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特開2024-4022電力増幅器の設計方法、電力増幅器の製造方法、および電子装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004022
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電力増幅器の設計方法、電力増幅器の製造方法、および電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/21 20060101AFI20240109BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H03F3/21
H03F3/68 220
H01L27/04 H
H01L27/06 311Z
H01L29/80 H
H01L29/80 U
H01L29/44 L
H01L29/50 J
H01L29/44 P
H01L21/82 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103449
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 菜緒子
【テーマコード(参考)】
4M104
5F038
5F048
5F064
5F102
5J500
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD07
4M104DD34
4M104DD52
4M104DD53
4M104DD68
4M104FF02
4M104FF11
4M104GG12
4M104HH20
5F038AV06
5F038AZ04
5F038BH07
5F038BH16
5F038CA02
5F038CA08
5F048AC01
5F048AC10
5F048BA01
5F048BA14
5F048BA15
5F048BF02
5F048BF07
5F048CC09
5F048CC11
5F048CC18
5F064CC08
5F064DD03
5F064DD24
5F064EE09
5F064EE52
5F102FA04
5F102GB02
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ05
5F102GJ06
5F102GJ10
5F102GL04
5F102GL07
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GS01
5F102GS09
5F102GT01
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC19
5F102HC21
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC14
5J500AC33
5J500AC75
5J500AC86
5J500AC92
5J500AF15
5J500AF16
5J500AH09
5J500AH24
5J500AH29
5J500AH33
5J500AK29
5J500AM19
5J500AQ02
5J500AQ03
5J500AT01
5J500AT07
5J500WU08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】出力電力の低下を抑制するが可能な、電力増幅器の設計方法、電力増幅器の製造方法を提供する。
【解決手段】電力増幅器100において、基板30上に、第1トランジスタ10と、低出力の第2トランジスタ20とを、並列接続で設け、かつ、第1トランジスタと第2トランジスタとの間隔Lを、第1トランジスタの発熱量と第1トランジスタの熱抵抗とにより定まる、第1トランジスタからの距離と当該距離だけ離れた基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、温度上昇値が所定値以下となる距離となるようにすることで、出力電力の低下を抑制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、複数の第1ゲートフィンガーを有する第1トランジスタと、前記第1トランジスタと所定間隔を空けて配置され、前記第1トランジスタに並列接続され、複数の第2ゲートフィンガーを有し、前記第1トランジスタより出力電力が小さい第2トランジスタと、が設けられる電力増幅器の設計方法であって、
前記第1トランジスタの発熱量を求める第1ステップと、
前記第1トランジスタの熱抵抗を求める第2ステップと、
前記第1ステップで求めた前記発熱量と前記第2ステップで求めた前記熱抵抗とにより定まる、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、前記温度上昇値が所定値以下となる前記第1トランジスタからの第1距離を求める第3ステップと、
前記第3ステップで求めた前記第1トランジスタからの前記第1距離を、前記第1トランジスタと前記第2トランジスタとの間の前記所定間隔とする第4ステップと、を備える電力増幅器の設計方法。
【請求項2】
前記第3ステップは、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す反比例の式から、前記温度上昇値が所定値以下となる前記第1トランジスタからの前記第1距離を求める、請求項1に記載の電力増幅器の設計方法。
【請求項3】
前記第1トランジスタが発熱により消失する出力電力を求める第5ステップと、
前記基板上に設けられる1または複数の前記第2トランジスタの合計出力電力が、前記第5ステップで求めた前記出力電力と同じになるように、前記1または複数の第2トランジスタを設計する第6ステップと、を備える、請求項1または2に記載の電力増幅器の設計方法。
【請求項4】
前記第6ステップは、前記複数の第2ゲートフィンガーの本数を前記複数の第1ゲートフィンガーの本数より少なくする、請求項3に記載の電力増幅器の設計方法。
【請求項5】
前記第6ステップは、前記複数の第2ゲートフィンガーのゲート幅を前記第1ゲートフィンガーのゲート幅より小さくする、請求項3に記載の電力増幅器の設計方法。
【請求項6】
前記第6ステップは、前記複数の第2ゲートフィンガーの間隔を前記複数の第1ゲートフィンガーの間隔より大きくする、請求項3に記載の電力増幅器の設計方法。
【請求項7】
基板上に、複数の第1ゲートフィンガーを有する第1トランジスタを形成する工程と、
前記基板上に、前記第1トランジスタと所定間隔を空けて設けられ、前記第1トランジスタに並列接続され、複数の第2ゲートフィンガーを有し、前記第1トランジスタより出力電力が小さい第2トランジスタを形成する工程と、を備え、
前記第2トランジスタを形成する工程は、前記第1トランジスタとの前記所定間隔が、前記第1トランジスタの発熱量と前記第1トランジスタの熱抵抗とにより定まる、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、前記温度上昇値が所定値以下となる第1距離となるように、前記第2トランジスタを形成する、電力増幅器の製造方法。
【請求項8】
入力端子と前記第1トランジスタとの間に、前記第1トランジスタの入力インピーダンスを所定のインピーダンスに整合する入力整合部を接続する工程と、
前記入力整合部と前記第1トランジスタとの間のノードと、前記第2トランジスタと、の間に、第1インダクタとキャパシタとを含み、前記第2トランジスタと前記入力整合部のインピーダンスの整合を行うインピーダンス調整部を接続する工程と、を備える、請求項7に記載の電力増幅器の製造方法。
【請求項9】
前記ノードと前記第1トランジスタとの間に第2インダクタを接続する工程を備え、
前記第2インダクタのインダクタンスに対する前記第1インダクタのインダクタンスの割合は、前記第2トランジスタの出力電力に対する前記第1トランジスタの出力電力の割合と同じである、請求項8に記載の電力増幅器の製造方法。
【請求項10】
電力増幅器を形成する工程と、
前記電力増幅器に接続され、前記電力増幅器から電力供給を受ける素子を形成する工程と、を備え、
前記電力増幅器を形成する工程は、
基板上に、複数の第1ゲートフィンガーを有する第1トランジスタを形成する工程と、
前記基板上に、前記第1トランジスタと所定間隔を空けて設けられ、前記第1トランジスタに並列接続され、複数の第2ゲートフィンガーを有し、前記第1トランジスタより出力電力が小さい第2トランジスタを形成する工程と、を含み、
