(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040202
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ポリエチレンフィルム
(51)【国際特許分類】
A41D 31/00 20190101AFI20240315BHJP
A41D 31/10 20190101ALI20240315BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20240315BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20240315BHJP
A41D 19/015 20060101ALI20240315BHJP
A42B 1/019 20210101ALI20240315BHJP
【FI】
A41D31/00 504C
A41D31/10
A41D1/02
A41D1/06 501Z
A41D19/015 210Z
A42B1/019 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006152
(22)【出願日】2024-01-18
(62)【分割の表示】P 2021505367の分割
【原出願日】2019-07-30
(31)【優先権主張番号】62/712,249
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】ブレント ベル
(72)【発明者】
【氏名】ショーン レオネ
(72)【発明者】
【氏名】ガイ スブリグリア
(57)【要約】
【課題】新規の変性処理された多孔質ポリエチレン膜を提供する。
【解決手段】新規の変性処理された多孔質ポリエチレン膜は、親水性ポリマーが吸収され、熱処理されて、改善された手触り及びノイズを有するフィルムを形成する。フィルムは、防水性で通気性のあるアパレルを形成することができる物品、特にテキスタイルラミネートを製造するのに有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)i)500,000グラム/モルを超える重量平均分子量、
ii)40%以上の多孔度、及び
iii)200秒未満のガーレー数
を有する多孔質ポリエチレン膜と、
B)該多孔質ポリエチレン膜の細孔の少なくとも一部を充填する親水性ポリマーと
を含んでなるフィルムであって、
該フィルムは、
a)2500グラム/メートル2/日以上の水蒸気透過速度、及び
b)30グラム/メートル2未満の質量
を有することを特徴とする、フィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン膜は第一の面及び第二の面を有し、そして前記親水性ポリマーは、前記ポリエチレン膜の前記第一の面に適用されたことにより、細孔の少なくとも一部を充填し、かつ、前記ポリエチレン膜の前記第一の面側で親水性ポリマーのキャップを形成している、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン膜の第二の面がシシカバブ構造を示す、請求項1又は2のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項4】
前記多孔質ポリエチレン膜における実質的にすべての細孔が前記親水性ポリマーで充填されている、請求項1~3のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項5】
前記親水性ポリマーはポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、アイオノマーもしくはコポリマー、又はそれらのコポリマーもしくは組み合わせである、請求項1~4のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項6】
前記多孔質ポリエチレン膜の質量が10グラム/メートル2未満である、請求項1~5のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項7】
前記多孔質ポリエチレン膜の多孔度が60%以上である、請求項1~6のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項8】
前記親水性ポリマーの前記多孔質ポリエチレンに対する質量比が30~0.5の範囲にある、請求項1~7のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載のフィルムを含む物品。
【請求項10】
前記フィルムは、該フィルムに隣接する少なくとも1つの他の層を含むラミネートである、請求項9記載の物品。
【請求項11】
前記少なくとも1つの他の層は、テキスタイル層、ポリマーフィルム層、天然皮革層、合成皮革層、フリース層又はそれらの組み合わせである、請求項9又は10のいずれか1項記載の物品。
【請求項12】
前記少なくとも1つの他の層はテキスタイル層である、請求項9~11のいずれか1項記載の物品。
【請求項13】
前記ラミネートの層は連続接着剤又は不連続接着剤を使用して互いに接着される、請求項9~12のいずれか1項記載の物品。
【請求項14】
前記接着剤は熱可塑性又は架橋性の接着剤である、請求項9~13のいずれか1項記載の物品。
【請求項15】
前記物品は衣料品である、請求項9~14のいずれか1項記載の物品。
【請求項16】
前記衣料品はジャケット、コート、シャツ、ズボン、手袋、帽子、靴、つなぎ服又はそれらの少なくとも一部である、請求項15記載の物品。
【請求項17】
前記フィルムは衣料品の外側にあるか、又は、前記フィルムは衣料品の外側にない、請求項15又は16のいずれか1項記載の物品。
【請求項18】
前記衣料品は防水性である、請求項15~17のいずれか1項記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、様々な用途に有用な防水性で通気性のあるポリエチレンフィルム複合材に関する。フィルムは、単独で使用することも、又は、他の層に積層化して多層ラミネートを形成することができる。
【背景技術】
【0002】
衣料品、及び、靴、手袋、帽子などの他のタイプのアパレルは、湿潤状態で着用者の乾燥に保つために、防水性で通気性のある層をしばしば取り込む。これらの衣料品は、通気性防水層と1以上のテキスタイルとのラミネートを使用して形成されうる。多孔質PTFE膜及び親水性ポリウレタンを使用して作られた複合材防水通気性フィルムは、現在、GORE-TEX(登録商標)テキスタイルラミネートの製造に使用されている。PTFE膜は微孔質で一般的に疎水性であり、膜の細孔サイズは個々の水分子よりも大きいが、細孔は水滴よりもはるかに小さい。水蒸気は材料を通過することができる一方、水滴は膜の一方の側からもう一方の側に通過することが防止される。
【0003】
PTFE微孔質膜はうまく機能するが、多孔質ポリウレタン膜もアパレルで使用するために開発されているが、これらの膜は耐久性に欠ける可能性があり、幾つかの例において、ネールポリッシュ又は虫よけスプレイなどの特定の一般的に使用される製品によって溶解されうる。これらの膜には、着用者が動くときに膜が硬くかつ騒々しいという制限もありうる。優れた防水性及び通気性を持ち、膜を取り込んだ衣料品などの物品を動かし又は曲げたときに手触りが良くかつノイズが少ない膜を製造する必要性が引き続き存在する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、
A)i)500,000グラム/モルを超える重量平均分子量、ii)40%以上の多孔度、及びiii)200秒未満のガーレー数を有する多孔質ポリエチレン膜と、
B)該多孔質ポリエチレン膜の細孔の少なくとも一部を充填する親水性ポリマーと
を含んでなるフィルムであって、該フィルムは、
a)2500グラム/メートル2/日以上の水蒸気透過速度、及び
b)30グラム/メートル2未満の質量
を有するフィルムである第一の実施形態に関する。
【0005】
本開示はまた、フィルムを含む物品に関する。
【0006】
第二の実施形態において、本開示は、前記ポリエチレン膜が第一の面及び第二の面を有し、そして前記親水性ポリマーが、前記ポリエチレン膜の前記第一の面に適用されたことにより、細孔の少なくとも一部を充填し、かつ、前記ポリエチレン膜の前記第一の面側で親水性ポリマーのキャップを形成している、実施形態1記載のフィルムに関する。
【0007】
第三の実施形態において、本開示は、前記ポリエチレン膜の第二の面がシシカバブ構造を示す、実施形態1又は2のいずれか1項記載のフィルムに関する。
【0008】
