(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040346
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】フルオロポリエーテル基含有シラン化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 65/336 20060101AFI20240315BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C08G65/336
C09K3/18 104
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018612
(22)【出願日】2024-02-09
(62)【分割の表示】P 2022149323の分割
【原出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021058251
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【弁理士】
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】池内 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】高野 真也
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝史
(57)【要約】
【課題】より良い物性を有する表面処理層の形成に寄与し得るフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の提供。
【解決手段】下記式(A1)または(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。各符号は、明細書の記載のとおりである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A1)または(A2):
【化1】
で表される、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、それぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
X
1は、各出現においてそれぞれ独立して、以下の式:
-(CR
50
2)
n51-(CR
51=CR
52)
n52-((CH
2)
n55-Y
51-(CH
2)
n54)
n53-
で表され;
R
50は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または1価の有機基であり;
R
51およびR
52は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
Y
51は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n54は、それぞれ独立して、0または1であり;
n55は、それぞれ独立して、0または1であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基またはC
3-10シクロアルキル基であり;
n51は、0~10の整数であり;
n52は、0~10の整数であり;
n53は、0~10の整数であり;
n51、n52またはn53を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n51、n52およびn53の合計は1以上であり;
R
Siは、それぞれ独立して、下記式(S1):
【化2】
で表される基であり;
X
3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、または2価の有機基であり;
R
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
R
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
ただし、式(A1)および(A2)のそれぞれにおいて、少なくとも1つのl1は1であり;
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ベンジル基、メトキシフェニル基、ベンゾイル基、トリチル基、-SiR
71、または-(R
72-O)
n7-R
73であり、
R
71は、それぞれ独立して、C
1-4アルキル基であり、
R
72は、それぞれ独立して、C
1-4アルキレン基であり、
n7は、それぞれ独立して、1~10の整数であり;
R
73は、それぞれ独立して、水素原子、または環構造を含んでいてもよい1価の炭化水素基である。]
【請求項2】
X1は、各出現においてそれぞれ独立して、式(X1)または(X2):
-X51-CR51=CR52-X52- ・・・(X1)
-X53- ・・・(X2)
で表され;
X51は、-(CR50
2)n511-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n512-
で表され;
R50は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または1価の有機基であり;
Y51は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR15、NR15、S、またはアリーレン基であり;
n54は、それぞれ独立して、0または1であり;
n55は、それぞれ独立して、0または1であり;
R15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C1-6アルキル基、-O-C1-6アルキル基またはC3-10シクロアルキル基であり;
n511は、0~10の整数であり;
n512は、0~10の整数であり;
n511またはn512を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X52は、-(CR50
2)n511’-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n512’-で表され;
n511’は、0~10の整数であり;
n512’は、0~10の整数であり;
n511’またはn512’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R51およびR52は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
X53は、それぞれ独立して、
-(CR50
2)n521-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n522-
で表され;
n521は、0~10の整数であり;
n522は、0~10の整数であり;
n521またはn522を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n521およびn522の合計は1以上である、
請求項1に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
【請求項3】
R50は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、-O-(R14-O)n4-R14’、またはC1-4アルキル基である、請求項1または2に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[式中:
R14は、それぞれ独立して、C1-4アルキレン基であり;
n4は、それぞれ独立して、0~100の整数であり;
R14’は、それぞれ独立して、C1-4アルキル基であり;
上記C1-4アルキル基は置換基を有していてもよい。]
【請求項4】
X1は、各出現においてそれぞれ独立して、
-CHR13-[(CR50’
2)n51’-(CR51=CR52)n52-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n53]-
で表される基であり、
R13は、-OH、または-O-(R14-O)n4-R14’で表され;
R14は、それぞれ独立してC1-4アルキレン基であり;
n4は、0~100の整数であり;
R14’は、C1-4アルキル基であり;
R50’は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり;
n51’は、0~10の整数であり;
n52は、0~10の整数であり;
n53は、0~10の整数であり;
n51’、n52またはn53を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、-(CR50’
2)n51’-(CR51=CR52)n52-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n53-内において任意であり、
R51およびR52は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
Y51は、それぞれ独立して、O、CONR15、NR15、S、またはアリーレン基であり、
R15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C1-6アルキル基、-O-C1-6アルキル基またはC3-10シクロアルキル基であり;
n54は、それぞれ独立して、0または1であり、
n55は、それぞれ独立して、0または1である、
請求項1に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
【請求項5】
R50’は、水素原子である、請求項4に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
【請求項6】
R51およびR52は、水素原子である、請求項1~5のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
【請求項7】
R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または-(R72-O)n7-R73で表される基であり、
R72は、それぞれ独立して、C1-4アルキレン基であり、
R73は、水素原子、環構造を含んでいてもよい1価の炭化水素基であり、
n7は、1~10の整数である、
請求項1~6のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
【請求項8】
R11は、各出現においてそれぞれ独立して、-CH2O-R11’であり、
R11’は、水素原子、または-(R72-O)n7’-R73であり、
R72は、それぞれ独立して、C1-4アルキレン基であり、
R73は、水素原子、環構造を含んでいてもよい1価の炭化水素基であり、
n7’は、0~9の整数である、
請求項1~7のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
【請求項9】
R73は、それぞれ独立して、水素原子、またはC1-4アルキル基である、請求項1~8のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
【請求項10】
n55は、1である、請求項1~9のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
【請求項11】
n54およびn55は、0である、請求項1~9のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物、および、該フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の少なくとも一部が縮合した縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、表面処理剤。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含有する、表面処理剤。
【請求項14】
基材と、該基材の表面に、請求項1~11のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物または請求項12または13に記載の表面処理剤から形成された層とを含む物品。
【請求項15】
式(a11)または式(a12):
【化3】
で表される化合物と、式(a13):
【化4】
で表される化合物とを反応させて、式(a21)または式(a22):
【化5】
で表される化合物を得る工程
を含む、フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、それぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
X
61は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
R
63は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基である。]
【請求項16】
式(a31)または式(a32):
【化6】
で表される化合物と、以下の式(a33):
【化7】
で表される化合物とを反応させて、式(a21)または式(a22):
【化8】
で表される化合物を得る工程
を含む、フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
X
61は、各出現においてそれぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、各出現においてそれぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基、またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
R
63は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基である。]
【請求項17】
式(a23)、または式(a24):
【化9】
で表される化合物と、Hal-J-Z
23-CH=CH
2とを反応させて、式(a25)または式(a26):
【化10】
で表される化合物を得る工程
を含む、フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
-X
6-は、各出現においてそれぞれ独立して、
-X
61-CR
61=CR
62-X
62-、または
-X
63-
で表され;
X
61は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-
で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基、またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
X
63は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n621-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n622-
で表され;
n621は、0~10の整数であり;
n622は、0~10の整数であり;
n621またはn622を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n621およびn622の合計は1以上であり;
R
63は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
Halは、ハロゲン原子を表し;
Jは、Mg、Cu、PdまたはZnを表し;