前記第2トランジスタを形成する工程は、前記第1トランジスタとの前記所定間隔が、前記第1トランジスタの発熱量と前記第1トランジスタの熱抵抗とにより定まる、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、前記温度上昇値が所定値以下となる第1距離となるように、前記第2トランジスタを形成する、
電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅器の設計方法、電力増幅器の製造方法、および電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のゲートフィンガーを有するトランジスタを備えた電力増幅器が知られている。また、トランジスタを有する複数のユニットセルが並列接続された電力増幅器が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0288333号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力増幅器は、高出力で安定的に動作することが望まれている。しかしながら、複数のゲートフィンガーを有するトランジスタでは、フィンガーが密集しているため放熱性が低下し、その結果、出力電力が所望の値より低下することがある。
【0005】
1つの側面では、出力電力の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、基板上に、複数の第1ゲートフィンガーを有する第1トランジスタと、前記第1トランジスタと所定間隔を空けて配置され、前記第1トランジスタに並列接続され、複数の第2ゲートフィンガーを有し、前記第1トランジスタより出力電力が小さい第2トランジスタと、が設けられる電力増幅器の設計方法であって、前記第1トランジスタの発熱量を求める第1ステップと、前記第1トランジスタの熱抵抗を求める第2ステップと、前記第1ステップで求めた前記発熱量と前記第2ステップで求めた前記熱抵抗とにより定まる、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、前記温度上昇値が所定値以下となる前記第1トランジスタからの第1距離を求める第3ステップと、前記第3ステップで求めた前記第1トランジスタからの前記第1距離を、前記第1トランジスタと前記第2トランジスタとの間の前記所定間隔とする第4ステップと、を備える電力増幅器の設計方法である。
【0007】
1つの態様では、基板上に、複数の第1ゲートフィンガーを有する第1トランジスタを形成する工程と、前記基板上に、前記第1トランジスタと所定間隔を空けて設けられ、前記第1トランジスタに並列接続され、複数の第2ゲートフィンガーを有し、前記第1トランジスタより出力電力が小さい第2トランジスタを形成する工程と、を備え、前記第2トランジスタを形成する工程は、前記第1トランジスタとの前記所定間隔が、前記第1トランジスタの発熱量と前記第1トランジスタの熱抵抗とにより定まる、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、前記温度上昇値が所定値以下となる第1距離となるように、前記第2トランジスタを形成する、電力増幅器の製造方法である。
【0008】
1つの態様では、電力増幅器を形成する工程と、前記電力増幅器に接続され、前記電力増幅器から電力供給を受ける素子を形成する工程と、を備え、前記電力増幅器を形成する工程は、基板上に、複数の第1ゲートフィンガーを有する第1トランジスタを形成する工程と、前記基板上に、前記第1トランジスタと所定間隔を空けて設けられ、前記第1トランジスタに並列接続され、複数の第2ゲートフィンガーを有し、前記第1トランジスタより出力電力が小さい第2トランジスタを形成する工程と、を含み、前記第2トランジスタを形成する工程は、前記第1トランジスタとの前記所定間隔が、前記第1トランジスタの発熱量と前記第1トランジスタの熱抵抗とにより定まる、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、前記温度上昇値が所定値以下となる第1距離となるように、前記第2トランジスタを形成する、電子装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面として、出力電力の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1に係る電力増幅器の平面図である。
図2図2(a)は、図1のA-A断面図、図2(b)は、図1のB-B断面図である。
図3図3(a)は、第1トランジスタの一部を拡大した平面図、図3(b)は、第2トランジスタの一部を拡大した平面図である。
図4図4(a)および図4(b)は、実施例1に係る電力増幅器の製造方法を示す断面図(その1)である。
図5図5(a)および図5(b)は、実施例1に係る電力増幅器の製造方法を示す断面図(その2)である。
図6図6は、実施例1における第1トランジスタと第2トランジスタとの間の所定間隔の設計方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第1トランジスタからの距離と、当該距離だけ離れた基板上の温度上昇値と、の相関を示す図である。
図8図8は、比較例1に係る電力増幅器の平面図である。
図9図9は、比較例2に係る電力増幅器の平面図である。
図10図10(a)から図10(c)は、比較例1、比較例2、および実施例1に係る電力増幅器の動作時の温度について示す模式図である。
図11図11は、第1トランジスタおよび第2トランジスタの設計方法の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、実施例2に係る電力増幅器の回路図である。
図13図13(a)は、実施例3に係る電子装置を示す平面図、図13(b)は、内部の基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例0012】
図1は、実施例1に係る電力増幅器の平面図である。図2(a)は、図1のA-A断面図、図2(b)は、図1のB-B断面図である。図1図2(a)、および図2(b)において、フィンガーの延伸方向をX方向、フィンガーの配列方向をY方向、基板の厚さ方向をZ方向とする。図1図2(a)、および図2(b)のように、実施例1に係る電力増幅器100は、基板30上に、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20が設けられている。第2トランジスタ20は、Y方向から第1トランジスタ10を挟むように、第1トランジスタ10のY方向の両側に2つ設けられている。
【0013】
基板30は、例えば炭化シリコン(SiC)基板である。なお、基板30は、SiC基板以外でもよく、例えばシリコン(Si)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、リン化インジウム(InP)基板、ヒ化ガリウム(GaAs)基板、または窒化アルミニウム(AlN)基板でもよい。更に、基板30は、サファイア基板またはダイヤモンド基板でもよい。基板30には、1種の材料の単層構造が用いられてもよいし、2種以上の材料の積層構造が用いられてもよい。
【0014】
基板30上に半導体層34が設けられている。半導体層34は、例えば電子走行層31、電子供給層32、およびキャップ層33を含む。電子走行層31は、基板30上に設けられ、例えばアンドープのGaN層(i型GaN層)である。なお、電子走行層31は、GaN層以外の窒化物半導体層でもよい。例えば、電子走行層31は、インジウムガリウムナイトライド(InGaN)層、アルミニウムガリウムナイトライド(AlGaN)層、またはインジウムアルミニウムガリウムナイトライド(InAlGaN)層等でもよい。
【0015】
電子供給層32は、電子走行層31上に設けられ、例えばAlGaN層である。なお、電子供給層32は、AlGaN層以外の窒化物半導体層でもよい。例えば、電子供給層32は、インジウムアルミニウムナイトライド(InAlN)層、InAlGaN層、またはAlN層等でもよい。
【0016】