第四の実施形態において、本開示は、前記多孔質ポリエチレン膜における実質的にすべての細孔が前記親水性ポリマーで充填されている、実施形態1~3のいずれか1項記載のフィルムに関する。
【0009】
第五の実施形態において、本開示は、前記親水性ポリマーがポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、アイオノマー又はコポリマー又はそれらのコポリマー又は組み合わせである、実施形態1~4のいずれか1項記載のフィルムに関する。
【0010】
第六の実施形態において、本開示は、前記多孔質ポリエチレン膜が10グラム/メートル2未満の質量を有する、実施形態1~5のいずれか1項記載のフィルムに関する。
【0011】
第七の実施形態において、本開示は、前記多孔質ポリエチレン膜が60%以上の多孔度を有する、実施形態1~6のいずれか1項記載のフィルムに関する。
【0012】
第八の実施形態において、本開示は、前記親水性ポリマーの前記多孔質ポリエチレンに対する質量比が30.0~0.5の範囲にある、実施形態1~7のいずれか1項記載のフィルムに関する。
【0013】
第九の実施形態において、本開示は、実施形態1~8のいずれか1項記載のフィルムを含む物品に関する。
【0014】
第十の実施形態において、本開示は、前記フィルムが、該フィルムに隣接する少なくとも1つの他の層を含むラミネートである、実施形態9記載の物品に関する。
【0015】
第十一の実施形態において、本開示は、前記少なくとも1つの他の層は、テキスタイル層、ポリマーフィルム層、天然皮革層、合成皮革層、フリース層又はそれらの組み合わせである、実施形態9又は10のいずれか1項記載の物品に関する。
【0016】
第十二の実施形態において、本開示は、前記少なくとも1つの他の層がテキスタイル層である、実施形態9~11のいずれか1項記載の物品に関する。
【0017】
第十三の実施形態において、本開示は、前記ラミネートの層が連続接着剤又は不連続接着剤を使用して互いに接着される、実施形態9~12のいずれか1項記載の物品に関する。
【0018】
第十四の実施形態において、本開示は、前記接着剤が熱可塑性又は架橋性の接着剤である、実施形態9~13のいずれか1項記載の物品に関する。
【0019】
第十五の実施形態において、本開示は、前記物品が衣料品である、実施形態9~14のいずれか1項記載の物品に関する。
【0020】
第十六の実施形態において、本開示は、前記衣料品がジャケット、コート、シャツ、ズボン、手袋、帽子、靴、つなぎ服又はそれらの少なくとも一部である、実施形態15記載の物品に関する。
【0021】
第十七の実施形態において、本開示は、前記フィルムが衣料品の外側にあるか、又は、前記フィルムが衣料品の外側にない、実施形態15又は16のいずれか1項記載の物品に関する。
【0022】
第十八の実施形態において、本開示は、前記衣料品が防水性である、実施形態15~17のいずれか1項記載の物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、熱処理前の多孔質ポリエチレン膜の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【0024】
【
図2】
図2は、
図1の多孔質ポリエチレン膜のSEMを高倍率で示す。
【0025】
【
図3】
図3は、シシカバブ構造を示す熱処理フィルムのSEMを示す。
【0026】
【0027】
【
図5】
図5は、例8の示差走査熱量測定(DSC)データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
引用されたすべての特許及び非特許文献の開示は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0029】
本明細書で使用されるときに、「実施形態」又は「開示」という用語は、限定することを意味するものではなく、一般に、特許請求の範囲で規定されるか又は本明細書で記載される実施形態のいずれかに適用される。これらの用語は、本明細書において交換可能に使用される。
【0030】
別段の開示がない限り、用語「a」及び「an」は、本明細書で使用されるときに、参照される特徴の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を包含することが意図されている。
【0031】
本開示の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者によってより容易に理解されるであろう。明確にするために、別個の実施形態の文脈で上及び下に記載されている本開示の特定の特徴もまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されうることが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈での組み合わせとして記載される本開示の様々な特徴はまた、別個に又は任意の副次組み合わせで提供されうる。さらに、単数形への言及は、文脈が特に明記しない限り、複数形を含むこともある(例えば、「a」及び「an」は1つ以上を指すことができる)。
【0032】
本出願で指定された様々な範囲での数値の使用は、特に明記されていない限り、記載された範囲内の最小値と最大値の両方の前に「約」という単語が付いているかのように近似値として示される。このようにして、記載された範囲の上下のわずかな変動値を使用して、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成することができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間のありとあらゆる値を含む連続的な範囲として意図されている。
【0033】
本明細書で使用されるときに、「膜」という用語は、本質的に二次元のシートの形態のポリマーを意味し、長さ及び幅は両方とも厚さよりもはるかに大きく、例えば、長さ及び幅の両方は少なくとも厚さの100倍である。幾つかの実施形態において、膜は、例えば、液体の水を膜の一方の側から他方の側に透過させることができることなく、水蒸気を膜の厚さを通過させることを可能にする構造を有する微孔質膜である。平均して、細孔サイズは数ナノメートル~約1マイクロメートルのオーダーである。
【0034】
「フィルム」という用語は、気体又は液体の流れが膜の開放細孔チャネルを通って起こらないように、細孔が少なくとも部分的にポリマーで充填されている膜を意味する。幾つかの実施形態において、細孔を少なくとも部分的に充填するポリマーは親水性ポリマーであることができる。
【0035】
「親水性ポリマー」という用語は、水濃度がより高いフィルムの片側で水を吸収し、水蒸気濃度がより低いフィルムの反対側で水を脱着又は蒸発させることによって、実質的な量の水をフィルムを通して移動させることができるポリマーを指す。幾つかの実施形態において、10マイクロメートルの厚さである親水性ポリマーの層は、5,000g/メートル2/日以上、又は10,000g/メートル2/日以上の水蒸気透過速度を有することができる。
【0036】
「多孔質ポリエチレン膜」及び「ポリエチレン膜」という語句は、本明細書全体で互換的に使用される。特に明記しない限り、両方の語句は、i)500,000g/モルを超える重量平均分子量、ii)40%以上の多孔度、及びiii)200秒未満のガーレー数を有する多孔質ポリエチレン膜を意味する。拡大下に、多孔質ポリエチレン膜はポリエチレンフィブリルのフィブリル化構造を示し、十分な拡大率で1つ以上のポリエチレンフィブリルを見ることができ、場合により、3つ以上のフィブリルは、3つ以上のフィブリルの1つ以上の交差点によって相互接続されうる。
【0037】
本明細書で使用されるときに、「ポリエチレン」という用語は、5質量パーセント未満の1以上のコモノマーを有するポリエチレンポリマーを意味する。幾つかの実施形態において、ポリエチレンは、フッ素含有コモノマーを含まず、さらに別の実施形態において、ポリエチレンはポリエチレンホモポリマーである。
【0038】
本開示は、A)多孔質ポリエチレン膜及びB)親水性ポリマーを含み、前記親水性ポリマーが前記多孔質ポリエチレン膜の細孔の少なくとも一部を充填するフィルムに関する。このフィルムは、油、洗剤又はその他の接触角低減材料による汚染によって漏れることがなく、それ自体が防水性である。さらに、フィルムを含む物品は、構造的支持体として多孔質ポリエチレン膜を含まない他の非空気透過性親水性フィルムよりも、現場及び洗濯中により高い耐久性を有する。多孔質ポリエチレン膜は重量平均分子量が500,000グラム/モル(g/モル)を超えている。幾つかの実施形態において、多孔質ポリエチレンは重量平均分子量が750,000g/モルを超える。さらに別の実施形態において、多孔質ポリエチレンは重量平均分子量が1,000,000g/モルを超える。さらに別の実施形態において、ポリエチレンは、重量平均分子量が1,500,000グラム/モルを超え、又は1,750,000グラム/モルを超える。さらに別の実施形態において、ポリエチレンは、重量平均分子量が2,0000,000グラム/モルを超え、3,000,000グラム/モル、4,000,000グラム/モル、5,000,000グラム/モル、又は8,000,000グラム/モルを超える。
