(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040294
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】アングルピンブッシュおよびそれを備えた金型スライド
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20240315BHJP
B29C 45/33 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C45/33
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017055
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2021507688の分割
【原出願日】2019-08-14
(31)【優先権主張番号】62/718,470
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513295076
【氏名又は名称】アンソニー サーニグリア
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー サーニグリア
(57)【要約】
【課題】改良された金型スライドおよびアングルピンブッシュを提供する。
【解決手段】金型スライドは、第1の方向に沿って移動可能なスライド体を有するスライド部を有する。スライド本体は、その内部に形成されて軸線を規定するたアングルピンホールを有する。アングルピンホールは、その端部にポケットを有する。アングルピンブッシュは、ポケットに着座し、アングルピンホールの軸線に平行なアングルピンボアを規定する。金型部は、スライド部に隣接し、第1の方向とは異なる第2の方向に沿ってスライド部に対して移動可能である。アングルピンが金型部に担持されている。アングルピンの一部は、金型部内に位置し、アングルピンブッシュ内のアングルピンボアに対して、金型部と協働して移動し、スライド部を第1の方向に沿って移動させる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型スライドであって、
第1の方向に沿って移動可能なスライド本体を有するスライド部を備え、
前記スライド本体は、その中に形成されて軸線を規定するアングルピンホールを有し、前記アングルピンホールは、その一端にポケットを有しており、
前記金型スライドは、さらに、
前記ポケットに着座し、前記アングルピンホールの軸線に平行なアングルピンボアを画定するアングルピンブッシュと、
前記スライド部に隣接し、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って前記スライド部に対して移動可能な金型部と、
前記金型部上に担持され、その一部が前記金型内に位置し、前記アングルピンブッシュ内の前記アングルピンボアに対して、前記金型部と協働して移動し、前記スライド部を前記第1の方向に沿って移動させるアングルピンとを備える、金型スライド。
【請求項2】
前記スライド部および前記金型部は、射出成型ツールの一部である、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項3】
前記第2の方向は、前記第1の方向に対して垂直である、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項4】
前記アングルピンは、前記アングルピンホールの軸線に対して平行に配向され、前記軸線は、前記第1および第2の方向に対して0度より大きく90度未満の角度に配向される、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項5】
前記アングルピンホールは、円形断面形状である、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項6】
前記アングルピンブッシュの前記アングルピンボアは、略円形の断面形状である、請求項5に記載の金型スライド。
【請求項7】
前記アングルピンホールが、非円形の楕円形または長円形の断面形状を有するスロットである、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項8】
前記アングルピンブッシュの前記アングルピンボアは、非円形の楕円形または長円形の断面形状を有するスロットである、請求項7に記載の金型スライド。
【請求項9】
前記ポケットは、前記アングルピンホールの残りの部分よりも大きい幅を有し、前記アングルピンホールの残りの部分に隣接する前記ポケットの末端に肩部を画定するものであり、前記アングルピンブッシュは、前記ポケット内の前記肩部に対して支持される、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項10】
前記アングルピンブッシュは、前記アングルピンホールを取り囲む前記スライド部の上面と面一で、かつ平行である上面を有する、請求項9に記載の金型スライド。
【請求項11】
前記アングルピンブッシュは、その外面の一部にスカラップ領域を有し、前記スカラップ領域は、前記外面上に段差を画定する、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項12】
前記ポケットに隣接してクリップ凹部が形成され、前記クリップ凹部は、前記段差の位置に対応する深さを有しており、
前記クリップ凹部内に保持クリップが受け入れられて保持され、前記保持クリップは、
前記段差に当接して、前記アングルピンブッシュを前記アングルピンホールのポケット内に保持する、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項13】
前記アングルピンブッシュは、織物/樹脂複合材料から形成される、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項14】
前記アングルピンブッシュは、前記アングルピンブッシュの長さ方向に沿い、かつ前記アングルピンブッシュを貫通してその外面から前記アングルピンボアにまで形成された細長いスリットを有する、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項15】
前記アングルピンブッシュは、前記アングルピンブッシュの両側部のそれぞれの外面に形成された平坦な表面領域を有する、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項16】
前記アングルピンブッシュは、その一端にリードインリリーフ部を有し、前記リードインリリーフ部は、前記スライド本体の底面に面取り部を含む、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項17】
前記アングルピンホールの軸線、前記アングルピンブッシュの前記アングルピンボア、および前記アングルピンは、それぞれ互いに同心円状に配向される、請求項1に記載の金型スライド。
【請求項18】
前記ポケットに隣接するクリップ凹部内に保持クリップが受け入れられ、前記保持クリップは、前記アングルピンブッシュ上の段差に当接し、
前記保持クリップを貫通するファスナ穴と、前記スライド本体内のファスナ穴とが、ファスナを受け入れ、前記ファスナは、前記アングルピンブッシュを前記ポケット内に保持し、前記ファスナ穴およびファスナボアは、各々が前記アングルピンホールの前記軸線と少なくとも平行である軸線を有する、請求項17に記載の金型スライド。
