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  • 特開-透明導電性フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040293
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
H01B5/14 A
H01B5/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017053
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2021044562の分割
【原出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】河野 文彦
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 純一
(57)【要約】
【課題】金属繊維を含む導電層を備えながら、接触による導電性不良が生じがたい透明導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の透明導電性フィルムは、基材と、基材の少なくとも片側に配置された透明導電層とを備え、該透明導電層が、ポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス中に存在する金属繊維とを含み、該透明導電層の算術平均表面粗さRaが、1.5μm以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも片側に配置された透明導電層とを備え、
該透明導電層が、ポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス中に存在する金属繊維とを含み、
該透明導電層の算術平均表面粗さRaが、1.5μm以上である、
透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記金属繊維が、金属ナノワイヤである、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤである、請求項2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
金属層をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記金属層が、銅から構成される、請求項4に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記透明導電層の厚みが、50nm~300nmである、請求項1から5のいずれかにに記載の透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチセンサーの電極等に用いられる透明導電性フィルムとして、樹脂フィルム上にインジウム・スズ複合酸化物層(ITO層)等の金属酸化物層が形成された透明導電性フィルムが多用されている。しかし、金属酸化物層が形成された透明導電性フィルムには、屈曲性が不十分であり、曲げ等の物理的な応力によってクラックが発生しやすいという問題がある。
【0003】
また、透明導電性フィルムとして、銀や銅などから構成される金属繊維を含む導電層を備える透明導電性フィルムが提案されている。このような透明導電性フィルムは屈曲性に優れるという利点がある。その一方で、金属繊維を含む導電層は、接触耐性が低く、当該導電層を備える導電性フィルムは、移送時、保管時等において、導電性不良の不具合がでやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009-505358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、金属繊維を含む導電層を備えながら、接触による導電性不良が生じがたい透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の透明導電性フィルムは、基材と、基材の少なくとも片側に配置された透明導電層とを備え、該透明導電層が、ポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス中に存在する金属繊維とを含み、該透明導電層の算術平均表面粗さRaが、1.5μm以上である。
1つの実施形態においては、上記金属繊維が、金属ナノワイヤである。
1つの実施形態においては、上記金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤである。
1つの実施形態においては、上記透明導電性フィルムは、金属層をさらに備える。
1つの実施形態においては、上記金属層が、銅から構成される。
1つの実施形態においては、上記透明導電層の厚みが、50nm~300nmである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属繊維を含む導電層を備えながら、接触による導電性不良が生じがたい透明導電性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.透明導電性フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。透明導電性フィルム100は、基材10と、基材10の少なくとも片側(図示例では両側)に配置された透明導電層20とを備える。透明導電層20は、ポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス中に存在する金属繊維とを含む。図示していないが、透明導電性フィルムは、任意の適切なその他の層をさらに含んでいてもよい。1つの実施形態においては、上記透明導電性フィルムは、少なくとも一方の最外層が、透明導電層となる。
