IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスシーエム ライフサイエンス カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2024-40280クローナル幹細胞を含むアトピー皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040280
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】クローナル幹細胞を含むアトピー皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20240315BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20240315BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K8/98
A61Q19/00
A61P43/00 111
A61P17/04
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024016541
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2021540268の分割
【原出願日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】62/793,022
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517278646
【氏名又は名称】エスシーエム ライフサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ソンウク
(72)【発明者】
【氏名】キム、シナ
(72)【発明者】
【氏名】ムン、チョンヒョン
(57)【要約】
【課題】本発明は、改善された幹細胞の層分離培養により収得される単一クローナル幹細胞を含むアトピー性皮膚炎の予防、治療または改善用組成物、およびその製造方法、それを用いたアトピー性皮膚炎の治療方法に関する。
【解決手段】本発明の改善された幹細胞の層分離培養および増殖方法によれば、単一クローナル幹細胞の速い増殖を通して短時間で所望の単一クローナル幹細胞の大量収得が可能であり、これにより取得される単一クローナル幹細胞はアトピー性皮膚炎の治療効果が向上した幹細胞なので、アトピー性皮膚炎の治療剤として有用に用いられ得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;
2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;
3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;
4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および
5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られる単一クローナル幹細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記5)ステップの培養は、1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して遂行されることを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記5)ステップの培養は、継代2~継代8で培養する、請求項1に記載のアトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記5)ステップの培地は、抗酸化剤が加えられた培地であることを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記単一クローナル幹細胞は、アトピー性皮膚炎が誘発された真皮または表皮の肥厚を緩和させることを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記単一クローナル幹細胞は、IgE、IgG1およびIL-4からなる群から選択された1種以上の生産を抑制するか、またはINF-γの生成を促進させることを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記単一クローナル幹細胞は、肥満細胞を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;
2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;
3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;
4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および
5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られる単一クローナル幹細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防または改善用化粧料組成物。
【請求項9】
1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;
2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;
3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;
4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および
5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られる単一クローナル幹細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防または改善用医薬部外品組成物。
【請求項10】
1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;
2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;
3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;
4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および
5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップにより単一クローナル幹細胞を収得するステップ;を含む、アトピー性皮膚炎の予防、改善または治療用組成物の製造方法。
【請求項11】
前記5)ステップの培養は、1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して遂行されることを特徴とする、請求項10に記載のアトピー性皮膚炎の予防または治療用組成物の製造方法。
【請求項12】
前記5)ステップの培養は、継代2~継代8で培養する、請求項10に記載のアトピー性皮膚炎の予防または治療用組成物の製造方法。
【請求項13】
前記5)ステップの培地は、抗酸化剤が加えられた培地であることを特徴とする、請求項10に記載のアトピー性皮膚炎の予防または治療用組成物の製造方法。
【請求項14】
1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;
2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;
3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;
4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および
5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られるアトピー性皮膚炎の予防、改善または治療用幹細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された幹細胞の層分離培養により得られる単一クローナル幹細胞を含むアトピー性皮膚炎の予防、治療または改善用組成物、およびその製造方法、それを用いたアトピー性皮膚炎の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性湿疹としても知られているアトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis、AD)は非常に一般的な炎症性皮膚疾患であり、急性アトピー性皮膚炎の発症機序は、CD4+T細胞および好酸球の皮膚浸透、免疫グロブリンE(IgE)およびTh2サイトカインの分泌増加を媒介とするTh2炎症反応と関連するという報告がある。アトピー性皮膚炎は、激しいかゆみや皮膚乾燥症などの症状を伴い、アトピーは血液中で高いIgE発現量を示し、好酸球の増加のような特徴を有する。最近アトピー性皮膚炎は、全人口の約10~20%で発症していると推定されているが、完治させることができる明確な治療法がないのが実情であり、特に5歳以下の幼い年齢でほとんど診断され、このうち50%は6ヶ月から24ヶ月の間に診断される。大韓小児アレルギー呼吸器学会で実施した全国疫学調査で、最近10年間アトピー性皮膚炎の有病率が徐々に増加しており、これに対する社会的関心が高まっている。アトピー性皮膚炎患児の50~75%で喘息、鼻炎に進行するアレルギー性疾患の経過を示すために、アレルギーへの進行の開始点であるアトピー性皮膚炎を早期に診断して管理することが、成人アレルギー進行への予防に非常に重要である。
【0003】
アトピー性皮膚炎は、Tリンパ球の活性化、サイトカイン体系の異常、細胞媒介性免疫の減少、IgEの増加のような免疫学的異常と生理学的要因、そして皮膚の生化学的欠陥のような多くの要素に起因する。このようなアトピー性皮膚炎を治療するためには、乾燥した皮膚の保湿をはじめ、代表的にステロイドのような薬物を用いた治療が必要である。アトピー性皮膚炎の治療剤として、症状が軽い場合には、保湿剤局所ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、抗生剤および局所免疫反応調節剤などを使用する。重度のアトピー性皮膚炎である場合には、全身ステロイド剤や免疫抑制剤を使用することになるが、長期間使用した場合の副作用があり、薬の服用を中止すると、病変の再発の可能性が高いので、長期的に使用しても安全で効果的な治療法が求められる。
【0004】
最近、様々な炎症性疾患の治療に幹細胞を利用しようとする試みが進められている。幹細胞は、我々の体の210個余りの全ての器官の組織に成長できる潜在的能力を有しており、無限に分裂でき、適切な操作を通して所望の臓器に分化できる。このような幹細胞の特性のため、幹細胞は新たな治療剤として脚光を浴びており、幹細胞を用いた難病の治療可能性は非常に高く、白血病、骨粗鬆症、肝炎、パーキンソン病、老人性認知症、やけど等、数多くの疾病治療が可能であるものと期待されている。
【0005】
しかし、幹細胞の場合、それを大量に収得することが難しいという点で依然として多くの制約事項がある。幹細胞を収得する方法として、冷凍胚芽細胞から得る方法が効率的であるといえるが、倫理的な面で未だ多くの論争がある。このような問題点を解消するために、体細胞核移植方法や成体幹細胞を利用して幹細胞を収得する方法もまた多くの研究が進められている。胚芽幹細胞に関する研究より盛んに行われる分野は、成体幹細胞の研究である。成体幹細胞は、中枢神経系や骨髄等、各種の臓器に残って成長期の臓器発達と損傷時の再生に関与する細胞であって各種の臓器に存在するため、骨髄、脾臓、脂肪細胞等を含む様々な部位から得ることができるが、骨髄から得る方法が最もよく施行される。しかし、多くの様々な種類の骨髄細胞の中で中間葉幹細胞を分離、培養するにあたって常に均一な形態の細胞を得るには困難があり、このような問題点を補完するための研究が行われている。
【0006】