【請求項19】
金型スライド用のアングルピンブッシュであって、
上面と底面との間に延在する外面を有する本体と、
前記上面と前記底面との間の前記本体を貫通して形成されるアングルピンボアとを備え、
前記上面および前記アングルピンボアの軸線は、互いに対して垂直ではない、アングルピンブッシュ。
【請求項20】
前記上面は、前記底面に対して平行ではなく、前記アングルピンボアは、前記底面に対して垂直であり、前記本体は、織物/樹脂複合材料で形成される、請求項19に記載のアングルピンブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許は、2018年8月14日に出願された同時係属中の米国仮出願第62/718,470号「アングルピンブッシュおよびそれを備えた射出金型スライド」の優先権を主張するものであり、本先出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、総括的には、射出成形装置に関し、より詳細には、射出成形のためのサイドアクションまたはスライドに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの射出成形部品は、成形部品の射出経路からコアとなる部分を除去するために、一般にサイドアクションまたはスライドと言及されるものを必要とする。この動きを作動させる一般的な方法は、アングルピンとして産業界に知られているものを利用することである。このような部分の他の共通用語は、カムピン、ペッカ-ピン、ホーンピンなどであり、その用語は製造の領域に依存する。アングルピンの名称が提示されるとき、このピン状部品は、成型プレートおよびスライドの運動軸に対してある角度で配向される。ピンの設置角度とピンの長さは、現在成型されている物品のキャビティからの射出経路をクリアするために、スライドの所望の移動又はストロークを発生させるために組み合わされる。
【0004】
図1~4を参照すると、典型的なサイドアクションまたはスライド部品、すなわち、スライド20は、そこから幾分か延びるコアリング要素24を有する本体22を有する。コアリング要素24は、成型部品内に空隙または所望の表面または形状を形成するために使用される。しかしながら、コアリング要素24は、金型からの部品排出経路内にある。したがって、スライド20は可動であるため、コアリング要素24は部品形成前に金型キャビティに向かって移動することができ、部品をキャビティおよび金型から排出できるように金型キャビティから引き出すことができる。いくつかの例では、スライド20は、アングルピン28を受け入れるために、本体22内にわずかにオーバーサイズの丸い又は円形の形状の孔26を有する。
図5および
図6に示すように、スライド30は、本体から突出するコアリング要素34を有する本体32を有する点で、スライド20と同様である。しかしながら、いくつかの例では、スライド30が細長い、非円形、楕円形、または長円形の穴、すなわち、本体32のスロット36を有する。
【0005】
図2および
図3は、スライド20を組み込んだ一般的な金型構造を示す。この例では、金型が第1の金型半体40および第2金型半体42を有しており、それらは、矢印MCおよびMOの方向にそれぞれ互いに向かって、かつ互いに離れて移動可能である。すなわち、それらは、金型を閉じたり、開いたりする。
図2は金型半体40、42が閉じた状態の金型を示し、
図3は、金型半体が開いた状態の金型を示す。金型半体40、42は、
図2の閉鎖位置で成型部品を成形することができ、かつ
図3の開放位置で成型部品を排出することができる金型キャビティ44を画定する。アングルピン28は、第2のモールド半体42に取り付けられた近位端を有しており、第2の金型半体の開口部46を通過する。アングルピン28の遠位端すなわち作用端48は、スライド20と係合するように第2の金型半体から突出している。
図2に示すように、金型半体40、42が閉じられた状態で、コアリング要素24は金型キャビティ44内に延びて、成型部品に空隙、空間、または他の形状を形成する。コアリング要素24は、金型キャビティ44をクリアするために外へ移動しなければならない。この例では、アングルピン28の作用端48と孔26が、金型の開閉方向MO/MCと直交する方向にスライド20を移動させる。したがって、コアリング要素24がキャビティ44から外に動かされるのと同時に、金型半体40、42が
図3の開位置までMO方向に分離され、成型部品がキャビティ44から排出されることを可
能にする。
【0006】
孔26とスロット36の両方がアングルピン28の設置角度に合った角度で切断される一方で、孔26の直径又はスロット36の半径は、
図2及び
図3に描かれているように、運動、即ち、スライド20(又は30)のストロークSを達成することができるように、常に過大サイズにされている。これは、典型的には「フィット」または「ランニングフィット」と呼ばれる。孔26またはスロット36の幾何学的形状に対するアングルピン28の場合、このランニングフィットは、金型開放プロセスを容易にするための追加の力を必要としないように、事実上非常に緩いものとなっている。この従来の緩い嵌合(ルースフィット)は
図4および
図6に示されている。このルースフィットは、また、荷重を受けてアングルピン28を拘束して破壊することなく、ピンのたわみを可能にする。ここでも、製造領域に応じて、典型的な穴の大きさは、アングルピン28の直径よりも直径が1/64インチ~1/32インチ大きくすることができる。
【0007】
先に述べたように、
図5及び
図6に描かれているように、オーバサイズの孔26よりもむしろスライド30内に細長いスロット36を機械加工することが時々望ましい。このスロット36の形状の目的は、金型半体40、42の分離に対するスライド30の横方向運動に対して、かなりのまたは所定の遅延、すなわちロストモーション効果を加えること、および方向MOにおける金型開放シーケンスに対するコアリング要素34の除去である。この運動遅延またはロストモーションを加えることにより、金型サイクルタイムを改善することができる。なぜなら、スライド30のコアリング要素34が、エジェクトされる金型半体40に部品を保持することによって冷却成形部品の自然な収縮および接着を助けるからである。典型的なスロット36の形状は楕円形である。楕円の幅は再び、スロットの各端部において、完全な、より大きなクリアランスのオーバーサイズ半径で、1/64インチ-1/32インチのオーバーサイズとなる。スロット長はアングルピン28が係合する前に、所望の量のモールド半体40、42分離まで伸長され、次いで、スライド30を移動させるのであろう。
【0008】
アングルピン28と係合するために利用される孔26または楕円形スロット36の幾何学的形状は、設置を簡単にするために意図的に設計された大きめの内面幾何学的形状を有することが確立されている。孔26又はスロット36は、共通のドリル及びリーム又はミリングプロセスを用いて形成される。アングルピン穴形状を設置または形成するためのより洗練された正確な方法が知られている一方で、形状そのものは、金型ツール構築の開始時に利用可能な機械加工慣行の遺産である。この従来の幾何学的形状は、作動中のアングルピン28とスライド孔26又はスロット36との間の表面接触領域を最小化する。もし、アングルピン28の場合のように、公称寸法のピンに対して、オーバーサイズの穴/スロット半径の間の接触領域を拡大するためであれば、
