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特開2024-40225チャイルドシートおよびクッション構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040225
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】チャイルドシートおよびクッション構造体
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20240315BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B60N2/28
B60N2/42
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011709
(22)【出願日】2024-01-30
(62)【分割の表示】P 2020068523の分割
【原出願日】2020-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】508189474
【氏名又は名称】ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 治生
(57)【要約】
【課題】子供の成長に対応することができ、簡易な構造で衝撃を吸収することができるチャイルドシートおよびクッション構造体を提供すること。
【解決手段】チャイルドシートは、座部と背もたれ部とを有する座席本体(3)と、座部と背もたれ部とで形成されるコーナー部に着脱可能に取り付けられるクッション構造体(4)とを備える。クッション構造体(4)は、通常の使用時には、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を水平に近い角度で下方から支える第1形態(図4(A))と、背もたれ部に向かって子供を急激に動かす荷重が加わった時には、その荷重を受けるように、背もたれ部に沿って扁平に変形する第2形態(図4(B))とを取り得る。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と背もたれ部とを有する座席本体と、
前記座部と前記背もたれ部とで形成されるコーナー部に着脱可能に取り付けられるクッション構造体とを備え、
前記クッション構造体は、
通常の使用時には、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を水平に近い角度で下方から支える第1形態と、
前記背もたれ部に向かって子供を急激に動かす荷重が加わった時には、その荷重を受けるように、前記背もたれ部に沿って扁平に変形する第2形態とを取り得る、チャイルドシート。
【請求項2】
前記クッション構造体は、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を水平に近い角度で下方から支える支え面を含み、
前記第1形態では、前記背もたれ部と前記座部との交点から前記支え面までの厚さは、70mm以上である、請求項1に記載のチャイルドシート。
【請求項3】
前記荷重は、10kg以上であり、
前記第2形態では、前記背もたれ部と前記座部との交点から前記支え面までの厚さは、45mm以下である、請求項2に記載のチャイルドシート。
【請求項4】
前記支え面の角度は、水平面に対して20°以下である、請求項2または3に記載のチャイルドシート。
【請求項5】
前記クッション構造体は、前記支え面を有する衝撃吸収クッション体と、前記衝撃吸収クッション体のうち前記支え面以外の面を取り囲むハウジングとを含む、請求項2~4のいずれかに記載のチャイルドシート。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記衝撃吸収クッション体よりも硬度が高い、請求項5に記載のチャイルドシート。
【請求項7】
前記座席本体に着座した子供の腰を拘束する腰ベルトと、
前記座席本体に着座した子供の股を拘束する股ベルトとをさらに備え、
前記ハウジングは、その側面において前記腰ベルトを貫通させる一対の腰ベルトガイド溝と、その前面において前記股ベルトを貫通させる股ベルトガイド溝とを有する、請求項5または6に記載のチャイルドシート。
【請求項8】
チャイルドシートの座部と背もたれ部とで形成されるコーナー部に着脱可能に取り付けられるクッション構造体において、