【0039】
ポリエチレン膜は、膜が40%以上の多孔度を有する多孔質ポリエチレン膜である。幾つかの実施形態において、多孔質ポリエチレン膜の多孔度は、少なくとも50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%であることができる。膜の多孔度φは、膜の単位面積あたりの質量MPAと膜の厚さtを測定し、φ=(1-MPA/(t*ρ))*100の関係を使用して計算することができる。ここでρは膜ポリマーの密度である。多孔質ポリエチレン膜はまた、200秒未満又は100秒未満又は90秒以下又は80秒以下又は70秒以下又は60秒以下又は50秒以下又は40秒以下又は10秒未満のガーレーを有することができる。
【0040】
多孔質ポリエチレン膜は、比較的軽量であることができ、例えば、10グラム/メートル2(gsm)以下である。他の実施形態において、多孔質ポリエチレン膜は、9gsm以下又は8gsm以下又は7gsm以下又は6gsm以下又は5gsm以下又は4gsm以下又は3gsm以下又は2gsm以下の質量を有することができる。
【0041】
多孔質ポリエチレン膜は着色されても又は着色されなくてもよい。多孔質ポリエチレン膜の使用は、特に多孔質ポリエチレン膜が物品において見えるときに、フィルム及び該フィルムを含む物品に価値のある美的品質を提供することができる。既知の着色方法のいずれかを使用することができる。例えば、多孔質ポリエチレン膜は、膜形成プロセス中に顔料又は染料を添加することにより、膜のバルク全体に着色されうる。他の実施形態において、多孔質ポリエチレン膜は、既知の印刷及び染色プロセスを介して、形成後に着色されうる。さらに別の実施形態において、多孔質ポリエチレン膜は、添加された色を含まないか、又は本質的に含まなくてもよく、本明細書に記載のフィルム形成プロセス中の1以上の工程で色を加えることができる。
【0042】
フィルムはまた、多孔質ポリエチレン膜の細孔の少なくとも一部を充填する親水性ポリマーを含む。「細孔の少なくとも一部を充填する」という語句は、親水性ポリマーがポリエチレン膜の細孔中に吸収され、該親水性ポリマーを含むフィルムの領域を通る空気流が測定できない点(ガーレー数が1000秒以上)にまで細孔を充填することを意味する。言い換えれば、親水性ポリマーは、ポリエチレン膜の細孔を画定する壁面の単なるコーティングではない。幾らかのボイドが存在する可能性があるが、親水性ポリマーは、親水性ポリマーが適用される多孔質ポリエチレン膜の領域内に隣接層を形成することが考えられている。他の実施形態において、親水性ポリマーは、親水性ポリマーが適用される多孔質ポリエチレン膜の領域内にボイドがないか又は本質的にボイドがない連続層を形成する。さらに別の実施形態において、多孔質ポリエチレン膜の実質的にすべての細孔が親水性ポリマーで充填される。
【0043】
ポリエチレン膜は第一の面及び第二の面を有する。親水性ポリマーは、多孔質ポリエチレン膜の第一の面に適用されることができ、親水性ポリマーは、細孔の少なくとも一部を透過してフィルムを形成し、その結果、ポリエチレン膜の細孔の少なくとも一部を充填することができる。ポリエチレン膜の第一の面は、膜の外側に親水性ポリマーのキャップ層を含むことができる。多孔質ポリエチレン膜の第一の面の上の親水性ポリマーのキャップ層又はその量には本質的に上限はない。しかしながら、キャップ層が厚すぎると、多孔質ポリエチレン膜の有益な特性を実現できないため、キャップの上限は約50マイクロメートルである。幾つかの実施形態において、親水性コポリマーのキャップ層は、ポリエチレン膜の第一の面上で、最大40マイクロメートル又は最大30マイクロメートル又は最大20マイクロメートル又は最大15マイクロメートルの厚さであることができる。幾つかの実施形態において、親水性ポリマーのキャップ層は、ポリエチレン膜の第一の面上で最大約10マイクロメートルの厚さであることができる。他の実施形態において、ポリエチレン膜の第一の面上のキャップ層は、10マイクロメートル以下又は8マイクロメートル以下又は6マイクロメートル以下又は4マイクロメートル以下又は2マイクロメートル以下である。さらに別の実施形態において、親水性ポリマーのキャップ層は、ポリエチレン膜の第一の面上に存在しない。ポリエチレン膜の第二の面は、表面上に親水性ポリマーを本質的に含まなくてよく、例えば、ポリエチレン膜の表面から1マイクロメートルを超える厚さの親水性ポリマーは存在しない。幾つかの実施形態において、多孔質ポリエチレン膜の全体の厚さより薄く親水性ポリマーが充填され、例えば、ポリエチレン膜の厚さの90%以下は親水性ポリマーで充填されうるが、ただし、多孔質ポリエチレンフィルムに1000秒以上のガーレー数を備えさせるのに十分な親水性ポリマーが吸収されている。他の実施形態において、多孔質ポリエチレン膜の本質的に全厚は親水性ポリマーで充填されている。本明細書で使用されるときに、「本質的に全厚」という語句は、多孔質ポリエチレン膜の厚さの少なくとも90%が親水性ポリマーで充填されていることを意味する。他の実施形態において、親水性ポリマーは、第一の面と同様に、ポリエチレン膜の第二の面に適用されうる。第二の面に適用される親水性ポリマーは、第一の面に適用される親水性ポリマーと同じであっても又は異なっていてもよい。さらに別の実施形態において、フィルムは複合材フィルムであることができ、ここで、親水性ポリマーは第一の多孔質ポリエチレン膜の第一の面に適用され、十分な量の親水性ポリマーが多孔質ポリエチレン膜の第一の面に適用されてキャップ層を形成し、前記第一の多孔質ポリエチレン膜と同じであっても又は異なっていてもよい第二の多孔質ポリエチレン膜は、その後に、親水性ポリマーのキャップ層を介してラミネートへと結合される。これは、2つの多孔質ポリエチレン膜の間の層として親水性ポリマーを用いて互いに接着された2つの多孔質ポリエチレン膜を有する3層構造をもたらすことができる。所望により、該複合体フィルムの外面の一方又は両方に、追加の親水性ポリマー層を1以上適用してもよい。
【0044】
幾つかの実施形態において、親水性ポリマーは、多孔質ポリエチレン膜に連続的に適用されることができ、その結果、多孔質ポリエチレン膜の表面積の本質的に100パーセントが親水性ポリマーを含む。この文脈で使用されるときに、「連続的」という用語は、多孔質ポリエチレン膜の全幅又はほぼ全幅が親水性ポリマーでコーティングされていることを意味する。多くのコーティングプロセスにおいて、コーティング対象の膜の全幅をコーティングさせない縁でのフレーム又はダムのために、材料のロールの縁はコーティングされないことがあることに注意すべきである。他の実施形態において、親水性ポリマーは、不連続な様式で多孔質ポリエチレン膜に適用されうる。この文脈で使用されるときに、「不連続」という用語は、多孔質ポリエチレン膜の表面積の100パーセント未満が親水性ポリマーでコーティングされ、多孔質ポリエチレン膜の非縁領域の部分が親水性ポリマーを含まないことを意味する。例えば、一連のドット又は直交する線のグリッドとして多孔質ポリエチレン膜に適用された親水性ポリマーは不連続コーティングと考えられるべきである。親水性ポリマーで充填される多孔質ポリエチレン膜の面積パーセントは、20パーセント以上~100パーセント、又は30パーセント~100パーセント未満、又は40パーセント~100パーセント未満、又は50パーセント~100パーセント未満、又は60~100パーセント未満、又は70~100パーセント未満、又は80~100パーセント未満、又は90~100パーセント未満の範囲であることができる。他の実施形態において、親水性ポリマーの適用は、ドット、多角形、平行線、交差線、直線、曲線又はそれらの任意の組み合わせのランダム又は非ランダムパターンを生成する方法で行い、面積被覆率による望ましいパーセントを提供することができる。そのようなフィルムにおいて疎油性が望まれるならば、特定の実施形態において、本明細書に記載されるように、疎油性コーティングを含むことが望ましい場合がある。
【0045】
質量比として、フィルムは、親水性ポリマーの質量の多孔質ポリエチレン膜の質量に対する比を30.0~0.5の範囲にすることができる。他の実施形態において、親水性ポリマーのポリエチレン膜に対する質量比は、20.0、15.0、10.0、9.0、8.0、7.0、6.0、5.0、4.0、3.0、2.0、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5又はそれらの数値の間の任意の質量比であることができる。