本発明者は、新たに層分離培養法と命名された幹細胞の分離方法を発明しており、大韓民国特許出願KR10-2006-0075676号を通して特許出願し、その登録を受けた。前記層分離培養法は、他の方法に比べて少ないコストで遂行できるだけでなく、汚染の問題がなく、他の幹細胞が混ざる恐れなしにクローナル中間葉幹細胞(cMSC)を効果的に得ることができるという点において他の幹細胞収得方法に比べて卓越した優秀性を有している。しかし、前記の方法の優秀性にもかかわらず、層分離培養法は、中間葉幹細胞を大量生産して、最終産物として使用するためには、ワーキングセルバンクを製造し、これにより最終産物を得る工程を経てこそ、十分な量の中間葉幹細胞を収得することができ、少なくとも10継代(Passage)以上の培養が必要であるという点で、迅速な単一クローナル中間葉幹細胞集団の収得が難しい限界があった。
【0007】
したがって、炎症性疾患、特にアトピー性皮膚炎を治療するために幹細胞を利用することは、まだ様々な限界を持っており、効果的にアトピー性皮膚炎を治療するための幹細胞の製造法およびそれを用いたアトピー性皮膚炎の治療方法については、まだ知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、前記のような層分離培養法の改善により幹細胞の速い増殖を誘導するための研究をしていたところ、培養細胞密度を低く調節し、抗酸化剤を添加して培養する改善された層分離培養法を用いる場合、少ない継代培養のみで効果的な細胞増殖率の増加を誘導することができ、これにより、得られる単一クローナル幹細胞が従来の層分離培養方法の幹細胞に比べて非常に顕著なアトピー性皮膚炎の治療効果を示すことを確認し、本発明を完成した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、従来の層分離培養法を改善した幹細胞の層分離培養および増殖方法で得られる単一クローナル幹細胞を含むアトピー性皮膚炎の予防、治療および改善用組成物並びにその製造方法、それを用いるアトピー性皮膚炎の予防、治療および改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られる単一クローナル幹細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られる単一クローナル幹細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防または改善用化粧料組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られる単一クローナル幹細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防または改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップにより単一クローナル幹細胞を収得するステップ;を含む、アトピー性皮膚炎の予防、改善または治療用組成物の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップにより単一クローナル幹細胞を収得するステップ;および6)前記単一クローナル幹細胞を個体に投与するステップ;を含む、アトピー性皮膚炎の予防、改善または治療方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られるアトピー性皮膚炎の予防、改善または治療用幹細胞を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の幹細胞の層分離培養および増殖方法によれば、単一クローナル幹細胞の速い増殖により短時間に所望の単一クローナル幹細胞の大量収得が可能であり、これにより、収得される単一クローナル幹細胞はアトピー性皮膚炎の治療効果が向上された幹細胞であるところ、アトピー性皮膚炎の治療剤として有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】骨髄から単一クローナル中間葉幹細胞を分離する従来の層分離培養法を示した図である。
図2】細胞培養密度および細胞継代培養 による単一クローナル中間葉幹細胞の形態学的変化を顕微鏡観察を通して確認した結果を示した図である。
図3】細胞培養密度および細胞継代培養による単一クローナル中間葉幹細胞の細胞の大きさおよび粒度(granularity)の変化をフローサイトメトリー(Flow cytometry;FACS)分析を通して前方散乱(forward scatter;FSC)(A)および側方散乱(side scatter;SSC)(B)光の平均値で確認した結果を示した図である(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005)。
図4】細胞培養密度および細胞継代培養を異にした単一クローナル中間葉幹細胞をβガラクトシダーゼ(βgal)の活性度を染色を通して細胞が老化したか否かを確認した結果を示した図である。
図5】継代15(Passage 15;P15)の単一クローナル中間葉幹細胞を細胞培養密度を異にして培養した後、老化関連遺伝子であるp15、p16および増殖マーカーであるPCNAをRT-PCRで確認した結果を示した図である。
図6】細胞培養密度および細胞継代培養による単一クローナル中間葉幹細胞の増殖能を細胞群倍化時間(Population doubling time;PDT)および細胞数増殖レベル(Population doubling level;PDL)を通して確認した結果を示した図である(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005)。
図7】細胞培養密度および細胞継代培養による単一クローナル中間葉幹細胞の分化能を確認した結果を示した図である(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005)。図7のAは、細胞培養および細胞継代培養による単一クローナル中間葉幹細胞の脂肪細胞への分化能をOil red O組織学的染色を通して確認した結果であり、図7のBは、Aの組織学的染色程度を定量化して示した図である。図7のCは、細胞培養および細胞継代培養による単一クローナル中間葉幹細胞の骨化細胞への分化能をAlizarin red S組織学的染色を通して確認した結果である。図7のDは、Cの組織学的染色程度を定量化して示した図である。
図8A】細胞培養密度および細胞継代培養によって単一クローナル中間葉幹細胞で生産される総活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)生産した結果を示した図である(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005)。
図8B】細胞培養密度および細胞継代培養による総ROS生産によるDNA損傷をcomet assayを通して確認した結果を示した図である(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005)。
図9】細胞培養密度および細胞継代培養によって生産される活性酸素種によるDNA損傷程度を確認するために8-オキソ-デオキシグアノシン(8-hydroxy-2’-deoxyguanosine;8-OHdG)の濃度を測定した結果を示した図である(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005)。
図10】継代11(P11)~15(P15)の単一クローナル中間葉幹細胞を高密度条件単独(HD)または高密度条件+アスコルビン酸(抗酸化剤の一種)追加(HD+AA)を通して培養した後、細胞増殖能の変化を確認した結果を示した図である。
図11】継代15(P15)の単一クローナル中間葉幹細胞を高密度条件単独(HD)または高密度条件+アスコルビン酸追加(HD+AA)で培養した後、生産される活性酸素種水準を比較した結果を示した図である(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005)。
図12a】従来の層分離培養法および改善された層分離培養法実験方法を比較して示した図である。
図12b】改善された層分離培養法の模式図であり、従来の層分離培養法と相違する継代2以降に該当する低密度培養を示した図である。
図13】層分離培養法を通して収得されたSCM01単一クローナル中間葉幹細胞を1000または4000細胞/cm(cells/cm)の密度で接種し、抗酸化剤添加有無を異にしたLG-DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium, low glucose)、α-MEM(Minimum Essential Medium α)培養培地を利用して培養した細胞の増殖率を確認した結果を示した図であって、図のAは、各実験群の継代1(P1)~継代5(P5)による細胞数の変化を、図のBは、各実験群の細胞群倍化時間(PDT)および細胞数増殖レベル(PDL)結果を示した図である。
図14】層分離培養法を通して収得されたSCM02単一クローナル中間葉幹細胞を1000または4000細胞/cm(cells/cm)の密度で接種し、抗酸化剤添加有無を異にしたLG-DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium, low glucose)、α-MEM(Minimum Essential Medium α)培養培地を利用して培養した細胞の増殖率を確認した結果を示した図であって、図のAは、各実験群の継代1(P1)~継代5(P5)による細胞数の変化を、図のBは、各実験群の細胞群倍化時間(PDT)および細胞数増殖レベル(PDL)結果を示した図である。
図15】層分離培養法を通して収得されたSCM03単一クローナル中間葉幹細胞を1000または4000細胞/cm(cells/cm)の密度で接種し、抗酸化剤添加有無を異にしたLG-DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium, low glucose)、α-MEM(Minimum Essential Medium α)培養培地を利用して培養した細胞の増殖率を確認した結果を示した図であって、図のAは、各実験群の継代1(P1)~継代5(P5)による細胞数の変化を、図のBは、各実験群の細胞群倍化時間(PDT)および細胞数増殖レベル(PDL)結果を示した図である。
図16】層分離培養法を通して収得されたSCM04単一クローナル中間葉幹細胞を1000または4000細胞/cm(cells/cm)の密度で接種し、抗酸化剤添加有無を異にしたLG-DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium, low glucose)、α-MEM(Minimum Essential Medium α)培養培地を利用して培養した細胞の増殖率を確認した結果を示した図であって、図のAは、各実験群の継代1(P1)~継代5(P5)による細胞数の変化を、図のBは、各実験群の細胞群倍化時間(PDT)および細胞数増殖レベル(PDL)結果を示した図である。
図17】層分離培養法を通して収得されたSCM05単一クローナル中間葉幹細胞を1000または4000細胞/cm(cells/cm)の密度で接種し、抗酸化剤添加有無を異にしたLG-DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium, low glucose)、α-MEM(Minimum Essential Medium α)培養培地を利用して培養した細胞の増殖率を確認した結果を示した図であって、図のAは、各実験群の継代1(P1)~継代5(P5)による細胞数の変化を、図のBは、各実験群の細胞群倍化時間(PDT)および細胞数増殖レベル(PDL)結果を示した図である。
図18】層分離培養法を通して収得されたSCM06単一クローナル中間葉幹細胞を1000または4000細胞/cm(cells/cm)の密度で接種し、抗酸化剤添加有無を異にしたLG-DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium, low glucose)、α-MEM(Minimum Essential Medium α)培養培地を利用して培養した細胞の増殖率を確認した結果を示した図であって、図のAは、各実験群の継代1(P1)~継代5(P5)による細胞数の変化を、図のBは、各実験群の 細胞群倍化時間(PDT)および細胞数増殖レベル(PDL)結果を示した図である。