Z
23は、それぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。]
【請求項18】
式(a23)または式(a24):
【化11】
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
-X
6-は、各出現においてそれぞれ独立して、
-X
61-CR
61=CR
62-X
62-、または
-X
63-
で表され;
X
61は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-
で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基、またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
X
63は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n621-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n622-
で表され;
n621は、0~10の整数であり;
n622は、0~10の整数であり;
n621またはn622を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n621およびn622の合計は1以上であり;
R
63は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基である。]
【請求項19】
式(a27)または式(a28):
【化12】
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
-X
6-は、各出現においてそれぞれ独立して、
-X
61-CR
61=CR
62-X
62-、または
-X
63-
で表され;
X
61は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-
で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基、またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
X
63は、
-(CR
60
2)
n621-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n622-
で表され;
n621は、0~10の整数であり;
n622は、0~10の整数であり;
n621またはn622を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n621およびn622の合計は1以上であり;
R
65は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
Z
23は、それぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の含フッ素シラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層(以下、「表面処理層」とも言う)は、いわゆる機能性薄膜として、例えばガラス、プラスチック、繊維、建築資材など種々多様な基材に施されている。
【0003】
そのような含フッ素化合物として、フルオロポリエーテル基を分子主鎖に有し、Si原子に結合した加水分解可能な基を分子末端または末端部に有するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような表面処理層には、さらに良好な物性を有することが求められる。本開示は、より良い物性を有する表面処理層の形成に寄与し得るフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の[1]~[19]を提供するものである。
[1] 下記式(A1)または(A2):
【化1】
で表される、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、それぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
X
1は、各出現においてそれぞれ独立して、以下の式:
-(CR
50
2)
n51-(CR
51=CR
52)
n52-((CH
2)
n55-Y
51-(CH
2)
n54)
n53-
で表され;
R
50は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または1価の有機基であり;
R
51およびR
52は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
Y
51は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n54は、それぞれ独立して、0または1であり;
n55は、それぞれ独立して、0または1であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基またはC
3-10シクロアルキル基であり;
n51は、0~10の整数であり;
n52は、0~10の整数であり;
n53は、0~10の整数であり;
n51、n52またはn53を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n51、n52およびn53の合計は1以上であり;
R
Siは、それぞれ独立して、下記式(S1):
【化2】
で表される基であり;
X
3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、または2価の有機基であり;
R
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
R
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
ただし、式(A1)および(A2)のそれぞれにおいて、少なくとも1つのl1は1であり;
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ベンジル基、メトキシフェニル基、ベンゾイル基、トリチル基、-SiR
71、または-(R
72-O)
n7-R
73であり、
R
71は、それぞれ独立して、C
1-4アルキル基であり、
R
72は、それぞれ独立して、C
1-4アルキレン基であり、
n7は、それぞれ独立して、1~10の整数であり;
R
73は、それぞれ独立して、水素原子、または環構造を含んでいてもよい1価の炭化水素基である。]
[2] X
1は、各出現においてそれぞれ独立して、式(X1)または(X2):
-X
51-CR
51=CR
52-X
52- ・・・(X1)
-X
53- ・・・(X2)
で表され;
X
51は、-(CR
50
2)
n511-((CH
2)
n55-Y
51-(CH
2)
n54)
n512-
で表され;
R
50は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または1価の有機基であり;
Y
51は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n54は、それぞれ独立して、0または1であり;
n55は、それぞれ独立して、0または1であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基またはC
3-10シクロアルキル基であり;
n511は、0~10の整数であり;
n512は、0~10の整数であり;
n511またはn512を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
52は、-(CR
50
2)
n511’-((CH
2)
n55-Y
51-(CH
2)
n54)
n512’-で表され;
n511’は、0~10の整数であり;
n512’は、0~10の整数であり;
n511’またはn512’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
51およびR
52は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
X
53は、それぞれ独立して、
-(CR
50
2)
n521-((CH
2)
n55-Y
51-(CH
2)
n54)
n522-
で表され;
n521は、0~10の整数であり;
n522は、0~10の整数であり;
n521またはn522を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n521およびn522の合計は1以上である、
[1]に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[3] R
50は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、-O-(R
14-O)
n4-R
14’、またはC
1-4アルキル基である、[1]または[2]に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[式中:
R
14は、それぞれ独立してC
1-4アルキレン基であり;
n4は、それぞれ独立して0~100の整数であり;
R
14’は、それぞれ独立してC
1-4アルキル基であり;
上記C
1-4アルキル基は置換基を有していてもよい。]
[4] X
1は、各出現においてそれぞれ独立して、
-CHR
13-[(CR
50’
2)
n51’-(CR
51=CR
52)
n52-((CH
2)
n55-Y
51-(CH
2)
n54)
n53]-
で表される基であり、
R
13は、-OH、または-O-(R
14-O)
n4-R
14’で表され;
R
14は、それぞれ独立してC
1-4アルキレン基であり;
n4は、0~100の整数であり;
R
14’は、C
1-4アルキル基であり;
R
50’は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり;
n51’は、0~10の整数であり;
n52は、0~10の整数であり;
n53は、0~10の整数であり;
n51’、n52またはn53を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、-(CR
50’
2)
n51’-(CR
51=CR
52)
n52-((CH
2)
n55-Y
51-(CH
2)
n54)
n53-内において任意であり、
R
51およびR
52は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
Y
51は、それぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり、
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基またはC
3-10シクロアルキル基であり;
n54は、それぞれ独立して、0または1であり、
n55は、それぞれ独立して、0または1である、
[1]に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[5] R
50’は、水素原子である、[4]に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[6] R
51およびR
52は、水素原子である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[7] R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または-(R
72-O)
n7-R
73で表される基であり、
R
72は、それぞれ独立して、C
1-4アルキレン基であり、
R
73は、水素原子、環構造を含んでいてもよい1価の炭化水素基であり、
n7は、1~10の整数である、
[1]~[6]のいずれか1つに記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[8] R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、-CH
2O-R
11’であり、
R
11’は、水素原子、または-(R
72-O)
n7’-R
73であり、
R
72は、それぞれ独立して、C
1-4アルキレン基であり、
R
73は、水素原子、環構造を含んでいてもよい1価の炭化水素基であり、
n7’は、0~9の整数である、
[1]~[7]のいずれか1つに記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[9] R
73は、それぞれ独立して、水素原子、またはC
1-4アルキル基である、[1]~[8]のいずれか1つに記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[10] n55は、1である、[1]~[9]のいずれか1つに記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[11] n54およびn55は、0である、[1]~[9]のいずれか1つに記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物。
[12] [1]~[11]のいずれか1つに記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物、および、該フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の少なくとも一部が縮合した縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、表面処理剤。
[13] [1]~[11]のいずれか1つに記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含有する、表面処理剤。
[14] 基材と、該基材の表面に、[1]~[11]のいずれか1つに記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物または[12]または[13]に記載の表面処理剤から形成された層とを含む物品。
[15] 式(a11)または式(a12):
【化3】
で表される化合物と、式(a13):
【化4】
で表される化合物とを反応させて、式(a21)または式(a22):
【化5】
で表される化合物を得る工程
を含む、フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、それぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
X
61は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
R
63は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基である。]
[16] 式(a31)または式(a32):
【化6】
で表される化合物と、以下の式(a33):
【化7】
で表される化合物とを反応させて、式(a21)または式(a22):
【化8】
で表される化合物を得る工程
を含む、フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
X
61は、各出現においてそれぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、各出現においてそれぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基、またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
