果、インプラント及び連結状態の縫合糸は、針タブ組立部品が引っ込められているときに針を出すことができないようになっている。すなわち、力を近位側から縫合糸タブ組立部品350に伝達した状態が縫合糸についてさらに遠位側に存在する。これら伝達された力は、かかる伝達された力を吸収する仕方で伸びる力制限ばね356に順応している。このように、インプラント及び連結状態の縫合糸と針の遠位端部の相対位置は、これらの位置がもしそのように構成されていなければ、針の遠位部分のところでの摩擦及び/又は制止の増大に起因して変化する状況において保たれる。
【0046】
かくして、ばね力は、力制限ばねの力制限挙動を実行するためには、摩擦力が打ち勝たなければならない所定の力とみなされ得る。力制限ばねは、フックの法則に従うといえ、その結果、ばね力は、ばね伸長長さと線形的にスケール変更する。力制限ばねは、いわゆる「定荷重」ばねであるともいえ、この場合、初期予備荷重位置周りの比較的わずかなばらつきがあっても、ばね力は、ほぼ一定である。
【0047】
図5A及び図5Bは、本発明の別の実施形態に係る力制限組立体の平面図である。この実施形態では、縫合糸管351は、縫合糸管351が縫合糸タブ組立部品連結ブロック352と結合されている領域の近くに摩擦要素358を有する。幾つかの実施形態では、摩擦要素358は、縫合糸管351が縫合糸タブ組立部品連結ブロック352を通って近位側に動いて力制限ばね356に係合するのを条件付きで阻止するカラー又はこれに類似した構造体である。幾つかの実施形態では、摩擦要素358は、縫合糸管351の扁平にされ又は圧着された区分であり、その結果、摩擦要素358のところの縫合糸管351の断面は、少なくとも1つの半径方向において縫合糸管351の残部よりも広い。
【0048】
摩擦要素358が条件付きの性状は、摩擦要素358を縫合糸タブ連結ブロック通路353に押し通すのに最小限の力が必要であるようなものである。すなわち、針が曲がり又は座屈し、あるいは針の遠位端部が制止された結果として、縫合糸又は縫合糸管のうける力は、摩擦要素358を縫合糸タブ連結ブロック通路353中に押し通すのに必要な力よりも大きくなければならない。かくして、力制限ばね356の復元力が縫合糸及び/又は縫合糸管の受ける力のバランスを取るのに十分である実施形態が存在し、かかる実施形態では、摩擦要素は不要である。しかしながら、摩擦要素の使用が縫合糸及び/又は縫合糸管の受ける力のバランスを取るのに有用であり又は必要であり、しかも摩擦制限ばねの望ましくない係合を阻止する実施形態もまた存在する。
【0049】
この点に関し、縫合糸タブ連結ブロック通路353は、摩擦要素358の滑り嵌め部として機能する。摩擦要素358の幅は、十分な力が縫合糸管の遠位端部(例えば、針が骨に打ち当たったとき又は他の硬質物質に当たったとき)か、縫合糸管の近位端部(例えば、力制限ばね356がその初期位置に戻されたとき)かのいずれかに加えられたときに、摩擦要素358が縫合糸タブ連結ブロック通路353を通過することができるように選択されたものとして設定される。摩擦要素358はまた、患者の介入部位のところでの治療器具の使用中に当たる場合のある非標的組織の場所及び物理的性質に基づいて、較正されるのが良い。
【0050】
本明細書において開示する実施形態のうちの幾つかは、縫合糸管をその初期位置に戻すのを助けるために力制限ばねを利用している。この場合、インプラントの適正な配備は、リセット型ハンドル・カートリッジシステム(ハンドルとカートリッジで構成されるシステム)を用いて試みられるのが良い。また、針の遠位端部のところでの摩擦力の増大及び/又は制止に対応する機構体が設けられ、そして、縫合糸管がその初期位置に手動で戻される実施形態が存在する。幾つかの実施形態では、かかるシステムをこのシステムのハンドルに設けられたアクチュエータ又はトリガにより初期位置に戻すことができる。
【0051】