ここで、電子走行層31と電子供給層32には、バンドギャップの異なる窒化物半導体が用いられる。電子走行層31上に、電子走行層31よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体を用いた電子供給層32が設けられることで、バンド不連続を有するヘテロ接合構造が形成される。フェルミ準位が電子走行層31と電子供給層32との接合界面の伝導帯よりも上(高エネルギー側)となるようにすることで、接合界面の電子走行層31に二次元電子ガス(2DEG:Two Dimensional Electron Gas)35が生成される。電子走行層31上に、電子走行層31よりも格子定数の大きい窒化物半導体を用いた電子供給層32が設けられることで、電子供給層32にピエゾ分極が発生する。電子供給層32に用いられる窒化物半導体の自発分極およびその格子定数に起因して発生するピエゾ分極により、接合界面の電子走行層31に高濃度の二次元電子ガス35が生成される。電子走行層31および電子供給層32には、それらの接合界面近傍に二次元電子ガス35が生成されるような組み合わせの窒化物半導体が用いられる。
【0017】
キャップ層33は、電子供給層32上に設けられ、例えばn型GaN層である。キャップ層33は、n型GaN層以外の窒化物半導体層でもよい。キャップ層33は、電子供給層32を保護する機能を有する。
【0018】
なお、ここでは図示を省略しているが、基板30と電子走行層31との間に、初期層としてAlN層等が設けられてもよく、また、バッファ層としてAlGaN層等が設けられてもよい。電子走行層31と電子供給層32との間には、スペーサ層としてアンドープのAlGaN層(i型AlGaN層)等が設けられてもよい。
【0019】
第1トランジスタ10は、複数のゲートフィンガー11と、複数のソースフィンガー12と、複数のドレインフィンガー13と、を備える。ソースフィンガー12およびドレインフィンガー13は、半導体層34上にキャップ層33を貫通して電子供給層32と接続されるように設けられる。ソースフィンガー12およびドレインフィンガー13はオーミック電極として機能する。ソースフィンガー12およびドレインフィンガー13は、金属膜により形成され、例えばアルミニウム(Al)層とその上に設けられた金(Au)層との積層膜である。
【0020】
複数のソースフィンガー12は、Y方向に伸びたソースバスライン14に接続し、ソースバスライン14からX方向に伸びて、互いに並列に設けられている。複数のドレインフィンガー13は、複数のソースフィンガー12と交互に配置されるように、互いに並列に設けられている。複数のドレインフィンガー13は、Y方向に伸びたドレインバスライン15に接続し、ドレインバスライン15からX方向に伸びて、ソースフィンガー12と交互に配置されている。
【0021】
複数のゲートフィンガー11は、複数のソースフィンガー12と複数のドレインフィンガー13との間にそれぞれ配置されるように、互いに並列に設けられている。複数のゲートフィンガー11は、Y方向に伸びたゲートバスライン16に接続し、ゲートバスライン16からX方向に伸びている。ゲートフィンガー11は、金属膜により形成され、例えばニッケル(Ni)層とその上に設けられたAu層との積層膜である。
【0022】
ソースバスライン14とドレインバスライン15は、ソースフィンガー12とドレインフィンガー13がゲートフィンガー11を挟んで向かい合う対向領域に対して互いに反対側に設けられている。ゲートバスライン16は、対向領域に対してソースバスライン14と同じ側に設けられている。ソースバスライン14とゲートバスライン16とは、対向領域側からゲートバスライン16、ソースバスライン14の順に位置している。このため、ソースバスライン14からX方向に伸びたソースフィンガー12は、ゲートバスライン16と交差する。このため、ソースフィンガー12とゲートバスライン16とが接触しないように、ソースフィンガー12とゲートバスライン16とが交差する箇所は例えばエアブリッジ構造となっている。
【0023】
ゲートバスライン16は、基板30上に設けられたゲートパッド17に接続されている。ソースバスライン14は、半導体層34および基板30を貫通するビア配線38により基板30の裏面に設けられた金属膜37に接続されている。金属膜37はソースパッドの機能を有する。ドレインバスライン15はドレインパッドとしての機能も有する。ソースバスライン14、ドレインバスライン15、ゲートバスライン16、および金属膜37は、例えばAl層とその上に設けられたAu層との積層膜である。
【0024】
第2トランジスタ20は、複数のゲートフィンガー21と、複数のソースフィンガー22と、複数のドレインフィンガー23と、を備える。ソースフィンガー22およびドレインフィンガー23は、半導体層34上にキャップ層33を貫通して電子供給層32と接続されるように設けられている。ソースフィンガー22およびドレインフィンガー23はオーミック電極として機能する。ソースフィンガー22およびドレインフィンガー23は、金属膜により形成され、例えばAl層とその上に設けられたAu層との積層膜である。ソースフィンガー22およびドレインフィンガー23は、例えば第1トランジスタ10のソースフィンガー12およびドレインフィンガー13と同じ材料により形成されている。
【0025】
複数のソースフィンガー22は、Y方向に伸びたソースバスライン24に接続し、ソースバスライン24からX方向に伸びて、互いに並列に設けられている。複数のドレインフィンガー23は、複数のソースフィンガー22と交互に配置されるように、互いに並列に設けられている。複数のドレインフィンガー23は、Y方向に伸びたドレインバスライン25に接続し、ドレインバスライン25からX方向に伸びて、ソースフィンガー22と交互に配置されている。
【0026】
複数のゲートフィンガー21は、複数のソースフィンガー22と複数のドレインフィンガー23との間にそれぞれ配置されるように、互いに並列に設けられている。複数のゲートフィンガー21は、Y方向に伸びたゲートバスライン26に接続し、ゲートバスライン26からX方向に伸びている。ゲートフィンガー21は、金属膜により形成され、例えばNi層とその上に設けられたAu層との積層膜である。ゲートフィンガー21は、例えば第1トランジスタ10のゲートフィンガー11と同じ材料により形成されている。
【0027】
ソースバスライン24とドレインバスライン25は、ソースフィンガー22とドレインフィンガー23とがゲートフィンガー21を挟んで向かい合う対向領域に対して反対側に設けられている。ゲートバスライン26は、対向領域に対してソースバスライン24と同じ側に設けられている。ソースバスライン24とゲートバスライン26とは、対向領域側からゲートバスライン26、ソースバスライン24の順に位置している。このため、ソースバスライン24からX方向に伸びたソースフィンガー22は、ゲートバスライン26と交差する。このため、ソースフィンガー22とゲートバスライン26とが接触しないように、ソースフィンガー22とゲートバスライン26とが交差する箇所は例えばエアブリッジ構造となっている。
【0028】
ゲートバスライン26は、基板30上に設けられたゲートパッド27に接続されている。ソースバスライン24は、半導体層34および基板30を貫通するビア配線38により基板30の裏面に設けられた金属膜37に接続されている。ドレインバスライン25はドレインパッドとしての機能も有する。ソースバスライン24、ドレインバスライン25、およびゲートバスライン16は、例えばAl層とその上に設けられたAu層との積層膜である。ソースバスライン24、ドレインバスライン25、およびゲートバスライン16は、例えばソースバスライン14、ドレインバスライン15、ゲートバスライン16と同じ材料により形成されている。
【0029】
なお、図1では、図の明瞭化のために、第1トランジスタ10および第2トランジスタ20のフィンガーの本数を少なくして図示しいる。第1トランジスタ10のゲートフィンガー11の本数は例えば100本以上であり、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21の本数は例えば10本程度である。
【0030】
第2トランジスタ20の最も第1トランジスタ10に近いソースフィンガー22と、第1トランジスタ10の最も第2トランジスタ20に近いソースフィンガー12とは、ソース配線40により接続されている。また、第2トランジスタ20のソースバスライン24と第1トランジスタ10のソースバスライン14とは、ソース配線42により接続されている。なお、ソース配線40とソース配線42は両方設けられる場合に限られず、いずれか一方のみが設けられる場合でもよい。第2トランジスタ20のドレインバスライン25と第1トランジスタ10のドレインバスライン15とは、ドレイン配線43により接続されている。第2トランジスタ20のゲートバスライン26と第1トランジスタ10のゲートバスライン16とは、ゲート配線41により接続されている。これにより、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20は並列接続となっている。
