(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040215
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜、合わせガラス、及びガラス構成体
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240315BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240315BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240315BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240315BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240315BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240315BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20240315BHJP
C08K 5/08 20060101ALI20240315BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240315BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C03C27/12 N
C03C27/12 L
G02B5/00 A
B32B17/10
B32B7/023
B32B27/18 Z
C08K3/04
C08K5/3415
C08K5/08
C08K3/22
C08L29/14
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009000
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2019554711の分割
【原出願日】2019-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2018156650
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】野原 敦
(72)【発明者】
【氏名】岡島 萌
(72)【発明者】
【氏名】張 錦良
(57)【要約】
【課題】太陽光を長期間浴び続けることにより生じる灼熱感を効果的に低減できる合わせガラス用中間膜を提供する。
【解決手段】本発明の合わせガラス用中間膜は、JIS R 3106に準拠した日射透過率が87.3%の2枚のクリアガラス板を用いて合わせガラスを作製した際に、前記合わせガラスの皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%以下となる吸収領域を少なくとも有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS R 3106に準拠した日射透過率が87.3%の2枚のクリアガラス板を用いて合わせガラスを作製した際に、前記合わせガラスの皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%以下となる吸収領域を少なくとも有する、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記合わせガラスの可視光線透過率(X2)が70%未満となり、かつ皮膚吸収エネルギー率(X1)が15%以下となる遮光性吸収領域を有する、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記遮光性吸収領域において、遮熱剤及び着色剤の両方を含有する請求項2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
着色剤を含有し、前記着色剤が、炭素系材料と、炭素系材料以外のその他の色素とを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記可視光線透過率(X2)が70%以上となり、かつ前記皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%以下となる透過性吸収領域を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記透過性吸収領域において、遮熱剤を含有する請求項5に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
2枚のガラス板と、前記2枚のガラス板の間に配置される合わせガラス用中間膜とを備え、合わせガラスの皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%以下となる、ガラス吸収領域を少なくとも有する、合わせガラス。
【請求項8】
合わせガラスの可視光線透過率(Y2)が70%未満となり、かつ前記皮膚吸収エネルギー率(Y1)が15%以下となるガラス遮光性吸収領域を有する、請求項7に記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記ガラス遮光性吸収領域において、前記合わせガラス用中間膜が、遮熱剤及び着色剤の両方を含有する請求項8に記載の合わせガラス。
【請求項10】
前記ガラス遮光性吸収領域において、前記合わせガラス用中間膜が、着色剤を含有し、前記着色剤が、炭素系材料と、炭素系材料以外のその他の色素とを含む請求項8又は9に記載の合わせガラス。
【請求項11】
前記可視光線透過率(Y2)が70%以上となり、かつ前記皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%以下となるガラス透過性吸収領域を有する、請求項7~10のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項12】
前記ガラス透過性吸収領域において、前記合わせガラス用中間膜が、遮熱剤を含有する請求項11に記載の合わせガラス。
【請求項13】
ガラス構成体の皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%以下となるガラス吸収領域を少なくとも有する、ガラス構成体。
【請求項14】
ガラス板を含み、前記ガラス板の皮膚吸収エネルギー率が25%以下である請求項13に記載のガラス構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス用中間膜、及び合わせガラスなどのガラス構成体に関して、例えば自動車などで使用される合わせガラス用中間膜、及び合わせガラスなどのガラス構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の各種乗り物の窓ガラスや、建築物等の窓ガラスに広く使用されている。合わせガラスとしては、一対のガラス間に、ポリビニルアセタール樹脂などの樹脂成分を含む合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させたものが広く知られている。
【0003】
自動車や建築物の窓ガラスに使用される合わせガラスは、自動車内部や建築物内部が高温になりすぎることを防止するために遮熱性を向上させることが求められている。そのため、従来、合わせガラス用中間膜を、第1及び第2の層と、それらの間に配置される赤外線反射層とを備える構成にし、赤外線反射層により赤外線を反射させて、遮熱性を高めることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、合わせガラス用中間膜は、特許文献2に示されるように、熱可塑性樹脂と、錫ドープ酸化インジウム粒子と、金属ドープ酸化タングステン粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の化合物とを含むものも知られている。特許文献2の合わせガラス用中間膜は、これら粒子及び化合物が使用されることで、赤外線遮蔽率を高めて、赤外線を浴びることにより感じるじりじり感が抑制されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2014/021407号
【特許文献2】特開2017-119626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、乗り物のボディ、建築物の外壁などにおいて窓ガラスが占める割合は、年々大きくなる傾向にあり、例えば、自動車の車体の大部分を窓ガラスが占めるものも検討されている。そのため、自動車の乗員等は、窓ガラスを介して太陽光を長期間浴びやすくなり、灼熱感を感じることがある。灼熱感とは、光により肌が熱くなってひりひりする痛みを感じることである。しかし、従来の合わせガラス用中間膜においては、灼熱感を低減させることが十分に考慮されておらず、灼熱感を効果的に低減できるとはいえない。
【0007】
そこで、本発明は、太陽光を長期間浴び続けることにより生じる灼熱感を効果的に低減することができる合わせガラス用中間膜、及び合わせガラスなどのガラス構成体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、灼熱感の感じ方は、皮膚が太陽光を吸収する割合で示される皮膚吸収エネルギー率に密接に関係することを見出した。そして、さらに検討の結果、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスなどのガラス構成体の皮膚吸収エネルギー率を低減することで、合わせガラスなどのガラス構成体を介して太陽光を浴び続けることで感じる灼熱感を効果的に低減できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1]JIS R 3106に準拠した日射透過率が87.3%の2枚のクリアガラス板を用いて合わせガラスを作製した際に、前記合わせガラスの皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%以下となる吸収領域を少なくとも有する、合わせガラス用中間膜。
[2]前記合わせガラスの可視光線透過率(X2)が70%未満となり、かつ皮膚吸収エネルギー率(X1)が15%以下となる遮光性吸収領域を有する、上記[1]に記載の合わせガラス用中間膜。
[3]前記遮光性吸収領域において、遮熱剤及び着色剤の両方を含有する上記[2]に記載の合わせガラス用中間膜。
[4]着色剤を含有し、前記着色剤が、炭素系材料と、炭素系材料以外のその他の色素とを含む上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[5]前記可視光線透過率(X2)が70%以上となり、かつ前記皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%以下となる透過性吸収領域を有する、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[6]前記透過性吸収領域において、遮熱剤を含有する上記[5]に記載の合わせガラス用中間膜。
[7]2枚のガラス板と、前記2枚のガラス板の間に配置される合わせガラス用中間膜とを備え、合わせガラスの皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%以下となる、ガラス吸収領域を少なくとも有する、合わせガラス。
[8]合わせガラスの可視光線透過率(Y2)が70%未満となり、かつ前記皮膚吸収エネルギー率(Y1)が15%以下となるガラス遮光性吸収領域を有する、上記[7]に記載の合わせガラス。
[9]前記ガラス遮光性吸収領域において、前記合わせガラス用中間膜が、遮熱剤及び着色剤の両方を含有する上記[8]に記載の合わせガラス。
[10]前記ガラス遮光性吸収領域において、前記合わせガラス用中間膜が、着色剤を含有し、前記着色剤が、炭素系材料と、炭素系材料以外のその他の色素とを含む上記[8]又は[9]に記載の合わせガラス。
[11]前記可視光線透過率(Y2)が70%以上となり、かつ前記皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%以下となるガラス透過性吸収領域を有する、上記[7]~[10]のいずれか1項に記載の合わせガラス。
[12]前記ガラス透過性吸収領域において、前記合わせガラス用中間膜が、遮熱剤を含有する上記[11]に記載の合わせガラス。
[13]ガラス構成体の皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%以下となるガラス吸収領域を少なくとも有する、ガラス構成体。
[14]ガラス板を含み、前記ガラス板の皮膚吸収エネルギー率が25%以下である上記[13]に記載のガラス構成体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜、合わせガラス及びガラス構成体によれば、太陽光を長期間浴び続けることにより生じる灼熱感を効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜の断面図である。
【
図2】第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜の断面図である。
【
図3】第3の実施形態に係る合わせガラス用中間膜の断面図である。
【
図4】第4の実施形態に係る合わせガラス用中間膜の断面図である。
【
図5】第5の実施形態に係る合わせガラス用中間膜の断面図である。
【
図6】第6の実施形態に係る合わせガラス用中間膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<合わせガラス用中間膜>
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。