【0010】
図2(a)および(b)は、本発明の別の実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。透明導電性フィルム200は、基材10の片側にのみ透明導電層20が配置されている。透明導電性フィルム300は、金属層30をさらに備える。図2(b)の例示では、透明導電性フィルム300は、金属層透明導電層20と、基材10と、金属層30とがこの順に配置されている。
【0011】
本発明において、上記透明導電層の算術平均表面粗さRaは、1.5μm以上である。透明導電層の算術平均表面粗さRaを上記範囲とすることにより、このような範囲であれば、透明導電層への接触が生じた際にも、導電不良が生じがたい透明導電性フィルムを得ることができる。従来の透明導電性フィルムは、ロールの形態で提供される際、互いに接触することで表面に摩擦力がかかり、金属繊維を含む透明導電層を備える場合には、当該金属繊維同士の接合が外れて導電不良が生じやすい。一方、本願発明の透明導電性フィルムは、ロールの形態で提供された場合であっても、金属繊維同士の接合が維持され、所望の導電性が維持される。また、上記透明導電性フィルムが枚葉であっても、当該透明導電性フィルムを積層した際の接触、摩擦等による金属繊維同士の接合外れを防止することができる。また、上記透明導電性フィルムは、透明導電性フィルム同士の接触に限らず、その他の物品との接触に対しても優れた接触耐性を示し得る。上記透明導電層の算術平均表面粗さRaは、好ましくは2.0μm~5.0μmであり、より好ましくは3.0μm~4.0μmであり、さらに好ましくは3.0μm~3.5μmである。このような範囲であれば、上記効果は顕著となる。算術平均表面粗さRaは、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。
【0012】
本発明の透明導電性フィルムの表面抵抗値は、好ましくは0.01Ω/□~1000Ω/□であり、より好ましくは0.1Ω/□~500Ω/□であり、特に好ましくは0.1Ω/□~300Ω/□であり、最も好ましくは0.1Ω/□~100Ω/□である。1つの実施形態においては、透明導電性フィルムの表面抵抗値は、100Ω/□以下である。
【0013】
本発明の透明導電性フィルムのヘイズ値は、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.7%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下である。当該ヘイズ値は、小さいほど好ましいが、その下限値は例えば、0.05%である。
【0014】
本発明の透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0015】
本発明の透明導電性フィルムの厚みは、好ましくは10μm~500μmであり、より好ましくは15μm~300μmであり、さらに好ましくは20μm~200μmである。
【0016】
B.透明導電層
上記のとおり、透明導電層は、金属繊維とポリマーマトリックスとを含む。
【0017】
上記透明導電層の厚みは、好ましくは50nm~300nmであり、より好ましくは80nm~200nmである。透明導電層の厚みを50nm以上とすることにより、動摩擦係数の小さい透明導電層を形成することができる。
【0018】
上記透明導電層の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0019】
上記透明導電層の当該透明導電層に対する動摩擦係数は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.8以下であり、さらに好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.2以下であり、特に好ましくは1.0以下であり、最も好ましくは0.8以下である。透明導電層の当該透明導電層に対する動摩擦係数は小さいほど好ましいが、その下限値は、例えば、0.05である。このような範囲であれば、透明導電層への接触が生じた際にも、導電不良が生じがたい透明導電性フィルムを得ることができる。「透明導電層の当該透明導電層に対する動摩擦係数」とは、透明導電性フィルムが備える透明導電層/透明導電性フィルムが備える透明導電層と同組成の透明導電層間における動摩擦係数を意味する。本明細書において、動摩擦係数は、JIS K7125:1999に準じて、測定荷重:100g、測定速度:1mm/s、測定距離:30mmで測定される。
【0020】
