(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040221
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーおよび柑橘類鮮度保持方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/02 20060101AFI20240315BHJP
A23B 7/00 20060101ALI20240315BHJP
A23B 7/148 20060101ALI20240315BHJP
A01F 25/13 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B65D65/02 E
A23B7/00 101
A23B7/148
A01F25/13 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010794
(22)【出願日】2024-01-29
(62)【分割の表示】P 2020047132の分割
【原出願日】2020-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大槻 みどり
(57)【要約】
【課題】柑橘類の鮮度をより長期間保持できる技術を提供する。
【解決手段】柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーは、合成樹脂フィルムから構成され、前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける透湿度が、5~1000[g/m
2・日・atm]である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルムから構成された柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーであって、
前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける透湿度が、5~1000[g/m2・日・atm]である、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー。
【請求項2】
前記合成樹脂フィルムの厚みが、10~150μmである、請求項1に記載の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー。
【請求項3】
前記合成樹脂フィルムがナイロン、ポリ乳酸、ポリスチレン、およびエチレン-ビニルアルコール共重合体の中から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項1または2に記載の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー。
【請求項4】
前記柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーは、袋状である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー。
【請求項5】
前記合成樹脂フィルムが無延伸ナイロンを含む、請求項1乃至4いずれか一項に記載の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー。
【請求項6】
前記合成樹脂フィルムが多層構造である、請求項1乃至5いずれか一項に記載の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー。
【請求項7】
前記合成樹脂フィルムが防曇剤を含む、請求項1乃至6いずれか一項に記載の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー。
【請求項8】
前記防曇剤が、非イオン界面活性剤を含む、請求項7に記載の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー。
【請求項9】
前記柑橘類が、みかん類である、請求項1乃至8いずれか一項に記載の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれか一項に記載の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーを用いた柑橘類鮮度保持方法であって、
柑橘類を収容した農業用コンテナを、前記柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより被覆する、柑橘類鮮度保持方法。
【請求項11】
前記農業用コンテナは、周壁および底部が通気性を有する、請求項10に記載の柑橘類鮮度保持方法。
【請求項12】
収容された前記柑橘類の重量減少率が、1日当たり、0.05重量%以上1重量%未満である、請求項10または11に記載の柑橘類鮮度保持方法。
【請求項13】
前記柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより被覆された空間内の平均温度が15℃以上20℃以下、平均相対湿度が80%以上98%以下である、請求項10乃至12いずれか一項に記載の柑橘類鮮度保持方法。
【請求項14】
