(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040296
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 75/08 20060101AFI20240315BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20240315BHJP
G02C 7/00 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
C08G75/08
G02B1/04
G02C7/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017118
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2022507252の分割
【原出願日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2020041402
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020194660
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末杉 幸治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】松井 勇輔
(57)【要約】
【課題】得られる光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を良好に短縮することができる光学材料の製造方法によって製造できる、硬化物を提供する。
【解決手段】2種以上の異なる光学用モノマーの硬化物であって、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であり、硬化物の中心から半径15mmの範囲内に1.0mm以上の長さの脈理がなく、ガスクロマトグラフ質量分析で測定されるアミンの含有量が、0.01質量%以上0.20質量%以下である硬化物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の異なる光学用モノマーの硬化物であって、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であり、硬化物の中心から半径15mmの範囲内に1.0mm以上の長さの脈理がなく、ガスクロマトグラフ質量分析で測定されるアミンの含有量が、0.01質量%以上0.20質量%以下であり、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーが、更に、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、硬化物。
【請求項2】
前記アミンが、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン,トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、2-メチルピラジン、ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、3-クロルピリジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ヘキサメチレンテトラミン、キノリン、イソキノリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルピペラジン、キナルジン、4-メチルモルホリン、トリアリルアミン、トリオクチルアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、及び1-ベンジル-2-メチルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学材料用重合性組成物、光学材料用重合性プレポリマー組成物、硬化物及び光学材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズ向け光学材料に用いられる樹脂を製造する方法として、例えば、モノマーを含む重合性組成物をモールド(型)の中に注入して加熱硬化させる注型重合法が挙げられる。
注型重合法は、重合性組成物を調合して脱気した後、モールド(型)に重合性組成物を注入し、加熱硬化(重合反応)を経て、モールドから生成物を取り出し(離型)、アニールを行うことにより、光学材料(例えば、レンズ、セミフィニッシュドブランク等)を得る。
加熱硬化においては、光学材料の品質を高めるため、加熱により徐々に昇温しながら数時間から数十時間かけて重合反応を行うことが一般的であり、具体的には一般的に20時間~48時間程度を要する。また、製造プロセスの総時間の内、多くの時間(例えば、そう時間の内の9割)が重合するための時間に費やされることが知られている。
【0003】
特許文献1の実施例には、重合性組成物を注入されたモールドを、10℃~120℃まで徐々に昇温し、20時間で重合して成形体を得たことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2の実施例には、重合性組成物を注入されたモールドを、25℃から16時間かけて少しずつ昇温し120℃まで上昇させ、120℃で4時間加熱して成形体を得たことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/027427号
【特許文献2】国際公開第2014/133111号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、従来は光学材料を製造する過程において、加熱により徐々に昇温しながら数時間から数十時間(例えば、20時間~48時間程度)かけて重合反応を行うことが一般的であった。
しかし、光学材料を製造する時間が長いために、製造に関係する装置を長時間作動させる必要があり、経済的な負担が大きく、作業効率を損なっていた。
一方で、従来通りの方法により光学材料を製造する際、加熱重合時間を短縮して重合反応を行う場合には、重合が不十分であることにより光学材料が硬化しない、硬化したとしても光学材料中に脈理が発生する等の不具合が生じ、光学材料の品質が低下する可能性がある。
以上より、光学材料の製造において、得られる光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を短縮することが求められている。
【0007】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、得られる光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を短縮することができる光学材料の製造方法を提供することである。
また、本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、得られる光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を短縮することができる光学材料の製造方法に用いられる光学材料用重合性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の態様を含む。
本開示の第1実施形態は以下の態様を含む。
<1> 2種以上の異なる光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含み、前記光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が0.1150質量部~0.2000質量部であり、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した粘度が10mPa・s~1000mPa・sであり、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物である光学材料用重合性組成物。
<2> チキソ比が1.3以下である<1>に記載の光学材料用重合性組成物。
<3> 2種以上の異なる光学材料用モノマーと、重合触媒と、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの重合体であり重合性官能基を有するプレポリマーと、を含み、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物である<1>又は<2>に記載の光学材料用重合性組成物。
<4> 前記2種以上の異なる光学材料用モノマーが、ポリチオール化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、及び、アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性組成物。
<4-1> 前記重合触媒は、下記条件1を満たす<1>~<4>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性組成物。
[条件1]
-Ea/Rが、-7100以上-1500以下である。
(Eaは、2種以上の異なる温度における前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの反応速度定数からアレニウスプロットにより算出した活性化エネルギーであり、Rは、気体定数(8.314J/mol/K)である。)
<5> 前記重合触媒は、pKa値が5~12である塩基性触媒、及び、有機金属系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<4-1>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性組成物。
<5-1> 前記重合触媒が、アミン系触媒及び有機錫系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性組成物。
<5-2> 前記重合触媒が、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン,N-エチルモルホリン、ジブチルスズジクロリド、ジメチルスズジクロリド、ジブチルスズジラウレート及びジブチルスズジアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<5-1>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性組成物。
<6> 2種以上の異なる光学材料用モノマーの重合体であり重合性官能基を有するプレポリマーと、重合触媒と、を含む組成物であって、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であり、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した粘度が10mPa・s~1000mPa・sである光学材料用重合性プレポリマー組成物。
<7> 前記プレポリマーの合計100質量部に対する前記重合触媒の含有量が、0.01質量部~0.2質量部である<6>に記載の光学材料用重合性プレポリマー組成物。
<7-1> チキソ比が1.3以下である<6>又は<7>に記載の光学材料用重合性プレポリマー組成物。
<8> 前記2種以上の異なる光学材料用モノマーが、ポリチオール化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、及び、アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<6>~<7-1>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性プレポリマー組成物。
<8-1> 前記重合触媒は、下記条件1を満たす<6>~<8>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性プレポリマー組成物。
[条件1]
-Ea/Rが、-7100以上-1500以下である。
(Eaは、2種以上の異なる温度における前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの反応速度定数からアレニウスプロットにより算出した活性化エネルギーであり、Rは、気体定数(8.314J/mol/K)である。)
<9> 前記重合触媒は、pKa値が5~12である塩基性触媒、及び、有機金属系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含む<6>~<8-1>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性プレポリマー組成物。
<9-1> 前記重合触媒が、アミン系触媒及び有機錫系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含む<6>~<9>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性プレポリマー組成物。
<9-2> 光学材料用重合性プレポリマー組成物の屈折率Aから、前記プレポリマーを形成する前の組成物であり、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーと重合触媒とを含む組成物であるプレポリマー原料組成物の屈折率Bを差し引いた値が、0超である<6>~<9-1>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性プレポリマー組成物。