1つの実施形態においては、透明導電層と当該透明導電層とは反対側の面とを接触させた際の動摩擦係数は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.8以下であり、さらに好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.2以下であり、特に好ましくは1.0以下であり、最も好ましくは0.8以下である。透明導電層と当該透明導電層とは反対側の面とを接触させた際の動摩擦係数は、小さいほど好ましいが、その下限値は、例えば、0.05である。「当該透明導電層とは反対側の面」とは、基材を基準に、測定対象となる透明導電層の表面とは反対側の最外面を意味する。したがって、透明導電性フィルムが、透明導電層A/基材/透明導電層Aの構成である場合には、「透明導電層と当該透明導電層とは反対側の面とを接触させた際の動摩擦係数」は透明導電層同士(透明導電層Aと透明導電層A)を接触させた際の動摩擦係数であり、「透明導電層の当該透明導電層に対する動摩擦係数」と同義である。また、透明導電性フィルムが、透明導電層/基材の構成である場合には、「透明導電層と当該透明導電層とは反対側の面とを接触させた際の動摩擦係数」は、透明導電層と基材とを接触させた際の動摩擦係数である。透明導電層と当該透明導電層とは反対側の面とを接触させた際の動摩擦係数が、上記範囲であれば、透明導電性フィルムを積層した際、あるいは、透明導電性フィルムをロールの形態とした際において、導電不良の発生を顕著に防止することができる。
【0021】
1つの実施形態においては、上記透明導電層はパターン化されている。パターン化の方法としては、透明導電層の形態に応じて、任意の適切な方法が採用され得る。透明導電層のパターンの形状は、用途に応じて任意の適切な形状であり得る。例えば、特表2011-511357号公報、特開2010-164938号公報、特開2008-310550号公報、特表2003-511799号公報、特表2010-541109号公報に記載のパターンが挙げられる。透明導電層は基材上に形成された後、透明導電層の形態に応じて、任意の適切な方法を用いてパターン化することができる。
【0022】
上記金属繊維としては、金属ナノワイヤが好ましく用いられ得る。上記金属ナノワイヤとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。金属ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤで構成された透明導電層を用いれば、金属ナノワイヤが網の目状となり、それぞれ接合することにより、良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電性フィルムを得ることができる。
【0023】
上記金属ナノワイヤの太さdと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は、好ましくは10~100,000であり、より好ましくは50~100,000であり、特に好ましくは100~10,000である。このようにアスペクト比の大きい金属ナノワイヤを用いれば、金属ナノワイヤが良好に交差して、少量の金属ナノワイヤにより高い導電性を発現させることができる。その結果、光透過率の高い透明導電性フィルムを得ることができる。なお、本明細書において、「金属ナノワイヤの太さ」とは、金属ナノワイヤの断面が円状である場合はその直径を意味し、楕円状である場合はその短径を意味し、多角形である場合は最も長い対角線を意味する。金属ナノワイヤの太さおよび長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
【0024】
上記金属ナノワイヤの太さは、好ましくは500nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、特に好ましくは10nm~100nmであり、最も好ましくは10nm~60nmである。このような範囲であれば、光透過率の高い透明導電層を形成することができる。
【0025】
上記金属ナノワイヤの長さは、好ましくは1μm~1000μmであり、より好ましくは1μm~500μmであり、特に好ましくは1μm~100μmである。このような範囲であれば、導電性の高い透明導電性フィルムを得ることができる。
【0026】
上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。金属ナノワイヤは、金、白金、銀および銅からなる群より選ばれた1種以上の金属により構成されることが好ましい。1つの実施形態においては、上記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである。
【0027】
上記金属ナノワイヤの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば溶液中で硝酸銀を還元する方法、前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤを引き出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法等が挙げられる。溶液中で硝酸銀を還元する方法においては、エチレングリコール等のポリオール、およびポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩の液相還元することにより、銀ナノワイヤが合成され得る。均一サイズの銀ナノワイヤは、例えば、Xia,Y.etal.,Chem.Mater.(2002)、14、4736-4745、Xia,Y.etal.,Nano letters(2003)3(7)、955-960に記載される方法に準じて、大量生産が可能である。
【0028】
上記透明導電層における金属ナノワイヤの含有割合は、透明導電層の全重量に対して、好ましくは80重量%以下である。このような範囲であれば、動摩擦係数の小さい透明導電層を形成することができる。上記透明導電層における金属ナノワイヤの含有割合は、透明導電層の全重量に対して、より好ましくは30重量%~75重量%であり、より好ましくは30重量%~65重量%であり、さらに好ましくは45重量%~65重量%である。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0029】