前記農業用コンテナの底部を除く全面を前記柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより被覆する、請求項10乃至13いずれか一項に記載の柑橘類鮮度保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーおよび柑橘類鮮度保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温州みかんなどの柑橘類は、収穫後、農業用コンテナに収容され、貯蔵期間を経て出荷されることがある。また、農業用コンテナは、良好な通気性、強度、軽量性、収容のし易さおよび十分な収容力を得る等の理由から、一般に、メッシュ構造で上面全面が開口した箱型のものが広く用いられている。そのため、収穫した柑橘類をそのまま農業用コンテナに収容し、貯蔵しておくと、柑橘類の表面が乾燥し、萎びてしまい、商品価値が大きく損なわれてしまう。
【0003】
一方、柑橘類などの農作物は、収穫後も呼吸をしている。そのため、乾燥を抑制するために非通気性のカバーで覆う等すると、柑橘類の呼吸によって湿度が上昇し、結露が生じる結果、柑橘類にカビが発生しやすくなるという問題があった。
【0004】
また、農作物は、呼吸が活発なほど劣化が進みやすく、収穫直後からの重量減少量(蒸散量)が増加する。そのため、農作物の鮮度を保持するためには、呼吸を抑制することが重要となる。
【0005】
収穫した柑橘類を長期的に保存する技術として、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、通気度が100秒/100cc~5000秒/100ccである通気性シート材からなり柑橘類の保存用カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、通気性を確保することで結露の発生を抑制するものではあったが、通気により柑橘類の呼吸が盛んにおこなわれ、重量減少量が十分に低減できるものではなかった。また、良好な通気性により、湿度も低下しやすくなり、柑橘類の表面が乾燥しやすく、萎れが生じやすいといった外観上の問題があった。
【0008】
本発明者は、収穫した柑橘類を農業用コンテナに収容して貯蔵した場合において、当該柑橘類のカビ発生を抑制する一方で、乾燥による萎れを低減し、かつ、柑橘類の呼吸を制限して鮮度保持することについて鋭意検討を行った。その結果、農業用コンテナを覆うカバーの40℃、90%RHにおける透湿度を制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
合成樹脂フィルムから構成された柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーであって、
前記合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける透湿度が、5~1000[g/m2・日・atm]である、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーを用いた柑橘類鮮度保持方法であって、
柑橘類を収容した農業用コンテナを、前記柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより被覆する、柑橘類鮮度保持方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柑橘類の鮮度をより長期間保持できる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーの使用方法の一例を示す模式斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーの使用方法の一例を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差や組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。また、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0014】
<柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー>
本実施形態の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーとは、収穫した柑橘類を収容する際に用いられる公知のコンテナを被覆するためのものである。また、被覆とは、連続的な場合に限られず、非連続であったり、一部に開口領域を有していてもよい。具体的には、直方体形状のコンテナの場合、その上面、側面および底面のうち、上面および側面を被覆してもよく、すべての面を被覆してもよい。
【0015】
本実施形態の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー(以下、単に「カバー」とも称する)は、合成樹脂フィルムから構成され、当該合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける透湿度が、5~1000[g/m2・日・atm]である。
これにより、収穫した柑橘類を農業用コンテナに収容し、貯蔵した場合において、当該柑橘類のカビ発生を抑制する一方で、乾燥による萎れを低減し、かつ、柑橘類の呼吸を制限して鮮度保持することができる。
当該40℃、90%RHにおける透湿度は、好ましくは、25~900[g/m2・日・atm]であり、より好ましくは、50~800[g/m2・日・atm]である。
本実施形態のカバーによれば、当該40℃、90%RHにおける透湿度を上記下限値以上とすることで、水蒸気が透過しやすくなり、カバーで覆われた内部の湿度の上昇を低減し、結露の発生を抑制できる。一方、当該40℃、90%RHにおける透湿度を上記上限値以下とすることで、柑橘類の呼吸、蒸散を適度に維持して、重量が低減するのを抑制して鮮度を保持しやすくなり、また、乾燥により柑橘類の外皮が萎れることを抑制できる。