R
63は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基である。]
[17] 式(a23)、または式(a24):
【化9】
で表される化合物と、Hal-J-Z
23-CH=CH
2とを反応させて、式(a25)または式(a26):
【化10】
で表される化合物を得る工程
を含む、フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
-X
6-は、各出現においてそれぞれ独立して、
-X
61-CR
61=CR
62-X
62-、または
-X
63-
で表され;
X
61は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-
で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基、またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
X
63は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n621-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n622-
で表され;
n621は0~10の整数であり;
n622は0~10の整数であり;
n621またはn622を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n621およびn622の合計は1以上であり;
R
63は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
Halは、ハロゲン原子を表し;
Jは、Mg、Cu、PdまたはZnを表し;
Z
23は、それぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。]
[18] 式(a23)または式(a24):
【化11】
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
-X
6-は、各出現においてそれぞれ独立して、
-X
61-CR
61=CR
62-X
62-、または
-X
63-
で表され;
X
61は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-
で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基、またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
X
63は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n621-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n622-
で表され;
n621は、0~10の整数であり;
n622は、0~10の整数であり;
n621またはn622を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n621およびn622の合計は1以上であり;
R
63は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基である。]
[19] 式(a27)または式(a28):
【化12】
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物。
[式中:
R
F1は、Rf
1-R
F-O
q-で表され;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-で表され;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
Fa
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
で表される基であり;
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、e、またはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり;
pは、0または1であり;
qは、独立して、0または1であり;
-X
6-は、各出現においてそれぞれ独立して、
-X
61-CR
61=CR
62-X
62-、または
-X
63-
で表され;
X
61は、それぞれ独立して、
-(CR
60
2)
n611-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612-
で表され;
R
60は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を表し;
Y
61は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR
15、NR
15、S、またはアリーレン基であり;
n613は、それぞれ独立して、0または1であり;
n614は、それぞれ独立して、0または1であり;
n611は、0~10の整数であり;
n612は、0~10の整数であり;
n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
X
62は、それぞれ独立して、-(CR
60
2)
n611’-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n612’-で表され;
n611’は、0~10の整数であり;
n612’は、0~10の整数であり;
n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C
1-6アルキル基、-O-C
1-6アルキル基、またはC
3-10シクロアルキル基であり;
R
61およびR
62は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
X
63は、
-(CR
60
2)
n621-((CH
2)
n614-Y
61-(CH
2)
n613)
n622-
で表され;
n621は、0~10の整数であり;
n622は、0~10の整数であり;
n621またはn622を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n621およびn622の合計は1以上であり;
R
65は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり;
Z
23は、それぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。]
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より良い物性を有する表面処理層の形成に寄与し得るフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基またはその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。
本明細書において用いられる場合、「2価の有機基」としては、特に限定されるものではないが、炭化水素基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、分子から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素原子数1~20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0011】
本明細書において、アルキル基およびフェニル基は、特記しない限り、非置換であっても、置換されていてもよい。かかる基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0012】
本明細書において、「加水分解可能な基」とは、本明細書において用いられる場合、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解可能な基の例としては、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rhは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)などが挙げられ、好ましくは-ORh1(即ち、アルコキシ基)である。Rh1の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、加水分解可能な基はメトキシ基である。別の態様において、加水分解可能な基はエトキシ基である。
【0013】
(フルオロポリエーテル基含有シラン化合物)
本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、下記式(A1)または(A2)で表される化合物である。
【化13】
【0014】
式(A1)において、RF1は、Rf1-RF-Oq-で表される。
【0015】
式(A2)において、RF2は、-Rf2
p-RF-Oq-で表される。
【0016】
Rf1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0017】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0018】
上記Rf1は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCF2H-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0019】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF3、-CF2CF3、または-CF2CF2CF3である。
【0020】
Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0021】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0022】
上記Rf2は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0023】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基、具体的には-CF2-、-CF2CF2-、または-CF2CF2CF2-である。
【0024】
上記式において、pは、0または1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0025】
上記式において、qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0026】
上記式(A1)および(A2)において、RFは、各出現においてそれぞれ独立して、以下の式で表されるフルオロポリエーテル基である。尚、RFとして記載される構造は、式(A1)においては左側がRf1で表される構造に結合し、式(A2)においては左側がRf2
pで表される構造に結合する。
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3RFa
6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-
[式中:
RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上である。a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0027】
RFaは、好ましくは、水素原子またはフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。
【0028】
a、b、c、d、eおよびfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0029】
a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下または30以下であってもよい。
【0030】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。例えば、-(OC6F12)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよいが、好ましくは-(OCF2CF2CF2CF2CF2CF2)-である。-(OC5F10)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよいが、好ましくは-(OCF2CF2CF2CF2CF2)-である。-(OC4F8)-は、-(OCF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-および-(OCF2CF(C2F5))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCF2CF2CF2CF2)-である。-(OC3F6)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2)-および-(OCF2CF(CF3))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCF2CF2CF2)-である。また、-(OC2F4)-は、-(OCF2CF2)-および-(OCF(CF3))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCF2CF2)-である。
【0031】
一の態様において、RFは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)または(f5):
-(OC3F6)d-(OC2F4)e- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは0または1、好ましくは1である。]
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2)
[式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、eおよびfの和は2以上であり、
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
-(R6-R7)g- (f3)
[式中、R6は、OCF2またはOC2F4であり、
R7は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である。
【0032】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。上記式(f1)における(OC3F6)は、好ましくは、(OCF2CF2CF2)または(OCF(CF3)CF2)で表される基であり、より好ましくは、(OCF2CF2CF2)で表される基である。上記式(f1)における(OC2F4)は、好ましくは、(OCF2CF2)または(OCF(CF3))で表される基であり、より好ましくは、(OCF2CF2)で表される基である。
【0033】
上記式(f2)において、eおよびfは、それぞれ独立して、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCF2CF2CF2CF2)c-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-(OCF2)f-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される基であってもよい。