上記ポリマーマトリックスを構成するポリマーとしては、任意の適切なポリマーが用いられ得る。該ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系ポリマー;ポリウレタン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;ポリオレフィン系ポリマー;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);セルロース;シリコン系ポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリアセテート;ポリノルボルネン;合成ゴム;フッ素系ポリマー等が挙げられる。好ましくは、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)等の多官能アクリレートから構成される硬化型樹脂(好ましくは紫外線硬化型樹脂)が用いられる。
【0030】
透明導電層の密度は、好ましくは1.3g/cm~10.5g/cmであり、より好ましくは1.5g/cm~3.0g/cmである。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0031】
透明導電層は、基材(または、基材とその他の層との積層体)に、金属繊維(例えば、金属ナノワイヤ)を含む導電層形成用組成物を塗布し、その後、塗布層を乾燥させて、形成することができる。導電層形成用組成物には、ポリマーマトリックスを形成する樹脂材料が含まれていてもよい。あるいは、ポリマーマトリックスを形成する樹脂材料を導電層形成用組成物とは別に準備し、導電層形成用組成物を塗布し乾燥させた後、金属繊維から構成される層上に樹脂材料(ポリマー組成物、モノマー組成物)を塗布し、その後、樹脂材料の塗布層を乾燥または硬化させて、透明導電層を形成してもよい。
【0032】
上記導電層形成用組成物は、金属繊維(例えば、金属ナノワイヤ)の他、任意の適切な溶媒を含み得る。導電層形成用組成物は、金属繊維(例えば、金属ナノワイヤ)の分散液として準備され得る。上記溶媒としては、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられる。環境負荷低減の観点から、水を用いることが好ましい。上記導電層形成用組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、金属繊維(例えば、金属ナノワイヤ)の腐食を防止する腐食防止材、金属繊維(例えば、金属ナノワイヤ)の凝集を防止する界面活性剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0033】
上記導電層形成用組成物中の金属繊維(例えば、金属ナノワイヤ)の分散濃度は、好ましくは0.1重量%~1重量%である。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる透明導電層を形成することができる。
【0034】
上記導電層形成用組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコート、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布層の乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には50℃~200℃であり、好ましくは80℃~150℃である。乾燥時間は代表的には1~10分である。
【0035】
上記ポリマー溶液は、上記ポリマーマトリックスを構成するポリマー、または該ポリマーの前駆体(該ポリマーを構成するモノマー)を含む。
【0036】
上記ポリマー溶液は溶剤を含み得る。上記ポリマー溶液に含まれる溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、炭化水素系溶剤、または芳香族系溶剤等が挙げられる。好ましくは、該溶剤は、揮発性である。該溶剤の沸点は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0037】
C.基材
上記基材は、代表的には、任意の適切な樹脂から構成される。上記基材を構成する樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等が挙げられる。好ましくは、シクロオレフィン系樹脂が用いられる。シクロオレフィン系樹脂から構成される基材を用いれば、屈曲性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0038】
上記シクロオレフィン系樹脂として、例えば、ポリノルボルネンが好ましく用いられ得る。ポリノルボルネンとは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。上記ポリノルボルネンとしては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0039】
上記基材を構成する樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50℃~200℃であり、より好ましくは60℃~180℃であり、さらに好ましくは70℃~160℃である。このような範囲のガラス転移温度を有する基材であれば、透明導電積層体を形成する際の劣化が防止され得る。
【0040】