前記クッション構造体は、前記座部に当接する座部当接面と、前記背もたれ部に当接する背もたれ当接面と、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を平坦な面で下方から支える支え面とを備え、
前記クッション構造体は、
通常の使用時には、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を水平に近い角度で下方から支える第1形態と、
前記背もたれ部に向かって子供を急激に動かす荷重が加わった時には、その荷重を受けるように、前記背もたれ部に沿って扁平に変形する第2形態とを取り得る、クッション構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チャイルドシートおよびクッション構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、たとえば1歳未満の首が座っていない子供をチャイルドシートに乗せる場合には、仰向けに近い状態で寝かせ、車両の進行方向に対して後ろ向きに保持し、ベルトでチャイルドシートに固定するようにしている。このような状態で、事故や急ブレーキなどによる前方からの衝撃を受けると、その反動で子供が前方に移動するため、その移動を抑制しようとして、衝撃が肩ベルトを介して子供の肩部分に集中する。
【0003】
また、前方からの衝撃を緩和することができる構造を備えたチャイルドシートとしては、たとえば、特開2009-161010号公報(特許文献1)、特開2003-63291号公報(特許文献2)、特開2004-217038号公報(特許文献3)および特開2008-184133号公報(特許文献4)がある。
【0004】
特許文献1には、背もたれ角度を小さくする方向に変形する角度変更部で衝撃を吸収することが開示されている。特許文献2,3には、衝撃が加わった場合に背面部が立ち上がる方向に回動し、衝撃吸収部材でその衝撃を吸収することが開示されている。特許文献4には、衝撃が加わると、リンクアームに連結されているロッドがリンクアームの回動に伴って移動することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-161010号公報
【特許文献2】特開2003-63291号公報
【特許文献3】特開2004-217038号公報
【特許文献4】特開2008-184133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の角部変更部は、チャイルドシートに固定されているため、子供の成長に対応したものではない。また、特許文献2~4のチャイルドシートは、衝撃を吸収する構造として複数の部材を用いるため、構造が複雑である。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、子供の成長に対応することができ、簡易な構造で衝撃を吸収することができるチャイルドシートおよびクッション構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るチャイルドシートは、座部と背もたれ部とを有する座席本体と、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を下方から支える支え面を含み、座部と背もたれ部とで形成されるコーナー部に着脱可能に取り付けられるクッション構造体とを備え、クッション構造体は、支え面に対して直行する方向に延びている第1クッション体と、第1クッション体と同一方向に延びており、第1クッション体とは異なるクッション性を有する第2クッション体とを有する衝撃吸収クッション体を含む。
【0009】
好ましくは、第1クッション体と第2クッション体は、前後方向に線状に延びている。
【0010】
好ましくは、第1クッション体と第2クッション体は、硬度および形状の少なくとも一方が異なっている。
【0011】
好ましくは、第1クッション体と第2クッション体は、縦断面視三角形である。
【0012】
好ましくは、クッション構造体は、衝撃吸収クッション体のうち支え面以外の面を取り囲むハウジングをさらに含む。
【0013】
本発明の一態様に係るチャイルドシートは、座部と背もたれ部とを有する座席本体と、座部と背もたれ部とで形成されるコーナー部に着脱可能に取り付けられるクッション構造体とを備え、クッション構造体は、通常の使用時には、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を水平に近い角度で下方から支える第1形態と、背もたれ部に向かって子供を急激に動かす荷重が加わった時には、その荷重を受けるように、背もたれ部に沿って扁平に変形する第2形態とを取り得る。