【0046】
適切な親水性ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、アイオノマー又はそれらのコポリマーもしくは組み合わせを挙げることができる。他の実施形態において、ほぼあらゆる適切な親水性ポリマーを使用することができるが、ただし、親水性ポリマーは5000グラム/メートル2/日以上又は10,000グラム/メートル2/日以上の水蒸気透過速度を有することができる。親水性ポリマーは熱可塑性ポリマー又は架橋性ポリマーであることができる。幾つかの実施形態において、親水性ポリマーはポリウレタンであり、さらなる実施形態において、ポリウレタンは架橋ポリウレタンである。適切なポリウレタンポリマーは、例えば、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン又はポリエーテル-ポリエステルウレタンであることができる。
【0047】
着色が望まれる幾つかの実施形態において、色は、例えば、顔料又は染料が親水性ポリマーに添加され、所望の色を有するフィルムをもたらす、着色剤入り親水性ポリマーを使用して加えることができる。他の実施形態において、多孔質ポリエチレンフィルムは、既知の方法、例えば、マスターバッチ処理に従って、多孔質ポリエチレン膜の形成中に着色されうる。したがって、多孔質ポリエチレン膜及び親水性膜の一方又は両方を着色することも、又は、着色しないこともできる。多孔質ポリエチレン及び親水性ポリマーの両方が着色されているならば、それらは同じ又は類似の色合いで着色されることができ、又は色は互いに独立して選択することができる。有機顔料及び染料、無機顔料又は染料、金属、金属酸化物、カーボンブラック、二酸化チタン又はそれらの組み合わせを含む、任意の既知の顔料又は染料を使用することができる。
【0048】
さらに別の実施形態において、多孔質ポリエチレン膜は、疎油性ポリマー及び親水性ポリマーの両方で処理することができる。例えば、第一の工程において、多孔質ポリエチレン膜の第一の面は、細孔を充填することなく多孔質ポリエチレン膜の細孔を画定する壁をコーティングすることができる疎油性ポリマーで処理することができ、ここで、疎油性ポリマーは、多孔質ポリエチレン膜の全厚よりも薄い厚さが疎油性ポリマーで処理されるように提供される。任意工程である疎油性ポリマーの乾燥及び硬化工程の後に、多孔質ポリエチレン膜の第二の面を親水性ポリマーで処理して、多孔質ポリエチレン膜の残りの厚さの少なくとも一部を充填し、次いで、任意工程である親水性ポリマー及び疎油性ポリマーの加熱及び硬化工程を行うことができる。これらの実施形態において、親水性ポリマーは、親水性ポリマーが多孔質ポリエチレン膜の疎油性処理された部分を濡らすことができないため、疎油性処理を有しない多孔質ポリエチレン膜の部分のみを充填する。
【0049】
幾つかの実施形態において、多孔質ポリエチレン膜は、多孔質ポリエチレン膜の厚さの5パーセント以上にわたって疎油性ポリマーで処理されることができる。他の実施形態において、多孔質ポリエチレン膜は、その厚さの95パーセント以下にわたって疎油性処理剤を含むことができる。さらに別の実施形態において、疎油性処理は、多孔質ポリエチレン膜の厚さの10~90パーセント又は10~80パーセント又は10~70パーセント又は10~60パーセント又は10~50パーセント又は10~40パーセント又は10~30パーセント又は10~20パーセントの範囲で存在することができる。多孔質ポリエチレン膜の第一の面の処理後、多孔質ポリエチレン膜の第二の面は、多孔質ポリエチレン膜の残りの厚さを充填することができる親水性ポリマーで処理されることができ、幾つかの実施形態において、親水性ポリマーのキャップ層を形成する。
【0050】
親水性ポリマーの添加及び任意工程の硬化後に、多孔質ポリエチレン膜及び親水性ポリマーの両方を含むフィルムは、特定の実施形態において、曲げられたときに望ましくないほど硬くて騒々しい可能性がある。これらの硬くて騒々しいフィルムが多層ラミネートを作るために使用されるならば、ラミネートはまた、例えば衣料品に組み込まれるときに、望ましくないほど硬くて騒々しいであろう。本明細書でより詳細に記載されるように、ポリエチレン膜及び親水性ポリマーを含むフィルムをポリエチレンの溶融温度を超える温度に十分な時間加熱すると、この熱処理プロセスを受けていない多層ラミネートと比較したときに、手触りが改善され、ノイズが低減された多層ラミネートを得ることができることを見出した。この熱処理に必要な温度は少なくとも125℃である。他の実施形態において、熱処理に必要な温度は少なくとも130℃である。さらに別の実施形態において、熱処理工程のための温度は、少なくとも135℃又は少なくとも140℃又は少なくとも145℃又は少なくとも150℃又は少なくとも155℃又は少なくとも160℃又は少なくとも165℃又は少なくとも170℃又は少なくとも175℃である。180℃を超える温度では、親水性ポリマーの選択によって、熱処理温度は親水性ポリマーを分解し始める場合がある。この熱処理に必要な時間は、加熱温度及び加熱に使用される方法により、例えば、125℃の加熱温度は、加熱温度が165℃の場合よりも長い加熱時間を必要とすることがある。所与のフィルム及び加熱プロセスに必要な最小加熱時間は、温度がポリエチレンの少なくとも一部を溶融することができるのに十分に高いという条件で、当業者によって容易に決定することができる。ポリエチレン膜構造が親水性ポリマーによって包囲されている又は包まれているフィルムの領域では、ポリエチレンの崩壊又は凝集、又は、ポリエチレン膜のマクロスケールの変形はポリエチレンの溶融時に起こらず、フィルムの通気性は驚くほど維持された。幾つかの実施形態において、例えば、米国特許第9,926,416号明細書に従って作製され、細孔の少なくとも一部が親水性ポリマーにより充填された多孔質ポリエチレン膜は、ポリエチレンの融点を超える熱処理工程を受けることができ、依然として通気性を保持する、すなわち、5,000グラム/日/メートル
2を超えるMVTRを保持することができる。米国特許第9,926,416号明細書は、その全体を参照により本明細書に取り込む。多孔質ポリエチレン膜の第二の面の一部を親水性ポリマーが充填されていないままにする場合に、加熱処理により、拡大して見ることができるポリエチレン膜の構造変化が生じることができる。これらの構造変化は、微細構造内のフィブリルの長さに沿った積み重ねられた又は層状のセクションに視覚的に似ている構造として見ることができ、本明細書では簡単にするために「シシカバブ」と呼ばれる。
図1及び
図2は、熱処理工程前のフィルムの第二の面のSEM顕微鏡写真であり、
図3及び4は、シシカバブ型の構造を示す熱処理後のフィルムの第二の面のSEM顕微鏡写真である。示されているように、これらのシシカバブ構造は、ポリエチレンフィブリルの長さに沿って現れる。シシカバブは、元のフィブリルに垂直な方向に互いに積み重ねられた一連の比較的短い、例えば0.1マイクロメートル未満の構造で構成される。シシカバブの幅は、元のフィブリルの幅にほぼ対応している。幾つかの実施形態において、例えば、親水性ポリマーのキャップ層がポリエチレン膜の第一の面及び第二の面の上に存在するならば、又は比較的低分子量のポリエチレンのパーセンテージが低すぎるならば、シシカバブ型の構造は見えないことがある。
【0051】
一般に、本明細書に開示されるポリエチレン膜を含むポリマーは、1以上の平均分子量として報告される分子量を有する。個々のポリマーの実際の分子量は分子量の分布であり、個々のポリマーの実際の分子量は、報告された平均分子量より上にある部分と下にある部分を含む。本開示において、水蒸気透過速度によって決定されるフィルムの通気性は、ポリエチレンの分子量と組み合わせた熱処理工程によって影響を受けることができる。例えば、低分子量ポリマーの比較的大きな部分が存在し、ポリエチレン膜の非充填領域の厚さが大きすぎるならば、熱処理工程は、変形、例えば、ポリエチレン膜の非充填領域の崩壊をもたらし、フィルムの通気性が低下するか又はさらには失われる可能性がある。しかしながら、ポリエチレンの平均分子量が実質的に高く、分子量分布が十分に小さいために低分子量ポリエチレンがほとんど又はまったくないならば、フィルムをポリエチレンの融解温度を超えて加熱しても、ポリエチレン構造に親水性ポリマーが吸収されていない場合であってもポリエチレンの膜構造を変形又は崩壊させないであろう。熱処理は、加熱ロール上にフィルムを走行させることにより又は他の既知の熱処理方法により、オーブン内で行うことができる。フィルムの機械的特性の変化をもたらし、おそらくポリエチレン膜のシシカバブ構造の形成をもたらすこの熱処理工程は、ポリエチレン膜が親水性ポリマーでコーティングされそして親水性ポリマーが固化した後の任意の時点で行うことができることに留意されたい。幾つかの実施形態において、ポリエチレン膜を親水性ポリマーでコーティングしてフィルムを形成し、次いでフィルムを別の層に積層することができる。あるいは、他の実施形態において、膜を別の層に積層することができ、次いで膜を親水性ポリマーでコーティングすることができる。いずれの実施形態においても、熱処理工程は、フィルムが作製された後、そしてラミネートの形成の前、その間又は後に完了することができる。
