(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040278
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20240315BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240315BHJP
【FI】
A63B53/04 C
A63B102:32
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024016410
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2019182128の分割
【原出願日】2019-10-02
(31)【優先権主張番号】16/161,337
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502330377
【氏名又は名称】テイラー メイド ゴルフ カンパニー, インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】グリーンスミス,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マシュー・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ビン-リン
(57)【要約】
【課題】鋳造部品を有するゴルフクラブヘッド、およびこのようなゴルフクラブヘッドを製造するための関連方法を提供する。
【解決手段】鋳造カップは、ホーゼル、フェース部、ならびにクラウンの前方部分、ソールの前方部分、ヒールの前方部分、およびトウの前方部分を含む、ゴルフクラブヘッドの前方部分を含むことができる。後部リングを鋳造カップとは別に形成し、鋳造カップのヒール部およびトウ部に結合して金属製のクラブヘッド本体を形成し、クラブヘッド本体が中空の内部領域、クラウン開口部、およびソール開口部を画定するようにすることができる。鋳造カップおよび後部リングは、チタン合金で鋳造することができる。次いで、複合材のクラウンインサートおよびソールインサートは、クラウン開口部およびソール開口部に結合することができる。鋳造カップのフェース部は、望ましくは複雑な形状を有することができる。鋳造カップのフェース部の後面は、後部リングを取り付ける前に修正することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドを作製する方法であって、
チタン合金で作製され、前記ゴルフクラブヘッドのフェース部の全体、前記ゴルフクラブヘッドのクラウンの前方部分のみ、前記ゴルフクラブヘッドのソールの前方部分のみ、前記ゴルフクラブヘッドのトウの前方部分のみ、前記ゴルフクラブヘッドのヒールの前方部分のみ、及び、ホーゼルを含むカップを鋳造する段階であって、アルファケースの層が前記フェース部の後面に形成されるようにする段階と、
前記フェース部の後面を機械加工する段階であって、これにより前記フェース部の該後面からアルファケースの前記層の少なくとも一部分を除去する段階と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記カップを鋳造する前記段階とは別にリングを形成する段階と、
前記リングが前記ゴルフクラブヘッドの後部の最外周を画定するように、該リングを前記カップに取り付ける段階と、をさらに含み、
前記フェース部の前記後面を機械加工する前記段階が、前記リングを前記カップに取り付ける前記段階の前に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リングが、前記カップの前記チタン合金とは異なる金属材料から形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複合材料で作製されたクラウンインサートを、前記リング、及び、前記カップによって画定された前記ゴルフクラブヘッドの前記クラウンの前記前方部分に取り付ける段階と、
複合材料で作製されたソールインサートを、前記リング、及び、前記カップによって画定された前記ゴルフクラブヘッドの前記ソールの前記前方部分に取り付ける段階と、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
アルファケースの前記層の前記少なくとも一部分が、前記フェース部の前記後面を化学的にエッチングすることなく、前記フェース部の前記後面から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カップを鋳造する前記段階が、前記後面とは反対側の前記フェース部の前面にアルファケースの層を形成し、
当該方法が、前記フェース部の前記前面を機械加工して、前記フェース部の前記前面からアルファケースの前記層の少なくとも一部分を除去する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ゴルフクラブヘッドであって、
チタン合金で作製された単一の一体的本体を有し、当該ゴルフクラブヘッドのフェース部の全体、当該ゴルフクラブヘッドのクラウンの前方部分のみ、当該ゴルフクラブヘッドのソールの前方部分のみ、当該ゴルフクラブヘッドのトウの前方部分のみ、当該ゴルフクラブヘッドのヒールの前方部分のみ、及び、ホーゼルを具備する、カップであって、該カップによって画定された当該ゴルフクラブヘッドの前記フェース部の後面が、機械加工された表面である、カップと、
該カップに取り付けられ、当該ゴルフクラブヘッドの後部の最外周を画定する、リングと、
複合材料で作製され、前記リング、及び、前記カップによって画定された当該ゴルフクラブヘッドの前記クラウンの前記前方部分に取り付けられる、クラウンインサートと、を具備することを特徴とする、ゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記リングが、前記カップの前記チタン合金とは異なる金属材料から作製される、請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記カップは、前記カップによって画定された当該ゴルフクラブヘッドの前記クラウンの前記前方部分に形成されたレッジをさらに具備し、
前記クラウンインサートは、前記レッジが前記クラウンインサートの内側に配置されるように、前記レッジに受容される、請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
複合材料で作製され、前記リング、及び、前記カップによって画定された前記ゴルフクラブヘッドの前記ソールの前記前方部分に取り付けられる、ソールインサートをさらに具備する、請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月9日に出願された米国特許出願第16/059,801号の一部継続出願であり、2017年8月10日に出願された米国特許仮出願第62/543,778号の利益を主張し、これらは両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、鋳造部品を有するゴルフクラブヘッド、およびこのようなゴルフクラブヘッドを製造するための関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ゴルフの人気および競争力がますます高まっていることにより、ゴルフクラブを改善するために現在相当量の努力および資源が費やされている。最近の改善活動の大部分は、先端的なクラブヘッドの工学技術と協調した、新しくますます洗練された材料の使用の組み合わせに関係している。例えば、洗練されたシャフトおよび木製ではないクラブヘッドを有する最新の「ウッドタイプ」ゴルフクラブ(例として、「ドライバー」、「フェアウェイウッド」、「レスキュー」、および「ユーティリティまたはハイブリッドクラブ」)は、何年も前に使用されていた、「ウッド」ドライバー、低ロフトのロングアイアン、およびより大きい番号のフェアウェイウッドにはほとんど似ていない。これらの最新のウッドタイプのクラブは、一般に「メタルウッド」または単に「ウッド」と呼ばれている。
【0004】
強力で軽量の金属および他の材料のメタルウッドクラブヘッドを作る現在の能力により、クラブヘッドを中空にすることが可能になっている。また、高強度および高破壊靭性の材料を使用することで、クラブヘッドの壁を薄くすることが可能になり、重量の増加に起因するスイング速度のペナルティを伴わない以前のクラブヘッドと比較して、総重量が減少し、クラブヘッドのサイズの増加が可能になる。より大きなクラブヘッドは、より大きなフェースプレート面積を有する傾向があり、また、高いクラブヘッド慣性で作製することができ、それにより、クラブヘッドは、より小さなクラブヘッドよりも「許容度」が高くなる。最適な衝撃位置(「スイートスポット」としても知られる)のサイズなどの特性は、フェースプレートの形状、プロファイル、サイズ、および厚さ、ならびにクラブヘッドの重心(CG)の位置を含む多くの変数によって決定される。
【0005】
例示的なメタルウッドゴルフクラブは、典型的には、クラブヘッドが取り付けられる下端を有するシャフトを含む。これらのクラブヘッドのほとんどの最新型は、少なくとも部分的には、チタン合金などの軽量であるが強力な金属で作製される。クラブヘッドはフェースプレート(本明細書では「フェース」、「フェースインサート」、「打撃プレート」または「ストライクプレート」という用語と交換可能に使用される)が後で取り付けられる本体を含む場合もあれば、本体およびフェースプレイスが一体構造としてともに鋳造され、フェースプレートを後で本体に取り付ける必要がないようにする場合もある。フェースプレートは、ゴルフボールに実際に接触する前面またはストライクフェースを画定する。
【0006】
メタルウッドクラブヘッドの総質量をクラブヘッドの質量予算と見なすと、質量予算の少なくとも一部は、クラブヘッドに十分な強度および構造的支持を提供することに専念しなければならない。これを「構造的」質量と呼ぶ。予算内に残っている質量は「裁量的」または「性能」質量と呼ばれ、例えば、性能の問題に対処するためにメタルウッドクラブヘッド内に分散させることができる。したがって、強度および構造的支持を損なうことなく、メタルウッドクラブヘッドの構造的質量を減少させる能力は、裁量的質量を増加させ、それによりクラブ性能を改善する可能性を提供する。
【0007】
クラブヘッドの総質量を減少させる一つの機会は、フェースプレートの厚さを減らすことによりフェースプレートの質量を減少させることであるが、フェースがボールの初期衝撃を吸収するため、その物理的および機械的特性に非常に厳しい要件があることを考慮すると、これを行う機会はいくぶん限られている。クラブ製造業者は、軽量性および高強度を考慮して、フェースプレートの製造ならびにクラブヘッド全体の製造にチタンおよびチタン合金を使用している。通常、比較的複雑な3次元構造が考慮されたクラブヘッドの場合、その製造には鋳造プロセスが使用されている。このようなフェースプレートの多くは、ロストワックス法によって形成された予熱されたセラミックのインベストメント鋳型に適切な金属溶融物が鋳込みされるインベストメント鋳造法によって作製される。インベストメント鋳造は、フェースプレートを、クラブヘッド本体の残りの部分とともに鋳造された一体構造として、または通常溶接によってクラブヘッド本体の前部に取り付けられる別個に形成されたフェースプレートとして準備するためにも使用されている。広く使用されているが、このような反応性材料の複雑な形状の部品のインベストメント鋳造は、比較的高いコストおよび低い歩留まりによって特徴付けられる。鋳造歩留まりの低さは、表面もしくは表面関連のボイド型欠陥、ならびに/または特定の鋳型キャビティ領域、特に薄い鋳型キャビティ領域の不十分な充填、および関連する内部ボイド、収縮などの欠陥を含むいくつかの要因に起因する。
【0008】
フェースプレートのインベストメント鋳造の欠陥をさらに組み合わすために、クラブヘッド製造業者は、クラブのフェースに曲率を導入して、重心の位置以外でのショットによって生じる方向性の問題を補正するのを助けることも多い。したがって、平らなフェースプレートよりも、製造業者は、ヒールからトウへの凸状湾曲(「バルジ」と呼ばれる)、およびクラウンからソールへの凸状湾曲(「ロール」と呼ばれる)の両方を有するフェースを形成することを望む場合がある。さらに、製造業者は、フェースプレート全体にわたって可変フェース厚さプロファイルを導入することもできる。フェースプレートの厚さを変えることは、ゴルフクラブヘッドのスイートスポットと一般に呼ばれるクラブヘッドCOR区域のサイズを増大させることができ、これは、ゴルフボールをゴルフクラブヘッドで打つとき、一貫して高いゴルフボール速度およびショット許容度を与えるフェースプレートのより大きな面積を可能にする。また、フェースプレートの厚さを変えることは、クラブヘッドの別の領域に再配置するためのフェース領域の重量を減らすのに有利であり得る。
【0009】
これらのより複雑なフェースプレート構造のインベストメント鋳造の欠陥を補うために、製造業者は、フェースプレートを形成する代替方法に注目しており、この代替方法には、ロール状チタンシートからフェースプレートの形状をレーザで切削した後、鍛造して任意の所望のバルジおよびロールを付与し、その後、旋盤上で機械加工ステップを行って任意の所望のフェース厚さプロファイルを導入することが含まれる。これらのステップの欠点は、3つの別個の成形ステップが必要であり、可変厚さプロファイルを形成するための旋盤上の機械加工プロセスが無駄であるだけでなく、旋盤の円運動の結果としてプロファイルを円形領域に制限するという事実を含む。
【0010】
したがって、厚さの減少を可能にしてクラブヘッドにおいてより利用可能な裁量的重量をもたらすのに十分な物理的特性を有するクラブヘッドのフェースプレートを有することが非常に望ましいであろう。また、フェースプレートが、任意の形状の円形、楕円形、非対称、または他の形状を有する任意の可変厚さプロファイルに加えて、任意の所望のバルジおよびロール曲率を示すことができれば望ましいであろう。また、このようなフェースプレートの製造のための単純化されたプロセスを使用することができ、これにより、必要とされる厚さおよび物理的強度特性を有するフェースプレートが得られ、このプロセスはまた、最小の処理ステップを必要とし、かつプロセスにおいて生成されるあらゆる廃棄物を最小限に抑えながら、任意の所望のバルジおよびロールならびに可変厚さプロファイルを有するフェースプレートが得られる場合も望ましいであろう。また、クラブヘッド本体およびフェースが、後でともに取り付けなければならない2つの部品ではなく、単一の一体的本体と同じ材料から同時に鋳造することができる場合も望ましいであろう。また、鋳造フェースプレートが、フェースプレートに十分な耐久性を提供するために、アルファケースの厚さを除去または低減するために化学エッチングを必要としない場合も望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書に開示のいくつかのゴルフクラブヘッド本体は、9-1-1チタンで鋳造することができ、フェースプレートは、クラウン、ソール、スカート、およびホーゼルとともに本体の一体部分として鋳造される。9-1-1チタン材料により、フェースプレートおよび本体の他の部分は、鋳型からの酸素の取り込みが少なくなり、アルファケースの厚さを減少させることができ、その結果、延性および耐久性が増大する。これにより、フッ化水素酸または他の危険な化学エッチング剤を用いて鋳造した後にアルファケースの厚さを減少させる必要がなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
鋳造方法は、鋳造中に鋳型から9-1-1チタンへ移動する酸素の量をさらに減少させるために、鋳型を常温よりも低い温度に予熱すること、および/または鋳型の内面をコーティングすることを含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、ウッドタイプのゴルフクラブヘッド本体は、クラウン、ソール、スカート、フェースプレート、およびホーゼルを含み、本体は中空の内部領域を画定し、本体は略全体が9-1-1チタンで鋳造され、本体は単一の一体鋳物として鋳造され、フェースプレートはクラウン、ソール、スカート、およびホーゼルと一体に形成される。本体は、チタン合金に見られる合金化不純物として微量のフッ素原子を含む場合があるが、鋳造後にフッ化水素酸でフェースをエッチングしないため、本体に存在するフッ素の含有量は非常に低くなり得る。いくつかの実施形態では、フェースプレートは、1000ppm未満、500ppm未満、200ppm未満、および/または100ppm未満などのフッ素原子を実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、本体は、0.150mm以下、0.100mm以下、および/または0.070mm以下のアルファケース厚を有することができる。
【0014】
いくつかの例示的な方法は、鋳造用の鋳型を準備することと、次いで鋳型を用いて略全体が9-1-1チタンからなるゴルフクラブヘッド本体を鋳造することとを含み、鋳造体はクラウン、ソール、スカート、フェースプレート、およびホーゼルを含み、鋳造体は中空の内部領域を画定し、本体は単一の一体鋳物として鋳造され、フェースプレートは鋳造中にクラウン、ソール、スカート、およびホーゼルと一体に形成される。こうした方法の中には、鋳造後にフェースプレートをエッチングすることを含まないものもある。いくつかの方法では、鋳型の準備は、鋳造が行われるときに、鋳型が800℃以下、700℃以下、600℃以下、および/または500℃以下の温度になるように鋳型を予熱することを含む。
【0015】
本明細書では、ホーゼル、フェース部、クラウンの前方部分、およびソールの前方部分を含む、クラブヘッドの前方部分を形成する金属製の鋳造カップを含むゴルフクラブヘッドの実施形態も開示される。金属製の後部リングを鋳造カップとは別に形成し、鋳造カップのヒール部およびトウ部に結合してクラブヘッド本体を形成し、金属製のクラブヘッド本体が中空の内部領域、クラウン開口部、およびソール開口部を画定するようにすることができる。次に、複合クラウンインサートをクラウン開口部に結合することができる。複合材、金属、または他の材料で作製されたソールインサートをソール開口部に結合することができる。いくつかの実施形態では、ソール開口部またはソールインサートはない。鋳造カップおよび後部リングは、チタン合金で鋳造することができ、ともに溶接してクラブヘッド本体を形成することができる。いくつかの実施形態では、リングおよびカップは、2つの異なるチタン合金、またはチタン合金および鋼など、異なる金属材料からなる。鋳造カップは、望ましい性能特性を提供するために複雑な形状を有するフェース部を含むことができる。フェース部は、ねじれた前面を有することができ、かつ/またはフェースの後面は、フェース全体にわたって非対称の可変厚さプロファイルを提供する形状を有することができる。鋳造カップのフェース部の後面は、工具を用いてフェースの後面全体にアクセスするための空間を増やすために、後部リングを取り付ける前に機械加工および/または別の方法で修正することができる。
【0016】
ワックス溶接法を用いて、ワックスカップフレームおよび別個に形成されたワックスフェースからワックスカップを形成する方法も開示される。次いで、このようなワックスカップを使用して、ゴルフクラブヘッドの前部を形成する金属カップを鋳造するための鋳型を作製することができる。2つの部品のワックス溶接法は、製造、プロトタイピング、および試験の利点を提供することができる。
【0017】
新規の形状を有するチタン合金を含むような鋳造フェースプレートも開示される。
【0018】