【0016】
なお、40℃、90%RHにおける透湿度は、JIS Z0208(カップ法)に準拠した方法によって測定することができる。
【0017】
また、40℃、90%RHにおける透湿度は、後述する合成樹脂フィルムの材料の選択、合成樹脂フィルムの製造方法、合成樹脂フィルムの層構造、貫通孔の制御等の公知の工夫を施すことによって、調整することができる。
【0018】
また、本実施形態のカバーの形状は、コンテナを被覆できるものであればとくに限定されないが、例えば、シート状、袋状等であってもよい。なかでも、公知のコンテナを簡便に被覆できる観点から、袋状であることが好ましい。
本実施形態のカバーが袋状である場合、袋の開口部を除く周辺部の少なくとも一部にヒートシール部を有することが好ましい。これにより、簡便に柑橘類の鮮度を保持できるようになる。
【0019】
また、本実施形態において、柑橘類とは、ミカン科ミカン亜科に属する植物の果実を意味する。具体的な柑橘類としては、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、ブラッドオレンジなどのオレンジ類、温州みかん、マンダリンオレンジ、ぽんかん、紀州みかん、アンコール、ダンゼリン、コウジ、シークワーサー、タチバナ、不知火などのみかん類、ナツダイダイ、はっさく、ヒュウガナツ、サンボウカン、河内晩柑、キヌカワ、ナルトなどの雑柑類、タンカン、いよかん、マーコット、清見、オーランド、ミネオラ、セミノール等のタンゴール・タンゼロ類、メキシカンライム、タヒチライム等のライム類、リスボンレモン、ユーレカレモン、ディアマンテ、エトローグ等のレモン類、バンペイユ、土佐ブンタン等のブンタン、ダンカン、マーシュ、トムソン、ルビーレッド等のグレープフルーツ類、ゆず、カボス、スダチ、ハナユ、キズ等のユズ類、キンカン、カラタチが挙げられる。なかでも、良好な鮮度保持効果が得られやすい観点から、みかん類であることが好ましく、温州みかんであることがより好ましい。
【0020】
以下、合成樹脂フィルムについて、さらに、説明する。
【0021】
[合成樹脂フィルム]
合成樹脂フィルムは、コンテナ内に収容された柑橘類を外部から視認できる観点から、透明または半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。
【0022】
合成樹脂フィルムを構成する合成樹脂は、農作物、青果物の包装に用いることができるものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。
例えば、各種ポリエチレンおよびエチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリ乳酸などのポリエステル樹脂、6ナイロンなどのポリアミド樹脂などが挙げられる。これらはホモポリマーであってもよく、2種類以上のコポリマーであってもよく、これらホモポリマーやコポリマーを2種類以上含むブレンド物であってもよい。 また、上記各種ポリエチレンおよびエチレン共重合体の具体例としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン-直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-α-オレフィンコポリマーなどのコポリマーあるいはアイオノマーなどが挙げられる。これらは1種または2種以上含んだものでもよく、これらと他の樹脂とを混合したものであってもよい。
【0023】
なかでも、透気度を適切に制御する観点から、ポリエチレン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸などのポリエステル樹脂、およびナイロンなどのポリアミド樹脂であることが好ましく、ナイロン、ポリ乳酸、ポリスチレン、およびエチレン-ビニルアルコール共重合体の中から選ばれる1種または2種以上であることがより好ましく、ナイロンであることがさらに好ましい。
【0024】
上記ナイロンは、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン6・T、ナイロン6・I、ナイロン9T、ナイロンM5T、ポリメタキシリレンアジパミド(MXDナイロン)、等を、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12およびナイロン66の単独または二種以上の組み合わせが好ましく、ナイロン6およびナイロン66の単独または二種の組み合わせがさらに好ましい。
また、ナイロンは無延伸であることが好ましい。
【0025】
上記のエチレン-ビニルアルコール共重合体は、良好なヒートシール性を得る観点から好ましい。エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂中のエチレンコンテントは、好ましくは20~48mol%、より好ましくは40~48mol%である。エチレンコンテントを調整することで、ヒートシール性を一層高めたり、透湿度を調整したりすることができる。
【0026】
合成樹脂フィルムの成型方法は、特に限定されないが、押出、インフレーション、カレンダーリング等の方法が用いられる。合成樹脂フィルムが多層構造の場合、共押出インフレーション法により製造されることが好ましい。
【0027】
合成樹脂フィルムを成型する際、必要に応じて、防曇剤等の添加物を混練してもよく、2種類以上の樹脂をブレンドしてもよい。
上記防曇剤としては、非イオン界面活性剤を含むものが挙げられる。これにより、結露を効果的に抑制できるようになる。非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド等を挙げることができる。