上記基材の厚みは、好ましくは8μm~500μmであり、より好ましくは10μm~250μmであり、さらに好ましくは10μm~150μmであり、特に好ましくは15μm~100μmである。
【0041】
上記基材の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような範囲であれば、タッチパネル等に備えられる透明導電性フィルムとして好適な透明導電性フィルムを得ることができる。
【0042】
上記基材は、必要に応じて任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤の具体例としては、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類および量は、目的に応じて適宜設定され得る。
【0043】
必要に応じて、上記基材に対して各種表面処理を行ってもよい。表面処理は目的に応じて任意の適切な方法が採用される。例えば、低圧プラズマ処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理が挙げられる。1つの実施形態においては、透明基材を表面処理して、透明基材表面を親水化させる。基材を親水化させれば、水系溶媒により調製された透明導電層形成用組成物を塗工する際の加工性が優れる。また、基材と透明導電層との密着性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0044】
D.金属層
上記金属層は、任意の適切な金属から構成される。好ましくは、銀、金、銅、ニッケル等等の導電性金属から構成される。1つの実施形態においては、上記金属層は、銅から構成される。
【0045】
上記金属層は、任意の適切な方法により形成することができる。上記金属層は、蒸着法やスパッタリング法、CVDなどのドライプロセス(乾式法)、めっきなどのウェットプロセス等により形成することができる。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0047】
[製造例1]
(金属ナノワイヤの製造)
攪拌装置を備えた反応容器中、160℃下で、無水エチレングリコール5ml、PtCl2の無水エチレングリコール溶液(濃度:1.5×10-4mol/L)0.5mlを加えた。4分経過後、得られた溶液に、AgNO3の無水エチレングリコール溶液(濃度:0.12mol/l)2.5mlと、ポリビニルピロリドン(MW:55000)の無水エチレングリコール溶液(濃度:0.36mol/l)5mlとを同時に、6分かけて滴下した。この滴下後、160℃に加熱して1時間以上かけて、AgNOが完全に還元されるまで反応を行い、銀ナノワイヤを生成した。次いで、上記のようにして得られた銀ナノワイヤを含む反応混合物に、該反応混合物の体積が5倍になるまでアセトンを加えた後、該反応混合物を遠心分離して(2000rpm、20分)、銀ナノワイヤを得た。純水中に、該銀ナノワイヤ(濃度:0.2重量%)、およびペンタエチレングリコールドデシルエーテル(濃度:0.1重量%)を分散させ、銀ナノワイヤインクを調製した。
【0048】
[実施例1]
基材(シクロオレフィンフィルム)上に製造例1で得られた銀ナノワイヤインクを、ワイヤーバーを用いて、製膜後の比抵抗値が50Ω/□となる様に塗布し、120℃で2分間加熱製膜した。
さらにウレタンアクリレートを主成分とする光硬化性樹脂を、イソプロパノール(IPA)とジアセトンアルコール(DAA)の混合溶媒(混合比(重量基準)IPA:DAA=8:2)で固形分濃度1.5%に希釈した塗工液aを用意し、上記銀ナノワイヤインク塗布面にスピンコーターを用いて乾燥膜厚が70nmとなる様に塗布し、80℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプで積算露光量450mJ/cmの紫外線を照射し、透明導電層Aを形成し、基材/透明導電層Aからなる透明導電性フィルムAを得た。
透明導電性フィルムAを以下の評価に供した。
(1)透明導電層Aに対する動摩擦係数
協和界面化学社製の商品名「TSf-503」を用い、JIS K7125:1999に準じて、接触子側のサンプル(透明導電層A)サイズ:1cm□、測定荷重:100g、測定速度:1mm/s、測定距離:30mm、測定温度:23℃の条件で、透明導電層Aと透明導電層Aとを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2)静摩擦係数
協和界面化学社製の商品名「TSf-503」を用い、JIS K7125:1999に準じて、接触子側のサンプル(透明導電層A)サイズ:1cm□、測定荷重:100g、測定速度:1mm/s、測定距離:30mm、測定温度:23℃の条件で、透明導電層Aと透明導電層Aとを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3)抵抗値上昇率
荷重を300gとしたこと以外は、上記動摩擦係数測定時の条件にて、透明導電層A同士を3cmの距離で1回摺動させた。
上記被摺動箇所およびそれ以外の箇所について、透明導電層の表面抵抗値を、非接触表面抵抗測定器(NAPSON社製、商品名「EC-80」、シート抵抗測定モード、室温:26℃)を用いて、測定した。
摺動による抵抗値上昇率を、(被摺動箇所の表面抵抗値/被摺動部以外の表面抵抗値)の式により求めた。
(4)透明導電層Aの算術平均粗さRa
Veeco Instruments社製 の走査型プローブ顕微鏡「NanoscopeIV」AFMタッピングモードを用いて、透明導電層Aの表面の5μm×5μmの領域における算術平均粗さRaを測定した。