図6では、縫合糸タブ組立部品450は、縫合糸タブ組立部品連結ブロック452を含み、この縫合糸タブ組立部品連結ブロックは、縫合糸管451の連結領域である。縫合糸管近位端部分455は、縫合糸タブ組立部品連結ブロック452と結合するとともに力制限コネクタ456と結合している。力制限コネクタ456は、切り欠き459と可逆的に係合するよう構成されたラッチ458を有する。図6は、縫合糸管451に加わる力が切り欠き459とのラッチ458の係合力よりも大きい程度までかかる力が増大した結果としてラッチ458が切り欠き459から外れる場合を示している。かくして、この実施形態では、ラッチ458と切り欠き459との間に働く係合力は、縫合糸管451に加わる力が縫合糸及び/又は縫合糸管への損傷のリスクが生じる程度に増大するまで縫合糸管451の位置を維持する。ラッチ458が切り欠き459から離脱状態になった後、インプラント配備器具を、縫合糸タブ組立部品450をリセットしてラッチ458が切り欠き459と再び係合する位置まで手動で動かすことができる。このリセット位置から、インプラントの適正な配備を試みることができる。
【0052】
本明細書において開示した実施形態のいくつかにおいて、ハンドル・カートリッジシステムは、適正に機能し、そして針がカートリッジの細長い組立部品の遠位端部の遠位部分を越えて所望の距離移動したときにインプラントを送り出すよう設計されている。同様に、ハンドル・カートリッジシステムは、適正に機能し、そして針及びインプラントがインプラントプロセスにおける一ステップの実施中に所望の相対位置を維持しているときにインプラントを送り出すよう設計されている。本明細書において開示する力制限ばね及び力制限コネクタは、システムが首尾よくインプラントを送り出すことができるようにする仕方でシステムが機能していない場合にカートリッジ・ハンドルシステム内の要素に対する損傷を阻止するのを助ける。
【0053】
本明細書において開示した実施形態のある特定の観点によれば、ハンドル・カートリッジシステムは、ハンドル・カートリッジシステムがインプラントを首尾よく送り出すことができない場合のある、ある特定の状態をユーザに警告する位置表示器を含む。図7は、図1及び図2Aに示されたハンドル・カートリッジシステムと類似したハンドル・カートリッジシステムの等角図である。カートリッジ800が挿入されてハンドル700と係合した状態で示されている。左側ハンドルケース702は、前側開口部を有し、この前側開口部内で、針そり部ボタン745が移動する。針そり部ボタン745は、ハンドル700内の針そり部(例えば、図1に示された針そり部140)に結合されている。針そり部ボタン745は、針そり部140が近位側の位置にありかつカートリッジの針が未配備状態であるとき、ユーザが左側ハンドルケース702に前側開口部が存在することを触って分かることができるように構成されている。針そり部140が十分に前方に移動して針をカートリッジの細長い組立部品の遠位端部分からのその完全配備程度に配備したときに、針そり部ボタン745は、左側ハンドルケース702の前側開口部内で前方に動き、その結果、針そり部ボタン745は、左側ハンドルケース702の全面と面一をなすようになる。この形態では、ユーザは、左側ハンドルケース702の前側開口部が針そり部ボタン745で完全に埋められていることを触って認識することができる。
【0054】
針がカートリッジの細長い組立部品の遠位端部分からその完全配備程度まで完全に配備されていない場合、針そり部ボタン745は、左側ハンドルケース702の前側開口部を完全には埋めない。この場合、針の配備が不完全であることをユーザが触って認識することができ、ユーザは、器具をリセットして配備を再び試みるステップを取ることができる。かくして、針そり部ボタン745は、針、インプラント、縫合糸に対する損傷又はハンドル・カートリッジシステム内の他の機構体に対する損傷を軽減し又は阻止する別の機構体となる。