本発明の合わせガラス用中間膜は、2枚の基準ガラス板を用いて合わせガラスを作製した際に、合わせガラスの皮膚吸収エネルギー率(以下、単に「皮膚吸収エネルギー率(X1)」ともいう)が25%以下となる領域(以下、単に「吸収領域」ともいう)を少なくとも有する。なお、基準ガラスは、JIS R 3106に準拠した日射透過率が87.3%のクリアガラス板である。また、皮膚吸収エネルギー率(X1)は、後述する実施例に示す方法により算出したものである。
本発明では、皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%以下の吸収領域を有することで、皮膚によって太陽光を吸収する割合が低くなり、合わせガラスを介して太陽光を長期間浴びても灼熱感を感じにくくなる。
【0013】
一方で、皮膚吸収エネルギー率(X1)を25%より大きくすると、皮膚によって太陽光を吸収する割合が高くなり、合わせガラスを介して太陽光を浴びた場合に短時間で灼熱感を感じやすくなる。皮膚吸収エネルギー率(X1)は、太陽光を浴び始めてから灼熱感を感じるまでの時間をより長くする観点から、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、12%以下がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。
また、皮膚吸収エネルギー率(X1)は、灼熱感を感じるまでの時間を長くするためには低ければ低いほどよいが、太陽光を必要以上に遮光して可視光線透過率が必要以上に低くならないようにするためには、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましい。
【0014】
本発明では、合わせガラス用中間膜は、その全面(すなわち、全ての領域)の上記皮膚吸収エネルギー率(X1)が上記範囲内となる吸収領域でもよいし、一部のみが吸収領域となってもよい。一部のみが吸収領域であっても、その領域を介して太陽光が人に照射されると、その太陽光が照射された人は灼熱感を感じにくくなるので、一定の効果が得られる。そのような場合、例えば、人の顔など肌に直接太陽光が照射されやすい領域を吸収領域とすればよい。
合わせガラス用中間膜において、吸収領域の面積は、特に限定されないが、全領域の5%以上100%以下が好ましく、10%以上100%以下がより好ましく、30%以上100%以下が更に好ましい。また、吸収領域の面積は、40%以上であってもよく、60%以上であってもよく、80%以上であってもよい。
【0015】
本発明の合わせガラス用中間膜における可視光線透過率は、用途、使用位置などに応じて適宜設定すればよい。例えば、合わせガラス用中間膜は、基準ガラス板を用いて合わせガラスを作成した際、その合わせガラスの可視光線透過率(以下、単に「可視光線透過率(X2)」ともいう)が70%未満となる領域(以下、「遮光性領域」ともいう)を有していてもよいし、可視光線透過率(X2)が70%以上となる領域(以下、「透過性領域」ともいう)を有していてもよい。
【0016】
(遮光性吸収領域)
本発明の一実施形態において、合わせガラス用中間膜は、可視光線透過率(X2)が70%未満となり、かつ皮膚吸収エネルギー率(X1)が15%以下となる領域(以下、「遮光性吸収領域」ともいう)を有することが好ましい。
可視光線透過率(X2)が70%未満となる遮光性領域は、例えば防眩性の確保のために、一般的には人に照射される太陽光を遮蔽する領域であり、その領域を介して人に照射される太陽光は、露出する皮膚等に長期間照射されることが多い。例えば、自動車では、フロントガラスの上部に設けられるサンシェードや、ルーフガラスなどは遮光性領域で構成されることが多く、遮光性領域を介して透過した太陽光は、主に乗員の顔など、乗員の皮膚に直接照射されることが多い。そのため、そのような領域における皮膚吸収エネルギー率を15%以下とすることで、自動車の乗員などが感じる灼熱感を効果的に低減できる。
【0017】
また、遮光性吸収領域は、後述するように、可視光線透過率(X2)を低くするために一般的に着色剤を含有するので、着色剤と、後述する遮熱剤との相互作用により、皮膚吸収エネルギー率を効果的に低い値にすることが可能になる。すなわち、遮光性吸収領域においては、皮膚吸収エネルギー率をより低くしやすい。
以上の点から、合わせガラス用中間膜は、皮膚吸収エネルギー率(X1)が、上記遮光性吸収領域において、12%以下となる領域を有することがより好ましく、10%以下となる領域を有することが更に好ましく、7%以下となる領域を有することが特に好ましく、理論上は0%となる領域を有することが最も好ましい。また、遮光性吸収領域における皮膚吸収エネルギー率(X1)は、一定以上の可視光線透過率を確保するために、0.1%以上が好ましく、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましい。
【0018】
合わせガラス用中間膜は、上記した所望の皮膚吸収エネルギー率(X1)を有する遮光性吸収領域において、可視光線透過率(X2)が50%以下となることが好ましく、20%以下となることがより好ましく、4%以下となることがさらに好ましい。可視光線透過率(X2)がこれら上限値以下となる遮光性吸収領域を有することで、合わせガラスに十分な遮光性を付与でき、かつ皮膚吸収エネルギー率(X1)も低くしやすくなる。
合わせガラス用中間膜の上記可視光線透過率(X2)は、合わせガラスを一定量以上の光を透過させて窓として機能させるために、上記遮光性吸収領域において、0.5%以上となることが好ましく、0.7%以上となることがより好ましく、1%以上となることが更に好ましい。
【0019】
遮光性吸収領域を有する合わせガラス用中間膜は、合わせガラス用中間膜の全領域(全面)が遮光性吸収領域となってもよいし、一部の領域が遮光性吸収領域となってもよい。
合わせガラス用中間膜は、一部の領域が遮光性吸収領域となる場合、遮光性吸収領域以外の領域は、可視光線透過率(X2)が70%以上となる領域(透過性領域)であってもよいし、可視光線透過率(X2)が70%未満となるが、皮膚吸収エネルギー率(X1)が15%より大きくなる遮光性領域であってもよいし、これら両方の領域が存在してもよい。
合わせガラス用中間膜において、遮光性吸収領域の面積は、特に限定されないが、全領域の5%以上100%以下が好ましく、10%以上100%以下がより好ましい。
【0020】
(透過性吸収領域)
本発明の別の好ましい実施形態において、合わせガラス用中間膜は、可視光線透過率(X2)が70%以上となり、かつ皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%以下となる領域(以下、「透過性吸収領域」ともいう)を有する。
本発明では、皮膚吸収エネルギー率(X1)を25%以下とすることで、自動車の乗員や建築物の内部に居る人などが感じる灼熱感を効果的に低減できる。合わせガラス用中間膜は、このような観点から、透過性吸収領域において、上記皮膚吸収エネルギー率(X1)が20%以下となる領域を有することが好ましい。
【0021】
また、可視光線透過率(X2)が70%以上となる透過性領域は、一般的に、建築物の内部や、自動車の内部から外部を視認させるための領域であり、例えば、自動車のフロントガラスでは、上部に設けられるサンシェード以外の部分であり、その領域を介して入射した太陽光は、顔などの肌が露出した部分に照射されにくいことが多い。そのため、皮膚吸収エネルギー率(X1)は、それほど低くしなくても自動車の乗員などが感じる灼熱感を低減できる。そのような観点から、合わせガラス用中間膜は、透過性吸収領域において、皮膚吸収エネルギー率(X1)が10%以上でもよく、15%以上であってもよい。
【0022】
合わせガラス用中間膜は、灼熱感を効果的に低減しつつ光透過性を確保する観点から、透過性吸収領域において、可視光線透過率(X2)が75%以上となる領域を有することが好ましく、80%以上となる領域を有することがより好ましい。該可視光線透過率(X2)は高ければ高いほうがよいが、合わせガラス用中間膜は、皮膚吸収エネルギー率(X1)を低くするためには、透過性吸収領域において、上記可視光線透過率(X2)が95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、87%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
合わせガラス用中間膜は、透過性吸収領域を有する場合、その全領域が透過性吸収領域となってもよいし、一部の領域が透過性吸収領域となってもよい。一部の領域が透過性吸収領域となる場合、その他の領域は、可視光線透過率(X2)が70%未満となる領域(遮光性領域)であってもよいし、可視光線透過率(X2)が70%以上となるが、皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%より大きくなる領域であってもよいし、これら領域の両方が存在してもよい。
合わせガラス用中間膜において、透過性遮光性吸収領域の面積は、特に限定されないが、全領域の5%以上100%以下が好ましく、10%以上100%以下がより好ましい。
【0024】
本発明のさらに別の好ましい実施形態において、合わせガラス用中間膜は、上記した遮光性吸収領域と、透過性吸収領域の両方を有する。このような構成によれば、透過性吸収領域により視認性を良好にしつつ、透過性吸収領域と遮光性吸収領域の両方により、自動車や建築物内部に居る人の皮膚による光エネルギーの吸収が効果的に防止され、灼熱感をより効果的に低減できる。
合わせガラス用中間膜が、上記した遮光性吸収領域と、透過性吸収領域の両方を有する場合、遮光性吸収領域及び透過性吸収領域それぞれにおける可視光線透過率(X2)及び皮膚吸収エネルギー率(X1)の範囲などの詳細な構成は、上記の通りである。
【0025】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記のように皮膚吸収エネルギー率(X1)が所定の範囲内であればよいが、2枚の標準ガラス板を用いて合わせガラスを作製した際、その合わせガラスのT1500は、例えば30%以下、好ましくは0.1%以上28%以下、より好ましくは0.1%以上15%以下、更に好ましくは0.1%以上5%以下である。
なお、本発明の合わせガラス用中間膜は、上記のように遮光性吸収領域、透過性吸収領域、又はこれらの両方を有するが、遮光性吸収領域を有する場合には遮光性吸収領域の上記T1500が上記範囲内となるとよい。また、透過性吸収領域を有する場合には、透過性吸収領域の上記T1500が上記範囲内となるとよい。さらに、遮光性吸収領域及び透過性吸収領域の両方を有する場合には、遮光性吸収領域及び透過性吸収領域の両方の上記T1500が上記範囲内となるとよい。なお、T1500は、分光光度計を用いて、波長1500nmにおける透過率を測定することで得られるものであり、詳しい測定方法は、実施例に記載されるとおりである。
【0026】
合わせガラス用中間膜が、透過性領域と、遮光性領域を有する場合、これら領域は、厚さ方向に直交する方向に沿って並ぶように配置される。また、合わせガラス用中間膜は、可視光線透過率(X2)が連続的に変化するグラデーション領域を有してもよい。
グラデーション領域は、透過性領域に設けられてもよいし、遮光性領域に設けられてもよい。また、透過性領域と遮光性領域に跨るように設けられ、透過性領域と遮光性領域の境界がグラデーション領域にあってもよい。すなわち、グラデーション領域は、その全体が透過性領域、又は遮光性領域となってもよいが、一部が透過性領域となり、一部が遮光性領域となってもよい。
なお、グラデーション領域における皮膚吸収エネルギー率(X1)は、可視光線透過率(X2)とともに連続的に変化するとよい。
【0027】
合わせガラス用中間膜は、透過性領域と、遮光性領域を有する場合、透過性領域において、上記したとおり、皮膚吸収エネルギー率(X1)が所定の範囲となり、少なくとも一部が透過性吸収領域となってもよい。同様に、合わせガラス用中間膜は、遮光性領域において、上記したとおり、皮膚吸収エネルギー率(X1)が所定の範囲となり、少なくとも一部が遮光性吸収領域となっていてもよい。勿論、透過性領域及び遮光性領域両方の少なくとも一部が、それぞれ透過性吸収領域及び遮光性吸収領域となっていてもよいし、透過性領域及び遮光性領域それぞれの全領域が、透過性吸収領域及び遮光性吸収領域となってもよい。
【0028】
合わせガラス用中間膜の厚さは、好ましくは0.2mm以上1.5mm以下である。合わせガラス用中間膜は、着色剤の種類及び含有量、及び遮熱剤の種類及び含有量を上記したように調整した上で、厚さをこれら範囲内とすることで、可視光線透過率(X2)及び皮膚吸収エネルギー率(X1)を上記範囲内に調整しやすくなる。これら観点から、合わせガラス用中間膜の厚さは、より好ましく0.25mm以上1.0mm以下、さらに好ましくは0.3mm以上0.9mm以下である。
【0029】
(樹脂)
本発明の合わせガラス用中間膜は、1以上の樹脂層を含むものであり、各樹脂層は樹脂を含有する。樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましい。合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含有することで、接着層としての機能を果たしやすくなり、ガラス板との接着性が良好になる。後述する着色剤及び遮熱剤などは、樹脂、又は樹脂及び後述する可塑剤の混合物に分散されている。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、アクリル樹脂、アクリル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂及びポリスチレン樹脂などが挙げられる。これら樹脂を使用することで、ガラス板との接着性を確保しやすくなる。
本発明の合わせガラス用中間膜において熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中では、ポリビニルアセタール樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂から選択される少なくとも1種が好ましく、特に、可塑剤と併用した場合に、ガラスに対して優れた接着性を発揮する点から、ポリビニルアセタール樹脂がより好ましい。
