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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040261
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】水田作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A01C11/02 331C
A01C11/02 322D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016117
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2020119139の分割
【原出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】児島 祥之
(57)【要約】
【課題】四輪駆動型の水田作業機において、旋回時に、旋回中心側の後輪により田面を荒らしてしまう状態を少なくする。
【解決手段】右の後輪2に動力を伝動及び遮断可能な右のサイドクラッチ51と、左の後輪2に動力を伝動及び遮断可能な左のサイドクラッチ52が備えられる。前輪1が右の設定角度R1を越えて右に操向操作されると、左のサイドクラッチ52が伝動状態に操作されながら、右のサイドクラッチ51が伝動状態と遮断状態とに交互に繰り返して操作される。前輪1が左の設定角度L1を越えて左に操向操作されると、右のサイドクラッチ51が伝動状態に操作されながら、左のサイドクラッチ52が伝動状態と遮断状態とに交互に繰り返して操作される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向操作可能で回転駆動される右及び左の前輪と、
右及び左の後輪と、前記右の後輪に動力を伝動及び遮断可能な右のサイドクラッチと、前記左の後輪に動力を伝動及び遮断可能な左のサイドクラッチと、
前記前輪の向きを検出する操向角度検出部と、
前記操向角度検出部の検出に基づいて、前記右及び左のサイドクラッチを伝動状態及び遮断状態に操作可能なサイドクラッチ操作部と、が備えられ、
前記サイドクラッチ操作部は、
前記前輪が直進位置から右及び左の設定角度の範囲内に位置すると、前記右及び左のサイドクラッチを伝動状態に操作し、
前記サイドクラッチ操作部は、駆動部と、前記駆動部の動作を前記右及び左のサイドクラッチに伝達して、前記右及び左のサイドクラッチを伝動状態及び遮断状態に操作する連係機構と、を有し、
前記駆動部は、アクチュエータと、前記アクチュエータにより往復駆動される往復動部材とを有して、前記アクチュエータにより、前記往復動部材を往復駆動する水田作業機。
【請求項2】
前後方向に沿って配置された左右の機体フレームが備えられ、
前記アクチュエータは、平面視で前記右の機体フレームと前記左の機体フレームとの間に配置されている請求項1に記載の水田作業機。
【請求項3】
前記往復動部材は、左右方向と直交する面を有する板状部材からなり、前記アクチュエータからの駆動により左右方向に沿った軸芯周りに揺動する請求項2に記載の水田作業機。
【請求項4】
前記連係機構は、側面視で前記前輪の車軸と前記後輪の車軸との間に配置された中継部材と、前記駆動部と前記中継部材とに亘って接続された第1連係部材と、前記中継部材と前記右及び左のサイドクラッチとに亘って接続された第2連係部材と、を有し、
前記中継部材と前記第1連係部材と前記第2連係部材とは、平面視で前記右の機体フレームと前記左の機体フレームとの間に配置されている請求項2又は3に記載の水田作業機。
【請求項5】
前記アクチュエータの駆動力を前記往復動部材に伝えるギヤ機構が備えられ、
前記ギヤ機構と前記往復動部材とは、前記アクチュエータの下方に配置されている請求項2又は3に記載の水田作業機。
【請求項6】
前記駆動部は、前記アクチュエータにより、前記往復動部材を中立位置と一方側操作位置とに亘って往復駆動し、前記アクチュエータにより、前記往復動部材を前記中立位置と他方側操作位置とに亘って往復駆動し、
前記往復動部材と前記右のサイドクラッチとに亘って接続された右の前記連係機構と、前記往復動部材と前記左のサイドクラッチとに亘って接続された左の前記連係機構と、が設けられ、
前記右の連係機構は、前記往復動部材が前記中立位置に操作されると、前記右のサイドクラッチを伝動状態に操作し、前記往復動部材が前記一方側操作位置に操作されると、前記右のサイドクラッチを遮断状態に操作し、
前記左の連係機構は、前記往復動部材が前記中立位置に操作されると、前記左のサイドクラッチを伝動状態に操作し、前記往復動部材が前記他方側操作位置に操作されると、前記左のサイドクラッチを遮断状態に操作する請求項1に記載の水田作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等の四輪駆動型の水田作業機の走行系の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である四輪駆動型の乗用型田植機では、特許文献1に開示されているように、右及び左の後輪に対してデフ機構が設けられておらず、右の後輪に動力を伝動及び遮断可能な右のサイドクラッチと、左の後輪に動力を伝動及び遮断可能な左のサイドクラッチとが設けられたものがある。
【0003】
特許文献1では、前輪1が直進位置付近に操向操作された状態では、右及び左のサイドクラッチが伝動状態に操作されて、右及び左の前輪、右及び左の後輪の4輪が回転駆動される状態となる。
【0004】
例えば、前輪が右に大きく操向操作されて右旋回が行われる場合、右のサイドクラッチが遮断状態に操作され、右及び左の前輪、左の後輪の3輪が回転駆動されて、右旋回が行われる。
この場合、右のサイドクラッチが遮断状態に操作されることにより、右の後輪が自由回転状態となり、右旋回に伴って少しずつ回転しながら右に向きを変えていく。このように旋回中心側の後輪を自由回転状態とすることにより、旋回中心側の後輪により田面が荒らされる状態を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-161318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば深い水田や、水田の泥が粘土質を多く含む場合、機体の重量が重い大型の水田作業機の場合等では、後輪に掛かる抵抗は大きなものとなる。