【0028】
また、合成樹脂フィルムに、延伸処理やアニーリングなどを施してもよく、さらに、シーラント層を設けたものでもよい。延伸処理を施すことにより、合成樹脂フィルムの剛性、耐ピンホール性、水蒸気・酸素バリア性、および見栄えを向上できる。例えば、延伸ナイロン、延伸ポリ乳酸、延伸ポリスチレンが挙げられる。
【0029】
合成樹脂フィルムは、単層として用いてもよいし、2層以上の多層構造として用いてもよい。多層構造とする場合、各層が含む樹脂は同一であっても異なっていてもよい。例えば、ナイロン、ポリ乳酸、ポリスチレン、およびエチレン-ビニルアルコール共重合体の中から、同じ樹脂を選択してもよく、または、異なる樹脂を選択しそれぞれの層を形成して多層構造としてもよい。
なかでも、ナイロンからなる層を少なくとも有することが好ましい。
【0030】
[厚み]
合成樹脂フィルムの平均厚みは、10μm以上、150μm以下が好ましく、15μm以上、100μm以下がより好ましく、20μm以上、50μm以下がさらに好ましい。
合成樹脂フィルムの平均厚みを上記下限値以上とすることにより、酸素透過量、透湿度をより高度に制御し易くするとともに、カバーの強度を高めることができる。一方、合成樹脂フィルムの平均厚みを上記上限値以下とすることにより、カバーの取扱性を良好にし、適切な透湿度、酸素透過量を得ると共に、生産コストも低くできる。
【0031】
[貫通孔]
本実施形態のカバーは、貫通孔を有していてもよく、有さないものであってもよい。
【0032】
貫通孔を有する場合は、貫通孔の平面形状としては、たとえば、円形、多角形、またはスリットであってもよい。円形とは、真円形に限定されず、略円形を含むものである。また、円形以外にも、半円形や三日月形状であってもよい。多角形とは、三角形、四角形、および五角形等の三つ以上の線分によって囲まれた形状であればよい。スリットとは、合成樹脂フィルムを貫通している切り込み、細隙であって、直線、曲線、L字型、×印などであってもよく、その長さ等も特に限定されない。
【0033】
貫通孔の平均直径は30μm~1100μmであることが好ましく、40μm~500μmであることがより好ましく、50μm~200μmであることがさらに好ましい。
【0034】
貫通孔の形成方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、熱針による加工法、レーザー光により穿孔する方法、ロールカッターなどの金型を利用した方法等が挙げられる。
【0035】
[酸素透過量]
本実施形態の合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける酸素透過量は、柑橘類の呼吸を保持し、鮮度を保持する観点から、好ましくは2cc/m2・day・atm以上であり、より好ましくは5cc/m2・day・atm以上であり、さらに好ましは300cc/m2・day・atm以上である。
一方、合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおける酸素透過量は、柑橘類の呼吸を抑制して、鮮度を保持する観点から、好ましくは50000cc/m2・day・atm以下であり、より好ましくは10000cc/m2・day・atm以下であり、さらに好ましくは7500cc/m2・day・atm以下である。
【0036】
また、当該酸素透過量は、上述した合成樹脂フィルムの材料の選択、合成樹脂フィルムの製造方法、合成樹脂フィルムの層構造、貫通孔などを制御することによって、調整することができる。
【0037】
<柑橘類鮮度保持方法>
本実施形態の柑橘類鮮度保持方法は、上記の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーを用いた柑橘類鮮度保持方法であって、柑橘類を収容した農業用コンテナを、当該柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより被覆する方法である。
これにより、農業用コンテナ内の柑橘類の鮮度を保持しつつ、カビの発生を抑制し、萎れを低減できる。また、柑橘類を収容した農業用コンテナを、当該柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより被覆したあとは、室内でそのまま保存してもよく、冷蔵してもよいが、カビの発生を効果的に抑制する観点からは室温で保存することが好ましい。
【0038】
次に
図1,2を用いて、当該柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーによる包装形態について説明する。
図1,2には、農作物を収容した農業用コンテナの上から、袋状の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーが被せられた形態が示されている。すなわち、袋を農業用コンテナの上面から被せ、農業用コンテナの周壁(側面全体)が被覆されている。この場合、袋の底部が、農業用コンテナの上面に位置する。
また、
図1は、袋の開口部を閉じず、農業用コンテナの底面が露出している形態を示し、
図2は、袋の開口部が閉じられ、農業用コンテナの底面(底部)が閉鎖されている形態を示している。
適度な通気性を確保する観点から、農業用コンテナの底部(底面)は少なくとも一部が覆われていないことが好ましく、全面が露出していることがより好ましい。
【0039】
また、当該カバーがシート状である場合も、袋状の場合と同様に、農業用コンテナの上面からシートを被せ、農業用コンテナの周壁(側面全体)を被覆する方法が挙げられる。農業用コンテナの底面は、シートにより覆われていてもよく、一部または全面が露出してもよい。