【0031】
また、複数の樹脂層を有する場合、各樹脂層を構成する樹脂は、上記で列挙した樹脂から適宜選択されればよい。また、各樹脂層を構成する樹脂は、互いに異なる樹脂であってもよいが、互いに同一であることが好ましい。
したがって、複数の樹脂層を有する場合、各樹脂層を構成する樹脂はいずれも、ポリビニルアセタール樹脂又はエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であることが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂であることがより好ましい。
【0032】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂であれば特に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
【0033】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量の好ましい下限は15モル%、好ましい上限は35モル%である。水酸基量を15モル%以上とすることで、ガラス板などとの接着性が良好になりやすくなり、合わせガラスの耐貫通性などを良好にさせやすくなる。また、水酸基量を35モル%以下とすることで、合わせガラスが硬くなり過ぎたりすることを防止する。上記水酸基量のより好ましい下限は25モル%、より好ましい上限は33モル%である。
ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂を用いる場合も、同様の観点から、水酸基量の好ましい下限は15モル%、好ましい上限は35モル%であり、より好ましい下限は25モル%、より好ましい上限は33モル%である。
なお、上記アセタール化度及び上記水酸基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定することができる。
【0034】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度80~99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
ポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。重合度を500以上することで、合わせガラスの耐貫通性が良好になる。また、重合度を4000以下とすることで、合わせガラスの成形がしやすくなる。重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0035】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-バレルアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂)
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、非架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよいし、また、高温架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、エチレン-酢酸ビニルの加水分解物などのようなエチレン-酢酸ビニル変性体樹脂も用いることができる。
【0037】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K 6730「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」またはJIS K 6924-2:1997に準拠して測定される酢酸ビニル含量が好ましく10~50質量%、より好ましくは20~40質量%である。酢酸ビニル含量をこれら下限値以上とすることで、ガラスへの接着性が高くなり、また、合わせガラスの耐貫通性が良好になりやすくなる。また、酢酸ビニル含量をこれら上限値以下とすることで、合わせガラス用中間膜の破断強度が高くなり、合わせガラスの耐衝撃性が良好になる。
【0038】
(アイオノマー樹脂)
アイオノマー樹脂としては、特に限定はなく、様々なアイオノマー樹脂を用いることができる。具体的には、エチレン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、パーフルオロカーボン系アイオノマー、テレケリックアイオノマー、ポリウレタンアイオノマー等が挙げられる。これらの中では、合わせガラスの機械強度、耐久性、透明性などが良好になる点、ガラスへの接着性に優れる点から、エチレン系アイオノマーが好ましい。
【0039】
エチレン系アイオノマーとしては、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーが透明性と強靭性に優れるため好適に用いられる。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、少なくともエチレン由来の構成単位および不飽和カルボン酸由来の構成単位を有する共重合体であり、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられ、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。また、他のモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、1-ブテン等が挙げられる。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、該共重合体が有する全構成単位を100モル%とすると、エチレン由来の構成単位を75~99モル%有することが好ましく、不飽和カルボン酸由来の構成単位を1~25モル%有することが好ましい。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体が有するカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和または架橋することにより得られるアイオノマー樹脂であるが、該カルボキシル基の中和度は、通常は1~90%であり、好ましくは5~85%である。
【0040】
アイオノマー樹脂におけるイオン源としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の多価金属が挙げられ、ナトリウム、亜鉛が好ましい。
【0041】
アイオノマー樹脂の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の製造方法によって、製造することが可能である。例えばアイオノマー樹脂として、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを用いる場合には、例えば、エチレンと不飽和カルボン酸とを、高温、高圧下でラジカル共重合を行い、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体を製造する。そして、そのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体と、上記のイオン源を含む金属化合物とを反応させることにより、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを製造することができる。
【0042】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、イソシアネート化合物と、ジオール化合物とを反応して得られるポリウレタン、イソシアネート化合物と、ジオール化合物、さらに、ポリアミンなどの鎖長延長剤を反応させることにより得られるポリウレタンなどが挙げられる。また、ポリウレタン樹脂は、硫黄原子を含有するものでもよい。その場合には、上記ジオールの一部又は全部を、ポリチオール及び含硫黄ポリオールから選択されるものとするとよい。ポリウレタン樹脂は、有機ガラスとの接着性を良好にすることができる。そのため、ガラス板が有機ガラスである場合に好適に使用される。
【0043】
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、脂肪族ポリオレフィンが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、一般的に、ハードセグメントとなるスチレンモノマー重合体ブロックと、ソフトセグメントとなる共役ジエン化合物重合体ブロック又はその水添ブロックとを有する。スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン-イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレントリブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体、並びにその水素添加体が挙げられる。
上記脂肪族ポリオレフィンは、飽和脂肪族ポリオレフィンであってもよく、不飽和脂肪族ポリオレフィンであってもよい。上記脂肪族ポリオレフィンは、鎖状オレフィンをモノマーとするポリオレフィンであってもよく、環状オレフィンをモノマーとするポリオレフィンであってもよい。中間膜の保存安定性、及び、遮音性を効果的に高める観点からは、上記脂肪族ポリオレフィンは、飽和脂肪族ポリオレフィンであることが好ましい。
上記脂肪族ポリオレフィンの材料としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、trans-2-ブテン、cis-2-ブテン、1-ペンテン、trans-2-ペンテン、cis-2-ペンテン、1-ヘキセン、trans-2-ヘキセン、cis-2-ヘキセン、trans-3-ヘキセン、cis-3-ヘキセン、1-ヘプテン、trans-2-ヘプテン、cis-2-ヘプテン、trans-3-ヘプテン、cis-3-ヘプテン、1-オクテン、trans-2-オクテン、cis-2-オクテン、trans-3-オクテン、cis-3-オクテン、trans-4-オクテン、cis-4-オクテン、1-ノネン、trans-2-ノネン、cis-2-ノネン、trans-3-ノネン、cis-3-ノネン、trans-4-ノネン、cis-4-ノネン、1-デセン、trans-2-デセン、cis-2-デセン、trans-3-デセン、cis-3-デセン、trans-4-デセン、cis-4-デセン、trans-5-デセン、cis-5-デセン、4-メチル-1-ペンテン、及びビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0044】
(可塑剤)
本発明の合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含有する場合、さらに可塑剤を含有してもよい。合わせガラス用中間膜は、可塑剤を含有することにより柔軟となり、その結果、合わせガラスに柔軟性を向上させ耐貫通性を向上させる。さらには、ガラス板に対する高い接着性を発揮することも可能になる。可塑剤は、熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を使用する場合に含有させると特に効果的である。
可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。
【0045】
有機エステル可塑剤は、例えば、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,2-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、混合型アジピン酸エステルなどが挙げられる。混合型アジピン酸エステルとしては、炭素数4~9のアルキルアルコール及び炭素数4~9の環状アルコールから選択される2種以上のアルコールから作製されたアジピン酸エステルが挙げられる。
上記可塑剤のなかでも、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)が特に好適に用いられる。
【0046】
合わせガラス用中間膜において可塑剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましい下限は30質量部であり、好ましい上限は70質量部である。可塑剤の含有量を30質量部以上とすると、合わせガラスが適度に柔軟になり、耐貫通性等が良好になる。また、可塑剤の含有量を70質量部以下とすると、合わせガラス用中間膜から可塑剤が分離することが防止される。可塑剤の含有量のより好ましい下限は35質量部、より好ましい上限は63質量部である。
また、合わせガラス用中間膜において、樹脂、又は樹脂及び可塑剤が主成分となるものであり、熱可塑性樹脂及び可塑剤の合計量が、着色領域における合わせガラス用中間膜全量基準で、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上100質量%未満である。100質量%未満とすることで、合わせガラス用中間膜が遮熱剤及び着色剤の少なくとも一方を含有できる。
【0047】
(遮熱剤)
本発明の合わせガラス用中間膜では、吸収領域に遮熱剤を含有させることが好ましい。すなわち、合わせガラス用中間膜は、遮光性吸収領域を有する場合、遮光性吸収領域に遮熱剤が含有されることが好ましい。また、合わせガラス用中間膜は、透過性吸収領域を有する場合、透過性吸収領域に遮熱剤が含有されることが好ましい。さらに、合わせガラス用中間膜は、透過性吸収領域及び遮光性吸収領域の両方を有する場合、これらのうち一方に遮熱剤が含有されてもよいが、これらの両方に遮熱剤が含有されることが好ましい。
【0048】
波長が780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さいが、熱的作用が大きく、物質にいったん吸収されると熱として放出され、一般的に熱線とも呼ばれる。遮熱剤は、780nm以上の赤外線、すなわち熱線を吸収することができる材料である。
【0049】