【0055】
別の実施形態では、針そり部は、針が完全には配備されなかったこと又は針が完全に配備されたことをユーザに目で分かるように又は音で分かるように知らせる機構体を有する。例えば、再び図8を参照すると、カバープレート830(図1のカバープレート130に類似している)は、半球形ベル834のための取り付けポストを有するよう改造されている。カバープレート830は、ベル鳴らしばね832を取り付けるための特徴部をさらに有する。ベル鳴らしばね832は、ベル834の内部に突き出ている(この形態は、ベルに外部から取り付けられるベルストライカと比較して省スペースである)。針そり部840は、針そり部840が本明細書のどこか別の場所で説明したように針配備ステップ中に遠位側に動くときにベル鳴らしばね832に接触するアラートアーム836を有するよう改造されている。アラートアーム836により、ベル鳴らしばね832は、アラートアームがベル834の下を通過している際に屈曲する。すなわち、アラートアーム836は、アラートアーム836が遠位側に動いているときにベル鳴らしばね832を折り重ねる。アラートアーム836は、針そり部840が針の完全配備と一致した位置まで遠位側に動いたときにベル鳴らしばね832を解除するように構成されている。解除されたベル鳴らしばね832は、飛び出てベル834に当たり、それにより、針が完全に配備されたことをユーザに知らせる。かくして、ユーザがベルの音を聞かない場合、ユーザは、システムをリセットして針を再配備するステップをとるのが良い。針そり部840が初期位置にかつ配備シーケンスの終わりに再配備されたときにベル834が再び鳴るのを阻止するため、アラートアーム836は、ベル鳴らしばね832の折り畳みに代えてベル鳴らしばね832を脇に一時的に動かす傾斜路特徴部を有する。ベル鳴らしばね832を脇に動かすことにより、ベル鳴らしばね832は、ベル834を鳴らさないでその元の位置に戻ることができる。この設計の一利点は、この設計が針そり部の速度の影響を受けないということにある。ベルを打つために用いられる力は、折りたたみ状態のばねにより生じる力であるので、ゆっくりと動くそり部又は速く動くそり部は、同一量の可聴信号を生じさせる。
【0056】
本明細書において開示した実施形態は、針の完全配備及び/又は針の不完全配備を指示する観点を有する。針組立部品又は縫合糸組立部品の損傷を阻止し、手動リセットを可能にする実施形態の諸観点が存在する。針組立部品又は縫合糸組立部品の損傷を阻止して器具をリセットするのを助ける実施形態の諸観点が存在する。これら観点の各々は、これらの使用が両立可能である場合に互いに組み合わせて使用できる。例えば、配備表示器を含み、さらに力制限特徴部を含む実施形態が考えられる。かかる力制限特徴部は、手動リセット、自動リセット、又はこれら両方を可能にすると言える。諸実施形態の別々の記載は、これらの組み合わせ使用を排除するものではない。
【0057】
他の治療器具は、本明細書において開示した実施形態の使用から恩恵を受けることができる。組織を処置し、除去し、又は違ったやり方で変える種々のツール(かかるツールは、機械エネルギーによって動かされ、配備され、又は駆動される)を備えた治療器具は、本明細書において開示した力制限ばね及びコネクタの使用ならびに本明細書において開示した配備表示器の使用から恩恵を受けることができる。かかるツールとしては、針、切れ刃、真空装置、把持アーム組立体、拡張型切断部材、鈍切開器具、ヌース又は結紮クリップ、一体形又は引っ込み可能なブレードを備えた関節運動ヘッド、螺旋ブレード、高周波エネルギー送出電極、切断ワイヤ又はリング、電気焼灼プローブ、又はステープル若しくは縫合具送り出しヘッドが挙げられるが、これらには限定されない。
【0058】