<10> <1>~<5-2>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性組成物又は<6>~<9-2>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性プレポリマー組成物の硬化物。
<10-1> 前記光学材料用重合性組成物の硬化物であって、前記光学材料用重合性組成物において、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーが、ポリチオール化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、及び、アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<10>に記載の硬化物。
<10-2> 前記光学材料用重合性組成物の硬化物であって、前記光学材料用重合性組成物において、前記重合触媒は、下記条件1を満たす<10>又は<10-1>に記載の硬化物。
[条件1]
-Ea/Rが、-7100以上-1500以下である。
(Eaは、2種以上の異なる温度における前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの反応速度定数からアレニウスプロットにより算出した活性化エネルギーであり、Rは、気体定数(8.314J/mol/K)である。)
<10-3> 前記光学材料用重合性組成物の硬化物であって、前記光学材料用重合性組成物において、前記重合触媒は、pKa値が5~12である塩基性触媒、及び、有機金属系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含む<10>~<10-2>のいずれか1つに記載の硬化物。
<10-4> 前記光学材料用重合性組成物の硬化物であって、前記光学材料用重合性組成物において、前記重合触媒が、アミン系触媒及び有機錫系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含む<10>~<10-3>のいずれか1つに記載の硬化物。
<10-5> 前記光学材料用重合性組成物の硬化物であって、前記光学材料用重合性組成物において、前記重合触媒が、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン,N-エチルモルホリン、ジブチルスズジクロリド、ジメチルスズジクロリド、ジブチルスズジラウレート及びジブチルスズジアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含む<10>~<10-4>のいずれか1つに記載の硬化物。
<11> 2種以上の異なる光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含み、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であり、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である光学材料用重合性組成物を準備する準備工程と、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した前記光学材料用重合性組成物の粘度を10mPa・s~1000mPa・sに調整しモールドに注型する注型工程と、前記モールド中の前記光学材料用重合性組成物中の前記2種以上の異なる光学材料用モノマーを重合させることにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を含む光学材料の製造方法。
<12> 2種以上の異なる光学材料用モノマーと、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である重合触媒と、を準備する準備工程と、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも一部と、前記重合触媒の少なくとも一部と、を混合し、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーにおける少なくとも一部を重合させてプレポリマーを得ることにより、前記プレポリマーを含む混合物を得るプレポリマー化工程と、を含み、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物である光学材料の製造方法。
<13> さらに、前記プレポリマーを含む混合物に対し、前記重合触媒の残部、又は、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの残部と前記重合触媒の残部との混合液を添加することにより、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーと、前記プレポリマーと、前記重合触媒と、を含有する光学材料用重合性組成物を得る光学材料用重合性組成物製造工程と、前記光学材料用重合性組成物中の前記2種以上の異なる光学材料用モノマーを硬化させることにより、前記光学材料用重合性組成物の硬化物である光学材料を得る硬化工程と、を含む<12>に記載の光学材料の製造方法。
<14> 前記2種以上の異なる光学材料用モノマーが、ポリチオール化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、及び、アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<11>~<13>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
<14-1> 前記重合触媒は、下記条件1を満たす<11>~<14>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
[条件1]
-Ea/Rが、-7100以上-1500以下である。
(Eaは、2種以上の異なる温度における前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの反応速度定数からアレニウスプロットにより算出した活性化エネルギーであり、Rは、気体定数(8.314J/mol/K)である。)
<15> 前記重合触媒は、pKa値が5~12である塩基性触媒、及び、有機金属系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含む<11>~<14-1>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
<16> 前記重合触媒が、アミン系触媒及び有機錫系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含む<11>~<15>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
<17> 2種以上の異なる光学用モノマーの硬化物であって、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であり、硬化物の中心から半径15mmの範囲内に1.0mm以上の長さの脈理がなく、ガスクロマトグラフ質量分析で測定されるアミンの含有量が、0.01質量%以上0.20質量%以下である硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、得られる光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を良好に短縮することができる光学材料の製造方法を提供することができる。
また、本開示の他の一実施形態によれば、得られる光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を良好に短縮することができる光学材料の製造方法に用いられる光学材料用重合性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】光学材料用重合性組成物中の光学材料用モノマーの合計質量を30gとして、実施例1A、実施例2A~実施例4A、実施例5A及び実施例6Aの光学材料用重合性組成物を用いて成形体を製造する場合における、重合時間と温度との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
本開示は、第1実施形態及び第2実施形態を含む。
各実施態様について説明する。
【0013】
~第1実施形態~
≪光学材料用重合性組成物≫
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含み、前記光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が0.1150質量部~0.2000質量部であり、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した粘度が10mPa・s~1000mPa・sであり、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物である。
【0014】
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、上記構成を含むことで、得られる光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を良好に短縮することができる。
【0015】
(光学材料用モノマー)
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、2種以上の異なる光学材料用モノマーを含み、2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物である。
光学材料用モノマーを重合させることで、光学材料に強度等を付与することができる。
【0016】
光学材料用モノマーとしては、光学用に使用されるモノマーであればよく、特に限定されない。
例えば、下記のいずれかの性質を備える光学材料を製造するために用いられるモノマーであってもよい。
光学材料用モノマーを用いて得られる光学材料は、全光線透過率が10%以上であってもよい。上記光学材料の全光線透過率は、JIS K 7361-1(1997)に準拠して測定すればよい。
光学材料用モノマーを用いて得られる光学材料は、ヘイズ(即ち全ヘイズ)が、10%以下であり、好ましくは1%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であってもよい。光学材料のヘイズは、JIS-K7105に準拠して、ヘイズ測定機〔(有)東京電色社製、TC-HIII DPK〕を用いて25℃で測定した値である。
光学材料用モノマーを用いて得られる光学材料は、屈折率が、好ましくは1.58以上である。 光学材料用モノマーを用いて得られる光学材料は、屈折率が、1.80以下であってもよく、1.75以下であってもよい。光学材料の屈折率は、JIS K7142(2014)に準拠して測定すればよい。
【0017】
光学材料用モノマーを用いて得られる光学材料の形状は、特に限定されず、板状、円柱状、直方体状等であってもよい。
【0018】
(エピスルフィド化合物)
上記エピスルフィド化合物としては、エピチオエチルチオ化合物、鎖状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、環状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、芳香族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、鎖状脂肪族の2,3-エピチオプロピルオキシ化合物、環状脂肪族の2,3-エピチオプロピルオキシ化合物、芳香族の2,3-エピチオプロピルオキシ化合物等が挙げられ、1種又は2種以上混合して用いられる。これらのエピスルフィド化合物としては、WO2015/137401号に例示された化合物を挙げることができる。
【0019】
第1実施形態において、光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を短縮する観点から、上記エピスルフィド化合物は、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、及び、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィドであることがより好ましい。
【0020】
光学材料用モノマーは、さらに、ポリチオール化合物及びイソシアネート化合物の少なくとも一方を含むことが好ましく、さらに、ポリチオール化合物を含むことがより好ましい。
【0021】
光学材料用モノマーとしては、後述する重合触媒を用いた場合に重合する重合性モノマーが挙げられる。
前記2種以上の異なる光学材料用モノマーは、ポリチオール化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、及び、アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0022】
(ポリチオール化合物)
ポリチオール化合物は、2以上のメルカプト基を有する化合物であり、国際公開第2016/125736号に例示された化合物を挙げることができる。