開示された技術の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照して進める以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】
図1のゴルフクラブヘッドの底面斜視図である。
【
図4】ゴルフクラブヘッドの原点座標系を示す
図1のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図5】重心座標系を示す
図1のゴルフクラブヘッドの側面図である。
【
図7】可変の厚さを有する例示的なフェースプレートの背面図である。
【
図8】
図7の線8-8に沿って取られた
図7のフェースプレートの断面側面図である。
【
図9】
図7の線9-9に沿って取られた
図7のフェースプレートの断面側面図である。
【
図10】バルジおよびロール測定システムを示す本発明のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図11】ゴルフクラブヘッドのヒール方向側でゴルフボールを打つゴルフクラブヘッドの図である。
【
図12】メインゲート、アシスタントゲート、およびフローチャネルを示す、ウッドタイプクラブヘッドの例示的な初期パターンの上面図である。
【
図13】複数の鋳型キャビティを含む鋳造クラスタの概略図である。
【
図14】複数の鋳型キャビティを含む別の鋳造クラスタの概略図である。
【
図15】ゴルフクラブヘッドを鋳造するための方法を示すワークフロー図である。
【
図16】6つの異なる鋳造機について得られたチタン合金の鋳造データの表である。
【
図18】チタン合金についての注入材料(溶融金属)の質量に対するプロセス損失のプロットであって、注入材料の質量が様々な鋳造機についての鋳造炉サイズを示すプロットである。
【
図19】鋳造クラスタを構成するための方法の一実施形態のフローチャートである。
【
図20】本明細書に開示のさらに別の例示的なゴルフクラブヘッドの底面斜視図である。
【
図21】
図20のゴルフクラブヘッドの分解底面斜視図である。
【
図23】
図22の線23-23に沿って取られた本体の断面図である。
【
図25】
図24の線25-25に沿って取られた断面図である。
【
図30】
図29の線30-30に略沿って取られた左右のウェイトトラックの拡大詳細断面図である。
【
図31】
図29の線31-31に略沿って取られた左右のウェイトトラックの別の拡大詳細断面図である。
【
図32】前後のウェイトトラックを含む
図22の本体のソールの一部分の底面図である。
【
図33】
図32の線33-33に略沿って取られた前後のウェイトトラックの拡大詳細断面図である。
【
図34】
図32の線34-34に略沿って取られた前後のウェイトトラックの別の拡大詳細断面図である。
【
図35A】本体内に位置決めされたソール部を示す、クラウン部を取り外した
図20のゴルフクラブヘッドの上面図である。
【
図35C】クラウン部が所定の位置にある
図20のゴルフクラブヘッドの上面図である。
【
図35D】クラウン部およびソール部の両方を取り外した
図20のゴルフクラブヘッドの上面図である。
【
図37】別の例示的なゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図38】ヘッド-シャフト連結アセンブリを備えた、
図37のクラブヘッドの異なる斜視図である。
【
図39】
図37のクラブヘッドの本体がともに取り付けられた2つの部品から形成される様子を示す図である。
【
図41】クラウンインサートおよびソールインサートが
図40の本体とどのように組み立てられるかを示す図である。
【
図42】本体のカップフェース部の前面を示す図である。
【
図43】本体のカップフェース部の後部を示す図である。
【
図48】ヘッド-シャフト連結アセンブリの断面図である。
【
図49】ワックスフェースがワックス本体の残りの部分とは別に形成された2つの部品のワックス本体を示す図である。
【
図50】ワックス本体の残りの部分にワックス溶接されたワックスフェースを示す図である。
【
図51】フェースの後部側の可変厚さプロファイルを示す図である。
【
図52】フェースの後部側の別の可変厚さプロファイルを示す図である。
【
図54】ヒール側にオフセットされた別の可変厚さプロファイルを示す図である。
【
図55】例示的な鋳造フェースプレートの前側を示す図である。
【
図56】
図55の鋳造フェースプレートの後側を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ドライバー、フェアウェイウッド、レスキュークラブ、ユーティリティクラブ、ハイブリッドクラブなどを含む、メタルウッドタイプのゴルフクラブ用のゴルフクラブヘッドの実施形態を以下に説明する。
【0021】
本明細書に開示の本発明の特徴は、単独かつ任意の他の特徴と組み合わせて本明細書に開示のすべての新規かつ非自明の特徴を含む。本明細書で使用される場合、「および/または」という語句は、「および」、「または」、ならびに「および」および「または」の両方を意味する。本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈からそうでないことが明確に示されていない限り、1つまたは複数を指す。本明細書で使用される場合、「含む(includes)」という用語は、「含む(comprises)」を意味する。
【0022】
以下はまた、本明細書の一部を形成する添付図面を参照する。図面は特定の実施形態を示しているが、本開示の意図する範囲から逸脱することなく、他の実施形態を形成し、構造上の変更を行うことができる。方向および参照(例えば、上、下、上部、底部、左、右、後方、前方、ヒール方向、トウ方向など)は、図面の考察を容易にするために使用される場合があるが、限定することを意図するものではない。例えば、「上」、「下」、「上部」、「下部」、「水平」、「垂直」、「左」、「右」などの特定の用語を使用することができる。これらの用語は、該当する場合、特に図示された実施形態に関して、相対的な関係を扱うときに説明をいくらか明確にするために使用される。しかし、このような用語は、絶対的な関係、位置、および/または配向を意味するものではない。例えば、物体に関して、物体を回転させるだけで「上部」表面を「下部」表面にすることができる。それでも、その物体は依然として同じ物体である。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるものではなく、求められる財産権の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその同等物によって定義されるものである。
【0023】
とりわけ、「できる」、「できた」、「できた」、「かもしれない」などの条件付き言語は、特に明記しない限り、または使用される文脈内で他の意味で理解されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素、および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることを意図する。したがって、このような条件付き言語は一般に、特徴、要素および/またはステップが1つ以上の特定の実施形態に何らかの形で必要とされること、または1以上の特定の実施形態がユーザ入力またはプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素、および/またはステップが、いずれかの特定の実施形態に含まれるか、または実行されるべきかを決定するための論理を必然的に含むことを意味することを意図しない。
【0024】
本明細書に記載の実施形態は、単に可能な実装形態の例であり、本開示の原理を明確に理解するための記載に過ぎないことを強調されたい。フロー図における任意のプロセス記述またはブロックは、プロセスにおける特定の論理機能またはステップを実施するための1つ以上の実行可能命令を含むコードのモジュール、セグメント、または部分を表すものと理解されるべきであり、本開示の当業者によって合理的に理解されるように、関連する機能に応じて、実質的に同時または逆の順序を含む、示されたまたは議論された順序から外れて、機能が全く含まれないまたは全く実行されない代替の実装形態が含まれる。本開示の精神および原理から実質的に逸脱することなく、上述の(1または複数の)実施形態に対して多くの変形および修正を行うことができる。さらに、本開示の範囲は、上述のすべての要素、特徴、および態様のありとあらゆる組み合わせおよび部分的組み合わせを網羅することを意図している。そのような修正および変形はすべて、本開示の範囲内に含まれることが意図されており、要素またはステップの個々の態様または組み合わせに対するすべての可能な請求項は、本開示によって支持されるものとする。
【0025】
参照のために、本開示内で、「ドライバータイプのゴルフクラブヘッド」への言及は、主にティーとともに使用されることが意図された任意のメタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドを意味する。一般に、ドライバータイプのゴルフクラブヘッドは、15度以下、より一般的には12度以下のロフトを有する。「フェアウェイウッドタイプのゴルフクラブヘッド」への言及は、ティーからボールを打つためにも使用可能でありながら、地面からボールを打つために使用されることが意図される任意のウッドタイプのゴルフクラブヘッドを意味する。一般に、フェアウェイウッドタイプのゴルフクラブヘッドは、15度以上、より一般的には16度以上のロフトを有する。一般に、フェアウェイウッドタイプのゴルフクラブヘッドは、73~97mmのリーディングエッジからトレーリングエッジまでの長さを有する。様々な定義がフェアウェイウッドタイプのゴルフクラブヘッドとハイブリッドタイプのゴルフクラブヘッドとを区別しており、ハイブリッドタイプのゴルフクラブヘッドは、フェアウェイウッドタイプのゴルフクラブヘッドに似ている傾向があるが、リーディングエッジからトレーリングエッジまでの長さがより短い。一般に、ハイブリッドタイプのゴルフクラブヘッドは、リーディングエッジからトレーリングエッジまでの長さが38~73mmである。ハイブリッドタイプのゴルフクラブヘッドは、重量、ライ角、体積、および/またはシャフトの長さによってフェアウェイウッドタイプのゴルフクラブヘッドと区別することもできる。本開示のドライバータイプのゴルフクラブヘッドは、様々な実施形態では15度以下、または様々な実施形態では10.5度以下であってもよい。様々な実施形態では、本開示のフェアウェイウッドタイプのゴルフクラブヘッドは、13~26度であり得る。
【0026】
図1~
図6に示すように、ゴルフクラブヘッド2などのウッドタイプ(例えば、ドライバーまたはフェアウェイウッド)のゴルフクラブヘッドは、中空の本体10を含むことができる。本体10は、内部キャビティを画定する一方、打撃面22を画定するクラウン12、ソール14、スカート16、およびフェースプレート18(フェースまたはフェース部とも呼ばれる)を含むことができる。フェースプレート18は、本体とは別個に形成され、本体の前部の開口部に取り付けられてもよく、または本体10の一体部分として一体的に形成されてもよい。本体10は、ゴルフクラブシャフトを受容するように適合されたホーゼルボア24を画定するホーゼル20を含むことができる(
図6を参照)。本体10は、ヒール部26、トウ部28、前部30、および後部32をさらに含む。
【0027】
図4~
図6は、理想的な衝撃位置23/原点60、原点x軸70、原点y軸75、および原点z軸65、クラブヘッドの重心50、CGx軸90、CGy軸95、およびCGz軸85を示す。図示するように、これらの軸は水平または垂直であり、クラブヘッドは通常のアドレス位置にある。原点軸は原点60を通り抜け、CG軸はCG50を通り抜ける。
【0028】
本体は、複合材料などのより軽量の材料で形成されたインサートでかぶせられるか、または覆われるクラウンおよび/またはソールにおいて開口部をさらに含むことができる。
例えば、本体のクラウンは、クラウンの面積の大部分を覆い、かつ本体が作製される金属よりも低い密度を有する複合クラウンインサートを含むことができ、それによりクラウンの重量を節約する。同様に、ソールは、ソールインサートによって覆われる本体内に1つ以上の開口部を含むことができる。ソールインサートは、複合材料、金属材料、または他の材料で作製することができる。本体がクラウンまたはソールに開口部を含む実施形態では、特に鋳造中にフェースプレートが本体の一体部分として形成される場合(かつ製造中にアクセスを提供するために本体に開口するフェースがない場合)、このような開口部は製造中にクラブヘッドの内部空洞へのアクセスを提供することができる。
図20~
図36に関連して本明細書で開示されたクラブヘッドは、より軽量の材料(例えば、複合材料)で形成されたインサートでかぶせられるか、または覆われるクラウンおよびソールの開口部の例を提供する。本体の開口部および関連するインサートに関する詳細情報は、2018年7月5日に公開された米国特許公開第2018/0185719号、および2017年6月5日に出願された米国特許仮出願第62/515,401号に見出すことができ、これらの両方の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
いくつかの実施形態では、クラブヘッドは、クラブヘッドのソールおよび/または周囲に形成されたウェイトトラックに沿って移動可能な1つまたは複数のウェイトなどの調整可能なウェイトを含むことができる。他の例示的なウェイトは、ねじ式ウェイトポート内でウェイトを回転させることにより調整することができる。様々なリブ、ストラット、質量パッド、および他の構造は、補強の提供、質量分布およびMOI特性の調整、音響特性の調整、かつ/または他の理由のために本体内に含むことができる。
【0030】
クラブヘッド2などのウッドタイプのクラブヘッドは、任意の開口が略平面で密閉されていると仮定すると、クラブヘッドの体積変位に等しい一般に立方センチメートル(cm3)で測定される体積を有する。(米国ゴルフ協会「Procedure for Measuring the Club Head Size of Wood Clubs」改訂1.0、2003年11月21日を参照)。ドライバーの場合、ゴルフクラブヘッドは、約300cm3~約500cm3など、約250cm3~約600cm3の体積を有することができ、約145g~約260gの総質量を有することができる。フェアウェイウッドの場合、ゴルフクラブヘッドは、約120cm3~約300cm3の体積を有することができ、約115g~約260gの総質量を有することができる。ユーティリティクラブまたはハイブリッドクラブの場合、ゴルフクラブヘッドは約80cm3~約140cm3の体積を有することができ、約105g~約280gの総質量を有することができる。
【0031】
ソール14は、クラブヘッドが理想的に位置決めされるとき、すなわち水平面のゴルフボールに対して適切なアドレス位置にあるとき、クラブヘッドの最下点から上方に延在するクラブヘッド2の下部として画定される。いくつかの実装形態では、ソール14は、クラブヘッドの最下点からクラウン12までの距離の約50%から60%まで延在し、場合によっては、ドライバーでは約15mm、フェアウェイウッドでは約10mm~12mmであり得る。
【0032】
フェースプレート18を含む本体10を構築するために使用され得る材料としては、複合材料(例えば、炭素繊維強化ポリマー材料)、チタンもしくはチタン合金、鋼もしくは鋼の合金、マグネシウム合金、銅合金、ニッケル合金、および/またはゴルフクラブヘッド構築に適した任意の他の金属もしくは金属合金が挙げられ得る。塗料、ポリマー材料、セラミック材料などの他の材料も本体内に含むことができる。いくつかの実施形態では、フェースプレートを含む本体は、チタンまたはチタン合金(9-1-1チタン、6-4チタン、3-2.5、6-4、SP700、15-3-3-3、10-2-3、または他のアルファ/ニアアルファ、アルファ-ベータ、ベータ/ニアベータチタン合金を含むがこれらに限定されない)、またはアルミニウムおよびアルミニウム合金(3000シリーズ合金、5000シリーズ合金、6061-T6などの6000シリーズ合金、7075などの7000シリーズ合金を含むが、これらに限定されない)、3.5~2.5%以下のAl、3.0~2.0%以下のV、0.02%以下のN、0.013%以下のH、0.12以下のFeの化学組成を有するTiグレード9(Ti-3Al-2.5V)など、金属材料で作製することができる。
【0033】
インベストメント鋳造の態様
射出成形は、所望の鋳物の犠牲的な「初期」パターン(例えば、鋳造「ワックス」製)を形成するために使用される。好適な射出ダイは、例えば、鋳造マスターを使用するコンピュータ制御の機械加工プロセスにより、アルミニウム、他の好適な金属もしくは金属合金、または他の材料で作製することができる。CNC(コンピュータ数値制御)機械加工を使用して、金型内の鋳型キャビティの複雑さを形成することができる。キャビティ寸法は、初期パターンの鋳造中に発生する鋳造ワックスの線形および体積収縮を補正し、かつ初期パターンから形成されたインベストメント鋳造「シェル」を使用して後で実行される実際の金属鋳造中に発生すると予想される同様の収縮現象を補正するように確立される。
【0034】
通常、初期パターンのグループがともに組み立てられ、中央のワックススプルーに取り付けられて、鋳造「クラスタ」が形成される。クラスタ内の各初期パターンは、後でクラスタの周囲に形成される鋳造シェル内にそれぞれの鋳型キャビティを形成する。中央のワックススプルーは、スプルーに導入された溶融金属を鋳造シェル内の鋳型キャビティに経路指定するためのランナーチャネルおよびゲートの位置および構成を画定する。ランナーチャネルは、鋳造シェル内および鋳造シェル内への溶融金属の円滑な層流を促進し、かつ鋳型内に閉じ込められ得るドロスのシェルキャビティ内への侵入を防ぐために1つ以上のフィルタ(例えば、セラミック製)を含むことができる。
【0035】
鋳造シェルは、鋳造クラスタを液体セラミックスラリーに浸漬した後、耐火性粒子のベッドに浸漬することにより構築される。必要に応じてこの浸漬シーケンスを繰り返して、鋳造クラスタの周囲にセラミック材料の十分な壁厚を構築し、それによってインベストメント鋳造シェルを形成する。例示的な浸漬シーケンスは、液体セラミックスラリー中の鋳造クラスタの6つの浸漬、および耐火性粒子のベッド中の5つの浸漬を含み、セラミックスラリーと耐火性材料の交互層を含むインベストメント鋳造シェルをもたらす。最初の耐火性材料の2つの層は望ましくは、微細な(300メッシュ)酸化ジルコニウム粒子を含み、第3~第5の耐火性材料層はより粗い(200メッシュ~35メッシュ)酸化アルミニウム粒子を含むことができる。各層は、次の層を塗布する前に、制御された温度(25±5℃)および相対湿度(50±5%)下で乾燥される。
【0036】
インベストメント鋳造シェルは、圧力が7~10kg/cm2に急速に増加する密閉蒸気オートクレーブに配置される。このような条件下では、シェル内のワックスは噴射された蒸気を使用して溶融される。次に、シェルを1000~1300℃まで温度を上昇させたオーブンで焼成して、残留ワックスを除去し、シェルの強度を高める。これで、シェルをインベストメント鋳造で使用する準備ができている。
【0037】
クラブヘッドを設計し、初期パターンを作成した後、製造作業は金属鋳造機に移行する。インベストメント鋳造シェルを作製するために、金属鋳造機は最初に、個々のクラブヘッドに対する複数の初期パターンを含むクラスタを構成する。クラスタの構成には、金属供給システム(溶融金属を後で供給するためのゲートとランナー)の構成も含まれる。これらの作業を完了した後、鋳造機は鋳造シェルを製造する体制を整える。
【0038】