図4及び
図6に描かれているように、アングルピンとスライド穴/スロットの幾何形状との間の接線の接触線だけが、移動方向に沿って存在するのであろう。これにより、負荷は最小限の表面積に集中する。
【0009】
荷重を支えるこの最小の表面積は、使用中にアングルピン28、スライド20又は30、又はその両方のかじりが生じるほどの十分な摩擦熱をしばしば発生させる。また、接点の接線が摩耗する。このような摩耗は荷重をより大きな表面積にわたって分散させることができるが、工学的運動は表面接触もはや工学的仕様ではなくなるので、設計意図から変更される。また、
図7に示すように、アングルピン28と孔26またはスロット30とは、互いに対して正確に同じ角度でなくてもよい。これは、接触点がピンの先端またはその近くにあり、ピンの長さにわたる摩耗線に沿っていない結果として、アングルピン28に過度の負荷または応力を引き起こす可能性がある。これらの問題は磨耗したアングルピンの交換、損傷したスライドの修理または交換、またはより大きな直径のピンにアングルピンを交換し、より大きいアングルピンに対応するためにn金型を修正するなど、メンテナ
ンスおよび修理の増加につながる可能性がある。修理、改訂、および生産損失に関連するコストは、かなり大きくなる可能性がある。金型の大きさおよび必要な修理または交換部品に応じて、これらのメンテナンスコストが数万ドルのオーダーであることは珍しくない。
【0010】
一般に成型の性能要求のために、今日の金型または金型部品は、主に鋼およびアルミニウム合金から製造される。鋼およびアルミニウム部品の両方に、それらの有用なライフサイクルを試み、延長するために、様々な表面処理が試みられ、適用されてきた。不変に、これらの金属部品は、生産における円滑な動作を補助するために潤滑を必要とする。しかしながら、それらに潤滑剤を加えると、別のレベルの潜在的な問題が生じる。
【0011】
射出成形型が操作される多種多様な環境をさらに理解することが重要である。工業用樹脂は450°Fの鋳型温度を必要とするが、商品用樹脂はわずか60°Fの鋳型温度を必要とする。さらに、クリーンルーム成型は食品包装、医療デバイス、および他の製品のための部品を成形するための特定のプロセスを必要とする部品を成形するために望まれるか、または必要とされる成型コミュニティのセグメントであり、製造中のダスト、グリース、および他の汚染物質の可能性を最小限に抑える。クリーンルームは、空気中の汚染微粒子を最小限に抑えるためのエアフィルタを備えた正圧室である。クリーンルームに入る前に、クリーンルーム内で費やされる時間の間、すべての人は、ガウン、網およびビアネット、靴カバーなどを着用する必要がある。現在、クリーンルーム成型作業における潤滑には食品グレードのグリースが使用されている。食品グレードのグリースは圧力および耐熱性に関して非常に低い性能特性を有し、いずれも射出成形型の操業において要求され得る。金型や成形プロセスの精密さのため、クリアランスは最小であり、したがって、グリースは、オイル潤滑剤がどのように使用されるかのより典型的な厚さまたは薄さに広げられる。オイルは、金型内の構成部品の必要な機械的操作を可能にするようなオイルの封じ込めシステムがないため、選択肢ではない。
【0012】
加えて、現在の方法論および接点の接線は、金型ツーリング内の通常の摩耗微粒子を堆積させ、これらの微粒子は通常、潤滑剤またはグリース内に捕捉され、そこで、金型ツーリングの壊滅的な破損を引き起こす可能性がある。しかしながら、微粒子が金型工具又は成形品内の他の場所に移動することも可能である
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
単純に、オイルとグリースの両方を、射出成形ツールの操作に使用する場合、時間の経過と共に流動し、金型、成形部品、および生産設備を汚染する。FDAが認可したグリースは食用であるが、食品包装、装飾部品または包装、または医療デバイス成形部品上のグリース汚染はこれらの部品を不合格品として扱う。不合格部品は、不合格部品の処分に関して、各部品または処理者の手順に固有の高価なプロセスを動かすように設定される。罰金は、顧客によって課金されてもよい。生産時間や機械の停止時間が失われることがある。部品の再製造または再包装が必要になることがある。重大な樹脂損失が生じることがある。このリストは拒絶された部品からの潜在的な影響について続けており、これらの影響のいずれも、改善するのに望ましくないか、または安価ではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一例では本開示の教示によれば、金型スライドは第1の方向に沿って移動可能なスライド本体を有するスライドを有する。スライド本体はその内部に形成されたアングルピンホールを有し、軸線を規定している。アングルピンホールは、その端部にポケットを有する。アングルピンブッシュがポケットに着座し、アングルピンホールの軸線に平行なアングルピンボアを規定する。成型部はスライド部に隣接しており、第1の方向とは異なる第2
の方向に沿って、スライド部に対して移動可能である。金型部分にアングルピンがついている。アングルピンの一部はアングルピンブッシュ内のアングルピンボアに対して成型部内に配置され、成型部と協働して移動可能であり、スライド部を第1の方向に沿って移動させる。
【0015】
一例では、スライド部および成型部が注射出成型ツールの一部であり得る。
【0016】
一例では、第2の方向が第1の方向に垂直であり得る。
【0017】
一例ではアングルピンがアングルピンホールの軸線に平行に配向することができ、軸線は第1および第2の方向に対して0度より大きく90度未満の角度で配向することができる。
【0018】
一例ではアングルピンホールをほぼ円形の断面形状とすることができ、アングルピンブッシュの本体は本体の両側の側面に2つの限定された平坦領域を有する。
【0019】
一例では、アングルピンブッシュのアングルピンボアを略円形の断面形状とすることができる。
【0020】
一例では、アングルピンホールが非円形の楕円形または長円形の断面形状を有するスロットであってもよい。
【0021】
一例において、アングルピンブッシュのアングルピンボアは、非円形の長円形又は長円形断面形状を有するスロットとすることができる。
【0022】
一例では、ポケットがアングルピンホールの残部よりも大きな幅を有することができ、アングルピンホールの残部に隣接するポケットの終端にショルダ(肩)を画定することができる。アングルピンブッシングは、ポケット内のショルダに対して支持されることができる。
【0023】
一例では、アングルピンブッシュがアングルピンホールを囲むスライド部品の上面と面一で平行である上面を有することができる。
【0024】
一例では、アングルピンブッシュがその外面の一部にスカラップ状領域を有することができる。スカラップ状領域は、外面上に段差を画定することができる。
【0025】
一例では、クリップ凹部をポケットに隣接して形成することができ、それは、アングルピンブッシュの外面に形成された段の位置に対応する深さを有することができる。保持クリップはクリップ凹部内に受け入れられて保持されることができ、アングルピンホールのポケット内にアングルピンブッシュを保持するために段部に当接することができる。
【0026】
一例では、アングルピンブッシュを織物/樹脂複合材料から形成することができる。
【0027】