【0040】
また、上記の袋およびシートを綴じる方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、開口した部分にヒートシール処理を施してもよいし、バックシーリングテープ、結束帯、輪ゴム、かしめ等の部材を用いて綴じてもよい。
【0041】
また、本実施形態の柑橘類鮮度保持方法において、鮮度保持効果を一層向上させる観点から、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーを構成する合成樹脂フィルムの40℃、90%RHにおける透湿度に応じて、包装形態を制御することが好ましい。
具体的には、当該透湿度が30~1000[g/m2・日・atm]、より好ましくは50~1000[g/m2・日・atm]の場合は、農業用コンテナの全面が柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより覆われていることが好適であり、当該透湿度が5~900[g/m2・日・atm]より好ましくは5~800[g/m2・日・atm]の場合は、農業用コンテナの底面の一部が露出し、その他の面が柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより覆われていることが好適である。これにより、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー内の空間の温度、湿度をより適切な範囲に保持しやすくなる。
【0042】
本実施形態の柑橘類鮮度保持方法に用いられる農業用コンテナは、採集コンテナ、収穫コンテナ等とも呼ばれ、本実施形態においては、公知のものを特に限定されず用いることができる。
具体的には、農業用コンテナは、例えば、周壁(全側面)および底部(底面)が通気性を有するものが挙げられる。また、農業用コンテナは、メッシュ構造であり、それ故、高い通気性を有するとともに、軽量化されている。
農業用コンテナの大きさは、特に限定されず、収容した柑橘類が平置きされるもの、または積み上げられて収容されるものであってもよい。取扱性等の観点から、農業用コンテナは、矩形であり、上面が開口している箱状のものが好適である。
また、農業用コンテナとしては、樹脂製、木製、植物の蔓等を用いたもの、布製などが挙げられる。
【0043】
また、本実施形態の柑橘類鮮度保持方法によれば、収容した柑橘類の重量減少率が、1日当たり、0.05重量%以上1重量%未満である。言い換えると、本実施形態の柑橘類鮮度保持方法によれば、収容した柑橘類の重量保持率の1日当たりの平均が、99重量%超、99.05重量%以下である。
これにより、高い鮮度保持効果が得られる。
一般に、農作物の鮮度は、例えば、重量減少量(蒸散量)などによって評価され、収穫時の重量に対し5%の減量がおこると、商品としての品質が、著しく損なわれるといわれている。
【0044】
また、本実施形態の柑橘類鮮度保持方法は、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより被覆された空間内の平均温度を15℃以上20℃以下、平均相対湿度を80%以上98%以下に維持することが好ましい。これにより、鮮度保持効果を一層顕著に得ることができる。
なお、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより被覆された空間内とは、外気が直接入り込まない程度に当該カバーにより囲まれた空間であり、農業用コンテナ内の空間を示す。例えば、当該カバーが袋状であり、袋を農業用コンテナの上面から被せ、底面で開口部を綴じた場合、農業用コンテナに収容された柑橘類の最上面近傍の空間をいう。言い換えると、コンテナの最上段に収容された農作物の上面で測定される温度である。
温度、および湿度は、柑橘類を柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーにより被覆した直後から、鮮度が保持される期間の間における平均値が、上記の数値範囲内であることを意図する。
【0045】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0046】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0047】
<1>柑橘類鮮度保持コンテナ用カバー
以下の各柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーを準備した。
・柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーA
(手順)
ナイロン(宇部興産社製、UBEナイロン(登録商標)5033B)と、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH:クラレ社製、商品名:E173B)を用意し、2層の共押出が可能な空冷式インフレーション用の装置の押出機部分(2箇所)に、それぞれを投入して加熱溶融し、リング状のダイスに押し出し、当該ダイスから、各素材の溶融物の2層構造のチューブ状の溶融樹脂(外側がナイロン、内側がEVOH)を押し出した。 押し出されたチューブ状の溶融樹脂内に、50℃以下の空気を送り込んで、溶融樹脂を膨張させつつ製膜し、60m/分の製膜速度でチューブ状の合成樹脂フィルムを得た。得られたチューブ状の合成樹脂フィルムを底打ち製袋機にて底打ちシールし、大袋(内寸1200mm×1000mm、厚み25μm:内訳ナイロン層21μm、EVOH層4μm)を作製し、袋状の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAを得た。