クラスタを構成する重要な側面は、ゲートを配置する場所を決定することである。個々のクラブヘッドの鋳型キャビティには通常、1つのメインゲートがあり、そこから溶融金属が鋳型キャビティに流れ込む。追加の補助(「アシスタント」)ゲートは、フローチャネルによってメインゲートに接続することができる。このようなシェルを使用したインベストメント鋳造中、溶融金属は、それぞれのメインゲート、フローチャネル、および補助ゲートを介して各鋳型キャビティに流れ込む。このような流れでは、クラブヘッドの初期パターンを形成するための鋳型がメインゲートおよび任意のアシスタントゲートも画定する必要がある。クラブヘッドのワックスの初期パターンを成形した後、初期パターンを鋳型から取り外し、ゲート間にワックス片を(同じワックスを使用して)「接着」することによってフローチャネルの位置を画定する。
図12を参照すると、メタルウッドのクラブヘッド用の初期パターン150が示されている。メインゲート152および3つのアシスタントゲート154が示されている。フローチャネル156は、アシスタントゲート154とメインゲート152とを相互接続する。
【0039】
次に、各クラブヘッドの複数の初期パターンがクラスタに組み込まれ、これは個々のメインゲートを「リガメント」に取り付けることを含む。リガメントは、クラスタのスプルーおよびランナーを含む。通常、グラファイトなどで作製された「受容体」がクラスタの中心に配置され、その受容体は後で溶融金属を受容し、金属をランナーに方向付けるために使用される。受容体は望ましくは、溶融金属の流入を助ける「漏斗」構成を有する。追加のブレース(例えば、グラファイト製)を追加して、クラスタ構造を強化することができる。
【0040】
通常、ワックスクラスタ全体が十分に大きく(特にシェルの形成に使用される炉室が大きい場合)、最初にクラスタの個々のブランチにワックスの断片を「接着」させた後、ブランチがクラスタにともに組み立てられる前に、個々のブランチを別々にセラミックコーティングすることができる。次に、ブランチをともに組み立てた後、クラスタはシェル鋳造チャンバに移される。
【0041】
2つの例示的なクラスタを
図13および
図14それぞれに示す。
図13では、描写したクラスタ160は、グラファイト受容体162、グラファイトクロススポーク164、ランナー166、および鋳型キャビティ168を含む。各鋳型キャビティ168は、それぞれのクラブヘッド用である。るつぼ170内の溶融金属は、注入カップ172を使用してクラスタ160に注がれ、その注入カップは溶融金属を受容体162、ブランチ166、次いで鋳型キャビティ168に方向付ける。
図14では、描写したクラスタ180は、シェルランナー184に結合された受容体182を含む。この構成では、鋳型キャビティには「ストレートフィード」キャビティ186および「サイドフィード」キャビティ188の2つのタイプがある。るつぼ170内の溶融金属は、注入カップ172を使用してクラスタ180に注がれ、その注入カップは溶融金属を受容体182、シェルランナー184、次いで鋳型キャビティ186、188に方向付ける。
【0042】
次いで、強化されたワックスクラスタを、スラリーおよびセラミックの粉末の多層でコーティングし、コーティング間で乾燥を行う。すべての層を形成した後、得られたインベストメント鋳造シェルをオートクレーブ処理して、内部のワックスを溶融する(セラミック部分およびグラファイト部分は溶融しない)。シェルからワックスを除去した後、シェルは焼結(焼成)され、機械的強度を大幅に向上させる。シェルが比較的小さな金属鋳造炉で使用される場合(例えば、1つのブランチのみのクラスタを保持できる場合)、シェルはインベストメント鋳造に使用することができる。シェルが比較的大きな金属鋳造炉で使用される場合、シェルを他のシェルブランチと組み合わせて、大きな多分岐クラスタを形成することができる。
【0043】
金属合金の現代のインベストメント鋳造は、通常、鋳造シェルを遠心方式で回転させながら実行され、そのような動きを受けるシェルのω2r加速度によって生成された力を利用して活用し、ここで、ωはシェルの角速度であり、rは角運動の半径である。この回転は、準大気圧下の鋳造チャンバ内にあるターンテーブルを使用して実行される。シェルのω2r加速度によって生成される力は、ボイドを残すことなく、溶融金属の鋳型キャビティへの流れを促す。インベストメント鋳造シェル(構成クラスタおよびランナーを含む)は、通常、鋳造チャンバの外側で組み立てられ、チャンバ内のターンテーブルに一体ユニットとして配置される前に、予め設定した温度まで加熱される。シェルをターンテーブルに取り付けた後、鋳造チャンバを密閉し、予め設定した準大気圧(「真空」)レベルまで排気する。チャンバが排気されると、鋳造用の溶融合金が準備され、ターンテーブルが回転し始める。溶融金属がシェルに注ぐ準備ができていると、鋳造チャンバは適切な真空レベルにあり、鋳造シェルは適切な温度にあり、ターンテーブルは所望の角速度で回転している。したがって、溶融金属は、鋳造シェルの受容体に注がれ、シェル全体に流れて、シェルの鋳型キャビティを充填する。
【0044】
溶融金属がシェルキャビティに流れ込み、キャビティ表面と接触すると、高温環境(溶融金属および予熱されたシェルの両方から)により、シェル材料内の酸素などの元素の拡散が促進される。チタンの鋳造は常に準大気圧(真空)下で行われ、周囲環境では酸素が利用可能ではないが、(シェルは「酸化物」の複数の層で構成されているため)酸素はシェル内に依然として見つけられ得る。溶融チタンに酸素を導入すると、鋳造されるチタン物体の表面に酸素リッチ層であるアルファケースが形成される。通常、アルファケースの厚さは、物体の厚さの1~4%程度である。
【0045】
アルファケースは酸素で「富化」されているため、それは脆く(酸素がチタン合金の強度を高める最も有効な元素のうちの1つであるが、強度を高めると延性が大幅に低下し)、加重を受けて容易に割れが発生する可能性がある。アルファケースを形成する傾向を減らすには、酸素の拡散速度を下げる必要があり、拡散速度を下げるには温度を下げる必要がある。しかし、溶融チタンの温度を下げることは不可能である。したがって、予熱されたシェルの温度を下げることは、酸素の拡散速度を下げる1つの方法であり、アルファケースの形成を減らす。
【0046】
通常、鋳造炉に移動する前に、鋳造シェルが加熱され(予熱と呼ばれる)、溶融チタンの流れを助ける。シェルの予熱温度が高いほど、チタンの流れが容易になる。これは、薄壁のチタン鋳造には不可欠であり、予熱温度は1100~1200℃にもなり得る。一方、そのような高温は、(1~4%の壁厚範囲の上限に向かって)厚いアルファケース層を生成する傾向がある。したがって、アルファケースの形成が懸念される場合は、鋳造シェルの予熱温度を下げることができる。典型的には、鋳造シェルの予熱温度は、アルファケースの形成が望ましくない非流動臨界チタン鋳物の場合、1000℃未満、好ましくは900℃未満である。
【0047】
クラスタ鋳造法
図15を参照して分かるように、ゴルフクラブヘッドの製造方法は、ステップ361を参照して示すように、本開示の他の箇所で開示するようなクラスタを準備することを含む。様々な実施形態では、クラスタを準備するステップは、本明細書の他の箇所で開示するような予熱ステップを含んでもよい。本開示の1つの側面は、クラスタの予熱が従来のインベストメント鋳造技術に必要なものよりも低い場合があることである。例えば、従来のインベストメント鋳造技術では、予熱は1000℃~1400℃程度であり、本開示の遠心鋳造では、予熱の温度は、いくつかの実施形態では1000℃未満、いくつかの実施形態では800℃未満、またはいくつかの実施形態では約500℃以下であり得る。いくつかの実施形態では、予熱は不要であり、室温でシェルとともに鋳造が生じ得る。クラスタが準備されると、ステップ362に従って角度的に加速され得る。金属は、クラスタの準備および/またはクラスタの加速と同時に溶融状態に加熱されてもよく、または中間ステップであってもよい。しかし、ステップ363に従って、金属を加熱して溶融状態にすることができる。ステップ364に従って、溶融金属がクラスタに導入される。ステップ362からステップ364に至る破線で示すように、クラスタは、クラスタへの溶融金属の導入の前、その後、またはそれと同時に角度的に加速され得る。ステップ365に従って、溶融金属を冷却させる。クラスタ鋳物は、ステップ366でクラスタシェルから除去され、ステップ367以降で後処理が生じる。
【0048】
いくつかの実施形態では、ステップ363は、金属を溶融状態に加熱することを含む。
様々な実施形態では、加熱温度は用途に応じてより高くても低くてもよい。いくつかの実施形態では、ステップ362は、角速度、例えば、毎分約360回転までクラスタを角度的に加速することを含む。様々な実施形態では、角速度は、毎分250~450回転の範囲であり得る。様々な実施形態では、150rpm程度の低い角速度と600rpm程度の高い角速度が好適であり得る。
【0049】
鋳造温度が低いため、鋳型クラスタ内で溶融金属を冷却させるステップは、従来のインベストメント鋳造法と比較した待機時間の短縮を含む。その結果、歩留まりが向上し、サイクル時間が改善される。重力に依存する従来の様々なインベストメント鋳造方法では、最大6~8個の部品のみの鋳造が可能であった。遠心鋳造を使用すると、1回のサイクルで18~25個以上の部品を鋳造できるため、1回の鋳造サイクルの生産能力が高まる。
さらに、注入1グラムあたりの歩留まりも増加する。従来のインベストメント鋳造法では、一定の質量の金属を使用して、一定の数のゴルフクラブヘッドを鋳造する。本開示のスピン鋳造技術により、同じ質量の金属を使用して、より多くのゴルフクラブヘッドを製造することができる。本開示における技術の改良およびホーニングは、この金属の質量/ヘッドあたりをさらに減少させることができる。特定の方法論に応じて、サイクル時間が短縮される場合もある。さらに、本明細書に記載の方法は、同じ生産需要に必要な工具および資本費用の削減につながる。したがって、本明細書に記載の方法は、コストを削減し、生産品質を向上させる。
【0050】
さらに、本明細書に記載の方法による鋳造は、材料の節約につながり、より大きなスループットを達成するが、これは、加速度が大きくなり、それによって鋳造に力が加わると、材料をより多くのヘッドに容易に流すことができるからである。最後に、他の方法を使用して通常製造される合金は、より容易に同様の形状に鋳造することができる。
【0051】
ゲート化およびクラスタの構成
ゲートおよび(1または複数の)クラスタを構成するには、複数の要因を考慮する必要がある。これらの考慮する要因としては、(必ずしもこれらに限定されないが)(a)金属鋳造炉の鋳造チャンバの寸法制限、(b)特にインベストメント鋳造シェルを形成するスラリー浸漬ステップ中の取り扱い要件、(c)インベストメント鋳造シェル内の溶融金属の最適な流動パターンを達成すること、(d)インベストメント鋳造シェルの(1または複数の)クラスタに、金属鋳造中の回転運動に耐えるのに必要な少なくとも最小強度を提供すること、(e)溶融金属の鋳型キャビティへの流れに対する最小抵抗のバランスを達成すること(ランナーに十分に大きな断面を提供することによる)に対して、金属の無駄の最小化を達成すること(例えば、ランナーに小さな断面を提供することによる)、ならびに(f)鋳造シェルの中心軸の周りのクラスタの機械的バランスを達成することが挙げられる。項目(e)は、鋳造後、ランナーに残っている金属が製品を形成せず、むしろ「汚染」される(その一部分は通常リサイクルされる)可能性があるため、重要であり得る。これらの構造上の要素を、シェルの予熱温度および時間、金属鋳造チャンバ内の真空レベル、ならびにターンテーブルの角速度などの金属鋳造パラメータと結合させて、実際の鋳造結果を生成する。クラブヘッドの壁がますます薄く作製されるため、十分なインベストメント鋳造結果を得るには、これらのパラメータの慎重な選択およびバランスが不可欠である。
【0052】
金属鋳造機で行われるインベストメント鋳造の詳細は、独自のものである傾向がある。
しかし、様々なチタン鋳造機での実験では過去において、いくつかの一貫性およびいくつかの一般的な傾向が明らかになっている。例えば、特定のクラブヘッド(体積460cm
3、クラウン厚0.6mm、およびソール厚0.8mm)を、6台のチタン鋳造機(それぞれの金属鋳造炉の容量が10kg~80kgである)の各々で製造し、
図16および
図17において表にしたデータを作成した。
図16および
図17に列挙されたパラメータは、以下を含む。
【0053】
「最大R」はクラスタの最大半径であり、
「最小R」はクラスタの最小半径であり、
「湿潤周囲長」は、ランナーの総周囲長であり、
「R(流動半径)」は、ランナーの断面積/湿潤周囲長であり、
「急旋回」は、ランナーシステムにおいて90度以上の旋回であり、
「プロセス損失率」は、注入材料に対するプロセス損失の比率であり、
「最大速度」は、最大半径での速度であり、
「最小速度」は、最小半径での速度であり、
「最大加速度」は、最大半径での加速度であり、
「最小加速度」は、最小半径での加速度であり、
「最大力」は、最大半径での力(これは、ゲートで溶融金属に加えられる力の大きさの近似値であることに留意されたい。それぞれの特定のクラスタ設計により、真の力はほとんど常に計算値より低く、より複雑なクラスタは力のより大きな減少を示す。)であり、
「最小力」は、最小半径での力(これは、ゲートで溶融金属に加えられる力の大きさの近似値であることに留意されたい。それぞれの特定のクラスタ設計により、真の力はほとんど常に計算値より低く、より複雑なクラスタは力のより大きな減少を示す。)であり、
「最大圧力」は、最大半径でのランナー内の溶融金属の圧力(=最大力/ランナー断面積)であり、
「最小圧力」は、最小半径でのランナー内の溶融金属の圧力(=最小力/ランナー断面積)であり、
「最大運動エネルギー」は、最大半径での溶融金属の運動エネルギーであり、
「密度」は、1650℃の融点での溶融金属(チタン合金)の密度であり、
「粘度」は、1650℃での溶融チタンの粘度であり、
「最大Re数」は、最大半径でのパイプフローのレイノルズ数であり、
「最小Re数」は、一貫して最大Re数として定義されるが、最小半径で定義される。
【0054】
最小力の要件
図16および
図17は、良好な鋳造歩留まりを達成するために、各クラスタの鋳造シェルに入る溶融金属に少なくとも最小の力(したがって少なくとも最小の圧力)を加える必要があることを示すデータの表を提供する。溶融金属に加えられる力は、クラスタ内の鋳型キャビティに入る実際の溶融金属の質量、および鋳造炉の回転ターンテーブルにより生成される遠心力によって部分的に生成される。より小さな力が一般に、鋳造に必要な溶融金属のクラブヘッドあたりの量を減らすことができるため、最小力を小さくすることが望ましい。しかし、他の要因は、この力の増加を示す傾向があり、この要因としては、鋳造される品目のより薄い壁部、より複雑なクラスタ(ひいては溶融金属のより複雑な流動パターン)、シェル予熱温度の低下(溶融金属がインベストメント鋳造シェルに流入する際に溶融金属からの熱エネルギーのより大きな損失をもたらす)、および粗い鋳型キャビティ壁などの標準未満のシェル品質が挙げられる。
図16および
図17のデータは、壁の少なくとも一部分が厚さ0.6mmのチタン合金クラブヘッドを鋳造するのに必要な最小力が約160Ntであることを示す。鋳造機1は、この最小力を達成した。
【0055】
最小力の要件から、シェルへの注入に必要な溶融金属量のより低い閾値を導き出すことができる。避けられない流し込み損失を除いて、最良の金属使用量(鋳造機1で達成したように)は、約200gの質量を各々有するクラブヘッド(ゲートおよびいくつかのランナーを含む)では386g(0.386kg)であった。これは、200/386=52パーセントの材料使用率に相当する。鋳造機2~6によってインベストメント鋳造シェルに加えられた加速度(最大)は、鋳造機1によって加えられた加速度よりもすべて大きかったが、鋳造機2~6の各々が鋳造機1によって達成されたものと同等の鋳造歩留まりを得るためにより多くの溶融金属が必要であった。
【0056】
いくらかのプロセス損失(飛散、るつぼの側壁に付着した冷却金属、および液体チタン合金の供給遮断、洗浄損失の回復など)は避けられない。プロセス損失は、より小さな鋳造炉で達成することができる効率に上限を課し、すなわち、プロセス損失の割合は、
図18に示すように、炉のサイズの減少とともに急速に増加する。
【0057】
他方、より小さな鋳造炉は、有利なことに、より単純な操作および保守要件を有する。
小型炉の他の利点は次の通りである:(a)鋳型キャビティの小型で単純なクラスタを処理する傾向があり、(b)小型クラスタは各鋳型キャビティに供給する別個のそれぞれのランナーを有する傾向があり、その傾向は溶融金属の鋳型キャビティへの流入に対してより良い界面ゲート比を提供し、(c)鋳造前に炉をより容易かつ迅速に予熱し、(d)炉は潜在的により高い達成可能なシェル予熱温度を提供し、かつ(e)小型クラスタはより短いランナーを有する傾向があり、その傾向はレイノルズ数が小さくなるため、破壊的な乱流の可能性が低くなる。大型の鋳造炉はこれらの利点を有しない傾向があるが、小型の鋳造炉は大型の炉よりも鋳型キャビティあたりの溶融金属のより多くの避けられないプロセス損失を有する傾向がある。
【0058】
上記を考慮すると、費用対効果の高い鋳造システム(炉、クラスタ、歩留まり、正味材料費)は、適切なクラスタ設計およびゲート設計の考慮事項がこのような炉で使用されるインベストメント鋳造シェルの構成に組み込まれている限り、中規模システムを含むように思われる。これは、鋳造機1、4、および5を比較することから分かり得る。これら3つの鋳造機による材料の全体的な使用量(プロセス損失を考慮しない場合)は非常に近い(664~667g/キャビティ)。鋳造機1による材料使用量(プロセス損失を考慮する場合)は386gであるが、鋳造機4および5の材料使用量は510gである。したがって、鋳造機4および5はまだ改善することができるが、鋳造機1はこの点で限界に達しているように思われる。
【0059】
フローフィールドの考慮事項
少なくとも、インベストメント鋳造シェルに入る溶融金属に加えられる最小閾値力は、シェルに入る溶融金属の質量を変化させるか、または速度を増加させるかのいずれかによって、典型的には一方を減少させ他方を増加させることによって達成することができる。
「注入材料」(溶融金属)の質量を減らすことができる程度には現実的な限度がある。注入材料の質量が減少すると、それに応じて、溶融金属をインベストメント鋳造シェルに効果的に移動させるのに十分な力を発生させるのにより多くの加速度が必要である。しかし、加速度を増加させると、シェルに入る溶融金属の乱流を発生させる可能性が高くなる。
乱流は、溶融金属の流動パターンを乱すため、望ましくない。流動パターンが乱れると、メインゲートを通って鋳型キャビティに金属を「押し込む」ためにさらに大きな力を必要とする場合がある。
【0060】
レイノルズ数は、(1または複数の)ランナーの形状および/または寸法を変更することによって容易に修正することができる。例えば、R(流動半径)を変更すると、レイノルズ数に直接影響を与える。R(流動半径)が小さいほど、最小力は小さくなる(この2つは略相互関係にある)。したがって、有利な考慮事項は、最初にレイノルズ数を減少させて溶融金属の安定したフローフィールドを維持し、次に注入材料の量を調整することにより最小力の要件を満たすことである。
【0061】
他の要因
追加要因の1つは、溶融金属を導入する前にインベストメント鋳造シェルを予熱することである。鋳造機1のシェル予熱温度が最高であったため、鋳造機1は、レイノルズ数が最小で、注入材料の量が最小で(ひいては最小力で)、94%の歩留まりを達成した。別の要因は、(1または複数の)クラスタの複雑さである。複雑なクラスタを評価することは非常に難しく、そのようなクラスタで通常示される高いレイノルズ数は、そのようなクラスタ内の溶融金属の破壊的な乱流を減らすように制御される唯一の変数ではない。例えば、クラスタのランナーおよび鋳型キャビティの「急な」旋回(90度以上の旋回)の数も要因である。