【0049】
[参考例1-1]
実施例1と同様にして、透明導電性フィルムAを得た。
(1a)透明導電層A上の銅膜に対する動摩擦係数
別途、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムAを得た。得られた透明導電性フィルムAの透明導電層A上に、厚みが100nmとなるようにして銅膜をスパッタ成膜して、銅膜付透明導電性フィルムを得た。接触子側のサンプルをこの銅膜付透明導電性フィルムとして、上記(1)と同様の方法により、透明導電層Aと透明導電層A上の銅膜とを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2a)静摩擦係数
別途、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムAを得た。得られた透明導電性フィルムAの透明導電層A上に、厚みが100nmとなるようにして銅膜をスパッタ成膜して、銅膜付透明導電性フィルムを得た。接触子側のサンプルをこの銅膜付透明導電性フィルムとして、上記(2)と同様の方法により、透明導電層Aと透明導電層A上の銅膜とを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3a)抵抗値上昇率
上記(3)と同様の方法により、透明導電層Aと透明導電層A上の銅膜とを摺動させて、摺動による抵抗値上昇率を測定した。
(4a)透明導電層A上の銅膜の算術平均粗さRa
上記(4)と同様の方法により、透明導電層A上の銅膜の算術平均粗さRaを測定した。
【0050】
[参考例1-2]
実施例1と同様にして、透明導電性フィルムAを得た。
(1b)透明導電層dに対する動摩擦係数
基材(シクロオレフィンフィルム)上に製造例1で得られた銀ナノワイヤインクを、ワイヤーバーを用いて、製膜後の比抵抗値が50Ω/□となる様に塗布し、120℃で2分間加熱製膜した。
さらにウレタンアクリレートを主成分とする光硬化性樹脂を、メチルイソブチルケトンで固形分濃度1.5%に希釈した塗工液aを用意し、上記銀ナノワイヤインク塗布面にスピンコーターを用いて乾燥膜厚が70nmとなる様に塗布し、80℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプで積算露光量450mJ/cmの紫外線を照射し、透明導電層dを形成し、基材/透明導電層dからなる透明導電性フィルムdを得た。
接触子側のサンプルを透明導電性フィルムdとして、上記(1)と同様の方法により、透明導電層Aと透明導電層dとを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2b)静摩擦係数
接触子側のサンプルを透明導電性フィルムdとして、上記(2)と同様の方法により、透明導電層Aと透明導電層dとを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3b)抵抗値上昇率
上記(3)と同様の方法により、透明導電層Aと透明導電層dとを摺動させて、摺動による抵抗値上昇率を測定した。
(4b)透明導電層dの算術平均粗さRa
上記(4)と同様の方法により、透明導電層dの算術平均粗さRaを測定した。
【0051】
[参考例1-3]
実施例1と同様にして、透明導電性フィルムAを得た。
(1c)シクロオレフィンフィルムに対する動摩擦係数
接触子側のサンプルをシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン社製、商品名「ZF16」)として、上記(1)と同様の方法により、透明導電層Aとシクロオレフィンフィルムとを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2c)静摩擦係数
接触子側のサンプルをシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン社製、商品名「ZF16」)として、上記(2)と同様の方法により、透明導電層Aとシクロオレフィンフィルムとを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3c)抵抗値上昇率
上記(3)と同様の方法により、透明導電層Aと上記シクロオレフィンフィルムとを摺動させて、摺動による抵抗値上昇率を測定した。
(4c)シクロオレフィンフィルムの算術平均粗さRa
上記(4)と同様の方法により、上記シクロオレフィンフィルムの算術平均粗さRaを測定した。
【0052】
[参考例1-4]
実施例1と同様にして、透明導電性フィルムAを得た。
(1d)PETフィルムに対する動摩擦係数
接触子側のサンプルをPETフィルム(KOLON industry製、商品名「CE900」)として、上記(1)と同様の方法により、透明導電層AとPETフィルムとを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2d)静摩擦係数
接触子側のサンプルをPETフィルム(KOLON industry製、商品名「CE900」)として、上記(2)と同様の方法により、透明導電層AとPETフィルムとを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3d)抵抗値上昇率
上記(3)と同様の方法により、透明導電層Aと上記PETフィルムとを摺動させて、摺動による抵抗値上昇率を測定した。
(4d)PETフィルムの算術平均粗さRa
上記(4)と同様の方法により、上記PETフィルムの算術平均粗さRaを測定した。
【0053】
[参考例1-5]