【0034】
上記式(f3)において、R6は、好ましくは、OC2F4である。上記(f3)において、R7は、好ましくは、OC2F4、OC3F6およびOC4F8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC3F6およびOC4F8から選択される基である。OC2F4、OC3F6およびOC4F8から独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC4F8-、-OC3F6OC2F4-、-OC3F6OC3F6-、-OC3F6OC4F8-、-OC4F8OC4F8-、-OC4F8OC3F6-、-OC4F8OC2F4-、-OC2F4OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC2F4OC4F8-、-OC2F4OC3F6OC2F4-、-OC2F4OC3F6OC3F6-、-OC2F4OC4F8OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC3F6-、-OC3F6OC3F6OC2F4-、および-OC4F8OC2F4OC2F4-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC2F4-OC3F6)g-または-(OC2F4-OC4F8)g-である。
【0035】
上記式(f4)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0036】
上記式(f5)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0037】
一の態様において、上記RFは、上記式(f1)で表される基である。
【0038】
一の態様において、上記RFは、上記式(f2)で表される基である。
【0039】
一の態様において、上記RFは、上記式(f3)で表される基である。
【0040】
一の態様において、上記RFは、上記式(f4)で表される基である。
【0041】
一の態様において、上記RFは、上記式(f5)で表される基である。
【0042】
好ましい態様において、RFは、式(f2):
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-
で表される基である。式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。RFは、より具体的には、-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される基であり得る。
【0043】
上記RFにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、RFを含む化合物から得られる硬化層(例えば表面処理層)の滑り性、摩擦耐久性および耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)がより向上する。e/f比がより小さいほど、表面処理層の滑り性および摩擦耐久性はより向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、上記化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、上記化合物の安定性はより向上する。この場合、fの値は1以上である。
【0044】
一の態様において、上記e/f比は、好ましくは0.2~0.95であり、より好ましくは0.2~0.9である。
【0045】
一の態様において、上記e/f比は、好ましくは、0.20以上1.0未満であり、より好ましくは0.20~0.95であり、より好ましくは0.20~0.90、さらに好ましくは、0.40~0.80、特に好ましくは0.50~0.70である。
【0046】
一の態様において、上記e/f比は、好ましくは0.20~0.80であり、より好ましくは0.30~0.70である。別の態様において、e/f比は0.50~0.80である。
【0047】
一の態様において、耐熱性の観点から、上記e/f比は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.0~2.0である。
【0048】
一の態様において、e/f比は、0.2~1.5であり、好ましくは0.5~1.1である。
【0049】
上記RFにおいて、e/f比は、1.0未満であってもよく、0.95以下であってもよく、0.90以下であってもよく、0.90未満であってもよく、例えば0.8以下、0.70以下であってもよい。e/f比は、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.40以上、特に好ましくは0.50以上である。e/f比は、例えば、0.20以上1.0未満、例えば、0.20以上0.95以下、0.20以上0.90未満、具体的には0.40以上0.80以下、より具体的には0.50以上0.70以下を挙げることができる。e/f比が低くなり過ぎると、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を用いて形成される硬化層(あるいは硬化膜。以下においても同様)の加水分解性が高くなり、該硬化層の耐久性が低くなることがある。e/f比が高くなりすぎると、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を用いて形成される硬化層の動摩擦係数が高くなり、十分な摩擦耐久性を有する硬化層が得られないことがある。
【0050】
好ましい態様において、RFは、
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2)
で表される基であり(式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)、e/f比は、0.20以上1.0未満であり、より好ましくは0.20~0.95であり、より好ましくは0.20~0.90、さらに好ましくは、0.40~0.80、特に好ましくは0.50~0.70である。RFは、より具体的には、-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される基であり得る。
上記のようなRFを有する化合物を用いることにより、該化合物を用いて形成される硬化層の化学的な耐久性(耐ケミカル性)、摩擦耐久性、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、または表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)等が良好になる。これは、上記のようなRFを有する化合物を用いることによって、該化合物から形成される硬化層の表面の動摩擦係数が小さくなるためと考えられる。
【0051】
一の態様において、RFは、
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2)
で表される基であり(式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)、
e/f比は、0.20~0.80であり、より好ましくは0.30~0.70である。
【0052】
一の態様において、eは、10以上100以下の整数、かつ、fは、11以上100以下の整数であってもよく、eは、15以上70以下の整数、かつ、fは、21以上95以下の整数であってもよい。
【0053】
一の態様において、eおよびfの和は、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、特に好ましくは40以上である。
【0054】
別の態様において、eおよびfの和は、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、さらに好ましくは130以上、特に好ましくは140以上である。
【0055】
一の態様において、eおよびfの和は、eおよびfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは180以下、さらに好ましくは160以下、特に好ましくは150以下である。
【0056】
RF1およびRF2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,500~30,000、さらに好ましくは4,000~30,000である。RF1およびRF2部分の数平均分子量は、例えば、2,500~20,000、2,500~15,000、3,000~15,000、2,000~10,000であってもよい。本明細書において、RF1およびRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0057】
別の態様において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0058】
別の態様において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、6,000~30,000、好ましくは6,000~20,000、より好ましくは7,000~20,000、さらに好ましく8,000~15,000、特に好ましくは9,000~15,000、より好ましくは10,000~15,000であり得る。RF1およびRF2部分の数平均分子量は、例えば、6,000~15,000の範囲にあってもよい。
【0059】
一の態様において、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物において、
RF1およびRF2部分の数平均分子量が6,000~20,000、およびe/f比が0.50~0.80の範囲にあり;
好ましくは、RF1およびRF2部分の数平均分子量が6,000~15,000、およびe/f比が0.50~0.70の範囲にあり;
より好ましくは、RF1およびRF2部分の数平均分子量が10,000~15,000、およびe/f比が0.50~0.70の範囲にある。
本態様において、好ましくは、RFは、-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される基である。ここで、例えば、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eは、20~70範囲にある整数であり、fは、45~120の範囲にある整数である。このようなフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、極めて高い潤滑性と低い動摩擦係数による滑り性を示す硬化層(例えば表面処理層)の形成に寄与し得る。
【0060】
本開示において、RF1またはRF2で表される基とCRSi
2(OR11)で表される基とが、-X1-で表される基で結合される。ここで、RF1またはRF2で表される基は、主に撥水性および表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル基を含有する基であり、CRSi
2(OR11)で表される基は、基材との結合能を提供するシラン部を含む。
X1は、各出現においてそれぞれ独立して、以下の式(X):
-(CR50
2)n51-(CR51=CR52)n52-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n53- ・・(X)
で表される。このようなX1を有することにより、式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物および/または式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を用いて形成される硬化層の柔軟性、耐摩耗性、基材へのぬれ広がり性、および、基材との密着性などが良好になり得る。
なお、本明細書において、X1として記載する構造の左側がRF1またはRF2で表される基と、右側がCRSi
2(OR11)で表される基と、それぞれ結合する。
【0061】
n51は、0~10の整数であり、好ましくは0~5の整数である。
n52は、0~10の整数であり、好ましくは0~5の整数である。
n53は、0~10の整数であり、好ましくは0~5の整数である。
ただし、n51、n52またはn53を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n51、n52およびn53の合計は1以上である。
【0062】
一の態様において、n51は、1~10の整数であり、例えば、1~6の整数である。
【0063】
一の態様において、n51は、1~5の整数である。一の態様において、n51は2である。
【0064】
一の態様において、n51は、3~5の整数であり、例えば4または5である。
【0065】
一の態様において、n51は、1~10の整数であり、好ましくは1~5の整数であり;n52およびn53は0である。
【0066】
一の態様において、n51は、3~5の整数であり、例えば4または5であり;n52およびn53は0である。
【0067】
n54は、それぞれ独立して、0または1である。
【0068】
n55は、それぞれ独立して、0または1である。
【0069】
一の態様において、n51は、1~10の整数であり、好ましくは1~5の整数であり;n52は0であり;n53は1である。本態様において、例えばn54は1である。
【0070】
一の態様において、n51は0であり;n52は0であり;n53は1である。本態様において、例えばn54は1である。
【0071】
一の態様において、n51は、1~10の整数であり、好ましくは1~5の整数であり;n52は0であり;n53は1である。本態様において、例えばn54は0である。
【0072】
一の態様において、n54は0または1である。
【0073】
一の態様において、n55は0または1である。
【0074】
一の態様において、n55は1である。
【0075】
別の態様において、n54およびn55は0である。
【0076】
R51は、それぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり、好ましくは、水素原子、または、C1-3アルキル基である。
一の態様において、R51は水素原子である。一の態様において、R51はメチル基である。
【0077】
R52は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり、好ましくは、水素原子、または、C1-3アルキル基である。
一の態様において、R52は水素原子である。一の態様において、R52はメチル基である。
【0078】
一の態様において、R51およびR52は、水素原子である。
【0079】
Y51は、各出現においてそれぞれ独立して、O、CONR15、NR15、S、またはアリーレン基であり、好ましくは、O、CONR15、または、NR15であり、より好ましくは、Oである。
R15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、芳香環を有する基、C1-6アルキル基、-O-C1-6アルキル基またはC3-10シクロアルキル基であり、好ましくは水素原子である。芳香環を有する基としては、例えばフェニル基を挙げることができる。
アリーレン基としては、例えば、C6-10アリーレン基を挙げることができ、具体的には、フェニレン基、置換基を有するフェニレン基を挙げることができる。置換基としては、ハロゲン、アルキル基(例えば、C1-4アルキル基)、ヘテロ環に由来する1価の基(例えば、ピぺリジン、ピぺラジン、モルホリン、ジオキサン、ジチアン、ピロリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、イミダゾリジン、またはピラゾリジンに由来する1価の基)、フェノキシ基を挙げることができる。