【0014】
好ましくは、クッション構造体は、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を水平に近い角度で下方から支える支え面を含み、第1形態では、背もたれ部と座部との交点から支え面までの厚さは、70mm以上である。
【0015】
好ましくは、荷重は、10kg以上であり、第2形態では、背もたれ部と座部との交点から支え面までの厚さは、45mm以下である。
【0016】
好ましくは、支え面の角度は、水平面に対して20°以下である。
【0017】
好ましくは、クッション構造体は、支え面を有する衝撃吸収クッション体と、衝撃吸収クッション体のうち支え面以外の面を取り囲むハウジングとを含む。
【0018】
好ましくは、ハウジングは、衝撃吸収クッション体よりも硬度が高い。
【0019】
好ましくは、座席本体に着座した子供の腰を拘束する腰ベルトと、座席本体に着座した子供の股を拘束する股ベルトとをさらに備え、ハウジングは、その側面において腰ベルトを貫通させる一対の腰ベルトガイド溝と、その前面において股ベルトを貫通させる股ベルトガイド溝とを有する。
【0020】
本発明の一態様に係るクッション構造体は、チャイルドシートの座部と背もたれ部とで形成されるコーナー部に着脱可能に取り付けられるクッション構造体において、クッション構造体は、座部に当接する座部当接面と、背もたれ部に当接する背もたれ当接面と、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を平坦な面で下方から支える支え面とを備え、クッション構造体は、通常の使用時には、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を水平に近い角度で下方から支える第1形態と、背もたれ部に向かって子供を急激に動かす荷重が加わった時には、その荷重を受けるように、背もたれ部に沿って扁平に変形する第2形態とを取り得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明のチャイルドシートおよびクッション構造体は、子供の成長に対応することができ、簡易な構造で衝撃を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施の形態に係るチャイルドシートを示す図であり、(A)はクッション構造体を取り付けて後ろ向きにした状態を示し、(B)はクッション構造体を取り外し後ろ向きにした状態を示し、(C)は前向きの状態を示している。
図2】本実施の形態に係るクッション構造体の斜視図である。
図3】本実施の形態に係るクッション構造体の分解斜視図であり、(A)はハウジングを示し、(B)は衝撃吸収クッション体を示し、(C)は第1,2クッション体をそれぞれ示している。
図4】クッション構造体を取り付けて後ろ向きにした状態を示す図であり、(A)は衝撃が加わっていない状態を示し、(B)は衝撃が加わった状態を示す。
図5】(A)は図4(A)を拡大した図であり、(B)は、図4(B)を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
(チャイルドシートの概要について)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るチャイルドシート1について説明する。チャイルドシート1の説明において、前後方向は、チャイルドシート1の前後方向に対応し、左右方向は、チャイルドシート1の座席を前方から見た左右方向に対応している。
【0025】
本実施形態に係るチャイルドシート1は、車両の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための装置である。チャイルドシート1は、ベース本体2および座席本体3を備える。ベース本体2は、車両の座席シート上に載置される。ベース本体2は、座席シートの背もたれに当接する縦部と、座席シートの座席に当接する横部とを備える。座席本体3は、ベース本体2の上側に取り付けられ、ベース本体2に対して回転自在に支持される。座席本体3は、少なくとも後ろ向きおよび前向きで固定される。
【0026】