遮熱剤としては、遮熱粒子が挙げられる。遮熱粒子は、無機材料からなり、その具体例としては、金属酸化物粒子、六ホウ化ランタン(LaB6)粒子等の金属酸化物粒子以外の粒子が挙げられる。金属酸化物粒子としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)などの酸化錫粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子及び珪素ドープ酸化亜鉛粒子などの酸化亜鉛粒子、ニオブドープ酸化チタン粒子などの酸化チタン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)などの酸化インジウム粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子(CWO粒子)、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子などの酸化タングステン粒子が挙げられる。また、これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。遮熱材料は、一種単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、ITO粒子及びCWO粒子から選択される少なくとも1種を使用することがより好ましく、ITO粒子又はCWO粒子を使用することがさらに好ましい。
【0050】
遮熱粒子の平均粒子径の好ましい下限は10nm、より好ましい下限は20nm、好ましい上限は100nm、より好ましい上限は80nm、更に好ましい上限は50nmである。平均粒子径が上記好ましい下限以上となると、熱線の遮蔽性を充分に高めることができる。また、平均粒子径が上記好ましい上限以下であると、遮熱材料によって可視光線を遮蔽しにくくなり、上記した可視光線透過率(X2)を所定の範囲内に調整しやすくなる。
なお、「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA-EX150」)等を用いて測定できる。
【0051】
また、遮熱剤としては、遮熱性化合物が挙げられる。遮熱性化合物は、赤外線を吸収できる有機材料、又は有機無機複合材料であり、近赤外線吸収剤ともいう。近赤外吸収剤は、近赤外領域に吸収極大を有し、且つ、その吸収極大が波長380nm~2500nmの領域に存在する吸収極大の中でも最大の吸収を示すものであり、具体的には、720nm以上、好ましくは750nm以上2000nm以下の波長領域に最大の吸収を有する。
遮熱性化合物は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物から選択される1種又は2種以上の化合物(以下、「化合物X」ともいう)が挙げられる。
フタロシアニン化合物は、フタロシアニン、又はフタロシアニン骨格を有するフタロシアニン誘導体であり、好ましくはこれらに金属原子が含有される。ナフタロシアニン化合物は、ナフタロシアニン、又はナフタロシアニン骨格を有するナフタロシアニン誘導体であり、好ましくはこれらに金属原子が含有される。アントラシアニン化合物は、アントラシアニン、又はアントラシアニン骨格を有するアントラシアニン誘導体であり、好ましくはこれらに金属原子が含有される。
これら化合物Xにおいて、金属原子は、ナフタロシアニン骨格、ナフタロシアニン骨格、アントラシアニン骨格の中心金属となる。
【0052】
遮熱性化合物は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物から選択される1種又は2種以上であることが好ましく、フタロシアニン化合物がより好ましい。
また、上記金属原子としては、バナジウム原子が好ましく、バナジウム原子を含有するフタロシアニン化合物がより好ましい。バナジウム原子は、一般的に酸素原子が結合した状態(V=O)で存在する。
遮熱性化合物は、上記したもののうち1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
合わせガラス用中間膜における遮熱剤の含有量は、上記した皮膚吸収エネルギー率(X1)が所定の範囲内となるようにすればよいが、例えば0.05質量%以上1.5質量%以下、好ましくは0.10質量%以上1.2質量%以下、さらに好ましくは0.15質量%以上0.9質量%以下である。
【0053】
また、遮熱剤を2種以上使用する場合には、その2種以上の遮熱剤の合計含有量が、上記範囲内であればよい。
遮熱剤を2種以上使用する場合、得られる合わせガラスの着色を抑えつつ、且つ、遮熱性を向上させる観点からは、遮熱剤はITO粒子を含むことが好ましい。また、遮熱剤を2種以上使用する場合、ITO粒子の含有量は、他の遮熱剤の含有量よりも多く、ITO粒子に対する他の遮熱剤の含有量の比(質量比)は、1より小さいことが好ましく、より好ましくは1/50以上1/3以下、さらに好ましくは1/30以上1/5以下である。
また、ITO粒子と併用される他の遮熱剤としては、上記したもののうち、酸化タングステン粒子及び化合物Xの両方を使用することが好ましく、特に酸化タングステン粒子としてCWO粒子、化合物Xとしてフタロシアニン化合物を使用することが好ましい。
【0054】
遮熱剤の含有量は、皮膚吸収エネルギー率(X1)が所定範囲内となる吸収領域(遮光性吸収領域、透過性吸収領域、又はこれらの両方)において、遮熱剤の含有量が上記範囲内となるようにすればよい。
また、合わせガラス用中間膜の吸収領域において、合わせガラス用中間膜が、厚さ方向に積層された複数の樹脂層を有し、多層構造となる場合には、その吸収領域における遮熱剤の含有量及び含有量比が上記範囲内となればよい。すなわち、遮熱剤の含有量及び含有量比は、多層構造全体として、上記範囲内であればよく、各樹脂層における遮熱剤の含有量及び含有量比が上記範囲内である必要はない。
【0055】
(着色剤)
本発明の合わせガラス用中間膜は、着色剤を含有することが好ましく、中でも遮光性領域に着色剤が含有されることがより好ましい。
使用される着色剤は、特に限定されず、従来から合わせガラス用中間膜に配合される色素を使用するができ、青色、黄色、赤色、緑色、紫色、黒色、白色などの色素を使用できる。色素は、顔料、染料などを用いることができる。
なお、本明細書において、着色剤とは、上記した遮熱剤以外の材料を意味する。したがって、例えば、青色の色素は、一般的には赤色領域や近赤外領域に吸収極大を有するが、本明細書において、近赤外領域に吸収極大を有するものは、上記した近赤外線吸収剤に分類されるものとする。すなわち、例えば、青色の色素は、720nm未満の領域に1以上の吸収極大を有し、かつその1以上の吸収極大のうち1つが、波長380nm~2500nmの領域において最大の吸収を示すものを着色剤と分類する。
【0056】
合わせガラス用中間膜は、着色剤を使用することで、合わせガラスを着色し、また、合わせガラスの遮光性を高めて防眩性などを付与できる。さらに、遮光性領域において着色剤を使用することで遮光性領域の皮膚吸収エネルギー率(X1)を低くすることも可能である。特に、本発明では、着色剤に加えて遮熱剤を使用することで、着色剤により遮光性を高めつつ、着色剤及び遮熱剤の相互作用により、遮光性領域の皮膚吸収エネルギー率(X1)をより容易に低くできる。
したがって、遮光性吸収領域は、灼熱感を効果的に低減させる観点から、着色剤に加えて遮熱剤を含有することが好ましいが、着色剤を含有する一方で、遮熱剤を含有しなくてもよい。
【0057】
顔料としては、ビグメントブルーなどの銅フタロシアニン顔料、コバルトフタロシアニン顔料などのフタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ぺリレン顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、酸化チタン系顔料、ピグメントブラック7などのカーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系材料等が挙げられる。
また、アゾ染料、シアニン染料、トリフェニルメタン染料、フタロシアニン染料、アントラキノン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、スクワリリウム染料、アクリジン染料、スチリル染料、クマリン染料、キノリン染料、ニトロ染料等が挙げられる。染料は分散染料でもよい。
なかでも、熱可塑性樹脂との親和性が高く、ブリードアウトしにくいことから、顔料としては、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、カーボンブラックが好ましい。また、染料としては、アントラキノン系が好ましい。
着色剤は、一種単独で使用してもよいが、2種以上を併用してもよい。
【0058】
本発明では、遮光性吸収領域に含有される着色剤は、炭素系材料を含むことが好ましい。炭素系材料を含むことで、可視光線透過率(X2)を低くしつつ、効果的に皮膚吸収エネルギー率(X1)を低下させることが可能である。炭素系材料としては、カーボンブラックが好ましい。
また、着色剤としては、カーボンブラックなどの炭素系材料と、炭素系材料以外のその他の色素を組み合わせて使用するとよく、中でも、遮光性吸収領域において、カーボンブラックなどの炭素系材料と、炭素系材料以外のその他の色素を組み合わせて使用することが好ましい。このような着色剤の組み合わせにより、遮光性を高めつつ、より効果的に皮膚吸収エネルギー率(X1)を低下できる。
その他の色素としては、青色、黄色、赤色、緑色、紫色、白色などの黒色以外の色素を使用するとよく、具体的には炭素系材料以外の上記した顔料、染料を使用すればよく、中でもフタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、及びアゾ系染料、アントラキノン系染料から選択される1種以上が好ましい。
炭素系材料と、炭素系材料以外のその他の色素の組み合わせにおいては、炭素系材料を着色剤の主成分とすることが好ましい。炭素系材料を主成分とすることで、より効果的に皮膚吸収エネルギー率(X1)及び可視光線透過率(X2)を低下できる。具体的には、全着色剤に対する炭素系材料の含有量比(質量比)は、0.50以上1.0以下が好ましく、0.55以上0.90以下がより好ましく、0.60以上0.85以下がさらに好ましい。
【0059】
合わせガラス用中間膜は、遮光性吸収領域において、着色剤として、炭素系材料と、炭素系材料以外のその他の色素の組み合わせを使用する場合も、上記のように、遮熱剤を含有することが好ましい。炭素系材料と、炭素系材料以外の着色剤と、遮熱剤の組み合わせにより、より効果的に皮膚吸収エネルギー率(X1)を低下させることが可能である。
勿論、合わせガラス用中間膜は、遮光性吸収領域において、着色剤として炭素系材料を単独で使用する場合も、着色剤と遮熱剤を併用してもよい。さらには、遮光性吸収領域以外でも着色剤と遮熱剤を併用してもよい。
【0060】
合わせガラス用中間膜における着色剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上3.0質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上0.5質量%以下、さらに好ましくは0.04質量%以上0.3質量%以下である。合わせガラス用中間膜では、遮光性領域及び遮光性吸収領域における着色剤の含有量がこれら範囲内であればよい。着色剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、遮光性領域及び遮光性吸収領域の遮光性を十分に確保できる。また、上記上限値以下とすることで、遮光性領域及び遮光性吸収領域に一定値以上の可視光線透過率を確保させやすくなる。
【0061】
遮光性吸収領域における、着色剤と、遮熱剤との含有量比は、皮膚吸収エネルギー率(X1)と、可視光線透過率(X2)が所定の範囲内となるように適宜調整されればよい。遮光性吸収領域における、着色剤に対する遮熱剤の含有量比(質量比)は、特に限定されないが、例えば遮熱剤の含有量を着色剤より多くすればよく、遮熱剤/着色剤は、例えば1より大きく、好ましくは1.3以上25以下、より好ましくは1.5以上20以下である。
合わせガラス用中間膜の遮光性領域(及び遮光性吸収領域)において、合わせガラス用中間膜が複数の樹脂層からなり、多層構造である場合には、その多層構造全体における着色剤の含有量、含有量比、及び遮熱剤/着色剤が上記範囲内となればよい。
【0062】
本発明において、上記した着色剤を構成する顔料及び染料は、そのまま樹脂に配合されてもよいが、インク、又はトナーなどの形態にされた上で、樹脂に配合されてもよい。そのような場合、着色剤の含有量とは、顔料及び染料そのものの質量を意味する。
また、遮熱剤及び着色剤は、可塑剤中に分散された上で、樹脂に配合されてもよい。例えば、可塑剤に、遮熱剤及び着色剤を加え、さらに分散剤などを加えて、可塑剤に分散させた上で、樹脂と混合させてもよい。使用される分散剤としては、リン酸エステル化合物が挙げられる。リン酸エステル化合物としては、例えば、トリオクチルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレシルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェートなどが挙げられる。リン酸エステル化合物の配合量は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.001~5質量部である。
【0063】
(その他の添加剤)
また、合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤、蛍光増白剤、結晶核剤等の添加剤を含有してもよい。
【0064】
<層構成>
以下、本発明の合わせガラス用中間膜の層構成についてより詳細に説明する。
(単層構造)
本発明では、合わせガラス用中間膜は、上記したとおり、単層の樹脂層からなるものでもよい。合わせガラス用中間膜は、単層の樹脂層に例えば遮熱剤を含有させることで、その全面を透過性吸収領域とすることができる。この場合の遮熱剤の含有量、含有量比などは上記した通りである。