幾つかの実施形態では、治療器具は、ツールを担持したルーメンを備える導入器、及びこの導入器に結合されたハンドル組立部品を有するのが良い。治療器具は、ツールを前方に動かし、それによりツールを導入器の遠位端部から抜き出すプッシャ、そり部、又は送り出し機構体を有する。これは、ハンドル組立部品のアクチュエータ又はトリガにより実施できる。
【0059】
ある特定の実施形態では、治療器具は、患者の体内の組織をレトラクトし、持ち上げ、圧迫し、支持し、作り直し、又は再位置決めするための1つ以上のインプラントを配備する装置であるのが良い。治療器具は、第1又は遠位側のアンカーコンポーネントを患者の体内の第1の場所に向かって送り出すとともに、第2の又は近位側のアンカーコンポーネントを患者の体内の第2の場所に送り出すことができる。治療器具はまた、第1及び第2のアンカーを取り付けるコネクタに張力を与えることができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、治療器具は、少なくとも1つのインプラントを担持したカートリッジ及びカートリッジを受け入れるよう構成されたハンドルを有する。ハンドルは、アクチュエータ及び機械エネルギーが加えられている少なくとも1つのばね機構体を有する。ハンドルは、カートリッジと嵌合してインプラントを配備するために機械エネルギーをばね機構体からカートリッジに伝達する部材をさらに有する。ハンドル・カートリッジシステムは、針組立部品に設けられたプッシャタブと整列するスロットを備えた第1の発火そり部を含む。第1の発火そり部のスロットと針組立部品のプッシャタブは、カートリッジ内の針を発射するためにエネルギーをばね機構体から第1の発火そり部経由で伝達することができる相補機構体である。ハンドル・カートリッジシステムは、縫合糸管又はコネクタ管に設けられたプッシャタブと整列するスロットを備えた第2の発火そり部をさらに含むのが良い。第2の発火そり部のスロットと縫合糸管のプッシャタブは、縫合糸管を針管と同時に前進させるためにエネルギーをばね機構体から第2の発火そり部経由で伝達することができる相補機構体である。
【0061】
他の治療器具は、ツールを介入部位に導入するために機械エネルギーを採用した可動部品をさらに利用するのが良い。ツールが骨、石灰化部、又は他の充実性又は硬質の解剖学的構造に当たった場合、このことは、治療器具内のツール及び/又は可動部品に対する損傷を生じさせる場合がある。幾つかの場合、ツール又は可動部品への損傷が生じない場合があるが、ツールの配備は、ツールがかかる非標的組織に当たった場合には不成功に終わる場合がある。
【0062】
骨に当たること(又は他の非標的組織に当たること)に起因して、針、穿通部材、又は他のツールの配備不良を防止し、又は少なくとも軽減する装置は、治療器具内の可動部品に結合された調節可能、圧縮可能、伸長可能、又はリセット可能な要素を有するのが良い。幾つかの実施形態では、例えば、治療器具がコネクタ又は張力付与要素を有する場合、装置は、骨に当たることに起因したコネクタの座屈を阻止し又は少なくとも軽減することができる。
【0063】
本発明の特定の要素、実施例及び用途を図示するとともに説明したが、理解されるように、本発明はこれには限定されず、と言うのは、特に上記教示に照らして本発明の範囲から逸脱することなく当業者によって改造を行うことができるからである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療器具に対する損傷を軽減する装置であって、
治療ツールを有し、前記治療ツールは、前記治療ツールの近位側の部分で可動組立体に結合され、
前記治療ツールの前記近位部分に連結され且つ前記可動組立体に連結された力制限要素を有し、
前記力制限要素は、前記可動組立体に対する近位側の方向における前記治療ツールの前記近位部分の運動を可能にする一方で、前記治療ツールの受ける力が力の所定の大きさまで増大しても前記可動組立体と前記治療ツールの前記近位部分との前記結合を維持する、装置。
【外国語明細書】