座席本体3には、子供が着座する。このため、座席本体3は、子供のお尻を支持する座部31と、座部31の後方から立ち上がり、子供の背部を支持する背もたれ部32とを有する。座部31と背もたれ部32の角度は固定されており、座部31に対する背もたれ部32の角度は、たとえば80°~100°である。つまり、背もたれ部32を前傾させたり、後傾させたりすることができない。また、座部31および背もたれ部32には、被覆部材が取り外し可能にそれぞれ装着されている。これらの被覆部材は、柔らかい布製部材、たとえば、クッション材によって形成される。
【0027】
座部31および背もたれ部32の間には、座席本体3に着座した子供の腰を拘束する腰ベルト33が設けられる。座部31には、座席本体3に着座した子供の股を拘束する股ベルト35が設けられる。背もたれ部32には、座席本体3に着座した子供の肩を拘束する肩ベルト34が設けられる。これらのベルト33,34,35は、これらのベルト33,34,35の先端に設けられるバックル36により、子供の腹部付近で連結される。これらのベルト33,34,35は、いわゆる5点ベルトである。また、腰ベルト33と肩ベルト34は、それぞれ別のベルトで形成されていなくてもよく、たとえば1本のベルトで連続して設けられていてもよい。
【0028】
チャイルドシート1に1歳未満の子供を乗せる場合は、図1(A)に示すように、座席本体3をベース本体2に対して後ろ向きにし、座部31と背もたれ部32とで形成されるコーナー部にクッション構造体4を取り付ける。クッション構造体4を取り付けることで、チャイルドシート1はベッド状態になる。ベッド状態とは、子供の背中およびお尻が略水平に近い角度になる状態である。
【0029】
チャイルドシート1に3ヶ月頃~24ヶ月頃の子供を乗せる場合は、図1(B)に示すように、後ろ向きのままで、コーナー部に配置されたクッション構造体4を取り外す。クッション構造体4を取り外すことで、チャイルドシート1はイス状態になる。イス状態とは、子供の背中およびお尻が角度をもって保たれる状態をいう。ベッド状態およびイス状態については、後述する。
【0030】
チャイルドシート1に15ヶ月頃~4歳頃の子供を乗せる場合は、図1(C)に示すように、クッション構造体4を取り外した状態で、座席本体3をベース本体2に対して前向きにする。座席本体3はベース本体2に対して、前方に傾斜して設けられている。これにより、チャイルドシート1は、子供の背中およびお尻が図1(B)よりも角度をもって保たれるイス状態になる。
【0031】
このように、図1(A)に示すように、クッション構造体4は、1歳未満の子供をチャイルドシート1に乗せる場合に用いられる。次に、クッション構造体4について説明する。
【0032】
(クッション構造体について)
図2~5をさらに参照して、クッション構造体4は、座部31と背もたれ部32とで形成されるコーナー部に着脱可能に取り付けられる。クッション構造体4は、衝撃吸収クッション体40と、衝撃吸収クッション体40を取り囲むハウジング50とを備える。
【0033】
図2図3(B),図3(C)に示すように、衝撃吸収クッション体40は、柔軟性、復元性およびクッション性などを有し、後述する支え面41からの衝撃を吸収する。衝撃吸収クッション体40は、たとえば略三角柱状であり、たとえば縦断面視三角形に形成される。衝撃吸収クッション体40は、連続気泡を有する合成樹脂の発泡体であり、たとえばウレタンなどから形成される。
【0034】
図3(B)に示すように、衝撃吸収クッション体40は、略三角形状の一対の側面42のうち、最も長い辺である長辺45が上になるように配置され、長辺45が周縁の一部を構成する面(各面のうち、最も面積が広い面)が支え面41となる。支え面41は、平面視略矩形形状である。支え面41は、子供の足側となる方へ向け下り傾斜する。
【0035】
一対の側面42は、長辺45と、第1短辺46と、第2短辺47を有しており、第1短辺46と第2短辺47の間に位置する角度が、たとえば80°~100°となっている。第1短辺46あるいは第2短辺47が周縁の一部を構成する第1底面43および第2底面44がハウジング50側を向くように配置される。
【0036】
図1(A)に示すように、チャイルドシート1を後ろ向きにし、クッション構造体4をチャイルドシート1のコーナー部に取り付けた状態では、支え面41は、仰向けに寝かされた子供の背中およびお尻を水平に近い角度で下方から支える。つまり、支え面41とは、子供の背中およびお尻を支える部分である。この場合、支え面41の角度θ1は、水平面に対して20°以下であり、好ましくは15°以下である。20°を超えると子供の背中とお尻に角度が付きすぎるため、首が座っていない1歳未満の子供には好ましくない。また15°以下であると、より子供の背中と足を角度のない状態で保持することができる。このように、ベッド状態とは、子供の背中およびお尻を水平に近い角度で支える状態であり、具体的には、支え面41の角度θ1が水平面に対して20°以下となる状態である。