後輪に大きな抵抗が掛かる状態において、旋回が行われ、旋回中心側のサイドクラッチが遮断状態に操作されても、後輪に掛かる大きな抵抗により、旋回中心側の後輪が少しずつ回転するという状態にならず、旋回中心側の後輪がその位置に停止したままで旋回方向に向きを変えるという状態が生じることがある。
【0007】
前述のように、旋回中心側の後輪がその位置に停止したままで旋回方向に向きを変えるという状態が生じると、旋回中心側の後輪により田面を荒らしてしまう可能性があり、改善の余地がある。
【0008】
本発明は、四輪駆動型の水田作業機において、旋回時に、旋回中心側の後輪により田面を荒らしてしまう状態を少なくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水田作業機は、操向操作可能で回転駆動される右及び左の前輪と、右及び左の後輪と、前記右の後輪に動力を伝動及び遮断可能な右のサイドクラッチと、前記左の後輪に動力を伝動及び遮断可能な左のサイドクラッチと、前記前輪の向きを検出する操向角度検出部と、前記操向角度検出部の検出に基づいて、前記右及び左のサイドクラッチを伝動状態及び遮断状態に操作可能なサイドクラッチ操作部と、が備えられ、前記サイドクラッチ操作部は、前記前輪が直進位置から右及び左の設定角度の範囲内に位置すると、前記右及び左のサイドクラッチを伝動状態に操作し、前記サイドクラッチ操作部は、駆動部と、前記駆動部の動作を前記右及び左のサイドクラッチに伝達して、前記右及び左のサイドクラッチを伝動状態及び遮断状態に操作する連係機構と、を有し、前記駆動部は、アクチュエータと、前記アクチュエータにより往復駆動される往復動部材とを有して、前記アクチュエータにより、前記往復動部材を往復駆動する。
本発明において、前後方向に沿って配置された左右の機体フレームが備えられ、前記アクチュエータは、平面視で前記右の機体フレームと前記左の機体フレームとの間に配置されていると好適である。
また、本発明において、前記往復動部材は、左右方向と直交する面を有する板状部材からなり、前記アクチュエータからの駆動により左右方向に沿った軸芯周りに揺動すると好適である。
また、本発明において、前記連係機構は、側面視で前記前輪の車軸と前記後輪の車軸との間に配置された中継部材と、前記駆動部と前記中継部材とに亘って接続された第1連係部材と、前記中継部材と前記右及び左のサイドクラッチとに亘って接続された第2連係部材と、を有し、前記中継部材と前記第1連係部材と前記第2連係部材とは、平面視で前記右の機体フレームと前記左の機体フレームとの間に配置されていると好適である。
また、本発明において、前記アクチュエータの駆動力を前記往復動部材に伝えるギヤ機構が備えられ、前記ギヤ機構と前記往復動部材とは、前記アクチュエータの下方に配置されていると好適である。
また、本発明において、前記駆動部は、前記アクチュエータにより、前記往復動部材を中立位置と一方側操作位置とに亘って往復駆動し、前記アクチュエータにより、前記往復動部材を前記中立位置と他方側操作位置とに亘って往復駆動し、前記往復動部材と前記右のサイドクラッチとに亘って接続された右の前記連係機構と、前記往復動部材と前記左のサイドクラッチとに亘って接続された左の前記連係機構と、が設けられ、前記右の連係機構は、前記往復動部材が前記中立位置に操作されると、前記右のサイドクラッチを伝動状態に操作し、前記往復動部材が前記一方側操作位置に操作されると、前記右のサイドクラッチを遮断状態に操作し、前記左の連係機構は、前記往復動部材が前記中立位置に操作されると、前記左のサイドクラッチを伝動状態に操作し、前記往復動部材が前記他方側操作位置に操作されると、前記左のサイドクラッチを遮断状態に操作すると好適である。
【0010】
本発明によると、前輪が直進位置から右及び左の設定角度の範囲内に操向操作されていると、右及び左のサイドクラッチが伝動状態に操作されて、右及び左の前輪、右及び左の後輪の4輪が回転駆動される状態となる。
【0011】
本発明によると、前輪が右(左)の設定角度を越えて右(左)に操向操作されると、右及び左の前輪、旋回外側の後輪が回転駆動された状態で、旋回中心側のサイドクラッチが伝動状態と遮断状態とに交互に繰り返して操作される。
これによって、旋回中心側のサイドクラッチが遮断状態に操作された際に、旋回中心側の後輪が停止したとしても、次に旋回中心側のサイドクラッチが伝動状態に操作された際に、旋回中心側の後輪は回転駆動される。
【0012】
本発明によると、後輪に大きな抵抗が掛かる状態であっても、旋回中心側の後輪が回転と停止とを繰り返すように構成することにより、旋回中心側の後輪がその位置に停止したままで旋回方向に向きを変えるという状態を抑え、旋回中心側の後輪が旋回に伴って少しずつ回転しながら向きを変える状態を得ることができて、旋回中心側の後輪により田面が荒らされる状態を少なくすることができる。
【0013】
本発明とは異なる構成として、摩擦多板型式の右及び左のサイドクラッチにおいて、旋回中心側のサイドクラッチを半伝動状態に操作し、旋回中心側のサイドクラッチを滑らせながら、旋回中心側の後輪に少しずつ動力を伝達するという構成が考えられる。
この構成では、後輪に特に大きな抵抗が掛かる場合、旋回中心側のサイドクラッチが完全に滑ってしまい、旋回中心側の後輪が回転駆動されない状態が生じる。旋回中心側のサイドクラッチを滑らせる状態が長く維持されると、サイドクラッチの発熱及び摩耗が生じることになり、サイドクラッチの耐久性の低下を招くことがある。
【0014】
本発明によると、旋回中心側のサイドクラッチが、伝動状態と遮断状態とに交互に繰り返して操作され、旋回中心側のサイドクラッチの半伝動状態は生じ難いので、前述のような不具合を招くことは少ない。
【0015】
本発明において、前記サイドクラッチ操作部は、駆動部と、前記駆動部の動作を前記右及び左のサイドクラッチに伝達して、前記右及び左のサイドクラッチを伝動状態及び遮断状態に操作する連係機構とを有していると好適である。
【0016】
本発明によると、サイドクラッチ操作部において、駆動部を制御することにより、旋回中心側のサイドクラッチを伝動状態と遮断状態とに交互に繰り返して操作することが、容易に行える。
