(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040210
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】作業時間計測システム、及び作業時間計測方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240315BHJP
G04F 10/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G06Q50/04
G04F10/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007971
(22)【出願日】2024-01-23
(62)【分割の表示】P 2019032078の分割
【原出願日】2019-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜 靖典
(57)【要約】
【課題】計測された作業時間の正確性を向上する。
【解決手段】作業時間計測システムは、対象物特定部(20)によって特定されたゾーン(Z)と、作業者特定部(50)によって特定された作業スペース(S)とが対応すると判定された時間を少なくとも作業時間として計測する作業時間計測部(60)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(W)がライン(L)上の複数のゾーン(Z)を流れるとともに、該ゾーン(Z)に対応する作業スペース(S)で作業者(O)が作業を行う生産ラインにおいて、作業者(O)の作業時間を計測する作業時間計測システムであって、
前記対象物(W)がどのゾーン(Z)に存在するかを特定する対象物特定部(20)と、
前記複数の作業スペース(S)を含む撮像範囲の画像データを取得する撮像装置(30)と、
前記撮像装置(30)で取得した画像データに基づいて作業者(O)がどの作業スペース(S)に存在するかを特定する作業者特定部(50)と、
前記対象物特定部(20)によって特定されたゾーン(Z)と、前記作業者特定部(50)によって特定された作業スペース(S)とが対応すると判定された時間を少なくとも前記作業時間として計測する作業時間計測部(60)とを備えていることを特徴とする作業時間計測システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記作業時間計測部(60)は、1つの対象物(W)に対して計測した前記作業時間の合計を、該対象物(W)の総作業時間として算出することを特徴とする作業時間計測システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記作業者特定部(50)は、
前記画像データに、前記複数の作業スペース(S)にそれぞれ対応する複数のエリア(A)を設定するエリア設定部(51)と、
前記各エリア(A)に作業者(O)が存在するかを判定する判定部(52)とを備えることを特徴とする作業時間計測システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記作業者特定部(50)は、前記エリア(A)の大きさ、位置、形状、数の少なくとも1つを変更可能なエリア変更部(53)を備えることを特徴とする作業時間計測システム。
【請求項5】
請求項4において、
対象物(W)の機種を識別する機種識別部(22)を備え、
前記作業者特定部(50)は、前記機種識別部(22)で識別した機種に応じて、前記エリア(A)の大きさ、位置、形状、数の少なくとも1つを変更することを特徴とする作業時間計測システム。
【請求項6】
対象物(W)がライン(L)上の複数のゾーン(Z)を流れるとともに、該ゾーン(Z)に対応する作業スペース(S)で作業者(O)が作業を行う生産ラインにおいて、作業者(O)の作業時間を計測する作業時間計測方法であって、
対象物(W)がどのゾーン(Z)に存在するかを特定するステップと、
複数の作業スペース(S)を含む撮像範囲の画像データを取得するステップと、
前記画像データに基づいて作業者(O)がどの作業スペース(S)に存在するかを特定するステップと、