【0048】
・柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーB
(手順)
ナイロン(宇部興産社製、UBEナイロン(登録商標)1030B)をTダイ押出機に投入し、押出Tダイ法にて、合成樹脂フィルムを作製した。
得られた合成樹脂フィルムをカットして2枚重ね合わせ、インパルスシーラー(富士インパルス社製、FI-400Y-10PK)を用いて3方にヒートシール加工を施して10mm幅の熱シール部分を190℃、シール時間1秒で形成して、大袋(内寸1200mm×900mm、厚み20μm)を作製し、袋状の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーBを得た。
【0049】
・柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーC
(手順)
ポリ乳酸フィルム(ユニチカ株式会社製(登録商標)「テラマック」TF)を用意し、上記のカバーBと同様に大袋(内寸1200mm×900mm、厚み15μm)を作製し、袋状の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーCを得た。
【0050】
・柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーD
高密度ポリエチレンからなる不織布(デュポン株式会社製(登録商標)「タイベック」)を用意し、シート状のまま用いた。
【0051】
・柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーE
(手順)
2軸延伸した透明なポリプロピレン(PP)フィルム(OPPフィルム)を用意し、上記のカバーBと同様に大袋(内寸1200mm×900mm、厚み40μm)を作製し、袋状の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーEを得た。
【0052】
<2>測定
各柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーを用いて、以下の測定を行った。
・透湿度(40℃、90%RH)[g/m2・日・atm]
JIS Z 0208に準拠して、カップ法により求めた。
【0053】
各柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーを用いて、以下の測定を行った。
・酸素透過度(23℃、60%RH)[cc/m2・day・atm]
(1)窒素ガスの封入
シート状のカバーは袋状に形成したのち、ヒートシール等で各袋を密封した後、アスピレーター等を用いて袋を脱気した。脱気は、袋の両面が貼りつくまで行った。次に、この袋に白硬注射筒を用いて窒素ガス(純度99.9%以上)を充填した。窒素ガスの注入量は、袋サイズに合わせ、注入した窒素ガスによって袋を構成するフィルムにテンションがかからず、かつ僅かにゆるんでいる範囲で極力多く入れ、当該白硬注射筒の目盛りを用いて測定した。なお、窒素ガスの脱気および注入は、例えば、注射針を袋に突き刺して行った。注射針を刺す際は、袋を構成するフィルムに両面テープを貼り、この上にさらにポリプロピレンフィルム製の粘着テープ(以下「PPテープ」という)を貼り付けた。また、注射針を抜いた後は、速やかにPPテープで針孔を塞いだ。袋に貼るテープは、4.5cm2以下の面積に収まるようにした。
また、袋を構成するフィルムが微細孔フィルムの場合は、テープで当該微細孔を塞がないようにした。
(2)初期酸素濃度測定
窒素ガス充填直後(t=0)の袋内の初期酸素濃度(C0)を測定した。袋内のガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(TCD)で袋内の初期酸素濃度(C0)を求めた。C0は0.2%以下であり、これを超える場合は、作業をやり直した。酸素濃度測定のためのサンプリングガスは、10cc以下とした。ガスクロマトグラフィーに注入する場合は、1cc程度の一定量を注入した。また、標準ガス(酸素約1%と約10%を含む2点以上)の測定も同量のガスを注入して行い、検量線を作成した。
(3)袋の保管
初期酸素濃度を測定した袋は、23℃、60%RH(恒温恒湿庫)で保管した。このとき、袋の上に物が乗ったり、恒温恒湿庫のファンの風が袋に直撃しないように静置した。
(4)保管中の袋内酸素濃度の測定及び酸素透過速度の計算
袋内酸素濃度の測定は、窒素ガス充填直後と3時間以上経過後に酸素濃度が1%以上7%以下の範囲内で2点以上の合計3~5点測定し、経過時間t(hr)と袋内酸素濃度間に比例関係(相関係数が0.98以上)が成り立つ必要がある。相関係数が成り立たない場合は再試験を行った。袋を構成するフィルムの酸素透過速度が大きすぎて袋内酸素濃度の上昇が速すぎ、この条件をクリアできない場合は、フィルムの一部を酸素透過速度が測定しているフィルムより小さく既知である同じ材質のフィルムと張り合わせて袋を作成して同様に行えばよい。この際、袋の表面積は既知である別のフィルムと貼り合わせた部分は除き、求められた酸素透過速度より既知のフィルム部分の酸素透過速度を差し引いたものが測定フィルムの酸素透過速度とした。
酸素透過速度は、経過時間が長いほうの値を用いて以下の計算式(1)を計算した。
F=1.143×(Ct-C0)×V/t (1)
但し、F:酸素透過速度(cc/袋・day・atm)
Ct:窒素ガス充填後t時間後における袋内酸素濃度(%)
C0:窒素ガス充填直後の袋内酸素濃度(%)
V:充填した窒素ガスの量(cc)