本開示において、光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を短縮する観点から、ポリチオール化合物は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、および2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンから選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、およびペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)から選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0023】
(ポリオール化合物)
前記ポリオール化合物は、2つ以上の水酸基を含む化合物であり、1種以上の脂肪族または脂環族アルコールが挙げられる。具体的には、直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコール、脂環族アルコール、これらのアルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びε-カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種を付加させたアルコール等が挙げられる。より具体的には国際公開第2016/125736号に例示された化合物が挙げられる。
【0024】
前記ポリオール化合物は、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオールから選択される少なくとも1種である。
【0025】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、複素環イソシアネート化合物等が挙げられ、1種または2種以上混合して用いられる。これらのイソシアネート化合物は、二量体、三量体、プレポリマーを含んでもよい。これらのイソシアネート化合物としては、国際公開第2011/055540号に例示された化合物を挙げることができる。
なお、本開示において、脂環族イソシアネート化合物は、脂環式構造を含み、かつ、複素環構造を含んでもよいイソシアネート化合物を指す。芳香族イソシアネート化合物は、芳香族構造を含み、かつ、脂環式構造及び複素環構造を含んでもよいイソシアネート化合物を指す。複素環イソシアネート化合物は、複素環構造を含み、かつ、脂環式構造及び芳香族構造を含まないイソシアネート化合物を指す。
【0026】
イソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物及び複素環イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0027】
本開示において、光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を短縮する観点から、イソシアネート化合物は、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、m-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、および1,5-ペンタメチレンジイソシアネートから選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、
2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、m-キシリレンジイソシアネート、および1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンから選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、
2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、及びm-キシリレンジイソシアネートから選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0028】
(アミン化合物)
アミン化合物としては、エチレンジアミン、1,2-又は1,3-ジアミノプロパン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノデカン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、o-、m-又はp-ジアミノベンゼン、3,4-又は4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4-又は4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’又は4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、2,7-ジアミノフルオレン、1,5-、1,8-又は2,3-ジアミノナフタレン、2,3-、2,6-又は3,4-ジアミノピリジン、2,4-又は2,6-ジアミノトルエン、m-又はp-キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノメチルビシクロヘプタン、1,3-又は1,4-ジアミノメチルシクロヘキサン、2-又は4-アミノピペリジン、2-又は4-アミノメチルピペリジン、2-又は4-アミノエチルピペリジン、N-アミノエチルモルホリン、N-アミノプロピルモルホリン等の1級ポリアミン化合物;
ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジ-3-ペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、メチルヘキシルアミン、ジアリルアミン、N-メチルアリルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ジフェニルアミン、N-メチルアミン、N-エチルアミン、ジベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、N-エチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、ジナフチルアミン、1-メチルピペラジン、モルホリン等の単官能2級アミン化合物;
N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N’-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジメチル-1,7-ジアミノヘプタン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,2-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N’-ジエチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジエチル-1,7-ジアミノヘプタン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1-ジ-(4-ピペリジル)メタン、1,2-ジ-(4-ピペリジル)エタン、1,3-ジ-(4-ピペリジル)プロパン、1,4-ジ-(4-ピペリジル)ブタン、テトラメチルグアニジン等の2級ポリアミン化合物;等が挙げられる。
【0029】
<重合触媒>
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、重合触媒を少なくとも1種含む。
重合触媒としては、特に制限はないが、例えば、塩基性触媒、有機金属系触媒、亜鉛カルバミン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸等を用いることができる。
上記重合触媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(塩基性触媒)
塩基性触媒としては、アミン系触媒(イミダゾール系触媒を含む)等が挙げられる。
具体的には、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン,トリエチルアミン、N-エチルモルホリンなどの3級アミン系触媒;2-メチルピラジン、ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、3-クロルピリジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ヘキサメチレンテトラミン、キノリン、イソキノリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルピペラジン、キナルジン、4-メチルモルホリン、トリアリルアミン、トリオクチルアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0031】
上記の中でも、塩基性触媒としては、上記の中でもアミン系触媒が好ましい。
アミン系触媒としては、例えば、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン,トリエチルアミン、N-エチルモルホリンなどの3級アミン系触媒;等が挙げられる。
【0032】
上記の中でも、塩基性触媒としては、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、及び、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミンが好ましい。
【0033】
塩基性触媒は、下記一般式(2)で表される化合物、及び/又は、下記一般式(3)で表される化合物を含むことも好ましい。
【0034】
【0035】
一般式(2)中、R1は炭素数1~20の直鎖アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、またはハロゲン原子を示し、複数存在するR1は同一でも異なっていてもよい。Qは炭素原子または窒素原子を示す。mは0~5の整数を示す。
【0036】
【0037】
一般式(3)中、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1~20の直鎖アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリル基、又は水酸基を含む炭化水素基を示す。
【0038】
塩基性触媒としては、pKa値が5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましい。
塩基性触媒としては、pKa値が12以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましい。
【0039】
pKa値(酸解離指数)は、例えば、(a)The Journal of Physical Chemistry vol.68, number6, page1560(1964)記載の方法、(b)京都電子工業株式会社製の電位差自動滴定装置(AT-610(商品名)等)を用いる方法等により測定することができ、また、(c)日本化学会編の化学便覧(改訂3版、昭和59年6月25日、丸善株式会社発行)に記載の酸解離指数等を利用することができる。
【0040】
(有機金属系触媒)
有機金属系触媒としては、有機錫系触媒;鉄、ニッケル、亜鉛などの有機酸塩類;アセチルアセトナート錯体;カルボン酸金属化合物及び4級アンモニウム塩化合物からなる触媒組成物;2環式第3級アミン化合物からなる触媒組成物;チタン又はアルミニウムにアルコキシ基、カルボキシ基などが配位している金属触媒;等が挙げられる。
有機金属系触媒としては、上記の中でも有機錫系触媒が好ましい。
有機錫系触媒としては、ジブチルスズジクロリド(DBC)、ジメチルスズジクロリド(DMC)、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ジブチルスズジアセテート等が挙げられる。
【0041】
前記有機錫系触媒が、ジブチルスズジクロリド、ジメチルスズジクロリド、ジブチルスズジラウレート及びジブチルスズジアセテートから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0042】
重合触媒は、pKa値が5~12である塩基性触媒、及び、有機金属系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0043】
重合触媒は、アミン系触媒及び有機錫系触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含むことも好ましい。
【0044】
前記重合触媒としては、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン,N-エチルモルホリン、ジブチルスズジクロリド、ジメチルスズジクロリド、ジブチルスズジラウレート及びジブチルスズジアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記の中でも、前記重合触媒としては、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、及び、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0045】
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、光学材料用モノマーの全量に対する重合触媒の含有量が、0.1150質量部~0.2000質量部である。
第1実施形態における重合触媒の含有量は、従来の光学材料の製造方法と比較して、多量である。