対象物(W)が存在すると特定されたゾーン(Z)と、作業者(O)が存在すると特定された作業スペース(S)とが対応すると判定された時間を少なくとも前記作業時間として計測するステップとを含むことを特徴とする作業時間計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業時間計測システム、及び作業時間計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産ラインにおける作業者の作業時間を計測する装置がある。例えば特許文献1では、CCDカメラで作業者を撮像し、取得した画像データに基づき作業者の作業時間を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物(いわゆるワーク)がライン上の複数のゾーンを流れる生産ラインでは、複数のゾーンに対応するように複数の作業スペースが設けられる。つまり、このような生産ラインでは、作業者が複数のスペースを行き来しながら、対象物に対して所定の作業を行う。このような生産ラインにおいて、特許文献1のように作業者を撮像装置によって撮像し、作業時間を計測する場合、作業時間を正確に計測できない可能性がある。具体的には、例えば撮像装置によって作業者があるスペースにいることが特定されたとしても、この作業スペースに対応するゾーンに対象物が到着していない場合、作業者は作業の待ち状態となる。それにも拘わらず、この状態の画像データに基づき作業者が作業を行っていると判定されると、計測された作業時間と実際の作業時間との間に誤差が生じてしまう。
【0005】
本開示は、計測された作業時間の正確性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、対象物(W)がライン(L)上の複数のゾーン(Z)を流れるとともに、該ゾーン(Z)に対応する作業スペース(S)で作業者(O)が作業を行う生産ラインにおいて、作業者(O)の作業時間を計測する作業時間計測システムであって、前記対象物(W)がどのゾーン(Z)に存在するかを特定する対象物特定部(20)と、前記複数の作業スペース(S)を含む撮像範囲の画像データを取得する撮像装置(30)と、前記撮像装置(30)で取得した画像データに基づいて作業者(O)がどの作業スペース(S)に存在するかを特定する作業者特定部(50)と、前記対象物特定部(20)によって特定されたゾーン(Z)と、前記作業者特定部(50)によって特定された作業スペース(S)とが対応すると判定された時間を少なくとも前記作業時間として計測する作業時間計測部(60)とを備えていることを特徴とする作業時間計測システムである。
【0007】
第1の態様では、対象物特定部(20)によって対象物が存在するゾーン(Z)が特定されたタイミングにおいて、特定されたゾーン(Z)に対応する作業スペース(S)に作業者(O)が存在することが撮像装置(30)で取得した画像データに基づき特定されると、この時間が作業時間として計測される。これにより、作業者(O)がある作業スペース(S)に存在するが、対応するゾーン(Z)に対象物(W)が存在しない状態において、この状態の時間が誤って作業時間として計測されることを抑制できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記作業時間計測部(60)は、1つの対象物(W)に対して計測した前記作業時間の合計を、該対象物(W)の総作業時間として算出することを特徴とする作業時間計測システムである。
【0009】
第2の態様では、1つの対象物(W)に対し、各ゾーン(Z)ないし各作業スペース(S)で計測した作業時間の合計が算出されることで、1つの対象物(W)に対して要した総作業時間を得ることができる。
【0010】
第3の態様は、第1又は2の態様において、前記作業者特定部(50)は、前記画像データに、前記複数の作業スペース(S)にそれぞれ対応する複数のエリア(A)を設定するエリア設定部(51)と、前記各エリア(A)に作業者(O)が存在するかを判定する判定部(52)とを備えることを特徴とする作業時間計測システムである。
【0011】
第3の態様では、解析処理上の画像データを、複数の作業スペース(S)に対応するエリア(A)に区分することで、作業者(O)がどの作業スペース(S)にいるかの判定の精度を向上できる。
【0012】
第4の態様は、第3の態様において、作業者特定部(50)は、前記エリア(A)の大きさ、位置、形状、数の少なくとも1つを変更可能なエリア変更部(53)を備えることを特徴とする作業時間計測システムである。
【0013】
第4の態様では、実際の作業スペース(S)の大きさ、位置、形状、数などが変更されたとしても、これに対応するように、画像データにおけるエリア(A)の大きさ、位置、形状、数を変更できる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様において、対象物(W)の機種を識別する機種識別部(22)を備え、前記作業者特定部(50)は、前記機種識別部(22)で識別した機種に応じて、前記エリア(A)の大きさ、位置、形状、数の少なくとも1つを変更することを特徴とする作業時間計測システムである。