さらに、旋回中心側のサイドクラッチが伝動状態に操作されている伝動時間と、旋回中心側のサイドクラッチが遮断状態に操作されている遮断時間とにおいて、伝動時間と遮断時間とを同じ長さに設定したり、伝動時間を遮断時間に対して長くしたり短くしたりというような制御も、駆動部の制御により容易に行える。
【0017】
本発明によると、サイドクラッチ操作部において、駆動部の動作が連係機構を介して右及び左のサイドクラッチに伝達されるように構成されるので、駆動部を田面から上方に離れた比較的高い位置に配置し易くなるのであり、駆動部への泥や水の付着を抑えることができて、駆動部の耐久性の向上の面で有利である。
【0018】
本発明において、前記右及び左の後輪を支持し、前記右及び左のサイドクラッチを収容する後車軸ケースが備えられ、前記連係機構は、側面視で前記前輪の車軸と前記後輪の車軸との間に配置された中継部材と、前記駆動部と前記中継部材とに亘って接続された第1連係部材と、前記中継部材と前記右及び左のサイドクラッチとに亘って接続された第2連係部材とを有していると好適である。
【0019】
水田作業機では、右及び左の後輪を支持した後車軸ケースが設けられることがあり、後車軸ケースが、ローリング可能に機体フレームに支持されたり、サスペンション機構を介して機体フレームに支持されることがある。
【0020】
本発明によると、右及び左のサイドクラッチが後車軸ケースに収容された場合、サイドクラッチ操作部の連係機構において、連係機構の中継部材が後車軸ケースの前方に配置され、連係機構の第2連係部材が、中継部材から後方に延出されて、後車軸ケースの右及び左のサイドクラッチに接続される。
これにより、後車軸ケースがローリング作動したり、サスペンション機構により上下動したりしても、連係機構の第2連係部材が中継部材を支点として揺動することにより、後車軸ケースのローリング作動や上下動が無理なく吸収される。
【0021】
本発明によると、連係機構の第1連連係部材が、駆動部と連係機構の中継部材とに亘って接続されることにより、連係機構の第1連係部材により、駆動部を田面から上方に離れた比較的高い位置に配置することが容易に行える。
【0022】
本発明において、側面視で機体フレームにおける前記前輪の車軸と前記後輪の車軸との間の部分に、左右方向に沿った軸芯周りに上下揺動可能に支持され、前記軸芯から後方に延出された右及び左のサスペンションリンクが備えられ、前記後車軸ケースが、前記サスペンションリンクの後部に支持され、且つ、前記機体フレームにサスペンションバネを介して支持され、前記中継部材が、平面視で、前記右及び左のサスペンションリンクの間に配置されていると好適である。
【0023】
水田作業機では、後車軸ケースがサスペンション機構を介して機体フレームに支持されるように構成される場合に、機体フレームにおける前輪の車軸と後輪の車軸との間の部分に、右及び左のサスペンションリンクが、上下揺動可能に支持されて後方に延出され、後車軸ケースが、サスペンションリンクの後部に支持され、機体フレームにサスペンションバネを介して支持されるように構成されることがある(例えば、5リンク型式や3リンク型式等)。
【0024】
本発明によると、前述の状態において、連係機構の中継部材が、平面視で右及び左のサスペンションリンクの間に配置されるので、右及び左のサスペンションリンクの間の空間を有効に利用して、連係機構の中継部材をコンパクトに配置することができる。
【0025】
本発明において、前記第2連係部材が、側面視で、前記右及び左のサスペンションリンクに沿って配置されていると好適である。
【0026】
本発明によると、前述のように、連係機構の中継部材が平面視で右及び左のサスペンションリンクの間に配置された状態において、連係機構の第2連係部材が、側面視で右及び左のサスペンションリンクに沿って配置されることにより、連係機構の第2連係部材をコンパクトに配置することができる。
【0027】
本発明において、前記駆動部が、前記中継部材よりも後側の位置で、且つ、前記後車軸ケースよりも高い位置に配置されていると好適である。
【0028】
水田作業機では、運転座席が後車軸ケースの上方に配置され、運転者が立ったり運転座席に着座しながら足を置くフロアが、運転座席の前方に設けられることがあり、後車軸ケースと運転座席との間に、空間が生じることがある。
【0029】
本発明によると、後車軸ケースの上方に空間が生じた場合、この空間に駆動部を配置することができるので、後車軸ケースの上方に生じた空間を有効に利用して、駆動部をコンパクトに配置することができる。
【0030】
本発明において、前記駆動部は、アクチュエータと、前記アクチュエータにより往復駆動される往復動部材とを有して、前記アクチュエータにより、前記往復動部材を中立位置と一方側操作位置とに亘って往復駆動し、前記アクチュエータにより、前記往復動部材を前記中立位置と他方側操作位置とに亘って往復駆動し、前記往復動部材と前記右のサイドクラッチとに亘って接続された右の前記連係機構と、前記往復動部材と前記左のサイドクラッチとに亘って接続された左の前記連係機構とが設けられ、前記右の連係機構は、前記往復動部材が前記中立位置に操作されると、前記右のサイドクラッチを伝動状態に操作し、前記往復動部材が前記一方側操作位置に操作されると、前記右のサイドクラッチを遮断状態に操作し、且つ、前記往復動部材が前記他方側操作位置に操作されても、前記往復動部材の前記他方側操作位置への動作が前記右のサイドクラッチに伝達されず、前記右のサイドクラッチが伝動状態に維持されるようにする右の融通部を有しており、前記左の連係機構は、前記往復動部材が前記中立位置に操作されると、前記左のサイドクラッチを伝動状態に操作し、前記往復動部材が前記他方側操作位置に操作されると、前記左のサイドクラッチを遮断状態に操作し、且つ、前記往復動部材が前記一方側操作位置に操作されても、前記往復動部材の前記一方側操作位置への動作が前記左のサイドクラッチに伝達されず、前記左のサイドクラッチが伝動状態に維持されるようにする左の融通部を有していると好適である。
【0031】
本発明によると、駆動部において、アクチュエータにより、往復動部材が中立位置に操作されていると、右及び左のサイドクラッチが伝動状態に操作される。
駆動部において、アクチュエータにより、往復動部材が中立位置と一方側操作位置とに亘って往復駆動されると、往復動部材の動作が、右の連係機構を介して右のサイドクラッチに伝達されて、右のサイドクラッチが伝動状態と遮断状態とに操作される。この場合、往復動部材の一方側操作位置への動作は、左の連係機構の融通部により、左のサイドクラッチに伝達されることはなく、左のサイドクラッチは伝動状態に維持される。