図19】層分離培養法を通して収得されたSCM07単一クローナル中間葉幹細胞を1000または4000細胞/cm(cells/cm)の密度で接種し、抗酸化剤添加有無を異にしたLG-DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium, low glucose)、α-MEM(Minimum Essential Medium α)培養培地を利用して培養した細胞の増殖率を確認した結果を示した図であって、図のAは、各実験群の継代1(P1)~継代5(P5)による細胞数の変化を、図のBは、各実験群の細胞群倍化時間(PDT)および細胞数増殖レベル(PDL)結果を示した図である。
図20】層分離培養法を通して収得されたSCM08単一クローナル中間葉幹細胞を1000または4000細胞/cm(cells/cm)の密度で接種し、抗酸化剤添加有無を異にしたLG-DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium, low glucose)、α-MEM(Minimum Essential Medium α)培養培地を利用して培養した細胞の増殖率を確認した結果を示した図であって、図のAは、各実験群の継代1(P1)~継代5(P5)による細胞数の変化を、図のBは、各実験群の細胞群倍化時間(PDT)および細胞数増殖レベル(PDL)結果を示した図である。
図21】抗酸化剤が添加されていないLG-DMEM培地を利用し、1000または4000細胞/cmの密度で細胞密度だけを異にした実験群での細胞増殖率を確認した結果を示した図である。
図22】抗酸化剤が添加されていないLG-DMEM培地を利用し、1000または4000細胞/cmの密度で細胞密度だけを異にした実験群での細胞群倍化時間(PDT)および細胞数増殖レベル(PDL)を確認した結果を示した図である。
図23】抗酸化剤が添加されたα-MEM培地を利用し、1000または4000細胞/cmの密度で細胞密度だけを異にした実験群での細胞増殖率を確認した結果を示した図である。
図24】抗酸化剤が添加されたα-MEM培地を利用し、1000または4000細胞/cmの密度で細胞密度だけを異にした実験群でのPDTおよびPDLを確認した結果を示した図である。
図25】細胞密度を1000細胞/cmの密度に固定し、培養培地をLG-DMEMまたはα-MEMで異にした実験群での細胞増殖率を確認した結果を示した図である。
図26】細胞密度を1000細胞/cmの密度に固定し、培養培地をLG-DMEMまたはα-MEMで異にした実験群でのPDTおよびPDLを確認した結果を示した図である。
図27】アトピー性皮膚炎の動物モデルで、対照群(Cell Vehicle、veh)、GCM-MSC、SCM-cMSC投与による皮膚病変の変化を確認した結果を示した図である。
図28】アトピー性皮膚炎の動物モデルで、対照群(Cell Vehicle、veh)、GCM-MSC、SCM-cMSC投与による皮膚病変の変化を、H&Eおよびトルイジンブルー染色により確認した結果を示した図である。
図29】アトピー性皮膚炎の動物モデルで、対照群(Cell Vehicle、veh)、GCM-MSC、SCM-cMSC処理による表皮の厚さの変化を確認した結果を示した図である(*P=0.0152、**P=0.0016)
図30】アトピー性皮膚炎の動物モデルで、対照群(Cell Vehicle、veh)、GCM-MSC、SCM-cMSC処理による真皮の厚さの変化を確認した結果を示した図である(***P=0.0003)。
図31】対照群(Cell Vehicle、veh)、GCM-MSC、SCM-cMSC処理によるIgE、IgG1生産量の変化を確認した結果を示した図である(IgE-P**=0.009、IgG1-P*=0.0432)。
図32】対照群(Cell Vehicle、veh)、GCM-MSC、SCM-cMSC処理によるIgG2aの生産量の変化を確認した結果を示した図である(P****<0.0001)。
図33】対照群(Cell Vehicle、veh)、GCM-MSC、SCM-cMSC処理による腋窩リンパ節におけるIL-4、IFN-γの生産量の変化を確認した結果を示した図である(***P=0.0008、P*=0.0338)。
図34】対照群(Cell Vehicle、veh)、GCM-MSC、SCM-cMSC処理による肥満細胞数の変化を確認した結果を示した図である(P**=0.0026、0.0036)。
図35】アトピー性皮膚炎の動物モデルで、対照群(Cell Vehicle、veh)、cMSC1(100、1000細胞/cm)、cMSC2(4000細胞/cm)投与による体重の変化を確認した結果を示した図である。
図36】アトピー性皮膚炎の動物モデルでcMSC1(100、1000細胞/cm)、cMSC2(4000細胞/cm)投与による細胞生存率の変化を確認した結果を示した図である。
図37】アトピー性皮膚炎の動物モデルで、正常対照群(naive)、対照群(Cell Vehicle、veh)、cMSC1(100、1000細胞/cm)、cMSC2(4000細胞/cm)投与による総IgE生産量の変化をELISA分析により確認した結果を示した図である(1way ANOVA-Tukey's multiple comparisons test ****P<0.0001 ***P=0.0001 P=0.0238 compared to Veh.Unpaired t test- P=0.0336 compared to 100細胞/cm group)。
図38】アトピー性皮膚炎の動物モデルで、正常対照群(-)、対照群(PBS、veh)、cMSC1(100、1000細胞/cm)、cMSC2(4000細胞/cm)塗布による皮膚病変の変化を確認した結果を示した図である。
図39】アトピー性皮膚炎の動物モデルで、正常対照群(-)、対照群(PBS、veh)、cMSC1(100、1000細胞/cm)、cMSC2(4000細胞/cm)塗布による表皮肥厚緩和効果を確認した結果を示した図である。
【発明の具体的説明】
【0018】
本発明は、中間葉幹細胞の改善された層分離培養および増殖方法により得られる単一クローナル幹細胞を含むアトピー予防または治療用薬学的組成物または前記単一クローナル幹細胞を、これを必要とする個体に投与するステップ;を含むアトピー性皮膚炎の予防または治療方法に関するものである。
【0019】
また、本発明は、中間葉幹細胞の改善された層分離培養および増殖方法により単一クローナル幹細胞を得るステップ;を含むアトピー性皮膚炎の予防、改善または治療用組成物の製造方法に関するものである。
【0020】
本発明の有効成分である、単一クローナル幹細胞は、幹細胞を迅速にかつ汚染することなく得ることができる層分離培養法の利点に加えて、単一クローナル幹細胞、好ましくは、単一クローナル中間葉幹細胞の迅速な増殖を通してWCB(Working Cell Bank)の製造段階がなくても、短時間に所望の単一クローナル幹細胞を大量に得ることができる改善された層分離培養方法により得られる幹細胞である。前記方法で得られる単一クローナル幹細胞は、従来の層分離培養方法で得られる幹細胞と比較してアトピー性皮膚炎の治療効果が向上された幹細胞であることを特徴とする。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られる単一クローナル幹細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0023】
前記2)および3)ステップの培養は、30~40℃で4時間以下、好ましくは1時間~3時間、より好ましくは1時間30分~2時間30分培養し、繰り返し培養は30~40℃で4時間以下、好ましくは1時間~3時間、より好ましくは1時間30分~2時間30分培養した後、30~40℃で12~36時間、好ましくは18時間~30時間培養を2~3回繰り返し、続いて30~40℃で24~72時間、36時間~60時間、好ましくは36時間~60時間で培養し、毎回上層液を新たな培養容器に移動させて行うことができる。
【0024】
本発明の実施例で分離した方法を簡単に要約すると、次の通りである。
【0025】
【表1】
【0026】
培養した細胞は、単一クローナル細胞群を形成するが、この単一クローナル細胞群を分離した後、継代培養を行うことができ、本発明は、従来の層分離培養方法に加えて、5)ステップの継代培養ステップを含むことを特徴とする。
【0027】
本発明において「層分離培養(Subfractionation Culturing Method,SCM)」は、幹細胞を比重によって分離する方法を意味し、先ず、ヒト骨髄を抽出して細胞培養液に培養した後、上層液だけを収得して、それをコーティング剤が処理されたか、または処理されていない培養容器に移して培養した後、同一の過程を数回繰り返す工程をいう。このような層分離培養は、遠心分離過程なしに上層液を反復的に収得して培養する工程を繰り返すことを特徴とし、最終的に他の細胞の汚染なしに単一クローナル幹細胞、好ましくは単一クローナル中間葉幹細胞を収得できる長所がある。
【0028】
本発明の前記1)~5)のステップのうち、1)~4)ステップは、KR10-2006-0075676号またはKR10-2014-0170045号に記載された層分離培養方法と同一または同等に実行されてもよく、KR10-2006-0075676号は、本発明に全体として参照されうる。
【0029】
また、従来KR10-2014-0170045号では、アトピー性皮膚炎の治療に関連して、細胞を得る方法として、(i)骨髄由来の中間葉幹細胞を含むサンプルを、第1容器に培養し、上層液を収得するステップ;(ii)第1容器の上層液を第2容器に移すステップ;(iii)前記第2容器に存在する細胞を培養して上層液を取得するステップ;(iv)(ii)および(iii)のステップを3回以上繰り返すステップ;(v)単一細胞由来のコロニーを分離するステップ;および(vi)前記コロニーから成長培地に細胞を移し、細胞を培養するステップ;を含む層分離培養法を通して得たクローナル幹細胞を収得し、これを利用したアトピー性皮膚炎の予防または治療方法を開示しており、これは遠心分離せずに密度差だけで、単一クローナル幹細胞を収得する方法であるという点で、KR10-2006-0075676号の従来の層分離培養方法を用いる。
【0030】
しかし、前記KR10-2006-0075676号およびKR10-2014-0170045号の層分離培養方法は、単一クローナル幹細胞を、低継代で効果的に得て、これにより、アトピー性皮膚炎の治療効果が顕著に改善された単一クローナル幹細胞を得るための方法を開示していない。
【0031】
従来の層分離培養方法は、図1で確認されるように、単一のコロニーから得られたすべての細胞を6ウェルに移動させて80-90%コンフルエンシー(confluency)に増殖させた後、増殖された状態の継代1(P1)細胞をseed cellにして密度調節に対する認識なしに多くの細胞を収得するために4000細胞/cm(cells/cm)で高密度培養を行う。
【0032】
一方、本発明は、継代2以降の培養で細胞密度を調節することにより、アトピー性皮膚炎の予防、治療、改善効果が優れた幹細胞を効率的に得られることを基礎とした「改善された層分離培養方法」に関するものであり、従来の層分離培養方法とseed cell以降の培養ステップを異にすることを特徴とする。例えば具体的には「5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ」を含む。改善された層分離培養方法は、従来の層分離培養方法に比べて、迅速な単一クローナル幹細胞の増殖を誘導することができるので、最終の産物を迅速に得ることができ、好ましくは、P2~P8のような継代10未満の培養だけでもMCB(Master Cell Bank)を製造し、優れたアトピー性皮膚炎の予防または治療効果を示す単一クローナル幹細胞を得ることができる。
【0033】
本発明の単一クローナル幹細胞は、従来の工程のように4000細胞/cmの高密度で培養される場合、細胞増殖能が顕著に減少し、中間葉幹細胞のマーカーが変化され、幹細胞の分化能が喪失されうる。したがって、改善された層分離培養法を通して得られた単一クローナル幹細胞は低密度ないし中間程度の密度、4000細胞/cm(cells/cm)未満の低い細胞密度、例えば3000細胞/cm以下、好ましくは2000細胞/cm以下、さらに好ましくは50~1000細胞/cm(cells/cm)細胞密度で培養されたことを意味する。