一例では、アングルピンブッシュが、アングルピンブッシュの長さに沿って形成され、外面からアングルピンボアまでアングルピンブッシュを貫通して形成された細長いスリットを有することができる。
【0028】
1つの例では、アングルピンブッシュが、アングルピンブッシュの両側の側面の各々において、外面に形成された平坦な表面領域を有することができる。
【0029】
一例では、アングルピンブッシュが、その一端にリードインリリーフ部を有することができる。リードインリリーフ部は、スライド本体の底面に面取り部を含むことができる。
【0030】
一例ではアングルピンホールの軸線、アングルピンブッシュのアングルピンボア、及びアングルピンは、それぞれ互いに同心に配向することができる。
【0031】
一例では、保持クリップをポケットに隣接するクリップ凹部内に受け入れることができ、それは、アングルピンブッシュ上の段部に当接することができる。留め具孔を保持クリップを通して形成することができ、留め具孔をスライド本体内に形成して、アングルピンブッシュをポケット内に保持する留め具を受け入れることができる。ファスナ穴(留め具孔)及びファスナボアは、各々、少なくともアングルピンホールの軸線と平行な軸線を有することもできる。
【0032】
本開示の教示による一例では、金型スライド用のアングルピンブッシュが本体を含む。本体は、上面と底面との間に延在する外面を有する。アングルピンボアは、上面と底面との間の本体を貫通して形成される。アングルピンボアの上面と軸は、互いに垂直ではない。
【0033】
一例では、本体を織物/樹脂複合材料から形成することができる。
【0034】
一例では、スリットを本体の長さに沿って、外面から本体を通ってアングルピンボアまで形成することができる。
【0035】
一例では、上面が底面と非平行であってもよく、アングルピンボアは底面に対して垂直であってもよい。
【0036】
本文書で提供される図面は開示の一又は二以上の例又は具体例を示すものであり、したがって、開示の範囲を制限するものとみなされるべきではない。目的を達成するために等しく有効であり、本開示の範囲内に入り得る他の例および実施形態が存在し得る。本発明の目的、特徴、および利点は、図面と併せて以下の説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】アングルピンホールが形成された従来技術のスライドの一例の斜視図を示す。
【
図2】
図1に示されているアングルピンおよびスライドを有し、かつ閉鎖位置にある金型の一例の断面図を示す。
【
図3】
図2のモールドおよびアングルピンの断面図を示すが、金型が開放位置にある。
【
図4】
図1に描かれているような、スライド用の従来技術のアングルピンおよび穴の断面図を示す。
【
図5】アングルピンスロットが形成された従来技術のスライドの別の例の斜視図を示す。
【
図6】
図5に描かれているような、スライド用の従来技術のアングルピンおよびスロットの断面図を示す。
【
図7】
図3の金型およびアングルピンの断面図を示すが、アングルピンおよび孔は整列していない、すなわち、正確に同じ角度に向けられていない。
【
図8A】本開示の教示による、スライド穴のためのアングルピンブッシュの1つの例、およびスライドスロットのためのアングルピンブッシュの1つの例のそれぞれの斜視図を示す。
【
図8B】本開示の教示による、スライド穴のためのアングルピンブッシュの1つの例、およびスライドスロットのためのアングルピンブッシュの1つの例のそれぞれの斜視図を示す。
【
図10】
図2のものと同様の金型の断面図であるが、金型スライド内に設置され、アングルピンと係合する
図8A及び9A~9Eのものと同様のアングルピンブッシュの1つの例も含む。
【
図11】本開示の教示による
図10のスライド、スライド穴、アングルピン、およびアングルピンブッシュのサドル形状の断面図を示す。
【
図12】
図11のものと同様の断面図であるが、本開示の教示によるスライド、スライドスロット、アングルピン、およびアングルピンブッシュのサドル形状の断面図を示す。
【
図13】
図10のスライド及びアングルピンブッシュ配置の部分分解図を示す。
【
図14A】本開示の教示による、
図10、11、および13に示されるタイプの組み立てられたスライドの斜視図を示す。
【
図14B】
図12に示されるタイプの組み立てられたスライドの斜視図を示す。
【
図15A】本開示の教示による複合アングルピンブッシュを製造するためのマンドレル形態および方法を示す。
【
図15B】本開示の教示による複合アングルピンブッシュを製造するためのマンドレル形態および方法を示す。
【
図16】本開示の教示によるアングルピンブッシュの1つの代替例を示す。
【
図17A】本開示の教示によるアングルピンブッシュの別の代替例を示す斜視図である。
【
図17B】本開示の教示によるアングルピンブッシュの別の代替例を示す上面図である。
【
図17C】本開示の教示によるアングルピンブッシュの別の代替例を示す正面図である。
【
図18A】本開示の教示によるアングルピンブッシュの別の代替例を示す斜視図である。
【
図18B】本開示の教示によるアングルピンブッシュの別の代替例を示す上面図である。
【
図18C】本開示の教示によるアングルピンブッシュの別の代替例を示す正面図である。
【
図19A】本開示の教示によるアングルピンブッシュの別の代替例の斜視図である。
【
図19B】本開示の教示によるアングルピンブッシュの別の代替例の平面図である。
【
図19C】本開示の教示によるアングルピンブッシュの別の代替例の正面図である。
【
図19D】本開示の教示によるアングルピンブッシュを組み込んだスライドの平面図である。
【
図19E】本開示の教示によるアングルピンブッシュを組み込んだスライドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
説明および図面を通して同じ参照番号または文字を使用することは、本開示の類似または同一の構成要素、態様、および特徴を示す。
【0039】
開示されたアングルピンブッシュおよび金型ツールスライドは、従来の公知の金型スライドおよびアングルピンの方法に伴う前述および/または他の問題、欠点、および欠点のうちの1つ以上を解決または改善する。開示は、アングルピンの機能性を改善するために、金型の側面動作またはスライドに適用されるアングルピンブッシュに関する。開示されたアングルピンブッシュは、アングルピンとの接触表面積を指数関数的に増加させながら、必要な幾何学的形状を考慮することによって上記を行う。開示されたアングルピンブッシュは、アングルピン直径をまたがるように設計された交換可能なインサートの形態である。開示されたアングルピンブッシュ、はアングルピン及びスライド穴又はスロットの両方の耐用年数を延ばすことができ、それによって、スライド要素及び金型ツールもしくは要素の予防的なメンテナンススケジュールを低減することができる。開示されたアングルピンブッシュは、アングルピンに潤滑剤又はグリースを使用する必要性を排除する。本開示のこれらおよび他の目的、特徴、および利点は、本開示を読めば当業者には明らかになるのであろう。
【0040】
開示された角度ピンブッシュのサドル形状は、さらなる摩耗が無視できる点までの金型の延長されたライフサイクルにわたって見られるスライド穴またはスロットの摩耗パターンとなるものを確立する。このような最小の摩耗は、数百万のインチ対数千のインチという関係であり、本質的には、時間の経過と共にスライドストロークに測定可能な差が生じない。その後、サドル形状は、スムーズな動作のために典型的な機能的クリアランス幅までフレア加工される。ここでも、開示したアングルピンブッシュの幾何学的形状は、金型ツーリングの全体的な機能を改善するのに役立つ。