【0015】
第5の態様では、対象物(W)の機種が変わることに起因して、作業スペース(S)の大きさ、位置、形状、数などが変更されると、このことに追従するように画像データにおけるエリア(A)の大きさ、位置、形状、数が自動的に変更される。
【0016】
第6の態様は、対象物(W)がライン(L)上の複数のゾーン(Z)を流れるとともに、該ゾーン(Z)に対応する作業スペース(S)で作業者(O)が作業を行う生産ラインにおいて、作業者(O)の作業時間を計測する作業時間計測方法であって、対象物(W)がどのゾーン(Z)に存在するかを特定するステップと、複数の作業スペース(S)を含む撮像範囲の画像データを取得するステップと、前記画像データに基づいて作業者(O)がどの作業スペース(S)に存在するかを特定するステップと、対象物(W)が存在すると特定されたゾーン(Z)と、作業者(O)が存在すると特定された作業スペース(S)とが対応すると判定された時間を少なくとも前記作業時間として計測するステップとを含むことを特徴とする作業時間計測方法である。
【0017】
第6の態様では、対象物(W)が存在すると特定されたゾーン(Z)と、作業者(O)が存在すると特定された作業スペース(S)とが対応する時間が、作業時間として計測される。これにより、作業者(O)がある作業スペース(S)に存在するが、この作業スペース(S)に対応するゾーン(Z)に対象物(W)がない状態において、この状態の時間が誤って作業時間と計測されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る生産設備のラインの周囲を拡大して模式的に表した構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る作業時間計測システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る作業時間計測システムにおける解析処理上の画像データの表示画面を表した第1の例である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る作業時間計測システムにおける解析処理上の画像データの表示画面を表した第2の例である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る作業時間計測システムにおける解析処理上の画像データの表示画面を表した第3の例である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る作業時間計測方法の概略のフローチャートである。
【
図7】
図7は、生産ラインの稼働状況のタイムチャートの具体例1である。
【
図8】
図8は、生産ラインの稼働状況のタイムチャートの具体例2である。
【
図9】
図9は、生産ラインの稼働状況のタイムチャートの具体例3である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
本実施形態に係る作業時間計測システム(10)は、生産ラインの生産管理システムに適用される。生産ラインは、1つのライン(L)に異なる機種の対象物(W)が流れる、いわゆる「他品種混合1個流し」方式である。
【0021】
図1に模式的に示すように、生産設備には、対象物(W)(ワーク)が流れるライン(L)(搬送ライン)が設けられる。ライン(L)は、例えばベルトコンベアで構成される。ライン(L)上の対象物(W)は、複数のゾーン(Z)を順に流れる。具体的に、対象物(W)は、予め決められた工程スケジュールに基づき、各ゾーン(Z)で所定時間だけ停留しながら、各ゾーン(Z)を段階的に流れていく。
図1の例では、上流側から下流側に向かって、ライン(L)上において、第1ゾーン(Z1)、第2ゾーン(Z2)、及び第3ゾーン(Z3)が設けられる。以下では、これらを単にゾーン(Z)と述べることもある。
【0022】
生産設備には、作業者(O)が作業を行うための作業スペース(S)が設けられる。本例では、ある作業者(O)に対して、第2作業スペース(S2)と第3作業スペース(S3)とが割り当てられている。以下では、これらを単に作業スペース(S)と述べることもある。第2作業スペース(S2)は、第2ゾーン(Z2)の近傍に設けられる。つまり、作業者(O)は、第2ゾーン(Z2)に対象物(W)がある場合、第2作業スペース(S2)において作業を行う。第3作業スペース(S3)は、第3ゾーン(Z3)の近傍に設けられる。作業者(O)は、第3ゾーン(Z3)に対象物(W)がある場合、第3作業スペース(S3)において作業を行う。ここでいう作業は、組立作業、検査作業、修理作業、解体作業などを含む。