【0032】
駆動部において、アクチュエータにより、往復動部材が中立位置と他方側操作位置とに亘って往復駆動されると、往復動部材の動作が、左の連係機構を介して左のサイドクラッチに伝達されて、左のサイドクラッチが伝動状態と遮断状態とに操作される。この場合、往復動部材の他方側操作位置への動作は、右の連係機構の融通部により、右のサイドクラッチに伝達されることはなく、右のサイドクラッチは伝動状態に維持される。
【0033】
本発明によると、アクチュエータにより、往復動部材を中立位置と一方側操作位置とに亘って往復駆動するという簡素な操作、及び、往復動部材を中立位置と他方側操作位置とに亘って往復駆動するという簡素な操作により、右のサイドクラッチが伝動状態と遮断状態とに操作される状態、及び、左のサイドクラッチが伝動状態と遮断状態とに操作される状態を得ることができるのであり、サイドクラッチ操作部の簡素化の面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】乗用型田植機の左側面図である。
図2】乗用型田植機の平面図である。
図3】機体フレームの付近の左側面図である。
図4】機体フレームの付近の平面図である。
図5】サイドクラッチ操作部の分解斜視図である。
図6】前輪及び後輪への伝動系、サイドクラッチ操作部を示す概略平面図である。
図7】サイドクラッチ操作部の作動状態を示す概略平面図である。
図8】苗植付装置が下降操作された状態でのリンク機構の付近の左側面図である。
図9】リンク機構の付近の分解斜視図である。
図10】苗植付装置が上昇操作された状態でのリンク機構の付近の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1図10に、水田作業機の一例である10条植え型式の乗用型田植機が示されている。図1図10において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0036】
(乗用型田植機の全体構成)
図1及び図2に示すように、乗用型田植機は、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2を備えた機体フレーム30の後部に、リンク機構3及びリンク機構3を昇降操作する油圧シリンダ4が備えられ、リンク機構3の後部に苗植付装置5が支持されており、苗植付装置5が、機体フレーム30の後部に昇降可能に支持されている。乗用型田植機では、苗植付装置5に加えて、整地装置11、施肥装置12及び薬剤散布装置28が装備されている。
【0037】
(苗植付装置の構成)
図1及び図2に示すように、苗植付装置5に、左右方向に所定間隔を置いて配置された5個の植付伝動ケース6、植付伝動ケース6の右部及び左部に回転可能に支持された回転ケース7、回転ケース7の両端に支持された植付アーム8、5個のフロート9、苗のせ台10等が設けられている。
【0038】
苗植付装置5において、苗のせ台10が横送り駆動されながら、回転ケース7が回転駆動されるのであり、植付アーム8が苗のせ台10の下部から苗を取り出して田面に植え付ける。
【0039】
(整地装置の構成)
図1及び図8に示すように、苗植付装置5の前部の下部に、田面を整地する整地装置11が支持されており、整地装置11に、左右方向に沿った軸芯P1周りに回転可能に支持された駆動軸11aと、駆動軸11aに取り付けられた多数の整地体11bとが設けられている。整地装置11の駆動軸11aが図8の反時計方向に回転駆動されることにより、整地装置11の整地体11bにより田面の整地が行われる。
【0040】
(施肥装置及び薬剤散布装置の構成)
図1及び図2に示すように、機体フレーム30の後部及び苗植付装置5に亘って、施肥装置12が支持されており、施肥装置12に、ホッパー13、繰り出し部14、ブロア15、作溝器16及びホース17等が設けられている。
【0041】
施肥装置12において、機体フレーム30の後部の上部に、肥料を貯留するホッパー13及び繰り出し部14が設けられており、繰り出し部14の左の横外側にブロア15が設けられている。フロート9に作溝器16が取り付けられており、繰り出し部14と作溝器16とに亘ってホース17が接続されている。
【0042】
施肥装置12において、ホッパー13の肥料が繰り出し部14により繰り出されて、ブロア15の搬送風によりホース17を通って作溝器16に供給されるのであり、作溝器16により田面に溝が形成されながら、作溝器16から田面の溝に肥料が供給される。
【0043】
中央の植付伝動ケース6に連結された支持フレーム29に、薬剤散布装置28が支持されている。薬剤散布装置28から、除草剤等の薬剤が苗植付装置5の後方の田面に散布される。
【0044】
(前輪及び後輪への伝動系)
図1,3,4に示すように、角パイプ状の右及び左の機体フレーム30が、前後方向に沿って配置されており、ミッションケース18が、機体フレーム30の前部に連結されている。ミッションケース18の前部に支持フレーム19が連結されており、支持フレーム19にエンジン20が支持されている。
【0045】
図6に示すように、ミッションケース18の右部及び左部に、前輪支持ケース21が連結されており、右及び左の前輪1が、前輪支持ケース21に操向可能に支持されている。機体フレーム30の後部に、後車軸ケース22が支持されており、右及び左の後輪2が後車軸ケース22に支持されている。
【0046】
ミッションケース18の横側部に、静油圧型式の無段変速装置23が連結されており、エンジン20の動力が伝動ベルト24を介して、無段変速装置23に伝達されている。無段変速装置23の動力は、ミッションケース18の内部の副変速装置(図示せず)に伝達され、前輪デフ装置(図示せず)及び前輪支持ケース21の内部の伝動軸(図示せず)を介して、右及び左の前輪1に伝達される。
【0047】
図3,4,6に示すように、ミッションケース18の後部に、出力軸25が後向きに支持されている。副変速装置から分岐した動力が、出力軸25から自在継手26及び伝動軸27を介して、後車軸ケース22の入力軸31に伝達されており、後述の(後車軸ケースの伝動系)に記載のように、右及び左の後輪2に伝達される。
【0048】
(前輪の操向操作の構成)