【0031】
ソース配線40、42は、半導体層34および基板30を貫通するビア配線38によって基板30の裏面に設けられた金属膜37に接続されている。ゲートフィンガー11、21は、基板30上に設けられた絶縁膜36により覆われている。ソースフィンガー12、22、ドレインフィンガー13、23、ソースバスライン14、24、ドレインバスライン15、25、およびゲートバスライン16、26の上面は絶縁膜36から露出している。また、ゲート配線41、ソース配線40、42、およびドレイン配線43の上面も絶縁膜36から露出している。絶縁膜36は、ゲートフィンガー11、21を保護する機能を有し、例えば酸化シリコン膜である。第1トランジスタ10と第2トランジスタ20は、ゲート配線41、ソース配線40、42、およびドレイン配線43によって所定間隔Lを空けて設けられている。所定間隔Lについては後述する。
【0032】
図3(a)は、第1トランジスタ10の一部を拡大した平面図、図3(b)は、第2トランジスタ20の一部を拡大した平面図である。図3(a)および図3(b)のように、第2トランジスタ20のゲート幅W2は、第1トランジスタ10のゲート幅W1に比べて短い。また、図1のように、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21の本数は、第1トランジスタ10のゲートフィンガー11の本数に比べて少ない。例えば、第1トランジスタ10のゲートフィンガー11の本数は100本以上であるのに対し、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21の本数は、ゲートフィンガー11の本数の1/10以下であり、例えば10数本程度である。したがって、第2トランジスタ20は、第1トランジスタ10に比べて出力電力が小さい。
【0033】
また、図3(a)および図3(b)のように、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21の間隔I2は、第1トランジスタ10のゲートフィンガー11の間隔I1に比べて大きい。例えば、ゲートフィンガー21の間隔I2は、ゲートフィンガー11の間隔I1の1.5倍以上である。
【0034】
[製造方法]
図4(a)から図5(b)は、実施例1に係る電力増幅器の製造方法を示す断面図である。図4(a)から図5(b)は、図2(a)に相当する箇所の断面図である。図4(a)のように、基板30上に、例えば有機金属化学気相成長(MOVPE:Metalorganic Vapor Phase Epitaxy)法を用いて、電子走行層31、電子供給層32、およびキャップ層33をエピタキシャル成長により形成する。これにより、基板30上に、電子走行層31、電子供給層32、およびキャップ層33を含む半導体層34が形成される。電子走行層31と電子供給層32との接合界面の電子走行層31に二次元電子ガス35が生成される。なお、電子走行層31の形成前に、基板30上に初期層および/またはバッファ層を形成してもよい。また、電子供給層32の形成前に、電子走行層31上にスペーサ層を形成してもよい。
【0035】
第1トランジスタ10および第2トランジスタ20のソースフィンガーおよびドレインフィンガー、並びにソース配線等が形成される領域のキャップ層33を除去する。キャップ層33の除去は、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて行う。キャップ層33が除去された領域に、第1トランジスタ10のソースフィンガー12の下層12aおよびドレインフィンガー13の下層13aを形成する。第2トランジスタ20のソースフィンガー22の下層22aおよびドレインフィンガー23の下層23aを形成する。ソース配線40の下層40aを形成する。なお、図4(a)には図示されていないが、ソースバスライン14、24、ドレインバスライン15、25、ゲートバスライン16、26、ゲート配線41、ソース配線42、およびドレイン配線43それぞれの下層も形成する。これらは、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて同時に形成する。その後、所定の温度でアニールを行い、それぞれの下層が電子供給層32にオーミック接触するオーミック電極となるようにする。
【0036】
第1トランジスタ10のソースフィンガー12の下層12aと第2トランジスタ20のソースフィンガー22の下層22aとは、所定間隔Lだけ離れて形成される。すなわち、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20とは所定間隔Lだけ離れて形成される(図1も参照)。ここで、所定間隔Lについて説明する。
【0037】
図6は、実施例1における第1トランジスタ10と第2トランジスタ20との間の所定間隔Lの設計方法の一例を示すフローチャートである。図6のように、第1トランジスタ10を動作させたときに発生する発熱量を求める(ステップS1)。例えば、ゲートフィンガー11の本数およびゲート幅W1から見込まれる定格出力電力で第1トランジスタ10を動作させたときに発生する発熱量を求める。発熱量は、第1トランジスタ10を動作させたときに第1トランジスタ10に生じるドレイン電流とドレイン電圧とを掛け合わせることで求める。第1トランジスタ10の発熱量は、第1トランジスタ10が基板30上に単体で設けられているときの発熱量であり、第1トランジスタ10を実際に作製して動作させることで求めてもよいし、シミュレーションにより求めてもよい。
【0038】
次いで、第1トランジスタ10の熱抵抗を求める(ステップS2)。熱抵抗は例えば以下の方法により求める。基板30上に設けられた第1トランジスタ10に対してゲート電圧を一定にした上でドレイン電流をいくつか設定し、各々の設定においてドレイン電流とドレイン電圧とを掛け合わせて発熱量を求める。また、各々の設定で第1トランジスタ10が動作したときの第1トランジスタ10の温度を求める。第1トランジスタ10の温度は、例えばフィンガーの配列方向における中央部の温度を求める。そして、温度の上昇量を発熱量の上昇量で割ることにより(温度上昇量/発熱量上昇量)、第1トランジスタ10の熱抵抗[℃/W]を求める。一例として、ある2つの設定においてドレイン電流×ドレイン電圧により求めた発熱量が10W、30Wであるとする。各々の設定での動作時における第1トランジスタ10の温度が60℃、100℃であるとする。この場合、熱抵抗は(100℃-60℃)/(30W-10W)=2[℃/W]と求まる。第1トランジスタ10の熱抵抗は、基板30上に第1トランジスタ10が単体で設けられているときの熱抵抗であり、第1トランジスタ10を実際に作製して動作させることで求めてもよいし、シミュレーションにより求めてもよい。
【0039】
ステップS1で求めた発熱量とステップS2で求めた熱抵抗とにより定まる、第1トランジスタ10からの距離と当該距離だけ離れた基板30上の温度上昇値との相関を示す情報から、温度上昇値が所定値以下になる距離を特定する(ステップS3)。図7は、第1トランジスタ10からの距離と、当該距離だけ離れた基板30上の温度上昇値と、の相関を示す図である。図7は、基板30が厚さ100μmのSiC基板、第1トランジスタ10の発熱量が15W、第1トランジスタ10の熱抵抗が1.6℃/Wで、基板30上に単体で設けられた第1トランジスタ10を定格出力電力で動作させたときの図である。図7のプロットは実測値を示し、曲線は反比例の近似曲線を示している。
【0040】
図7のように、第1トランジスタ10の発熱量が15W、熱抵抗が1.6℃/W、基板30が厚さ100μmのSiC基板である場合、近似曲線である反比例はy=800/xとなった。この反比例の式を用い、温度上昇値yが所定値以下となる距離xを求める。例えば温度上昇を10℃以下に抑えたい場合では、10≧800/xとなり、距離x≧80となる。このようにして、温度上昇値が所定値以下になる距離を特定する。
【0041】