また、合わせガラス用中間膜は、単層の樹脂層に例えば遮熱剤及び着色剤の両方を含有させることで、その全面を遮光性吸収領域にできる。この場合の遮光性吸収領域における遮熱剤及び着色剤の含有量、含有量比などは上記した通りである。
【0065】
単層の樹脂層からなる合わせガラス用中間膜は、その合わせガラス用中間膜のいずれの位置においても、中間膜を構成する樹脂組成物の組成を実質的に同一とし、かつ厚さも実質的に同一にすればよい。このような構成によれば、ガラス用中間膜は、その全領域において、可視光線透過率(X2)及び皮膚吸収エネルギー率(X1)は、実質的に一定となる。
【0066】
ただし、合わせガラス用中間膜は、単層構造を有する場合においても、領域ごとに樹脂組成物の組成を変更することで、一部の領域のみを遮光性吸収領域としてもよい。
この場合、遮光性吸収領域以外の領域は、可視光線透過率(X2)が70%以上となる領域(透過性領域)であってもよいし、可視光線透過率(X2)が70%未満となるが、皮膚吸収エネルギー率(X1)が15%より大きくなる領域であってもよい。また、これら領域の両方が設けられてもよい。
また、領域ごとに樹脂組成物の組成を変更することで、一部の領域のみを透過性吸収領域としてもよい。この場合、透過性吸収領域以外の領域は、可視光線透過率(X2)が70%未満となる領域(遮光性領域)であってもよいし、可視光線透過率(X2)が70%以上となるが、皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%より大きくなる領域であってもよい。また、これら両方の領域が設けられてもよい。
さらに、領域ごとに樹脂組成物の組成を変更することで、一部の領域を透過性吸収領域とし、一部の領域を遮光性吸収領域としてもよい。
【0067】
(多層構造)
合わせガラス用中間膜は、上記したとおり、複数の樹脂層を含む多層構造を有するものでもよい。複数層からなる多層構造は、厚さ方向に2つの樹脂層が積層された2層構造であってもよいし、3つの樹脂層が積層された3層構造であってもよいし、4つ以上の樹脂層が積層されたものでもよい。これらの中では2層構造又は3層構造を有することが好ましく、3層構造を有することがより好ましい。
【0068】
また、多層構造である場合には、少なくとも1つの樹脂層(以下、「第2の層」ともいう)における着色剤の含有量が、他の樹脂層(以下、「第1の層」ともいう)における着色剤の含有量よりも多くなればよく、少なくとも1つの樹脂層(第2の層)に着色剤を含有させる一方、他の樹脂層(第1の層)に着色剤を含有させないことが好ましい。第2の層は、着色剤が多く配合されることで、第1の層よりも透明性(すなわち、可視光線透過率)が低い層となる。このように、一部の樹脂層(第2の層)の着色により、遮光性領域の遮光性を確保すると、第2の層の厚さを変化させたり、第2の層を設けない領域(すなわち、第1の層のみからなる領域)を設けたりすることで、領域ごとに可視光線透過率(X2)を変化させることができる。そのため、合わせガラス用中間膜に容易に遮光性領域と、透過性領域の両方を設けることも可能になる。また、色調も個別に操作でき、防眩性、意匠性を高めることもできる。
上記のとおりに第1及び第2の層を有し、かつ合わせガラス用中間膜が遮熱剤を含有する場合、第1及び第2の層のいずれか一方に遮熱剤を含有させればよいが、これら両方に遮熱剤を含有させることが好ましい。
【0069】
第1の層における着色剤の含有量は、第2の層の着色剤の合計の含有量より少なければよく、例えば、0質量%以上1質量%以下、好ましくは0質量%以上0.2質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上0.005質量%以下、最も好ましくは0質量%(すなわち、着色剤を含有しない)である。第1の層における着色剤の含有量を少なくし、また、着色剤を含有しないようにすると、第1の層のみからなり、又は、厚み方向における大部分が第1の層からなる領域の可視光線透過率を高くできるので、透過性領域を形成しやすくなる。
第2の層における着色剤の含有量は、特に限定されないが、例えば0.03質量%以上3質量%以下、好ましくは0.05質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下である。第2の層における着色剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、第2の層により容易に遮光性領域や遮光性吸収領域を形成できる。
なお、本明細書において各層における含有量とは、その層全量基準の含有率を意味し、例えば、第1の層における着色剤の含有量とは、第1の層全量基準の含有率を意味し、他の類似の表現も同様である。
【0070】
多層構造を有する場合、第1及び第2の層は、それぞれ1層以上あればよいが、例えば、遮光性領域においては、第1の層を2層、第2の層を1層とすればよく、2つの第1の層の間に第2の層を配置すればよい。このように、第2の層を第1の層に挟み込むことで、着色剤に起因してガラス板との接着性が低くなることが防止される。
一方で、透過性領域では、遮光性領域よりも第2の層を薄くしたり、第2の層を設けなくしたりすることで、可視光線透過率を高くするとよい。
【0071】
多層構造では、第1の層の合計厚さに対する、第2の層の合計厚さの比(第2の層/第1の層)は、第1の層の合計厚さが最も薄くなる一方で、第2の層の合計厚さが最も厚くなる部分(後述する最厚部)において、0.05以上5以下が好ましく、0.1以上4以下がより好ましく、0.12以上3以下がさらに好ましい。このような厚さ比にすることで、第2の層に配合される着色剤の量を適切にしつつ、可視光線透過率を所望の範囲内に調整しやすくなる。
また、第1の層の合計厚さは、第1の層が最も薄くなる部分(最薄部)において、0.05mm以上1.4mm以下が好ましく、0.08mm以上0.9mm以下が好ましく、0.1mm以上0.8mm以下がさらに好ましい。
一方で、第2の層の合計厚さは、第2の層が最も厚くなる部分(最厚部)において、0.03mm以上1mm以下が好ましく、0.05mm以上0.8mm以下が好ましく、0.08m以上0.5mm以下がさらに好ましい。
【0072】
以下、合わせガラス用中間膜が多層構造を有する場合の具体例を
図1~6に示す第1~第6の実施形態を用いて説明する。
【0073】
2層構造からなる場合には、
図1に示す第1の実施形態のように、一方の樹脂層が、着色剤を含有する第2の層12であり、他方の樹脂層が第2の層12よりも着色剤の含有量が少ないか、又は着色剤を含有しない第1の層11である合わせガラス用中間膜10であることが好ましい。このような構成により、第2の層12は、その透明性(すなわち、可視光線透過率)が第1の層11よりも低くなる。第1の層11は、好ましくは着色剤を含有しない。一方で、第1及び第2の層11、12は、いずれか一方に遮熱剤を含有すればよいが、これら両方に遮熱剤を含有することが好ましい。
【0074】
合わせガラス用中間膜10は、透明性が低い第2の層12により遮光性が確保され、遮光性領域を有する。なお、
図1に示す合わせガラス用中間膜10は、その全領域が2層構造からなり、全領域が遮光性領域13となる。遮光性領域13は、着色剤、又は着色剤及び遮熱剤が含有されることで、皮膚吸収エネルギー率(X1)が低くなり遮光性吸収領域となる。
【0075】
3層構造からなる場合は、1又は2つの樹脂層が、着色剤を含有する第2の層であり、2又は1つの樹脂層が、第2の層よりも着色剤の含有量が少ないか、又は着色剤を含有しない第1の層である合わせガラス用中間膜であることが好ましい。この場合、合わせガラス用中間膜20は、
図2に示す第2の実施形態のように、1つの第2の層22と、2つの第1の層21A,21Bを有し、第2の層22が、第1の層21A,21Bの間に挟み込まれて配置される。このような構造により、合わせガラス用中間膜20は、第2の層22により遮光性が確保され、遮光性領域23となる。
第1及び第2の層21A、21B、22は、いずれか1つの層に遮熱剤を含有すればよいが、いずれの層にも遮熱剤を含有することが好ましい。また、第1の層21A,21Bは、好ましくはいずれも着色剤を含有しない。
遮光性領域23は、着色剤、又は着色剤及び遮熱剤により、皮膚吸収エネルギー率(X1)が低くなり、遮光性吸収領域となる。なお、
図2に示す合わせガラス用中間膜20は、その全領域が3層構造からなり、全領域が遮光性領域23(遮光性吸収領域)となる。
【0076】
合わせガラス用中間膜は、多層構造を有する場合も、一部が遮光性領域となり、一部が透過性領域となってもよい。
具体的には、
図3に示す第3の実施形態のように、合わせガラス用中間膜30は、第2の層32と、第1の層31A,31Bを有する。第2の層32は、着色剤を含有する樹脂層であり、第1の層31A、31Bは、第2の層32よりも着色剤の含有量が少ないか、又は着色剤を含有しない樹脂層である。したがって、第2の層32は、第1の層31A,31Bよりも透明性が低い層となる。
第1及び第2の層31A、31B、32は、いずれか1つの層に遮熱剤を含有すればよいが、いずれの層にも遮熱剤を含有することが好ましい。また、第1の層31A,31Bは、好ましくはいずれも着色剤を含有しない。
【0077】
合わせガラス用中間膜30は、その一部の領域33(第2の領域33)において、第2の層32が、第1の層31A,31Bの間に配置され、これら樹脂層31A,31Bの間に埋め込まれるような構造を有する。ここで、第2の領域33では、第2の層32の厚さが、厚さ方向に直交する方向に沿って、連続的に減少する領域(グラデーション領域)であり、厚さ方向に直交する方向に沿って先細り形状となる。そして、その先細り形状の先端より先の領域(すなわち、第2の領域33に隣接する第1の領域34)では、第1の層31A,32Bが直接積層され、これらが一体的となり、1つの樹脂層(第1の層31C)から構成されることになる。第1の領域34は、透明性が高い第1の層31Cから構成されることで、透過性領域となる。第1の領域34(透過性領域)は、第1の層31Cに配合される遮熱剤などにより、透過性吸収領域とされることが好ましいが、皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%より大きくなり、透過性吸収領域でなくてもよい。
一方で、第2の領域33は、第2の層32が最も厚い部分(最厚部33A)において、第2の層32により遮光され、遮光性領域となる。第2の領域33(遮光性領域)は、着色剤、又は着色剤と遮熱剤により皮膚吸収エネルギー率(X1)を低くすることで、遮光性吸収領域となる。
【0078】
第2の領域33では、最厚部33Aから領域34に向かって第2の層32の厚さが連続的に減少することで、最厚部33Aから領域34に向かう途中で、上記可視光線透過率(X2)が70%以上となり、境界Bを境に遮光性領域36から透過性領域37に切り替わる。
また、最厚部33Aと第1の領域34とは、通常、皮膚吸収エネルギー率(X1)が互いに異なるので、第2の領域33(グラデーション領域)における皮膚吸収エネルギー率(X1)は、最厚部33Aから領域34に向かうにしたがって、最厚部33Aの値から領域34の値となるように連続的に変化する。なお、第1の領域34は、好ましくは、最厚部33Aよりも皮膚吸収エネルギー率(X1)が高いので、好ましくは、最厚部33Aから第1の領域34に向かうにしたがって皮膚吸収エネルギー率(X1)は高くなる。
また、遮光性領域36における皮膚吸収エネルギー率(X1)は、最厚部33Aから境界Bまで15%以下に保たれ、遮光性領域36は、いずれの位置においても皮膚吸収エネルギー率(X1)が15%以下となる遮光性吸収領域となってもよい。また、境界Bまで15%以下が保たれずに、遮光性領域36の一部は、皮膚吸収エネルギー率(X1)が15%より大きくなり、遮光性吸収領域とならなくてもよい。
【0079】
なお、一部が遮光性領域36となり、一部が透過性領域37となる合わせガラス用中間膜30は、上記では、遮光性領域36の少なくとも一部が遮光性吸収領域となる態様を示したが、遮光性領域36が遮光性吸収領域を有していなくてもよい。その場合には、透過性領域37の少なくとも一部(例えば、第1の領域34)が、皮膚吸収エネルギー率(X1)が25%以下となり、透過性吸収領域となるとよい。
また、合わせガラス用中間膜30では、遮光性領域36が遮光性吸収領域を有し、透過性領域37が透過性吸収領域を有することがより好ましい。
【0080】
本実施形態では、境界Bは、第2の領域33(グラデーション領域)上に配置され、そのため、グラデーション領域は、遮光性領域36と透過性領域37に跨るように配置される。
ただし、境界Bは、第2の領域33と第1の領域34の境界と重なるように配置されてもよく、このような態様によれば、グラデーション領域である第2の領域33が、すべて遮光性領域36内部に配置されることになる。
【0081】
なお、上記した第3の実施形態の合わせガラス用中間膜30で示したように、一部の領域33において、第2の層32が、第1の層31A,31Bの間に配置され、これら樹脂層31A,31Bの間に埋め込まれる構造を有する場合、第2の領域33の構成は、上記に限定されない。例えば、
図4に示す第4の実施形態の合わせガラス用中間膜30Aのように、第2の領域33は、厚さが一定となる領域33Xと、その領域33Xに接続し、厚さが、厚さ方向に直交する方向に沿って、連続的に減少する領域(グラデーション領域)33Yからなってもよい。
この場合、領域33Yの先細り形状の先端側には、第3の実施形態と同様に、第1の領域34が設けられる。第4の実施形態では、一定の面積を有する領域33Yが最厚部33Aとなるので、透過性領域36、さらには、透過性吸収領域の面積を広くできる。
本実施形態において、境界Bは、領域33Y(グラデーション領域)上に配置されるが、境界Bは、第2の領域33と第1の領域34の境界と重なるように配置されてもよい。また、境界Bは、領域33Xと領域33Yの境界と重なるように配置されてもよく、これにより、グラデーション領域は、透過性領域37内に配置されることになる。
【0082】
また、上記第3及び第4の実施形態において、第2の領域33は、1つしか設けられなかったが、