これによって、硬化工程において光学材料用重合性組成物中の光学材料用モノマーを重合させる際、光学材料用重合性組成物の反応熱(即ち、自己発熱による熱)を短時間にて発生させることができる。そのため、重合反応を良好に促進させることができ、後述するように、重合性組成物の粘度を高め、脈理の原因になると推測される熱対流を抑制しつつ、従来よりも短い時間で高品質な光学材料を得ることができる。
【0046】
光学材料用モノマーの全量に対する重合触媒の含有量が、0.1150質量部以上であることで、良好に重合反応を促進することができるため、短い時間で高品質な光学材料を得ることができる。また、良好に重合反応を促進することで、硬化物をモールドから取り出す際の離型性を向上させることができる。
上記の観点から、光学材料用モノマーの全量に対する重合触媒の含有量が、0.1175質量部以上であることが好ましく、0.1250質量部以上であることがより好ましい。
【0047】
光学材料用モノマーの全量に対する重合触媒の含有量が、0.2000質量部以下であることで、例えば光学材料用重合性組成物をモールドへ注入する際のハンドリング性を向上させることができる。
上記の観点から、光学材料用モノマーの全量に対する重合触媒の含有量が、0.1800質量部以下であることが好ましく、0.1500質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
なお、上記重合触媒の含有量は、重合触媒の種類、使用するモノマー類(エピスルフィド化合物、その他の成分等)の種類及び使用量、所望の成形体の形状により適宜設定することができる。
【0049】
上述した重合触媒の含有量の範囲は、光学材料用モノマー及び重合触媒の種類によって、適宜変更してもよい。
【0050】
重合触媒は、下記条件1を満たすことが好ましい。
[条件1]
-Ea/Rが、-7100以上-1500以下である。
(Eaは、2種以上の異なる温度における2種以上の異なる光学材料用モノマーの反応速度定数からアレニウスプロットにより算出した活性化エネルギーであり、Rは、気体定数(8.314J/mol/K)である。)
【0051】
重合触媒が条件1を満たすことで、重合性組成物が重合硬化する過程で、重合速度のばらつきを抑制することができ、その結果として光学歪み及び脈理の発生が抑制され、外観に優れた光学材料を得ることができる。
【0052】
Eaの値は、以下の方法により算出する。
重合反応性化合物と、所定量の重合触媒と、を含む組成物1を加温し、複数の温度で保温した場合における、該重合反応性化合物の加温前の官能基由来の物性値1aおよび所定時間保温した後の残存官能基由来の物性値1bを取得する物性取得工程と、
物性値1aおよび物性値1bから、複数の前記温度における残存官能基率1を算出する残存官能基率算出工程と、
残存官能基率1から、反応速度式に基づいて複数の前記温度における反応速度定数1を算出する反応速度定数算出工程と、
複数の前記温度における反応速度定数1から、アレニウスプロットにより活性化エネルギーEa1と頻度因子A1とを算出するフィッティング工程と、
を行うことで、Eaの値を算出する。
算出したEaを用いて、重合触媒が条件1を満たすか否か判別する。
Eaの値の算出方法及び重合触媒が条件1を満たすか否か判別する方法の具体的な態様は、国際公開第2020/256057号に記載の具体的態様と同様である。
【0053】
(他の添加剤)
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、任意の添加剤を含んでもよい。
任意の添加剤として、フォトクロミック化合物、内部離型剤、ブルーイング剤、紫外線吸収剤などを挙げることができる。
【0054】
(フォトクロミック化合物)
フォトクロミック化合物は特定波長の光照射により、分子構造が可逆的に変化し、それに伴って吸光特性(吸収スペクトル)が変化する化合物である。
第1実施形態で用いるフォトクロミック化合物としては、特定の波長の光に対して吸光特性(吸収スペクトル)が変化する化合物が挙げられる。
【0055】
第1実施形態において、フォトクロミック化合物としては、特に制限はなく、フォトクロミックレンズに使用しうる従来公知の化合物の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、フルギド系化合物、ナフトピラン系化合物、ビスイミダゾール化合物等から所望の着色に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0056】
(内部離型剤)
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルが挙げられる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。
【0057】
(ブルーイング剤)
ブルーイング剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂からなる光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。ブルーイング剤は、さらに具体的には、青色から紫色を示す物質を含む。
【0058】
(紫外線吸収剤)
用いられる紫外線吸収剤としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられるが、好ましくは2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独でも2種以上を併用することもできる。
【0059】
(粘度)
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、脈理を抑制する観点から、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した粘度が10mPa・s以上であり、20mPa・s以上であることが好ましく、40mPa・s以上であることがより好ましく、80mPa・s以上であることがさらに好ましく、100mPa・s以上であることが特に好ましく、120mPa・s以上であることがより一層好ましい。
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、光学材料を所望の形状に成形する際のハンドリング性を良好に保つ観点から、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した粘度が1000mPa・s以下であり、700mPa・s以下であることが好ましく、400mPa・s以下であることがより好ましい。
【0060】
第1実施形態の光学材料用重合性組成物における粘度は、得られる硬化物の使用用途によって調整してもよい。
例えば、プラスレンズ用のモールドを用いて硬化物を得る場合は、コバ(即ち注入口)が狭い(例えば1mm~3mm)ため、第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、脈理を抑制する観点から、上記粘度が10mPa・s~100mPa・sであることが好ましい。
一方、プラスレンズ以外の通常のレンズ用のモールドを用いて硬化物を得る場合は、コバ(即ち注入口)が広い(例えば5mm~15mm)ため、第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、脈理を抑制する観点から、上記粘度が10mPa・s~1000mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは30mPa・s~1000mPa・sである。
【0061】
光学材料用重合性組成物の粘度を高めることで、外部から上記組成物に熱が加えられた場合に組成物の内部と外部との温度差による熱対流を抑制することができ、熱対流由来の脈理を低減させることができる。
しかし、触媒量が少ないと重合時の増粘速度が充分でないため、熱対流を抑制することができる程度に粘度が大きくならず、短時間で急激に温度を上昇させることができない。さらに、重合を完結させるまでに必要な時間も長くなる。
一方、本開示により、エピスルフィド化合物の反応性を考慮し、触媒量を最適な範囲内まで増やすことで、上記組成物全体の粘度をより速く高めることができる。これにより、重合のムラを抑制しつつ急激な温度上昇による熱対流を抑制でき、短時間で重合を進めることができる。
【0062】
(チキソ比)
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、チキソ比が1.3以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.1以下であることがさらに好ましい。
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、チキソ比が1.3以下であることで、後述するモールドなどの重合容器に前記組成物を速やかに充填することができ、かつ重合中の熱対流を抑制して光学材料用モノマーが脈理などの発生をより防止することができる。その結果、得られる光学材料において脈理など発生を抑制し、品質を良好に保つことができる。
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、チキソ比が0.9以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。
【0063】
チキソ比は、B型粘度計で20℃、回転数6rpmの条件で測定した粘度η1を回転数60rpmで測定した粘度η2で除して算出される。
【0064】
チキソ比は、例えば、2種以上の光学材料用モノマーの分子量を小さくする、プレポリマーの重合度を一定以下に抑制する、又はモノマーにおいて弾力性を与える構造の比率を小さくすることにより、小さくすることができる。
【0065】
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、重合触媒と、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの重合体であり重合性官能基を有するプレポリマーと、を含み、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であることが好ましい。
プレポリマーとは、2種以上の異なる光学材料用モノマーの重合体であり重合性官能基を有するポリマーである。
プレポリマーと2種以上の異なる光学材料用モノマーとを重合させて得られる硬化物は、光学材料として用いることができる。
プレポリマーとしては、例えば、光学材料用モノマーの内の2種の光学材料用モノマーの重合性官能基を当量比1:1で重合させていないポリマー、光学材料用モノマーの内の2種の光学材料用モノマーをバランスが崩れた当量比で重合させているポリマーなどが挙げられる。
【0066】
≪光学材料用重合性プレポリマー組成物≫
第1実施形態の光学材料用重合性プレポリマー組成物は、2種以上の異なる光学材料用モノマーの重合体であり重合性官能基を有するプレポリマーと、重合触媒と、を含む組成物であって、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であり、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した粘度が10mPa・s~1000mPa・sである。
なお、プレポリマー組成物は粘度が経時で変化しにくい(つまり安定している)ことが好ましい。
また、プレポリマー組成物の粘度が安定しているとは、プレポリマー組成物を20℃で24時間保管した場合に、保管の前後において、粘度の変化が10%以下であることをいう。
【0067】
光学材料用重合性プレポリマー組成物の光学材料用モノマー、及び重合触媒についての具体例、好ましい具体例、好ましい態様等については、上述の光学材料用重合性組成物の項に記載した光学材料用モノマー、及び重合触媒についての具体例、好ましい具体例、好ましい態様等と同様である。
光学材料用重合性プレポリマー組成物のプレポリマーの定義については、上述の光学材料用重合性組成物の項に記載したプレポリマーの定義と同様である。
【0068】
第1実施形態の光学材料用重合性プレポリマー組成物は、前記プレポリマーの合計100質量部に対する前記重合触媒の含有量が、0.01質量部~0.2質量部であることが好ましい。
【0069】
前記プレポリマーの合計100質量部に対する前記重合触媒の含有量が、0.01質量部以上であることで、良好に重合反応を促進することができるため、短い時間で高品質な光学材料を得ることができる。また、良好に重合反応を促進することで、硬化物をモールドから取り出す際の離型性を向上させることができる。
上記の観点から、前記プレポリマーの合計100質量部に対する前記重合触媒の含有量が、0.02質量部以上であることが好ましく、0.03質量部以上であることがより好ましい。
【0070】
前記プレポリマーの合計100質量部に対する前記重合触媒の含有量が、0.2質量部以下であることで、例えば光学材料用重合性組成物をモールドへ注入する際のハンドリング性を向上させることができる。
上記の観点から、前記プレポリマーの合計100質量部に対する前記重合触媒の含有量が、0.18質量部以下であることが好ましく、0.16質量部以下であることがより好ましく、0.14質量部以下であることがさらに好ましい。
【0071】
(チキソ比)
第1実施形態の光学材料用重合性プレポリマー組成物は、チキソ比が1.3以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.1以下であることがさらに好ましい。
第1実施形態の光学材料用重合性プレポリマー組成物は、チキソ比が1.3以下であることで、後述するモールドなどの重合容器に前記組成物を速やかに充填することができ、かつ重合中の熱対流を抑制して光学材料用モノマーが脈理などの発生をより防止することができる。その結果、得られる光学材料において脈理など発生を抑制し、品質を良好に保つことができる。