図16および
図17に関して、鋳造機1によって使用されるインベストメント鋳造シェルは1回の急旋回(およびもう1回のあまり急ではない旋回)を有するが、鋳造機6によって使用されるシェルは3回の急旋回を有する。鋳造機6は、これらの急旋回によって生じる流動抵抗を克服するためだけに、より高い角速度でシェルを回転させる必要がある可能性がある。しかし、これは急旋回によって引き起こされる乱れた流動パターンを軽減しない。したがって、より単純な(1または複数の)クラスタ(溶融金属のより「自然な」流動経路を可能にするための急旋回がより少ない)を含むインベストメント鋳造シェルが望まれる。
【0062】
別の要因は、ランナーとゲートの整合である。鋳造機1に対する界面ゲート比は、他の鋳造機からの実質的に劣ったデータと比較して、100%(最適なゲート化を示す)に最も近い。「最悪」は鋳造機3であり、そのインベストメント鋳造シェルは鋳造機1と略同程度に低いレイノルズ数であったが、鋳造機3は界面ゲート比が低い(約23%)ことにより、78%の歩留まりしか達成しなかった。鋳造機3のシェルが示す低い界面ゲート比は、鋳造機3の低い歩留まりの原因がゲートを充填するのに不十分な注入材料であるか、または「二相流液および空孔」の発生であるかを判断するのを困難にした。いずれにしても、ランナーおよびゲートの全体的な断面積は、注入中の任意の時点でシェル全体に液体金属の一定の流速を達成するようにできる限り互いに略等しく(かつ一定に)保つことができる。薄壁のチタン合金鋳物では、この原理は特に、ランナーとメインゲートの間の界面に適用され、界面ゲート比は1(1.0)以上でなければならない。
【0063】
さらに別の要因は、ランナーの断面形状である。鋳造機4と鋳造機5、および鋳造機2と鋳造機5を比較すると、三角形断面のランナーは円形または矩形のランナーよりも低いレイノルズ数を生成するように思われた。三角形断面のランナーを使用すると、界面ゲート比の問題が発生する可能性があるが(金属がこのようなランナーから直線状断面または円形断面のゲートに流れるため)、三角形断面のランナーを使用して達成されるレイノルズ数の大幅な減少は、(39kg対32kg)を示す鋳造機2および5で使用される注入材料の違いとして追及する価値がある。
【0064】
インベストメント鋳造シェルのクラスタを構成するためのフローチャートを
図19に示す。第1のステップ301では、寸法、取り扱い、バランスなど、意図したクラスタの全体的な考慮がなされる。次に、急旋回およびランナー断面の不必要な(確かに頻繁な)変化を最小限に抑えることにより、クラスタの複雑さを軽減する(ステップ302)。界面ゲート比は、可能な限り1に近く維持される(ステップ303)。また、レイノルズ数は実行可能な限り最小化される(ステップ304)。ターンテーブルの角速度(RPM)を微調整し、シェルの予熱温度を上げて、可能な限り最高の製品歩留まりを得る(ステップ305)。通常、ステップ304、305の反復(306)は、満足のいく歩留まりを達成するために必要である。ステップ308では、満足のいく歩留まりが達成された(307)後、注入材料(溶融金属)の質量を徐々に減少させて、製品歩留まりを低下させることなく、かつ他の鋳造パラメータを維持しながら、クラスタ全体に溶融金属の流れを促すのに必要な力を減少させる。
【0065】
チタン合金および他の材料を使用して薄壁クラブヘッドを鋳造するためのインベストメント鋳造法および装置に関する詳細情報は、2009年4月7日に発行された米国特許第7,513,296号、および2016年6月23日に公開された米国特許出願公開第2016/0175666号に見出すことができ、これらは両方とも全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの組み込まれた参考文献は、フェースプレートが含まれない(フェースプレートが後で本体に取り付けられる)、クラブヘッド本体を鋳造するための方法およびシステムを開示しているが、フェースが別個に形成されず、後で本体に取り付けられる、本体の一体鋳造部分のフェースである、本明細書に開示のクラブヘッド本体を鋳造するために同じまたは類似の利益および利点を有する同じまたは類似の方法およびシステムを使用することができる。
【0066】
チタン合金を鋳造するため鋳型のコーティング、およびチタン合金を鋳造するのに使用するための酸化カルシウムのフェースコートを有する鋳型を製造するための方法に関する詳細情報は、1998年6月16日に発行された米国特許第5,766,329号に見出すことができ、これは全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
鋳造チタン合金本体/フェースを含むクラブヘッド
シートの機械加工または鍛造加工用に形成されたチタン製のゴルフクラブのフェースと比較して、鋳造フェースには、低コストで設計の完全な自由という利点がある。しかし、6-4 Tiなどの従来のチタン合金から鋳造されたゴルフクラブのフェースは、フェースが耐久性のあるように、片側または両側のアルファケースを除去するために化学エッチングする必要がある。このようなエッチングには、取り扱いが難しく、人間および他の材料に非常に有害であり、環境汚染物質であり、かつ高価である化学エッチング液であるフッ化水素(HF)酸の適用が必要である。
【0068】
アルミニウム(例えば、8.5~9.5%のAl)、バナジウム(例えば、0.9~1.3%のV)、およびモリブデン(例えば、0.8~1.1%のMo)を含むチタン合金から鋳造されたフェースは、任意に他の微量合金元素および不純物とともに、「9-1-1 Ti」と本明細書で総称されており、あまり有意ではないアルファケースを有することができ、従来の6-4 Tiおよび他のチタン合金から作製されたフェースと比較して、HF酸エッチングが不要または少なくとも必要性が低くなる。
【0069】
さらに、9-1-1 Tiは、820MPaの降伏強度、958MPaの引張強度、および10.2%の伸びという最小の機械的特性を有することができる。これらの最小特性は、812MPaの降伏強度、936MPaの引張強度、および約6%の伸びという最小の機械特性を有することができる、6-4 Tiなどの典型的な鋳造チタン合金よりも著しく優れている可能性がある。
【0070】
本体の一体部分としてフェースを含む鋳造された(例えば、単一の鋳造物体と同時に鋳造された)ゴルフクラブヘッドは、フェースが別個に形成されて後でクラブヘッド本体の前部開口部に取り付けられる(例えば、溶接またはボルト締めされる)クラブヘッドと比較して優れた構造的特性を提供することができる。しかし、一体に鋳造されたTiフェースを有する利点は、鋳造Tiフェースの表面のアルファケースを除去する必要性によって軽減される。
【0071】
一体に鋳造された9-1-1 Tiフェースおよび本体ユニットを含む本明細書に開示のクラブヘッドにより、アルファケースを除去しなければならないという欠点を取り除くことができるか、または少なくとも大幅に減らすことができる。鋳造9-1-1 Tiフェースの場合、1000℃以上の従来の鋳型予熱温度を使用すると、アルファケースの厚さは、いくつかの実施形態では、約0.15mm以下、約0.20mm以下、または約0.30mm以下、例えば0.10mm~0.30mmであり得るが、鋳造6-4 Tiフェースの場合、アルファケースの厚さは、いくつかの例では、0.15mm超、0.20mm超、または0.30mm超、例えば約0.25mm~約0.30mmであり得る。
【0072】
場合によっては、9-1-1 Tiフェースプレートのアルファケースの厚さの減少(例えば、0.15mm以下)は、フェースプレートに必要な十分な耐久性を提供し、かつHF酸などの過酷な化学エッチング液でアルファケースの一部をエッチング除去する必要を回避するのに十分に薄くない場合がある。このような場合、溶融チタン合金を鋳型に注入する前に、鋳型の予熱温度を、(800℃未満、700℃未満、600℃未満、および/または500℃以下に)下げることができる。これにより、鋳型から鋳造チタン合金に移動する酸素の量をさらに減少させることができ、より薄いアルファケース(例えば、0.15mm未満、0.10mm未満、および/または0.07mm未満)をもたらす。これにより、鋳造体/フェースユニットにより良い延性および耐久性を提供し、これはフェースプレートにとって特に重要である。
【0073】
鋳造9-1-1 Tiフェースにおけるアルファケースは薄いため、耐久性が向上し、フェースは十分に耐久性があり、化学エッチングによるフェースからのアルファケースの一部の除去が不要になる。したがって、特に予熱温度が低い鋳型を使用する場合、9-1-1 Tiを使用して本体とフェースを一体鋳造すると、フッ化水素酸エッチングを製造プロセスから取り除くことができる。これにより、製造プロセスが簡素化され、コストが削減され、安全上のリスクおよび操作上の危険が軽減され、HF酸による環境汚染の可能性が排除され得る。さらに、HF酸は金属に導入されないため、本体/フェース、またはクラブヘッド全体でさえも、1000ppm未満、500ppm未満、200ppm未満、および/または100ppm未満と定義することができるフッ素原子をほとんどまたは実質的に含まない可能性があり、存在するフッ素原子は、本体を鋳造するために使用される金属材料中の不純物によるものである。
【0074】
可変フェース厚ならびにフェースのバルジおよびロール特性
特定の実施形態では、例えば、米国特許出願第12/006,060号および米国特許第6,997,820号、同第6,800,038号、同第6,824,475号、同第7,731,603号、および同第8,801,541号に記載されるように、可変厚フェースのプロファイルをフェースプレートに実装することができ、これらの各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。フェースプレートの厚さを変えると、一般にゴルフクラブヘッドのスイートスポットと呼ばれるクラブヘッドのCOR区域のサイズが大きくなり、ゴルフクラブヘッドでゴルフボールを打つと、フェースプレートのより大きな面積が一貫して高いゴルフボール速度およびショット許容度を与えることができる。また、フェースプレートの厚さを変えることは、クラブヘッドの別の領域に再配置するためのフェース領域の重量を減らすのに有利であり得る。例えば、
図9に示すように、フェースプレート18は、外面22とゴルフクラブヘッドの内部キャビティに面する内面40との間に画定された厚さtを有する。フェースプレート18は、外面22上の理想的な衝撃位置23に隣接して位置決めされた中央部42を含むことができる。中央部42は、フェースプレートの周囲の厚さに類似か、わずかに大きいかまたは小さい厚さを有することができる。フェースプレート18はまた、中央部42から半径方向外側に延在する発散部44を含むことができ、これは楕円形であってもよい。内面40は、1つ以上の軸に関して対称であってもよく、かつ/または1つ以上の軸に関して非対称であってもよい。発散部44の厚さtは、中央部42から半径方向外側の方向に増加する。フェースプレート18は、発散部44から移行部48を介して延在する収束部46を含む。収束部46の厚さtは、移行部48からの半径方向外側位置で実質的に減少する。場合によっては、移行部48は、発散部44と収束部46との間の頂点である。他の実装形態では、移行部48は、発散部44から半径方向外側に延在し、実質的に一定の厚さtを有する(
図7~
図9を参照)。
【0075】
いくつかの実施形態では、理想的な衝撃位置23でフェースプレートに垂直に延在する任意の軸に沿ったフェースプレート18の断面プロファイルは、
図7~
図9と略同様である。他の実施形態では、断面プロファイルは変化する可能性があり、例えば非対称である。例えば、特定の実装形態では、ヘッド原点のz軸に沿ったフェースプレート18の断面プロファイルは、上述のように中央部、移行部、発散部、および収束部を含み得る(
図7~
図9を参照)。しかし、ヘッド原点のx軸に沿ったフェースプレート18の断面プロファイルは、収束部46から半径方向に延在し、かつ移行部を介して収束部に結合された第2の発散部を含むことができる。代替的実施形態では、ヘッド原点のz軸に沿ったフェースプレート18の断面プロファイルは、ヘッド原点のx軸に沿った変化に関して上述したように、収束部から半径方向に延在し、かつ収束部に結合された第2の発散部を含むことができる。
【0076】
突起を有するフェースプレートを有するゴルフクラブヘッドのいくつかの実施形態では、最大フェースプレート厚さは約4.8mm超であり、最小フェースプレート厚さは約2.3mm未満である。特定の実施形態では、最大フェースプレート厚さは約5mm~約5.4mmであり、最小フェースプレート厚さは約1.8mm~約2.2mmである。さらに特定の実施形態では、最大フェースプレート厚さは約5.2mmであり、最小フェースプレート厚さは約2mmである。フェースの厚さは、軽量化し、かつオフセンターヒットでより高いボール速度を実現するために、フェース全体で少なくとも25%の厚さの変化(最も薄い部分と比較した最も厚い部分)を有しなければならない。
【0077】
突起および薄いソール構造または薄いスカート構造を有するフェースプレートを有するゴルフクラブヘッドのいくつかの実施形態では、最大フェースプレート厚さは約3.0mm超であり、最小フェースプレート厚さは約3.0mm未満である。特定の実施形態では、最大フェースプレート厚さは、約3.0mm~約4.0mm、約4.0mm~約5.0mm、約5.0mm~約6.0mm、または約6.0mm超であり、最小フェースプレート厚さは、約2.5mm~約3.0mm、約2.0mm~約2.5mm、約1.5mm~約2.0mm、または約1.5mm未満である。
【0078】
図10および
図11は、シャフト3を有するゴルフクラブヘッド4を示す。クラブヘッド4は、中央フェース5a、ヒール5b、トウ5c、クラウン5d、およびソール5eを含む。クラブヘッド4は、一般にバルジ8と呼ばれるヒール5bからトウ5cまでの湾曲を含むクラブフェース6をさらに含む。クラブフェース6は、一般にロール9と呼ばれるクラウン5dからソール5eまでの湾曲も含む。少なくとも1つの実施形態では、湾曲の組み合わせは、クラブフェース6に実質的にトロイダル形状、またはトロイドの断面に類似した形状を提供することができる。クラブフェース6は、ヒール5bからトウ5cまで中央フェース5aを通って水平に延在するX軸X、クラウン5dからソール5eまで中央フェース5aを通って垂直に延在するZ軸Z、および中央フェースを通り、かつ
図10の頁内に水平に延在するY軸Yをさらに含む。X軸X、Y軸Y、およびZ軸Zは互いに対して相互に直交している。
【0079】
図11に示すように、クラブヘッド4は、クラブヘッドの内部にある重心(CG)5fをさらに有する。クラブヘッド4は、CG X軸、CG Y軸、およびCG Z軸を有しており、これらの軸は互いに対して相互に直交し、CG座標系を画定するようにCG5fを通過する。CG X軸およびCG Y軸は、平らな地面に平行な水平面の状態にある。
CG Z軸は、平らな地面に垂直な垂直面の状態にある。一実施形態では、CG Y軸はY軸Yと一致してもよいが、大部分の実施形態では、これらの軸は一致しない。
【0080】
図11は、クラブヘッドのヒール5bでゴルフボールBを打つクラブヘッド4の誇張した描写である。これにより、ゴルフボールBに時計回りのスピンが与えられ、ゴルフボールが飛行中に右に曲がる原因となる。上述のように、クラブヘッド4のヒール5bでゴルフボールBを打つと、ゴルフボールはクラブヘッド4のCG Y軸に対して角度Θでクラブヘッド4から離れる。角度Θは、ボールがクラブヘッドから離れる一般的な角度を単に示しているだけであり、中心線に対する実際の角度、またはその角度が測定される点を描写または暗示することを意図するものではないことが理解されよう。角度Θは、クラブのヒールで打たれたボールが最初に中心線の左へと飛行経路を移動することをさらに示す。
【0081】
本開示における値を得るために使用される方法は、光学コンパレータ法である。
図10に戻って参照すると、クラブフェース6は、クラブヘッド4のX軸Xに概して沿うクラブフェースの幅を横断する一連のスコアライン11を含む。光学コンパレータ法では、クラブヘッド4は、光学コンパレータに取り付けられたVブロック上に下向きかつ略水平に取り付けられる。クラブヘッド4は、スコアライン11が光学コンパレータのX軸と略平行になるように配向される。より正確な方向付けステップも使用され得る。次に、クラブフェース上の幾何学的中心点5aで測定が行われる。次に、幾何学的中心点5aの両側でクラブヘッドのX軸Xに沿ってクラブフェース6の幾何学的中心点5aから20ミリメートル離れて、かつ中心点の両側でクラブヘッドのX軸Xに沿ってクラブフェースの幾何学的中心点から30ミリメートル離れて、更なる測定が行われる。例えば、機械の半径関数を使用することによって、これらの5つの測定点に弧をはめ込む。この弧は、所与の半径を有する円周に対応する。半径のこの測定は、バルジ半径によって意味するものである。
【0082】
ロールを測定するために、クラブヘッド4は、クラブヘッドのZ軸Zが機械のX軸に略平行になるように90度回転される。クラブフェースの幾何学的中心点5aで測定が行われる。次に、幾何学的中心点5aから15ミリメートル離れて、かつ中心点5aの両側でクラブフェース6のZ軸Zに沿って、また幾何学的中心点から20ミリメートル離れて、かつ中心点の両側でクラブフェースのZ軸に沿って更なる測定が行われる。これらの5つの測定点に弧をはめ込む。この弧は、所与の半径を有する円周に対応する。半径のこの測定は、ロール半径によって意味するものである。
【0083】
曲率は1/Rとして定義され、Rはバルジまたはロールの測定弧に対応する円の半径である。一例として、0.020cm-1の曲率を有するバルジは、50cmの半径を有する円の一部であるバルジ測定弧によって測定されたバルジに対応する。0.050cm-1の曲率を有するロールは、20cmの半径を有する円の一部であるロール測定弧によって測定されたロールに対応する。
【0084】
いくつかの実施形態では、開示されたクラブヘッドのフェースプレートは以下の特性を有することができる:
i)ロール曲率は約0.033cm-1~約0.066cm-1であり、バルジ曲率は0cm-1超、約0.027cm-1未満であり、
ii)バルジ曲率の逆数は、ロール曲率の逆数より少なくとも7.62cm大きく、かつ/または
iii)バルジ曲率をロール曲率で割った比Roは、約0.28超、約0.75未満である。
【0085】
本明細書に記載のクラブヘッドを製造するための真空ダイカストの使用により、品質が改善され、スクラップが削減される。さらに、高い空隙率による不良品は、二次加工後の不良品と同様に実質的に排除される。優れた表面品質が得られると同時に、製品の密度および強度が向上し、より大きく、より薄く、より複雑な鋳造が可能になる。加工の観点からは、必要な鋳造圧力が低く、工具寿命および鋳型寿命が延びる。また、フラッシュによる金属または合金の廃棄物を低減または排除する。
【0086】
真空ダイカスト法を利用することにより、驚くべきことに、開示されたクラブヘッドのチタン本体およびフェースプレートは、インベストメント鋳造により作製された類似のチタン物体で一般的に観察されるものよりもはるかに小さい粒度を示し、インベストメント鋳造チタンフェースプレートの粒度が約750μm(マイクロメートル)であるのに対して約100μmの粒度を有することが見出された。より具体的には、本明細書に開示のチタン本体/フェースプレートは、約400μm未満、好ましくは約300μm未満、より好ましくは約200μm未満、さらにより好ましくは約150μm未満、最も好ましくは約120μm未満の粒度を有することができる。