図1及び図2に示すように、操縦ハンドル32が機体フレーム30の前部に設けられ、変速レバー37が操縦ハンドル32の左横部に設けられており、変速レバー37により無段変速装置23が、中立停止位置、前進側及び後進側に無段階に操作される。
【0049】
縦壁状の右及び左の支持部材38が、右及び左の機体フレーム30に後部に設けられており、運転座席33と施肥装置12のホッパー13及び繰り出し部14(前述の(施肥装置及び薬剤散布装置の構成)を参照)とが、支持部材38の上部に支持されている。運転者が立ったり運転座席33に着座しながら足を置くフロア34が、操縦ハンドル32と運転座席33との間の低い位置に設けられている。
【0050】
図6に示すように、操縦ハンドル32により操作される操向部材35が、上下方向に沿った軸芯P2周りに揺動可能に、ミッションケース18の下部に支持されており、操向部材35と右及び左の前輪1とに亘ってタイロッド36が接続されている。操縦ハンドル32が操作されることにより、操向部材35が直進位置Nから右の操向限度R2及び左の操向限度L2に亘って操向操作されるのであり、操縦ハンドル32により前輪1の操向操作が行われる。
【0051】
(後車軸ケースの支持構成)
図3及び図4に示すように、右及び左の上のサスペンションリンク41、右及び左の下のサスペンションリンク42、ラテラルリンク43が設けられている。
【0052】
側面視で、右及び左の機体フレーム30において、前輪1の車軸1a(図6参照)と、後輪2の車軸2a(図6参照)との間の部分に、右及び左のブラケット39が連結されている。右及び左の上のサスペンションリンク41が、左右方向に沿った軸芯P3周りに上下揺動可能にブラケット39に支持され、軸芯P3から後方に延出されている。
【0053】
側面視で、右及び左の機体フレーム30において、前輪1の車軸1a(図6参照)と、後輪2の車軸2a(図6参照)との間の部分に、ブラケット40が連結されており、ブラケット40はブラケット39よりも前側に配置されている。ブラケット40は、ミッションケース18にも連結されており、右及び左のフレーム65が、ブラケット40の右部及び左部と、右及び左の機体フレーム30の後部とに亘って連結されている。右及び左の下のサスペンションリンク42が、左右方向に沿った軸芯P4周りに上下揺動可能にブラケット40に支持され、軸芯P4から後方に延出されている。
【0054】
後車軸ケース22の前部の右部及び左部に、右及び左の支持ブラケット44が連結されている。右及び左の上のサスペンションリンク41の後部が、右及び左の支持ブラケット44の上部に、揺動可能に支持されている。右及び左の下のサスペンションリンク42の後部が、右及び左の支持ブラケット44の下部に、揺動可能に支持されている。
【0055】
ラテラルリンク43が後車軸ケース22の後方に配置されており、ラテラルリンク43が、左の機体フレーム30の後部と後車軸ケース22の後部の右部とに亘って、揺動可能に接続されている。
【0056】
後車軸ケース22の前部の右部及び左部に、右及び左の支持ブラケット45が連結されており、右及び左の機体フレーム30の後部に、バネ受け部46が連結されている。右及び左のサスペンションバネ47が、支持ブラケット45とバネ受け部46とに亘って取り付けられており、後車軸ケース22が機体フレーム30にサスペンションバネ47を介して支持されている。
【0057】
以上のように、右及び左の上のサスペンションリンク41、右及び左の下のサスペンションリンク42、ラテラルリンク43、右及び左のサスペンションバネ47により、5リンク型式のサスペンション機構が構成されている。
【0058】
(後車軸ケースの伝動系)
図6に示すように、後車軸ケース22の内部において、伝動軸48が左右方向に沿って支持されており、伝動軸48に連結されたベベルギヤ48aと、入力軸31に連結されたベベルギヤ31aとが咬合している。
【0059】
伝動軸48の右部及び左部に、右のサイドクラッチ51及び左のサイドクラッチ52が設けられている。右及び左のサイドクラッチ51,52は、摩擦多板型式に構成されており、内装されたバネ(図示せず)により、伝動状態に付勢されている。右のサイドクラッチ51と右の後輪2の車軸2aとに亘って、ギヤ型式の右の減速機構49が設けられ、左のサイドクラッチ52と左の後輪2の車軸2aとに亘って、ギヤ型式の左の減速機構49が設けられている。
【0060】
以上の構成により、入力軸31に伝達された動力が、伝動軸48、右のサイドクラッチ51及び右の減速機構49を介して、右の後輪2に伝達されるのであり、伝動軸48、左のサイドクラッチ52及び左の減速機構49を介して、左の後輪2に伝達される。
【0061】
(右及び左のサイドクラッチの操作系の概要)
図5,6,7に示すように、右及び左のサイドクラッチ51,52を伝動状態及び遮断状態に操作するサイドクラッチ操作部50が設けられている。サイドクラッチ操作部50は、駆動部54と、右の連係機構55と、左の連係機構56とを有している。
【0062】
右の連係機構55は、駆動部54の動作を右のサイドクラッチ51に伝達して、右のサイドクラッチ51を伝動状態及び遮断状態に操作するように、駆動部54と右のサイドクラッチ51とに亘って接続されている。
【0063】
左の連係機構56は、駆動部54の動作を左のサイドクラッチ52に伝達して、左のサイドクラッチ51を伝動状態及び遮断状態に操作するように、駆動部54と左のサイドクラッチ52とに亘って接続されている。
【0064】
(サイドクラッチ操作部における駆動部の構成)
図3及び図4に示すように、左の機体フレーム30の後部に、支持フレーム53が連結されており、駆動部54が支持フレーム53に支持されている。
【0065】
図3図7に示すように、支持部材57が、支持フレーム53に連結されている。扇型の操作ギヤ58(往復動部材に相当)が、左右方向に沿った軸芯P5周りに往復揺動可能に、支持部材57に支持されており、操作ギヤ58の操作角度を検出する角度センサー59が、支持部材57に取り付けられている。
【0066】
ピニオンギヤ63aを有するギヤ機構63が、支持部材57に取り付けられて、ギヤ機構63のピニオンギヤ63aが操作ギヤ58に咬合している。ギヤ機構63を駆動する電動モータ64(アクチュエータに相当)が、ギヤ機構63に取り付けられている。電動モータ64によりギヤ機構63を介して、操作ギヤ58が軸芯P5周りに往復駆動される。