なお、上記の例では、第1トランジスタ10からの距離と当該距離だけ離れた基板30上の温度上昇値との相関を示す情報として反比例の近似曲線を用いたが、その他の相関を示す情報を用いてもよい。反比例の近似曲線を用いた場合では、第1トランジスタ10からの距離と当該距離だけ離れた箇所での温度上昇値の相関関係が強くなるため、温度上昇値が所定値以下になる距離を適切に特定できる。
【0042】
なお、図7のようなグラフは、基板30の種類、基板30の厚さ、第1トランジスタ10の発熱量、および第1トランジスタ10の熱抵抗が異なる様々な条件について予め求めておく。これにより、基板30の種類、基板30の厚さ、第1トランジスタ10の発熱量、および第1トランジスタ10の熱抵抗が様々な場合に対しても、温度上昇値が所定値以下になる第1トランジスタ10からの距離を特定することができる。図7のようなグラフは、発熱量については1Wごとに求めてもよいし、2Wごとに求めてもよいし、3Wごとに求めてもよい。熱抵抗については、0.1℃/Wごとに求めてもよいし、0.2℃/Wごとに求めてもよいし、0.3℃/Wごとに求めてもよい。そして、図7のようなグラフを使用するときには、第1トランジスタ10の発熱量および熱抵抗に応じた適切なグラフを選択して用いればよい。
【0043】
次いで、ステップS3において特定した距離を、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20との間の所定間隔Lと決定する(ステップS4)。例えば、図7の場合において、上述したように、温度上昇を10℃以下に抑えたい場合の距離は80μm以上となることから、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20との間の所定間隔Lを例えば80μmと決定する。
【0044】
図4(a)において、ソースフィンガー12の下層12aとソースフィンガー22の下層22aとの間の所定間隔Lが、図6により求めた所定間隔L(例えば80μm)となるように、下層12aおよび下層22aを形成する。
【0045】
なお、図7における近似曲線の反比例の式を、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20との関係で表すと以下の式(1)となる。
第2トランジスタ20の温度上昇値=(第1トランジスタ10の発熱量×第1トランジスタ10の熱抵抗×係数)/第1トランジスタ10と第2トランジスタ20との間の所定間隔L・・・(1)
図7では、第1トランジスタ10の発熱量が15W、熱抵抗が1.6℃/Wで、反比例の比例定数が800であることから、上記式(1)の係数は33.33となる。
【0046】
図4(b)のように、基板30上に、例えばスパッタリング法または化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を用いて、絶縁膜36aを成膜する。その後、ソースフィンガー12、22の下層12a、22a、ドレインフィンガー13、23の下層13a、23a、およびソース配線40の下層40a等に形成された絶縁膜36aを除去する。下層の除去は、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて行う。これと同時にまたはこれとは別工程で、第1トランジスタ10および第2トランジスタ20のゲートフィンガーが形成される領域の絶縁膜36aを例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて除去する。その後、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて、絶縁膜36aが除去された領域に第1トランジスタ10のゲートフィンガー11および第2トランジスタ20のゲートフィンガー21を同時に形成する。
【0047】
図5(a)のように、基板30上に、例えばスパッタリング法またはCVD法を用いて絶縁膜を成膜して、この成膜した絶縁膜と絶縁膜36aとを含む絶縁膜36を形成する。その後、ソースフィンガー12、22の下層12a、22a、ドレインフィンガー13、23の下層13a、23a、およびソース配線40の下層40a等の上に形成された絶縁膜36を除去する。これらは、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて除去する。その後、ソースフィンガー12、22の下層12a、22a、ドレインフィンガー13、23の下層13a、23a、およびソース配線40の下層40a等の上に、めっき法を用いて、それぞれの上層を形成する。その後、めっきレジストを除去する。これにより、下層12aと上層12bからソースフィンガー12が形成され、下層13aと上層13bからドレインフィンガー13が形成される。下層22aと上層22bからソースフィンガー22が形成され、下層23aと上層23bからドレインフィンガー23が形成される。下層40aと上層40bからソース配線40が形成される。これらは同時に形成される。
【0048】
なお、図5(a)では図示されていないが、ソースバスライン14、24、ドレインバスライン15、25、ゲートバスライン16、26、ゲート配線41、ソース配線42、ドレイン配線43も同様に下層と上層から形成される。
【0049】
図5(b)のように、基板30の裏面から、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、ソース配線40等に到達する貫通孔39を形成する。その後、例えばめっき法を用いて、貫通孔39内を埋め込むビア配線38と、基板30の裏面の金属膜37と、を形成する。なお、図5(b)では図示されていないが、ソースバスライン14、24に接続するビア配線38も同時に形成される。
【0050】
[比較例]
図8は、比較例1に係る電力増幅器の平面図である。図8のように、比較例1に係る電力増幅器500は、第1トランジスタ10により形成され、第1トランジスタ10に第2トランジスタ20が並列接続されていない。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0051】
図9は、比較例2に係る電力増幅器の平面図である。図9のように、比較例2に係る電力増幅器600は、第1トランジスタ10aにより形成され、第1トランジスタ10aに第2トランジスタ20が並列接続されていない。比較例2における第1トランジスタ10aは、実施例1および比較例1における第1トランジスタ10に比べてゲートフィンガー11の本数が多い。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0052】
図10(a)から図10(c)は、比較例1、比較例2、および実施例1に係る電力増幅器の動作時の温度について示す模式図である。図10(a)から図10(c)では、ハッチングの粗密で温度を表していて、ハッチングが密な領域ほど温度が高く、ハッチングが粗な領域ほど温度が低いことを表している。図10(a)のように、比較例1に係る電力増幅器500では、複数のゲートフィンガー11の配列方向であるY方向における中央付近で温度が高くなる。これは、Y方向における中央付近ほど、動作により発生した熱が外部に逃げ難くいためである。第1トランジスタ10の温度が高くなると、ゲートフィンガー11の本数およびゲート幅W1から見込まれる出力電力が得られないことがある。
【0053】
そこで、比較例2に係る電力増幅器600のように、温度上昇による出力電力の低下を見込んで、ゲートフィンガー11の本数を予め多くしておくことが考えられる。しかしながら、この場合、図10(b)のように、ゲートフィンガー11の本数が増えることで、Y方向における中央付近では外部への放熱が更に起こり難くなって温度が更に高くなることが生じてしまう。したがって、この場合でも、出力電力の低下が生じてしまうことがある。
【0054】
一方、実施例1に係る電力増幅器100によれば、図1のように、第1トランジスタ10より出力電力が小さい第2トランジスタ20が第1トランジスタ10に並列接続されている。これにより、第1トランジスタ10に温度上昇による出力電力の低下が生じた場合に、低下した出力電力を第2トランジスタ20により補填することができる。このときに、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20との間の所定間隔Lを、図6に示した設計方法により決定する。すなわち、ステップS1のように、第1トランジスタ10の発熱量[W]を求める。ステップS2のように、第1トランジスタ10の熱抵抗[℃/W]を求める。ステップS3のように、ステップS1で求めた発熱量とステップS2で求めた熱抵抗とにより定まる、第1トランジスタ10からの距離と当該距離だけ離れた基板30上の温度上昇値との相関を示す情報から、温度上昇値が所定値以下となる距離[μm]を特定する。そして、ステップ4のように、ステップS3で特定した第1トランジスタ10からの距離を、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20との間の所定間隔L[μm]と決定する。