【0087】
本明細書に開示のチタン本体/フェースプレートはまた、インベストメント鋳造によって作製された類似の別個に形成されたチタンフェースプレートで一般的に観察されるものよりもはるかに低い空隙率を示すことができる。より具体的には、本明細書に開示のチタンフェースプレートは、1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満の空隙率を有することができる。
【0088】
本明細書に開示のチタン本体/フェースプレートはまた、ASTM E8により測定されるように、インベストメント鋳造により作製された類似のチタンフェースプレートで一般的に観察されるものよりもはるかに高い降伏強度を示すことができる。
【0089】
本明細書に開示のチタンフェースプレートはまた、インベストメント鋳造により作製された類似のチタンフェースプレートで一般的に観察されるものと同様の破壊靭性を示すことができ、鍛造され圧延アニールされた製品から作製された類似のフェースプレートよりも高い。
【0090】
本明細書に開示のチタンフェースプレートはまた、約10%から約15%の元のゲージ長さで割ったゲージ長さの最大伸びとして定義される引張試験で報告される伸び率によって測定されるような延性を示すことができる。
【0091】
本明細書に開示のチタンフェースプレートはまた、ASTM E-111により測定される場合、100GPa±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±2%のヤング率を示すことができる。
【0092】
本明細書に開示のチタンフェースプレートは、ASTM E8により測定される場合、970MPa±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±2%の最大引張強度も示すことができる。
【0093】
上述の様々な特性を組み合わせることにより、同程度に良いかそれより優れている強度特性を維持しながら、従来のインベストメント鋳造によって作製された類似のフェースプレートよりも10%薄いチタンフェースプレートを有するメタルウッドチタンクラブヘッドの製造が可能となる。
【0094】
本発明のゴルフクラブヘッドの強度特性に加えて、特定の実施形態では、ゴルフクラブヘッドの形状および寸法は、Willettらの2012年12月18日に出願された米国特許出願公開第2013/0123040号に従った空気力学的形状を生成するように形成することができ、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。ゴルフクラブヘッドの空気力学は、米国特許第8,777,773号、同第8,088,021号、同第8,540,586号、同第8,858,359号、同第8,597,137号、同第8,771,101号、同第8,083,609号、同第8,550,936号、同第8,602,909号、および同第8,734,269号にも詳述され、その教示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
後部本体の強度特性、およびクラブヘッドの空気力学特性に加えて、制御されなければならないクラブヘッドの別の一組の特性は、ゴルフクラブヘッドがゴルフボールを打ったときに発する音響特性または音である。クラブヘッド/ゴルフボールのインパクトでは、クラブクラウン、ソール、または打撃フェースに関連するクラブヘッドの振動モードが励起されるようにクラブの打撃フェースが変形される。ほとんどのゴルフクラブの形状は、様々な曲率、厚さ、および材料を有する表面からなる複雑なものであり、クラブヘッドモードの正確な計算は困難であり得る。クラブヘッドモードは、コンピュータ支援シミュレーションツールを使用して計算することができる。本発明のクラブヘッドでは、ボール/クラブのインパクトで生成された音響信号は、2013年3月15日に出願された同時係属米国特許出願第13/842,011号に記載されているように評価することができ、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
本発明の特定の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、2012年11月6日に発行された米国特許第8,303,431号により詳細に記載されているように取り外し可能なヘッド-シャフト連結アセンブリを介してシャフトに取り付けられてもよく、その内容全体は参照により本書に組み込まれる。さらに、特定の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、シャフトをヘッドに交換可能に接続するだけでなく、取り外し可能なヘッド-シャフト連結アセンブリを利用することによって、クラブのロフトおよび/またはライ角を調整する能力をゴルフクラブヘッドおよび/またはゴルフクラブに提供する機能を組み込むこともできる。このような調整可能なライ/ロフト連結アセンブリは、2011年9月27日に発行された米国特許第8,025,587号、2012年8月7日に発行された米国特許第8,235,831号、2012年12月25日に発行された米国特許第8,337,319号、ならびに2011年6月22日に出願された同時係属米国特許出願公開第2011/0312437号、2012年6月20日に出願された米国特許出願公開第2012/0258818号、2011年12月29日に出願された米国特許出願公開第2012/0122601号、2011年3月22日に出願された米国特許出願公開第2012/0071264号、および2012年11月27日に出願された同時係属中の米国特許出願第13/686,677号により詳細に記載されており、これらの特許、公開公報および出願の内容全体はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
特定の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、フェース角とホーゼル/シャフトロフトとの間の関係を「分離する」ためにソール部に設けられた調整可能な機構を特徴とし、ゴルフクラブのスクエアロフトおよびフェース角の別々の調整を可能にする。例えば、ゴルフクラブヘッドのいくつかの実施形態は、クラブヘッドの後端を地面に対して上下させるためにクラブヘッド本体に対して調整することができる調整可能なソール部を含むことができる。調整可能なソール部に関する更なる詳細は、2012年12月25日に発行された米国特許第8,337,319号、2009年12月23日に出願された米国特許出願公開第2011/0152000号、2011年6月22日に出願された同第2011/0312437号、2011年12月29日に出願された同第2012/0122601号、および2012年11月27日に出願された同時係属米国特許出願第13/686,677号に記載されており、これらの各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
いくつかの実施形態では、製造業者および/またはユーザが可動ウェイトを調整して、クラブの重心の位置を調整し、所望の性能特性をゴルフクラブヘッドで使用することができる。この機能は、次のような米国特許第6,773,360号、同第7,166,040号、同第7,452,285号、同第7,628,707号、同第7,186,190号、同第7,591,738号、同第7,963,861号、同第7,621,823号、同第7,448,963号、同第7,568,985号、同第7,578,753号、同第7,717,804号、同第7,717,805号、同第7,530,904号、同第7,540,811号、同第7,407,447号、同第7,632,194号、同第7,846,041号、同第7,419,441号、同第7,713,142号、同第7,744,484号、同第7,223,180号、および同第7,410,425号により詳細に記載されており、これらの各々の内容全体はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
本明細書に記載のゴルフクラブヘッドのいくつかの実施形態によれば、ゴルフクラブヘッドはまた、クラブヘッドのソール部および/またはスカート部に位置決めされた摺動可能に再配置可能なウェイトを含むことができる。他の利点の中でも、摺動可能に再配置可能なウェイトは、ゴルフクラブのエンドユーザが、再配置可能なウェイトの位置に関するある範囲の位置にわたってクラブヘッドのCGの位置を調整できるようにする。摺動可能に再配置可能なウェイト機能に関する更なる詳細は、2013年5月20日に出願された米国特許第7,775,905号、同第8,444,505号、米国特許出願第13/898,313号、および2013年10月7日に出願された米国特許出願第14/047,880号に詳細に記載されており、これらの各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれ、同様に、2013年7月31日に出願された米国特許出願第13/956,046号に対応する米国特許出願公開第2014/0080622号の段落[430]~[470]および
図93~
図101の内容、ならびに2014年7月3日に出願された同時係属米国特許出願第62/020,972号および2014年10月17日に出願された同第62/065/552号にも記載されており、これらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
本明細書に記載のゴルフクラブヘッドのいくつかの実施形態によれば、ゴルフクラブヘッドはまた、例えばソール部でフェースに近接して配置されたクラブの本体の間隙を画定する反発係数特徴を含んでもよい。このような反発係数の特徴は、2010年6月1日に出願された米国特許出願第12/791,025号、2011年12月27日に出願された同第13/338,197号、2013年3月15日に出願された同第13/839,727号(米国特許出願公開第2014/0274457号)、2014年8月12日に出願された同第14/457,883号、および2014年12月17日に出願された同第14/573,701号により完全に記載されており、これらの各々の内容全体はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
追加の例示的なクラブヘッド
図20~
図36Dは、本明細書に開示の特徴の任意の組み合わせを含むことができる、別の例示的なウッドタイプのゴルフクラブヘッド200を示す。例えば、クラブヘッド本体202およびフェース270は、本明細書で説明したように、チタン合金から一体構造として鋳造することができる。ヘッド200は、隆起したソール構造(米国特許出願公開第2018/0185719号で説明した利点を参照)を含み、摺動可能に調整可能なウェイトアセンブリ210、212を有する2つのウェイトトラック214、216を含む。ヘッド200は、クラウンインサート206およびソールインサート208の両方(
図21および
図22の分解図を参照)をさらに含み、これらのインサートは、所望の配向パターン(米国特許出願公開第2018/0185719号の更なる詳細を参照)に配置された多層の繊維強化材を有する様々な軽量材料から構築することができる
ヘッド200は、本体202と、調整可能なヘッド-シャフト連結アセンブリ204と、本体の上部に取り付けられたクラウンインサート206と、本体の下部の上で本体の内側に取り付けられたソールインサート208と、前部ウェイトトラック214に摺動可能に取り付けられた前部ウェイトアセンブリ210と、後部ウェイトトラック216に摺動可能に取り付けられた後部ウェイトアセンブリ212とを含む。ヘッド200は、前部トラック214とフェース270との間の前部着座パッドすなわち接地面226と、後部トラック216のヒール側の本体の後部に後部着座パッドすなわち接地面224とを含み、通常のアドレス位置にあるとき、ソールの残りの部分は地面より高い位置にある。
【0102】
ヘッド200は、本体202とソールインサート208との組み合わせによって画定される隆起したソールを有する。例えば、
図22および
図27に示すように、本体202の下部は、トウ側開口部240、ヒール側開口部242、および後部トラック開口部244を含み、これらはすべてソールインサート208によって覆われている。後部ウェイトトラック216は、ソールインサート208の下に位置決めされる。
【0103】
ヘッド200はまた、フェースに隣接するトウ領域の周囲で後部ウェイトトラック216または後部着座パッド224から周囲に延在するトウ側片持ち梁状レッジ232を含み、このレッジ232は前部着座パッド226からトウ方向に延在する本体のトウ部230と接合する。1つ以上の任意のリブ236は、本体のトウ側開口部240の前端に隣接する隆起したソールにトウ部230を接合することができる。このような3つの三角形のリブを
図20および
図26Aに示す。
【0104】
ヘッド200はまた、ホーゼル領域の近くから後方に、後部着座パッド224または後部ウェイトトラック216の後端まで延在するヒール側片持ち梁状レッジ234を含む。
いくつかの実施形態では、2つの片持ち梁状レッジ232および234は、ヘッドの後部の周囲に延在する連続的なレッジに接触および/または形成することができる。後部着座パッド224は、(
図26に示すように)凹んだ後部222を任意に含むことができる。
【0105】
ソールの一部を形成する本体202の下部は、所望の場合には強化された剛性を提供し、剛性があまり所望されない場合には軽量化を提供するために、様々な特徴、厚さの変化、リブなどを含むことができる。本体は、例えば、2つのウェイトトラック214、216の交差点付近に、より厚い領域238を含むことができる。本体は、開口部240、242の周囲に薄いレッジまたは座部260を含むこともでき、レッジ260はソールインサート208を受容してこれと噛み合うように構成される。本体の下面はまた、剛性および音響効果を高めるために、
図27および
図28に示すリブ262、263、265、および267などの様々な内部リブを含むことができる。
【0106】
本体の上部には、所望の場合には強化された剛性を提供し、剛性があまり所望されない場合には軽量化を提供するために、様々な特徴、厚さの変化、リブなどを含むことができる。例えば、本体は、クラウンインサート206を受容するために上部開口部の周りに薄い座部領域250を含む。
図21Aに示すように、クラウンおよびソールインサート用の座部250および260は、本体の外周の周りで、共通の縁部を共有しても、互いに近接してもよい。
【0107】
図35A~
図35Dは、クラウンおよびソールインサートが適所および/または取り外された様々な状態におけるヘッド200の上面図を示す。
図36A~
図36Dは、クラウンおよびソールインサートをより詳細に示す。
図36Aおよび36Bに示すように、ソールインサート208は、凹状の上面および凸状の下面を有する不規則な形状を有することができる。ソールインサート208はまた、接地力により強化された剛性が必要とされる後部着座パッド224領域の周りの嵌合に適応するために、後部ヒール端にノッチ209を含むことができる。様々な実施形態では、ソールインサートは、ソールの表面積の少なくとも約50%、ソールの表面積の少なくとも約60%、ソールの表面積の少なくとも約70%、またはソールの表面積の少なくとも約80%を覆うことができる。別の実施形態では、ソールインサートは、ソールの表面積の約50%~80%を覆う。ソールインサートは、クラブヘッドに課される大きな動的荷重に耐えるのに十分な強度と剛性を有する一方、クラブヘッド内の他の場所に戦略的に割り当てることができる自由裁量質量を解放するために比較的軽量のままであるクラブヘッド構造に寄与する。
【0108】
ソールインサート208は、少なくとも本体の底部の開口部240、242、244を覆うように選択された形状およびサイズを有し、接着または他の確実な固定技術によりフレームに固定することができる。いくつかの実施形態では、レッジ260は、ソールインサートをフレーム上にさらに固定して整列させるために、ソールインサートの下側に整合する突起またはバンプを受容するためのくぼみを備えてもよい。
【0109】
ソールと同様に、クラウンもまた、本体202の質量を減少させ、より有意には、クラウンの質量を減少させる開口部246を有し、クラウンは、質量の増加がヘッドのCGを上昇させる(望ましくなく)ことに最大の影響を与えるヘッドの領域である。開口部246の周囲に沿って、フレームは、クラウンインサート206を着座させて支持するための凹んだレッジ250を含む。クラウンインサート206(
図36Cおよび
図36Dを参照)は、クラウン開口部246に適合する幾何学形状およびサイズを有し、開口部246を覆うように接着または他の確実な固定技術により本体に固定される。レッジ260は、クラウンインサートを本体上にさらに固定して整列させるために、クラウンインサートの下側に整合する突起またはバンプを受容するためのくぼみをそのレッジの長さに沿って備えてもよい。クラウンインサートはまた、本体の前方クラウン部252の中に延在する前方突出部207を含むことができる。
【0110】
様々な実施形態では、クラウンインサートおよびソールインサートを受容する本体のレッジ(例えば、レッジ250および260)は、本体と同じ金属材料(例えば、チタン合金)から作られてもよく、したがって、ゴルフクラブヘッドにかなりの質量を加えることができる。いくつかの実施形態では、ゴルフクラブヘッドへのレッジの質量寄与を制御するために、レッジの幅を調整して、所望の質量寄与を達成することができる。いくつかの実施形態では、レッジがゴルフクラブヘッドに過剰な質量を加える場合、より軽い材料(例えば、炭素繊維またはグラファイト複合材料および/もしくはポリマー材料)から作製することができるソールインサートおよびクラウンインサートの重量減少の利点を損なう可能性がある。いくつかの実施形態では、レッジの幅は、約3mm~約8mm、好ましくは約4mm~約7mm、より好ましくは約4.5mm~約5.5mmの範囲であり得る。
いくつかの実施形態では、レッジの幅は、それぞれのインサートの厚さの少なくとも4倍の幅であり得る。いくつかの実施形態では、レッジの厚さは、約0.4mm~約1mm、好ましくは約0.5mm~約0.8mm、より好ましくは約0.6mm~約0.7mmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、レッジの厚さは、約0.5mm~約1.75mm、好ましくは約0.7mm~約1.2mm、より好ましくは約0.8mm~約1.1mmの範囲であり得る。レッジは、それぞれのインサートと本体との間の界面境界全体に沿って延在するかまたは走ってもよいが、代替的実施形態では、レッジは界面境界に沿って部分的にのみ延在してもよい。
【0111】
クラウン開口部246の周辺部は、ヘッド200のトウ側、後部側、およびヒール側のクラウンの周辺部に近接し、この周辺部を密接に追跡することができる。それとは対照的に、クラウン開口部246のフェース側は、ヘッドのフェース270領域からさらに離隔することができる。このようにして、ヘッドは、フェース270のすぐ後方のクラウン領域252に追加のフレーム質量および補強材を有することができる。この領域、ならびにトウ、ヒール、およびソールに沿ってフェースに隣接する他の領域は、フェースを支持し、フェースへのボールの打撃による比較的高い衝撃荷重および応力の影響を受ける。本明細書の他の箇所で説明するように、フレームは、高強度チタン、チタン合金、および/または他の金属を含む広範囲の材料で作製されてもよい。開口部246は、クラウンインサートを本体に位置合わせして着座させるのを助けるためにクラウンインサート突出部207に嵌合して合致する前側にノッチを有することができる。
【0112】