【0034】
1000細胞/cm(cells/cm)以下の細胞密度で単一クローナル中間葉幹細胞を培養する場合、細胞の増殖能は、4000細胞/cmのように高密度で培養された中間葉幹細胞と比較して長期間の培養期間中、顕著に高く維持されるので、多くの継代を繰り返さなくても所望の量の大量単一クローナル細胞を速く収得できる長所がある。したがって、本発明の改善された層分離培養法は、seed cell以降の継代培養段階を継代10未満、好ましくは継代8以下でのみ行うことを特徴とすることができ、従来の層分離培養法が十分な数の細胞を確保するために最大25継代まで培養しなければならなかったのに比べて、少ない継代培養だけでも単一クローナル中間葉幹細胞の大量生産が可能な利点がある。
【0035】
また、前記細胞密度で単一クローナル中間葉幹細胞を培養する場合、該当細胞は、DNA損傷が少なく、老化が抑制され、幹細胞の分化能を効果的に維持できる長所があって、早く迅速に優れた幹細胞特性を有する単一クローナル中間葉幹細胞を収得することができる。
【0036】
また、本発明の方法により取得される単一クローナル幹細胞は、4000細胞/cmのように高密度で培養された単一クローナル幹細胞に比べて優れたアトピー性皮膚炎の予防、改善または治療効果を示す。
【0037】
本発明に使用される培地は、抗酸化剤を含まない培地、前記培地に抗酸化剤が加えられた培地、または抗酸化剤を含む培地をいずれも含むことができる。
【0038】
抗酸化剤を含まない培地としては、これに制限されるものではないが、DMEM培地を使用することができ、必要に応じて前記培地に抗酸化剤をさらに加えて培養を遂行することができる。また、必要に応じて抗酸化剤が含まれたα-MEM培地を利用して培養を遂行することができる。
【0039】
本発明の抗酸化剤は、細胞培養に用いられ得る抗酸化剤を制限なく含むことができ、グルタチオン(Glutathione)、システイン(Cysteine)、システアミン(Cysteamine)、ユビキノール(Ubiquinol)、β-メルカプトエタノール(β-mercaptoethanol)およびアスコルビン酸(Ascorbic acid;AA)からなる群から選択された1種以上であってよい。抗酸化剤が培地に加えられる場合、前記抗酸化剤は、10~50、好ましくは10~30、さらに好ましくは25μg/mlの濃度で加えられ得る。
【0040】
本発明の一例においては、抗酸化剤を含まない培地として、DMEM、さらに好ましくはLG-DMEM培地を使用し、抗酸化剤としてアスコルビン酸を含む培地として、α-MEM培地を使用する。
【0041】
一方、本発明の方法によれば、単一クローナル幹細胞を非常に効果的に増殖できるので、MCBを利用してWCB(Working Cell Bank)を製造する工程が省略され得る。これは、既存の層分離培養法がMCB製造後、WCBを製造する工程を伴うべきことと比較して工程を単純化したものである。
【0042】
本発明の培養培地として抗酸化剤を含む培地を利用する場合、前記培養培地には、抗生剤としてゲンタマイシンが加えられ得る。
【0043】
本発明の方法を通して収得された中間葉幹細胞は、最終的に好ましくは、P2~P10未満の中間葉幹細胞であってもよく、より好ましくはP2~P8の中間葉幹細胞、さらに好ましくはP2~P6の中間葉幹細胞であってもよい。
【0044】
これは、最小P10~12の中間葉幹細胞が最終産物として収得される既存の工程に対比してさらに低い継代で得られる幹細胞であり、細胞接種密度調節を通して低い継代で速く増殖された中間葉幹細胞を容易に大量収得できることを示す。
【0045】
本発明において、前記のような改善された層分離培養法、好ましくは2000細胞/cm以下、さらに好ましくは1000細胞/cm以下の低密度および抗酸化条件の改善された層分離培養法の方法で得られた単一クローナル幹細胞(以下、「cMSC1」または「SCM-cMSC」と表記)は、従来の層分離培養法で得られる単一クローナル幹細胞(以下、「cMSC2」と表記)と比較して、細胞の大きさがより小さく、均質に形成され、アトピー性皮膚炎が誘発された皮膚の真皮または表皮の肥厚を緩和させ、IgE、IgG1およびIL-4からなる群から選択された1種以上の生成を抑制し、INF-γの生成を促進し、肥満細胞を抑制する効果に優れる。
【0046】
本発明において、「アトピー性皮膚炎」とは、胎熱を含んでもよく、皮膚乾燥症、およびかゆみを主症状とする皮膚のアレルギー疾患を制限せずに含んでもよい。
【0047】
本発明の方法を通して得られる単一クローナル幹細胞は、アトピー性皮膚炎が誘発された皮膚に表われる硬皮、真皮の肥厚および角質の症状を効果的に緩和することができ、特に、真皮または表皮の肥厚を緩和させることを特徴とすることができる。
【0048】
また、本発明の方法を通して得られる単一クローナル幹細胞は、アトピー性皮膚炎で誘発される各種の免疫、炎症因子を改善することができ、好ましくはIgE、IgG1およびIL-4からなる群から選択された1種以上の生産を抑制し、INF-γの生成を促進するものであってもよい。
【0049】
また、本発明の方法を通して得られる単一クローナル幹細胞は、アレルギー反応を誘発する細胞を抑制することができ、好ましくは、肥満細胞を抑制することを特徴とすることができる。
【0050】
本発明の方法を通して得られる単一クローナル幹細胞であるcMSC1またはSCM-cMSCは、従来の密度勾配遠心分離方法により得られる幹細胞(GCM-MSC)だけでなく、従来の層分離培養法によって得られるcMSC2と比較してもアトピー性皮膚炎に関連する組織学的、生理学的因子の改善効果に優れることを特徴とすることができる。
【0051】
本発明の薬学的組成物は、投与のために、前記有効成分に加えて、さらに薬学的に許容可能な担体を1種以上含んで製造することができる。本発明の薬学的組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、前記成分に加えて潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0052】
本発明の薬学的組成物の投与量は、前記薬学的組成物の製剤化方法、投与方式、投与時間および/または投与経路などにより多様化することができ、前記薬学的組成物の投与により達成しようとする反応の種類と程度、投与対象となる個体の種類、年齢、体重、一般的な健康状態、疾病の症状や程度、性別、食餌、排泄、当該個体への同時または移植にともに使用される薬剤その他の組成物の成分などをはじめとする複数の因子および医薬分野でよく知られている類似因子により多様化され、当該技術分野で通常の知識を有する者は、目的とする治療に効果的な投与量を容易に決定し、処方することができる。
【0053】
本発明の薬学的組成物の投与量は、例えば、1日に1mg/kg~1,000mg/kgであってもよいが、前記の投与量は、いかなる面であれ、本発明の範囲を限定するものではない。
【0054】
本発明の薬学的組成物の投与経路および投与方法は、それぞれ独立であってもよく、その方法において特に制限されず、目的とする当該部位に前記薬学的組成物が到達することができる限り、任意の投与経路および投与方法に従うことができる。
【0055】
前記薬学的組成物は、経口投与または非経口投与方法で投与することができる。前記非経口投与方法では、例えば、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、経皮投与または皮下投与などが含まれ、前記薬学的組成物を疾患部位に塗布したり噴霧、吸入する方法も利用することができるが、これに限定されない。
【0056】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップにより単一クローナル幹細胞を収得するステップ;および6)前記単一クローナル幹細胞を個体に投与するステップ;を含むアトピー性皮膚炎の予防または治療方法を提供する。
【0057】
本発明において、前記「個体」は、アトピー性皮膚炎の予防または治療が必要な個体を含み、哺乳類またはヒトを除く哺乳類であってもよい。
【0058】
本発明の単一クローナル幹細胞を個体に投与する場合には、当分野で公知のアトピー性皮膚炎の予防または治療薬と併用して投与することができ、許可または人体に無害であることが確認された当分野の公知された幹細胞治療剤賦形剤とともに製剤化された形態で投与することができる。
【0059】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られるアトピー性皮膚炎の予防、改善または治療用幹細胞を提供する。
【0060】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られる単一クローナル幹細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防または改善用化粧料組成物を提供する。
【0061】
前記化粧料組成物は、本発明の前記幹細胞に加えて、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤およびキレート剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、脂質小胞または化粧品に通常使用される任意の他の成分のような化粧品の分野で通常使用される補助剤をさらに含有することができる。
【0062】
前記化粧料組成物において、通常含有される化粧料組成物に、本発明の幹細胞は、0.01~15重量%、好ましくは1~10重量%の量で添加されてもよい。
【0063】
また、前記成分は、皮膚科学の分野で一般的に使用される量で導入することができる。アトピー性皮膚炎を治療するために、前記幹細胞またはその培養液を適当に希釈して、皮膚に直接塗布することもでき、本発明の皮膚疾患治療用薬学的組成物が患部に効果的に適用できるように軟膏剤として製造することができる。前記軟膏剤は、本発明のアトピー性皮膚炎の治療用薬学的組成物を無機物質と配合した後、これを脂溶性基剤でコーティングして製造する。前記無機物質は、抗菌性、消炎効果、表皮の再生効果などに優れた素材を使用することが好ましく、それらの具体的な例としては、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉄などがある。また、水溶性物質である本発明のアトピー性皮膚炎の治療用薬学的組成物を安全に含浸することができるセラミック担体をさらに使用することが望ましい。前記セラミック担体には、ゼオライト、タルク、石膏、牡蠣粉末およびこれらの混合物が使用されるのが好ましい。このようなセラミック担体は、水溶性成分の含浸性に優れ、皮膚に水溶性成分の供給を円滑にすることができる。
【0064】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップ;により得られる単一クローナル幹細胞を含む、アトピー性皮膚炎の予防または改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0065】
本発明において、用語、「医薬部外品」は、人や動物の疾病を治療、軽減、処置または予防の目的で使用される繊維、ゴム製品、またはこれに類するもの、人体に対する作用が弱いか、人体に直接作用せず、器具または機械でないものおよびこれに類するもの、感染予防のために殺菌、殺虫、およびこれらに類する用途に使用される製剤のいずれかに該当する物品であって、人や動物の疾病を診断、治療、軽減、処置または予防の目的で使用する物品のうち器具、機械または装置でないもの、および人や動物の構造と機能に薬理学的影響を与える目的で使用する物品のうち器具、機械または装置でないものを除く物品を意味し、皮膚外用剤および個人衛生用品も含む。
【0066】