【0055】
所定間隔Lをこのように決定することで、第1トランジスタ10の発熱の影響による第2トランジスタ20の温度上昇値を所定値以下に抑えることができる。したがって、図10(c)のように、第1トランジスタ10の温度は比較例1と同様に高くなるが、第2トランジスタ20の温度上昇は抑制できる。なお、第2トランジスタ20は出力電力が小さいことから、第2トランジスタ20自身の発熱による温度上昇は小さい。このため、第1トランジスタ10の発熱の影響による第2トランジスタ20の温度上昇値を所定値以下に抑えられることで、第2トランジスタ20の温度を許容温度以下に抑えることができる。許容温度は、回路等の目的により適宜設定されるものであり、例えば80℃以下であるが、60℃以下の場合もあるし、40℃以下の場合もある。このようなことから、第2トランジスタ20はゲートフィンガー21の本数およびゲート幅W2から見込まれる出力電力が得られ、第1トランジスタ10の出力電力の低下を第2トランジスタ20により補填することができる。その結果、出力電力の低下が抑制された電力増幅器100が得られる。
【0056】
また、実施例1では、図7のように、第1トランジスタ10からの距離と当該距離だけ離れた基板30上の温度上昇値との相関を示す反比例の式から、温度上昇値が所定値以下となる第1トランジスタからの距離を特定する。反比例を用いた場合では、第1トランジスタ10からの距離と当該距離だけ離れた箇所での温度上昇値の相関関係が強くなるため、温度上昇値が所定値以下になる距離を適切に特定できる。
【0057】
また、実施例1において、第1トランジスタ10に並列接続された2つの第2トランジスタ20の合計出力電力を、第1トランジスタ10が発熱により消失する出力電力と同じにすることが好ましい。図11は、第1トランジスタ10および第2トランジスタ20の設計方法の一例を示すフローチャートである。図11のように、まず、第1トランジスタ10の出力電力が所望の大きさになるように、第1トランジスタ10を設計する(ステップS11)。例えば、第1トランジスタ10の出力電力が所望の大きさになるように、第1トランジスタ10のゲートフィンガー11の本数およびゲート幅W1を設計する。
【0058】
次いで、第1トランジスタ10が発熱により消失する出力電力を求める(ステップS12)。第1トランジスタ10が発熱により消失する出力電力は、基板30上に第1トランジスタ10が単体で設けられて定格出力電力で動作したときに発熱により消失する出力電力であり、例えば以下の式(2)を用いて求める。
第1トランジスタ10の発熱により消失する出力電力[W]=(第1トランジスタ10の温度[℃]-第1トランジスタ10が設けられていない箇所での基板30の温度[℃])/第1トランジスタ10の熱抵抗[℃/W]・・・(2)
【0059】
次いで、2つの第2トランジスタ20の合計出力電力が、第1トランジスタ10が発熱により消失する出力電力と同じになるように、第2トランジスタ20を設計する(ステップS13)。例えば、2つの第2トランジスタ20の合計出力電力が、第1トランジスタ10が発熱により消失する出力電力と同じになるように、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21の本数およびゲート幅W2を設計する。
【0060】
このように、第1トランジスタ10が発熱により消失する出力電力を求める(ステップS12)。そして、2つの第2トランジスタ20の合計出力電力が、第1トランジスタ10が発熱により消失する出力電力と同じになるように、第2トランジスタ20を設計する(ステップS13)。これにより、第1トランジスタ10の発熱による出力電力の低下を第2トランジスタ20により補填することができる。2つの第2トランジスタ20自身の発熱による温度上昇を抑制する点から、2つの第2トランジスタ20各々の出力電力が、第1トランジスタ10が発熱により消失する出力電力の半分になるように、第2トランジスタ20を設計することが好ましい。ここで、出力電力が同じおよび出力電力が半分とは、完全に同じおよび完全な半分の場合に限られず、製造誤差程度の違いを許容するものである。
【0061】
なお、実施例1では、図1のように、2つの第2トランジスタ20が第1トランジスタ10の両側に設けられている場合を例に示したが、第2トランジスタ20は第1トランジスタ10の片側に1つだけ設けられている場合でもよい。この場合、1つの第2トランジスタ20の出力電力が、第1トランジスタ10が発熱により消失する出力電力と同じになるように、第2トランジスタ20を設計する。
【0062】
図1のように、第2トランジスタ20を設計するにあたり、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21の本数を第1トランジスタ10のゲートフィンガー11の本数よりも少なくする。これにより、第2トランジスタ20の出力電力を第1トランジスタ10の出力電力より低くできる。また、第2トランジスタ20自身の発熱による温度上昇を抑制できる。例えば、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21の本数は、第1トランジスタ10のゲートフィンガー11の本数の1/5以下の場合でもよいし、1/10以下の場合でもよいし、1/20以下の場合でもよい。
【0063】
図3(a)および図3(b)のように、第2トランジスタ20を設計するにあたり、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21のゲート幅W2を第1トランジスタ10のゲートフィンガー11のゲート幅W1よりも小さくする。これにより、第2トランジスタ20の出力電力を第1トランジスタ10の出力電力より低くできる。また、第2トランジスタ20自身の発熱による温度上昇を抑制することができる。例えば、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21のゲート幅W2は、第1トランジスタ10のゲートフィンガー11のゲート幅W1の4/5以下の場合でもよいし、3/4以下の場合でもよいし、2/3以下の場合でもよい。
【0064】
図3(a)および図3(b)のように、第2トランジスタ20を設計するにあたり、第2トランジスタ20のゲートフィンガー21の間隔I2を第1トランジスタ10のゲートフィンガー11の間隔I1よりも大きくする。これにより、第2トランジスタ20はフィンガーの密集性が低下するため、第2トランジスタ20自身の発熱による温度上昇を抑制することができる。第2トランジスタ20の発熱による温度上昇を抑制する点から、ゲートフィンガー21の間隔I2は、ゲートフィンガー11の間隔I1の1.5倍以上が好ましく、1.8倍以上がより好ましく、2.0倍以上が更に好ましい。電力増幅器100の大型化を抑制する点からは、ゲートフィンガー21の間隔I2は、ゲートフィンガー11の間隔I1の3.0倍以下の場合が好ましく、2.5倍以下の場合がより好ましく、2.2倍以下が更に好ましい。
【0065】
また、実施例1によれば、図4(a)から図5(b)のように、基板30上に第1トランジスタ10および第2トランジスタ20を形成する際に、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20との間の所定間隔Lを以下のように決めて形成する。すなわち、所定間隔Lが、第1トランジスタ10の発熱量と熱抵抗とにより定まる、第1トランジスタ10からの距離と当該距離だけ離れた基板30上の温度上昇値との相関を示す情報から、温度上昇値が所定値以下となる距離になるようにする。これにより、第2トランジスタ20はゲートフィンガー21の本数およびゲート幅W2から見込まれる出力電力が得られ、第1トランジスタ10の出力電力の低下を第2トランジスタ20により補填することができる。その結果、出力電力の低下が抑制された電力増幅器100が得られる。
【0066】