第1実施形態の光学材料用重合性組成物は、チキソ比が0.9以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。
チキソ比の測定方法は上述の通りである。
【0072】
第1実施形態の光学材料用重合性プレポリマー組成物は、光学材料用重合性プレポリマー組成物の屈折率Aから、プレポリマーを形成する前の組成物であり、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーと重合触媒とを含む組成物であるプレポリマー原料組成物の屈折率Bを差し引いた値(「屈折率A-屈折率B」ともいう)が、0超であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.005以上であることがさらに好ましい。
屈折率Aは光学材料用モノマーと重合触媒を重合させてプレポリマーを得た後の光学材料用重合性プレポリマー組成物の屈折率であり、屈折率Bは光学材料用モノマーと重合触媒を重合させてプレポリマーを得る前のプレポリマー原料組成物の屈折率である。
【0073】
屈折率A-屈折率Bが上述の範囲内であることで、光学材料用重合性組成物を所定の粘度に調整することが容易となる。また、光学材料用重合性組成物の硬化物の品質(例えば屈折率、外観など)を安定させることが容易となる。
屈折率A-屈折率Bは、0.020以下であってもよく、0.010以下であってもよい。
【0074】
≪硬化物≫
第1実施形態の硬化物は、第1実施形態の光学材料用重合性組成物又は第1実施形態の光学材料用重合性プレポリマー組成物の硬化物である。
【0075】
第1実施形態の硬化物は、脈理を低減する観点から、アミン系触媒を重合触媒として用いる場合は、アミンの含有量が0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.04質量%以上であることがさらに好ましく、0.06質量%以上であることが特に好ましい。
また、第1実施形態の硬化物は、光学材料用重合性組成物のハンドリング性を向上させる観点から、アミンの含有量が0.20質量%以下であることが好ましく、0.18質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、上記アミンの含有量は、硬化物をジクロロメタンに分散し超音波抽出したジクロロメタン組成物から、ガスクロマトグラフ質量分析で測定されるアミンの含有量である。
【0076】
硬化物中のアミンの含有量の測定方法は以下の通りである。
金属ヤスリにて粉状にした硬化物200mgとジクロロメタン3mLを遠沈管(容積10mL)に入れ、超音波洗浄機(IUCHI社製、US-4)を用いて室温で10分間超音波抽出し、遠心分離機(KUBOTA社製、卓上小型遠心機2410)を用いて4000rpmで10分間、遠心分離を行う。
上澄みを採取し、残渣を再びジクロロメタン3mLに分散し上記超音波抽出と遠心分離を行い、上澄みを採取する(以下、「残渣抽出」ともいう)。
上記残渣抽出をさらに2回行った後、得られた上澄み液に対して、合計量が10mLになるようにジクロロメタンを加えた。
得られた10mLの上澄み液を濾過し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MSとも称する。)(GC-MS装置:Agilent社製、6890GC/5973N MSD、カラム:CP-Sil 8 CB for Amine(0.25mmID×30m F.T=0.25μm))で分析して、アミン由来のピーク面積値を得る。得られたアミン由来のピーク面積値及びアミン量の検量線を作製して、硬化物中のアミンの含有量を測定する。
【0077】
なお、上記アミンとは、重合触媒として用いることができるアミン化合物、又は上記アミン化合物に由来するアミン化合物を意味する。
【0078】
特に光透過性が要求される光学用途において、第1実施形態の硬化物は、失透度が50未満であることが好ましく、35未満であることがより好ましい。
失透度は、以下の方法により測定される。
硬化物に対して、暗所にて光源(例えば、ハヤシレピック社製Luminar Ace LA-150A)からの光を透過させる。硬化物を透過した光の画像を画像処理装置(例えば、宇部情報システム社製の画像処理装置)に取り込み、取り込んだ画像に対して濃淡処理を行い、処理後の画像の濃淡の度合いを画素毎に数値化し、各画素の濃淡の度合いの数値の平均値として計算される値を失透度とする。
【0079】
第1実施形態の硬化物は、硬化物の中心から半径15mmの範囲内に1.0mm以上の長さの脈理がないことが好ましく、硬化物の中心から半径15mmの範囲内及び範囲外に1.0mm以上の長さの脈理がないことがより好ましい。
【0080】
第1実施形態の硬化物は、より具体的には、2種以上の異なる光学用モノマーの硬化物であって、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であり、硬化物の中心から半径15mmの範囲内に1.0mm以上の長さの脈理がなく、ガスクロマトグラフ質量分析で測定されるアミンの含有量が、0.01質量%以上0.20質量%以下である硬化物であってもよい。
【0081】
≪光学材料の製造方法≫
第1実施形態の光学材料の製造方法は、以下の製法A及び製法Bを含む。
【0082】
<製法A>
製法Aは、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含み、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であり、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である光学材料用重合性組成物を準備する準備工程と、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した前記光学材料用重合性組成物の粘度を10mPa・s~1000mPa・sに調整しモールドに注型する注型工程と、前記モールド中の前記光学材料用重合性組成物中の前記2種以上の異なる光学材料用モノマーを重合させることにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を含む。
【0083】
製法Aは、上記準備工程と、上記注型工程と、上記硬化工程と、を含むことで、得られる光学材料の品質を維持し、かつ、光学材料の製造時間を短縮することができる。
【0084】
製法Aは、上記準備工程と、注型工程と、上記硬化工程と、をこの順で含んでもよい。
【0085】
製法Aにおける準備工程において準備される光学材料用重合性組成物は、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である。この重合触媒の含有量は、従来の光学材料の製造方法と比較して、多量である。
これによって、硬化工程において光学材料用重合性組成物中の光学材料用モノマーを重合させる際、光学材料用重合性組成物の反応熱(即ち、自己発熱による熱)を短時間に発生させることができる。
上記反応熱を利用して、光学材料用重合性組成物中の光学材料用モノマーの重合反応を促進させることができるため、従来よりも短い時間で高品質な光学材料を得ることができる。
従来では、重合反応を行う際、光学材料用重合性組成物を主に加熱して重合反応を進行させていたところ、製法Aにおいて、光学材料用重合性組成物に対する加熱は必ずしも必要ではない。
また、製法Aは、組成物の自己発熱も利用するため、外部からの熱の供給に過度に依存することなく重合を進めることができる。そのため、後述する組成物の粘度を高めることとあわせて、光学材料用重合性組成物における熱の不均一さと熱対流を抑制することができ、脈理の発生を抑制することができる。
なお、本開示において脈理とは、特定部分の屈折率が周囲の正常な屈折率と異なっている状態である。また光学材料の所望の用途において不利益が生じる状態とも表現することができる。光学材料において脈理は、欠陥の1種である。
【0086】
<準備工程>
製法Aは、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含み、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物であり、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である光学材料用重合性組成物を準備する準備工程を含む。
準備工程は、予め製造された光学材料用重合性組成物を単に準備するだけの工程であってもよく、光学材料用重合性組成物を製造する工程であってもよい。
【0087】
準備工程において、光学材料用重合性組成物は2種以上の異なる光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含んでいれば特に制限はない。
光学材料用重合性組成物としては、既製品を用いてもよく、少なくとも2種以上の異なる光学材料用モノマーと、重合触媒と、を混合して準備してもよい。
上記混合の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0088】
上記の各成分を混合する際の温度としては、特に制限はないが、30℃以下であることが好ましく、室温(25℃)以下であることがより好ましい。
準備される光学材料用重合性組成物のポットライフの観点からは、25℃よりもさらに低温にすることが好ましい場合がある。但し、内部離型剤等の添加剤と上記の各成分との溶解性が良好でない場合は、予め上記の各成分を昇温して、上記添加剤を上記の各成分に溶解させてもよい。
【0089】
上記の各成分を混合する際は、光学材料用重合性組成物への水分の混入を防ぐため、乾燥不活性ガス下で行うことが好ましい。
【0090】
前記準備工程は、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーを予め混合した後、前記重合触媒を混合して前記光学材料用重合性組成物を製造する工程であることが好ましい。
これによって、上記2種以上の異なる光学材料用モノマー混合物と、上記重合触媒混合する際まで、上記2種以上の異なる光学材料用モノマーの重合の進行を防ぐことができる。
従って、準備工程を上記の順序で行うことで、重合の開始時期を調整することができる。そのため、例えば光学材料用重合性組成物をモールドへ注入する際のハンドリング性を向上させることができる。
準備工程の具体的態様としては、例えば以下の態様が挙げられる。
【0091】
まず、光学材料用モノマーと、添加剤(例えば内部離型剤)を仕込んで混合液を作製する。この混合液を25℃で1時間攪拌して各成分を完全に溶解させ、混合液を得る。
そして、上記混合液に重合触媒を加えて攪拌して完全に溶解させ、均一な溶液として光学材料用重合性組成物を得る。
【0092】
<注型工程>
製法Aは、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した前記光学材料用重合性組成物の粘度を10mPa・s~1000mPa・sに調整しモールドに注型する注型工程を含む。
光学材料用重合性組成物の粘度を上記範囲内に調整して注型することで、得られる光学材料における脈理を抑制する観点から、光学材料用重合性組成物製造工程において製造される光学材料用重合性組成物の粘度を適切な範囲内とすることができる。
【0093】
上記の観点から、光学材料用重合性組成物の粘度は、10mPa・s以上であり、20mPa・s以上であることが好ましく、40mPa・s以上であることがより好ましく、80mPa・s以上であることがさらに好ましく、100mPa・s以上であることが特に好ましく、120mPa・s以上であることがより一層好ましい。
光学材料用重合性組成物の粘度は、光学材料を所望の形状に成形する際のハンドリング性を良好に保つ観点から、1000mPa・s以下であり、700mPa・s以下であることが好ましく、400mPa・s以下であることがより好ましい。
【0094】
光学材料用重合性組成物の粘度を調整する方法としては、特に制限はない。
例えば、高粘度の化合物の添加、加熱、撹拌等の方法により光学材料用重合性組成物の粘度を調整してもよい。
【0095】
<硬化工程>
製法Aは、モールド中の前記光学材料用重合性組成物中の前記2種以上の異なる光学材料用モノマーを重合させることにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる硬化工程を含む。
製法Aが、硬化工程を含むことで、前記光学材料用重合性組成物を重合させることができ、光学材料を製造することができる。
従来では、重合反応を行う際、光学材料用重合性組成物を加熱して重合反応を発生させていたところ、製法Aにおける光学材料用重合性組成物は、重合反応に伴う反応熱(即ち自己発熱による熱)を短時間に発生させることで、光学材料用重合性組成物中の光学材料用モノマーの重合反応を促進させることができる。
そのため、製法Aにおいて、光学材料用重合性組成物に対する加熱は必ずしも必要としないが、加熱してもよい。
即ち、製法Aの硬化工程において、光学材料用重合性組成物を静置することで、光学材料用重合性組成物を重合により硬化させることができる。
【0096】
硬化工程が行われる環境は特に制限されず、モールドをモールド外部から加熱し硬化することもできるが、脈理などの光学的な品質を高めつつ、短時間で重合するという観点からは、前記光学材料用重合性組成物を閉鎖系空間内にて静置することにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる工程であることが好ましい。