【0041】
図8Aおよび8Bは、本開示の教示に従って構成されたアングルピンブッシュ50および52の2つの例を示す。アングルピンブッシュ50は、モールドスライドのためのほぼ丸い又は円形のスライド穴形状を規定する。アングルピンブッシュ52は、金型スライドのための長円形又は楕円形のスライドスロット形状を規定する。
図9A~
図9Eはアングルピンブッシュ50の様々な図を示し、これを詳細に説明する。本体およびスロットの長円形または楕円形以外の説明は、アングルピンブブッシュ52にも同様に適用可能である。
【0042】
図9A~
図9Eを参照すると、アングルピンブッシュ50は、外側外面56、上端又は端面58、及び底端又は端面60を有する略円筒形の本体54を有する。ボア62は、本体54を縦方向に完全に貫通し、したがって、上面58および底面60の両方に開口する。この例におけるボアはサドル形状に関して後述するように、正確に円形でなくてもよいが、一般に丸形または円形である。底面60は一般に平坦又は平面であり、ボア62の軸線Bに対して直交又は垂直に配向されている。上面58は上面が底面60に対して平行でなく、ボア軸線に対して垂直でないように、軸線Bに対してある角度で配向される。薄い又は狭いスリット64が、外面56からボア62まで本体54に沿って長手方向に形成されている。スリット64は、本体54の円周に切れ目を形成する。
【0043】
上面58のうち、底面60からの距離に関連して、相対的に低い点Lは、アングルピンブッシュ50の正面(
図9D参照)の基準となり、上面のうち、底面からの距離に関連して、高い点Hは、アングルピンブッシュの背面の基準となる。これらの基準を念頭に置くと、本体54の対向する側面は、上面58と底面60との間でアングルピンブッシュ50に沿って長さ方向に延びる比較的狭くて平坦なタイミング面66を含むことができる。これらの平坦面66は本体54に略円形状を与えることができるが、外面56には僅かに楕円形状を与えることができる。また、この例では、本体54は、上面58から本体54の前面の外面56に形成されたスカラップ状の、または厚みが減じられた領域68を有しており、その領域は、本体の長さ方向に沿って途中位置で終端となる。スカラップ領域68
の末端又は端部は、アングルピンブッシュ50の前部に段部70を画定する。
【0044】
アングルピンブッシュ52は、この例では実質的に同じ構造を有する。しかし、アングルピンブッシュ52は、実質的に円形である代わりに、実質的に長円形または楕円形の形態である本体72を有する。さらに、アングルピンブッシュ52は、所望ならば、楕円形または長円形の形状を有する軸受74を有し、上述のロストモーション遅れを作り出す。アングルピンブッシュ52の他の特徴は、本質的にアングルピンブッシュ50と同じであり、従って、図面において同じ参照番号を使用して描かれている。
【0045】
図10に示されているように、また、アングルピンブッシュ50に関連して、金型およびスライド構成、すなわち金型スライドが簡単に描かれている。金型は再び、金型部品として、第1半型(図示せず)と、アングルピン28を担持する第2半型42を有する。それらの金型半体は、前述のように、矢印MC/MOの方向において互いに対して移動可能である。金型はまた、スライド部、すなわち、本体82およびコアリング要素84を有するスライド80を有する。スライド80は更に、ほぼ丸い又は円形の断面形状を有する穴86を有する。孔86は本体82を通る角度で形成され、換言すれば、本体の上面88及び底面90に対しても、また移動又はスライド方向Sに対しても垂直ではない。
【0046】
開示されたアングルピンブッシュ50は、孔86内に受け入れられる。開示された例では、アングルピンブッシュ50がポケット92内、すなわち、スライド部の穴の一端の穴86のより大きな直径の部分内に受け入れられる。アングルピンブッシュ50の底面60は、ポケットの深さまたは終端、すなわち、より大きな直径のポケット92が孔86内で終端するところで、ショルダ(肩部)94またはレッジに対して支持される。肩部94はアングルピンブッシュ50の更なる孔への挿入を停止し、従って、アングルピンブッシュをスライド80の孔内の所望の深さに適切に位置させる。斜めにされた上面58は、スライド80の配向およびスライド方向Sに対する孔86の角度と同じ角度で、ボア62の軸Bに対して配向されている。上面58の角度、アングルピンブッシュ50の長さ、および孔86内の肩部94の深さを制御することによって、上面58は、スライド80の本体82上の上面88と面一になる。
【0047】
本明細書で使用される「サドル形状」という用語は一般に、アングルピンとブッシュ表面との間の接触領域を指す。具体的には、アングルピンブッシュボアの接触側における半径がアングルピンカタログサイズと本質的に同様である。実際のアングルピンは、カタログサイズよりも約0.001インチ下のサイズである。したがって、ブッシュは、動作半径に関し、すなわち、サドルまたはピンとブッシュとの接触領域に0.0005の隙間を有することになる。さらに、この半径は、各接触側でブッシュの中央面から約90度(各方向に45度)にわたる。したがって、アングルピン直径の0.0005インチ以内である90度の半径の範囲となる。この組立てられた又は設計されたサドルの幾何学的形状は基本的に、先行技術のルースフィット配置において生じた多くのサイクルの摩耗に近似し、即ち、ピンとボアとスライド材料との間のより多くの表面接触に対する、経時的な摩耗接点の接線に近似したものとなる。そうでなければ、スライドおよびアングルピンの構造における摩耗は、ブッシュ内で進行するにつれて、グリース中に堆積する粒子状物質をもつことになろう。開示されたアングルピンブッシュによって提供される表面積の増加により、開示されたブッシュは、摩耗微粒子を排除するであろう。また、このサドル形状は、開示された複合材料ブッシュがアングルピンに対して意義ある支え面を有することを保証する。現況の設計では、上述の著しく過大なサイズの孔または楕円形のスロットが使用され、摩耗の問題を引き起こす。
【0048】
図11に示すように、既存のスライド及びアングルピンに必要なルースフィット又はランニングフィットの必要性は、減少又は排除される。ボア62のアングルピン28の直径
及びサドルの幾何形状又は形状は、アングルピンブッシュ50を通るピンの直径に非常に密接に適合させることができる。同様に、
図12に示すように、アングルピンブッシュ52は、ボアスロット幅を有することができ、ボア74の各端部におけるサドル形状又は形状も、ピン直径に非常に密接に適合させることができる。さらに、
図10に示すように、ポケットの下のスライド80の孔86(またはスロット)の直径は、アングルピン28の直径よりも大きくすることができる。これは、以下に説明する理由のために、アングルピン28の先端または末端に隙間を提供する。
【0049】
図10及び