【0023】
ライン(L)における下流側の作業スペース(例えば第3作業スペース(S3))の近傍には、作業完了操作部としての作業完了ボタン(21)が設けられる。作業者(O)は、ある対象物(W)に対して全ての作業(工程)が完了すると作業完了ボタン(21)を押す。すると、作業が完了した対象物(W)がその後に払い出されるとともに、次の対象物(W)がライン(L)上に送られる。なお、作業完了操作部は、作業者(O)の操作に伴って作業完了を示す信号を出力できるものであればよく、必ずしもボタンでなくてもよい。
【0024】
図1に模式的に示すように、作業時間計測システム(10)は、複数の対象物検知センサ(20)と、撮像装置(30)とを有する。対象物検知センサ(20)は、各ゾーン(Z)にそれぞれ設けられる。対象物検知センサ(20)は、各ゾーン(Z)において、対象物(W)が到着したこと、及び対象物(W)が払い出されたことを少なくとも検出する。これにより、ゾーン(Z)毎の対象物(W)の到着時刻、及び払出時刻が検出され、対象物(W)がどのゾーン(Z)に存在するか判定できる。つまり、対象物検知センサ(20)は、対象物(W)がどのゾーン(Z)に存在するかを特定する対象物特定部を構成している。なお、対象物検知センサ(20)は、磁気や電波などを利用した非接触式のセンサであることが好ましい。
【0025】
作業時間計測システム(10)は、対象物(W)の機種を識別する機種識別部(22)を有する(
図2を参照)。例えば対象物(W)を設置する台(いわゆるパレット)には、対象物(W)の機種に対応するID情報を含むICチップ、ラベル、バーコードなどが取り付けられる。機種識別部(22)は、このID情報を読み取ることで、対象物(W)の機種を特定する。機種識別部(22)の機能を対象物検知センサ(20)に組み込んでもよい。
【0026】
撮像装置(30)は、動画の撮影が可能なカメラで構成される。撮像装置(30)は、作業者(O)の複数の作業スペース(S)を撮像可能な位置に設けられる。撮像装置(30)は、複数の作業スペース(S)の連続的な画像データ(動画データ)を取得する。撮像装置(30)のレンズは、撮像領域が広い広角レンズ、魚眼レンズなどを用いたものが好ましい。本例の撮像装置(30)は、天井側に取り付けられ撮像装置(30)の下側の360°の範囲を撮像できる全方位カメラで構成される。
【0027】
図2に示すように、作業時間計測システム(10)は、PLC(40)(プログラマブルロジックコントローラ)と、生産実績データベース(41)と、画像解析サーバ(50)と、作業時間計測部(60)とを含んでいる。PLC(40)、生産実績データベース(41)、画像解析サーバ(50)、及び作業時間計測部(60)のそれぞれは、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを含む。
【0028】
PLC(40)には、生産ラインの稼働状況に関する種々の情報・信号が入力される。PLC(40)には、対象物検知センサ(20)で検出した複数のゾーン(Z)毎の到着時刻及び払出時刻も入力される。加えて、PLC(40)には、上述した作業完了ボタン(21)がONされた時刻(即ち、作業完了時刻)も入力される。PLC(40)に入力されたデータは、中継サーバ等を介して生産実績データベース(41)に記憶されていく。
【0029】
画像解析サーバ(50)には、撮像装置(30)で取得した画像データが連続的に記憶されていく。画像解析サーバ(50)は、エリア設定部(51)、判定部(52)、及びエリア変更部(53)を備えている。
【0030】
エリア設定部(51)は、解析処理上の画像データにおいて、複数のエリア(A)(
図3の太線で囲む領域)を設定する。エリア設定部(51)により設定される複数のエリア(A)は、複数の作業スペース(S)に対応する位置に設定される。
図3の例では、第2作業スペース(S2)に対応する第2エリア(A2)と、第3作業スペース(S3)に対応する第3エリア(A3)とが設定される。
【0031】
判定部(52)は、解析処理上の画像データにおいて、作業者(O)がどの作業スペース(S)に存在するかを判定する。具体的には、例えば作業者(O)があるエリア(A)内に存在する場合、判定部(52)は、作業者(O)がこのエリア(A)に対応する作業スペース(S)に存在すると判定する。例えば