実施例1と同様にして、透明導電性フィルムAを得た。
(1e)アクリルフィルムに対する動摩擦係数
接触子側のサンプルをアクリルフィルム(東洋鋼鈑社製、商品名「HX-40-UF」)として、上記(1)と同様の方法により、透明導電層Aとアクリルフィルムとを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2e)静摩擦係数
接触子側のサンプルをアクリルフィルム(東洋鋼鈑社製、商品名「HX-40-UF」)として、上記(2)と同様の方法により、透明導電層Aとアクリルフィルムとを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3e)抵抗値上昇率
上記(3)と同様の方法により、透明導電層Aと上記アクリルフィルムとを摺動させて、摺動による抵抗値上昇率を測定した。
(4e)アクリルフィルムの算術平均粗さRa
上記(4)と同様の方法により、上記アクリルフィルムの算術平均粗さRaを測定した。
【0054】
[実施例2]
塗工液aの乾燥膜厚を100nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、基材/透明導電層Bからなる透明導電性フィルムBを得た。
透明導電性フィルムBを以下の評価に供した。
(1B)透明導電層Bに対する動摩擦係数
協和界面化学社製の商品名「TSf-503」を用い、JIS K7125:1999に準じて、接触子側のサンプル(透明導電層B)サイズ:1cm□、測定荷重:100g、測定速度:1mm/s、測定距離:30mm、測定温度:23℃の条件で、透明導電層Bと透明導電層Bとを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2B)静摩擦係数
協和界面化学社製の商品名「TSf-503」を用い、JIS K7125:1999に準じて、接触子側のサンプル(透明導電層B)サイズ:1cm□、測定荷重:100g、測定速度:1mm/s、測定距離:30mm、測定温度:23℃の条件で、透明導電層Bと透明導電層Bとを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3B)抵抗値上昇率
荷重を300gとしたこと以外は、上記動摩擦係数測定時の条件にて、透明導電層B同士を3cmの距離で1回摺動させた。
上記被摺動箇所およびそれ以外の箇所について、透明導電層の表面抵抗値を、非接触表面抵抗測定器(NAPSON社製、商品名「EC-80」、シート抵抗測定モード、室温:26℃)を用いて、測定した。
摺動による抵抗値上昇率を、(被摺動箇所の表面抵抗値/被摺動部以外の表面抵抗値)の式により求めた。
(4B)透明導電層Bの算術平均粗さRa
Veeco Instruments社製 の走査型プローブ顕微鏡「NanoscopeIV」AFMタッピングモードを用いて、透明導電層Bの表面の5μm×5μmの領域における算術平均粗さRaを測定した。
【0055】
[比較例1]
実施例1と同様に銀ナノワイヤ層を製膜した。さらにウレタンアクリレートを主成分とする光硬化性樹脂にシランカップリング剤を添加し、メチルイソブチルケトンで固形分濃度1.5%に希釈した塗工液cを用意し、上記銀ナノワイヤインク塗布面にスピンコーターを用いて乾燥膜厚が70nmとなる様に塗布し、80℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプで積算露光量450mJ/cmの紫外線を照射し、透明導電層Cを形成し、基材/透明導電Cからなる透明導電性フィルムCを得た。
(1f)透明導電層dに対する動摩擦係数
接触子側のサンプルを透明導電層Cとして、上記(1)と同様の方法により、透明導電層Cと透明導電層Cとを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2g)静摩擦係数
接触子側のサンプルを透明導電層Cとして、上記(2)と同様の方法により、透明導電層cと透明導電層Cとを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3g)抵抗値上昇率
上記(3)と同様の方法により、透明導電層Cと上記シクロオレフィンフィルムとを摺動させて、摺動による抵抗値上昇率を測定した。
(4g)透明導電層dの算術平均粗さRa
上記(4)と同様の方法により、透明導電層Cの算術平均粗さRaを測定した。
【0056】
[比較例2]
参考例1-2に記載の方法と同様の方法で、基材/透明導電層dからなる透明導電性フィルムdを得た。
(1g)透明導電層dに対する動摩擦係数
接触子側のサンプルを透明導電層dとして、上記(1)と同様の方法により、透明導電層dと透明導電層dとを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2g)静摩擦係数
接触子側のサンプルを透明導電層dとして、上記(2)と同様の方法により、透明導電層dと透明導電層dとを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3g)抵抗値上昇率
上記(3)と同様の方法により、透明導電層dと上記シクロオレフィンフィルムとを摺動させて、摺動による抵抗値上昇率を測定した。
(4g)透明導電層dの算術平均粗さRa
上記(4)と同様の方法により、透明導電層dの算術平均粗さRaを測定した。
【0057】
[比較参考例2-1]
比較例2と同様にして、透明導電性フィルムdを得た。
(1h)透明導電層d上の銅膜に対する動摩擦係数