なお、Y51が環構造を有する場合、Y51と、X1の他の部位との結合位置、または、Y51と、RF1、RF2もしくはCRSi2(OR11)との結合位置は特に限定されない。
【0080】
一の態様において、Y51は、Oである。一の態様においてY51は、フェニレン基である。
【0081】
一の態様において、Y51は、CONR15である。
【0082】
R50は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または1価の有機基である。
【0083】
一の態様において、R50は水素原子である。一の態様において、R50はハロゲン原子である。一の態様において、R50は、1価の有機基である。
【0084】
R50は、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、水酸基、-O-(R14-O)n4-R14’、またはC1-4アルキル基である。
式中、R14は、それぞれ独立してC1-4アルキレン基であり、
n4は、それぞれ独立して0~100の整数であり、好ましくは、1~50の整数であり、より好ましくは、1~40の整数であり、さらに好ましくは、1~10の整数であり、
R14’は、それぞれ独立してC1-4アルキル基である。
ここで、C1-4アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0085】
一の態様において、R50は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはC1-4アルキル基である。
【0086】
一の態様において、R50は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、水酸基、-O-(R14-O)n4-R14’、またはC1-4アルキル基(例えば、メチル基)であり、例えば、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、-O-(R14-O)n4-R14’、またはC1-4アルキル基である。
R14は、それぞれ独立してC1-4アルキレン基であり、
n4は、それぞれ独立して0~100の整数であり、好ましくは、1~50の整数であり、より好ましくは、1~40の整数であり、さらに好ましくは、1~10の整数であり、
R14’は、それぞれ独立してC1-4アルキル基である。
ここで、C1-4アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0087】
一の態様において、X1は、各出現においてそれぞれ独立して、以下の式(X1)または(X2)で表される。
-X51-CR51=CR52-X52- ・・・(X1)
-X53- ・・・(X2)
【0088】
式(X1)において、X51は、
-(CR50
2)n511-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n512-
で表される。
R50、Y51、n54およびn55は上記と同意義である。
n511は、0~10の整数であり、好ましくは、0~5の整数である。
n512は、0~10の整数であり、好ましくは、0~5の整数である。
n511またはn512を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
一の態様において、n511およびn512の合計は1以上である。
一の態様において、n511は1~10の整数であり、n512は0である。言い換えると、X51は-(CR50
2)n511-で表される。
【0089】
一の態様において、n511は、1~10の整数であり、好ましくは1~5の整数である。
【0090】
一の態様において、n511は、3~5の整数であり、例えば4または5である。
【0091】
一の態様において、n511は、1~10の整数であり、好ましくは1~5の整数であり;n512は0である。
【0092】
X51は、好ましくは、-(CR50
2)n514-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)-(CR50
2)n515-で表される。n514は0~10の整数、n515は0~10の整数、より好ましくは、n514は0~5の整数、n515は0~5の整数である。n514とn515との合計はn511に相当する。R50、n54、n55、およびY51は上記と同意義である。
【0093】
X52は、それぞれ独立して、
-(CR50
2)n511’-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n512’-
で表される。X52におけるR50およびY51は、X51におけるR50およびY51とそれぞれ同意義である。
n511’は、0~10の整数であり、好ましくは、0~5の整数である。
n512’は、0~10の整数であり、好ましくは、0~5の整数である。
ただし、n511’またはn512’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
一の態様において、n511’およびn512’の合計は1以上である。
一の態様において、n511’は1~10の整数であり、n512’は0である。言い換えると、X52は-(CR50
2)n511’-で表される。
【0094】
一の態様において、n511’は、1~10の整数であり、好ましくは1~5の整数である。
【0095】
一の態様において、n511’は、3~5の整数であり、例えば4または5である。
【0096】
一の態様において、n511’は、1~10の整数であり、好ましくは1~5の整数であり;n512’は0である。
【0097】
一の態様において、n511、n512、n511’およびn512’の合計は1以上である。
【0098】
一の態様において、X52は、-(CR50
2)n514’-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)-(CR50
2)n515’-で表される。n514’は0~10の整数、n515’は0~10の整数、より好ましくは、n514’は0~5の整数、n515’は0~5の整数である。
【0099】
一の態様において、n514’は0~10の整数であり、n515’は1~10の整数であり、例えば、n514’は0~5の整数、n515’は1~5の整数である。n514’とn515’との合計は、n511’に相当する。X52におけるR50およびY51は、X51のR50およびY51と同意義である。
【0100】
式(X1)において、X51におけるn511およびX52におけるn511’の合計は0~10の整数であり、X51におけるn512およびX52におけるn512’の合計は0~10の整数である。
【0101】
一の態様において、式(X1):
-X51-CR51=CR52-X52- ・・・(X1)
は、以下の式:
-[(CR50
2)n511-(CH2-Y51-(CH2)n54)n512]-CR51=CR52-[(CR50
2)n511-(CH2-Y51-(CH2)n54)n512]-
で表される。上記式におけるn511とn511’との合計値は、式(X)におけるn51の値に、n512とn512’との合計値は、式(X)におけるn53の値に、それぞれ相当する。
【0102】
一の態様において、式(X1):
-X51-CR51=CR52-X52- ・・・(X1)
は、以下の式:
-[-(CR50
2)n514-(Y51)-(CR50
2)n515]-CR51=CR52-[-(CR50
2)n514’-(Y51)-(CR50
2)n515’-]-
で表される。R50、Y51、n514、n515、R51、R52、n514’およびn515’はそれぞれ上記と同意義である。n514とn515との合計値は、式(X1)におけるn511の値に、n514’とn515’との合計値は、式(X1)におけるn511’の値に、それぞれ相当する。n514、n515、n514’およびn515’の合計値は、式(X)におけるn51の値にそれぞれ相当する。
【0103】
一の態様においては、X51およびX52は単結合である。
一の態様においては、X51は、-(CR50
2)n511-、X52は、-(CR50
2)n511’-で表され、n511およびn511’の少なくとも一方は1以上の整数である。
一の態様においては、X51は、-(CR50
2)n511-(Y51)n512-で表され、X52は、それぞれ独立して-(CR50
2)n511’-(Y51)n512’-で表さる。n511、n512、n511’およびn512’のいずれか1つは1以上の整数である。
一の態様においては、X51は、-(CR50
2)n511-で表され、X52が-(CR50
2)n511’-(Y51)n512’-で表され、n512’は1以上の整数である。本態様において、X52は、-(CR50
2)n514’-(Y51)-(CR50
2)n515’-である。
一の態様において、X51が-(CR50
2)n511-(Y51)n512-で表され、X52が-(CR50
2)n511’-で表され、n512は1以上の整数である。
【0104】
式(X2)において、X53は、2価の有機基であり、
-(CR50
2)n521-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n522-
で表される。
R50、n54、n55およびY51は、それぞれ上記と同意義である。
n521は、1~10の整数であり、好ましくは、1~5の整数である。
n522は、1~10の整数であり、好ましくは、1~5の整数である。
n521またはn522を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、n521およびn522の合計は1以上である。
【0105】
式(X2)は、好ましくは、-(CR50
2)n524-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)-(CR50
2)n525-で表される。
n524は0~10の整数、n525は0~10の整数、より好ましくは、n524は0~5の整数、n525は0~5の整数である。n524とn525との合計はn521に相当する。
【0106】
一の態様において、式(X2)は、-(CR50
2)n524-(Y51)-(CR50
2)n525-で表される。n524、R50、およびY51はそれぞれ上記と同意義である。n525は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数である。例えば、n524は0であり、n525は1~5の整数であり、具体的には、n524は0であり、n525は1~3の整数である。
【0107】
一の態様において、-X53-は、-X51-CR51=CR52-X52-の不飽和基に、例えば、水素、またはハロゲン原子を付加反応したものである。
【0108】
一の態様において、X1は、各出現においてそれぞれ独立して、式(X’):
-CHR13-[(CR50’
2)n51’-(CR51=CR52)n52-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n53]- ・・・(X’)
で表される基である。
R13は、-OH、または-O-(R14-O)n4-R14’で表される。
R14は、それぞれ独立してC1-4アルキレン基であり、好ましくは、CH2、またはCH2CH2である。
n4は、それぞれ独立して0~100の整数であり、好ましくは、1~50の整数であより好ましくは、1~40の整数であり、さらに好ましくは、1~10の整数である。
R14’は、それぞれ独立してC1-4アルキル基であり、好ましくは、C1-2アルキル基である。
R50’は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、またはC1-4アルキル基であり、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、またはC1-4アルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
R51、R52、Y51、n52、およびn53は、それぞれ上記と同意義である。
n51’は、0~10の整数であり、好ましくは0~5の整数である。CHR13の個数とCR50’
2の個数との合計、言い換えると、1+n51’が、式(X)におけるn51に対応する。
n51’、n52またはn53を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式(X’)における-[(CR50’
2)n51’-(CR51=CR52)n52-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n53]-で表される構造内において任意である。
【0109】
一の態様において、X1は、
-CHR13-[(CR50’
2)n516-((CH2)n55-Y51-(CH2)n54)n53-(CR50’
2)n516’]-
で表される。
R13、R50’、Y51、n54、n55およびn53は上記と同意義である。n516は、0~10の整数であり、好ましくは0~5の整数であり、n516’は、0~10の整数であり、好ましくは0~5の整数である。n516とn516’との合計はn51’に相当する。
一の態様において、n516およびn516’は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、n53は0である。言い換えると、X1は-CHR13-(CR50’
2)n51’-で表される。一の態様において、n516およびn516’は、それぞれ独立して、1~10の整数であり、好ましくは1~5の整数である。
【0110】
一の態様において、X1は、
-CHR13-[(CR50’
2)n51’-(CR51=CR52)n52]-
で表される。
R13、R50’、R51、R52、n51’、およびn52は上記と同意義である。
【0111】
特に限定されないが、X1としては、例えば以下のような構造を挙げることができる。
-(CH2)x1-CH=CH-(CH2)x2-(x1は0~10の整数、x2は0~10の整数、ただし、x1とx2との合計は0~10の整数であり、好ましくは、x1は0~4の整数、x2は0~4の整数、例えば、x1は0かつx2は0、x1は1~4の整数かつx2は0、x1は0かつx2は1~4の整数、または、x1は1~4の整数かつx2は1~4の整数)、
-(CH2)x1-CH=CH-(CH2)x2-Ph-(CH2)x3-(Phはフェニレン基、x1は0~10の整数、x2は0~10の整数、x3は0~10の整数、ただし、x1、x2およびx3の合計は、0~10の整数であり、好ましくは、x1は1~3の整数、x2は0~5の整数、x3は0~5の整数、例えば、x1は1、x2は0、x3は0、別の例ではx1は1、x2は0、x3は1)、
-CHR13-(CH2)x1-CH=CH-(CH2)x2-(R13は、-(OCH2)x11-CH3、または、-(OCH2CH2)x11-CH3であり、x11は1~100の整数、x1は0~9の整数、x2は0~10の整数、ただし、x1およびx2の合計は0~10の整数であり、好ましくは、x1は0~4の整数、x2は0~4の整数、例えば、x1は0かつx2は0、x1は1~4の整数かつx2は0、x1は0かつx2は1~4の整数、または、x1は1~4の整数かつx2は1~4の整数)
-CHR13-(CH2)x1-CH=CH-(CH2)x2-Ph-(CH2)x3-(R13は、-(OCH2)x11-CH3、または、-(OCH2CH2)x11-CH3であり、x11は1~10の整数;Phはフェニレン基;x1は0~10の整数、x2は0~10の整数、x3は0~10の整数、好ましくは、x1は1~3の整数、x2は0~5の整数、x3は0~5の整数、ただし、x1、x2およびx3の合計は0~10の整数である。例えば、x1は1、x2は0、x3は0、別の例ではx1は1、x2は0、x3は1)、