本発明の組成物をアトピー性皮膚炎の予防または改善、治療を目的として医薬部外品に含ませる場合、前記組成物をそのまま含んで使用したり、他の医薬部外品の成分とともに使用することができ、通常の方法により適宜使用することができる。有効成分の混合量は、使用目的により適宜決定することができる。本発明の医薬部外品は、特にこれに限定されないが、例えばクリーム剤、ローション剤、エアゾール剤、シャンプー剤、ゲル剤またはパック剤の形態で製造されて使用することができる。クリーム剤・軟膏剤・シャンプー剤・ゲル剤またはパック剤の場合においては、白色ワセリン、黄色ワセリン、ラノリン、漂白蜜ロウ、セタノール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、硬化油、ゲル化炭化水素、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、スクアランなどの基剤;オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソオクタン酸グリセリン、クロタミトン、セバク酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、植物油などの溶剤および溶解補助剤;トコフェロール誘導体、L-アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤;パラヒドロキシ安息香酸エステルなどの防腐剤;グリセリン、プロピレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウムなどの保湿剤;ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどの界面活性剤;カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの増粘剤などがある。
【0067】
エアロゾル剤の場合においては、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、およびローション剤などの調製に使用される白色ワセリン、黄色ワセリン、ラノリン、漂白密ロウ、セタノール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、硬化油、ゲル化炭化水素、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、スクアランなどの基剤;オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバク酸イソプロピル、トリイソオクタン酸グリセリン、クロタミトン、セバク酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシル、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、植物油などの溶剤および溶解補助剤;トコフェロール誘導体、L-アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤;パラヒドロキシ安息香酸エステルなどの防腐剤;グリセリン、プロピレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウムなどの保湿剤;ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどの界面活性剤;カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの増粘剤;さらに、各種安定剤、緩衝剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、芳香剤、保存剤、溶解補助剤、その他の適当な添加剤を配合することができる。また、必要に応じて安定剤、保存剤、吸収促進剤、pH調整剤、その他の適当な添加剤を配合することができる。
【0068】
また、本発明は、1)個体から分離された骨髄を、第1容器で培養するステップ;2)前記第1容器の上層液のみを新たな容器に移動して培養するステップ;3)前記新たな容器に存在する細胞を培養して上層液を収得するステップ;4)前記3)ステップの上層液を2)ステップの第1容器の上層液とし、2)および3)ステップを1回以上繰り返して、単一クローナル幹細胞を得るステップ;および5)前記4)ステップの単一クローナル幹細胞を、50~1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して培養するステップにより単一クローナル幹細胞を収得するステップ;を含む、アトピー性皮膚炎の予防、改善または治療用組成物の製造方法を提供する。
【0069】
本発明によると、従来の層分離培養法で得られる単一クローナル幹細胞と比較して優れたアトピー性皮膚炎の予防、改善または治療効果を示す単一クローナル幹細胞をWCB製造せずに、迅速かつ容易に得ることができ、前記組成物は、薬学、食品、医薬部外品、および化粧料組成物を制限なく含むことができる。
【0070】
本発明の製造方法において、前記5)ステップの培養は、1000細胞/cm(cells/cm)の細胞密度で培地に接種して実行されることを特徴とすることができる。
【0071】
また、本発明の製造方法において、前記5)ステップの培地は、抗酸化剤が追加された培地であることを特徴とすることができる。
【0072】
本発明の治療方法および製造方法において、前記組成物で記述された内容が同一に適用されてもよく、重複する内容は、明細書の記載の複雑さを避けるために省略する。
【実施例0073】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0074】
下記実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0075】
実施例1 改善された層分離培養法の確立
アトピー性皮膚炎に優れた効果を示す単一クローナル中間葉幹細胞を製造するために改善された中間葉幹細胞層分離培養法および増殖方法を用いた。改善された中間葉幹細胞層分離培養法および増殖方法は、大韓民国特許出願10-2006-0075676号に記載の層分離培養法の培養条件のうち、細胞密度および培養培地を変更したことを特徴とする。以下の実験では、層分離培養法を通して収得された単一クローナル中間葉幹細胞(cMSC)の細胞培養密度をそれぞれ50細胞/cm(cells/cm)(低密度)、1000細胞/cm(cells/cm)(中間密度)、4,000細胞/cm(cells/cm)(高密度)と異にして、それによる細胞の特性を分析した。
【0076】
1.1 細胞密度による中間葉幹細胞の形態学的変化の確認
先ず、長期間の培養で細胞密度による中間葉幹細胞の形態学的変化を確認するための実験を遂行した。長期間の培養条件を与えるために、継代5(P5)、継代10(P10)、継代15(P15)の中間葉幹細胞を利用し、それぞれ低密度、中間密度、高密度の条件でLG-DMEM培地に接種した。その後、細胞の形態学的変化を顕微鏡を通して観察して幹細胞が老化したか否かを判断し、その結果を図2に示した。
【0077】
図2に示したように、継代5(P5)および継代10(P10)では、細胞密度によって細胞の大きさと形態学的パターンで差を示し、特に、P15の場合、高密度の培養条件で平らで大きくなった形態の中間葉幹細胞が観察された。このような形態は、典型的な中間葉幹細胞の老化を示すものであり、長期間の培養で細胞の密度調節が中間葉幹細胞の老化を調節できることを確認した。
【0078】
1.2 細胞密度によるMSC細胞の大きさおよび粒度の確認
細胞密度による幹細胞の変化をさらに確認するために、老化した細胞で増加すると知られている細胞の大きさおよび細胞の粒度(granularity)をフローサイトメトリー分析器を通して定量分析し、その結果を図3に示した。
【0079】
図3に示したように、細胞の大きさは、P5では有意的な差を示さなかったが、P10およびP15の場合、細胞密度によって有意的な差を示すことを確認した。特に、P10およびP15では、高い細胞密度の培養条件で細胞の大きさが有意的に増加し、細胞老化がさらに促進されることを確認することができた。これと同様に、細胞の粒度もまた全ての継代(Passage)で細胞の密度が高くなるほど有意的に増加する結果を示した。従って、中間葉幹細胞の長期間の培養において、細胞の密度調節が細胞老化を調節する因子になり得ることを確認し、細胞培養密度を下げることで後期継代で現れる形態学的変化を改善できることを確認した。
【0080】
1.3 培養細胞密度による中間葉幹細胞の老化の確認
実施例1.1および1.2で確認された形態学的変化が実際に中間葉幹細胞の老化依存的(age-dependent)な現象であるかを確認するために、老化細胞を選択的に染色できるβガラクトシダーゼを用いた染色分析法を遂行し、老化関連遺伝子であるP15、P16および増殖マーカーであるPCNA遺伝子の発現をRT-PCRを通して比較した。その結果をそれぞれ図4および図5に示した。
【0081】
図4に示したように、継代5(P5)および継代10(P10)では、全ての細胞密度で老化した細胞の染色を確認することができなかったが、継代15(P15)では、細胞密度が高くなるほど老化した細胞の染色が明確に増加することを確認した。また、図5に示したように、継代15(P15)では、細胞の培養密度が増加するほど老化関連遺伝子であるCDK抑制剤P15およびP16の遺伝子発現が増加し、増殖マーカーであるPCNAは減少した。
【0082】
このような結果は、中間葉幹細胞の形態学的変化が中間葉幹細胞の老化と関連のあることを示す結果であり、継代培養時に細胞培養密度の調節が中間葉幹細胞の老化を調節できることを示す結果である。
【0083】
1.4 培養細胞密度による中間葉幹細胞の増殖能変化の確認
中間葉幹細胞の増殖能力は、継代が進み、細胞の老化が進むにつれて漸次に減少すると知られている。従って、増殖能は、中間葉幹細胞の老化を確認できる基準に使用され得、長期間の細胞培養時、細胞培養密度による中間葉幹細胞の増殖能の比較を遂行した。各細胞の増殖能は、初期接種細胞数と培養が終了した後に得られる細胞の数を通して各継代による増殖率を計算して確認し、その結果を表1および図6に示した。
【0084】
【表2】
【0085】
表1に示したように、低密度で培養された中間葉幹細胞(MSC)の場合、継代5(P5)、継代10(P10)、継代15(P15)で増加倍数(fold increase)が88.4、34.3、16.4であるのに対し、中間密度で培養された中間葉幹細胞は、8.5、4.9、3.1、高密度で培養された中間葉幹細胞は3.0、1.9、1.1であることを確認した。また、図6に示したように、細胞群倍化時間(PDT)と細胞数増殖レベル(PDL)も増加倍数のようなパターンで現れることを確認した。このような結果は、長期間の中間葉幹細胞培養で細胞密度を下げることで中間葉幹細胞の増殖能を維持させることができることを示す結果であり、同じ継代培養を遂行しても、中間葉幹細胞の老化を抑制させ、寿命を延ばすことができることを示す。
【0086】
1.5 培養細胞密度による中間葉幹細胞(MSC)の分化能変化の確認
細胞培養密度が幹細胞能に影響を与えるかを確認するために、P5~P15培養による分化能を比較した。幹細胞能で脂肪細胞分化能および骨細胞分化能を確認し、それぞれの継代および密度で定性、定量分析を遂行した。具体的に、脂肪細胞分化培養液は、High Glusose DMEM培養液にNCS(Newborn Calf Serum)(Gibco)、10-7molデキサメタゾン(dexamethasone)(Sigma)、0.5mM IBMX(Sigma)、10μg/mlインスリン(insulin)(Sigma)、100μMインドメタシン(indomethacin)(Sigma)を添加した培地を作って実験し、7日分化後にOil red O組織化学染色を通して確認した。また、Oil red O組織化学染色後、イソプロピルアルコールで溶出させ、500nmで測定後、定量分析して確認した。
【0087】
骨細胞分化培養液は、α-MEM培養液にFBS(Gibco)、50μg/ml ascorbic 2-phosphate(sigma)、10-8molデキサメタゾン(Sigma)、10mM βグリセロホスフェート(β-glycerophosphate)(sigma)を添加した培地を使用し、21日分化後にAlizarin red S組織化学染色を通して確認した。また、Alizarin red S組織化学染色後、10%酢酸で溶出させ、405nmで測定し、定量分析して確認した。前記のような方法で脂肪細胞分化能および骨細胞分化能を確認した結果を図7に示した。
【0088】
図7に示したように、脂肪細胞分化能は、継代が進むにつれて全体的に減少したが、密度による差が明確に現れていないのに対し、骨細胞分化能の場合、高密度条件の継代15(P15)培養群で有意に減少することを確認した。このような結果を通して、中間葉幹細胞の骨細胞分化能は、低い細胞密度で培養する場合、さらによく維持され得ることを確認した。
【0089】
1.6 培養細胞密度による中間葉幹細胞の抗原プロファイルの分析