【0052】
多孔質ポリエチレン膜及び親水性ポリマーを含むフィルムは、以下の工程に従って製造することができる。
1)500,000g/モルを超える重量平均分子量、40%以上の多孔度及び200秒未満のガーレー数を有する多孔質ポリエチレン膜を提供すること、
2)該多孔質ポリエチレン膜の少なくとも一部を親水性ポリマーでコーティングすること、及び
3)コーティングされた膜を熱処理すること。
【0053】
別の実施形態において、フィルムは、以下の工程に従って製造することができる。
1)500,000g/モルを超える重量平均分子量、40%以上の多孔度及び200秒未満のガーレー数を有する多孔質ポリエチレン膜を提供すること、
2)該多孔質ポリエチレン膜の第一の面を疎油性ポリマーでコーティングして、該多孔質ポリエチレン膜の細孔を画定する壁をコーティングすること、
3)該多孔質ポリエチレン膜の第二の面を親水性ポリマーでコーティングしてフィルムを形成すること、及び
4)工程2)の後、工程3)の後又はその両方で熱処理すること。
【0054】
別の実施形態において、物品は、以下の工程に従って製造することができる。
1)500,000g/モルを超える重量平均分子量、40%以上の多孔度及び200秒未満のガーレー数を有する多孔質ポリエチレン膜を提供すること、
2)該多孔質ポリエチレン膜の少なくとも一部を親水性ポリマーでコーティングしてフィルムを形成すること、
3)該フィルムを少なくとも1つの他の層に積層すること、及び
4)工程2)又は3)あるいはその両方の製品を熱処理すること。
【0055】
別の実施形態において、物品は、以下の工程に従って製造することができる。
1)500,000g/モルを超える重量平均分子量、40%以上の多孔度及び200秒未満のガーレー数を有する多孔質ポリエチレン膜を提供すること、
2)該多孔質ポリエチレン膜の第一の面に少なくとも1つの他の層を積層すること、
3)該多孔質ポリエチレン膜の第二の面の少なくとも一部を親水性ポリマーでコーティングすること、及び
4)工程3の製品を熱処理すること。
【0056】
場合により、上記の方法のいずれかにおいて、親水性ポリマーは、熱処理工程の前又はその間に硬化させることができる。
【0057】
熱処理工程の前に、多孔度が40%以上であり、平均分子量が500,000グラム/モルを超える多孔質ポリエチレン膜は、示差走査熱量測定(DSC)により決定して、中心が135℃を超える1つ以上のポリエチレン吸熱ピークを有し、中心が135℃未満であるポリエチレン吸熱ピークを有しない。さらに、熱処理の前に、開示されたフィルムは、示差走査熱量測定(DSC)によって決定して、中心が135℃を超える1つ以上のポリエチレン吸熱ピークを有し、中心が135℃未満であるポリエチレン吸熱ピークを有しない。熱処理工程の温度は、ポリエチレン結晶含有分の少なくとも一部を融解するのに十分に高い。冷却すると、溶融したポリエチレンの再固化した部分は、135℃以下を中心とするポリエチレン吸熱ピークを持つ異なる結晶形に再結晶する。曲げられたときに、フィルム又はそれから作製された物品によって生成されるノイズの低減をもたらすための熱処理に要求される時間は、一般に、熱処理温度が上昇するにつれて減少する。多孔質ポリエチレンの元の結晶含有分のより大きな部分を溶融させる熱処理条件は、フィルムのノイズをより大きく低減させる。フィルムの熱処理後に、135℃未満を中心とするポリエチレン吸熱ピークは存在するであろう。熱処理工程の後に、フィルム又は膜は、130℃以上から135℃以下の範囲を中心とすることができる少なくとも1つのポリエチレン吸熱ピークを有する。場合により、135℃を超える1つ以上のポリエチレン吸熱ピークも存在することができる。
【0058】
多孔質ポリエチレン膜及び親水性ポリマーを含む得られたフィルムは、2500グラム/メートル2/日(g/m2/日)以上の水蒸気透過速度(MVTR)、30グラム/メートル2未満の質量及び、場合により、1000秒以上のガーレー数を有することができる。通気性を保つために、すなわち、液体の水がフィルムを通して移動することなく水蒸気をフィルムの片側から反対側に輸送できるようにするためには、MVTRは2500g/m2/日以上であるべきである。他の実施形態では、フィルムは、3000g/m2/日以上、3500g/m2/日以上、4000g/m2/日以上、4500g/m2/日以上、5000g/m2/日以上、5500g/m2/日以上、6000g/m2/日以上、6500g/m2/日以上、7000g/m2/日以上、7500g/m2/日以上、8000g/m2/日以上、8500g/m2/日以上、9000g/m2/日以上、9500g/m2/日以上又は10,000g/m2/日以上のMVTRを有することができる。
【0059】
フィルムは、0.5~2.0の範囲で直交する2方向のマトリックス引張強度の比率を有することもできる。他の実施形態において、直交する2方向の引張強度の比は、0.7~1.4の範囲であることができる。さらに別の実施形態において、引張強度の比は、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0又はこれら2つの数値の間の任意の値であることができる。直交する2方向の引張強度の違いは、主に、膜製造プロセス中に2つの方向に加えられる総ひずみの違いによって引き起こされる。
【0060】
フィルムはまた、膜の厚さの少なくとも一部においてボイドを充填する親水性ポリマーの存在に、それにより、多孔質ポリエチレン膜のその部分においてボイドのない連続層を形成することにより耐汚染性であることができる。耐汚染性は、本明細書で使用されるときに、フィルムが汗、皮脂又は油で汚染され、それにより、時間の経過とともに防水性が低下することがないことを意味する。多孔質ポリエチレン膜の細孔の少なくとも一部が充填されていないままであるならば、充填されていない細孔の壁上の疎油性コーティングは、充填されていない細孔に耐汚染性を提供することができる。
【0061】
本開示はまた、フィルムを含む物品に関する。本開示のフィルムを含む物品の1つの利点は、熱処理工程を受けなかったフィルムと比較したときに、物品は人間の耳に認識できる、特に音の違いを検出する快適性の専門家に認識できるノイズの低減を示すことができることである。本明細書で使用するときに、「ノイズの低減」とは、物品が、人間の耳に認識できる、特に、熱処理されたフィルムと熱処理工程を受けなかった同じフィルムとの間の音の違いを検出する快適性の専門家に認識できるノイズの低減を示すことができることを意味する。フィルムがラミネート形態であるならば、快適性の専門家はまた、2つのラミネートの間のノイズレベルの低下を認識することもでき、フィルム又はラミネートが熱処理工程を受けた同じラミネートと比較して、フィルムが熱処理されていないラミネートはよりうるさい。ラミネート構造では、特定の実施形態におけるラミネート内の他の構成要素もまた、特定のノイズレベルに寄与する可能性がある。
【0062】
物品は、多層ラミネートであることができ、例えば、フィルムの1以上の層と、他の1以上の層とを重ね合わせてラミネートを形成することができる。他の1以上の層は、テキスタイル層、ポリマーフィルム層、天然皮革層、合成皮革層、フリース層又はそれらの組み合わせであることができる。幾つかの実施形態において、物品は、フィルムの第一の面又は第二の面に接着されたテキスタイル層を含む二層ラミネートであることができる。幾つかの実施形態において、物品は、フィルムの第一の面に接着された第一のテキスタイル層と、フィルムの第二の面に接着された第二のテキスタイル層とを含む三層ラミネートであることができる。さらに別の実施形態において、追加の層を適用して、4、5、6又はそれ以上の層を有するラミネートを製造することができる。適切なテキスタイル層は、任意の織布、編布又は不織布を含むことができる。テキスタイルは、天然及び/又は合成テキスタイル、例えば、綿、羊毛、絹、ジュート、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、アラミド、ビスコース、レーヨン、炭素繊維又はそれらの組み合わせであることができる。適切なポリマーフィルムとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、フルオロポリマー、ポリハロゲン化ビニル、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、シリコンポリマー又はそれらの組み合わせを挙げることができる。開示されたフィルムの1以上の層、1以上のテキスタイル層及び/又は1以上のポリマーフィルム層を含むラミネートも製造することができる。