また、実施例1では、図1のように、第2トランジスタ20のゲートバスライン26を第1トランジスタ10のゲートバスライン16にゲート配線41により接続する。第2トランジスタ20のソースバスライン24を第1トランジスタ10のソースバスライン14にソース配線42(第1ソース配線)により接続する。複数のソースフィンガー22のうち最もソースフィンガー12に近いソースフィンガー22を複数のソースフィンガー12のうち最もソースフィンガー22に近いソースフィンガー12にソース配線40(第2ソース配線)により接続する。第2トランジスタ20のドレインバスライン25を第1トランジスタ10のドレインバスライン15にドレイン配線43により接続する。これにより、第2トランジスタ20を第1トランジスタ10の近くに配置して並列接続とすることができ、電力増幅器100を小型化できる。また、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20がボンディングワイヤで接続される場合に比べて、特性のばらつきを抑えることができる。
【0067】
図1図2(a)、および図2(b)のように、ソース配線40、42をソース配線40、42に重なって設けられたビア配線38を介して、基板30の裏面に設けられたソースパッドとして機能する金属膜37に接続することが好ましい。これにより、ソースフィンガー12、22のグランドを強化することができる。
【実施例0068】
図12は、実施例2に係る電力増幅器200の回路図である。図12のように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、第1トランジスタ10と、第1トランジスタ10に並列接続された第2トランジスタ20と、が接続されている。第2トランジスタ20は、入力端子Tinと第1トランジスタ10との間のノード70と、出力端子Toutと第1トランジスタ10との間のノード71と、の間に接続されている。入力端子Tinとノード70との間に、第1トランジスタ10の入力インピーダンスを所定のインピーダンス(例えば信号源インピーダンス)に整合させるための入力整合回路50が接続されている。出力端子Toutとノード71との間に、第1トランジスタ10の出力インピーダンスを所定のインピーダンス(例えば負荷インピーダンス)に整合させるための出力整合回路52が接続されている。
【0069】
ノード70と第1トランジスタ10との間にインダクタ60が接続され、ノード71と第1トランジスタ10との間にインダクタ61が接続されている。ノード70と第2トランジスタ20との間にインダクタ62が接続され、インダクタ62と第2トランジスタ20との間のノード72とグランドとの間にキャパシタ64が接続されている。ノード71と第2トランジスタ20との間にインダクタ63が接続され、インダクタ63と第2トランジスタ20との間のノード73とグランドとの間にキャパシタ65が接続されている。
【0070】
第1トランジスタ10と第2トランジスタ20は、実施例1で説明したように、基板30に形成されている。インダクタ60~63およびキャパシタ64、65は、入力整合回路50および出力整合回路52が設けられた整合回路基板に形成されている。
【0071】
入力整合回路50の後段で第1トランジスタ10と第2トランジスタ20に分岐していることから、インピーダンスの整合のために、インダクタ60、62とキャパシタ64とが設けられている。インダクタ62とキャパシタ64を含むインピーダンス調整部66によって、第2トランジスタ20と入力整合回路50のインピーダンスが整合される。インダクタ60のインダクタンスに対するインダクタ62のインダクタンスの割合は、第2トランジスタ20の出力電力に対する第1トランジスタ10の出力電力の割合と同じになっている。これにより、入力整合回路50と第1トランジスタ10のインピーダンスが整合され、かつ、入力整合回路50と第2トランジスタ20のインピーダンスが整合される。
【0072】
同様に、出力整合回路52の前段で第1トランジスタ10と第2トランジスタ20に分岐していることから、インピーダンスの整合のために、インダクタ61、63とキャパシタ65とが設けられている。インダクタ63とキャパシタ65を含むインピーダンス調整部67によって、第2トランジスタ20と出力整合回路52のインピーダンスが整合される。インダクタ61のインダクタンスに対するインダクタ63のインダクタンスの割合は、第2トランジスタ20の出力電力に対する第1トランジスタ10の出力電力の割合と同じになっている。これにより、出力整合回路52と第1トランジスタ10のインピーダンスが整合され、かつ、出力整合回路52と第2トランジスタ20のインピーダンスが整合される。
【0073】
実施例2によれば、入力端子Tinと第1トランジスタ10との間に、第1トランジスタ10の入力インピーダンスを所定のインピーダンスに整合させる入力整合回路50を接続する。出力端子Toutと第1トランジスタ10との間に、第1トランジスタ10の出力インピーダンスを所定のインピーダンスに整合させる出力整合回路52を接続する。入力整合回路50と第1トランジスタ10との間のノード70と、第2トランジスタ20と、の間に、インダクタ62とキャパシタ64を含むインピーダンス調整部66を接続する。出力整合回路52と第1トランジスタ10との間のノード71と、第2トランジスタ20と、の間に、インダクタ63とキャパシタ65を含むインピーダンス調整部67を接続する。インピーダンス調整部66、67は、第2トランジスタ20と、入力整合回路50および出力整合回路52と、のインピーダンスの整合を行う。これにより、第1トランジスタ10および第2トランジスタ20の出力電力の低下を抑制することができる。
【0074】
また、実施例2では、ノード70と第1トランジスタ10との間にインダクタ60を接続し、ノード71と第1トランジスタ10との間にインダクタ61を接続する。インダクタ60のインダクタンス(L1)に対するインダクタ62のインダクタンス(L2)の割合(L2/L1)は、第2トランジスタ20の出力電力(W2)に対する第1トランジスタ10の出力電力(W1)の割合(W1/W2)と同じである。インダクタ61のインダクタンスに対するインダクタ63のインダクタンスの割合は、第2トランジスタ20の出力電力に対する第1トランジスタ10の出力電力の割合と同じである。これにより、第1トランジスタ10および第2トランジスタ20と、入力整合回路50および出力整合回路52と、のインピーダンスの整合が良好にでき、第1トランジスタ10および第2トランジスタ20の出力電力の低下を抑制できる。なお、割合が同じとは、完全に同じ場合に限られず、製造誤差程度の差がある場合も許容する。
【実施例0075】
図13(a)は、実施例3に係る電子装置300を示す平面図、図13(b)は、内部の基板84を示す平面図である。実施例3では、電子装置300がスマートフォンである場合を例に示す。図13(a)および図13(b)のように、電子装置300の筐体81の外面に表示部82が設けられている。表示部82は、例えばタッチパネルディスプレイである。筐体81の内部には基板84が収納されている。筐体81は樹脂製または金属製である。基板84は例えばFR4基板等の回路基板である。
【0076】
基板84の表面に配線85が形成されている。配線85は、電子装置の駆動に必要な各種信号の伝送経路となるものである。なお、図13(b)では、基板84の表面に形成された配線85を示しているが、基板84の内部にも配線が形成されていてもよい。
【0077】
基板84には、通信のために必要なアンテナ86、RF通信部87、DA(Digital to Analog)コンバータ88、ベースバンド処理部89、およびCPU(Central Processing Unit)90が実装されている。これらは、例えば半田ボールによって配線85に接続されることにより基板84に実装されている。実施例1または実施例2に係る電力増幅器100、200は、例えばRF通信部87に含まれる。アンテナ86は、RF通信部87に含まれる電力増幅器100、200の出力端子から電力供給を受ける素子の一例である。例えば、CPU90で処理された音声等の信号は、ベースバンド処理部89でベースバンド処理が行われた後に、DAコンバータ88でアナログ信号に変換され、RF通信部87で増幅処理とフィルタ処理等が行われた後に、アンテナ86から放射される。このように、実施例3では、実施例1または実施例2により電力増幅器100、200を形成し、電力増幅器100、200から電力供給を受けるアンテナ86を形成する。
【0078】