細胞培養密度が幹細胞の抗原発現にも影響を及ぼすか否かを確認するための実験を遂行し、各継代および培養密度による陽性および陰性抗原発現の変化をフローサイトメトリーで確認し、その結果を表2に示した。
【0090】
【表3】
【0091】
表2に示したように、陰性マーカー発現の変化は明確に確認されなかったが、一部の陽性マーカーの場合、同じ継代でも細胞培養密度によって発現量の変化が現れることを確認した。
【0092】
特に、継代15(P15)では、高い密度で細胞を培養する場合、ほとんどの陽性マーカーの発現量が顕著に減少しただけでなく、CD73、CD105、は陰性発現を示し、細胞密度を低く維持して細胞培養を遂行することが非常に重要な因子になり得ることを確認した。
【0093】
1.7 培養細胞密度による活性酸素種(ROS)生産およびDNA損傷の比較
中間葉幹細胞の機能の減少とDNA損傷は関連があると知られており、特に、活性酸素種であるROSにより誘導されるDNA損傷は、中間葉幹細胞(MSC)の老化を促進すると知られている。従って、培養密度によって総活性酸素種(ROS)生産およびこれによるDNA損傷が異なるように現れるか否かを確認するために、継代および細胞培養密度による総細胞性活性酸素種(ROS)量を蛍光強度分析を通して比較し、comet分析を通してDNA損傷程度を確認し、その結果を図8に示した。
【0094】
図8に示したように、総ROS生産は、全ての継代で細胞培養密度が増加するほど増加する傾向を確認し、特に、継代10(P10)と継代15(P15)では、有意的にROS生産が増加することを確認した(A)。comet分析では、DNA損傷が最も弱いCC1から損傷が最も激しいCC5に分類してデータを分析し、損傷が最も激しいCC5の場合、細胞培養密度が高くなるほど有意的に増加することを確認した。これに対し、CC1は、細胞密度が高くなるほど有意的に低くなる傾向を示した(B)。
【0095】
さらに、DNA損傷がROSにより誘発されたかを確認するために、ROSによるDNA損傷を確認する8-OHdGの濃度を確認する実験を遂行した。8-OHdG分析方法は、次のとおりである。それぞれの細胞から得たDNA試料50μlを8-OHdGが結合されたプレート(8-OHdG conjugate coated plate)に入れた後、常温で10分間培養した。その後、抗8-OHdG抗体(anti-8-OHdG antibody)をさらに入れて常温で1時間培養し、3回洗浄後、secondary antibody enzyme conjugateを各ウェル(well)に入れた後、さらに1時間の間常温で培養した。この後、さらに3回洗浄後、基質溶液(substrate solution)を入れて常温で30分間培養した。最後に、停止溶液(Stop solution)を入れた後、450nmで吸光度を測定して確認し、その結果を図9に示した。
【0096】
図9に示したように、DNA損傷が最も激しいものと現れた継代15(P15)群では、細胞培養密度が高くなるほど8-OHdGの濃度が有意的に増加することを確認した。このような結果を通して、高密度培養条件で生産されるROSによりDNA損傷が増加するのであり、これによって中間葉幹細胞の老化が促進されるということを示す。
【0097】
このような結果は、細胞培養密度を低く調節することが、中間葉幹細胞のROS生産増加によるDNA損傷から中間葉幹細胞を保護する役割を果たすことができることを示す結果である。
【0098】
1.8 抗酸化剤処理による中間葉幹細胞(MSC)増殖および活性酸素種(ROS)生産能の確認
中間葉幹細胞の増殖が高密度培養条件で生産されるROSによって影響を受けるか否かを確認するために、ROS消去実験を遂行した。継代11(P11)~継代15(P15)で高密度培養条件および高密度培養条件に抗酸化剤であるアスコルビン酸25μg/mlを培地に添加して培養した後、両グループ間の増加倍数(Fold)を比較し、その結果を図10に示した。
【0099】
図10に示したように、高密度培養条件で増加倍数がP11~P15でそれぞれ2.6、1.9、1.6と、継代数が増加するほど増殖能が減少して老化が現れ始めたが、抗酸化剤を処理した場合、全ての継代で約50%程度増殖能が高く維持されることを確認した。また、抗酸化剤処理群で成長増加倍数(growth fold increase)はP11~P15でそれぞれ3.8、2.9、2.5とP15までも増殖能が高く維持された。
【0100】
最後の時点(Endpoint)であるP15で高密度培養条件単独および高密度培養条件+抗酸化剤処理の両グループ間のROS水準を確認した結果を図11に示した。
【0101】
図11に示したように、抗酸化剤であるアスコルビン酸を処理して増殖が増加した条件では、ROSの水準もまた減少していることを確認した。従って、MSC培養は、高密度でない低い細胞密度で遂行することが好ましく、高密度細胞培養で誘導されるROS生産を抗酸化剤で消去する場合、中間葉幹細胞の増殖能を増加させることができることを確認した。即ち、高密度条件はROSにより中間葉幹細胞の増殖能が抑制され、細胞密度が低くなるほどROSが減少して中間葉幹細胞増殖能が促進され得る。
【0102】
このような結果をまとめると、層分離培養を通して得られた単一クローナル中間葉幹細胞の増殖、培養および幹細胞能を維持するためには、培養条件のうち細胞密度を1000細胞/cm以下の密度に調節することが重要であり、抗酸化剤を添加して培養する場合、細胞培養で誘発され得る酸化ストレスを抑制して中間葉幹細胞増殖を効果的に促進できることを確認した。また、同じ低細胞密度条件培養を比較すると、P15と同じ継代10以上の幹細胞は、継代5のような継代10未満の幹細胞と比較したときの細胞の形態学的変化が際立ち、幹細胞の老化促進、分化能の減少のような結果が確認されるので、1000細胞/cm以下の密度で継代10未満の低い継代数で培養するのが最も効果的であることを確認した。
【0103】
実施例2 改善された層分離培養法の検証
前記実施例1を通して、層分離培養法で収得した中間葉幹細胞培養において、細胞密度の調節、継代調節および抗酸化剤の添加が重要な因子になり得ることを確認したので、大韓民国特許出願10-2006-0075676号に記載の層分離培養法の既存の工程で収得した単一クローナル中間葉幹細胞を細胞培養密度を異にし、抗酸化剤であるアスコルビン酸が添加された培地で培地を異にして継代培養を行って収得される単一コロニーMSCの増殖能およびこれによる細胞収得効果を比較した。
【0104】
以前の韓国特許出願10-2006-0075676号では、図1のような層分離培養方法により骨髄から中間葉幹細胞を分離および培養する方法を開示しており、層分離段階を経て得られる単一性細胞群であるコロニーをウェル当り100~600の細胞数で培養容器に移動するという事実を開示する。
【0105】
また、韓国特許出願10-2014-0170045号は、層分離培養法を用いて、骨髄由来の中間葉幹細胞を分離および培養する方法を開示して、コロニーを50~100cells/cmで塗抹するという事実を開示している。
【0106】
しかし、韓国特許出願10-2006-0075676号および10-2014-0170045号は、層分離培養法によって得られた単一性細胞群コロニーを計数し、6ウェルプレートに移動させた後、低濃度で塗抹して継代培養のためのseed cell製造のために拡張する構成、すなわち、継代1に該当するコロニー培養の条件を開示しているだけであり、継代2以降のコロニーではなく、個別細胞の反復的な培養細胞密度の調節に対する構成およびこれによる効果は開示されていない。前記出願に記載された従来の層分離培養法によると、十分な量のアトピー性皮膚炎の予防、治療、改善効果がある単一クローナル幹細胞を得るために少なくとも10継代以上の培養を行うべきである。一方、本発明の改善された層分離培養方法では、継代2以降、低い細胞密度条件、最大8継代以下の少ない継代培養数により効果的に目的とする単一クローナル幹細胞を大量に得ることができる。
【0107】
具体的には、本改善方法では、層分離培養法により得られた継代1(P1)のコロニーを培養した後、継代2(P2)以降の継代培養では、低い密度である1000細胞/cm以下の細胞を分注し、これを4000細胞/cm細胞培養の効果と比較した。また、細胞培養培地を抗酸化剤が含まれたα-MEM培地と抗酸化剤が含まれていないLG-DMEM培地で異にし、これによる細胞増殖効果を比較した。
【0108】
改善された層分離培養法の効果を確認するための実験群を下記表3に、従来の層分離培養法に比べて改善された層分離培養法の工程改善部分を図12aおよび図12bに模式化して示した。
【0109】
図12aに示すように、継代1を得る工程までは、従来の層分離培養法と改善された層分離培養法が工程を同様に行ったが、改善された層分離培養法は、拡張された継代1細胞をseed cellとして利用して培養するステップ以降の継代培養工程が従来の層分離培養法と異なる。従来の層分離培養法は、密度調節に対して認識することなく多くの細胞を得るための目的で4000細胞/cm以上の高密度継代培養を行うが、改善された層分離培養法は、継代培養の密度を低密度である1000細胞/cm以下に調節することにより、継代2以降最大継代8以下の培養だけでも最終産物を得ることができる。継代2以降の培養工程を図12bに詳細に示した。
【0110】
【表4】
【0111】
前記表3の細胞株は、層分離培養方法により分離された細胞株であり、SCM01~SCM08とそれぞれ命名した。
【0112】
2.1 細胞株密度および培地による増殖効果の確認
前記SCM01~08細胞株を利用して培養を遂行し、継代10未満である継代5までの継代培養による細胞増殖効果を、細胞数、細胞群倍化時間(PDT;Population Doubling Time)、細胞数増殖レベル(PDL;Population Doubling Level)でそれぞれ比較し、それを図13図20に示した。
【0113】
図13図20から確認したように、1cm当たり1000個の細胞密度で接種して培養された全ての実験群において、1cm当たり4000個の細胞密度で接種して培養した実験群より優れた細胞増殖効果を示した。また、同じ1000個の細胞密度群であっても、抗酸化剤であるアスコルビン酸が含まれたα-MEM培地で培養された1000alpha実験群でさらに顕著な細胞増殖効果を確認した。
【0114】
2.2 細胞株密度による増殖効果の比較
培養細胞数による増殖率のより正確な比較のために、培養培地をそれぞれLG DMEMまたはα-MEM培地に固定し、1cm当たり1000または4000個の細胞接種密度の継代培養による細胞増殖効果を比較し、その結果を図21図24に示した。
【0115】
図21に示したように、LG DMEMで培養されたSCM01~SCM08細胞株 の継代2(P2)~継代5(P5)における増殖率が1cm当たり4000個の細胞数接種群より1000個の細胞数で接種して培養したとき、顕著に高いことを確認し、継代5(P5)で確認された1cm当たり4000個の細胞接種に対比した1000個の細胞接種群の増殖率は、最小3.08~最大48.50倍であることを確認した。
【0116】
また、図22に示したように、1cm当たり1000個の細胞接種群のPDT値も全ての細胞株で1cm当たり4000個細胞株接種より低いか、または類似した水準で現れ、PDL値は、全ての細胞株で1cm当たり4000個の細胞接種に対比して高い値を確認した。
【0117】
また、図23に示したように、α-MEMで培養されたSCM01~SCM08細胞株はいずれも1000個の細胞数で接種して培養したとき、DMEM実験群のような傾向を示し、継代5(P5)で確認された1cm当たり4000個の細胞株接種に対比した1cm当たり1000個の細胞接種群の増殖率は、最小6.32~最大85.63倍であることを確認した。また、図24に示したように、1cm当たり1000個の細胞株接群のPDT値も全ての細胞株で1cm当たり4000個の細胞接種より低いか、または類似した水準で現れ、PDL値は、全ての細胞株で1cm当たり4000個の細胞接種に対比して高い値を確認した。
【0118】
このような結果は、1cm当たり4000個の高密度細胞接種培養に対比して1cm当たり1000個以下の細胞接種を通して速い単一クローナル中間葉幹細胞の増殖を誘導できることを示す結果である。
【0119】
2.3 培養培地による増殖効果の比較
先に実施例2.2を通して1000細胞/cm培養が4000細胞/cm培養に対比して優れた増殖効果を奏することができることを確認したので、細胞数を1000個に固定し、培地を変数で変化させながら細胞増殖効果を比較することで、培養培地条件による増殖効果をさらに検証し、その結果を図25および図26に示した。