【0063】
開示されたフィルムの強度が高いために、上記の比較的質量が小さいテキスタイル又は材料のいずれかを使用して、ラミネートを製造することができる。幾つかの実施形態において、ラミネートは、5グラム/メートル2~30グラム/メートル2(gsm)の範囲の坪量を有する比較的低質量のテキスタイルを含むことができる。他の実施形態において、テキスタイルは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30gsm又はこれらの値の2つの間の任意の値の質量を有することができる。比較的低質量のテキスタイルを使用することができるが、30gsm以上の質量を有するテキスタイルも使用することができる。例えば、500gsmもの質量を有する比較的質量の大きいテキスタイルを使用することができる。
【0064】
積層化技術は当該技術分野でよく知られており、例えば、接着積層、熱接着及び縫合を挙げることができる。防水ラミネートが必要な場合に、例えばシームテープを使用して縫合穴を密封することによってステッチ穴が液体の水に対して不透過性になるように注意を払わない限り、縫合結合は望ましくない場合がある。幾つかの実施形態において、積層化は、接着剤が一緒に接合される1以上の層に適用され、その後、場合により、例えば、ニップローラーを介して、熱及び/又は圧力で一緒に配置される接着積層によって達成される。接着剤は、フィルム層、テキスタイル層又はフィルム層とテキスタイル層の両方に適用することができる。接着剤は、不連続な様式で、例えば、一連の接着剤ドット、形状、線又はそれらの組み合わせで適用することができる。他の実施形態において、接着剤は、接着剤の連続層として適用することができる。接着剤組成物は、特定の実施形態において、熱可塑性又は架橋性の接着剤であることができる。さらに別の実施形態において、親水性ポリマーを、ラミネートを形成するための接着剤として使用することができる。例えば、親水性ポリマーのキャップ層の形成を伴う多孔質ポリエチレン膜の片面への親水性ポリマーの適用後に、テキスタイルを親水性ポリマーに適用することができ、熱及び/又は圧力をラミネートに適用して、親水性ポリマーがテキスタイルに十分に接触して接着することを確保することができる。親水性ポリマーをラミネートの接着剤として使用するならば、親水性ポリマーの硬化工程は、テキスタイル又は他の材料が親水性ポリマーキャップ層を含むフィルムの面に配置された後に行うことができる。幾つかの実施形態において、ヒートプレスを使用して、親水性ポリマーがテキスタイル繊維間の空間に流れ込むことを可能にするのに十分な圧力を提供することができ、ヒートプレスからの熱は、ラミネートを作成するための所望の硬化及び熱処理工程を行うことができる。他の実施形態において、1つ以上のローラーは、同じタスクを、例えば、連続的に達成するために必要な圧力及び/又は熱を提供することができる。
【0065】
伸長性及び回復性を有するラミネートは、既知の方法に従って製造することができる。例えば、米国特許第4,443,511号、米国特許第9,950,504号、米国特許第9,126,390号、米国特許第9,233,520号、米国特許第9,238,344号、WO2018/67529号明細書に教示されている方法は、その内容全体が参照により本明細書に取り込まれ、それらすべては、従来の膜及びラミネート構造に伸長性を与える方法を教示しており、これらの教示は、本開示のフィルムを含むラミネートに伸長性を提供するように適応させることができる。
【0066】
物品は、例えば、衣料品、エンクロージャー、保護エンクロージャー、テント、寝袋、ビビーバッグ、バックパック、パック、カバー及び本開示のフィルムの特性から利益を得る他の同様の形態であることができる。衣料品は、ジャケット、コート、シャツ、ズボン、手袋、帽子、靴、つなぎ服又はそれらの少なくとも一部であることができる。多くの物品は、完成品を形成するために縫い合わされるか、又はさもなければ一緒に接着される複数のパネルから製造される。それゆえ、物品の「少なくとも一部」とは、少なくとも1つのパネル又はパネルの一部が開示のフィルムを含むことを意味する。物品及び衣料品は、フィルムが衣料品の外側、又は、衣料品の内側、又はフィルムが衣料品の中間層の少なくとも1つ、例えば、三層ラミネートの中間層であるように製造することができる。開示のフィルムを含む物品及び衣料品の1つの利点は、それらの比較的低いノイズレベルである。物品及び衣料品のもう1つの利点は、防水性及び通気性があることである。
【0067】
フィルムが衣料品の外側にある、つまりそれが衣料品の最も外側の部分である実施形態では、フィルムは着色され、無着色であり、フィルムはテクスチャー加工され、エンボス加工され又はそれらの任意の組み合わせで、所望の外観を生成することができる。フィルムを着色する方法は本明細書に記載される。フィルムをエンボス加工するために、フィルムは、ランダムな様式又は非ランダムな様式で選択的に圧縮することができ、例えば、パターン、文字、単語、ピクチャ、スポーツチームのロゴ、ビジネスロゴ又はそれらの組み合わせは、親水性ポリマーで処理する前又は親水性ポリマーで処理した後、あるいはその両方で、膜又はフィルムにエンボス加工されうる。選択的に圧縮すると、フィルムの半透明性の異なる領域を生じさせることができ、これによりフィルムの通気性も変化することができ、エンボス加工された領域は非エンボス領域よりも比較的に低い通気性を有する。エンボス加工の適切な方法は、US20080143012に見出すことができ、その全体を、参照により本明細書に取り込まれる。
【0068】
フィルムが衣料品の外側にある、つまりそれが衣料品の最も外側の部分である実施形態では、フィルムの少なくとも一部をテクスチャー加工することができる。フィルムは、耐摩耗性ポリマーのランダム又は非ランダムパターンでフィルムを処理することによってテクスチャー加工されうる。耐摩耗性ポリマーは、一連のドット、線又は他の形状として適用して、所望の外観を提供するとともに、衣料品の最も外側の部分に改善された耐摩耗性を提供することができる。適切な耐摩耗性ポリマー及びそれらを適用するための方法は、US2010/0071115に見出すことができ、参照によりその全体を本明細書に取り込む。フィルムをテクスチャー加工するための別の方法は、フィルムの少なくとも一部にフロックを適用することを含むことができる。フロック材料を適用する適切な方法はWO99/39038に見出すことができ、参照によりその全体を本明細書に取り込む。
【0069】
フィルム及び物品、例えば、フィルムを含むラミネートは、今日使用されている追加の化学物質を必要とせずに、本質的に永久的なシワを備えることができることも見出された。これは、特にフィルム及び少なくとも1つのテキスタイル層を含む衣料品、例えばズボンにおいて有用であることができる。刺しゅうフープに配置され、加熱され、続いて冷却されたフィルム及びテキスタイルを含むラミネートは、刺しゅうフープから取り外されたときに、ラミネートが刺しゅうフープに固定されたラミネートの部分にシワを示したことが見出された。加熱温度は125℃以上又は130℃以上、そして180℃以下とすべきである。例えば衣料品においてシワが望まれる実施形態において、シワは、物品を折り畳み、熱でプレスすることによって生成することができる。
【実施例0070】
試験方法
【0071】
分子量
【0072】
分子量の決定は、Mead, D.W.「線形粘弾性材料関数からの線状可撓性ポリマーの分子量分布の決定」Journal of Rheology 1994, 38(6):1797-1827によって与えられた手順に従って行われた。
【0073】
多孔度
【0074】
多孔度はパーセント多孔度で表され、多孔質ポリエチレン膜の平均密度とポリマーの真の密度の商を1から差し引き、その値に100を掛けることによって決定した。この計算の目的のために、ポリエチレンの真の密度は0.94グラム/立方センチメートルとした。サンプルの密度は、サンプルの質量/面積をその厚さで割ることによって計算した。
【0075】
水蒸気透過速度試験プロトコル(MVTR)
【0076】
MVTRは、DIN EN ISO 15496(2004)に従って測定される。これはテキスタイル産業で使用される標準試験であるため、DIN EN ISO 15496(2004)に開示されているMVTR試験の詳細な説明を参照されたい。MVTR試験の説明については、WO 90/04175A1も参照されたい。