図13に示すように、アングルピンブッシュ50は、保持クリップ96によってスライド80の本体82内に保持することができる。クリップ凹部98が、ポケット92の深さよりも浅い深さまで、上面88の本体82に形成されている。クリップ凹部98はポケット92から本体82内にさらに外側に横方向に延在し、レッジ100で終端する。棚の深さはアングルピンブッシュ50上の段差70の深さ位置と同じであり、本体54上のスカラップ形又は縮小された厚さ領域68はクリップ凹部98と一致する。保持クリップ96は、本体内のクリップ凹部98とアングルピンブッシング50上のスカラップ領域68とによって形成されるスライド80の本体82内の空隙内に嵌合するように寸法決めされ、成形される。保持クリップ96は、アングルピンブッシュ50上の段部又は段差70とポケット92内のレッジ100の両方に対して支持される。ネジ102のような締結具を保持クリップ96の孔104に挿入し、クリップ凹部98のネジ孔106に係合させて保持クリップ96を所定の位置に固定することができる。
【0050】
また、スロット形状のボア74を有するアングルピンブッシュ52は、同じように固定され得るが、本体72の楕円形又は長円形を収容するように改造されたスライド内で固定することもできる。スライド本体82のクリップ凹部98、アングルピンブッシュ50または52の前部のスカラップ領域68、および保持クリップ96の大きさおよび形状は、かなり変えることができ、しかも意図したように機能することができる。しかしながら、金型」ツールのこれらの要素及び態様は、互いに適合するように協働的に成形されるべきである。
図14Aおよび14Bは、対応するスライドに設置されたアングルピンブッシュ50および52を示す。保持クリップ96およびアングルピンブッシュ50、52の両方は、スライドが組み立てられたときにスライドの上面88と面一にすることができる。
【0051】
本明細書に示され説明されているような開示されたアングルピンブッシュ50および52は、従来のアングルピンの方法を超える改良を提供する。更に、開示されたアングルピンブッシュ50及び52の設置及び保持も新規である。以下に述べるように、アングルピンブッシュ50及び52は異なる材料から作ることができ、従って、スライド本体内のアングルピン接触面は、従来技術のようにスライド本体の材料に限定されない。アングルピンブッシュ50及び52のために選択される材料は、所与の金型への応用に鑑みて、摩耗特性、コスト、耐久性、摩擦特性、交換スケジュール等を最大化するために選択することができる。開示されたアングルピンブッシュ50及び52は、スライド要素又は部品の穴又はスロット内のマッチング角度を持つポケット内に設置される。スライド内のポケット及びブッシュ本体54及び72のサイズ及び形状は、所与の金型への応用に依存して、開示された実施例からかなり変化させることができる。
【0052】
スライド本体54又は72内のポケット肩部94は、スライドの孔86又はスロットへのアングルブッシュ50及び52の設置深さを所定のレベルに制限する。開示された例におけるアングルピンブッシュ50及び52は、本体54又は72の両側部に2つの平坦なタイミング面66を有する。これらの表面又はフラット面66は、アングルピンブッシュ50又は52をその長手方向軸線の周りに配向させ、その結果、ブッシュの幾何形状が対応するスライド本体の孔86又はスロットと整列する。従って、アングルピンブッシュ50及び52は、金型アングルピン28と正確に整列することができる。平坦面66及びア
ングルピンブッシュ50及び52の設置深さは、設置されたときにブッシュ上面58がスライド80等の上面88と面一になるように構成することができる。平坦面66は、本体72の楕円形又は長円形の形状のため、アングルピンブッシュ52上でより広くすることができる。
【0053】
材料選択に関して、本明細書に記載されるようなアングルピンブッシュ50および52は、青銅、アルミニウム青銅、または他の適切な金属軸受材料などの耐摩耗性の高い金属で製造されてもよい。このようなブッシュは、摩擦による熱の蓄積を最小限に抑え、円滑な動作を可能にするために、少なくともそれぞれのボア62又は74の内面にコーティング及び/又は潤滑剤を含むことができる。これらの材料から製造された製品は、産業界がこれらの種類の共通材料が産業界において熟知されているので、産業界に容易に採用されるのであろう。しかしながら、開示されたアングルピンブッシュ形状は、今や、アングルピンブッシュ50及び52を製造するために使用され得る材料の考察及び範囲を広げる。アングルピンブッシュ50及び52のための望ましい材料選択は、いかなる潤滑も必要とせず、独特で新規な形状を強化するために当然耐摩耗性を有し、全ての現在の成型環境において実行されるのであろう。一例では、そのような代替材料が製造時に見られるような広範囲の環境内で機能することができる樹脂系を有する耐摩耗性織物/樹脂複合体であろう。
【0054】
開示されたアングルピンブッシュ50及び52は本質的にブッシュであり、いくつかの標準的なブッシュが、射出成型における他の目的のために使用される。従って、金型ツール形成の分野において、標準的なブッシュが、典型的には、それらの対応する開口内に意図的な干渉圧入を伴って設計されることを理解すべきである。したがって、標準的なブッシュは、典型的には、数トンの圧力を生成することができる液圧シリンダーを装備したプレスの補助で圧入または挿入されることを必要とする。これは、標準的なブッシュが意図的にその外径においてオーバーサイズにされ、金型ツール内の嵌合穴内に干渉嵌めを作り出すために必要である。このプロセスは、ブッシュと受入れボアとが金型ツール表面に対して軸方向に垂直であり、ブッシュとオリフィスとの間の初期接触が互いに平行であるので、本質的に比較的単純である。
【0055】
対照的に、開示されたアングルピンブッシュ50および52の場合、
図13に描かれているように、設置は設置面に対して平行ではない。油圧プレスを使用する必要性は非実用的であり、面倒であり、設置角度に適応するのに時間がかかるのであろう。この角度αは典型的には90°未満であり、多くの例では、所与の金型ツールへの応用のための金型分離レート当たりの所望のスライドレートに応じて、約10°~約20°である。開示されたアングルピンブッシュ50及び52は、わずかな圧入で取付け中に補助し、ブブッシュを着座させるために液圧プレスを作動する必要がないという2つの幾何学的特徴を任意に有していてもよい。第1のそのような任意の特徴は、アングルピンブッシュ本体54または72のベース、すなわち底面60に隣接するリードインリリーフ部110である。この例では、リリーフ部110は傾斜しており、したがって、アングルピンブッシュ50又は52の底面60に対して垂直ではない。一例では、リリーフ部110のテーパ角度が、スライド本体の孔86またはスロットの角度αと同じであってもよい。また、リリーフ部110はわずかに面取りされており、その結果、リリーフ部は、孔86又はスロットに容易に嵌合し、かつ、リリーフ部と、設置ポケット92の受入れアングルと平行になるブッシュの軸方向外側輪郭との間の表面交差線を維持するように、工学的に設計されることができる。
【0056】
このようなオプションの第2の特徴は、アングルピンブッシュ50及び52の長さに沿って設けられ、かつ、特に2つの平坦なタイミング面66のうちの一方の内部に位置する狭いスリット64である。スリット64は、アングルピンブッシュ50又は52が設置中
に最小限のたわみを有することを可能にするように設計されている。スリット64の配置は、動作表面、すなわち、アングルピンブッシュ50及び52の内側の前部及び後部ピン接触面から意図的に離れて配置されている。この位置決めは、ブッシュがこのプロセス中にブッシングを損傷する可能性のある余分な力を必要とせずに、取付けを可能にしながら、意図した通りに実行できるようになっている。
【0057】