【0067】
これにより、駆動部54が、後述の(サイドクラッチ操作部における右及び左の連係機構の構成)に記載の右及び左の中継部材60,70よりも後側の位置で、且つ、後車軸ケース22よりも高い位置に配置されている。駆動部54は、側面視で後車軸ケース22と運転座席33との間の空間に配置され、平面視で右及び左の支持部材38(図1参照)の間の空間に配置されている。
【0068】
(サイドクラッチ操作部における右及び左の連係機構の構成)
図5,6,7に示すように、右の連係機構55は、右の中継部材60と、右の第1連係部材61と、右の第2連係部材62とを有している。左の連係機構56は、左の中継部材70と、左の第1連係部材71と、左の第2連係部材72とを有している。
【0069】
図3,4,5に示すように、右及び左のフレーム65の前部に、右及び左のブラケット66が連結され、中継軸67が右及び左のブラケット66に亘って支持されている。右の中継部材60及び左の中継部材70が、左右方向に沿った軸芯P6周りに互いに独立に揺動可能に、中継軸67に支持されている。
【0070】
これにより、右及び左の中継部材60,70が、側面視で前輪1の車軸1a(図6参照)と後輪2の車軸2a(図6参照)との間に配置されており、平面視で、右及び左のサスペンションリンク41,42の間に配置され、右及び左の機体フレーム30の間に配置されている。
【0071】
右の中継部材60は、中継軸67に回転可能に取り付けられたボス部60aに、上向きのアーム60b及び下向きのアーム60cが連結されて構成されている。左の中継部材70は、中継軸67に回転可能に取り付けられたボス部70aに、上向きのアーム70b及び下向きのアーム70cが連結されて構成されている。
【0072】
右の第1連係部材61が、駆動部54の操作ギヤ58と右の中継部材60のアーム60bとに亘って接続されている。左の第1連係部材71が、駆動部54の操作ギヤ58と左の中継部材70のアーム70bとに亘って接続されている。
【0073】
図3,4,5,7に示すように、右及び左のサイドクラッチ51,52を伝動状態及び遮断状態に操作可能な右の操作部73及び左の操作部74が、上下方向に沿った軸芯P7周りに揺動可能に、後車軸ケース22に下向きに支持されている。
【0074】
右の第2連係部材62の前部が、右の中継部材60のアーム60cに接続されており、右の第2連係部材62の後部に接続部62aが連結され、長孔状の接続孔62b(右の融通部に相当)が、接続部62aに開口されている。右の操作部73にアーム73aが連結され、アーム73aに連結されたピン73bが、右の第2連係部材62の接続孔62bに挿入されており、右の第2連係部材62が右の操作部73を介して右のサイドクラッチ51に接続されている。
【0075】
左の第2連係部材72の前部が、左の中継部材70のアーム70cに接続されており、左の第2連係部材72の後部に接続部72aが連結され、長孔状の接続孔72b(左の融通部に相当)が、接続部72aに開口されている。左の操作部74にアーム74aが連結され、アーム74aに連結されたピン74bが、左の第2連係部材72の接続孔72bに挿入されており、左の第2連係部材72が左の操作部74を介して左のサイドクラッチ52に接続されている。
【0076】
これにより、図3及び図4に示すように、右及び左の第1連係部材61,71が、側面視で、右及び左の中継部材60,70から斜め後方の上方に延出するように配置されており、伝動軸27、右及び左の機体フレーム30、右及び左の上のサスペンションリンク41と交差するように配置されている。
【0077】
右及び左の第1連係部材61,71が、平面視で、右及び左の第2連係部材62,72の間に配置され、右及び左の上のサスペンションリンク41の間に配置され、右及び左の下のサスペンションリンク42の間に配置され、右及び左の機体フレーム30の間に配置されている。
【0078】
右及び左の第2連係部材62,72が、側面視で、右及び左の下のサスペンションリンク42に沿って配置されており、右及び左の下のサスペンションリンク42に対して下側に配置されている。右及び左の第2連係部材62,72が、平面視で、右及び左の下のサスペンションリンク42と交差するように配置され、右及び左の機体フレーム30と交差するように配置されている。
【0079】
(制御系の構成)
図6及び図7に示すように、操向角度センサー68(操向角度検出部に相当)が、フレーム65(図3及び図4参照)に支持されて、操向角度センサー68が、平面視及び側面視でミッションケース18と右及び左の中継部材60,70の間に配置されている。
【0080】
操向部材35と 操向角度センサー68とに亘って連係ロッド69が接続されており、 操向角度センサー68は、 操向部材35及び連係ロッド69を介して、前輪1の操向角度(向き)を検出することができる。制御装置80が、機体フレーム30に支持されており、操向角度センサー68の検出値及び角度センサー59の検出値が、制御装置80に入力されている。
【0081】
制御装置80は、操向角度センサー68の検出値及び角度センサー59の検出値に基づいて、後述の(直進状態でのサイドクラッチ操作部の作動状態)(右旋回状態でのサイドクラッチ操作部の作動状態)(左旋回状態でのサイドクラッチ操作部の作動状態)に記載のように、サイドクラッチ操作部50(駆動部54)の電動モータ64を作動操作するのであり、電動モータ64によって操作ギヤ58が、中立位置A1と、一方側操作位置A2と、他方側操作位置A3とに操作される。
【0082】
(直進状態でのサイドクラッチ操作部の作動状態)
図6及び図7に示すように、前輪1の操向角度(向き)において、直進位置Nと右の操向限度R2との間に、右の設定角度R1が設定されている。直進位置Nと左の操向限度L2との間に、左の設定角度L1が設定されており、右の設定角度R1と左の設定角度L1とは同じ値である。
【0083】
前輪1の操向角度(向き)が、直進位置Nから右の設定角度R1の範囲、直進位置Nから左の設定角度L1の範囲に位置していると、乗用型田植機は略直進状態である。この状態において、図7に示すように、電動モータ64により操作ギヤ58は中立位置A1に操作されている。
【0084】
操作ギヤ58が中立位置A1に操作されていると、右及び左の操作部73,74が伝動位置ONに操作されて、右及び左のサイドクラッチ51,52が伝動状態に操作されている。この状態において、右及び左の第2連係部材62,72の接続孔62b,72bの後端部に、右及び左の操作部73,74のピン73b,74bが位置している。