光学材料用重合性組成物を閉鎖系空間内にて静置することで、光学材料用重合性組成物の自己発熱によって発生した熱が、外部に放出することを防ぐことができる。これによって、閉鎖系空間内に自己発熱によって発生した熱を保持することができるため、より効率的に重合反応を促進させることができ、より短い時間で光学材料を製造することができる。
閉鎖系空間としては、例えば、断熱環境が挙げられる。
断熱環境とは、内部に熱を保持し、内部と外部との熱の伝導が抑制された環境を指す。内部と外部との熱の伝導が抑制された環境とは、光学材料用重合性組成物を閉鎖系空間内にて静置した場合に、閉鎖系空間の内部と外部との熱の伝導性が光学材料用重合性組成物を硬化させることができる程度である環境を意味する。
【0097】
断熱環境は、例えば、断熱材料を用いて形成することができる。
即ち、光学材料用重合性組成物を、断熱材料からなる断熱容器内にて静置することで、断熱容器の内部に熱を保持し、内部と外部との熱の伝導を抑制することができる。
【0098】
断熱材料の熱伝導率は、0.50W/mK以下であることが好ましく、0.10W/mK以下であることがより好ましく、0.05W/mK以下であることがさらに好ましい。
【0099】
断熱材料の密度は、10kg/m3以上であることが好ましく、15kg/m3以上であることがより好ましく、20kg/m3以上であることがさらに好ましい。
【0100】
製法Aにおける「断熱」又は「断熱環境」において、光学材料用重合性組成物の反応熱による重合反応を妨げたり、外部からの加熱によって光学材料用重合性組成物の重合反応を過度に促進したりしない範囲内で、断熱反応槽を恒温状態(恒温反応槽)とするための加熱を行うことが好ましい。
これによって、光学材料用モノマーの自己発熱による昇温状態等に応じて、モールドが静置された反応槽内(恒温反応槽)の環境温度を保温状態又は恒温状態とすることができるため、より良好に重合反応を促進することができる。
【0101】
断熱環境としては、例えば、上述のような断熱反応槽又は恒温反応槽を用いることができる。
例えば、モノマーが注入されたモールドを断熱反応槽である真空容器内に静置する場合において、断熱反応槽(恒温反応槽)を用いた断熱環境下における断熱重合は、以下の手順で行うことができる。
真空容器の内側面をウレタンフォーム、コルク等の断熱性・保温性を有する部材で覆い、モノマーが注入されたモールドを必要に応じてウェス等の部材で包む。そして、上記真空容器内にモノマーが注入されたモールドを静置する。
【0102】
前記硬化工程は、前記光学材料用重合性組成物を外部から加熱することなく静置することにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる工程であってもよい。
上述の通り、製法Aにおいて、光学材料用重合性組成物に対する加熱は必ずしも必要としない。
外部から加熱するためには、装置を用いる場合もあり、経済的に負担が増大する場合がある。製法Aであれば、簡便な方法で光学材料を製造できるため、経済的な負担を軽減することができる。
【0103】
前記硬化工程は、前記光学材料用重合性組成物を6時間~20時間静置することにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる工程であることが好ましい。
従来の方法によれば、一般に、加熱により徐々に昇温しながら数時間から数十時間(例えば、20時間~48時間程度)かけて重合反応を行う。
重合反応を行う時間が短い場合には、光学材料用重合性組成物が完全に硬化しないために光学材料を得ることができない、又は、光学材料の品質が低下する。
しかし、製法Aによれば、得られる光学材料の品質を維持しつつ、短時間にて光学材料を製造することができる。具体的には、前記光学材料用重合性組成物を20時間以下静置することによって光学材料を製造することができる。
上記の観点から、前記硬化工程において、前記光学材料用重合性組成物を16時間以下静置することがより好ましい。
また、重合反応を行い良好に硬化した光学材料を得る観点から、前記光学材料用重合性組成物を、7時間以上静置することが好ましく、9時間以上静置することがより好ましい。
【0104】
前記硬化工程において、必要に応じて、光学材料用重合性組成物に対してマイクロ波を所定時間照射するマイクロ波照射工程を設けてもよい。
【0105】
硬化工程の一態様としては、以下の工程a及び工程bを含む態様が挙げられる。
工程a:光学材料用重合性組成物を鋳型内(モールドのキャビティ内)に注入(注型)する。
工程b:光学材料用重合性組成物を注入したモールドを所定時間、閉鎖系空間内に静置して断熱重合する。
【0106】
(工程a)
まず、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド(鋳型)内に重合性組成物を注入する。この際、得られる光学材料に要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や、加圧下、減圧下等での濾過処理等を行うことが好ましい。
【0107】
(工程b)
重合条件については、限定されるものではないが、光学材料用重合性組成物の組成、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって適宜調整することが好ましい。
光学材料用重合性組成物を注入したモールドを6時間から20時間の間、断熱環境下に静置することで、光学材料用重合性組成物中の光学材料用モノマーを重合してもよい。
【0108】
工程bにおいて、必要に応じて、光学材料用重合性組成物を注入したモールドを断熱環境下に一定時間静置した断熱重合プロセスの後に、加熱工程を追加してもよい。
工程bにおいて、必要に応じて、光学材料用重合性組成物を注入したモールドを断熱環境下に静置する(断熱重合する)工程と並行して、連続的又は断続的に、断熱重合プロセスにおいて光学材料用重合性組成物により発せられる自己発熱を超えない温度で光学材料用重合性組成物を注入したモールドを加熱したり、断熱反応槽内を加熱して断熱反応槽内の環境温度を保温したりしてもよい。
【0109】
<アニール工程>
製法Aは、必要に応じて、硬化した光学材料用重合性組成物をアニール処理するアニール工程を含んでもよい。
アニール処理を行う際の温度は、通常50~150℃で行われるが、90~140℃で行うことが好ましく、100~130℃で行うことがより好ましい。
【0110】
<他の工程>
製法Aは、必要に応じて他の工程を設けてもよい。
他の工程としては、例えばモールドを用いて光学材料を製造する場合における、光学材料用重合性組成物をモールドに注入する注入工程が挙げられる。
【0111】
<光学材料の用途>
製法Aにおける光学材料は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター、発光ダイオード等に用いることができる。
上記の中でも、第1実施形態における光学材料は、プラスチックレンズに好適に用いることができ、眼鏡用プラスチックレンズにより好適に用いることができる。
【0112】
<製法B>
製法Bは、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である重合触媒と、を準備する準備工程と、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも一部と、前記重合触媒の少なくとも一部と、を混合し、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーにおける少なくとも一部を重合させてプレポリマーを得ることにより、前記プレポリマーを含む混合物を得るプレポリマー化工程と、を含み、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物である。
【0113】
製法Bは、準備工程と、プレポリマー化工程と、を含むことで、得られる光学材料における脈理を抑制し、かつ、光学材料の製造時間を短縮することができる。
【0114】
製法Bは、上述の準備工程及びプレポリマー化工程に加えて、さらに、前記プレポリマーを含む混合物に対し、重合触媒の残部、又は、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの残部と重合触媒の残部との混合物を添加することにより、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーと、前記プレポリマーと、前記重合触媒と、を含有する光学材料用重合性組成物を得る光学材料用重合性組成物製造工程と、
前記光学材料用重合性組成物中の前記2種以上の異なる光学材料用モノマーを硬化させることにより、前記光学材料用重合性組成物の硬化物である光学材料を得る硬化工程と、
を含むことが好ましい。
【0115】
製法Bは、準備工程及びプレポリマー化工程に加え、さらに、光学材料用重合性組成物製造工程と、硬化工程と、を含むことで、得られる光学材料における脈理をより良好に抑制し、かつ、光学材料の製造時間をより良好に短縮することができる。
【0116】
製法Bにおける準備工程において準備される光学材料用重合性組成物は、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である。製法Aの場合と同様に、この重合触媒の含有量は、従来の光学材料の製造方法と比較して、多量である。
したがって、製法Aの場合と同様に、従来よりも短い時間で脈理が抑制された高品質な光学材料を得ることができる。
製法Aの場合と同様に、製法Bにおいて、光学材料用重合性組成物に対する加熱は必ずしも必要ではない。
また、製法Bは、準備工程と、プレポリマー化工程と、光学材料用重合性組成物製造工程と、硬化工程と、を含むことで、重合反応が行われるモールド内における対流を抑制することができ、得られる硬化物における脈理の発生を抑制することができる。
また、製法Bはプレポリマー化工程を含むことで、プレポリマー化を伴わない場合と比較して、プレポリマーを含む混合物(例えば、光学材料用重合性組成物)の保存安定性をより良好に維持することができる。
例えば、プレポリマーを含む混合物を一定期間保存した場合に、混合物内での重合反応を抑制することができる。即ち、より長期のポットライフを確保することができる。
【0117】
<準備工程>
製法Bは、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である重合触媒と、を準備する準備工程を含む。
【0118】
準備工程において、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である重合触媒と、を準備する。
即ち、製法Bは、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である重合触媒と、を用いる。
【0119】
2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する含有量が0.1150質量部以上である重合触媒を用いることで、良好に重合反応を促進することができるため、短い時間で脈理が抑制された高品質な光学材料を得ることができる。また、良好に重合反応を促進することで、硬化物をモールドから取り出す際の離型性を向上させることができる。
上記の観点から、重合触媒は、2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対して、0.1175質量部以上を用いることが好ましく、0.125質量部以上を用いることがより好ましい。
【0120】
2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する含有量が0.2000質量部以下である重合触媒を用いることで、例えば光学材料用重合性組成物をモールドへ注入する際のハンドリング性を向上させることができる。
上記の観点から、重合触媒は、2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対して、0.1800質量部以下用いることが好ましく、0.1500質量部以下用いることが好ましい。
【0121】
なお、上記重合触媒の量は、重合触媒の種類、使用するモノマー類(エピスルフィド化合物、その他の成分等)の種類及び使用量、所望の成形体の形状により適宜設定することができる。
【0122】
<プレポリマー化工程>
製法Bは、2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも一部と、重合触媒の少なくとも一部と、を混合し、2種以上の異なる光学材料用モノマーにおける少なくとも一部を重合させてプレポリマーを得ることにより、プレポリマーを含む混合物を得るプレポリマー化工程を含む。
【0123】
本発明者らは、重合反応が行われるモールド内の温度分布が不均一であることにより対流が生じることが、得られる硬化物において脈理を発生させる原因の一つであると考えた。
そこで、本発明者らは、光学材料用モノマーの一部を予め重合させてプレポリマーを製造し、光学材料用重合性組成物がプレポリマーを含むことで、光学材料用重合性組成物の粘度を高めることに着目した。これによって、モールド内の対流を抑制することができる。
また、製法Bは、自己発熱を外部に逃がさないようにすることでモールド内部と外周の温度差を生じにくくすることができる。
以上の観点が相まって、製法Bは、得られる硬化物の脈理を抑制することができると推測される。
【0124】
製法Bは、プレポリマー化工程において、2種以上の異なる光学材料用モノマーの内の1種の光学材料用モノマーの全部と、前記1種の光学材料用モノマー以外の他の光学材料用モノマーの全部もしくは一部と、重合触媒の全部もしくは一部を含むことによって、ポットライフに優れるプレポリマーを得ることができる。
【0125】