上述した織物/樹脂複合材料に関しては、種々の製造方法によって複合材料で成形することができる幾何学的形状にほとんど制限はない。非常に共通ジオメトリは、円柱のジオメトリである。従来形状のアングルピンブッシュをシリンダー(円柱)として製作できた。しかし、それでも、アングルピンブッシュとアングルピンとの間の接点の接触線が得られるのであろう。新規な幾何学的形状がシリンダー内に機械加工される場合には、織物/樹脂複合材料基材の繊維が、耐摩耗性複合材料の連続的な途切れのない表面によって得られる織物/樹脂複合材料の耐摩耗能力を最大にするような方向に向いていないので、性能の欠陥を有する製品をもたらすことになる。したがって、一例では、アングルピンブッシュ50または52の新規な幾何学的形状が、
図15Aに描かれているようなマンドレル112のような独特のマンドレルで作成することができる。マンドレル112は、内部ブッシュの幾何形状を形成するように正確に成形することができる。織物/樹脂複合材料114をマンドレルの周りに巻き付けて、所望の厚さを有するブッシング本体54を得ることができる。複合材料基板114を、適切なサイズのアングルピンと直接接触して作用表面に係合するように配向させることができ、それによって複合材料の耐摩耗特性を最大化することができる。複合材料114がマンドレル112に形成された後に、スリット66及びスカロップ領域(波形領域)68及び段部70のような特徴的な外側表面をブッシュ本体に機械加工することができる。
【0058】
開示されたアングルピンブッシュ50及び52は金型加工業界(プラスチック部品の成型業者)にとって有益であると説明してきたが、金型ツール構築業界(ツーリングを構築する機械加工業者)もまた、耐摩耗性金属合金又は布/樹脂複合材のいずれかで構築されたアングルピンブッシュの利用可能性及び実施からも利益を得るのであろう。前述したように、スライドを動かすのにかなりの力が必要とされることがある。この力によって、工具鋼合金として通常参照されるものからスライド部品自体を製造することを必要とするであろう。スライドを動かす力のための軸受表面として作用するアングルピンブッシュについては、ある種のステンレス鋼、アルミニウム、およびその他のような代替材料を、金型ツールスライドとして使用することも考慮に入れることができる。
【0059】
工具鋼合金は、ポンド(重量)当たりより高価であり、一般に、最初に機械加工するためにより多くの時間を必要とし、合金特性を最大化するために熱処理を必要とする。熱処理プロセスは費用および時間を追加するが、部品を形成するために必要とされる二次的な機械加工操作から、より大きな費用が生じる。さらに、熱処理は、合金の分子構造を変化させる。この分子構造の変化は金型工具業界に知られており、熱処理を実行する前の初期機械加工プロセスにおいて考慮されるファクタである。要約すると、工具鋼合金は、最初の機械加工時に余剰の鋼を残して機械加工される。余剰の鋼は、熱処理工程中に生じる反りと寸法変化を許容する。次いで、熱処理プロセスが終了すると、ここで、金型工具製造業者は、反りを修正し、所望の正確な仕様に部品を適切に仕上げるために、硬化した工具鋼要素に2回目の機械加工を施す必要がある。このように、開示されたアングルピンブッシュ50及び52は、スライド本体要素として使用できる材料の範囲を、現在の材料及び製造技術において普通に見られるものだけでなく、進化する材料及びプロセスを含むような範囲にまで広げることができる。金型スライドは、成形を強化するために開発されるが、成型動作中にアングルピンと干渉する荷重支え面にはあまり適さないであろう3D印刷要素および新しい材料の組合せを含むことができる。再び、熱処理プロセスは、これが典型的な特別処理であるため、費用および作業遅延を増す。
【0060】
作動中、金型アングルピン28は、以下の態様でアングルピンブッシュ50または52に係合する。すなわち、ピンは、金型半体の分離中に受け入れポケット92からブッシュを引き出し、次いで、金型半体が閉鎖するときにブッシュをポケット内により深く押し込むようにする。ポケット底部の肩部94は、金型半体が閉鎖するとき、アングルピンブッシュ50又は52がスライド部品を通して強制的に押し出されるのを防止する。保持クリップ96は、アングルピンがブッシュから出るときに、ブッシュの上部でしっかりとした支えを提供しながら、アングルピンブッシュ50又は52を適所に保持する。保持クリップ96はこのタスクを達成するために様々な幾何学的形状を有することができるが、開示されたクリップ幾何学的形状は、
図10及び13に示すように、アングルピンブッシュ50または52の力を受ける表面領域の背後に支えを提供する。開示されたアングルピンブッシュポケット92および保持クリップ凹部98は、スライド80のようなスライド要素の穴86またはスロットに適合する角度で配置され、その結果、ポケットおよび凹部の深さが容易に達成され、ポケット表面が穴またはスロットの角度に平行であり、使用されている工作機械にかかわらず、単一のセットアップを可能にする。
【0061】
スライド部品内のアングルピンブッシュの位置と取付け方法は、金型業者と金型構築業者の両方に利点をもたらす。金型業者にとって、アングルピンブッシュ50または52の位置は、以下のことを確実にする。すなわち、アングルピン28がブッシュと係合するとき、スライド運動を行わせるのに必要な力がアングルピンの近位端により近く、すなわち、アングルピンが第2の金型半体42内に支持される取り付け開口部46により近くなる。アングルピンの作用端48の一部は、アングルピンブッシュ50または52を通って、アングルピンブッシュおよびポケット92の下またはそれを越えて、利用可能な隙間空間または孔86の部分内に延びる。場合によっては、アングルピンホール86またはアングルピン取り付け開口部46の向きは、次のように形成され、または設定される。すなわち、角度が、秒または分毎に、すなわち、設計仕様から1度毎の大きさで変化する。アングルピンブッシュ50又は52がないと、作用端48におけるアングルピン28の先端部は、その先端部のところでスライドに係合し、そこでは、
図7に示すように、てこのように動き、その後撓む。これは、潜在的に、ピンの破滅的な故障を引き起こし、金型ツールを損傷する可能性がある。
【0062】
金型構築業者に関して、大きなスライドの場合、典型的なアングルピン穴はかなり深くなり得る。アングルピン穴は、穴の深さ全体に沿って滑らかであることが要求される。深いスライドを通る滑らかで真っ直ぐな穴を作ることは、ガンドリルのような特別な装置に限定される。ガンドリリングは、ガンドリリングプロセスを専門とするユニークなサービスプロバイダによって実行されることが最も多い。これは、スライドがサービス提供業者に出荷されることを必要とし、金型製造業者にとってかなりの費用と遅延をもたらす。開示されたアングルピンブッシュ50及び52は、スライドアングルピン穴形状全体を貫通する穴の表面仕上げを懸念することなく、深いスライドを貫通するクリアランスの従来の穴あけを可能にする。アングルピンブッシュ50または52は、滑らかな作用面を提供し、スライド内の孔86および受け入れポケット92の必要な機械加工は、従来の工作機械装置で容易に達成される。
【0063】
さらに、
図13に最もよく示されているように、スライド80のアングルピンホール86(またはスロット)、アングルピンブッシュ50(または52)、およびアングルピンボア62(または74)は、それぞれ、互いに同心でないとしても、少なくとも互いに平行に向けられた軸を有するように形成されている。保持クリップ96はアングルピンブッシュ50(又は52)上の段部70に当接し、従って、ポケット92の一部及びクリップ凹部98内に受け入れられる。保持クリップネジ孔104、スライド80のネジボア106、およびネジ102は、アングルピンブッシング50(または52)を孔86(または