【0085】
(右旋回状態でのサイドクラッチ操作部の作動状態)
図6及び図7に示すように、前輪1が右の設定角度R1を越えて右に操向操作されると(前輪1の操向角度(向き)が右の設定角度R1と右の操向限度R2との範囲に位置すると)、乗用型田植機は右旋回状態となる。この状態において、電動モータ64により、操作ギヤ58が中立位置A1と一方側操作位置A2とに亘って往復駆動される。
【0086】
操作ギヤ58が中立位置A1から一方側操作位置A2に操作されると、右の第1連係部材61が操作ギヤ58に向けて引き操作され(方向B11参照)、右の中継部材60が図7の反時計方向に揺動して、右の第2連係部材62が右の中継部材60に向けて引き操作される(方向B11参照)。右の第2連係部材62の接続部62aを介して、右の操作部73が遮断位置OFFに操作されて、右のサイドクラッチ51が遮断状態に操作される。
【0087】
操作ギヤ58が一方側操作位置A2から中立位置A1に操作されると、右の第1連係部材61が右の中継部材60に向けて押し操作され(方向B12参照)、右の中継部材60が図7の時計方向に揺動して、右の第2連係部材62が右の操作部73に向けて押し操作される(方向B12参照)。右のサイドクラッチ51が伝動状態に付勢されていることにより(前述の(後車軸ケースの伝動系)を参照)、右の操作部73が伝動位置ONに操作され、右のサイドクラッチ51が伝動状態に操作される。
【0088】
操作ギヤ58が中立位置A1から一方側操作位置A2に操作されると、左の第1連係部材71が左の中継部材70に向けて押し操作され(方向B22参照)、左の中継部材70が図7の反時計方向に揺動して、左の第2連係部材72が左の操作部74に向けて押し操作される(方向B22参照)。
【0089】
操作ギヤ58が一方側操作位置A2から中立位置A1に操作されると、左の第1連係部材71が操作ギヤ58に向けて引き操作され(方向B21参照)、左の中継部材70が図7の時計方向に揺動して、左の第2連係部材72が左の中継部材70に向けて引き操作される(方向B21参照)。
【0090】
この場合、左の第2連係部材72の接続孔72bの融通作用により、操作ギヤ58の中立位置A1から一方側操作位置A2への動作は、左の操作部74(左のサイドクラッチ52)に伝達されず、左の第2連係部材72の接続部72aは、左の操作部74に対して、図7の実線に示す位置と点線に示す位置とを往復する。
【0091】
これにより、左の操作部74は遮断位置OFFに操作されないのであり、左のサイドクラッチ52が伝動状態に付勢されていることにより(前述の(後車軸ケースの伝動系)を参照)、左のサイドクラッチ52は伝動状態に維持され、左の操作部74は伝動位置ONに維持される。
【0092】
以上のように、電動モータ64により操作ギヤ58が中立位置A1と一方側操作位置A2とに亘って往復駆動されることにより、左のサイドクラッチ52が伝動状態に操作(維持)されながら、右のサイドクラッチ51が伝動状態と遮断状態とに交互に繰り返して操作される。
【0093】
(左旋回状態でのサイドクラッチ操作部の作動状態)
図6及び図7に示すように、前輪1が左の設定角度L1を越えて左に操向操作されると(前輪1の操向角度(向き)が左の設定角度L1と左の操向限度L2との範囲に位置すると)、乗用型田植機は左旋回状態となる。この状態において、電動モータ64により、操作ギヤ58が中立位置A1と他方側操作位置A3とに亘って往復駆動される。
【0094】
操作ギヤ58が中立位置A1から他方側操作位置A3に操作されると、左の第1連係部材71が操作ギヤ58に向けて引き操作され(方向B21参照)、左の中継部材70が図7の時計方向に揺動して、左の第2連係部材72が右の中継部材70に向けて引き操作される(方向B21参照)。左の第2連係部材72の接続部72aを介して、左の操作部74が遮断位置OFFに操作されて、左のサイドクラッチ52が遮断状態に操作される。
【0095】
操作ギヤ58が他方側操作位置A3から中立位置A1に操作されると、左の第1連係部材71が左の中継部材70に向けて押し操作され(方向B22参照)、左の中継部材70が図7の反時計方向に揺動して、左の第2連係部材72が左の操作部74に向けて押し操作される(方向B22参照)。左のサイドクラッチ52が伝動状態に付勢されていることにより(前述の(後車軸ケースの伝動系)を参照)、左の操作部74が伝動位置ONに操作され、左のサイドクラッチ52が伝動状態に操作される。
【0096】
操作ギヤ58が中立位置A1から他方側操作位置A3に操作されると、右の第1連係部材61が右の中継部材60に向けて押し操作され(方向B12参照)、右の中継部材60が図7の時計方向に揺動して、右の第2連係部材62が右の操作部73に向けて押し操作される(方向B12参照)。
【0097】
操作ギヤ58が他方側操作位置A3から中立位置A1に操作されると、右の第1連係部材61が操作ギヤ58に向けて引き操作され(方向B11参照)、右の中継部材60が図7の反時計方向に揺動して、右の第2連係部材62が右の中継部材60に向けて引き操作される(方向B11参照)。
【0098】
この場合、右の第2連係部材62の接続孔62bの融通作用により、操作ギヤ58の中立位置A1から他方側操作位置A3への動作は、右の操作部73(右のサイドクラッチ51)に伝達されず、右の第2連係部材62の接続部62aは、右の操作部73に対して、図7の実線に示す位置と点線に示す位置とを往復する。
【0099】
これにより、右の操作部73は遮断位置OFFに操作されないのであり、右のサイドクラッチ51が伝動状態に付勢されていることにより(前述の(後車軸ケースの伝動系)を参照)、右のサイドクラッチ51は伝動状態に維持され、右の操作部73は伝動位置ONに維持される。
【0100】
以上のように、電動モータ64により操作ギヤ58が中立位置A1と他方側操作位置A3とに亘って往復駆動されることにより、右のサイドクラッチ51が伝動状態に操作(維持)されながら、左のサイドクラッチ52が伝動状態と遮断状態とに交互に繰り返して操作される。
【0101】
(整地装置への伝動系)
図6に示すように、後車軸ケース22の内部において、出力軸75が後向きに支持されて、出力軸75に連結されたベベルギヤ75aが伝動軸48のベベルギヤ48aと咬合しており、出力軸75に整地クラッチ76が設けられている。