【0120】
図25に示したように、培養培地をα-MEMおよびDMEMで異にして細胞増殖率を比較した結果、LG-DMEMに対比してα-MEM培地を用いた実験群で最小1.77~6.39倍の高い細胞増殖率を確認した。また、図26に示したように、PDTが全てのα-MEM実験群で低く現れ、PDLは増加したことを確認した。
【0121】
このような実験結果は、細胞接種密度を1cm当たり1000個以下の細胞に調節して継代2(P2)~継代5(P5)のような継代10未満の低い継代で培養することに加えて抗酸化剤が添加された培地を利用して培養する場合、細胞増殖効率を極大化できることを示す。
【0122】
実施例3 改良工程の樹立
前記実施例を通して、中間葉幹細胞培養において細胞密度の調節および抗酸化剤の添加が重要な因子になり得ることを確認したので、大韓民国特許出願10-2006-0075676号および10-2014-0170045号に記載の層分離培養法の既存の工程に加えて、継代培養時に細胞培養密度および培地条件を異にして単一コロニーの中間葉幹細胞を継代10未満の低い継代で効果的に収得できる改善された工程を確立し、それをまとめて下記表4(DMEM培地を用いた培養条件)および表5(α-MEM培地を用いた培養条件)に示した。
【0123】
【表5】
【0124】
【表6】
【0125】
より具体的には、本発明の骨髄由来中間葉幹細胞の層分離培養工程および増殖培養を下記のように遂行した。
【0126】
骨髄提供者の臀部を局所麻酔剤で麻酔させた後、骨盤に注射針を刺して骨髄を採取した。100mm培養容器に20%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む14ml DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s Medium,GIBCO-BRL、Life-technologies,MD,USA)、ヒト骨髄1mlを入れて37℃、5%CO細胞培養器で2時間培養した。培養後、培養容器を一方に軽く傾けて底面に付いた細胞ができるだけ取れないように最大限に培養容器の上層培養液だけを新たな容器に移した。
【0127】
同一の過程をもう一度繰り返した後、収得した培養液を底面に膠原質(collagen)がコーティングされた培養容器(Becton Dickinson)に移した後、37℃で2時間培養した。培養液を再び新たな膠原質がコーティングされた容器に移し、24時間後、また新たな容器に移し、24時間後、また新たな容器に移した。最後に、48時間後、新たな容器に移した後、残っている細胞が培養容器底面に付いて育つことを目視で確認した。先の複数の層分離ステップを経てこのステップにまで来ることができる細胞は、細胞の比重が他の細胞より非常に小さな細胞であることを推測できる。
【0128】
約10~14日の時間が過ぎると細胞が単一コロニー(single colony)を形成するが、この単一クローナル細胞群をトリプシンを処理して分離した後、6ウェル培養容器に移した。37℃、5%CO細胞培養器で4~5日培養した後、約80%育ったとき、細胞を0.05%trypsin/1mM EDTA(GIBCO-BRL)を処理して収得した後、T175培養容器に移して低い細胞密度で継代培養した。
【0129】
このように、継代10未満、好ましくは継代8以下の継代2(P2)~継代5(P5)での細胞密度を1000細胞/cmの水準に下げて培養する場合、他の工程は全て同一に調節したにもかかわらず、中間葉幹細胞の増殖能および幹細胞特性が優れるように維持され、同じ継代でも増殖が効果的に誘導されることを確認した。特に、細胞密度を下げて培養する場合、既存の工程で必要としていた、中間葉幹細胞でWCB(Working Cell Bank)を製造する過程を省略でき、細胞製造期間を効果的に短縮できる。特に、継代を少なくすれば、老化が比較的にあまり進んでいない細胞を多くの量で収得でき、このような細胞を治療剤として利用する場合、治療効能に優れるものと期待することができる。
【0130】
また、培養培地として抗酸化剤が添加されたα-MEMを利用する場合、高い密度の細胞培養で誘導されるROSストレスが抗酸化剤処理により効果的に改善され、中間葉幹細胞の細胞増殖能が回復でき、既存の工程に対比して細胞の継代を顕著に短縮し、中間葉幹細胞の特性を維持する老化が進んでいない新鮮な状態の単一コロニー中間葉幹細胞を速く安定して収得できるという特徴がある。
【0131】
前記のような内容をまとめると、低密度細胞培養は、短時間で多くの細胞を得ることができ、製造工程を簡素化させるだけでなく、長期間の培養(long-term culture)でも、中間葉幹細胞の特性を完全に維持する老化していない状態の細胞を収得できるので、良質の幹細胞生産を可能にすることを確認した。
【0132】
これにより、以下アトピー性皮膚炎の治療のための実験において、前記実施例を通して構築した改善方法を通して得られる幹細胞を用いた。
【0133】
実施例4 改善された層分離培養法により得られた幹細胞のアトピー性皮膚炎の治療効果の確認
4.1 試料および方法
従来の幹細胞収得のために使用されるフィコール・ハイパック(Ficoll-Hypaque)を用いた密度勾配遠心分離方法(gradient centrifugation method、GCM)により得られる幹細胞(以下、GCM-MSC)と改善された層分離培養法により得られた単一クローナル幹細胞(以下、SCM-cMSC)がアトピー性皮膚炎の治療効果で違いを表すか否かを確認するための比較実験を行った。
【0134】
実験に使用された試料は、下記の表6に示した。卵白由来アルブミンおよびアルミニウムヒドロキサイドはアトピー性皮膚炎の誘導のために使用し、テガダームフィルム(Tegaderm Film)はドレッシングに使用した。
【0135】
【表7】
【0136】
アトピー性皮膚炎の動物モデルを製造するために、6週齢のSPF(specific pathogen-free)BALB/c mice(15-20g)をSLC,Inc.(静岡、日本)から購入して使用した。実験は、1週間の順応期間の後に開始した。アトピー性皮膚炎を誘発するために、6週齢のBALB/cマウスにOVA(オボアルブミン)50μgおよびAlum Ajuvant40mgを3週間、1週間に一回ずつ腹腔内および皮下投与した。誘発物質投与後、60μgのOVAを含む1.2cm×1.2cmパッチを2週間に2回脱毛された領域に付着してBALB/cでアトピーを誘導した。感作20日後、アトピー性皮膚炎が前記マウスにCell vehicle、GCM-MSC、SCM-cMSCを下記表7のような用法・用量で尾静脈(caudal vein)を介して2日間隔で3回投与した。正常対照群では、アトピー性皮膚炎を誘発していないマウス5匹を設定した。
【0137】
【表8】
【0138】
投与後アトピー性皮膚炎に対する効果を確認するために、マウス皮膚、腋窩リンパ節(axillary lymph node、aLN)および血液でアトピー性皮膚炎に関連するマーカーの発現変化および関連指標を確認した。
【0139】
4.2 SCM-cMSC投与による皮膚病変の変化を確認
実施例4.1で製造されたアトピー性皮膚炎誘発動物モデルにSCM-cMSC、GCM-MSCを、前記のようなプロトコルで投与し、59日後に皮膚病変の変化を確認し、その結果を図27に示した。
【0140】
図27に示すように、改善された層分離培養法により得られたSCM-cMSC投与群では、アトピー皮膚病変が効果的に改善されることを確認した。
【0141】
アトピー性皮膚炎モデルの背皮膚組織を10%ホルマリンを処理して、24時間、4℃で固定し、これを切開および脱水化処理してパラフィンに固定させた。4μmの厚さの切断面をスライド上に位置させて、これをH&E溶液で8分間染色し、アルコールで洗浄した後、表皮と真皮の厚さの変化および炎症性浸潤を確認した。表皮と真皮の厚さは、200倍率のCaseViewer 1.4 software(3DHISTECH、BU、Hungary)を利用して確認した。この後、H&Eと同様の方法で、皮膚組織処理後のトルイジンブルー染色を行い、working solutionで2-3分間染色を行い、洗浄および脱水化した。前記のような肉眼所見および組織染色の結果を表8、図28図30に示した。
【0142】
【表9】
【0143】
表8に示すように、SCM-cMSC処理群は、アトピー性皮膚炎誘発によって増加される表皮および真皮の厚さの増加をCell vehicleと比較して1.5倍まで抑制し、このような効果は、GCM-MSC処理群と比較して1.4倍、1.3倍の抑制効果を示すものであり、GCM-MSC処理群と比較して顕著な改善効果を示すことを確認した。
【0144】
また、図28図30に示すように、皮膚病変部位の組織学的分析の結果、SCM-cMSCを処理した群では、顕著なアトピー重症度の減少が確認された。
【0145】
4.3 SCM-cMSC投与によるIgE、IgG1抑制効果およびIgG2の生産効果の確認
4つの実験群でIgE、IgG1の生産をELISAにより測定、比較してアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した。IgE分析のためにマイクロウェルプレートをコーティング緩衝液に希釈されたキャプチャ抗原100μl/ウェルでコーティングし、プレートを密封し、4℃で一晩培養した。ウェルを吸入して洗浄緩衝液で洗浄した後、プレートを裏返し、洗浄した後に残っている緩衝液を除去した。プレートを200μl/well Assay Diluentで遮断し、室温で1時間培養した。洗浄後、各実験群を適切なプレートに移動させた。密封されたプレートを2時間室温で培養し、再び洗浄した後、Working Detector(Detection Antibody and Sav HRP reagent)100ulを添加して、室温で1時間さらに培養した。100μlの基質溶液を各ウェルに追加した後、プレートを密封することなく、がん環境で30分間室温培養し、終結溶液50ulを添加した。終了反応30分以内に450nmで吸光度を確認し、450nmの吸光度の値から570nmの吸光度の値を引いた。IgEおよびIgG1の生産による効果を確認した結果を図31に示した。
【0146】
図31に示すように、アトピー性皮膚炎によって誘発されるIgEおよびIgG1の生産は、SCM-cMSCの投与によって明らかに減少した。このような減少効果は、GCM-MSCと比較しても著しく優れていることが分かった。
【0147】
さらにELISA方法を用いてIgG2a生産の変化を確認し、その結果を図32に示した。
【0148】
図32に示すように、IgG2aの生産はSCM-cMSCでGCM-MSC処理群に比べて著しく優れていることが示され、アトピー性皮膚炎モデル群(vehicle)に比べて、約3倍以上増加することを確認した。
【0149】
4.4 SCM-cMSC投与による腋窩リンパ節でIL-4、IFN-γ発現の効果の確認
アトピー性皮膚炎の動物モデルで腋窩リンパ節(axillary lymph nodes)を分離して、SCM-cMSC、GCM-MSC投与による腋窩リンパ節におけるIL-4およびIFN-γの発現の変化をリアルタイムPCRで確認した。総RNAはTRIzol Reagent(Life technologies)を用いて腋窩リンパ節から得て、cDNAはメーカーの指示に従ってprimeScriptTMRT reagent Kit with gDNA Eraser(TAKARA)を用いて準備した。cDNA産物をSYBR Green Quantitative PCR Master Mix(KAPA Biosystems)で増幅し、プライマーはすべてQiagenから購入して使用した。StepOnePlus RealTime PCR System(Applied Biosystems)で反応を行い、PCRは、総20mlに対して、次のような条件で行った:変性;94.1℃で5分、増幅;GAPDHに対して25サイクル、94.1℃で30s、58.1℃で30sおよび72.1℃で30s、伸長;72℃で10分、その後、各試料1μlをアガロースゲルに位置させ、臭化エチジウムで染色した後、紫外線で可視化した。各標的遺伝子の発現をGAPDHに対して標準化し、その結果を図33に示した。実験に使用されたプライマーの情報は、下記の通りである。
【0150】
-GAPDH Mm_Gapdh_3_SG QuantiTect Primer Assay Cat#QT01658692