図3の例では、作業者(O)が第2エリア(A2)内に作業者(O)が位置している。この場合、判定部(52)は、作業者(O)が第2作業スペース(S2)に存在すると判定する。この結果に基づき、判定部(52)は、作業者(O)がどの時間帯にどの作業スペースに存在するかを特定する。つまり、画像解析サーバ(50)は、撮像装置(30)で取得した画像データに基づいて、作業者(O)がどの作業スペース(S)に存在するかを特定する解析処理を行う作業者特定部を構成している。
【0032】
エリア変更部(53)は、撮像装置(30)で取得した画像データの解析処理において、エリア設定部(51)で設定したエリア(A)を任意に変更可能に構成される。エリア変更部(53)は、エリア(A)の大きさ、位置、形状、数の少なくとも1つを変更可能に構成される。
【0033】
具体的には、
図4に示すように、対象物(W)の機種に応じて第2作業スペース(S2)における作業者(O)の動線(
図4の一点鎖線の矢印で示す線)が変更された場合、作業者(O)の動線に対応するようにエリア(A)の大きさや形状を変更する。
【0034】
例えば
図5に示すように、対象物(W)の機種に応じてライン(L)上で対象物(W)が停留するゾーン(Z)の数が増えることがある。この場合、ゾーン(Z)に対応する作業スペース(Z)の数も増える。従って、この場合には、作業スペース(S)の数に応じてエリア(A)の数を増やす。
【0035】
なお、
図3~
図5においては、便宜上、撮像装置(30)で取得とした画像データを通常のカメラの画像として表しているが、撮像装置(30)として全方位カメラを用いた場合、画像データは略円形状となる。
【0036】
作業時間計測部(60)は、作業者(O)の実際の作業時間を計測する演算処理部である。作業時間計測部(60)は、対象物検知センサ(20)によって対象物(W)が存在すると特定されたゾーン(Z)と、画像解析サーバ(50)で作業者(O)が存在すると特定された作業スペース(S)とが対応するか否かを判定し、対応すると判定された時間を、作業者(O)の実際の作業時間として計測する。
図2の例では、作業時間計測部(60)を画像解析サーバ(50)及び生産実績データベース(41)と別ユニットとしている。しかし、作業時間計測部(60)は、画像解析サーバ(50)に組み込まれてもよいし、生産実績データベース(41)に組み込まれてもよい。
【0037】
-作業時間計測方法の概要-
作業者(O)の作業時間計測方法の手順の概要について
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
ステップST1では、対象物検知センサ(20)によってどの対象物(W)がどのゾーン(Z)に存在するかが特定される。この検知結果に基づき生産実績データベース(41)には、各ゾーン(Z)における対象物(W)の停留する時間帯(到着時刻及び払出時刻)が記憶される。
【0039】
ステップST2では、作業者(O)が存在する作業スペース(S)が特定される。つまり、画像解析サーバ(50)は、撮像装置(30)で撮像した画像データに基づき、作業者(O)がいつ/どの作業スペース(S)に存在したかを解析し、その結果を記憶する。なお、ステップST1とステップST2の順序は逆であってもよいし同時であってもよい。
【0040】
ステップST3では、作業時間計測部(60)が、ステップST1で得られた情報と、ステップST2で得られた情報とを照合する。ステップST3では、同じ時間帯において対象物(W)が存在するゾーン(Z)と、作業者(O)が存在するゾーン(Z)とが対応するかを判定する。なお、複数のゾーン(Z)と作業スペース(S)の対応関係は、予め設定されて記憶部に記憶されている。ステップST3において、両者が対応する場合、原則として、互いに重複する時間帯を作業者(O)の作業時間として計測し、そうでない場合には作業時間として計測しない。
【0041】
このようにして作業時間が適宜計測されると、作業時間計測システム(10)は、ある対象物(W)に対して計測した作業時間の合計を、この対象物(W)の総作業時間として算出する(ステップST5)。以上のようにして得られた作業時間の計測結果は、生産実績データベース(41)に適宜記憶されていく。
【0042】
-作業時間計測方法の具体例-
作業時間計測方法の具体例について更に詳細に説明する。
【0043】
〈具体例1〉
図7に示す例1は、ある作業者(O)が1つの機種の対象物(W)に対し、第2作業スペース(S2)と第3作業スペース(S3)とを行き来しながら複数の作業(工程)を行っている。