別途、比較例2と同様にして、透明導電性フィルムdを得た。得られた透明導電性フィルムdの透明導電層d上に、厚みが100nmとなるようにして銅膜をスパッタ成膜して、銅膜付透明導電性フィルムを得た。接触子側のサンプルをこの銅膜付透明導電性フィルムとして、上記(1)と同様の方法により、透明導電層dと透明導電層d上の銅膜とを摺動させて、動摩擦係数を測定した。
(2h)静摩擦係数
接触子側のサンプルを上記銅膜付透明導電性フィルムとして、上記(2)と同様の方法により、透明導電層dと透明導電層d上の銅膜とを摺動させて、滑り出しの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
(3h)抵抗値上昇率
上記(3)と同様の方法により、透明導電層dと透明導電層d上の銅膜とを摺動させて、摺動による抵抗値上昇率を測定した。
(4h)透明導電層d上の銅膜の算術平均粗さRa
上記(4)と同様の方法により、透明導電層d上の銅膜の算術平均粗さRaを測定した。
【0058】
上記実施例、参考例、比較例、比較参考例における評価結果を表1に示す。なお、動摩擦係数、抵抗値上昇率における接触子側のサンプルを、表中、「透明導電層に接触させる層」と表記している。
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、本発明によれば、透明導電層の算術平均表面粗さRaを特定することにより、金属繊維を含む導電層を備えながら、接触による導電性不良が生じがたい透明導電性フィルムを提供することができる。このような透明導電性フィルムは、参考例に示すように、種々のフィルム等と接触し摺動された際にも、抵抗値の上昇が抑えられる。
【符号の説明】
【0060】
10 基材
20 透明導電層
30 金属層
100、200、300 透明導電性フィルム

図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の透明導電性フィルムは、基材と、基材の少なくとも片側に配置された透明導電層とを備え、該透明導電層が、ポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス中に存在する金属繊維とを含み、該透明導電層の算術平均表面粗さRaが、1.5nm以上である。
1つの実施形態においては、上記金属繊維が、金属ナノワイヤである。
1つの実施形態においては、上記金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤである。
1つの実施形態においては、上記透明導電性フィルムは、金属層をさらに備える。
1つの実施形態においては、上記金属層が、銅から構成される。
1つの実施形態においては、上記透明導電層の厚みが、50nm~300nmである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明において、上記透明導電層の算術平均表面粗さRaは、1.5nm以上である。透明導電層の算術平均表面粗さRaを上記範囲とすることにより、このような範囲であれば、透明導電層への接触が生じた際にも、導電不良が生じがたい透明導電性フィルムを得ることができる。従来の透明導電性フィルムは、ロールの形態で提供される際、互いに接触することで表面に摩擦力がかかり、金属繊維を含む透明導電層を備える場合には、当該金属繊維同士の接合が外れて導電不良が生じやすい。一方、本願発明の透明導電性フィルムは、ロールの形態で提供された場合であっても、金属繊維同士の接合が維持され、所望の導電性が維持される。また、上記透明導電性フィルムが枚葉であっても、当該透明導電性フィルムを積層した際の接触、摩擦等による金属繊維同士の接合外れを防止することができる。また、上記透明導電性フィルムは、透明導電性フィルム同士の接触に限らず、その他の物品との接触に対しても優れた接触耐性を示し得る。上記透明導電層の算術平均表面粗さRaは、好ましくは2.0nm~5.0nmであり、より好ましくは3.0nm~4.0nmであり、さらに好ましくは3.0nm~3.5nmである。このような範囲であれば、上記効果は顕著となる。算術平均表面粗さRaは、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
上記実施例、参考例、比較例、比較参考例における評価結果を表1に示す。なお、動摩擦係数、抵抗値上昇率における接触子側のサンプルを、表中、「透明導電層に接触させる層」と表記している。
【表1】
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも片側に配置された透明導電層とを備え、
該透明導電層が、ポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス中に存在する金属繊維とを含み、
該透明導電層の算術平均表面粗さRaが、1.5nm以上である、
透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記金属繊維が、金属ナノワイヤである、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤである、請求項2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
金属層をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記金属層が、銅から構成される、請求項4に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記透明導電層の厚みが、50nm~300nmである、請求項1から5のいずれかにに記載の透明導電性フィルム。