図5の第5の実施形態に示すように、複数設けられてもよい。すなわち、上記では、第2の領域33は、厚さ方向に直交する方向における一方の端部のみに設けられていたが、第5の実施形態の合わせガラス用中間膜30Cのように、両端に設けられてもよい。この場合、合わせガラス用中間膜30Cの両端部には、第2の領域33より構成される遮光性領域36、36が設けられ、したがって、厚さ方向に直交する方向に沿って、遮光性領域36、透過性領域37、及び遮光性領域36が並べられることになる。
第5の実施形態の合わせガラス用中間膜30Cにおいて、その他の構成は、第4の実施形態の合わせガラス用中間膜30Bと同様であるので、その説明は省略する。
なお、第5の実施形態では、各第1の領域33は、グラデーション領域からなるが、第4の実施形態と同様に、厚さが一定となる領域33Xと、グラデーション領域からなる領域33Yからなってもよい。
【0083】
さらに、第2の層32が第1の樹脂層31A,31Bの間に埋め込まれる領域33は、端部以外の位置に設けられてもよく、例えば、
図6に示す第6の実施形態に示すように、両端部の間に設けられてもよい。
ここで、領域33は、厚さが一定となる領域33Xと、その領域33Xの両端に接続し、厚さが、厚さ方向に直交する方向に沿って、連続的に減少する領域(グラデーション領域)33Y、33Yからなる。また、各領域33Yの先細り形状の先端側に、上記第3~第5の実施形態と同様に、第1の領域34が設けられる。第1の領域34では、第1の層31A,32Bが直接積層され、これらが一体的となり、1つの樹脂層(第1の層31C)から構成されることになる。したがって、合わせガラス用中間膜は、厚さ方向に直交する方向に沿って、透過性領域37、遮光性領域36、及び透過性領域37がこの順に並べられることになり、遮光性領域36が端部と端部の間の位置に配置されることになる。
【0084】
なお、上記の説明では、2つの第1の層31A、31Bは、いずれも組成が同一で、第1の領域34において、これら2つの第1の層31A、31Bは一体的となり、1つの層(第1の層31C)となった。ただし、2つの第1の層31A、31Bは、互いに組成が異なり、第1の領域34において1つの層とならずに、2つの第1の層31A,31Bによる多層構造を形成してもよい。
なお、以上説明した積層構造は、本発明の合わせガラス用中間膜の積層構造の一例であって、これら構造に限定されない。
【0085】
(他の機能フィルムとの組合せ)
本発明の合わせガラス用中間膜は、他の機能を発現させる目的で、他の機能フィルムを備えていてもよい。例えば、遮熱性を更に向上させるために、上記中間膜は、赤外線反射フィルムを備えていてもよい。例えば、意匠性を更に向上させたり、他の模様と組み合わせたりするために、上記中間膜は、着色フィルムを備えていてもよく、意匠がプリントされたフィルムを備えていてもよい。
【0086】
(合わせガラス用中間膜の製造方法)
本発明の合わせガラス用中間膜は、特に限定されないが、単層構造である場合には、例えば、樹脂、遮熱材料及び着色剤などの中間膜を構成する成分を混合し、得られた組成物を押出成形、プレス成形などして成形すればよい。
また、単層構造であり、かつ領域ごとに異なる組成である場合には、合わせガラス用中間膜は、例えば、互いに組成が異なる複数の樹脂シートを面方向に並べることで形成できる。
【0087】
合わせガラス用中間膜は、多層構造である場合でも、単層構造である場合と同様に、押出成形、プレス成形などで成形すればよい。例えば、2つ以上の押出機を用意し、複数の押出機の先端に多層用フィードブロックを取り付けて共押出する方法が好ましい。
例えば、上記のように第1及び第2の層を有する場合、第1の層に含有される各成分を第1の押出機に、第2の層を形成するための各成分を第2の押出機に供給し、これら第1及び第2の押出機の先端に多層用フィードブロックを取り付けて共押出する方法が好ましい。第1及び第2の層は、厚さ方向に直交する方向に沿って厚さが変化することがあるが、その場合には、例えば、樹脂の供給量などを調整して、厚さを変化させるとよい。
【0088】
<ガラス構成体>
本発明は、さらにガラス構成体を提供する。ガラス構成体は、ガラス構成体そのものの皮膚吸収エネルギー率(以下、単に皮膚吸収エネルギー率(Y1)ともいう)が25%以下となる領域(以下、単に「ガラス吸収領域」ということがある)を少なくとも有する。ガラス構成体は、少なくとも1枚のガラス板を有するが、ガラス構成体が有するガラス板は1枚であってもよいし、2枚以上であってもよい。ガラス構成体において2枚以上のガラス板は上記した合わせガラス中間膜、接着層などを介して互いに接着され一体化されるとよく、例えば合わせガラスを構成するとよい。
【0089】
[合わせガラス]
上記のとおり本発明は、さらに合わせガラスを提供するものである。本発明の合わせガラスは、2枚のガラス板と、2枚のガラス板の間に配置される合わせガラス用中間膜とを備える。本発明の合わせガラスにおいては、合わせガラス用中間膜としては上記した合わせガラス用中間膜を使用すればよい。合わせガラス用中間膜は、一方の面が一方のガラス板に接着し、他方の面が他方のガラス板に接着する。
【0090】
(ガラス板)
合わせガラスで使用するガラス板としては、無機ガラス、有機ガラスのいずれでもよいが、無機ガラスが好ましい。無機ガラスとしては、特に限定されないが、クリアガラス、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、グリーンガラス等が挙げられる。
また、有機ガラスとしては、一般的に樹脂ガラスと呼ばれるものが使用され、特に限定されないが、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリル共重合体樹脂、ポリエステルなどの樹脂から構成される有機ガラスが挙げられる。
2枚のガラス板は、互いに同種の材質から構成されてもよいし、別の材質から構成されてもよい。例えば、一方が無機ガラスで、他方が有機ガラスであってもよいが、2枚のガラス板の両方が無機ガラスであるか、又は有機ガラスであることが好ましい。
また、各ガラス板の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1~15mm程度、好ましくは0.5~5mmである。各ガラス板の厚さは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0091】
合わせガラスは、2枚のガラス板の間に、上記した合わせガラス用中間膜を配置して、これらを圧着などすることで一体化することで製造すればよい。
【0092】
本発明の合わせガラスは、合わせガラスそのものの皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%以下となる領域(ガラス吸収領域)を少なくとも有する。
本発明の合わせガラスは、皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%以下のガラス吸収領域を有することで、皮膚によって太陽光を吸収する割合が低くなり、合わせガラスを介して太陽光を長期間浴びても灼熱感を感じにくくなる。
なお、皮膚吸収エネルギー率(Y1)は、後述する実施例に示す方法により算出したものである。
【0093】
皮膚吸収エネルギー率(Y1)は、皮膚吸収エネルギー率(X1)と同様に太陽光を浴び始めてから灼熱感を感じるまでの時間をより長くする観点から、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、12%以下がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。また、灼熱感を感じるまでの時間を長くするためには低ければ低いほどよいが、太陽光を必要以上に遮光して可視光線透過率が必要以上に低くならないようにするためには、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましい。
本発明では、合わせガラスは、上記した合わせガラス用中間膜と同様に、その全面(すなわち、全ての領域)の上記皮膚吸収エネルギー率(Y1)が上記範囲内となってよいし、一部のみが上記範囲内となってもよい。
合わせガラスにおいて、ガラス吸収領域の面積は、特に限定されないが、全領域の5%以上100%以下が好ましく、10%以上100%以下がより好ましく、30%以上100%以下が更に好ましい。また、吸収領域の面積は、40%以上であってもよく、60%以上であってもよく、80%以上であってもよい。
【0094】
本発明の合わせガラスの可視光線透過率は、用途、使用位置などに応じて適宜設定すればばよいが、70%未満となる領域(以下、「ガラス遮光性領域」ともいう)を有していてもよいし、可視光線透過率(Y2)が70%以上となる領域(以下、「ガラス透過性領域」ともいう)を有していてもよい。
【0095】
(ガラス遮光性吸収領域)
本発明の一実施形態において、合わせガラスは、上記した合わせガラス用中間膜と同様の観点から、可視光線透過率(Y2)が70%未満となり、かつ皮膚吸収エネルギー率(Y1)が15%以下となる領域(以下、「ガラス遮光性吸収領域」ともいう)を有することが好ましい。
また、合わせガラスは、皮膚吸収エネルギー率(Y1)が、上記ガラス遮光性吸収領域において、12%以下となる領域を有することがより好ましく、10%以下となる領域を有することが更に好ましく、7%以下となる領域を有することが特に好ましく、理論上は0%となる領域を有することが最も好ましい。また、ガラス遮光性吸収領域における皮膚吸収エネルギー率(Y1)は、0.1%以上が好ましく、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましい。
合わせガラスは、上記した合わせガラス用中間膜と同様の観点から、上記した所望の皮膚吸収エネルギー率(Y1)を有するガラス遮光性吸収領域において、可視光線透過率(Y2)が50%以下となることが好ましく、20%以下となることがより好ましく、4%以下となることがさらに好ましい。また、合わせガラスの上記可視光線透過率(Y2)は、上記ガラス遮光性吸収領域において、0.5%以上となることが好ましく、0.7%以上となることより好ましく、1%以上となることがさらに好ましい。
ガラス遮光性吸収領域を有する合わせガラスは、合わせガラスの全領域(全面)がガラス遮光性吸収領域となってもよいし、一部の領域がガラス遮光性吸収領域となってもよい。
合わせガラスは、一部の領域がガラス遮光性吸収領域となる場合、ガラス遮光性吸収領域以外の領域は、可視光線透過率(Y2)が70%以上となる領域(ガラス透過性領域)であってもよいし、可視光線透過率(Y2)が70%未満となるが、皮膚吸収エネルギー率(Y1)が15%より大きくなるガラス遮光性領域であってもよいし、これら両方の領域が存在してもよい。
合わせガラスにおいて、ガラス遮光性吸収領域の面積は、特に限定されないが、全領域の5%以上100%以下が好ましく、10%以上100%以下がより好ましい。
【0096】
(ガラス透過性吸収領域)
本発明の別の好ましい実施形態において、合わせガラスは、上記合わせガラス用中間膜と同様に、可視光線透過率(Y2)が70%以上となり、かつ皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%以下となる領域(以下、「ガラス透過性吸収領域」ともいう)を有する。また、合わせガラスは、同様の観点から、ガラス透過性吸収領域において、上記皮膚吸収エネルギー率(Y1)が20%以下となる領域を有することが好ましい。
合わせガラスは、合わせガラス用中間膜において説明したとおり、ガラス透過性吸収領域において、皮膚吸収エネルギー率(Y1)が10%以上でもよく、15%以上であってもよい。さらに、合わせガラスは、合わせガラス用中間膜と同様の観点から、ガラス透過性吸収領域において、可視光線透過率(Y2)が75%以上となる領域を有することが好ましく、80%以上となる領域を有することがより好ましい。また、合わせガラスは、ガラス透過性吸収領域において、上記可視光線透過率(Y2)が95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、87%以下であることがさらに好ましい。
【0097】
合わせガラスは、ガラス透過性吸収領域を有する場合、その全領域がガラス透過性吸収領域となってもよいし、一部の領域がガラス透過性吸収領域となってもよい。一部の領域がガラス透過性吸収領域となる場合、その他の領域は、可視光線透過率(Y2)が70%未満となる領域(ガラス遮光性領域)であってもよいし、可視光線透過率(Y2)が70%以上となるが、皮膚吸収エネルギー率(Y1)が25%より大きくなる領域であってもよいし、これら領域の両方が存在してもよい。
合わせガラスにおいて、ガラス透過性吸収領域の面積は、特に限定されないが、全領域の5%以上100%以下が好ましく、10%以上100%以下がより好ましい。
【0098】
本発明のさらに別の好ましい実施形態において、合わせガラスは、合わせガラス用中間膜と同様の観点から、上記したガラス遮光性吸収領域と、ガラス透過性吸収領域の両方を有する。合わせガラスが、上記したガラス遮光性吸収領域と、ガラス透過性吸収領域の両方を有する場合、ガラス遮光性吸収領域及びガラス透過性吸収領域それぞれにおける可視光線透過率(Y2)及び皮膚吸収エネルギー率(Y1)の範囲などは、上記の通りである。
【0099】
本発明の合わせガラスは、上記のように皮膚吸収エネルギー率(Y1)が所定の範囲内であればよいが、合わせガラスのT1500は、例えば30%以下、好ましくは0.1%以上28%以下、より好ましくは0.1%以上15%以下、更に好ましくは0.1%以上5%以下である。
なお、本発明の合わせガラスは、上記のようにガラス遮光性吸収領域、ガラス透過性吸収領域、又はこれらの両方を有するが、ガラス遮光性吸収領域を有する場合にはガラス遮光性吸収領域の上記T1500が上記範囲内となるとよい。また、ガラス透過性吸収領域を有する場合には、ガラス透過性吸収領域の上記T1500が上記範囲内となるとよい。さらに、ガラス遮光性吸収領域及びガラス透過性吸収領域の両方を有する場合には、ガラス遮光性吸収領域及びガラス透過性吸収領域の両方の上記T1500が上記範囲内となるとよい。
【0100】