「2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部」の態様としては、特に制限はない。
例えば、「2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部」は、2種以上の異なる光学材料用モノマーのそれぞれの一部の量であってもよい。
また、「2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部」は、2種以上の異なる光学材料用モノマーの内の1種又は複数種の光学材料用モノマーの全部であってもよい。
【0126】
プレポリマー化工程において、重合触媒は、一部を用いてもよく、全部を用いてもよい。
重合触媒として一部を用いる場合、「2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部」と同様に、「重合触媒の一部」の態様についても、特に制限はない。
例えば、「重合触媒の一部」は、重合触媒の一部の量であってもよい。
【0127】
重合触媒として一部を用いる場合、重合触媒の一部は、長期のポットライフを確保する観点から、重合触媒の100質量部の内の5質量部~80質量部であることが好ましく、10質量部~60質量部であることがより好ましく、15質量部~50質量部であることがさらに好ましい。
【0128】
2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部は、長期のポットライフを確保する観点から、2種以上の異なる光学材料用モノマーの100質量部の内の5質量部~95質量部であることが好ましく、10質量部~80質量部であることがより好ましく、20質量部~70質量部であることがさらに好ましい。
【0129】
製法Bは、2種以上の異なる光学材料用モノマーの全部と、重合触媒の一部と、を混合し、2種以上の異なる光学材料用モノマーにおける少なくとも一部を重合させてプレポリマーを得ることにより、プレポリマーを含む混合物を得るプレポリマー化工程を含むことが好ましい。
【0130】
プレポリマー化工程の具体的態様の例を以下に示すが、製法Bにおけるプレポリマー化工程は以下の態様に制限されない。
【0131】
(態様a)
態様aのプレポリマー化工程は、2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部と、重合触媒の全部と、を混合し、2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部における少なくとも一部を重合させてプレポリマーを得ることにより、プレポリマーを含む混合物を得る工程である。
【0132】
態様aにおいて、2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部が、2種以上の異なる光学材料用モノマーの内の1種の光学材料用モノマーの全部と、1種の光学材料用モノマー以外の他の光学材料用モノマーの一部と、からなることが好ましい。
【0133】
(態様b)
態様bのプレポリマー化工程は、2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部と、重合触媒の一部と、を混合し、2種以上の異なる光学材料用モノマーの一部における少なくとも一部を重合させてプレポリマーを得ることにより、プレポリマーを含む混合物を得る工程である。
製法Bが態様bのプレポリマー化工程を含む場合、後述の光学材料用重合性組成物製造工程は、プレポリマーを含む混合物に対し、少なくとも、2種以上の異なる光学材料用モノマーの残部及び重合触媒の残部を添加することにより、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、プレポリマーと、重合触媒と、を含有する光学材料用重合性組成物を得る工程である。
【0134】
<粘度調整工程>
製法Bは、プレポリマー化工程の後であって、光学材料用重合性組成物製造工程の前に、プレポリマーを含む混合物の粘度を10mPa・s~1000mPa・sに調整する粘度調整工程をさらに含むことが好ましい。
プレポリマーを含む混合物の粘度が上記範囲内であることで、得られる光学材料における脈理を抑制する観点から、光学材料用重合性組成物製造工程において製造される光学材料用重合性組成物の粘度を適切な範囲内とすることができる。結果として、得られる光学材料における脈理を抑制できる。
【0135】
上記の観点から、プレポリマーを含む混合物の粘度は、40mPa・s~1000mPa・sであることが好ましく、50mPa・s~800mPa・sであることがより好ましい。
なお、粘度は、20℃、60rpm(revolutions per minute)の条件下、B型粘度計を用いて測定する。
【0136】
プレポリマーを含む混合物の粘度を調整する方法としては、特に制限はない。
例えば、高粘度の化合物の添加、加熱、撹拌等の方法によりプレポリマーを含む混合物の粘度を調整してもよい。
【0137】
プレポリマーを含む混合物を調製する際の温度としては、重合反応によりプレポリマーを得られる温度であれば特に制限はない。例えば、20℃~50℃でもよく、25℃~45℃でもよい。
プレポリマーを含む混合物を調製する際の撹拌時間としては、重合反応によりプレポリマーを得られる撹拌時間であれば特に制限はない。例えば30分~10時間でもよく、1時間~10時間でもよい。
【0138】
プレポリマーを含む混合物を調製する方法としては、具体的には、20℃、6時間の条件で撹拌することで、粘度を調整しながらプレポリマーを含む混合物を調製する方法であってもよい。
【0139】
<光学材料用重合性組成物製造工程>
製法Bは、プレポリマーを含む混合物に対し、前記重合触媒の残部、又は、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの残部と前記重合触媒の残部との混合液(本開示中、重合触媒の残部等ともいう)を添加することにより、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、プレポリマーと、重合触媒と、を含有する光学材料用重合性組成物を得る光学材料用重合性組成物製造工程を含む。
【0140】
光学材料用重合性組成物製造工程は、プレポリマーを含む混合物に対し、前記重合触媒の残部等を添加することにより、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、プレポリマーと、重合触媒と、を含有する光学材料用重合性組成物を得る工程である。
これによって、プレポリマーを含む混合物と、重合触媒の残部等と、を混合する際まで、プレポリマーを含む混合物中の残りの反応基同士での重合の発生を防ぐことができる。
従って、光学材料用重合性組成物製造工程を適切な時期に行うことで、例えば光学材料用重合性組成物をモールドへ注入する際のハンドリング性を向上させることができる。
光学材料用重合性組成物製造工程において、プレポリマーを含む混合物に対して重合触媒の残部等を添加する際、重合触媒の残部を、単回にて混合してもよく、複数回に分けて混合してもよい。
【0141】
上記の各成分を混合する際の温度としては、特に制限はないが、30℃以下であることが好ましく、室温(25℃)以下であることがより好ましい。
各成分を混合する際の温度は、25℃よりもさらに低温にすることが好ましい場合がある。但し、内部離型剤等の添加剤と上記の各成分との溶解性が良好でない場合は、予め上記の各成分を昇温して、上記添加剤を上記の各成分に溶解させてもよい。
【0142】
光学材料用重合性組成物製造工程の具体的態様としては、例えば以下の態様が挙げられる。
【0143】
まず、プレポリマーを含む混合物に対して添加剤(例えば内部離型剤)を仕込んで混合液を作製する。この混合液を25℃で1時間攪拌して各成分を完全に溶解させた後、脱気を行い、第1混合液を得る。
また、重合触媒の残部を準備する。必要に応じて光学材料用モノマーの残部と前期重合触媒の残部を25℃で30分攪拌して完全に溶解させ第2混合液を得る。
そして、第1混合液と重合触媒の残部、もしくは、第1混合液と第2混合液とを混合して撹拌後脱気し、均一な溶液として光学材料用重合性組成物を得る。
【0144】
<送液工程>
製法Bは、光学材料用重合性組成物製造工程の後であって、硬化工程の前に、光学材料用重合性組成物を注型用鋳型に送液する送液工程をさらに含んでもよい。
送液工程は、光学材料用重合性組成物を静止型混合器内にて再混合しながら注型用鋳型に送液する工程であってもよい。
送液工程は、光学材料用重合性組成物をダイナミックミキサーによって再混合しながら注型用鋳型に送液する工程であってもよい。
これによって、光学材料用重合性組成物を鋳型に送液する間に、光学材料用重合性組成物の分布の不均一性を解消することができるため、得られる硬化物の脈理を抑制することができる。
【0145】
<硬化工程>
製法Bは、光学材料用重合性組成物中の2種以上の異なる光学材料用モノマーを硬化させることにより、光学材料用重合性組成物の硬化物である光学材料を得る硬化工程を含む。
製法Bにおける硬化工程の具体的態様、好ましい態様等は、上述の製法Aにおける<硬化工程>の項に記載の具体的態様、好ましい態様等の詳細と同様である。
【0146】
<アニール工程>
製法Bは、必要に応じて、硬化した光学材料用重合性組成物をアニール処理するアニール工程を含んでもよい。
製法Bにおけるアニール工程の好ましい態様等は、製法Aにおけるアニール工程の好ましい態様等と同様である。
【0147】
<他の工程>
製法Bは、必要に応じて他の工程を設けてもよい。
製法Bにおける他の工程の具体的態様、好ましい態様等は、製法Aにおける他の工程の具体的態様、好ましい態様等と同様である。
【0148】
<光学材料の用途>
製法Bにおける光学材料の用途の具体的例、好ましい具体例等は、製法Aにおける光学材料の用途の具体的例、好ましい具体例等と同様である。
【0149】
~第2実施形態~
≪光学材料の製造方法≫
第2実施形態の光学材料の製造方法は、エピスルフィド化合物を含む光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含み、かつ、前記光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が、0.1150質量部~0.2000質量部である光学材料用重合性組成物を準備する準備工程と、前記光学材料用重合性組成物中の前記光学材料用モノマーを重合させることにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を含む。
第2実施形態の光学材料の製造方法において、エピスルフィド化合物、光学材料用モノマー、重合触媒、重合触媒の含有量の具体的な態様及び好ましい態様は、上述の第1実施形態のエピスルフィド化合物、光学材料用モノマー、重合触媒、重合触媒の含有量の具体的な態様及び好ましい態様と同様である。
準備工程における具体的態様及び好ましい態様は、上述の第1実施形態の準備工程における具体的態様及び好ましい態様と同様である。
硬化工程における具体的態様及び好ましい態様は、上述の第1実施形態の硬化工程における具体的態様及び好ましい態様と同様である。
第2実施形態の光学材料の製造方法において、各成分の具体例、好ましい具体例、具体的態様、好ましい態様等の詳細は、第1実施形態の光学材料の製造方法における各成分の具体例、好ましい具体例、具体的態様、好ましい態様等の詳細と同様である。
【0150】
本開示の第2実施形態は以下の態様を含む。
<2-1> エピスルフィド化合物を含む光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含み、かつ、前記光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が、0.1150質量部~0.2000質量部である光学材料用重合性組成物を準備する準備工程と、前記光学材料用重合性組成物中の前記光学材料用モノマーを重合させることにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる硬化工程と、を含む光学材料の製造方法。
<2-2> 前記準備工程が、前記光学材料用モノマーの全部を予め混合した後、さらに前記重合触媒を混合して前記光学材料用重合性組成物を準備する工程である<2-1>に記載の光学材料の製造方法。
<2-3> 前記準備工程が、前記光学材料用モノマーの一部に、前記重合触媒を予め混合した後、さらに前記光学材料用モノマーの残部を混合して前記光学材料用重合性組成物を準備する工程である<2-1>又は<2-2>に記載の光学材料の製造方法。
<2-4> 前記硬化工程が、前記光学材料用重合性組成物を閉鎖系空間内にて静置することにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる工程である<2-1>~<2-3>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
<2-5> 前記硬化工程が、前記光学材料用重合性組成物を外部から加熱することなく静置することにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる工程である<2-1>~<2-4>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
<2-6> 前記硬化工程が、前記光学材料用重合性組成物を6時間~20時間静置することにより、前記光学材料用重合性組成物を硬化させる工程である<2-1>~<2-5>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