【0044】
本例では、対象物(W)が第1ゾーン(Z1)から時刻ta1において払い出され、時刻ta2において第2ゾーン(Z2)に到着している。次いで、第2ゾーン(Z2)の対象物(W)は時刻ta4において払い出される。第2ゾーン(Z2)において対象物(W)が停留する時間ないし時刻は、対象物検知センサ(20)の検出結果に基づいて求められる。
【0045】
一方、本例では、作業者(O)が時刻ta1において第3作業スペース(S3)に存在し、時刻ta3になると第2作業スペース(S2)に移動している。このような作業者(O)の位置の特定は、上述したように、撮像装置(30)で取得した画像データに基づいて行われる。
【0046】
対象物(W)が第2ゾーン(Z2)に存在する時間(時刻ta2~ta4)に着目すると、作業者(O)は、時刻ta2~ta3の間は、第2ゾーン(Z2)に対応する作業スペース(即ち、第2作業スペース(S2))にいない。従って、時刻ta2~ta3までの時間は作業者(O)の作業時間として計測されない。一方、時刻ta3~時刻ta4までの間は、作業者(O)が第2ゾーン(Z2)に対応する第2作業スペース(S2)に存在する。従って、時刻ta3~時刻ta4までの間の時間T1が、作業者(O)の作業時間として計測される。
【0047】
時刻ta4において第2ゾーン(Z2)から払い出された対象物(W)は、時刻ta6において第3ゾーン(Z3)に到着する。これに対し、作業者(O)は、時刻ta6から時刻ta8において第3ゾーン(Z3)に対応する第3作業スペース(S3)に存在する。ただし、作業者(O)は、時刻ta7において作業完了ボタン(21)を押しており、時刻ta7において既に作業が完了している。この場合、対象物(W)が第3ゾーン(Z3)にあり、且つ作業者(O)が第3作業スペース(S3)に存在する時間帯(時刻ta6~ta8)のうち、作業完了ボタン(21)が押された後の時間が除かれ、残りの時間T2(時刻ta6~ta7)が作業者(O)の作業時間として計測される。
【0048】
本例の作業時間計測部(60)は、対象物(W)があるゾーン(Z)から次のゾーン(Z)に移動する時間においても、作業時間を計測する。具体的には、本例では、時刻ta4において対象物(W)が第1ゾーン(Z1)から払い出され、その後、時刻ta6において第2ゾーン(Z2)に到着する。作業者(O)は、このような対象物(W)の移動中にも作業を行うことが多い。従って、作業時間計測部(60)は、このような対象物(W)に移動中の作業時間も考慮する。
【0049】
具体的には、本例では、対象物(W)が移動中の時間T3(時刻ta4~時刻ta6)の中間の時刻ta5を求める。ここで、対象物(W)が第2ゾーン(Z2)から払い出される時刻ta4において、作業者(O)が第2ゾーン(Z2)に対応する第2作業スペース(S2)に存在する場合、作業者(O)は、対象物(W)が時刻ta4から払い出された後も、作業を継続する可能性が高い。従って、この条件が成立する場合、対象物(W)が移動する時間T3のうちの半分の時間T4が、第2作業スペース(S2)における作業時間として加算される。逆に、対象物(W)が払い出される時刻ta4において、第2ゾーン(Z2)に対応する第2作業スペース(S2)に作業者(O)が存在しない場合、時間T4は作業時間として計測されない。
【0050】
一方、対象物(W)が時刻ta6において第3ゾーン(Z3)に到着した時刻ta6において、作業者(O)が第3ゾーン(Z3)に対応する第3作業スペース(S3)に存在する条件が成立する場合、対象物(W)が移動する時間T3のうちの半分の時間T5が、第3作業スペース(S3)における作業時間として加算される。逆に、対象物(W)が到着した時刻ta6において、第3ゾーン(Z3)に対応する第3作業スペース(S3)に作業者(O)が存在しない場合、時間T5は作業時間として計測されない。
【0051】
以上のように、本例の作業時間計測部(60)は、対象物(W)があるゾーン(Z)から次のゾーン(Z)に移動するまでの時間を、対象物(W)の移動直前及び移動直後の各ゾーン(Z)に対応する作業スペース(S)の作業者(O)の有無に応じて作業時間として計測するように構成される。
【0052】
作業時間計測部(60)は、画像解析サーバ(50)及び生産実績データベース(41)に記憶された上記の各時刻に基づいて、各作業時間を計測する。