前部ウェイトトラック214および後部ウェイトトラック216は、クラブヘッドのソールに配置され、ねじなどの締結手段によってウェイトトラックに締結され得る2つの部品の摺動可能なウェイトアセンブリ210、212をそれぞれ取り付けるためのトラックを画定する。ウェイトアセンブリは、
図21Aに示すような形態以外の形態をとることができ、他の方法で取り付けることができ、単一部品設計または複数部品設計の形態をとることができる。ウェイトトラックは、ウェイトアセンブリをトラックに沿って摺動可能な調整のために緩めることを可能にし、次いで、クラブヘッドの効果的なCGおよびMOI特性を調整するために適所に締めることを可能にする。例えば、クラブヘッドのCGを、後部ウェイトアセンブリ212を介して前方もしくは後方に、または前部ウェイトアセンブリ210を介してヒール方向もしくはトウ方向に移動することによって、クラブヘッドの性能特性を修正して、ゴルフボールの飛行、特にゴルフボールのスピン特性に影響を与えることができる。他の実施形態では、前部ウェイトトラック214は、代わりに可動ウェイトのない前部チャネルであり得る。
【0113】
本体202のソールは、好ましくは、クラブヘッドのフェースに略平行かつその近くに延在し、かつ前部トラックの中央付近からヘッドの後部に向かって後方に延在する後部ウェイトトラック216に略垂直に延在する前部ウェイトトラック214と一体に形成される。
【0114】
図示した実施形態では、ウェイトトラックはそれぞれ、1つのウェイトアセンブリのみを含む。他の実施形態では、2つ以上のウェイトアセンブリをウェイトトラックの一方または両方に取り付けて、クラブヘッドに別の質量分布能力を提供することができる。
【0115】
前部ウェイトトラック214を介してCGをヒール方向またはトウ方向に調整することにより、クラブヘッドの性能特性を修正して、ボールの飛行、特にドローもしくはフェードするボールの傾向に影響を与え、かつ/またはスライスもしくはフックするボールの傾向に対抗することができる。後部ウェイトトラック216を介してCGを前方または後方に調整することにより、クラブヘッドの性能特性を修正して、ボールの飛行、特にボールが上方に移動する傾向に影響を与え、またはバックスピンによる飛行中の落下に抵抗することができる。ウェイトトラックで2つのウェイトアセンブリを使用すると、2つのウェイト間の代替の調整および相互作用が可能になる。例えば、前部トラック214に関して、2つの独立した調整可能なウェイトアセンブリを、トウ側に完全に、ヒール側に完全に、最大距離だけ離間して位置決めし、一方のウェイトをトウ側に完全に、もう一方をヒール側に完全に位置決めし、ウェイトトラックの中央にともに位置決めし、または他のウェイト配置パターンで位置決めすることができる。図示するように、トラック内の単一のウェイトアセンブリでは、ウェイト調整オプションはより制限されるが、ヘッドの有効CGは、連続体に沿って、例えば、ヒール方向またはトウ方向に沿って、または前部ウェイトトラックの中心に置かれたウェイトを有する中立位置で、依然として調整可能である。
【0116】
図29~
図34に示すように、各ウェイトトラック214、216は、好ましくは、形状が略矩形である凹部を有し、凹部トラックを提供して、ウェイトがトラックに沿って調整可能に摺動するときに、これを着座させ、案内する。各トラックは、好ましくはチャネル内に配置されたウェイトの幅よりも小さい幅寸法を有する細長いチャネルを画定するために1つ以上の周辺レールまたはレッジを含む。例えば、
図29および
図30に示すように、前部トラック214は対向する周辺レール288および284を含み、
図33および
図34に示すように、後部トラック216は対向する周辺レール290および292を含む。このようにして、ウェイトはウェイトトラック内で摺動し、レールはウェイトがトラックから外れるのを防ぐ。同時に、レッジ間のチャネルにより、ウェイトアセンブリのねじが外側ウェイト要素の中心を通り、チャネルを通って、次いで内側ウェイト要素と螺合することができる。レッジは、接合されたウェイトアセンブリが自由に摺動するトラックまたはレールを提供すると同時に、ウェイトアセンブリが緩んだ場合でも、ウェイトアセンブリがトラックから不用意に滑り落ちるのを効果的に防止する。前部トラック214では、アセンブリ210の内側ウェイト部材は内側凹部280および286内のレール284および288の上に位置し、一方、外側ウェイト部材は前方レール284と前部着座パッド226の張り出しリップ228との間の凹部282内に部分的に着座する(
図30、
図31)。後部トラック216では、アセンブリ212の内側ウェイト部材は内側凹部296および298内のレール290および292の上に位置し、一方、外側ウェイト部材はヒール側レール290と後部着座パッド224の張り出しリップ225との間の凹部294内に部分的に着座することができる。
【0117】
ウェイトアセンブリは、ねじを緩め、ウェイトをトラックに沿って所望の位置に移動させることによって調整することができ、その後、ねじを締めて、それらのアセンブリを適所に固定することができる。ウェイトアセンブリを交換し、異なる質量を有する他のウェイトアセンブリと交換して、更なる質量調整オプションを提供することもできる。第2または第3のウェイトがウェイトトラックに追加される場合、多くの追加的なウェイト位置および分布オプションが、ヒール-トウ方向および前後方向におけるヘッドの効果的なCG位置、およびこれらの組み合わせをさらに微調整するために利用可能である。これはまた、クラブヘッドのMOI特性の幅広い調整を提供する。
【0118】
ウェイトアセンブリ210、212のいずれかまたは両方は、内側ウェイト部材、外側ウェイト部材、および2つのウェイト部材を共に結合する締結具を含む3部品アセンブリを含むことができる。アセンブリは、内側部材がレッジの内側に接触し、かつ外側ウェイト部材がレッジの外側に接触するように締結具を締めることによって、ウェイトトラックの前部、後部、または側部のレッジに挟持することができ、ゴルフのラウンド全体にわたってアセンブリを本体に対して静止した状態に保持するのに十分なクランプ力を有する。
ウェイト部材およびアセンブリは、ウェイトアセンブリが適所に固定されるように構成されていないウェイトトラックの一端の拡大開口部で内側ウェイトを挿入するのとは対照的に、ウェイトトラックの使用可能な部分の(1または複数の)レッジを越えて内側チャネルに内側ウェイト部材を挿入することによって、ウェイトトラック内に挿入されるように成形および/または構成することができる。これにより、トラックの端部におけるこのような広く非機能的な開口部をなくすことができ、トラックをより短くすることができるか、またはウェイトアセンブリを固定することができるより長い機能的なレッジ幅を有することができる。内側ウェイト部材をトラックの中央のトラックに(例えば)レッジを越えて挿入することを可能にするために、内側ウェイト部材は、レッジに対して垂直ではない角度、例えば角度をつけた挿入で挿入することができる。ウェイト部材は、ある角度で挿入され、内側チャネル内に徐々に回転して、クランプレッジを越えて挿入することができる。いくつかの実施形態では、内側ウェイト部材は、ウェイト部材がトラックの使用可能な部分でレッジを越えてチャネル内に挿入することをより良く可能にするように、丸みを帯びた、楕円形の、長円形の、弓形の、湾曲した、または他の特別に成形された構造を有することができる。
【0119】
本開示のゴルフクラブヘッドでは、チタン合金材料の使用ならびに軽量のクラウンインサートおよび/またはソールインサートの組み込みによって達成される重量の節約と相まって、摺動可能に調整されたウェイトおよび/またはねじ式に調整可能なウェイトの相対的な位置および質量を調整する能力は、隆起したソール構成によって提供される裁量的質量とさらに相まって、クラブヘッドの多数の特性の広範な変動が可能になり、これらの変動はすべて、クラブヘッドのCGの位置、クラブヘッドのMOI値、クラブヘッドの音響特性、クラブヘッドの美的外観および主観的感触特性、ならびに/または他の特性を含む、最終的なクラブヘッド性能に影響を及ぼす。
【0120】
特定の実施形態では、前部ウェイトトラックおよび後部ウェイトトラックは、特定のトラック幅を有する。トラック幅は、例えば、ウェイトアセンブリの内側ウェイト部材を受容するトラックの内側部分の両側で互いに略平行な第1のトラック壁と第2のトラック壁との間の水平距離として測定することができる。
図29~
図31を参照すると、前部トラック214の幅は、内側凹部280および286の対向する壁の間の水平距離であり得る。
図32~
図34を参照すると、後部トラック216の幅は、内側凹部296および298の対向する壁の間の水平距離であり得る。前部トラックおよび後部トラックの両方では、トラック幅は、約5mm~約20mm、例えば約10mm~約18mm、または例えば約12mm~約16mmであってもよい。いくつかの実施形態によれば、トラックの深さ(すなわち、トラックの最上部内壁と、トラックの最外側縁に隣接するソールの領域を含む仮想平面との間の垂直距離)は、約6mm~約20mm、例えば約8mm~約18mm、または例えば約10mm~約16mmであってもよい。前部トラック214の場合、トラックの深さは、張り出しリップ228の内面から内側凹部280の上面までの垂直距離であり得る(
図30)。後部トラック216の場合、トラックの深さは、張り出しリップ225の内面から内側凹部296の上面までの垂直距離であり得る(
図34)。
【0121】
さらに、前部トラックおよび後部トラックの両方は、特定のトラック長を有する。トラック長は、トラックの対向する長手方向の端壁の間の水平距離として測定されてもよい。
前部トラックおよび後部トラックの両方では、それらのトラック長は、約30mm~約120mm、例えば約50mm~約100mm、または例えば約60mm~約90mmであってもよい。追加的または代替的に、前部トラックの長さは、打撃フェースの長さの割合として表されてもよい。例えば、前部トラックは、打撃フェースの長さの約30%~約100%、例えば打撃フェースの長さの約50%~約90%、または例えば約60%~約80%mmであってもよい。
【0122】
上述のトラックの深さ、幅、および長さの特性は、クラブヘッド10の前部チャネル36にも同様に適用することができる。
【0123】
図30および
図34では、前部および後部着座パッドのリップ228、225が、それぞれのウェイトトラックの上に延在するか、または張り出し、トラック開口部を制限し、(1または複数の)ウェイトをトラック内に保持するのを助けることが分かり得る。
【0124】
図34を参照すると、後部トラック216のヒール側の後部着座パッド224上のソール領域は、ヘッドが接地面に対してアドレス位置にあるとき、トウ側のソール領域(レッジの底部292)よりもかなり垂直距離だけ低い。これは、ソールの一部分がソールの別の部分に(例えば、トウ側に)対して低くく(例えば、ヒール側に)位置決めされた「陥没したソール」構造または「隆起したソール」構造を有するヘッドと考えることができる。言い換えれば、ソールの一部分(例えば、後部着座パッド224を除くソールの大部分)は、ソールの別の部分(例えば、後部着座パッド)に対して隆起している。通常のアドレス位置において、前部着座パッド226およびそのリップ228が(
図30に示すように)前部トラックの後側方よりも著しく低い前部トラック214についても同様である。
【0125】
一実施形態では、着座パッドの接地面のレベルと隆起したソール部の隣接面との間の垂直距離は、約2~12mm、好ましくは約3~9mm、より好ましくは約4~7mm、最も好ましくは約4.5~6.5mmの範囲であってもよい。一例では、垂直距離は約5.5mmである。
【0126】
図37~
図48は、クラブヘッド本体の前方部分と単一ユニットとして一体的に鋳造され、フェース部、ホーゼル、ならびにクラウン、ソール、トウ、およびヒールの前方部分を含むカップ状ユニット(本明細書ではカップ402と呼ぶ)を形成するフェース部を有する、別の例示的なゴルフクラブヘッド400を示す。しかし、本体の後方部分(本明細書ではリング404と呼ぶ)は別個に形成され、後でカップ402に取り付けられてクラブヘッド本体を形成する。カップ402とリング404の組み合わせは、本明細書ではクラブヘッド400の本体と呼ばれる。次に、クラウンインサート406およびソールインサート408を本体に取り付けてクラブヘッド400を形成することができる。いくつかの実施形態では、ソール開口部またはソールインサートがなく、後部リングがソールを完全に囲む。いくつかの実施形態では、ソールインサートは、金属材料、複合材料、および/または他の材料からなる。
【0127】
図37および
図38は、カップ402、リング404、クラウンインサート406、およびソールインサート408を含む、組み立てられたクラブヘッド400を示す。ヘッド-シャフト連結アセンブリ410をホーゼル412に結合することができる。カップ402およびリング404は、チタン合金または鋼などの金属材料を含むことができるが、インサート406および408は、炭素繊維強化複合材料などの密度の低い材料を含むことができる。本明細書に開示の他の材料のいずれも、クラブヘッド400に使用することができる。カップおよびリングは同じ材料(例えば、同じチタン合金)からなってもよく、または、リングはカップとは異なる材料(例えば、鋼製リングおよびチタン合金カップ、または2つの異なるチタン合金)からなってもよい。
【0128】
図39および
図40は、リング404がトウとヒールの接合部420においてカップ402に結合され、上部クラウン開口部および下部ソール開口部を有する環状体を形成する様子を示す。リング404は、カップ402の後方に延在するトウとヒールの係合端部422と噛み合って接合部420を形成する前方に延在するトウとヒールの係合端部424を含むことができる。図示の例では、リングは、カップ内の雌ノッチと噛み合う雄突出部を有する。しかし、これらの接合部は、カップの雄突出部とリングの雌ノッチで逆にすることができる。他の実施形態では、リングをカップに結合するために接合部420内で任意の他の好適な係合形状を使用することができる。接合部420は、溶接、ろう付け、接着剤、機械的締結具などの任意の好適な手段によって形成することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、接合部420は、ゴルフボールを打つときにゴルフクラブが受ける深刻な衝撃による潜在的な故障を回避するために、ストライクフェースから十分な距離に配置することができる。例えば、いくつかの実施形態では、接合部420は、y軸(前後方向)に沿って測定したとき、クラブヘッドの中心面の少なくとも20mm、少なくとも30mm、少なくとも40mm、少なくとも50mm、少なくとも60mm、および/または20mm~70mm後方に離隔することができる。
【0130】
図41は、インサート406および408を本体と接合して、クラウン開口部およびソール開口部を覆い、クラブヘッドの内部キャビティを取り囲むことができる様子を示す。
クラウンインサート406は、クラウン開口部の周囲に延在する本体のクラウンレッジ426に結合することができ、ソールインサート408は、ソール開口部の周囲に延在する本体のソールレッジ428に結合することができる。レッジ426および428は、カップ402およびリング404の両方の組み合わせから形成することができ、カップはレッジの前方部分を含み、リングはレッジの後方部分を含む。レッジ部426および428は、インサートの外面がカップ/リング本体の周囲の外面と同一または同一平面上にある状態でインサートを受容する空間があるように、周囲の外面から内側にオフセットすることができる。リング404はまた、リングの後部から下方かつ前方に延在し、ソールインサート408を支持して剛性を高めることを助けるソールレッジ428の一部を形成する突出部430を含むことができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、リング404は、突出部430または他の箇所などにおいて、厚さが増加した質量パッドを含むことができ、これにより、ゴルフクラブに後部への荷重を与え、質量中心を後方に移動させ、z軸およびx軸の周りのMOIを増加させる。このような後部への荷重はまた、リングの後部に結合された取り外し可能、交換可能、および/または調整可能なウェイト部材など、後部リングに結合された追加のウェイト部材によって達成することができる。例えば、突出部430またはリング404の他の部分は、ねじ付き開口部などの開口部、トラック、または他のウェイト部材受容機能を含むことができる。
図47は、このような調整可能なウェイト部材を受容することができる2つのウェイトポート431および433の例を示す。2つ以上のウェイト部材を後部リングに同時に結合することもできる。質量パッドまたは(1または複数の)ウェイト部材は、タングステンまたは鋼などの比較的密度の高い材料を含むことができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、カップ402は、中心または質量を下げ、かつ/または質量中心を前方に移動させるために、底部ソール領域に、図に示す質量パッド432などの質量パッドを含むことができる。いくつかの実施形態では、カップ402は、質量パッド432内もしくは近傍および/またはスロット418の後方など、カップのソール部に結合された1つ以上の追加のウェイト部材、例えばカップに結合された1つ以上の取り外し可能、交換可能、および/または調整可能なウェイト部材を含むことができる。例えば、質量パッド432またはカップ402の他の部分は、ねじ付き開口部などの1つ以上の開口部、トラック、または他のウェイト部材受容機能を含むことができる。2つ以上のウェイト部材をカップに同時に結合することもできる。(1または複数の)ウェイト部材は、タングステンまたは鋼などの鋳造カップ材料よりも比較的密度の高い材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、カップおよびリングは、後部リング位置と下部カップ位置との間でウェイト部材を交換することができ、クラブヘッドの質量特性を変更する調整機能オプションを提供する、整合ウェイトポートを有することができる。このようないくつかの例では、1~3gのウェイトおよび8~15gのウェイトを含むような交換可能なウェイトのグループをクラブヘッドに設けることができ、これらのウェイトは後部リングのウェイトポートまたはカップのソール部のウェイトポートに結合することができ、より高いMOI(後部におけるより重いウェイト)またはより低いスピン(低い前方位置におけるより重いウェイト)、または他の組み合わせおよび質量特性を可能にすることができる。
【0133】
図44~
図47は、インサート406および408なしで、接合されたカップ402および404によって形成された本体を、いくつかの観点からより詳細に示す。
図44は、一体的フェース434を示す正面図である。
図45は、ヒール側面図である。
図46は、カップ402の一部である前方クラウン部436、前方トウ部440、および前方ヒール部442、ならびにトウとヒールの接合部420、およびクラウンインサート406を受容するクラウンレッジ426を示す上面図である。
図47は、クラブヘッドの内部キャビティ内に延在するソールスロット418と、ソールインサート408を受容するレッジ428とを含む前方ソール部438を示す底面図である。また、
図47には、リング突出部430内に配置された例示的な後部ウェイトポート431と、質量パッド432の領域においてスロット418の後方のカップ402内に配置された例示的なソールウェイトポートも示されている。他の実施形態では、このようなウェイトポートは、リングの最後部など、カップまたはリングの他の部分に配置することができ、このようなウェイトポートは3つ以上存在することができる。ウェイトポートはねじ切り可能であり、調整可能なウェイト部材を受容することができ、クラブヘッドの質量中心およびMOI特性の調整を可能にする。