<2-7> 前記光学材料用モノマーが、さらに、ポリチオール化合物及びイソシアネート化合物の少なくとも一方を含む<2-1>~<2-6>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
<2-8> 前記重合触媒が、アミン系触媒を含む<2-1>~<2-7>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
<2-9> 前記重合触媒が、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、及び、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミンの少なくとも一方を含む<2-1>~<2-8>のいずれか1つに記載の光学材料の製造方法。
<2-10> エピスルフィド化合物を含む光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含み、かつ、前記光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が、0.1150質量部~0.2000質量部である光学材料用重合性組成物。
【実施例0151】
本実施例で用いるポリチオール化合物は、国際公開第2014/027665号に記載の方法で製造することができる。
本実施例において、pKaは上述の方法により測定した。
【0152】
<実施例A>
以下、本開示の第1及び第2実施形態を実施例Aにより具体的に説明するが、第1及び第2実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例Aにおける粘度の測定方法は上述の方法と同様である。
【0153】
各実施例又は比較例において得られた成形体について、以下の評価を行った。
(脈理)
成形体を超高圧水銀灯(光源型式OPM-252HEG:ウシオ電機株式会社製)で投影し、透過した像を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
A:脈理が観察されなかった、又は、脈理が明確には観察されなかった。具体的には、成型体の中心から半径15mmの範囲内及び範囲外に目視で1.0mm以上の長さの脈理が観察されなかった。
B:脈理が観察されるものの、製品として概ね許容できるものであった。具体的には、成型体の中心から半径15mmの範囲外に目視で1.0mm以上の長さの脈理が観察されるものの、成型体の中心から半径15mmの範囲内に目視で1.0mm以上の長さの脈理が観察されず、製品として概ね許容できるものであった。
C:脈理が観察され、製品として許容できないものであった。具体的には、成型体の中心から半径15mmの範囲内及び範囲外に目視で1.0mm以上の長さの脈理が観察された。
【0154】
(離型性)
成形モールドから成形体を離型する際における成形体の離型性を以下の基準で評価した。
A:力を加えなくても剥がれた。
B:力を加えると剥がれた。
C:力を加えると剥がれるが、モールド又はレンズが破損する可能性があった。
D:力を加えても剥がれず、製品が得られなかった。
【0155】
[実施例1A~実施例6A]
ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド〔エピスルフィド化合物〕100.0質量部に、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール〔紫外線吸収剤〕1.1質量部を加えて20℃で30分撹拌し溶解させた。この混合液に、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを主成分とする混合物〔ポリチオール化合物〕10.0質量部を加えて20℃で10分撹拌した。その後、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン〔DCA、重合触媒、pKa:10.7〕について表1に記載の含有量となる量、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン〔DCH、重合触媒、pKa:11.0〕について表1に記載の含有量となる量を仕込み、これを15℃で5分撹拌し均一溶液とした。この溶液を400Paにて10分脱泡を行い、光学材料用重合性組成物を得た。
なお、重合触媒についての表1に記載の含有量は、光学材料用モノマー(即ち、エピスルフィド化合物及びポリチオール化合物)の全量に対する重合触媒の含有量を意味する。
光学材料用重合性組成物について、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した粘度、及びチキソ比を表1に示す。
この光学材料用重合性組成物を1μmPTFEフィルターにて濾過を行いながら、モールド型のキャビティ内に10g/秒の速度で注入した。
上記モールド型としては、以下のサイズのモールド型を用いた。
・S=-6.25D、中心厚1.1mm、周辺厚9mm
・S=-2.25D、中心厚1.1mm、周辺厚4mm
・4カーブ、中心厚2mm
・4カーブ、中心厚7mm
・4カーブ、中心厚10mm
【0156】
また、光学材料用重合性組成物中の光学材料用モノマーの全量としては、S=-6.25Dの場合を32g、S=-2.25Dの場合を16g、4カーブ中心厚2mmの場合を14g、4カーブ中心厚7mmの場合を50g、4カーブ中心厚10mmの場合を65gとした。
【0157】
この注型物を25℃の断熱容器に入れて、表1に記載の時間静置して断熱重合を行った後、モールド型から硬化した成形体を離型し、さらに110℃で1時間アニール処理を行い、成形体(レンズ)を得た。
得られた成形体について、脈理及び離型性の結果を表1に示す。
得られた成形体(即ち硬化物)について、ガスクロマトグラフ質量分析で測定したアミンの含有量を表1に示す。
【0158】
[比較例1A]
触媒の量を表1に記載の通りとした以外は、実施例1A~実施例6Aと同様の方法により重合性組成物を得て、モールド型のキャビティ内に注入し重合を行ったが、完全に硬化しなかった。そのため、離型性及び脈理の評価は行わなかった。
【0159】
[比較例2A]
比較例1Aにおいて注型物を42時間で硬化させるような重合プログラム(昇温プログラム)で硬化させた以外は、比較例1Aと同様の手法で重合を行った。硬化した成形体を離型し、さらに110℃で1時間アニール処理を行い、成形体を得た。
得られた成形体について、脈理及び離型性の結果を表1に示す。
【0160】
【0161】
上述の通り、エピスルフィド化合物を含む光学材料用モノマーと、重合触媒と、を含み、かつ、光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が、0.1150質量部~0.2000質量部である光学材料用重合性組成物を準備する準備工程を行った実施例1A~実施例6Aは、10時間~18時間という短時間にて、離型性及び脈理が良好な成形体を得ることができた。
中でも、光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が、0.1200質量部以上である実施例1A~実施例5Aにおいて、より短時間にて離型性及び脈理が良好な成形体を得ることができた。
一方、光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が0.1150質量部未満であり、光学材料用重合性組成物を断熱環境下にて静置して断熱重合を行った比較例1Aは、離型性に劣っており、良好な成形体を得ることができなかった。
また、光学材料用モノマーの全量に対する前記重合触媒の含有量が0.1150質量部未満である比較例2Aは、離型性及び脈理が良好な成形体を得ることができたが、重合オーブンを用いた加熱を行うことを要し、重合時間についても実施例と比較して長時間を要した。
【0162】
光学材料用重合性組成物中の光学材料用モノマーの合計質量を30gとして、実施例1A、実施例2A~実施例4A、実施例5A及び実施例6Aの光学材料用重合性組成物を用いて成形体を製造する場合における、重合時間と温度との関係を表すグラフを
図1に示す。
【0163】
<実施例B>
以下、第1実施形態の製法Bを実施例Bにより具体的に説明するが、第1実施形態の製法Bはこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例Bにおける粘度の測定方法は上述の方法と同様である。
実施例Bにおいて、硬化物中のアミンの含有量は、上述の方法により測定した。
各実施例又は比較例において得られた成形体について、以下の評価を行った。
【0164】
(脈理)
成形体を超高圧水銀灯(光源型式OPM-252HEG:ウシオ電機株式会社製)で投影し、透過した像を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
A:脈理が観察されなかった。具体的には、成型体の中心から半径15mmの範囲内及び範囲外に目視で1.0mm以上の長さの脈理が観察されなかった。
B:脈理が観察されるものの、製品として概ね許容できるものであった。具体的には、成型体の中心から半径15mmの範囲外に目視で1.0mm以上の長さの脈理が観察されるものの、成型体の中心から半径15mmの範囲内に目視で1.0mm以上の長さの脈理が観察されず、製品として概ね許容できるものであった。
C:脈理が観察され、製品として許容できないものであった。具体的には、成型体の中心から半径15mmの範囲内及び範囲外に目視で1.0mm以上の長さの脈理が観察された。
【0165】
(離型性)
成形モールドから成形体を離型する際における成形体の離型性を以下の基準で評価した。
A:力を加えなくても剥がれた。
B:力を加えると剥がれた。
C:力を加えると剥がれるが、モールド又はレンズが破損する可能性があった。
D:力を加えても剥がれず、製品が得られなかった。
【0166】
[実施例1B]
ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド〔エピスルフィド化合物〕100.0質量部に、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール〔紫外線吸収剤〕1.1質量部を加えて20℃で30分撹拌し溶解させた。この混合液に、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを主成分とする混合物〔ポリチオール化合物〕10.0質量部を加えて20℃で10分撹拌し、均一溶液とした。
さらに得られた均一溶液にN,N-ジメチルシクロヘキシルアミン〔DCA、重合触媒〕0.02質量部を加え、20℃で6時間撹拌した。粘度を調整しながら光学材料用モノマーを重合させて、この溶液を400Paにて10分脱泡を行い、プレポリマーを含む混合液を得た。プレポリマーを含む混合物の粘度は表2に示す。
得られた混合液にN,N-ジシクロヘキシルメチルアミン〔DCH、重合触媒〕0.1質量部を加えて20℃で混合し、光学材料用重合性組成物を得た。
光学材料用重合性プレポリマー組成物の屈折率Aから、プレポリマーを形成する前の組成物であり、2種以上の異なる光学材料用モノマーと重合触媒とを含む組成物であるプレポリマー原料組成物の屈折率Bを差し引いた値(「屈折率A-屈折率B」ともいう)について表2に示す。
光学材料用重合性組成物について、B型粘度計で20℃ 60rpmの条件で測定した粘度、及びチキソ比を表2に示す。
【0167】
得られた光学材料用重合性組成物を静止型混合器内にて再混合しながら注型用鋳型(即ちモールド型)に送液した。
鋳型に送液され、注型される際の光学材料用重合性組成物の粘度(注型粘度ともいう)を表2に示す値に調整した。
この光学材料用重合性組成物を1μmPTFEフィルターにて濾過を行いながら、モールド型のキャビティ内に10g/秒の速度で注入した。
上記モールド型としては、以下のサイズのモールド型を用いた。
・S=-6.25D、中心厚1.1mm、周辺厚9mm
・4カーブ、中心厚2mm
・4カーブ、中心厚7mm
注型物を25℃の断熱容器に入れて5時間静置して断熱重合を行った。その後、モールド型から硬化した成形体を離型し、さらに110℃で1時間アニール処理を行い、成形体(レンズ)を得た。
【0168】
[実施例2B]
DCAの含有量を0.03質量部に変更したこと以外は実施例1Bと同様の方法により成型体(レンズ)を得た。硬化した成形体を離型し、さらに110℃で1時間アニール処理を行い、成形体を得た。
得られた成形体について、脈理及び離型性の結果を表1に示す。
【0169】
【0170】
表2に示す通り、2種以上の異なる光学材料用モノマーと、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの全量に対する含有量が0.1150質量部~0.2000質量部である重合触媒と、を準備する準備工程と、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも一部と、前記重合触媒の少なくとも一部と、を混合し、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーにおける少なくとも一部を重合させてプレポリマーを得ることにより、前記プレポリマーを含む混合物を得るプレポリマー化工程と、を含み、前記2種以上の異なる光学材料用モノマーの少なくとも1種がエピスルフィド化合物である光学材料の製造方法を用いた実施例は、脈理の評価にすぐれていたため脈理を抑制できていた。また、重合時間が5時間であったことから、光学材料の製造時間を短縮することができていた。
【0171】
2020年3月10日に出願された日本国特許出願2020-041402号、及び2020年11月24日に出願された日本国特許出願2020-194660号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。