-(CH2)x-(xは1~10の整数、好ましくは、xは1~4の整数)、
-(CH2)x1-O-(CH2)x2-(x1は0~10の整数、x2は0~10の整数、ただし、x1およびx2の合計は、0~10の整数、例えば、x1は0、x2は0、別の例ではx1は0、x2は1)、
-(CH2)x1-Ph-(CH2)x2-(Phはフェニレン基;x1は0~10の整数、x2は0~10の整数、ただし、x1およびx2の合計は0~10の整数、好ましくは、x1は0~5の整数、x2は0~5の整数、例えば、x1は0~3の整数、x2は0、別の例ではx1は0~3の整数、x2は1)、
-CHR13-(CH2)x-(xは0~10の整数、好ましくは、xは1~4の整数)、
-CHR13-(CH2)x1-O-(CH2)x2-(x1は0~10の整数、x2は0~10の整数、ただし、x1およびx2の合計は0~10の整数、好ましくは、x1は0~5の整数、x2は0~5の整数、例えば、x1は1、x2は1)、
-CHR13-(CH2)x1-Ph--(CH2)x2-(Phはフェニレン基;x1は0~10の整数、x2は0~10の整数、ただし、x1およびx2の合計は0~10の整数、好ましくは、x1は0~5の整数、x2は0~5の整数、例えば、x1は0~3の整数、x2は0、別の例ではx1は0~3の整数、x2は1)。
-CHR13-(CH2)x1-CONR15-(CH2)x2-(R15は水素原子、芳香環を有する基、C1-6アルキル基、-O-C1-6アルキル基またはC3-10シクロアルキル基であり、好ましくは水素原子であり;x1は0~10の整数、x2は0~10の整数、ただし、x1およびx2の合計は0~10の整数、好ましくは、x1は0~5の整数、x2は0~5の整数、例えば、x1は0~3の整数、x2は0、別の例ではx1は0~3の整数、x2は1~2の整数、別の例ではx1は0、x2は1~2の整数)。
-(CH2)x1-CONR15-(CH2)x2-(R15は水素原子、芳香環を有する基、C1-6アルキル基、-O-C1-6アルキル基またはC3-10シクロアルキル基であり、好ましくは水素原子であり;x1は0~10の整数、x2は0~10の整数、ただし、x1およびx2の合計は0~10の整数、好ましくは、x1は0~5の整数、x2は0~5の整数、例えば、x1は0~3の整数、x2は0、別の例ではx1は0~3の整数、x2は1~2の整数、別の例ではx1は0、x2は1~2の整数)。
【0112】
R
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり、以下の式(S1)で表される。
【化14】
【0113】
式(S1)において、X3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、または2価の有機基である。
【0114】
好ましい態様において、X3は、2価の有機基である。
【0115】
X3は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z11-O-(CH2)z12-または、-(CH2)z13-フェニレン-(CH2)z14-である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
上記z11は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、上記z12は、0~6の整数、例えば1~6の整数である。好ましくは、z11とz12との合計は1以上である。
上記z13は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、上記z14は、0~6の整数、例えば1~6の整数である。好ましくは、z13とz14との合計は1以上である。
【0116】
X3は、より好ましくは、C1-6アルキレン基であり、例えば、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、X3は、-CH2CH2-であり得る。
【0117】
Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。
【0118】
Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、またはハロゲン(これら式中、Rhは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0119】
Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0120】
Rc1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0121】
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、式(A1)および(A2)のそれぞれにおいて、少なくとも1つのl1は1である。言い換えると、RSiにおいて、式(A1)および(A2)のそれぞれにおいて、少なくとも1つのRb1が存在する。
【0122】
l1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、1~3の整数であり、より好ましくは、2または3、さらに好ましくは3である。
【0123】
好ましくは、式(S1)で表される基毎に、少なくとも1つのRb1が存在する。言い換えると、RSiが式(S1)で表される場合、式(A1)および式(A2)の末端のRSi部分(以下、単に式(A1)および式(A2)の「末端部分」ともいう)において、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子が存在する。
【0124】
好ましくは、式(A1)の末端部分および式(A2)の末端部分において、Rb1が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0125】
R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ベンジル基、メトキシフェニル基、ベンゾイル基、トリチル基、-SiR71
3、または-(R72-O)n7-R73である。
-CRSi2(OR11)で表される基を有することにより、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む組成物の基材に対する濡れ広がり性が良好になり得る。該組成物を用いて形成された層(例えば表面処理層)の耐摩耗性が良好になり得る。
【0126】
R71は、それぞれ独立して、C1-4アルキル基であり、例えばメチル基である。-SiR71
3で表される基は、例えば、トリメチルシリル基である。
【0127】
R72は、それぞれ独立して、C1-4アルキレン基であり、好ましくはC1-2アルキレン基であり、例えば、-CH2CH2-、または-CH2-である。
【0128】
n7は、それぞれ独立して、1~10の整数であり、好ましくは1~6の整数である。
【0129】
R73は、それぞれ独立して、水素原子、または環構造を含んでいてもよい1価の炭化水素基である。
環構造を含む1価の炭化水素基としては、芳香環を有する1価の基、シクロアルキル基、またはヘテロシクロアルキル基を含む1価の炭化水素基を挙げることができる。
芳香環を有する1価の基としては、例えば、フェニル基を挙げることができる。
シクロアルキル基としては、例えば、C3-10シクロアルキル基、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。
ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、酸素原子を含んだシクロアルキル基を挙げることができる。
【0130】
環構造を含む1価の炭化水素基としては、例えば以下のような構造を挙げることができる。なお、以下において*を付した箇所において-(R
72-O)
n7-の右側と結合する。
【化15】
【0131】
R73は、好ましくは、水素原子、またはC1-4アルキル基である。
【0132】
R73は、好ましくは、C1-4アルキル基であり、より好ましくは、C1-2アルキル基である。
【0133】
好ましくは、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または-(R72-O)n7-R73で表される。R72、n7およびR73は、それぞれ上記と同意義である。
【0134】
より好ましくは、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、-CH2O-R11’で表される。R11’は、水素原子、または1価の有機基である。
好ましくは、R11’は、水素原子、または-(R72-O)n7’-R73で表される。R72、およびR73は、それぞれ上記と同意義である。n7’は、0~9の整数であり、好ましくは、0~5の整数である。
【0135】
一の態様において、R11’は水素原子である。一の態様において、R11’は-(R72-O)n7’-R73で表される基である。一の態様において、R11’は-(R72-O)n7’-R73で表される基であり、n7’は0である。
【0136】
(フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の製造方法)
一態様として、特に限定されないが、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の製造に適した方法を以下に記載する。
【0137】
一の態様において、本開示の式(A1)または(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、
式(a27)または式(a28):
【化16】
で表される化合物と、HSiM
3(式中、Mは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(即ち、I、Br、Cl、F)、またはC
1-6アルコキシ基であり、好ましくはハロゲン原子、より好ましくはCl)、所望により、R
b1L’(R
b1は上記と同意義であり、L’はR
b1と結合可能な基を表す)で表される化合物、および/または、R
c1L”(R
c1は上記と同意義であり、L”はR
c1と結合可能な基を表す)で表される化合物とを反応させる工程を含む方法により製造し得る。
【0138】
上記工程(I-1)は、適切な触媒の存在下、適切な溶媒中で行われることが好ましい。
【0139】
適切な触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、Pt、Pd、Rh等が挙げられる。かかる触媒は任意の形態、例えば錯体の形態であってもよい。
【0140】
適切な溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロブチルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルメチルエーテル、パーフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン等が挙げられる。
【0141】
かかる反応における反応温度は、特に限定されないが、通常、0~100℃、好ましくは50~80℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、60~600分、好ましくは120~300分であり、反応圧力は、特に限定されないが、-0.2~1MPa(ゲージ圧)であり、簡便には常圧である。
【0142】
式(a27)または式(a28)において、RF1、RF2は、それぞれ上記と同意義である。
【0143】
式(a27)または式(a28)において、-X6-は、-X1-に対応する。
【0144】
好ましくは、式(a27)または式(a28)において、-X6-は、各出現においてそれぞれ独立して、
-X61-CR61=CR62-X62-、または
-X63-
で表される。
【0145】
X61は、単結合、または2価の有機基であり、
X62は、単結合、または2価の有機基であり、
R61は、水素原子、または1価の有機基であり、
R62は、水素原子、または1価の有機基であり、
それぞれ、X51、X52、R51、R52に対応する。
X61は、-(CR60
2)n611-((CH2)n614-Y61-(CH2)n613)n612-で表され得、
X62は、-(CR60
2)n611’-((CH2)n614’-Y61-(CH2)n613’)n612’-で表され得、
n611はn511に、n612はn512に、n613はn54に、n614はn55に、n611’はn511’に、n612’はn512’に、n613’はn54に、n614’はn55に、それぞれ対応する。n611またはn612を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。n611’またはn612’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。R60はR50に、Y61はY51に、それぞれ対応する。
【0146】
X63は、2価の有機基であり、X53に対応する。
X63は、それぞれ独立して、
-(CR60
2)n621-((CH2)n614-Y61-(CH2)n613)n622-
で表され得る。
n621はn521に、n622はn522に、n613はn54に、n614はn55に、それぞれ対応し;
n621またはn622を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0147】
一の態様において、-X63-は、-X61-CR61=CR62-X62-の不飽和基に、例えば、水素、またはハロゲン原子を付加反応したものである。なお、この付加反応は、通常行われる条件で行い得る。
【0148】
Z23は、それぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。式(a27)または(a28)におけるZ23-CH=CH2は、式(S1)のX3に対応する。
【0149】
R65は、水素原子、または1価の有機基である。一の態様において、R65は、水素原子である。一の態様において、R65は、1価の有機基である。
【0150】
一の態様において、R65は、式(A1)および(A2)におけるR11に対応する。
【0151】
式(a27)または(a28)で表される化合物は、式(a23)、または式(a24):
【化17】
で表される化合物と、Hal-J-Z
23-CH=CH
2とを反応させて、式(a25)または式(a26):
【化18】
で表される化合物を得る工程(工程(I-2))
を含む方法により製造し得る。
【0152】
式(a23)、(a24)、(a25)および(a26)において、RF1、RF2、X6、Z23は、それぞれ、上記と同意義である。
R63は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、または1価の有機基であり、好ましくは、水素原子またはC1-4アルキル基である。
【0153】
Halはハロゲン原子を表し、JはMg、Cu、PdまたはZnを表す。
【0154】
なお、式(a27)または(a28)においてR65が1価の有機基である場合、式(a27)または(a28)で表される化合物は、式(a25)または(a26)で表される化合物と、例えば、R65-Y62で表される化合物とを反応させて得ることができる。ここで、Y62はR65と結合可能な基である。上記反応は通常行い得る手法を用いて行うことができる。例えば、ヒューニッヒ塩基の存在下で反応させることができる。
【0155】
式(a23)または式(a24)で表される化合物は、
式(a11)または式(a12):