【0037】
なお、図1(B)に示すように、チャイルドシートを後ろ向きにし、クッション構造体4をチャイルドシート1のコーナー部から取り外した状態では、チャイルドシート1の座
部31と背もたれ部32の被覆部材が子供の背中およびお尻に当接する。この場合、チャイルドシート1の座部31と背もたれ部32の角度θ2は、水平面に対して30°以上80°以下である。30°未満であるとベッド状態に近すぎ、80°を超えると子供の背中とお尻に角度が付きすぎるため、3ヶ月頃~24ヶ月頃の子供には好ましくない。このように、イス状態とは、座部31と背もたれ部32の角度θ2が水平面に対して30°以上80°以下となることである。
【0038】
図3(B)および図3(C)に示すように、衝撃吸収クッション体40は、複数の第1クッション体40Aと、複数の第2クッション体40Bとが積層されることで形成される。第1クッション体40Aおよび第2クッション体40Bは、異なるクッション性を有している。異なるクッション性とは、硬度および形状の少なくとも一方が異なっていることである。本実施の形態では、第1,2クッション体40A,40Bは硬度が異なっており、第1クッション体40Aの硬度が第2クッション体40Bの硬度より高く設定されている。
【0039】
図3(C)に示すように、第1クッション体40Aおよび第2クッション体40Bは、略同じ形状であり、略三角柱である。第1,2クッション体40A,40Bは、支え面41に対して直行する方向に延びている。具体的には、第1,2クッション体40A,40Bは、前後方向(子供の体が延びる方向)に線状に延びている。つまり、第1クッション体40Aと第2クッション体40Bは、左右方向に積層されている。
【0040】
第1,2クッション体40A,40Bは、交互に配置されていてもよいし、たとえば、左右方向中央部を硬度の低い第1クッション体40Aにし、その左右を硬度の高い第2クッション体40Bにしてもよい。このように、第1,2クッション体40A,40Bが同じ形状であり、左右方向に積層されているため、第1,2クッション体40A,40Bの入れ替えを簡単に行うことができ、衝撃吸収クッション体40全体として最適なクッションの硬さにすることができる。なお、第1,2クッション体40A,40Bは、硬度設定の観点から接着剤などで固定されていないことが好ましい。
【0041】
図3(A)に示すように、ハウジング50は、衝撃吸収クッション体40のうち支え面41以外の面を取り囲む。ハウジング50は、座部31と背もたれ部32に当接する。ハウジング50は、たとえば合成樹脂などで形成されており、典型的にはウレタンである。ハウジング50は、衝撃吸収クッション体40よりも硬度が高く設定されている。
【0042】
ハウジング50は、上面51と、一対の側面52と、底面53とを含む。図5に示すように、底面53は、座部31に当接する座部当接面54と、背もたれ部32に当接する背もたれ当接面55を有する。上面51の略中央には凹部56が形成されている。座部当接面54および背もたれ当接面55の厚さは、10mm以上25mm以下であることが好ましく、座部当接面54および背もたれ当接面55が交わる交点の厚みは、典型的には25mmである。
【0043】
図3(A)に示すように、凹部56は、第1底面56aと、第2底面56bと、一対の側面56cとを含む。凹部56に衝撃吸収クッション体40が配置される。そのため、凹部56の第1底面56aには衝撃吸収クッション体40の第1底面43が当接し、第2底面56bには衝撃吸収クッション体40の第2底面44が当接し、一対の側面56cには、一対の側面42がそれぞれ当接する。このように、凹部56には、衝撃吸収クッション体40の支え面41を除く四方が密着している。凹部の各面56a,56b,56cと衝撃吸収クッション体40とは接着剤などで固定されていなくてもよい。
【0044】
さらに、ハウジング50には、腰ベルト33を貫通させる一対の腰ベルトガイド溝57
と、その前面において股ベルトを貫通させる股ベルトガイド溝58とが形成される。腰ベルトガイド溝57は、上面51から底面53に向かって一対の側面52を切り欠いて形成されている。股ベルトガイド溝58は、上面51から座部当接面54に向かって切り欠いて形成されている。