図7に示す例では、第2作業スペース(S2)での作業時間がT1及びT4の合計となる。第3作業スペース(S3)での作業時間はT2及びT5の合計となる。更に、本例の対象物(W)における作業者(O)の総作業時間は、第2作業スペース(S2)の作業時間(T1+T4)と、第3作業スペース(S3)の作業時間(T2+T5)の合計として計測される。これらの作業時間は、機種識別部(22)で識別された対象物(W)の機種毎に計測される。また、生産実績データベース(41)に作業者(O)のID情報を入力することで、作業者(O)毎の作業時間も計測できる。
【0053】
〈具体例2〉
図8に示す例2は、ある作業者(O)が1つの機種の対象物(W)に対し、実質的に第3作業スペース(S3)のみで作業を行っている。
【0054】
本例では、対象物(W)が第1ゾーン(Z1)から時刻tb1において払い出され、時刻tb2にいて第2ゾーン(Z2)に到着している。対象物(W)が第2ゾーン(Z2)に停留する時刻tb2~時刻tb3において、作業者(O)は第2ゾーン(Z2)に対応しない第3作業スペース(S3)にいる。従って、時刻tb2~時刻tb3の時間は作業時間として計測されない。
【0055】
対象物(W)が時刻tb4において第3ゾーン(Z3)に到着すると、第3作業スペース(S3)の作業者(O)が作業を行う。作業者(O)は、時刻tb6において作業完了ボタン(21)を押す。従って、時刻tb4~時刻tb6までの時間が作業時間として計測される。
【0056】
対象物(W)が第2ゾーン(Z2)から第3ゾーン(Z3)に移動する時間T7においては、その中間の時刻tb5から時刻tb4までの時間T8が、第3作業スペース(S3)での作業者(O)の作業時間として加算される。
【0057】
作業時間計測部(60)は、画像解析サーバ(50)及び生産実績データベース(41)に記憶された上記の各時刻に基づいて、各作業時間を計測する。
図8に示す例では、第3作業スペース(S2)での作業時間がT8とT6の合計となり、この時間が対象物(W)の総作業時間となる。
【0058】
〈具体例3〉
図9に示す例3では、対象物(W)として異なる種類の2つの機種A、機種Bがライン(L)上を流れている。作業時間計測部(60)は、対象物(W)の機種毎にそれぞれ作業時間を計測する。なお、
図9の例の説明においても、上述した具体例1や2と同様、対象物(W)の移動中の時間も作業時間として考慮されるが、以下では、その詳細な説明は省略する。
【0059】
本例では、機種Aが第3ゾーン(Z3)に存在する時間帯においては、作業者(O)がTa1及びTa2の時間帯において第3作業スペース(S3)に存在する。従って、機種Aの総作業時間は、Ta1とTa2の合計である。
【0060】
一方、機種Bが第2ゾーン(Z2)に存在する時間帯においては、作業者(O)がTb1及びTb2の時間帯において第2作業スペース(S2)に存在する。加えて、機種Bが第3ゾーン(Z3)に存在する時間帯においては、作業者(O)がTb3の時間帯において第3作業スペース(S3)に存在する。従って、機種Bの総作業時間は、Tb1とTb2とTb3の合計である。
【0061】
-実施形態の効果-
実施形態では、対象物(W)がライン(L)上の複数のゾーン(Z)を流れるとともに、該ゾーン(Z)に対応する作業スペース(S)で作業者(O)が作業を行う生産ラインにおいて、作業者(O)の作業時間を計測する作業時間計測システムであって、前記対象物(W)がどのゾーン(Z)に存在するかを特定する対象物特定部(20)(対象物検知センサ(20))と、前記複数の作業スペース(S)を含む撮像範囲の画像データを取得する撮像装置(30)と、前記撮像装置(30)で取得した画像データに基づいて作業者(O)がどの作業スペース(S)に存在するかを特定する解析処理を行う作業者特定部(50)(画像解析サーバ(50))と、前記対象物特定部(20)によって対象物(W)が存在すると特定されたゾーン(Z)と、前記作業者特定部(50)によって作業者(O)が存在すると特定された作業スペース(S)とが対応するか否かを判定し、対応すると判定された時間を少なくとも前記作業時間として計測する作業時間計測部(60)とを備えている。
【0062】
このため、作業者(O)はある作業スペース(S)に存在するが、対象物(W)が対応するゾーン(Z)に到着していない状態において、この状態が作業時間として計測されることを回避できる。つまり、対象物(W)と作業者(O)とが互いに対応するタイミングを作業時間として計測するため、作業者(O)の作業時間を正確に検出できる。
【0063】
このようにして得られた作業者(O)、対象物(W)、機種などに応じた作業時間を正確に検出することで、生産ラインの各工程を正確に見直すことができ、生産効率を向上できる。