【0077】
基本原理は以下のように要約される。試験対象のサンプルは、水蒸気透過性が高いが防水性である微孔質膜と一緒に、環状のサンプルサポートに挿入される。次に、膜が水に接触するように、サポートを15分間水(23℃の脱イオン水)に浸す。カップは、サンプルの表面で23%の相対湿度を生成するように、酢酸カリウムの飽和水溶液で充填され、同じ防水性微孔質膜の第二の片で覆われている。酢酸カリウム溶液及び第二の膜を含むカップの質量を計量し、次いで、第二の膜がサンプルに接触するようにサンプルサポートの上に置く。これにより、水蒸気がサンプルを通して水の側から酢酸カリウムを含むカップに移動する。15分後に、酢酸カリウムを含むカップを取り外し、その質量を測定する。サンプルなしの試験装置の水蒸気透過性を決定するために、サンプルなしで第一の膜及び第二の膜を使用して同じ手順を行う。次に、サンプルのMVTRは、2つの追加の微孔質膜の影響も考慮して、両方の測定値の差から決定できる。
【0078】
本発明によるラミネートの水蒸気透過速度(MVTR)は、EN ISO 15496(2004)に従って測定され、g/m2/24hrで表される。本明細書で使用される水蒸気透過性と考えられるために、ラミネートは、一般に、少なくとも3000g/m2/24hr、好ましくは少なくとも8000g/m2/24hr、より好ましくは少なくとも12000g/m2/24hrの水蒸気透過性を有するべきである。MVTR値は20000g/m2/24hrまで高くなることができる。
【0079】
ガーレー
【0080】
ガーレー空気流試験は、100cm3の空気が12.4cm水圧で6.45cm2のサンプルを通して流れる時間を秒単位で測定する。サンプルを、Gurley Model4320自動デジタルタイマーを備えたGurley Densometer Model 4110自動濃度計で測定した。報告された結果は、複数の測定値の平均である。
【0081】
示差走査熱量測定(DSC)
【0082】
示差走査熱量測定データは、TA Instruments Q2000 DSCを使用して、35℃~220℃で10℃/分の加熱速度で収集した。フィルム及び膜について、バルクサンプルから4mmのディスクを打ち抜き、パンに平らに置き、リッドを圧着して、ディスクをパンとリッドの間に挟んだ。80℃~180℃までの線形積分スキームを使用して、融解エンタルピーデータを積分した。その後の融解領域の逆重畳積分を、SeaSolve SoftwareのPeakFitソフトウェア(Windows(登録商標)用Peak Fit v4.12、copyright 2003、SeaSolve Software, Inc.)を使用して実行した。標準条件を使用してベースラインを適合させ(データを反転して「正の」ピークを生成した後)、その後、観測データを個々の融解成分に分解した。
【0083】
マトリックス引張強度(MTS)
【0084】
MTSを決定するために、ASTM D412-Dogbone Die Type F(DD412F)を使用して、サンプル膜を長手方向及び横断方向に切断した。引張破壊荷重は、フラットフェースグリップ及び「200ポンド」(約90.72kg)ロードセルを備えたINSTRON(登録商標)5500R(Illinois Tool Works Inc., Norwood, MA)引張試験機を使用して測定した。グリップのゲージ長を8.26cmに設定し、0.847cm/s又は14.3%/sのひずみ速度を使用した。サンプルをグリップに配置した後に、サンプルを1.27cm引っ込めてベースラインを取得し、前述のひずみ速度で引張試験を行った。各条件の2つのサンプルを個別に試験し、最大負荷(つまり、ピーク力)の測定値の平均をMTSの計算に使用した。長手方向及び横断方向のMTSを以下の式を使用して計算した。
【0085】
MTS=(最大荷重/断面積)*(ポリマーの真密度/膜の密度)。
【0086】
厚さ測定
【0087】
膜の厚さは、Kafer FZ1000/30厚さスナップゲージ(Kafer Messuhrenfabrik GmbH, Villingen-Schwenningen, Germany)の2つのプレートの間に膜を配置することによって測定した。3つの測定値の平均を使用した。
【0088】
単位面積あたりの質量(グラム/メートル2)
【0089】
サンプルの面積あたりの質量(質量/面積)は、スケールを使用してサンプルの明確に規定された面積の質量を測定することによって計算した。サンプルは、ダイ又は任意の精密切断器具を使用して、規定面積に切断した。
【0090】
例1
【0091】
重量平均分子量769,000グラム/モルである厚さ30マイクロメートルのポリエチレン膜(Gelon LIB Co., Ltd、中国から入手可能)を機械方向(MD)に2.25:1で延伸し、次に横断方向(TD)に9:1で延伸した。得られた多孔質ポリエチレン膜は、単位面積あたりの質量が2.1グラム/メートル2(gsm)であり、厚さが10ミクロンであり、ガーレーが8.7秒であり、多孔度が78%であった。次に、この延伸されたポリエチレン膜を、グラビアコーティングロールを使用して個別のドットパターンで適用された非透水性ポリウレタン接着剤を使用して、ポリエステル布(Nanyaから入手可能、物品番号J47P)にラミネートした。ポリウレタン接着剤は、膜表面積の約35%を覆っていた。次に、このラミネートをロール形態で2日間硬化させた。
【0092】
次に、この2層(2L)ラミネートにおける膜に、熱活性化硬化剤を含む17gsmの親水性ポリウレタンプレポリマー混合物をグラビアコーティングした。次に、ポリウレタンでコーティングされたラミネートを約20秒間赤外線オーブンに通して硬化剤を活性化し、ポリウレタンを架橋してタックのない表面を生成した。次に、フィルムをロールに巻いた。ポリウレタンでコーティングされたラミネートのロールを、ロールの形態で2日間完全に硬化するまで放置した。次に、この完全に硬化したラミネートサンプルの一部を、それぞれ155℃の表面温度に維持された一連の3つのクロムロール上に走行させることによって加熱した。クロムロール上のラミネートの総滞留時間は22秒であった。
【0093】
クロムロール上の最終熱処理を受けなかったラミネートと、熱処理を受けたラミネートのサンプルを、ノイズ試験に送った。快適性の専門家は、熱処理されていないラミネートと熱処理されたラミネートのノイズの違いを識別し、熱処理されたラミネートが熱処理されていないラミネートと比較してノイズが少ないことを決定することができた。
【0094】
例2
【0095】
重量平均分子量769,000グラム/モルである厚さ30マイクロメートルのポリエチレン膜(Gelon LIB Co., Ltd、中国から入手可能)を機械方向(MD)に2.25:1で延伸し、次に横断方向(TD)に9:1で延伸した。得られた多孔質ポリエチレン膜は、単位面積あたりの質量が2.1gsmであり、厚さが10ミクロンであり、ガーレーが8.7秒であり、多孔度が78%であった。次に、この多孔質ポリエチレン膜を、熱活性化硬化剤を含む16.6gsmの親水性ポリウレタンプレポリマー混合物でグラビアコーティングした。次に、ポリウレタンでコーティングされた膜を赤外線オーブンに約20秒間送って硬化剤を活性化し、ポリウレタンを架橋してタックのない表面を生成した。次に、フィルムをロールに巻いた。ポリウレタンコーティングされたフィルムのロールを、ロール形態で2日間完全に硬化するために放置された。この完全に硬化したフィルムの一部を木製のフープにクランプし、次いで、対流式オーブンにおいて170℃で2分間加熱した。
【0096】
ポリウレタンコーティングされたフィルムのサンプルを、熱処理工程の前後にDSCによって分析した。熱処理されていないフィルムは、139.6℃を中心とする1つの吸熱ポリエチレンピークのみを示した。熱処理されたフィルムは、131.0℃を中心とする吸熱ポリエチレンピークを示した。
【0097】
例3
【0098】
重量平均分子量769,000グラム/モルである厚さが30ミクロンのポリエチレン膜(Gelon LIB co., Ltd、中国から入手可能)をMD 1.5:1で延伸し、次にTD5:1で延伸した。得られたポリエチレン膜は質量が4.1gsmであり、厚さが13.9ミクロンであり、ガーレーが32.7秒であり、多孔度が69%であった。次に、この延伸されたポリエチレン膜を、グラビアコーティングロールを使用して個別のドットパターンで適用された非透水性ポリウレタン接着剤を使用して、ポリエステル布(Nanyaから購入、物品番号J47P)にラミネートした。ポリウレタン接着剤は、膜表面積の約35%を覆っていた。次に、この2層ラミネートをロール形態で2日間硬化させた。
【0099】