合わせガラスが、ガラス透過性領域と、ガラス遮光性領域を有する場合、これら領域は、厚さ方向に直交する方向に沿って並ぶように配置される。また、合わせガラスは、可視光線透過率(Y2)が連続的に変化するガラスグラデーション領域を有してもよい。
ガラスグラデーション領域は、ガラス透過性領域に設けられてもよいし、ガラス遮光性領域に設けられてもよい。また、ガラス透過性領域とガラス遮光性領域に跨るように設けられ、ガラス透過性領域とガラス遮光性領域の境界がガラスグラデーション領域にあってもよい。すなわち、ガラスグラデーション領域は、その全体がガラス透過性領域、又はガラス遮光性領域となってもよいが、一部がガラス透過性領域となり、一部がガラス遮光性領域となってもよい。
なお、ガラスグラデーション領域における皮膚吸収エネルギー率(Y1)は、可視光線透過率(Y2)とともに連続的に変化するとよい。
【0101】
合わせガラスは、ガラス透過性領域と、ガラス遮光性領域を有する場合、ガラス透過性領域において、上記したとおり、皮膚吸収エネルギー率(Y1)が所定の範囲となり、少なくとも一部がガラス透過性吸収領域となってもよい。同様に、合わせガラスは、ガラス遮光性領域において、上記したとおり、皮膚吸収エネルギー率(Y1)が所定の範囲となり、少なくとも一部がガラス遮光性吸収領域となっていてもよい。勿論、ガラス透過性領域及びガラス遮光性領域両方の少なくとも一部が、それぞれガラス透過性吸収領域及びガラス遮光性吸収領域となっていてもよい。
【0102】
合わせガラスにおいては、上記した合わせガラス用中間膜を使用すればよく、合わせガラス用中間膜に使用される樹脂や、樹脂に配合される各種添加剤(可塑剤、遮熱剤、着色剤、その他の添加剤)の詳細は、上記したとおりである。
また、ガラス吸収領域、ガラス遮光性領域、ガラス遮光性吸収領域、ガラス透過性領域、及びガラス透過性吸収領域それぞれにおける合わせガラス用中間膜の構成は、上記した吸収領域、遮光性領域、遮光性吸収領域、透過性領域、及び透過性吸収領域における合わせガラス用中間膜の構成と同様である。
したがって、ガラス遮光性吸収領域において、合わせガラス用中間膜は、着色剤を含有することが好ましく、着色剤と遮熱剤とを含有することがより好ましい。また、ガラス透過性吸収領域において、合わせガラス用中間膜は、遮熱剤を含有することが好ましい。そして、各領域における遮熱剤及び着色剤の含有量、含有量比なども上記したとおりである。
【0103】
さらに、合わせガラス用中間膜の層構成も上記した通りであり、その詳細は上記した通りである。このとき、ガラス吸収領域、ガラス遮光性領域、ガラス遮光性吸収領域、ガラス透過性領域、ガラス透過性吸収領域、ガラスグラデーション領域は、それぞれ、吸収領域、遮光性領域、遮光性吸収領域、透過性領域、透過性吸収領域、グラデーション領域それぞれと同様に形成でき、同様の構成を有する。
【0104】
なお、合わせガラスは、2枚のガラス板の間に、上記した合わせガラス用中間膜を配置して、これらを圧着などすることで一体化することで製造すればよい。
【0105】
本発明の合わせガラスは、自動車などの各種車両、航空機、船舶、建築物等の窓ガラスとして使用可能であるが、自動車用合わせガラスとして使用することが好ましい。自動車用合わせガラスは、フロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラスのいずれでもよい。これらの中では、フロントガラス、ルーフガラスが好ましい。
合わせガラスは、自動車用合わせガラスに使用する場合、その全面を遮光性領域、又は透過性領域としてもよいが、その一部を遮光性領域としてもよいし、透過性領域としてもよい。
例えば、フロントガラスでは、上部にガラス遮光性領域を設けてサンシェードを形成し、かつ下部にガラス透過性領域を設けるとよい。この場合、ガラス遮光性領域の少なくとも一部をガラス吸収領域(ガラス遮光性吸収領域)とすることが好ましい。ただし、ガラス透過性領域の少なくとも一部をガラス吸収領域(ガラス透過性吸収領域)としてもよく、ガラス遮光性領域及びガラス透過性領域それぞれの少なくとも一部をガラス吸収領域としてもよい。
また、例えば、ルーフガラスでは、例えば、その全面をガラス遮光性吸収領域とすればよい。なお、自動車ルーフ用合わせガラスは、その少なくとも一部がルーフに配置されればよく、例えば、ルーフとリアにわたって配置されるガラスも自動車ルーフ用合わせガラスとする。
【0106】
なお、本発明のガラス構成体は、皮膚吸収エネルギー率(X1)が低い吸収領域を有する合わせガラス用中間膜を使用することによりガラス吸収領域が形成されたが、皮膚吸収エネルギー率(X1)が低い吸収領域を有する合わせガラス用中間膜が設けられなくてもよい。例えば、ガラス板の表面に、皮膚吸収エネルギー率が低い被膜層が形成されることでガラス吸収領域が形成されてもよい。すなわち、ガラス構成体としては、ガラス板と、ガラス板との少なくとも一方の面に設けられる被膜層とを備えるものも使用できる。
【0107】
被膜層は、遮熱剤又は着色剤を含有するとよく、着色剤及び遮熱剤の両方を含有することが好ましい。被膜層は、遮熱剤、着色剤、又はその両方を含有することで、被膜層が設けられた領域をガラス吸収領域とすることができる。なお、被膜層により遮熱剤及び着色剤の詳細は、以下の含有量を除いて合わせガラス用中間膜におけるこれらと同様でありその説明は省略する。被膜層における遮熱剤の含有量は、上記した皮膚吸収エネルギー率(Y1)が所定の範囲内となるようにすればよいが、例えば0.1g/m2以上25g/m2以下、好ましくは0.3g/m2以上10g/m2以下、さらに好ましくは0.8g/m2以上5g/m2以下である。また、被膜層における着色剤の含有量は、好ましくは0.06g/m2以上25g/m2以下、より好ましくは0.12g/m2以上5g/m2以下、さらに好ましくは0.3g/m2以上2.0g/m2以下である。なお、各種含量比は、上記合わせガラス用中間膜において説明したとおりである。
また、ガラス吸収領域は、合わせガラス以外のガラス構成体においても、ガラス遮光性吸収領域であってもよいし、ガラス透過性吸収領域であってよいし、これら両方から構成されてもよい。いずれの場合の詳細は、合わせガラスの場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0108】
被膜層は、遮熱剤、着色剤、又はその両方に加えて、バインダー樹脂をさらに含有することが好ましい。バインダー樹脂を含有することで、遮熱剤、着色剤、又はその両方をガラス板の表面に膜状に形成しやすくなる。バインダー樹脂は、例えば、UV硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が目的に応じて選定可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメタロキサンポリマー、ポリシロキサン、シリコーン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で使用されてもよいし、2種以上を混合して使用されてもよい。また、バインダー樹脂の代わりに金属アルコキシドを用いたバインダーの利用も可能である。金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを用いたバインダーは、加熱等により加水分解及び縮重合させることで、酸化物膜を形成することが可能である。
さらに、被膜層は、必要に応じて可塑剤、分散剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、可塑剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0109】
被膜層は、遮熱剤、着色剤、又はその両方が配合され、また、必要に応じてさらにバインダー樹脂などのバインダー、各種添加剤が配合された塗布液を、ガラス板上に塗布することで形成できる。
また、ガラス板に塗布された塗布液は、適宜、加熱乾燥などされるとよい。また、バインダー樹脂として硬化性樹脂を使用する場合には、ガラス板に塗布した後、必要に応じて、加熱、又は紫外線若しくは電子線照射により硬化性樹脂を硬化させるとよい。
塗布液において、遮熱剤、着色剤などは分散されているとよい。塗布液に使用される分散媒体としては、各種有機溶剤、水など、種々のものを選択することが可能である。また、バインダー樹脂が硬化性樹脂であり硬化前に液状であったり、バインダー樹脂の少なくとも一部が液状樹脂であったりする場合には、バインダー樹脂を分散媒体と使用してもよい。また、可塑剤を使用する場合には、可塑剤を分散媒体としてもよい。
【0110】
また、ガラス構成体では、ガラス板そのものの構成によりガラス吸収領域を形成してもよい。その場合、ガラス構成体は、ガラス板単体からなるものであってもよい。ガラス板そのものの構成によりガラス吸収領域を形成する場合、ガラス板の厚みは、例えば1~10mm程度、好ましくは2~6mm程度である。
ガラス板そのものの構成によりガラス吸収領域を形成する場合、ガラス板を構成する成分を適宜調整することで、ガラス板そのものの皮膚吸収エネルギーを25%以下として、ガラス吸収領域を形成するとよい。例えば、ガラス板がソーダライムガラスの場合、一般的に、SiO2、Na2O、CaO、Al2O3に加えて、任意成分としてMgO、Fe2O3、FeO、TiO2、Ce2O3、V2O5、K2O、CeO2などを含むが、例えば、これら任意成分のうち、少なくとも1種の配合量、配合の有無などを変更することで、ガラス吸収領域を形成してもよい。例えば、Fe2O3は、1100nm付近に吸収ピークを有するので、Fe2O3の含有量を多くしたり、FeOに対するFe2O3の含有量の比を高くしたりすることで、ガラス板の皮膚吸収エネルギー率を低くしてガラス吸収領域を形成するとよい。
【0111】
ガラス板そのものによりガラス吸収領域を形成する場合、ガラス板は、公知の方法で製造できるが、例えばFe2O3を含有するガラス板を製造する場合、下記の工程(i)~(iv)を順に経て製造するとよい。
(i)目標とするガラス組成になるように、ガラス母組成原料、鉄源等の着色成分原料、還元剤、清澄剤等を混合し、ガラス原料を調製する。
(ii)ガラス原料を連続的に溶融窯に供給し、約1400~1550℃に加熱し溶融させて溶融ガラスとする。
(iii)溶融ガラスを清澄した後、フロート法等のガラス板成形法により所定の厚さのガラス板に成形する。
(iv)ガラス板を徐冷した後、所定の大きさに切断する。
ガラス母組成原料としては、珪砂、ソーダ灰、石灰石、長石等、通常のソーダライムシリカガラスの原料として用いられているものが挙げられる。鉄源としては、鉄粉、酸化鉄粉、ベンガラ等が挙げられる。還元剤としては、炭素、コークス等が挙げられる。還元剤は、溶融ガラス中の鉄の酸化を抑制することができる。また、所定の大きさに切断したガラス板は、必要に応じて強化処理をしてもよい。
【実施例0112】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0113】
(皮膚吸収エネルギー率(X1),(Y1))
擬似太陽光源(セリック株式会社製「XC-500E」)の分光光強度を280~2500nmの範囲で1nmごとに取得し、1nmごとの相対照度を求めた。相対照度は、波長毎の分光光強度の相対的な強度を示し、280~2500nmの相対照度の合計が1となるように算出した。相対照度の算出結果を表1~5に示す。その相対照度を基に、ISO13837の規定通り、ISO9845 AnnexB記載に従い台形公式(Trapezoital Rule)を用いて、表6に示す重価係数Aを得た。
また、人間の肌サンプルに基づき、表6に示す皮膚の分光吸収率Bを予め算出した。人間の肌サンプルは、黄色人種の手に基づき実測して算出したものである。本発明においては、皮膚吸収エネルギー率(X1),(Y1)の算出に当たっては、表6に示す重価係数Aと分光吸収率Bを使用するものとする。
なお、表6に示すように重価係数A及び分光吸収率Bは、380nm未満で5nm毎、380~780nmで10nm毎、800nm以上で50nm毎に算出したものであった。
【0114】
各実施例、比較例の合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体に関して、JIS R3106(1998)に準拠して、分光光度計(日立ハイテクノロジー社製「U-4100」)を用いて、分光光透過率を測定した。測定の際、合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体を透過した平行光のみが積分球へ受光するように、光源と積分球との光路上で且つ光軸の法線に平行となるように積分球から13cm離れた位置に合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体を設置し、分光透過率(透過率C)を測定した。測定条件は、スキャンスピードを300nm/min、スリット巾を8nmとし、それ以外の条件はJIS R 3106:1998に準拠して測定を行った。分光透過率(透過率C)は、重価係数A及び分光吸収率Bと同様の波長毎に測定した。
波長毎に、重価係数A(λ)と、分光吸収率B(λ)と、透過率C(λ)とを掛け合わせて(A(λ)×B(λ)×C(λ))を算出し、その合計(Σ(A(λ)×B(λ)×C(λ)))を皮膚吸収エネルギー率(Y1)とした。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
(可視光線透過率(X2)、(Y2)の測定)
可視光線透過率(X2),(Y2)は、JIS R3106:1998に準拠して、分光光度計(日立ハイテクノロジー社製「U-4100」)を用いて、得られた合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体の波長380~780nmにおける可視光線光透過率(Tv)を測定して求めた。
測定の際、合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体を透過した平行光のみが積分球へ受光するように、光源と積分球との光路上で且つ光軸の法線に平行となるように積分球から13cm離れた位置に合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体を設置し、分光透過率を測定した。得られた上記分光透過率から可視光線透過率を算出した。また測定条件は、スキャンスピードを300nm/min、スリット巾を8nmとし、それ以外の条件はJIS R 3106:1998に準拠して測定を行った。