【0134】
カップ402は、
図42および
図43により詳細に示される。フェース434の後面を
図43に示す。本明細書の他の箇所で説明するように、フェース434の後部は、様々な複雑な形状および厚さプロファイルを有するように形成することができ、リング404がカップ402に取り付けられる前に、機械加工、エッチング、材料除去、および/または他の鋳造後処理のために後部から容易にアクセスすることができる。
図43はまた、カップのソール部438上の質量パッド432を示す。質量パッド432は、質量が増加したソールの厚くなった部分を含むことができ、これはクラブヘッドの全体的な質量特性に著しく影響する。質量パッド432は、質量およびMOI特性を高めるために、中心のトウ側およびヒール側により大きな質量を有する中央ノッチを有することができる。質量パッド432、代替の質量パッドの形状および実施形態、ならびに関連する特性に関する詳細情報は、2018年5月10日に公開された米国特許出願公開第2018/0126228号に見出すことができ、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
図48は、ヘッド400のホーゼル412が複数の選択可能な配向でシャフトに結合されることを可能にし、通常のアドレス位置における組み立てられたゴルフクラブのロフト角、ライ角、および/またはフェース角の調整を可能にするヘッド-シャフト連結アセンブリ410を示す。アセンブリ410は、
図48に示すスリーブ450、フェルール452、・・・ホーゼルインサート454、締結具456、およびワッシャ458などの様々な部品を含むことができる。調整可能なヘッド-シャフト連結アセンブリに関する詳細情報は、2015年5月19日に発行された米国特許第9,033,821号に見出すことができ、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
図49および
図50は、ゴルフクラブヘッドを製造するための方法の一部、具体的には、クラブヘッド400の前部カップ402を鋳造するための鋳型を製造するための方法の一部を示す。
図49は、ワックスカップフレーム502とワックスフェース504との組み合わせであるワックスカップ500を示す。ワックスカップフレーム502およびワックスフェース504を別々に形成し、その後、ワックスカップフレーム502内のわずかに大きいサイズのフェース開口部内にワックスフェースを配置する。次に、高温の液体ワックスを接合部に添加し、それを冷却してフェースをフレームに融合させることにより、2つのワックス片を環状接合部506の周りにワックス溶接することができる。追加のホットワックスは、接合部506を充填し、ワックスカップフレーム503およびワックスフェース504を単一の一体ワックスカップ500に接合する。ワックスが冷却された後、余分なワックスを溶接接合部506の前部および後部から除去することができる。いくつかの実施形態では、ワックスフェース504は、半径方向外側に延在し、ワックスカップフレーム502の前面に接触してワックスカップフレームに対するワックスフェース504の深さを設定するのを助け、その結果得られるワックスカップ500の前面が接合部506にわたって均一で滑らかであるようにする、プロング508を含むことができる。
ワックスプロング508は、ワックス溶接法の後に除去することができる。
【0137】
図50は、接合部516の周りに添加されたワックスを介してワックスカップフレーム512およびワックスフェース514をともにワックス溶接し、ワックスフェースのワックスプロング518を任意に使用してワックスカップフレームの開口部におけるワックスフェースの深さを設定するのを助けることによって形成されたワックスカップ510の別の例を示す。この例では、ワックスカップ510は、得られた鋳型内に追加のゲートを作製して、溶融金属が鋳型のフェース部に向かって均一に流れるのを助ける追加の突起520を含む。ワックスカップ500および510はまた、図示のように、ホーゼル近くのヒール側、フェースの裏側、および/または他の位置など、他の位置にゲート作製部分を含むことができる。
【0138】
2つの別個のワックス片からワックスカップを形成することは(例えば
図49および
図50のように)、ワックスカップのためのより複雑な形状の作製を容易にすることができ、いくつかの異なる形状の実施形態を単純化され、より迅速かつ費用効率の高い方法で形成することを容易にすることができる。2つの別個のワックス片から開始すると、ワックスフレームの工具および形成プロセスが、ワックスフェースの工具および形成プロセスから切り離される。ワックスカップ500に関して、同じワックスカップフレーム502(および同じ工具)をいくつかの異なる形状のワックスフェース504のいずれかと組み合わせて、対応する数の異なるワックスカップを作製することができ、このことは、ワックスフェースのための工具のみを変更して、異なるワックスカップを生成する必要があることを意味する。例えば、製造業者は、2つの同一のワックスフレーム502を作製することができ、次いで、1つのワックスフレームを第1のワックスフェースと組み合わせることができ、第2のワックスフレームを、第1のワックスフェースとは異なる厚さプロファイルを有する第2のワックスフェースと組み合わせることができる。これらの2つの異なるワックスカップと、得られた鋳型および最終製品の金属カップとを測定、比較、試験などを行うことができる。様々な例示的なフェースの厚さプロファイル、および本明細書における関連する説明については、
図51~
図54を参照されたい。したがって、2部品のワックスカップ形成プロセスを使用することは、ラピッドプロトタイピングならびに他の製造および開発効率において利点を提供することができる。
【0139】
また、2つの別個のワックス片から開始することは、各ワックス片がより小さく、同じツリー上でバッチあたりより多くの数で製造することができるため、多数のワックス片を形成する際の効率も高める。
【0140】
一旦ワックスカップ(例えば、500または510)が作製されると、このワックスカップを用いて金属カップ(例えば、カップ402)を鋳造するための鋳型を形成することができる。鋳型は、セラミック材料および/または金属カップを鋳造するための任意の好適な材料を含むことができる。ワックスカップの周りに鋳型が形成されると、ワックスを溶かして鋳型から排出させることができる。その後、鋳型へのゲート処理および/または表面処理の追加を含む、様々な後続のステップを適用して、鋳造用の鋳型を準備することができる。さらに、いくつかのカップ鋳型を1つの鋳型ツリーに組み合わせて、いくつかの金属製カップを同時に鋳造することができる。鋳型が準備された後、溶融金属を鋳型に導入して金属カップを鋳造することができる。その後、鋳型を開いたり取り外したりして、鋳造金属カップにアクセスすることができる。鋳造金属カップは、チタン合金を含む任意の好適な金属または金属合金で形成することができる(本明細書に開示の任意の好適な金属材料を鋳造カップに使用することができる)。
【0141】
金属カップを鋳造した後、鋳造カップの一部を機械加工または修正して、鋳造カップの一部を所望に応じて除去することができる。一例として、カップのフェース部の前面を機械加工して、水平のスコアラインを追加し、かつ/またはより正確なテクスチャ、曲率、およびねじれを作製することができる。別の例では、カップのフェース部の後面を機械加工して、フェース部の高さおよび幅にわたって厚さプロファイルを修正し、フェース部にわたって所望の可変厚さプロファイルを生成することができる。鋳造カップのフェース部の前面および/または後面を機械加工または化学エッチング(例えば、フッ化水素酸の使用)して、フェース部をより脆くせず、フェース部の耐久性を高めるなど、鋳造法(例えば、チタン合金の場合)時に形成されたアルファケース層の一部またはすべてを除去することもできる。
【0142】
カップのフェース部から材料を鋳造後に除去することを想定して、カップのフェース部は、鋳造後の材料除去後に所望の量の材料および所望の厚さプロファイルが残るように、余分な厚さの材料で鋳造することができる。
【0143】
図39および
図40に示すように、また上述したように、カップ402およびリング404は、別々に形成され(例えば、鋳造され)、次いで、接合部420でともに組み合わせられ(例えば、溶接、ろう付け、接着結合、機械的締結具など)、金属製クラブヘッド本体を形成することができ、この金属製クラブヘッド本体はゴルフクラブヘッド400を形成するために他の部品を受容する剛性フレームとして機能する。別個のカップ402およびリング404からクラブヘッド本体を作製するこの方法の1つの利点は、後部リング部がないことにより、カップ402のフェース部の後面への、鋳造後の機械加工、化学エッチング、および/またはフェース部の後面への他の鋳造後の修正のためにより良いアクセスが可能になることである。例えば、リング404が存在しない場合、カップ402のフェース部の後面全体にアクセスするために、切削工具、フライス盤、CNC機械、ドリルビット、または他の工具のためのより多くの空間がある。そのような鋳造後の修正がカップ402に施された後、リング404をカップに取り付け、クラブヘッドの残りを組み立てることができる。
【0144】
カップとリングを別々に鋳造する別の利点は、各鋳造片が結合された本体よりも小さく、同じ木でバッチあたりより多くの数で製造することができるため、リングおよびカップ片のそれぞれを多数鋳造する際の効率を可能にすることである。また、同じリング片を様々な異なる形状のカップ片とともに使用することができるため、カップ片のための工具のみを変更して、クラブヘッド本体の変更に対応するか、または異なるカップ/フェース形状を有するクラブヘッドのいくつかの異なる変形を作製する必要がある。
【0145】
図51は、ホーゼル/ヒールを左に、トウを右にして後方から見た、カップ402と同様の鋳造カップ600のフェース部の例示的な後面を示す。
図52および
図53は、可変厚さプロファイルを有する別の例示的なフェース部700を示し、
図54は、可変厚さプロファイルを有するさらに別の例示的なフェース部800を示す。鋳造法およびフェース部に対する任意の鋳造後の修正の結果として、鋳造カップのフェース部は、多種多様な新規の厚さプロファイルを有することができる。従来のプロセスで平坦な圧延金属シートからフェースプレートを形成するのではなく、フェースを所望の形状に鋳造することにより、フェースは、より多様な形状で作製することができ、異なる粒子方向および化学的不純物含有量などの異なる材料特性を有することができ、これはゴルフ性能および製造に利点を提供することができる。
【0146】
従来のプロセスでは、フェースプレートは均一な厚さを有する平坦な金属シートから形成される。このような金属シートは、通常、1つの軸に沿って圧延されて、その厚さをシート全体にわたって一定の均一な厚さに低減する。この圧延プロセスは、圧延方向に垂直な方向と比較して圧延軸方向に異なる材料特性を作製するシートに粒子方向を与えることができる。材料特性におけるこの変動は望ましくない可能性があり、代わりにフェース部を作製するために開示された鋳造方法を使用することにより回避することができる。
【0147】
さらに、従来のフェースプレートは均一な厚さの平坦なシートとして始まるため、シート全体の厚さは、少なくとも所望の最終製品のフェースプレートの最大厚さと同じでなければならず、これは、出発シート材料の多くを除去して浪費しなければならず、材料コストを増大させる。これとは対照的に、開示された鋳造方法では、フェース部は、最初に最終的な形状および質量に非常に近く形成され、除去され、浪費される材料は非常に少ない。これにより、時間およびコストを節約する。
【0148】
さらに、従来のプロセスでは、最初の平坦な金属シートは、所望のバルジおよびロール曲率をフェースプレートに付与するために特別なプロセスで曲げられなければならない。
このような曲げプロセスは、開示された鋳造方法を使用する場合には必要ない。
【0149】
図51~
図54に示す独自の厚さプロファイルは、開示された鋳造方法を使用して可能とされ、均一な厚さを有する金属シートが旋盤または同様の機械に取り付けられ、フェースプレートの後部にわたって可変の厚さプロファイルを生成するために回転される、従来のプロセスを使用して達成することは以前には不可能であった。このような旋削プロセスでは、付与された厚さプロファイルは、中心回転軸に対して対称でなければならず、それは、厚さプロファイルを、中心点から任意の所与の半径で、各々が均一な厚さを有する同心円環形状の組成物に限定する。対照的に、開示された鋳造方法を使用してそのような制限は課されず、より複雑なフェースの形状を作製することができる。
【0150】
本明細書に開示の鋳造方法を使用することにより、多数の開示されたクラブヘッドをより速く、より効率的に製造することができる。例えば、50個以上のカップ402を単一の鋳造ツリー上に同時に鋳造することができるが、旋盤を使用する従来のフライス加工方法を使用してフェースプレート上に新規のフェース厚さプロファイルを一度に1つずつ作製するには、はるかに長い時間がかかり、より多くのリソースを必要とする。
【0151】
図51では、鋳造カップ600の後部フェース表面は、非対称の可変厚さプロファイルを含み、これは開示された鋳造方法を使用して可能にされた多種多様な可変厚さプロファイルの一例のみを示す。フェースの中心602は中心厚を有することができ、フェースの厚さは、中心から内側ブレンド区域603を横切って、円形であり得る最大厚リング604まで半径方向外側に移動して徐々に増加することができる。フェースの厚さは、最大厚リング604から可変ブレンド区域606を横切って、楕円形などの非円形であり得る第2のリング608まで半径方向外側に移動して徐々に減少することができる。フェースの厚さは、第2のリング608から外側ブレンド区域609を横切って、一定の厚さ(例えば、フェース部の最小厚さ)のヒールおよびトウ区域610まで、かつ/またはフェースが鋳造カップ600の残部に移行するフェース部の範囲を画定する半径方向周囲区域612まで、半径方向外側に移動して徐々に減少することができる。
【0152】
第2のリング608自体は、第2のリング608の厚さが中心602の周りの周方向位置の関数として変化するように、可変の厚さプロファイルを有することができる。同様に、可変ブレンド区域606は、中心602の周りの周方向位置の関数として変化し、最大厚リング604から可変かつより薄い第2のリング608への厚さの遷移を提供する、厚さプロファイルを有することができる。例えば、第2のリング608への可変ブレンド区域606は、
図51においてA~Hとラベル付けされた、頂部区域A、頂部トウ区域B、トウ区域C、底部トウ区域D、底部区域E、底部ヒール区域F、ヒール区域G、および頂部ヒール区域Hを含む、8つのセクタに分割することができる。これら8つの区域は、図示するように異なる角度幅を有することができ、またはそれぞれが同じ角度幅(例えば、360度の8分の1)を有することができる。8つの区域のそれぞれは、リング604に隣接する共通の最大厚さから第2のリング608における異なる最小厚さまでの独自の厚さの変動を有することができる。例えば、第2のリングは、区域AおよびEではより厚く、区域CおよびGではより薄く、区域B、D、F、およびHでは中間の厚さを有することができる。この例では、区域B、D、F、およびHの厚さは、半径方向(半径方向外側に移動して薄くなる)および円周方向(区域AおよびEから区域CおよびGに向かって移動して薄くなる)の両方に沿って変化し得る。
【0153】
鋳造カップ600の一例は、以下の厚さ、中心602で3.1mm、リング604で3.3mmを有することができ、第2のリング608は、区域Aにおける2.8mmから区域Cにおける2.2mmまで、区域Eにおける2.4mmまで、区域Gにおける2.0mmまで、およびヒールとトウの区域610における1.8mmまで変化し得る。
【0154】
図52および
図53は、非対称の可変厚さプロファイルを含む別の例示的な鋳造フェース部700の後部フェース表面を示す。フェースの中心702は中心厚を有することができ、フェースの厚さは、中心から内側ブレンド区域703を横切って、円形であり得る最大厚リング704まで半径方向外側に移動して徐々に増加することができる。フェースの厚さは、最大厚リング704から可変ブレンド区域705を横切って、様々な厚さを有する複数のくさび形セクタA~Hからなる外側区域706まで半径方向外側に移動して徐々に減少させることができる。
図53に最もよく示されているように、セクタA、C、E、およびGは比較的厚くすることができ、セクタB、D、F、およびHは比較的薄くすることができる。外側区域706を取り囲む外側ブレンド区域708は、可変セクタから比較的小さいが一定の厚さを有する周囲リング710に厚さが移行する。外側区域706はまた、セクタA~Hのそれぞれの間に、あるセクタから隣接するセクタに厚さが徐々に移行するブレンド区域を含むことができる。
【0155】
フェース部700の一例は、以下の厚さ、中心702での3.9mm、リング704での4.05mm、区域Aにおける3.6mm、区域Bにおける3.2mm、区域Cにおける3.25mm、区域Dにおける2.05mm、区域Eにおける3.35mm、区域Fにおける2.05mm、区域Gにおける3.00mm、区域Hにおける2.65mm、および周囲リング710での1.9mmを有することができる。
【0156】
図54は、ヒール側(左側)に向かってオフセットされた目標厚さを有する非対称の可変厚さプロファイルを含む別の例示的な鋳造フェース部800の後面を示す。フェースの中心802は中心厚さを有し、トウ/頂部/底部まで、厚さは内側ブレンド区域803を横切って、中心よりも大きな厚さを有する内側リング804まで徐々に増加する。次いで、厚さは、第2のブレンド区域805を横切って、内側リング804の厚さよりも薄い厚さを有する第2のリング806まで半径方向外側に移動して減少する。次いで、厚さは、第3のブレンド区域807を横切って、第2のリング806の厚さよりも薄い厚さを有する第3のリング808まで半径方向外側に移動して減少する。次いで、厚さは、第4のブレンド区域810を横切って、第3のリング808の厚さより薄い厚さを有する第4のリング811まで半径方向外側に移動して減少する。トウ端部区域812は、外側ブレンド区域813を横切って、比較的薄い厚さを有する外側周辺部814と融合する。
【0157】
ヒール側では、トウ側の対応する領域に対してわずかに厚くなるように、厚さが設定量(例えば、0.15mm)だけオフセットされる。厚化区域820(破線)は、すべての厚さがヒール側でのより厚いオフセット区域822(破線)に向かって徐々に増大する遷移を提供する。オフセット区域822では、リング823はヒール側のリング806よりも設定量(例えば、0.15mm)だけ厚く、リング825はリング808よりも同じ設定量だけ厚い。ブレンド区域824および826は、半径方向外側に移動して厚さが徐々に減少し、トウ側の対応するブレンド区域807および810よりもそれぞれ厚い。厚化区域820では、内側リング804の厚さがヒールに向かって徐々に増加する。
【0158】
フェース部800の一例は、以下の厚さ、中心802での3.8mm、内側リング804での4.0mm、厚化区域820を横切って4.15mmまでの厚化、第2のリング806での3.5mmおよびリング823での3.65mm、第3のリング808での2.4mmおよびリング825での2.55mm、第4のリング811での2.0mm、ならびに周囲リング814での1.8mmを有することができる。
【0159】