なお、図13(a)および図13(b)では、電子装置300の一例としてスマートフォンの場合を例に示したが、この場合に限られるわけではない。電子装置300は、例えばデジタルテレビ放送用のチューナー等の通信を行う装置であってもよいし、PC(Personal Computer)またはサーバ等であってもよいし、レーダーであってもよい。
【0079】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0080】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)基板上に、複数の第1ゲートフィンガーを有する第1トランジスタと、前記第1トランジスタと所定間隔を空けて配置され、前記第1トランジスタに並列接続され、複数の第2ゲートフィンガーを有し、前記第1トランジスタより出力電力が小さい第2トランジスタと、が設けられる電力増幅器の設計方法であって、前記第1トランジスタの発熱量を求める第1ステップと、前記第1トランジスタの熱抵抗を求める第2ステップと、前記第1ステップで求めた前記発熱量と前記第2ステップで求めた前記熱抵抗とにより定まる、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、前記温度上昇値が所定値以下となる前記第1トランジスタからの第1距離を求める第3ステップと、前記第3ステップで求めた前記第1トランジスタからの前記第1距離を、前記第1トランジスタと前記第2トランジスタとの間の前記所定間隔とする第4ステップと、を備える電力増幅器の設計方法。
(付記2)前記第3ステップは、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す反比例の式から、前記温度上昇値が所定値以下となる前記第1トランジスタからの前記第1距離を求める、付記1に記載の電力増幅器の設計方法。
(付記3)前記第1トランジスタが発熱により消失する出力電力を求める第5ステップと、前記基板上に設けられる1または複数の前記第2トランジスタの合計出力電力が、前記第5ステップで求めた前記出力電力と同じになるように、前記1または複数の第2トランジスタを設計する第6ステップと、を備える、付記1または2に記載の電力増幅器の設計方法。
(付記4)前記1または複数の第2トランジスタは前記第1トランジスタを挟んで設けられる2つの第2トランジスタであり、前記第6ステップは、前記2つの第2トランジスタ各々の出力電力が、前記第1トランジスタが発熱により消費する出力電力の半分となるようにする、付記3に記載の電力増幅器の設計方法。
(付記5)前記第6ステップは、前記複数の第2ゲートフィンガーの本数を前記複数の第1ゲートフィンガーの本数より少なくする、付記3に記載の電力増幅器の設計方法。
(付記6)前記第6ステップは、前記複数の第2ゲートフィンガーのゲート幅を前記第1ゲートフィンガーのゲート幅より小さくする、付記3に記載の電力増幅器の設計方法。
(付記7)前記第6ステップは、前記複数の第2ゲートフィンガーの間隔を前記複数の第1ゲートフィンガーの間隔より大きくする、付記3に記載の電力増幅器の設計方法。
(付記8)基板上に、複数の第1ゲートフィンガーを有する第1トランジスタを形成する工程と、前記基板上に、前記第1トランジスタと所定間隔を空けて設けられ、前記第1トランジスタに並列接続され、複数の第2ゲートフィンガーを有し、前記第1トランジスタより出力電力が小さい第2トランジスタを形成する工程と、を備え、前記第2トランジスタを形成する工程は、前記第1トランジスタとの前記所定間隔が、前記第1トランジスタの発熱量と前記第1トランジスタの熱抵抗とにより定まる、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、前記温度上昇値が所定値以下となる第1距離となるように、前記第2トランジスタを形成する、電力増幅器の製造方法。
(付記9)前記第2トランジスタを形成する工程は、前記複数の第2ゲートフィンガーが接続する第2ゲートバスラインを前記複数の第1ゲートフィンガーが接続する第1ゲートバスラインにゲート配線により接続し、前記第2トランジスタの複数の第2ソースフィンガーが接続する第2ソースバスラインを前記第1トランジスタの複数の第1ソースフィンガーが接続する第1ソースバスラインに第1ソース配線により接続および/または前記複数の第2ソースフィンガーのうち最も前記複数の第1ソースフィンガーに近い第2ソースフィンガーを前記複数の第1ソースフィンガーのうち最も前記複数の第2ソースフィンガーに近い第1ソースフィンガーに第2ソース配線により接続し、前記第2トランジスタの複数の第2ドレインフィンガーが接続する第2ドレインバスラインを前記第1トランジスタの複数の第1ドレインフィンガーが接続する第1ドレインバスラインにドレイン配線により接続することで、前記第2トランジスタを前記第1トランジスタに並列接続する、付記8に記載の電力増幅器の製造方法。
(付記10)入力端子と前記第1トランジスタとの間に、前記第1トランジスタの入力インピーダンスを所定のインピーダンスに整合する入力整合部を接続する工程と、前記入力整合部と前記第1トランジスタとの間の第1ノードと、前記第2トランジスタと、の間に、第1インダクタと第1キャパシタとを含み、前記第2トランジスタと前記入力整合部のインピーダンスの整合を行う第1インピーダンス調整部を接続する工程と、を備える、付記8または9に記載の電力増幅器の製造方法。
(付記11)前記第1ノードと前記第1トランジスタとの間に第2インダクタを接続する工程を備え、前記第2インダクタのインダクタンスに対する前記第1インダクタのインダクタンスの割合は、前記第2トランジスタの出力電力に対する前記第1トランジスタの出力電力の割合と同じである、付記10に記載の電力増幅器の製造方法。
(付記12)出力端子と前記第1トランジスタとの間に、前記第1トランジスタの出力インピーダンスを所定のインピーダンスに整合する出力整合部を接続する工程と、前記出力整合部と前記第1トランジスタとの間の第2ノードと、前記第2トランジスタと、の間に、第3インダクタと第2キャパシタとを含み、前記第2トランジスタと前記出力整合部のインピーダンスの整合を行う第2インピーダンス調整部を接続する工程と、を備える、付記10に記載の電力増幅器の製造方法。
(付記13)前記第2ノードと前記第1トランジスタとの間に第4インダクタを接続する工程を備え、前記第4インダクタのインダクタンスに対する前記第3インダクタのインダクタンスの割合は、前記第2トランジスタの出力電力に対する前記第1トランジスタの出力電力の割合と同じである、付記12に記載の電力増幅器の製造方法。
(付記14)電力増幅器を形成する工程と、前記電力増幅器に接続され、前記電力増幅器から電力供給を受ける素子を形成する工程と、を備え、前記電力増幅器を形成する工程は、基板上に、複数の第1ゲートフィンガーを有する第1トランジスタを形成する工程と、前記基板上に、前記第1トランジスタと所定間隔を空けて設けられ、前記第1トランジスタに並列接続され、複数の第2ゲートフィンガーを有し、前記第1トランジスタより出力電力が小さい第2トランジスタを形成する工程と、を含み、前記第2トランジスタを形成する工程は、前記第1トランジスタとの前記所定間隔が、前記第1トランジスタの発熱量と前記第1トランジスタの熱抵抗とにより定まる、前記第1トランジスタからの距離と前記第1トランジスタから前記距離だけ離れた前記基板上の温度上昇値との相関を示す情報から、前記温度上昇値が所定値以下となる第1距離となるように、前記第2トランジスタを形成する、電子装置の製造方法。
【符号の説明】
【0081】
10、10a 第1トランジスタ
20 第2トランジスタ
11、21 ゲートフィンガー
12、22 ソースフィンガー
13、23 ドレインフィンガー
14、24 ソースバスライン
15、25 ドレインバスライン
16、26 ゲートバスライン
17、27 ゲートパッド
30 基板
31 電子走行層
32 電子供給層
33 キャップ層
34 半導体層
35 2次元電子ガス
36 絶縁膜
37 金属膜
38 ビア配線
39 貫通孔
40 ソース配線
41 ゲート配線
42 ソース配線
43 ドレイン配線
50 入力整合回路
52 出力整合回路
60~63 インダクタ
64、65 キャパシタ
66、67 インピーダンス調整部
70~73 ノード
81 筐体
82 表示部
84 基板
85 配線
86 アンテナ
87 RF通信部
88 DAコンバータ
89 ベースバンド処理部
90 CPU
100、200、500、600 電力増幅器
300 電子装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13