【0122】
(T1500)
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、得られた合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体の波長1500nmにおける透過率である「T1500」を測定した。測定の際、合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体を透過した平行光のみが積分球へ受光するように、光源と積分球との光路上で且つ光軸の法線に平行となるように積分球から13cm離れた位置に合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体を設置し、1500nmにおける透過率を測定した。得られた上記分光透過率から可視光線透過率を算出した。また測定条件は、スキャンスピードを300nm/min、スリット巾を8nmとし、それ以外の条件はJIS R 3106:1998に準拠して測定を行った。
【0123】
(痛みを感じるまでの時間)
擬似太陽光源(セリック株式会社製「XC-500E」)から、65cm先の壁面に照射強度が1000W/m2になるように照射光を照射した。照射は、外光が影響しないように暗室で行った。照射強度は英弘精機株式会社製の全天日射計「Pyranometer MS-602」で計測した。壁面は壁面温度の上昇を抑えるため白色とした。照射面から30cm離れた、照射光源の光軸上に合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体を設置した。
室温23℃、湿度50RH%環境下で、被験者に、安静にした状態で、手の甲の表面温度が33~35℃の間で安定してから照射壁面に手を置かせた。被験者が、手を置いてから、ひりひりとした痛み(灼熱感)を感じ始めるまでの時間を計測した。なお、合わせガラス又は合わせガラス以外のガラス構成体は、照射光がその性能を評価するための領域を介して手の甲に照射されるように配置した。
5人の評価者で同様に痛みを感じ始めるまでの時間を計測して、その平均時間を「痛みを感じるまでの時間」とした。
【0124】
(各層の厚さ)
合わせガラス用中間膜を、片刃カミソリを用いて厚さ方向に平行に切断し、その断面をマイクロスコープ(オリンパス社製「DSX-100」)を用いて観察し、付属ソフト内の計測ソフトを用いて、各層の厚みを測定した。
【0125】
なお、実施例、比較例で使用した各成分は、以下の通りである。
(1)樹脂
PVB:ポリビニルブチラール樹脂、アセタール化度69モル%、水酸基量30モル%、アセチル化度1モル%、重合度1700
(2)可塑剤
3GO:トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート
(3)遮熱剤
遮熱剤1:錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、平均粒子径35nm
遮熱剤2:セシウムドープ酸化タングステン粒子(CWO粒子)、平均粒子径50nm
遮熱剤3:バナジウムフタロシアニン化合物、山田化学社製「NIR-43V」
(4)着色剤
着色剤1:黒色色素、カーボンブラック顔料、ピグメントブラック7(CASNo.1333-86-4)
着色剤2:青色色素、銅フタロシアニン顔料、ビグメントブルー15(CASNo.12239-87-1)
着色剤3:紫色色素、アントラキノン系分散染料、ディスパースバイオレット28(CASNo.81-42-5)
着色剤4:黄色色素:アントラキノン系染料、ソルベントイエロー163(CASNo.106768-99-4)
【0126】
[実施例1]
(合わせガラス用中間膜の作製)
まず、可塑剤40質量部に、分散剤以外の添加剤を添加した。すなわち、可塑剤40質量部に、遮熱剤1を0.633質量部(合わせガラス用中間膜全量基準で0.45質量%)、遮熱剤2を0.028質量部(合わせガラス用中間膜全量基準で0.02質量%)、及び遮熱剤3を0.042質量部(合わせガラス用中間膜全量基準で0.03質量%))を混合した。そこに更に分散剤としてリン酸エステル化合物(合わせガラス用中間膜全量基準で0.03質量%)0.06質量部を添加した後、混合し混合液を得た。
次に、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)100質量部に対し、得られた混合液全量を添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を押出機を用いて押出して、厚み800μmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0127】
(合わせガラスの作製)
上記で得られた合わせガラス用中間膜を、23℃、28%RHの恒温恒湿条件で4時間保持した後、2枚のクリアガラス(縦30mm×横30mm×厚さ2.5mm、日射透過率が87.3%の、JIS R 3106に準拠)の間に挟持し、積層体とした。得られた積層体を、230℃の加熱ロールを用いて仮圧着させた。仮圧着された積層体を、オートクレーブを用いて135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着し、合わせガラスを作製した。
得られた合わせガラスについて、可塑光線透過率(Tv)、T1500、及び皮膚吸収エネルギー率を測定した。測定結果について、表7に示す。得られた皮膚吸収エネルギー率は、基準ガラスを用いて得た値であり、合わせガラス用中間膜の皮膚吸収エネルギー率(X1)であり、合わせガラスの皮膚吸収エネルギー率(Y1)でもある。可視光線透過率(Tv)、T1500も同様である。以下の実施例、比較例も同様である。さらに、第1の層の最薄部及び第2の層の最厚部の厚さを測定し、それぞれの合計厚さを表1に示す。
【0128】
[実施例2]
PVB100質量部に対して、可塑剤40質量部を添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練し、第1の樹脂組成物を得た。
可塑剤40質量部に、着色剤1を0.273質量部(第2の層全量基準で0.195質量%)、着色剤3を0.124質量部(第2の層全量基準で0.088質量%)、及び着色剤4を0.034質量部(第2の層全量基準で0.024質量%)混合し混合液を得た。次に、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)100質量部に対し、得られた混合液全量を添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練して第2の樹脂組成物を得た。
【0129】
(合わせガラス用中間膜の作製)
第1の押出機に上記第1の樹脂組成物を供給した。また、第2の押出機に上記第2の樹脂組成物を供給した。第1の押出機と第2の押出機との先端に多層用フィードブロックを取り付けて、押し出される樹脂組成物の量を調整しつつ共押出することにより、
図4に示すように、第2の領域33において2つの第1の層31A、31B間に埋め込まれた第2の層32を有し、かつ第1の領域34において第1の層31Cからなる合わせガラス用中間膜を得た。
得られた合わせガラス用中間膜において、最厚部33Aを構成し、遮光性領域である領域33X、及び透過性領域である領域34それぞれにおける可塑光線透過率(Tv)、Ts1500、及び皮膚吸収エネルギー率を測定した。
【0130】
[実施例3]
可塑剤40質量部に、まず、分散剤(リン酸エステル化合物)以外の添加剤、すなわち、遮熱剤1を0.21質量部(第1の層全量基準で0.15質量%)混合し、そこに更に分散剤としてリン酸エステル化合物0.021質量部を添加した後、さらに混合し混合液を得た。
次に、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)100質量部に対し、得られた混合液全量を添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練して、第1の層を形成するための第1の樹脂組成物を得た。
次に、配合が表7に示すとおりになるように、第1の樹脂組成物と同様の方法で第2の層を形成するための第2の樹脂組成物を得た。
その後、実施例2と同様に、第1及び第2の樹脂組成物を使用して合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製して、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを評価した。
【0131】
[実施例4~6、10]
第1の層及び第2の層における配合を表7、8に示すとおりになるように、実施例3と同様の方法で、第1及び第2の樹脂組成物を調製した。その後、実施例3と同様に、第1及び第2の樹脂組成物を使用して合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製して、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを評価した。
ただし、実施例10では、第2の層の最厚部における厚さ、及び第1の層の最薄部における合計厚さが表8に示すとおりになるように共押出するときの樹脂量を調整した。
【0132】
[実施例7~9]
実施例7では、第1の層及び第2の層における配合が表7に示すとおりになるように変更して、実施例3と同様の方法で、第1及び第2の樹脂組成物を調製した。
実施例8では、第1の層における配合が表8に示すとおりになるように、実施例2と同様の方法で、第1の樹脂組成物を調製し、第2の層における配合が表8に示すとおりになるように変更して、実施例3と同様の方法で、第2の樹脂組成物を調製した。
実施例9では、第1の層における配合が表8に示すとおりになるように変更して、実施例3と同様の方法で、第1の樹脂組成物を調製し、第2の層における配合が表8に示すとおりになるように変更して、実施例2と同様の方法で、第2の樹脂組成物を調製した。
【0133】
その後、第1の押出機に上記第1の樹脂組成物を供給した。また、第2の押出機に上記第2の樹脂組成物を供給した。第1の押出機と第2の押出機との先端に多層用フィードブロックを取り付けて、共押出することにより、
図2に示すように、2つの第1の層21A,21Bの間に1つの第2の層22が配置された合わせガラス用中間膜20を得た。2つの第1の層21A、21Bの厚さは、互いに同一であり、かついずれの位置においても同一の厚さを有していた。第2の層22もいずれの位置においても同一の厚さを有しており、全ての領域が遮光性領域23となった。
次いで、実施例1と同様に合わせガラスを作製して、得られた合わせガラスについて、可塑光線透過率(Tv)、T1500、及び皮膚吸収エネルギー率を測定した。測定結果について、表7に示す。
【0134】
[実施例11、12]
(合わせガラス用中間膜の作製)
樹脂組成物の配合を表8の第2の層欄に示す配合となるように配合量を変更した点を除いて、実施例1と同様の方法で、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製して、これらを評価した。
【0135】
[比較例1]
PVB100質量部に対して、可塑剤40質量部を添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて押出して、厚み800μmの合わせガラス用中間膜を得た。次に、実施例1と同様の方法により合わせガラスを作製して、合わせガラスについて実施例1と同様に評価した。
【0136】
[比較例2]
配合が表8に示すとおりになるように変更して、実施例1と同様の方法で合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製して、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを評価した。
【0137】
[比較例3]
第2の層における配合を表8に示すとおりになるように変更して、実施例2と同様の方法で、第1及び第2の樹脂組成物を調製した。その後、実施例3と同様に、第1及び第2の樹脂組成物を使用して合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製して、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを評価した。
【0138】
【0139】
【0140】
※表7、8において、透過性領域及び遮光性領域の含有量は、透過性領域、遮光性領域それぞれにおける各成分の含有量を示す。なお、実施例2~6、10、比較例3における透過性領域は、第1の領域における含有量を示し、遮光性領域は、最厚部における全層の合計の含有量を示す。
※実施例2~6、10、比較例3における透過性領域の評価結果は第1の領域における評価結果を示し、遮光性領域の評価結果は、最厚部における評価結果を示す。
【0141】
[実施例13、14、比較例4,5]
酢酸エチルにポリメチルメタクリレートを溶解させ、さらに遮熱材1、2、3を溶液中に分散させた。得られた溶液をJIS R 3106に準拠した日射透過率が87.3%であり厚み2.5mmのクリアガラスの一方の面上に塗工し、MEKを乾燥除去し、塗膜(被膜層)を形成し、ガラス構成体を得た。各遮熱剤の塗膜中の面密度は表9の通りであった。被膜層の配合を変更し同様に実施例14、比較例4、5のガラス構成体を作成した。
【0142】
【0143】
以上の実施例1~14では、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスなどのガラス構成体のいずれかの領域における皮膚吸収エネルギー率(X1),(Y1)を25%以下とすることで、太陽光を照射してから痛みを感じるまでの時間を十分に長くすることができた。
それ対して、比較例1~5では、皮膚吸収エネルギー率(X1),(Y1)が25%より大きくなったので、太陽光を照射してから痛みを感じるまでの時間を十分に長くすることができなかった。