図54に示す目標とするオフセット厚さプロファイルは、フェース全体にわたって望ましい特性時間(CT)プロファイルを提供するのを助けることができる。ヒール側を厚くすることは、例えば、フェースのヒール側にCTスパイクを有することを回避するのに役立つことができ、これは、フェース全体に不適合なCTプロファイルを有することを回避するのに役立つことができる。このようなオフセット厚さプロファイルは、フェースのトウ側、またはフェースのトウ側およびヒール側の両方に同様に適用して、フェースのヒール側およびトウ側の両方でCTスパイクを回避することができる。他の実施形態では、オフセット厚さプロファイルは、フェースの上側および/またはフェースの下側に向かって適用され得る。
【0160】
様々な他の可変フェース厚さプロファイルは、米国特許出願第12/006,060号、ならびに米国特許第6,997,820号、同第6,800,038号、同第6,824,475号、同第7,731,603号、同第8,801,541号、同第9,943,743号、および同第9,975,018号に開示のものを含む開示の方法を使用して製造することができ、これらのそれぞれの内容全体はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、米国特許第9,975,018号は、フェースの中心からオフセットされた逆円錐または「ドーナツ」形状の厚さプロファイルなどの局所化された硬化領域を含む打撃フェースの例を開示しており、これにより、クラブヘッドによって打撃されるゴルフボールの発射条件が、全体的または部分的に、右方向/左方向への逸脱の発生を補正、克服、または防止するように変更される。特に、局所化された硬化領域は、典型的な条件下で打たれたゴルフボールがゴルフボールに左向きおよび/または右向きのサイドスピンを与えないように、打球フェース上に位置する。
【0161】
開示されたフェース厚さプロファイルのすべては、本明細書に開示の鋳造方法によって可能にすることができる。このような構成は、元々平坦なフェースプレートの後部から同心円パターンの材料を除去する従来の旋削プロセスを使用しては不可能である。
【0162】
いくつかのゴルフクラブヘッドの実施形態では、フェースプレートを個々に鋳造し、次いでクラブヘッドのフレームの前部開口部に溶接することができる。フェースプレートがフレームの前部開口部に溶接されると、通常、溶接部の周囲に余分な材料が生成され、この余分な材料は、フェースプレートとフレームとの間の移行を滑らかにするために、溶接プロセス後に除去しなければならない。このプロセスは、本明細書に開示するように、フェースおよび前面フレームを含むカップ全体を単一の鋳造ユニットとして鋳造することによって回避することができる。
【0163】
しかし、フェースプレートを別々に鋳造することは、カップ全体を一体として鋳造することよりも利点をもたらし得る。例えば、鋳造フェースプレートの後処理は、フェースプレートがカップの一部である場合、フェース表面の後処理と比較してはるかに容易である。
図55および
図56は、例示的な鋳造フェースプレート900の前部902および後部904を示す。特に、鋳造カップの後部フェース表面に比べて、鋳造フェースプレートの後面のすべての部分にアクセスすることがはるかに容易である。ソール、クラウン、トウ、ヒール、ホーゼルなどの邪魔になる部分がないため、所望の鋳造後プロセスのための工具を用いて鋳造フェースプレートに近づくための無限の空間がある。また、鋳造フェースプレートをフェースプレートの正確な最終形状に近づけることができ、その結果、材料を除去する必要が少なくなり、鋳造後にフェースを修正するのに必要な作業が少なくなる。
例えば、フェースプレートは、鋳造後に除去されるフェースの各側面に0.5mm未満、0.4mm未満、0.3mm未満、および/または0.2mm未満の過剰な材料で鋳造することができる。これは、圧延された金属の平らなシートからフェースプレートを機械加工することと比較して、除去される廃棄物が少ないことに等しい。鋳造フェースの前面を機械加工して、アルファケース層の一部またはすべてを除去し、正確なバルジ、ロールおよびツイスト曲率を達成し、かつ/またはスコアラインを追加することができる。鋳造フェースの後部を機械加工して、アルファケース層の一部またはすべてを除去し、フェース全体にわたって正確な可変厚さプロファイルを達成することができる。本明細書の他の箇所に記載するように、鋳造プロセスは、従来のフェースシート旋削プロセスによって必要とされる360度の同心円対称性とは対照的に、はるかに複雑で非対称な厚さプロファイルを可能にする。
【0164】
本体の一体部分としてフェースを含む鋳造された(例えば、単一の鋳造物体と同時に鋳造された)ゴルフクラブヘッドは、フェースが別個に形成されて後でクラブヘッド本体の前部開口部に取り付けられる(例えば、溶接またはボルト締めされる)クラブヘッドと比較して優れた構造的特性を提供することができる。しかし、一体に鋳造されたTiフェースを有する利点は、鋳造Tiフェースの表面のアルファケースを除去する必要性によって軽減される。
【0165】
一体的に鋳造されたチタン合金のフェースおよび本体ユニット(例えば、鋳造カップ)を含む本明細書に開示のクラブヘッドにより、アルファケースを除去しなければならないという欠点を取り除くことができるか、または少なくとも大幅に減らすことができる。鋳造9-1-1 Tiフェースでは、1000℃以上の鋳型予熱温度を使用すると、アルファケースの厚さは、いくつかの実施形態では、約0.10mm以下、0.15mm以下、約0.20mm以下、または約0.30mm以下、例えば0.10mm~0.30mmであり得るが、鋳造6-4 Tiフェースでは、アルファケースの厚さは、いくつかの例では、0.10mm超、0.15mm超、0.20mm超、または0.30mm超、例えば約0.25mm~約0.30mmであり得る。いくつかの実施形態では、アルファケースの厚さは、フェース全体にわたって望ましくは高いCT時間を有する十分に耐久性のある製品を提供しながら、0.1mm程度と低く、0.15mmまでとすることができる。いくつかの実施形態では、フェースの幾何学的中心におけるフェースの後部のアルファケースは、0.30mm未満および/または0.20mm未満の厚さを有することができ、これは、形成後に表面を化学的にエッチングすることなく達成することができる。
【0166】
本明細書に記載の打撃フェースおよび/またはクラブヘッドのいずれかを形成するために使用することができる他のチタン合金は、チタン、アルミニウム、モリブデン、クロム、バナジウム、および/または鉄を含むことができる。例えば、代表的な一実施形態では、合金は、6.5重量%~10重量%のAl、0.5重量%~3.25重量%のMo、1.0重量%~3.0重量%のCr、0.25重量%~1.75重量%のV、および/または0.25重量%~1重量%のFeを含むアルファ-ベータチタン合金であり得、残部はTi(一例は「1300」チタン合金と呼ばれることもある)を含む。
【0167】
代表的な別の実施形態では、合金は、6.75重量%~9.75重量%のAl、0.75重量%~3.25重量%または2.75重量%のMo、1.0重量%~3.0重量%のCr、0.25重量%~1.75重量%のV、および/または0.25重量%~1重量%のFeを含むことができ、残部はTiを含む。
【0168】
代表的な別の実施形態では、合金は、7重量%~9重量%のAl、1.75重量%~3.25重量%のMo、1.25重量%~2.75重量%のCr、0.5重量%~1.5重量%のV、および/または0.25重量%~0.75重量%のFeを含むことができ、残部はTiを含む。
【0169】
代表的な別の実施形態では、合金は、7.5重量%~8.5重量%のAl、2.0重量%~3.0重量%のMo、1.5重量%~2.5重量%のCr、0.75重量%~1.25重量%のV、および/または0.375重量%~0.625重量%のFeを含むことができ、残部はTiを含む。
【0170】
代表的な別の実施形態では、合金は、8重量%のAl、2.5重量%のMo、2重量%のCr、1重量%のV、および/または0.5重量%のFeを含むことができ、残部はTiを含む。このようなチタン合金は、式Ti-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Feを有することができる。本明細書で使用される場合、「Ti-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Fe」への言及は、上記の割合のいずれかで言及された元素を含むチタン合金を指す。特定の実施形態は、微量のK、Mn、および/もしくはZr、ならびに/または様々な不純物も含み得る。
【0171】
Ti-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Feは、1150MPaの降伏強度、1180MPaの最大引張強度、および8%の伸びという最小の機械的特性を有することができる。これらの最小特性は、上述の最小の機械的特性を有することができる6-4
Tiおよび9-1-1 Tiを含む他の鋳造チタン合金よりも著しく優れ得る。いくつかの実施形態では、Ti-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Feは、約1180MPa~約1460MPaの引張強度、約1150MPa~約1415MPaの降伏強度、約8%~約12%の伸び、約110GPaの弾性率、約4.45g/cm3の密度、およびロックウェルCスケールで約43の硬度(43HRC)を有することができる。特定の実施形態では、Ti-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Fe合金は、約1320MPaの引張強度、約1284MPaの降伏強度、および約10%の伸びを有することができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、打撃フェース、および/またはフェース部を有するカップは、Ti-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Feから鋳造することができる。いくつかの実施形態では、打撃フェースおよびクラブヘッド本体は、所望の特定の特性に応じて、Ti-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Feから一体的に形成または鋳造することができる。
【0173】
上記のTi-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Feの機械的パラメータは、他の既存のチタン合金と比較して驚くほど優れた性能を提供することができる。例えば、Ti-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Feの比較的高い引張強度により、この合金を含む鋳造打撃フェースは、ゴルフボールを打つとき、他の合金と比較して単位厚さあたりのたわみが少ないことを示すことができる。これは、Ti-8Al-2.5Mo-2Cr-1V-0.5Feの高い引張強度が打撃フェースのより少ないたわみをもたらし、繰り返し使用で平坦化する打撃フェースの傾向を減少させるため、ボールを高速で打つように構成されたメタルウッドタイプのクラブに特に有益であり得る。これにより、打撃フェースは、特に高いクラブ速度でボールを打つ傾向がある上級および/またはプロのゴルファーによるものを含め、長期間の使用にわたってその元のバルジ、ロール、および「ねじれ」寸法を保持することができる。
【0174】
本明細書に開示される実施形態のいずれかは、打撃面の上部トウ部が打撃面の下部トウ部よりも開放され、かつ打撃面の下部ヒール部が打撃面の上部ヒール部よりも閉鎖されるように、ねじれた打撃面を有するフェース部を含むことができる。ねじられた打撃面を有するゴルフクラブヘッドに関する詳細情報は、米国特許第9,814,944号、2018年6月19日に出願された米国特許仮出願第62/687,143号、2018年10月15日に出願された米国特許出願第16/160,884号に見出すことができ、これらのすべてはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの組み込まれた参考文献に開示されたこれらのねじれたフェース技術のいずれも、本明細書に開示の技術と任意に組み合わせて、本明細書に開示のクラブヘッドに実装することができる。
【0175】
本明細書に開示の技術は、ドライバー、フェアウェイ、レスキュー、ハイブリッド、ユーティリティクラブ、アイアン、ウェッジ、およびパターを含む、開示された例だけでなく、あらゆるタイプのゴルフクラブヘッドに対して実装することができる。
【0176】
この説明のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規の特徴を本明細書で説明する。開示された方法、装置、およびシステムは、いかなる意味でも限定的であると解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、互いに様々な組み合わせおよび部分的組み合わせで、様々な開示された実施形態のすべての新規かつ非自明な特徴および態様を対象とする。方法、装置、およびシステムは、いずれかの特定の態様もしくは特徴またはこれらの組み合わせに限定されず、開示された実施形態は、いずれか1つ以上の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを必要としない。
【0177】
開示された実施形態のいくつかの動作は、便利な提示のために特定の連続的な順序で説明されているが、本明細書に記載された特定の言語によって特定の順序付けが要求されない限り、この説明の方法は再配置を包含することを理解されたい。例えば、連続して説明された操作は、場合によっては再配置されるか、または同時に実行され得る。さらに、話を簡単にするために、添付の図は、開示された方法を他の方法と組み合わせて使用することができる様々な方法を示していない場合がある。
【0178】
本出願および特許請求の範囲で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数形を含む。また、「含む(includes)」という用語は、「含む(comprises)」を意味する。さらに、「結合された」および「関連する」という用語は一般に、電気的、電磁的、および/または物理的に(例えば、機械的または化学的に)結合または連結を意味し、特定の反対語がない結合または関連する項目間の中間要素の存在を排除しない。
【0179】
いくつかの例では、値、手順、または装置は、「最低」、「最良」、「最小」などと呼ばれる場合がある。このような説明は、多くの選択肢の中から選択を行うことができ、このような選択は、他の選択よりも優れていなくてもよく、小さくなくてもよく、他の選択よりも好ましいものでなくてもよいことを示すことを意図していることが理解されよう。
【0180】
本明細書では、「上」、「下」、「上部」、「下部」、「水平」、「垂直」、「左」、「右」などの特定の用語を使用することができる。これらの用語は、該当する場合、相対的な関係を扱うときに説明をいくらか明確にするために使用される。しかし、これらの用語は、絶対的な関係、位置、および/または配向を意味するものではない。例えば、物体に関して、物体を回転させるだけで「上部」表面を「下部」表面にすることができる。それでも、その物体は依然として同じ物体である。
【0181】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は好ましい例に過ぎず、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識されたい。記載された本開示のより広い精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正をそれに対してなされる得ることは明らかであろう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で見なされるべきである。したがって、本開示の範囲は、少なくとも以下の特許請求の範囲と同程度に広い。したがって、我々はこれらの特許請求の範囲内にあるすべてを請求する。
【符号の説明】
【0182】
2 ゴルフクラブヘッド
3 シャフト
4 ゴルフクラブヘッド
5a 中央フェース、幾何学的中心点
5b ヒール
5c トウ
5d クラウン
5e ソール
6 クラブフェース
8 バルジ
9 ロール
10 本体
11 スコアライン
12 クラウン
14 ソール
16 スカート
18 フェースプレート
20 ホーゼル
22 打撃面、外面
23 衝撃位置
24 ホーゼルボア
26 ヒール部
28 トウ部
30 前部
32 後部
40 内面
42 中央部
44 発散部
46 収束部
48 移行部
50 重心(CG)
60 原点
65 原点z軸
70 原点x軸
75 原点y軸
85 CGz軸
90 CGx軸
95 CGy軸
150 初期パターン
152 メインゲート
154 アシスタントゲート
156 フローチャネル
160 クラスタ
162 グラファイト受容体
164 グラファイトクロススポーク
166 ランナー
168 鋳型キャビティ
170 るつぼ
172 注入カップ
180 クラスタ
184 シェルランナー
182 受容体
186、188 鋳型キャビティ
200 ゴルフクラブヘッド
202 クラブヘッド本体
204 ヘッド-シャフト連結アセンブリ
206 クラウンインサート
207 前方突出部
208 ソールインサート
209 ノッチ
210 前部ウェイトアセンブリ
212 後部ウェイトアセンブリ
214 前部ウェイトトラック
216 後部ウェイトトラック
224 後部着座パッド(接地面)
225 張り出しリップ
226 前部着座パッド(接地面)
228 張り出しリップ
230 トウ部
232 トウ側片持ち梁状レッジ
234 ヒール側片持ち梁状レッジ
236 リブ
238 厚い領域
240 トウ側開口部
242 ヒール側開口部
244 後部トラック開口部
250 レッジ
252 クラウン領域
260 レッジ
262、263、265、267 リブ
270 フェース
280、286 内側凹部
282、294 凹部
284、288 周辺レール
290、292 周辺レール
296、298 内側凹部
400 クラブヘッド
402 カップ
404 リング
406 クラウンインサート
408 ソールインサート
410 ヘッド-シャフト連結アセンブリ
412 ホーゼル
418 ソールスロット
420 接合部
426 クラウンレッジ
428 ソールレッジ
430 突出部
431 後部ウェイトポート
432 質量パッド
433 ウェイトポート
434 一体的フェース
438 ソール部
450 スリーブ
452 フェルール
454 ホーゼルインサート
456 締結具
458 ワッシャ
500 ワックスカップ
502 ワックスカップフレーム
504 ワックスフェース
506 環状接合部
508 ワックスプロング
510 ワックスカップ
520 追加の突起
600 鋳造カップ
602 フェースの中心
603 内側ブレンド区域
604 最大厚リング
606 可変ブレンド区域
608 第2のリング
609 外側ブレンド区域
610 ヒールおよびトウ区域
612 半径方向周囲区域
700 鋳造フェース部
702 フェースの中心
703 内側ブレンド区域
704 最大厚リング
705 可変ブレンド区域
706 外側区域
708 外側ブレンド区域
710 周囲リング
800 鋳造フェース部
802 フェースの中心
803 内側ブレンド区域
804 内側リング
805 第2のブレンド区域
806 第2のリング
808 第3のリング
810 第4のブレンド区域
811 第4のリング
812 トウ端部区域
813 外側ブレンド区域
814 外側周辺部、周囲リング
820 厚化区域
822 オフセット区域
823、825 リング
824、826 ブレンド区域
900 鋳造フェースプレート
902 前部
904 後部
B ゴルフボール
X X軸
Y Y軸
Z Z軸
【外国語明細書】