【0045】
クッション構造体4は、通常の使用時には第1形態(図4(A),図5(A))となり、背もたれ部32に向かって子供を急激に動かす荷重(衝撃荷重)が加わった時には第2形態(図4(B),図5(B))を取り得る。
【0046】
図4(A)に示すように、クッション構造体4が第1形態の場合には、クッション構造体4は、仰向けに寝かされた1歳未満の子供の背中およびお尻を水平に近い角度で下方から支えている。つまり、通常の使用時では、衝撃吸収クッション体40およびハウジング50は、ほぼ潰れずに、支え面41の角度θ1が水平面に対して20°以下のベッド状態を維持している。
【0047】
図5(A)に示すように、クッション構造体4の厚さT1は、たとえば70mm以上であり、90mm以上であることが好ましい。ここで、厚さT1とは、座部当接面54および背もたれ当接面55が交わる交点A1から、交点A1から鉛直方向に延びる線と支え面41の交点A2までの距離をいう。以下で示す厚さT2も同様である。厚さT1が70mm以上であると、コーナー部を埋めることができ、子供の背中およびお尻を水平に近い角度で支えることができる。さらに、厚さT1が90mm以上であると、子供の体が大きくなっても子供が窮屈に感じることなく、子供の背中およびお尻を水平に近い角度で支えることができる。なお、交点A1,A2をつなぐハウジング50の厚さは、典型的には25mmである。
【0048】
図4(B)および図5(B)に示すように、クッション構造体4が第2形態の場合には、クッション構造体4は、その荷重を受けるように潰れて、背もたれ部32に沿って扁平に変形する。具体的には、背もたれ部32に向かって子供を急激に動かす10kg以上の荷重が加わった時には、クッション構造体4は、支え面41の角度θ3が水平面に対して35°以上45°以下のイス状態となる。このように、子供に10kg以上の荷重が加わった場合には、ベッド状態からイス状態になるようなクッション性に設定されている。なお、上述した子供を急激に動かす荷重とは、たとえば車両の前突、急ブレーキなどの前方から衝撃である。また、扁平とは、少なくとも背もたれ部32が背もたれ部32に沿って上下に細長い形状であること意味し、座部31に沿う部分が前後に細長くなっている場合も含む。
【0049】
10kg以上の荷重が加わった時には、図5(B)に示すように、座部当接面54および背もたれ当接面55が交わる交点A1から支え面41の交点A2までの厚さT2は、たとえば45mm以下であり、20mm以下であることが好ましい。45mm以下または20mm以下であれば、子供の背中とお尻が背もたれ部32に向かってかなり凹むため、衝撃を子供の背中とお尻で吸収することができる。
【0050】
(クッション構造体の動作について)
図4および図5を参照して、チャイルドシート1に子供を乗せた場合のクッション構造体4の動作について説明する。図4(A),図5(A)は衝撃を受ける前を示し、図4(B),図5(B)は衝撃を受けた後を示す。
【0051】
1歳未満の子供をチャイルドシート1に乗せる場合は、図4(A)に示すように、チャイルドシート1のコーナー部にクッション構造体4を取り付ける。クッション構造体4を取り付けることで、チャイルドシート1はベッド状態になり、具体的には支え面41の角
度θ1が水平面に対してたとえば15°となる。クッション構造体4の支え面41の上に子供を乗せて、腰ベルト33、肩ベルト34および股ベルト35をバックル36で連結させる。これにより、子供をチャイルドシート1の支え面41上に仰向けに寝かせることができる。
【0052】
この状態で、急ブレーキや事故などにより、車両の前方よりチャイルドシート1の乗っている子供に大きな衝撃が発生すると、図4(B)に示すように、クッション構造体4は潰れてイス状態に変位する。具体的には、子供に10kg以上の荷重が加わると、クッション構造体4の厚さT2がたとえば45mm以下になり、支え面41の角度θ3が水平面に対して、たとえば35°以上45°以下になる。具体的には、図5(B)に示すように、まず、前方から子供の背中およびお尻に10g以上の荷重がかかり、次いで衝撃吸収クッション体40が背もたれ部32および座部54側に潰れて、さらに、ハウジング50の座部当接面54および背もたれ当接面55が背もたれ部32および座部54側に潰れる。このように、子供に荷重がかかるとクッション構造体4は段階的に潰れていくため、子供のお尻または背中で衝撃を吸収することができる。
【0053】