次に、この2Lラミネートにおける膜に、熱活性化硬化剤を含む13gsmの親水性ポリウレタンプレポリマー混合物をグラビアコーティングした。次に、ポリウレタンでコーティングされたラミネートを約20秒間赤外線オーブンに通して硬化剤を活性化し、ポリウレタンを架橋してタックのない表面を生成した。次に、表面硬化したフィルムをロールに巻いた。ポリウレタンでコーティングされたラミネートのロールを、ロールの形態で2日間完全に硬化するまで放置した。次に、この完全に硬化したラミネートサンプルの一部を、それぞれ155℃の表面温度に維持された一連の3つのクロムロール上で走行させることによって加熱した。クロムロール上のラミネートの総滞留時間は22秒であった。
【0100】
クロムロール上の最終熱処理を受けなかったラミネートと、熱処理を受けたラミネートのサンプルをノイズ試験に送った。快適性の専門家は、熱処理されていないラミネートと熱処理されたラミネートのノイズの違いを識別し、熱処理されたラミネートが熱処理されていないラミネートと比較してノイズが少ないことを決定することができた。
【0101】
例4
【0102】
重量平均分子量が769,000グラム/モルである厚さが30ミクロンのポリエチレン膜(Gelon LIB co., Ltd、中国から入手可能)をMD1.5:1で延伸し、次にTD5:1で延伸した。得られたポリエチレン膜は質量が4.1gsmであり、厚さが13.9ミクロンであり、ガーレーが32.7秒であり、多孔度が69%であった。次に、ロールコーティング装置を使用して、ポリエチレン膜を17gsmの湿分硬化親水性ポリウレタンプレポリマー混合物でコーティングした。コーティングは、ポリエチレン膜の表面全体にわたって連続的かつ均一であった。同じ処理シーケンスにおいて、例1で使用したのと同じタイプのポリエステル布(Nanyaから入手可能、物品番号J47P)を、布が未硬化のポリウレタン混合物に押し付けられるようにして、布及びコーティングされた膜を2つの隣接するクロムロールの間に供給することにより、PE膜のコーティングされた面にラミネートした。次に、ラミネートをロール形態で2日間硬化させた。次に、このラミネートサンプルの一部を、それぞれ155℃の表面温度に維持された一連の3つのクロムロール上で走行させることによって加熱した。クロムロール上のラミネートの総滞留時間は22秒であった。
【0103】
クロムロール上の最終熱処理を受けなかったラミネートと、熱処理を受けたラミネートのサンプルを、ノイズ試験に送った。快適性の専門家は、熱処理されていないラミネートと、熱処理されたラミネートのノイズの違いを識別し、熱処理されたラミネートが熱処理されていないラミネートと比較してノイズが少ないことを決定することができた。
【0104】
例5
【0105】
質量が4.0gsmであり、重量平均分子量が3.15×106グラム/モルであり、多孔度67%であり、ガーレー数が68秒である多孔質ポリエチレン膜を、湿分硬化性ポリウレタン接着剤を使用して布にラミネートした。ラミネートを周囲温度で2日間硬化させた。次に、ラミネートを17gsmの親水性ポリウレタンプレポリマー混合物でコーティングした。ロール上で2日間硬化させた後に、フィルムを含むラミネートの一部を、表面温度155℃のクロムロール上でそれを走行させるすることによって熱処理した。ホットロール表面上でのフィルムの滞留時間は15.7秒であった。
【0106】
ノイズを分析すると、熱処理されていないラミネートと比較して、熱処理されたラミネートのノイズの減少が確認された。
【0107】
例6
【0108】
質量が4.0gsmであり、重量平均分子量が3.15×106グラム/モルであり、多孔度が67%であり、ガーレー数が68秒である多孔質ポリエチレン膜を、湿分硬化性ポリウレタン接着剤を使用して布にラミネートした。ラミネートを周囲温度で2日間硬化させた。次に、ラミネートを13gsmの親水性ポリウレタンプレポリマー混合物でコーティングした。ロール上で2日間硬化させた後に、フィルムを含むラミネートの一部を、表面温度155℃のクロムロール上でそれを走行させることによって熱処理した。ホットロール表面上でのフィルムの滞留時間は15.7秒であった。
【0109】
ノイズを分析したところ、熱処理されていないラミネートと比較して、熱処理されたラミネートのノイズの減少が確認された。
【0110】
例7
【0111】
質量が2.4gsmであり、重量平均分子量が7.84×106グラム/モルであり、多孔度が61%であり、ガーレー数が59.5秒である多孔質ポリエチレン膜を13gsmの親水性ポリウレタンプレポリマー混合物でコーティングした。ロール上で2日間硬化させた後に、湿分硬化性ポリウレタン接着剤を使用してフィルムを布にラミネートした。このラミネートの一部を、x-y方向に拘束するために木製のフープでクランプすることによって熱処理した。ラミネートを、165℃の温度に設定された対流式オーブン内に2分間配置した。
【0112】
ノイズを分析したところ、熱処理されていないラミネートと比較して、熱処理されたラミネートのノイズの減少が確認された。熱処理されていないサンプルのDSCは、139.7℃のポリエチレン吸熱ピークを示した。熱処理されたサンプルのDSCは、132.2℃のポリエチレン吸熱ピークを示した。
【0113】
例8
【0114】
質量が2.4gsmであり、重量平均分子量が7.84×106グラム/モルであり、多孔度が63%であり、ガーレー数が59.5秒である多孔質ポリエチレン膜を、該ポリエチレン膜の第一の面上で、ロールコーティング装置を使用して6.5gsmの湿分硬化性親水性ポリウレタンプレポリマー混合物でコーティングした。コーティングは、ポリエチレン膜の表面全体にわたって連続的かつ均一であった。同じ処理シーケンスで、ナイロンの丸編み布を、布を未硬化のポリウレタン混合物に押し付けるようにして、布とコーティングされた膜を2つの隣接するクロムロールの間に供給することにより、PE膜のポリウレタンコーティングされた面にラミネートした。次に、ラミネートをロール形態で2日間硬化させた。次に、この2層ラミネートを、グラビアコーティングロールを使用して個別のドットパターンで適用された非透水性ポリウレタン接着剤を使用してナイロン織布にラミネートした。織布をポリエチレン膜の第二の面にラミネートした。ポリウレタン接着剤は、膜表面積の約35%を覆っていた。次に、この3層ラミネートをロール形態で2日間硬化させた。
【0115】
次に、このラミネートサンプルの一部を、それぞれ160℃の表面温度に維持された一連の3つのクロムロール上で走行させることによって加熱した。クロムロール上のラミネートの総滞留時間は20秒であった。
【0116】
クロムロール上の最終熱処理を受けなかったラミネートと、熱処理を受けたラミネートのサンプルをノイズ試験に送った。快適性の専門家は、熱処理されていないラミネートと熱処理されたラミネートのノイズの違いを識別し、熱処理されたラミネートが熱処理されていないラミネートと比較してノイズが少ないことを確認することができた。
【0117】
熱処理されたラミネートと熱処理されていないラミネートの両方からのフィルムを、2つの布層を剥がすことによって取り外した。これらの熱処理されていないフィルム及び熱処理されたフィルムのサンプルをDSC分析に送った。
図5は、両方のフィルムのDSC曲線を示している。このプロットには、参考のために135℃の垂直線がある。熱処理されていないフィルムは、139.88℃でポリエチレン吸熱ピークを示す。この曲線には、105.39℃の吸熱ピークも含まれている。この105.39℃の吸熱ピークは、複合フィルム表面上の非透水性ポリウレタン接着剤の残留物に起因し、ポリエチレンに起因しない。この非透水性ポリウレタン接着剤の独立DSC分析は、105.4℃に吸熱ピークを示す。熱処理されたフィルムは、132.05℃に1つ及び151.43℃に1つの2つのポリエチレン吸熱ピークを示す。151.43℃のピークは、熱処理中に溶融しなかった元の結晶性ポリエチレン構造の部分を表す。132.05℃の吸熱ピークは、熱処理中に溶融して再結晶したポリエチレンの部分を表す。
【0118】
比較A
【0119】
コロンビアオムニドライピーク2ピーク防水性ジャケット(コロンビアスポーツウェアカンパニー)を購入した。この衣料品は3Lラミネートであり、ポリエチレン膜にラミネートされた外側織物テキスタイル及び内側編物テキスタイルを含んだ。サンプルの内側布部分は比較的軽量のニットであった。ジャケットの一部を切り取り、その部分を木製の布製フープにクランプした。サンプルを、165℃の温度に加熱したオーブンに2分間入れた。2分後に、サンプルを取り出して放冷した。熱処理されたサンプルと熱処理されていない対照サンプルの両方のニット面を光学顕微鏡で観察した。熱処理されたサンプルは、膜が穴を含んでいる(内側編布を通して見える)ことを示した。熱処理されていない対照サンプルには穴は見られなかった。