【化19】
で表される化合物と、式(a13):
【化20】
で表される化合物とを反応させて、式(a21)または式(a22):
【化21】
で表される化合物を得る工程(工程(I-3))
を含む方法により製造し得る。式(a21)または式(a22)における-X
61-CR
61=CR
62-X
62-で表される基が、式(a23)または式(a24)における-X
6-に対応する。
【0156】
工程(I-3)は、オレフィンメタセシス反応活性を有する金属-カルベン錯体の存在下で行い得る。
金属-カルベン錯体としては、Grubbs第二世代触媒等の第二世代以上の高活性なGrubbs触媒を用いる。
Grubbs第二世代触媒としては、Hoveyda-Grubbus 2 nd generation catalyst、Piers second generation metathesis catalyst、nitro-Grela、UltraCat、AquaMet,UltraNitroCatを挙げることができる。
【0157】
上記工程(I-3)は、適切な溶媒中で行われることが好ましい。
適切な溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではない。例えば、HCFC-225(例えば、AGC株式会社製のアサヒクリンAK-225)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(mXHF)、1,1-ジクロロ-2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,2-ジクロロ-1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,2-トリクロロ―3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,3-ビストリフルオロメトキシベンゼン、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン等のフッ素原子含有溶媒;ジクロロプロパン等のフッ素原子非含有溶媒等を挙げることができ、フッ素原子含有溶媒とフッ素原子非含有溶媒との双方を用いてもよい。
【0158】
かかる反応における反応温度は、特に限定されないが、例えば、0~100℃で行い得、室温(例えば20~30℃)で行い得る。反応時間は、特に限定されないが、通常、60~600分、好ましくは120~300分であり、反応圧力は、特に限定されないが、-0.2~1MPa(ゲージ圧)であり、簡便には常圧である。
【0159】
式(a11)、(a12)、(a21)および(a22)において、RF1、RF2、X61、X62、R61、R62、R63は、それぞれ上記と同意義である。
【0160】
一の態様において、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、
式(a31)または式(a32):
【化22】
で表される化合物と、以下の式(a33):
【化23】
で表される化合物とを反応させて、式(a21)または式(a22):
【化24】
で表される化合物を得る工程(工程(II-1))
を含む方法により製造し得る。なお、PPh
3は、トリフェニルホスフィン、即ち、-P(C
6H
5)
3を意味する。
【0161】
式(a31)または式(a32)で表される化合物は、例えば、以下の式(a30) または(a30’)を触媒存在下で還元して得ることができる。R
64、およびR
64’は、例えば、それぞれ独立して、C
1-10アルキル基、または、互いに結合して形成された環構造を有する基であって、該環構造として5~10員のヘテロ環を有する基、もしくは、互いに結合して形成された縮合環を有する基であって、該縮合環として5~10員のヘテロ環、および、該ヘテロ環以外の3~10員環を含む基である。R
F1、R
F2、X
61はそれぞれ上記と同意義である。
【化25】
【0162】
上記工程は、適当な触媒の存在下、適当な溶媒中で行われ得る。適当な触媒としては、特に限定されないが、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム(LAH)等を挙げることができる。適当な溶媒としては、特に限定されないが、例えば、HFE7200、HFE7300等のフッ素系溶媒;THF、ジエチルエーテル等の非フッ素系溶媒等;または、これらのうち2種類以上を含む混合溶媒を挙げることができる。上記溶媒は、2種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0163】
上記工程は、特に限定されないが、例えば、-78~200℃で行い得る。上記工程における反応時間は、特に限定されないが、例えば、0.1~168時間であってもよい。上記工程における反応圧力は、特に限定されないが、例えば、0~100MPa(ゲージ圧)であり、簡便には常圧である。
【0164】
式(a30)、(a30’)、(a31)、(a32)、(a33)、(a21)および(a22)において、RF1、RF2は、それぞれ上記と同意義である。
【0165】
X61、X62、R61、R62、R63は、それぞれ上記と同意義である。
【0166】
工程(II-1)、上記の工程(I-2)、および工程(I-1)を経て、本開示の式(A1)または(A2)で表される化合物を形成できる。
【0167】
本開示は、さらに、以下の構造を有する化合物を提供する。これらの化合物は、上記製造方法において、中間体として得られる化合物である。これらの化合物を経ることにより、式(A1)または(A2)で表される化合物の合成が容易になる。
【0168】
式(a23)または式(a24):
【化26】
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物。
【0169】
式(a23)または式(a24)において、RF1、RF2、R63、X6は、それぞれ上記と同意義である。
【0170】
式(a27)または式(a28):
【化27】
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物。
式(a27)または式(a28)において、R
F1、R
F2、X
6、R
65、Z
23は、それぞれ上記と同意義である。
【0171】
特に限定されないが、式(a23)、(a24)、(a27)、または(a28)で表される化合物におけるX6としては、X1として記載した構造を挙げることができる。
【0172】
(表面処理剤)
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、表面処理剤として用いることができる。
【0173】
本開示の表面処理剤は、良好な紫外線耐久性、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、耐ケミカル性、耐加水分解性、滑り性の抑制効果、高い摩擦耐久性、耐熱性、防湿性等を有する表面処理層の形成に寄与し得る。
【0174】
一の態様において、表面処理剤は、式(A1)または式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含有する。
【0175】
一の態様において、表面処理剤は、式(A1)または式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物、および、該フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の少なくとも一部が縮合した縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する。ここで、縮合物とは、式(A1)または式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の水酸基、および/または、加水分解可能な基を予め公知の方法により部分的に加水分解した水酸基を縮合させて得られる部分(加水分解)縮合物である。
表面処理剤には、必要に応じて、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機チタン化合物(テトラn-ブチルチタネートなど)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸、フッ素変性カルボン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸など)を添加してもよい。これらの中では、特に酢酸、テトラn-ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫、フッ素変性カルボン酸などが望ましい。
加水分解縮合触媒の添加量は触媒量であり、通常、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物100質量部に対して0.01~5質量部、特に0.1~1質量部である。
【0176】
別の態様において、本開示の表面処理剤は、式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物および式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む。本態様の組成物(例えば、表面処理剤)は、摩擦耐久性の良好な硬化層の形成に寄与し得る。本態様の組成物を用いて形成される硬化層の摩擦耐久性が良好になり、硬化層の表面における滑り性が良好になる。また、本態様の組成物では、RF部分の二次構造がらせん構造をとりやすく、単位面積当たりのポリマー密度やシランカップリング剤の架橋密度が大きくなるため、硬化層の強度が高くなると考えられる。
【0177】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)に含まれる、式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物および式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計に対する、式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の比(モル比)の下限値は、好ましくは0.001、より好ましくは0.002、さらに好ましくは0.005、さらにより好ましくは0.01、特に好ましくは0.02、特別には0.05であり得る。式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物および式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計に対する、式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の比(モル比)の上限値は、好ましくは、0.70、より好ましくは0.60、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.40、さらにより好ましくは0.30、例えば0.20、具体的には0.10であり得る。式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物および式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計に対する、式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の比(モル比)は、0.001以上0.70以下であってもよく、0.001以上0.60以下であってもよく、0.001以上0.50以下であってもよく、0.002以上0.40以下であってもよく、0.005以上0.30以下であってもよく、0.01以上0.20以下であってもよく、例えば0.02以上0.20以下(具体的には0.15以下)または0.05以上0.20以下(具体的には0.15以下)である。
【0178】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)に含まれる、式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物および式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計に対する、式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の比(モル比)の下限値は、好ましくは0.001、より好ましくは0.002、さらに好ましくは0.005、さらにより好ましくは0.01、特に好ましくは0.02、特別には0.05であり得る。式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物および式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計に対する、式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の比(モル比)の上限値は、好ましくは、0.70、より好ましくは0.60、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.40、さらにより好ましくは0.30、例えば、0.20、具体的には0.10であり得る。式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物および式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計に対する、式(A1)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の比(モル比)は、0.001以上0.70以下であってもよく、0.001以上0.60以下であってもよく、0.001以上0.50以下であってもよく、0.002以上0.40以下であってもよく、0.005以上0.30以下であってもよく、0.01以上0.20以下であってもよく、例えば0.02以上0.20以下(具体的には0.15以下)または0.05以上0.20以下(具体的には0.15以下)である。
【0179】
上記表面処理剤は、溶媒で希釈されていてもよい。このような溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば:
パーフルオロヘキサン、CF3CF2CHCl2、CF3CH2CF2CH3、CF3CHFCHFC2F5、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン((ゼオローラH(商品名)等)、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、CF3CH2OCF2CHF2、C6F13CH=CH2、C6F13OCH3、キシレンヘキサフルオリド、パーフルオロベンゼン、メチルペンタデカフルオロヘプチルケトン、トリフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、HCF2CF2CH2OH、メチルトリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロ酢酸およびCF3O(CF2CF2O)m1(CF2O)n1CF2CF3[式中、m1およびn1は、それぞれ独立して0以上1000以下の整数であり、m1またはn1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、但しm1およびn1の和は1以上である。]、1,1-ジクロロ-2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,2-ジクロロ-1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,2-トリクロロ―3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなる群から選択されるフッ素原子含有溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。