-IL-4 Mm_Il4_va.1_SG QuantiTect Primer Assay Cat#QT02418311
-IFNγMm_Ifng_1_SG QuantiTect Primer Assay Cat#QT0103882115
【0151】
図33に示すように、アトピー性皮膚炎モデルの腋窩リンパ節で増加されたIL-4は、GCM-MSCおよびSCM-cMSC処理により減少し、SCM-cMSC処理によって最も優れた減少効果が確認された。また、アトピー性皮膚炎モデルで減少したIFN-γのレベルは、SCM-cMSC処理によって著しく増加することを確認した。
【0152】
4.5 SCM-cMSC投与による肥満細胞数の測定
肥満細胞を計数するためにGiemsaを用いた皮膚組織染色をさらに行い、浸潤された肥満細胞の数は、100倍率のpaint.NETを利用して係数した。
【0153】
図34に示すように、正常対照群と比較してアトピー性皮膚炎モデルでは、炎症誘発によって肥満細胞が著しく増加(平均86)し、このような増加は、SCM-cMSC投与により平均49レベルに著しく減少した。これはGCM-MSC投与群が肥満細胞の減少活性をほとんど示さないものと比較してSCM-cMSC投与群でのみ顕著に確認される効果である。
【0154】
実施例5 培養密度によるアトピー性皮膚炎の治療効果の比較
5.1 cMSC1、cMSC2の準備
実施例2、3により、改善された層分離培養法で得られたcMSCが長期間の培養でも、中間葉幹細胞の特性を維持する老化しない細胞の状態で収得され、このような改善された層分離培養法で得られたcMSCが従来の密度勾配遠心分離によって得られる幹細胞であるGCM-MSCと比較して顕著に優れたアトピー性皮膚炎の治療効果を示すことが、実施例4を介して確認された。それで低密度培養ステップを含む改善された層分離培養法で得られたcMSCが高密度培養ステップを含む、従来の層分離培養法で得られたcMSCと比較してアトピー性皮膚炎の治療効果において差異を示すかを確認するための追加の実験を行った。
【0155】
実施例3の改善された層分離培養法により、継代培養時の細胞培養密度を100、1000細胞/cmとし、抗酸化剤を含むα-MEM培地を用いて、単一クローナル中間葉幹細胞を得た。抗生剤としてはゲンタマイシンが追加され、α-MEM培養液で行った(表5参照)。以下100、1000細胞/cm以下の低密度および抗酸化条件の改善された層分離培養法により得られた幹細胞を「cMSC1」と命名した。
【0156】
また、改善された層分離培養法によって得られた幹細胞と効果を比較するために、継代培養時4000細胞/cm以上の密度および抗酸化剤未添加の条件の培養方法で培養する従来の層分離培養法によって得られた幹細胞を「cMSC2」と命名した。
【0157】
5.2 実験材料および方法
アトピー性皮膚炎の試験に用いられた動物は、雌6週齢のSPF(specific pathogen-free)BALB/c mice(15~20g)でSLC,Inc.(Shizuoka、Japan)から購入し、1週間、動物室で馴化期間を経た後、実験を行った。仁荷大学医学部生命科学研究所で、温度22~25℃、湿度40~60%、昼夜12時間交代で150~300Luxの照明でmouse用cageに5匹ずつ飼育し、滅菌蒸留水と固形飼料を自由に摂取できるように飼育環境を維持して実験を行った。7週齢の雌BALB/cマウスにOvalbumin(OVA)50μg/50μl(PBS)とAlum Adjuvant 4mg/100μlを混合して週1回3週間の合計3回、腹腔、皮下投与して、アトピー性皮膚炎の感作を誘導した。3回とも同じ部位に投与する時に、当該疾患と無関係な炎症を誘発する可能性があるため、それぞれ異なる部位に投与した。OVA投与3週間後にOVA60μg/60μl(PBS)を含ませた1.2×1.2cmサイズの滅菌ガーゼを除毛した背皮膚に2週間、週2~3回付着して局所部位にアトピーを誘導した。OVA patchでアトピー誘導後、PBS、層分離培養方法で得た単一クローナル幹細胞を継代2以降のステップで100cells/cm、1000cells/cm、4000cells/cmのように細胞密度を異にして得、2日間隔で計3回尾静脈を介して注入する。注入量は、一回当たり3.3×10/200μlずつ3回、合計1.0×10/600μl静脈投与する。投与を終え、2日後に病変部位を再び除毛した後にOVA60μg/60μl(PBS)を含ませた1.2×1.2cmサイズの滅菌ガーゼを除毛した背皮膚に2週間、週3~4回付着して局所部位にアトピーを再誘導した。アトピー性皮膚炎の誘導後13~14日の時点で、実験動物をrestrainerに補正した後、26 1/2gauge needleが装着されたBD社1ml syringeを用いて尾静脈を介して投与する。Vehグループの動物は、試験物質の代わりにPBSを同じ方法で静脈内投与しNaive、Veh.グループを除いて、試験物質をPBSに浮遊させた後に静脈投与する。PBSおよび試験物質のいずれも200μl/headの同じ量で投与した。
【0158】
アトピー性皮膚炎に対する効果を確認するための血液サンプルは、次のような方法で得た。すべての実験動物は、細胞安定化剤または試験物質投与後13日目にisofluraneを用いて、麻酔した後、腹部を切開して後大静脈を露出させた後、1ml syringeを用いて約700μl採血した。採血した血液はSerum separate tubeに入れ、3,000rpm/15分、4℃で遠心分離した後、serumを分離し、分離されたserumは1.5ml e-tubeに入れて-70℃deep freezerに保管した。
【0159】
アトピー性皮膚炎に対する効果の分析のために、すべての実験動物のserum sampleはELISA kitを用いてtotal IgE、IgG1、IgG2aの濃度を測定し、測定方法は、kit内のプロトコルに準じて実施した。具体的には、血液内のIgE level測定は、まず後大静脈を介して採血した血液は、EDTA tubeに入れて3,000rpm/15分間遠心分離して上層液のみを分離して実験まで-70℃に保管して行った。ELISA plateにIgEを認知することができるcapture antibodyをcoating bufferとともに4℃でovernight保管し、翌日1時間blocking過程を経た後、serumを100倍に希釈して50μlの量で2時間室温で反応させた。その後、IgEを認知する2次抗体を入れた後、substrate bufferであるTMB solutionを入れ、約15分程度反応させた後、50μlのstop solutionを入れた。測定は、ELISA reader機を利用して450nmのfilterの値を測定した。
【0160】
実験終了時点で摘出した皮膚組織は、4%ホルマリン溶液に固定させた後、組織切片を作成し、Hematoxylin&Eosin(H&E)染色および真皮内浸潤された肥満細胞を染色するtoluidine blue染色を行った。染色した組織は、光学顕微鏡の200倍率下で真皮および表皮の厚さを測定し、100倍率下で炎症細胞浸潤おおび肥満細胞の増減度を測定した。皮膚の厚さおよび肥満細胞の測定は、PAINT.NETプログラムを利用して行った。
【0161】
すべての実験動物からサンプリングしたskinとaxillary lymph nodeでqPCR master mixを用いて、IL-4、IL-5、IL-10、IL-17、IL-31、TNF-α、TGF-β、IFN-γ、TSLPなどの発現量を測定した。測定方法は、qPCR内のプロトコルに準じて実施し、具体的にReal-time PCRをするために、実験動物の皮膚組織からmRNAを分離した。RNAは、皮膚組織に1ml trizol溶液を入れて乳棒で摩砕した後、分離して得た。分離したRNAの1μgをcDNAにするためgenomic DNA elimination reactionさせた後、reverse-transcription enzymeを追加して、20分間反応させた。Real-time PCRは、二重DNAに特異的に結合するSYBR FAST qPCR master mixを使用して実験を行った。試料はcDNA5μl、qPCR master mix(2X)10μl、specific target primer 1μl、DW 4μlで、すべて20μlの体積になるように準備した。PCRは、総45cycleで行い、GAPDHにtarget geneを補正したratioを数値化した。
【0162】
実験結果のすべての測定値は、平均±標準誤差で計算して示し、統計学的分析は、Prism 7.05(GraphPad Software Inc.、San Diego、CA、USA)を用いて1Way ANOVA、Tukey's multiple comparison testにより実施し、p valueは*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001の場合、有意性があると判定した。
【0163】
5.3 アトピー性皮膚炎の動物モデルの体重および細胞生存率の確認
アトピー性皮膚炎誘発動物モデルの犠牲時点(D-59)に、各グループ別に体重を測定し、cMSC1およびcMSC2の投与による総細胞数および細胞生存率をAutomated cell counters and cell analyzers(NC-250TM)の方法により確認し、その結果を図35および図36に示した。
【0164】
図35に示すように、アトピー性皮膚炎が誘発された動物モデルおよびcMSC1、2を投与した群別の個体の体重は差がなかった、図36に示すように、2日おきに3回尾静脈にcMSC1(100cmおよび1000cm)とcMSC2(4000cm)を注入した群で、平均細胞生存率は90%以上であることを確認した。
【0165】
5.4 IgE発現抑制効果の確認
実施例4.3では、SCM-cMSCの投与がGCM-MSC投与と比較してアトピー性皮膚炎の動物モデルでIgE抑制効果が優れることを確認した。そこで層分離培養法で得られた幹細胞の間でも密度の違いによって血清からIgE抑制効果が異なるように現れるかを確認するためのELISA分析を行った。より具体的には、実施例5.2で製造したアトピー性皮膚炎の動物モデルをD-59の時点で犠牲にして、犠牲の時点で、後大静脈から採取した血液から血清を収得してIgE ELISA分析を行った。その結果を図37に示した。
【0166】
図37に示すように、cMSC1、cMSC2投与群は、いずれもVechicle処理群に比べてIgE抑制効果が現れたが、低密度培養ステップを含む改善された層分離培養法によるcMSC1(100、1000細胞/cm)実験群で高密度培養cMSC2に比べてより優れたIgE抑制効果を確認した。これは低密度で培養して得られる単一クローナル幹細胞がIgEレベルをさらに顕著に下げることができ、アトピー性皮膚炎に優れた効果を示すことができることを示した結果である。
【0167】
5.4 皮膚病変肉眼所見の確認
実施例5.2で製造した全7匹のアトピー性皮膚炎マウスにPBC単独(Vechicle)、cMSC1(100、1000細胞/cm)、cMSC2を塗布して皮膚病変部位でアトピー皮膚症状の回復程度を肉眼で確認した。病変に対する肉眼所見でアトピー性皮膚炎が誘発された背部位での傷、紅斑、角質の程度を比較して確認し、皮膚表皮の厚さの変化を、H&E染色で確認し、その結果を図38および図39に示した。
【0168】
図38に示すように、肉眼上cMSC2よりcMSC1(100、1000細胞/cm)群で皮膚病変の改善効果を確認し、より低密度である100細胞/cmを塗布した群でより優れた病変の改善効果を確認した。
【0169】
図39に示すように、cMSC2と比較してcMSC1(100、1000細胞/cm)塗布群で表皮肥厚緩和効果が顕著に現れることを確認した。
【0170】
前記のような結果を総合すると、改善された工程を経て得たcMSC1を用いれば、従来の密度勾配層分離培養法により得られる単一クローナル幹細胞と比較して、より優れた抗炎症効果を示しうるので、改善されたアトピー皮膚炎改善効果を示しうることが確認された。また、低密度培養ステップを含む改善された層分離培養方法で得られた幹細胞(cMSC1)の場合、高密度培養ステップを含む層分離培養法で得られた幹細胞(cMSC2)と比較して、より優れたアトピー性皮膚炎の改善効果を示しうることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
【外国語明細書】