【0102】
図3,4,6に示すように、出力ケース77が後車軸ケース22の後部に後向きに連結され、出力ケース78が左右方向に沿った軸芯P8周りに上下揺動可能に、出力ケース77に支持されている。
【0103】
整地クラッチ76の動力が、出力ケース77の内部のベベルギヤ機構(図示せず)、軸芯P8と同芯状に出力ケース77,78に亘って配置された伝動軸(図示せず)、出力ケース78の内部のベベルギヤ機構(図示せず)を介して、出力ケース78の後向きの出力軸79に伝達される。
【0104】
図8及び図9に示すように、整地装置11において、整地装置11の駆動軸11aの左右中央部に、駆動ケース81がベアリング(図示せず)を介して取り付けられている。入力軸82が前向きに駆動ケース81に支持されており、駆動ケース81の内部において、入力軸82に連結されたベベルギヤ(図示せず)と、整地装置11の駆動軸11aに連結されたベベルギヤ(図示せず)とが咬合している。出力軸79と入力軸82とに亘って、伸縮可能な伝動軸83が、自在接手84を介して接続されている。
【0105】
以上の構成により、伝動軸48の動力が、出力軸75、整地クラッチ76、出力軸79及び伝動軸83を介して入力軸82に伝達されて、整地装置11の駆動軸11aが図8の反時計方向に回転駆動される。
【0106】
(整地クラッチの操作系)
図4,8,9に示すように、リンク機構3は、右及び左の上リンク3a、右及び左の下リンク3b、上リンク3a及び下リンク3bの後部に接続された縦リンク3cを有しており、苗植付装置5が縦リンク3cに支持されている。油圧シリンダ4の後端部に、平面視でチャンネル状の接続部材85が連結されており、リンク機構3の下リンク3bと縦リンク3cとの接続部分に、接続部材85が接続されている。
【0107】
図4及び図8に示すように、整地クラッチ76を伝動状態及び遮断状態に操作する操作アーム86が設けられ、リンク機構3の上リンク3aと操作アーム86とに亘って、連係ロッド87が接続されている。
【0108】
図8及び図9に示すように、出力ケース78に操作部材88が連結されており、リンク機構3の下リンク3bと操作部材88とに亘って、連係ロッド89が接続されている。駆動ケース81に操作部材90が連結され、接続部材85と操作部材90とに亘って、連係ロッド91が接続されている。
【0109】
図1及び図8に示す状態は、リンク機構3及び油圧シリンダ4により、苗植付装置5が下降操作された状態である。この状態において、連係ロッド87が下降操作されて、操作アーム86により整地クラッチ76が伝動状態に操作されている。
【0110】
苗植付装置5が下降操作された状態において、連係ロッド89が下降操作されて、出力ケース78及び出力軸79が斜め下向きとなる。連係ロッド91が上昇操作されて、駆動ケース81及び入力軸82が水平又は斜め上向きとなる。これにより、自在接手84での折れ曲がりが小さく抑えられており、出力軸79の動力が、伝動軸83及び自在接手84を介して無理なく入力軸82に伝達される。
【0111】
図10に示す状態は、リンク機構3及び油圧シリンダ4により、苗植付装置5が上昇操作された状態である。この状態において、連係ロッド87が上昇操作されて、操作アーム86により整地クラッチ76が遮断状態に操作されて、整地装置11が停止する。
【0112】
苗植付装置5が上昇操作された状態において、連係ロッド89が上昇操作されて、出力ケース78及び出力軸79が斜め上向きとなる。連係ロッド91が下降操作されて、駆動ケース81及び入力軸82が斜め下向きとなる。これにより、自在接手84での折れ曲がりが小さく抑えられている。
【0113】
(発明の実施の第1別形態)
5リンク型式のサスペンション機構に代えて、右及び左のサスペンションリンクとラテラルリンクとを有する3リンク型式のサスペンション機構を採用してもよい。
サスペンション機構を廃止し、後車軸ケース22が前後方向に沿った軸芯周りにローリング可能に機体フレーム30に支持されるように構成してもよく、後車軸ケース22が機体フレーム30に上下動不可且つローリング不可に連結されてもよい。
【0114】
(発明の実施の第2別形態)
右の融通部を、操作ギヤ58と右の第1連係部材61との接続部分や、右の第1連係部材61と右の中継部材60との接続部分、右の第2連係部材62と右の中継部材60との接続部分に設けてもよい。
【0115】
左の融通部を、操作ギヤ58と左の第1連係部材71との接続部分や、左の第1連係部材71と左の中継部材70との接続部分、左の第2連係部材72と左の中継部材70との接続部分に設けてもよい。
【0116】
(発明の実施の第3別形態)
サイドクラッチ操作部50において、後車軸ケース22に、右及び左の駆動部54を直接に取り付けてもよい。この構成によると、右の駆動部54と右のサイドクラッチ51とに亘って接続される右の連係機構55が、後車軸ケース22に取り付けられ、左の駆動部54と左のサイドクラッチ52とに亘って接続される左の連係機構56が、後車軸ケース22に取り付けられる。
この構成によると、右及び左のサイドクラッチ51、52が、互いに独立に伝動状態及び遮断状態に操作されるので、融通部は不要になる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、乗用型田植機ばかりではなく、種子を田面に供給する乗用型直播機や、薬剤を田面に供給する乗用型管理機にも適用できる。
【符号の説明】
【0118】
1 前輪
1a 車軸
2 後輪
2a 車軸
22 後車軸ケース
30 機体フレーム
41 サスペンションリンク
42 サスペンションリンク
47 サスペンションバネ
50 サイドクラッチ操作部
51 サイドクラッチ
52 サイドクラッチ
54 駆動部
55 連係機構
56 連係機構
60 中継部材
61 第1連係部材
62 第2連係部材
62b 融通部
64 電動モータ(アクチュエータ)
58 操作ギヤ(往復動部材)
68 操向角度センサー(操向角度検出部)
70 中継部材
71 第1連係部材
72 第2連係部材
72b 融通部
A1 中立位置
A2 一方側操作位置
A3 他方側操作位置
N 直進位置
R1 設定角度
L1 設定角度
P3 軸芯
P4 軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10