従来、1歳未満の子供をチャイルドシートに乗せる場合は、チャイルドシートの背もたれ部を後傾させて(座部と背もたれ部の角度を大きくして)ベッド状態にし、肩ベルトなどを子供に装着している。このようなチャイルドシートでは、車両の事故や急ブレーキなどによる前方から衝撃を受けると、その反動で子供が前方に移動するため、その移動を抑制しようとして肩ベルトで衝撃を吸収することが一般的であった。この場合、肩ベルトが確実に連結されていないと、衝撃が加わった場合に子供が飛び出てしまうため、安全性に問題があり、肩ベルトが確実に連結されていたとしても、衝撃が子供の肩に集中するため、子供への負担が大きかった。
【0054】
これに対し、本実施の形態のチャイルドシート1は、衝撃が加わらない状態ではベッド状態(図4(A))であり、衝撃が加わるとクッション構造体4が圧縮変形してイス状態(図4(B))に変位する。これにより、子供への衝撃が背中全体で受け止められ、衝撃が子供の背中とお尻に分散されて、その衝撃が緩和されるとともに、その衝撃をクッション構造体4で吸収することができる。
【0055】
また、クッション構造体4は、チャイルドシート1のコーナー部に着脱自在に取り付けることができるため、1歳未満の子供を乗せる場合には、クッション構造体4をチャイルドシート1に取り付けることで、ベッド状態にすることができ、3ヶ月頃~24ヶ月頃の子供を乗せる場合には、クッション構造体4をチャイルドシート1から取り外して、イス状態にすることができる。そのため、座部31と背もたれ部32の角度が固定されているチャイルドシートであっても、クッション構造体4を取り付けるか取り付けないかで座面の形状および角度を変更することができるため、簡易な構造で、子供の成長に合わせることができる。
【0056】
さらに、衝撃吸収クッション体40は、第1,2クッション体40A,40Bの複数種以上のクッションを用いているため、そのクッションの形状または硬度を変更して組み合わせることで、容易に所望の硬さに設定することができる。
【0057】
なお、本実施の形態のクッション構造体4は、衝撃吸収クッション体40とハウジング50とを備えたが、少なくとも衝撃吸収クッション体40だけを備えていればよい。この場合、衝撃吸収クッション体40は、座部31および背もたれ部32に当接するため、第1底面43が背もたれ当接面となり、第2底面44が座部当接面となる。
【0058】
また、本実施の形態では、第1,2クッション体40A,40Bの形状が同一であり、
硬度が異なっていたが、たとえば、硬度が同一で、形状が異なっていてもよい。たとえば第1,2クッション体40A,40Bの厚みが異なっていたり、第1,2クッション体40A,40Bの底面に凹部または凸部が設けられたりしてもよい。また、第1,2クッション体40A,40Bの形状および硬度がいずれも異なっていてもよい。
【0059】
さらに、本実施の形態の第1,2クッション体40A,40Bは、前後方向に対して線状に設けられ、左右方向に積層されていたが、たとえば上下方向、斜め方向などに積層されていてもよい。さらに、第1,2クッション体40A,40Bは、たとえば第1クッション体が支え面に対して直行する方向に延びる貫通孔が分散して設けられるものであり、第2クッション体がその貫通孔に挿入されものであってもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、第1,2クッション体40A,40Bの2種類のクッションが設けられていたが、複数設けられていてもよい。
【0061】
さらに、上記実施の形態では、クッション構造体4を備えたチャイルドシート1について説明したが、クッション構造体4だけを単体で提供してもよい。この場合、既成のチャイルドシートに、本実施の形態のクッション構造体4を後付けで取り付けることが可能である。この場合、クッション構造体4は、チャイルドシートだけではなく、たとえば乳母車、ベビーラック、育児椅子などの子供用育児器具に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0062】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 チャイルドシート、2 ベース本体、3 座席本体、4 クッション構造体、31
座部、32 背もたれ部、33 腰ベルト、34 肩ベルト、35 股ベルト、40 衝撃吸収クッション体、40A 第1クッション体、40B 第2クッション体、41 支え面、50 ハウジング、54 座部当接面、55 背もたれ当接面、57 腰ベルトガイド溝、58 股ベルトガイド溝。
図1
図2
図3
図4
図5