スロット)内に保持し、アングルピン孔と平行な方向に取り付けられる。保持クリップ96、ねじ孔104、ねじボア106、およびねじ102はそれぞれ、互いに対して少なくとも平行で、かつアングルピン孔86(またはスロット)、アングルピンブッシュ50(または52)、およびアングルピンボア62(または74)の軸と平行な軸を有する。この構成では、これらの様々な軸のすべてが、アングルピンホール86(またはスロット)の軸と平行である。従って、フライス盤を使用して、アングルピン孔86(又はスロット)内のアングルピンブッシュ50(又は52)のためのスライド80の本体にスライドポケット92を形成するとき、スライド80を別の角度に再位置決めしてブッシュポケット92及びリテーナクリップ凹部98を形成する必要なしに、全ての様々な表面及び孔を形成することができる。より具体的には、アングルピン穴86をドリルで開けることができ、ブッシュポケット92を形成することができ、保持クリップ96用のクリップ凹部98を形成することができ、保持クリップ96クリップ用のねじ穴104およびねじ穴106をドリル加工することができる。それらの加工の際、スライド80の向きを変えることなく、すべて同じ軸角度で行うことができる。この形状は、従って、製造プロセスを単純化する一方で、開示されたアングルピンブッシュを利用する多くの利点を依然として提供する。
【0064】
アングルピン28は、第2の金型部42が異なる方向に移動するときに、スライド80の所望の移動量を一方向に作り出すために所望の角度で配向される。一例では、スライド80は、金型が開くのか閉じるのかに応じて、水平方向に前後に移動することができる。金型部42は、スライド移動方向に対して垂直な縦方向で、上下方向に移動してもよい。他の様々な相対移動方向も同様に可能である。
【0065】
上述のように、開示したアングルピンブッシュの形態および構造は、かなり変えることができ、しかもその場合でも意図した通りに機能する。多くの可能な例のうちのごく少数のみが以下に記載される。
図16を参照すると、アングルピンブッシュ120の1つの代替例が示されている。この例では、アングルピンブッシュ120が、2つの別個のブッシュ部品l22aおよびl22bに分割される。各部品l22aおよびl22bは、互いに対向する支え面124を有し、ブッシュ120のサドル形状を規定する。各ブッシュ部品l22a及びl22bは、アングルピンブッシュ120をスライドのアングルポケットに固定するための別個のファスナ孔126を有する。部品l22aおよびl22bは、アングルピンブッシュ120を横切る高さでテーパ状になっていてもよく、その結果、従来の例と同様のアングルポケットをスライド内で使用することができ、その場合、上面はスライドと面一であり、支え面はアングルピンの角度で配向している。
【0066】
図17A~17Cは、アングルピンブッシュ130の別の代替例を示す。この例では、アングルピンブッシュ130が、アングルピンブッシュをスライドの長方形ポケットに固定するためのアングルピンボア136を囲む4つのファスナ穴(留め具穴)134を含む長方形本体132を有する。アングルピンブッシュ130は、さもなければ、先に説明したアングルピンブッシュ50、52の例に類似していてもよい。
【0067】
図18A~18Cは、アングルピンブッシュ140の別の代替例を示す。この例ではアングルピンブッシュ140は再び矩形本体142を有するが、その代わりに、アングルピンブッシュをスライドの矩形ポケット内に固定するためのアングルピンボア146の前側に隣接する2つのファスナ穴144のみを含む。アングルピンブッシュ140は、さもなければ、先に説明した角度ピンブッシュ50、52、130、例に類似していてもよい。
【0068】
図19A~19Cは、アングルピンブッシュ150の別の代替例を示す。この例では、アングルピンブッシュ150が再び、アングルピンブッシュをスライドの長方形ポケット内に固定するためのアングルピンボア156の前側に隣接する2つのファスナ穴154を
有する長方形本体152を有する。しかしながら、この例では、本体152の上面158及び底面160は互いに平行である。代わりに、アングルピンボア156は、上面158の配向に対してアングルピンの角度で配向される。この例では、
図19Dおよび
図19Eを参照すると、スライド162は、本体152の上面158および底面160の向きに直交または垂直なポケット164を有するように形成される。アングルピンホール166は、ポケット164の底部、すなわち段部168からスライド162の残りの部分を通って形成される。アングルピン孔166は、アングルピンボア156と同じ角度で配向され、したがって平行である。アングルピン孔166の直径は、上述したように、使用中にアングルピンの作用端のためのアングルピンブッシュ150の下にクリアランス空間を作り出すために、アングルピン孔156の直径よりもわずかに大きい。
【0069】
前述の代替例は、本開示の教示に従って構成され、アングルピンブッシュのサイズ、形状、特徴、および特性が本明細書に示され、説明される限定された例から変化し得ることを示す。別の例では、代替アングルピンブッシュ120、130、140、および150の各々は、アングルピンブッシュの本体をスライドポケット内に直接保持するためのファスナを使用することにより、保持クリップ、保持ネジ、およびクリップ凹部を排除する。
【0070】
アングルピンを有する金型スライドを組み込んだ金型ツール及び部品、及び開示されたアングルピンブッシュもまた、かなり変形させることができる。射出成型ツールは、典型的には上述のように、2つのそれぞれの金型半体に分離される。これらの金型半体は一般に、型ツールの「A」側および「B」側として知られている。型ツールはしばしば、型の「A」側または「B」側のいずれかに配置された1つ以上のスライドを含む。典型的には、一方の金型半体が金型のキャビティ側または「A」側であり、他方の金型半体が金型のコア側または「B」側である。金型の「A」側のリーダーピンまたはポストが真っ直ぐに立ち上がり、金型の開/閉方向と整列もしくは平行になる。閉位置に組み立てられたとき、リーダーピンは、典型的には「B」側に配置された孔および標準ブッシュ内に整列する。アングルピンが、金型の「A」側にあってもよく、スライド部品の孔またはスロットと整列する。スライドは、典型的には、金型が閉じるとき互いに向かって移動することができる。金型ツールのサイズおよび生産性は、部品の寸法および複雑さ、ひいては金型キャビティに応じて、広範囲に変化し得る。一例では、金型が2つの対向するスライドを有する4キャビティツールとすることができる。別の例では、金型が十数個以上のキャビティおよび多数の複雑なスライドを有することができる。上述したように、金型は数百ポンドのオーダーであってもよいし、数千ポンドのオーダーであってもよい。開示されたアングルピンブッシュは、任意の特定の型のタイプ、サイズ、または配置に限定されることを意図していない。
【0071】
本明細書では本開示の教示に従って、特定のアングルピンブッシュの要素、態様、特徴、および方法を説明してきたが、本特許の適用範囲はそれに限定されない。それどころか、本特許は、許容される均等物の範囲内にかなり入る本開示の教示のすべての実施形態を網羅する。