【0064】
作業者(O)の検知は撮像装置(30)で取得した画像データに基づいて行われる。この画像データにより、作業者(O)の位置だけでなく作業者(O)がどのような作業を行っているかを具体的に確認でき、作業内容等の改善を図ることができる。撮像装置(30)は、作業者(O)の位置を検知する手段と、作業内容を確認する手段とを兼用しているため、部品点数を削減できる。
【0065】
実施形態では、前記作業時間計測部(60)が、1つの対象物(W)に対して計測した前記作業時間の合計を、該対象物(W)の総作業時間として算出する。これにより、対象物(W)の総作業時間を把握することができ、生産ラインの各工程を見直すことができる。
【0066】
実施形態では、前記作業者特定部(50)が、前記解析処理上の前記画像データに、前記複数の作業スペース(S)にそれぞれ対応する複数のエリア(A)を設定するエリア設定部(51)と、前記各エリア(A)に作業者(O)が存在するかを判定する判定部(52)とを備える。画像データに各作業スペース(S)に対応するエリア(A)を設定することで、作業者(O)がどの作業スペース(S)にいるかの判定精度を向上できる。エリア(A)外のデータは、解析対象から外れるため、解析処理の効率を向上できる。
【0067】
具体的には、従来例のように、解析処理において作業者が手を挙げる等の特徴的な画像データを判断し、このことに基づき作業者を検知することも可能である。この場合、作業者の特徴的な動きを抽出できない場合、あるいは作業者がその動きを行わない場合、作業者を確実に検出できない可能性がある。本実施形態の解析処理では、作業者(O)がエリア(A)内に存在することを判断するだけでよく、作業者(O)の動きまで判断する必要がない。従って、作業者(O)の検出精度を向上できる。
【0068】
実施形態では、作業者特定部(50)は、前記エリア(A)の大きさ、位置、形状、数の少なくとも1つを変更可能なエリア変更部(53)を備える。これにより、
図3~
図5に示すように、生産ラインの工程の変更、ライン(L)のレイアウトの変更、作業スペース(S)の変更、対象物(W)の機種の変更などに応じて、最適なエリア(A)を適宜形成できる。この結果、このような変化に対応しながら、作業者(O)の検知精度を向上できる。
【0069】
-変形例-
上記実施形態の画像解析サーバ(50)は、対象物(W)の機種に応じて、
図3~
図5に示すような各エリア(A)を自動的に変更するように構成されてもよい。つまり、画像解析サーバ(50)の記憶部には、対象物(W)の機種に応じた最適なエリア(A)が機種毎に予め記憶される。この最適なエリア(A)は、該エリア(A)の大きさ、位置、形状、数の少なくとも1つを変更パラメータとして含む。画像解析サーバ(50)は、機種識別部(22)で特定した機種に応じて、解析処理上の画像データのエリアを、記憶部に記憶された最適なエリアに変更する。つまり、画像解析サーバ(50)は、機種識別部(22)で識別した機種に応じて、エリア(A)の大きさ、位置、形状、数の少なくとも1つを変更する。
【0070】
例えば対象物(W)の機種が変更されると、作業者(O)の作業内容が変化し、該作業者(O)の作業スペース(S)が変化する。変形例では、このような変化に追従するようにエリア(A)が自動的に変更されるため、作業者(O)がどの作業スペース(S)に存在するかの判定精度を向上できる。この際、対象物(W)の機種に応じて、手動操作によりエリア(A)を変更する必要もない。
【0071】
《その他の実施形態》
上記実施形態では、解析処理上の画像データにエリア(A)を設定し、このエリア(A)内に作業者(O)がいるか否かで作業者(O)の位置を特定している。しかし、画像データのエリア(A)を設定せず、該画像データに基づき作業者(O)がどの作業スペース(S)にいるかを判定するようにしてもよい。
【0072】
上記実施形態では、対象物(W)の移動中の時間を作業時間の判定対象としているが、この移動中の時間を作業時間の判定対象から外してもよい。
【0073】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示は、作業時間計測システム及び作業時間計測方法について有用である。
【符号の説明】
【0075】
10 作業時間計測システム
20 対象物検知センサ(対象物特定部)
22 機種識別部
30 撮像装置
50 画像解析サーバ(作業者特定部)
51 エリア設定部
52 判定部
53 エリア変更部
60 作業時間計測部
A エリア
L ライン
O 作業者
S スペース
W 対象物
Z ゾーン