t:ガス充填時からの経過時間(hr)
【0054】
<3>鮮度保持実験
各柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーを用いて、以下の実験を行った。
(実施例1)
深型の農業用コンテナ(594×400×255mm:メッシュ構造、樹脂製)と、浅型の農業用コンテナ(594×400×170mm:メッシュ構造、樹脂製)を用意した。
用意した各農業用コンテナに、温州ミカン24kgを均等に収容し収容し、下から深型、浅型の順に農業用コンテナを積層し、その上から、袋状の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAを被せた。
この際、農業用コンテナの上面および全側面を覆い、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAの開口部は開口したままとして農業用コンテナの底面を露出した状態とした。また、農業用コンテナは、高さ150mmの台の上に載置し、農業用コンテナ底面からの通気性が確保されるようにした。
直射日光が当たらない室内で、室温にて、そのまま保管し、鮮度保持実験を行った。
【0055】
(実施例2)
農業用コンテナの底面が露出させない以外は、実施例1と同様にして、鮮度保持実験を行った。
具体的には、農業用コンテナの上面、全側面、および底面を覆い、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAの開口部は、下段の農業用コンテナの底面で折込み、底面が露出しないようにしつつ、高さ150mmの台の上に載置した。
【0056】
(実施例3)
実施例1の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAに替えて、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーBを用いた以外は、実施例1と同様にして、鮮度保持実験を行った。
【0057】
(実施例4)
実施例1で用いた深型の農業用コンテナを3つと、浅型の農業用コンテナを2つ、計5つの農業用コンテナを用意した以外は、実施例1と同様にして、鮮度保持実験を行った。
具体的には、用意した各農業用コンテナに、温州ミカン24kgを均等に収容し、下から深型、浅型、深型、浅型、深型の順に農業用コンテナを積層し、その上から、袋状の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAを被せた。
【0058】
(実施例5)
実施例1の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAに替えて、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーCを用いた以外は、実施例1と同様にして、鮮度保持実験を行った。
【0059】
(比較例1)
実施例1の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAに替えて、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーDを用いた以外は、実施例2と同様にして、鮮度保持実験を行った。
なお、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーDは、シート状であるため、農業用コンテナを上方から包み込むようにして、覆いかぶせた。
【0060】
(比較例2)
実施例1の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAに替えて、柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーEを用いた以外は、実施例1と同様にして、鮮度保持実験を行った。
【0061】
(比較例3)
実施例1の柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーAを用いずに、実施例1と同様にして、鮮度保持実験を行った。
【0062】
<4>鮮度保持評価
(1)保管中の温州ミカンを取り出し、「変色」「萎れ(シワ)」「ヘタの変色・萎れ」の各項目について、複数のパネラーらにより評価し、以下の基準に従って行い、平均値を算出した。また、「カビ」の有無を確認し、温州ミカンの全個数に対する、カビがみられた温州ミカンの個数の割合をカビ発生率(%)とした。
なお、評価は一日一回行い、劣化したもの、カビが発生したものは、評価の都度、除去した。
さらに、以下に従い「鮮度保持期間」を求め、結果を表1に示した。
・評価基準
4:良好
3:やや劣化(購入する)
2:明らかな劣化(商品性がない)
1:著しい劣化(食べない)
・「鮮度保持期間」は、以下の品質低下が確認された日のいずれか早い日の一日前までとした。
上記の各項目の評価結果が3.0未満となった項目が少なくとも一つでも生じた日、または、カビ発生率が20%以上となった日。
【0063】
(2)重量保持率
柑橘類鮮度保持コンテナ用カバーで被覆前の温州ミカンの重量(g)に対する、35日間保存後における温州ミカンの重量(g)の割合を重量保持率(%)とした。結果を表2に示した。
【0064】
(3)相対湿度
農業用コンテナの最上段の温州ミカンの上面近傍に湿度センサーを設置し、1時間ごとの湿度を測定し、鮮度保持期間中の相対湿度の平均値を算出した。結果を表1に示した。
【0065】
(4)温度
農業用コンテナの最上段の温州ミカンの上面近傍に温度センサーを設置し、1時間ごとのの温度を測定し、鮮度保持期間中の相対湿度の平均値を算出した。結果を表1に示した。
【0066】