【0180】
上記溶媒中に含まれる水分含有量は、20質量ppm以下であることが好ましい。上記水分含有量は、カールフィッシャー法を用いて測定することができる。このような水分含有量であることによって、表面処理剤の保存安定性が向上し得る。
【0181】
上記表面処理剤は、式(A1)または式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物に加え、他の成分を含んでいてもよい。かかる他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、触媒、低級アルコール、遷移金属、ハロゲン化物イオン、分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物などが挙げられる。
【0182】
上記含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(1)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf5-(OC4F8)a’-(OC3F6)b’-(OC2F4)c’-(OCF2)d’-Rf6 ・・・(1)
式中、Rf5は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rf6は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1-16パーフルオロアルキル基)、フッ素原子または水素原子を表し、Rf5およびRf6は、より好ましくは、それぞれ独立して、C1-3パーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’およびd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’およびd’の和は少なくとも1、好ましくは1~300、より好ましくは20~300である。添字a’、b’、c’またはd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。上記繰り返し単位中に少なくとも1の分岐構造を有する。すなわち、上記繰り返し単位は、少なくとも1のCF3末端(具体的には、-CF3、-C2F5等、より具体的には-CF3)を有する。分岐構造を有する繰り返し単位としては、-(OC4F8)-としては、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-および-(OCF2CF(C2F5))-;-(OC3F6)-としては、-(OCF(CF3)CF2)-および-(OCF2CF(CF3))-;-(OC2F4)-としては、-(OCF(CF3))-を挙げることができる。
【0183】
上記一般式(1)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(1a)および(1b)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf5-(OCF(CF3)CF2)b’’-Rf6 ・・・(1a)
Rf5-(OC4F8)a’’-(OC3F6)b’’-(OCF(CF3))c’’-(OCF2)d’’-Rf6 ・・・(1b)
これら式中、Rf5およびRf6は上記の通りであり;式(1a)において、b’’は1以上100以下の整数であり;式(1b)において、a’’およびb’’は、それぞれ独立して1以上30以下の整数であり、c’’およびd’’はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a’’、b’’、c’’、d’’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。-(OC4F8)-、-(OC3F6)-は分岐構造を有する。
【0184】
上記含フッ素オイルは、1,000~30,000の数平均分子量を有していてよい。特に、式(1a)で表される化合物の数平均分子量は、2,000~8,000であることが好ましい。かかる数平均分子量を有することにより、良好な摩擦耐久性を得ることができる。一の態様において、式(1b)で表される化合物の数平均分子量は、3,000~8,000である。別の態様において、式(1b)で表される化合物の数平均分子量は、8,000~30,000である。
【0185】
上記表面処理剤中、含フッ素オイルは、上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物100質量部に対して、例えば0~500質量部、好ましくは0~100質量部、より好ましくは1~50質量部、さらに好ましくは1~5質量部で含まれ得る。
【0186】
上記表面処理剤中、含フッ素オイルは、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物および含フッ素オイルの合計量に対して、例えば0~30モル%、好ましくは0~20モル%、より好ましくは0~10モル%で含まれ得る。
【0187】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf’-F(式中、Rf’はC5-16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。Rf’-Fで表される化合物およびクロロトリフルオロエチレンオリゴマーは、RfがC1-16パーフルオロアルキル基である上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と高い親和性が得られる点で好ましい。
【0188】
含フッ素オイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0189】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、式(A1)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
【0190】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
【0191】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
【0192】
一の態様において、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、式(A2)で表される化合物は0.001~70モル%、および含フッ素オイルは0.001~50モル%含まれることが好ましく、式(A2)で表される化合物は0.01~60モル%、および含フッ素オイルは0.01~40モル%含まれることがより好ましく、式(A2)で表される化合物は0.1~50モル%、および含フッ素オイルは0.1~30モル%含まれることがさらに好ましい。
【0193】
一の態様において、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、式(A1)で表される化合物が0.001~70モル%、および含フッ素オイルが0.001~50モル%含まれることが好ましく、式(A1)で表される化合物が0.01~60モル%、および含フッ素オイルが0.01~40モル%含まれることがより好ましく、式(A1)で表される化合物が0.1~50モル%、および含フッ素オイルが0.1~30モル%含まれることがさらに好ましい。
【0194】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状または環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0195】
上記表面処理剤中、かかるシリコーンオイルは、上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0~50質量部、好ましくは0~5質量部で含まれ得る。
【0196】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0197】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0198】
触媒は、上記含フッ素シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進し、表面処理層の形成を促進する。
【0199】
上記他の成分としての低級アルコールとしては、炭素数1~6のアルコール化合物が挙げられる。
【0200】
上記遷移金属としては、白金、ルテニウム、ロジウム等が挙げられる。
【0201】
上記ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン等が挙げられる。
【0202】
上記分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物しては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチレンスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等を挙げられる。これらの化合物の中で、ジメチルスルホキシド、またはテトラメチレンスルホキシドを用いることが好ましい。
【0203】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0204】
一の態様において、上記表面処理剤は、上記他の成分である含フッ素オイル、シリコーンオイル、触媒、低級アルコール、遷移金属、ハロゲン化物イオン、分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物を含まない。
【0205】
一の態様において、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、式(A2)で表される化合物は、例えば、70モル%以下含まれていてもよく、60モル%以下含まれていてもよく、50モル%以下含まれていてもよく、0.001モル%以上含まれていてもよく、0.01モル%以上含まれていてもよく、0.1モル%以上含まれていてもよい。式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、式(A2)で表される化合物は、例えば、1~70モル%含まれていてもよく、5~50モル%含まれていてもよい。
【0206】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
本態様において、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、含フッ素オイルは、例えば、0.001モル%以上含まれていてもよく、0.01モル%以上含まれていてもよく、1.0モル%以上含まれていてもよく、50モル%以下含まれていてもよく、40モル%以下含まれていてもよく、30モル%以下含まれていてもよく、10モル%以下含まれていてもよい。式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、含フッ素オイルは、例えば、0.001~50モル%含まれていてもよく、0.01~40モル%含まれていてもよい。
本態様において、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、式(A2)で表される化合物が0.001~70モル%、および含フッ素オイルが0.001~50モル%含まれることが好ましく、式(A2)で表される化合物が0.01~60モル%、および含フッ素オイルが0.01~40モル%含まれることがより好ましく、式(A2)で表される化合物が0.1~50モル%、および含フッ素オイルが0.1~30モル%含まれることがさらに好ましい。
本態様の組成物(例えば、表面処理剤)は、摩擦耐久性の良好な硬化層の形成に寄与し得る。さらに、本態様の組成物を用いて形成される硬化層の摩擦耐久性が良好になり、硬化層の表面における滑り性が良好になる。また、本態様の組成物では、RF部分の二次構造がらせん構造をとりやすく、単位面積当たりのポリマー密度やシランカップリング剤の架橋密度が大きくなるため、硬化層の強度が高くなると考えられる。
【0207】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
本態様において、式(A1)で表される化合物、および式(A2)で表される化合物の合計に対して、式(A2)で表される化合物が、0.001モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、0.1モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、1モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、例えば、10モル%以上50モル%未満含まれていてもよい。
【0208】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
本態様において、式(A1)で表される化合物、および式(A2)で表される化合物の合計に対して、式(A1)で表される化合物が、0.001モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、0.1モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、10モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、例えば、20モル%以上50モル%未満、30モル%以上50モル%未満含まれていてもよい。
【0209】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(A1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
本態様において、式(A1)で表される化合物、および式(A2)で表される化合物の合計に対して、式(A2)で表される化合物が、35モル%以上65モル%未満含まれていてもよく、40モル%以上60モル%未満含まれていてもよい。
【0210】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、式(A1)または式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含み、上記他の成分である、含フッ素オイルを含まない(例えば、含フッ素オイルの含有量が、表面処理剤100質量部に対して、1質量部以下であり、より具体的には、0質量部である)。
【0211】
本開示の組成物は、基材の表面処理を行う表面処理剤として用いることができる。
【0212】
本開示の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0213】
(物品)
以下、本開示の物品について説明する。
【0214】
本開示の物品は、基材と、該基材表面に本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物またはフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤(以下、これらを代表して単に「本開示の表面処理剤」という)から形成された層(表面処理層)とを含む。
【0215】
本開示において使用可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよく、板状、フィルム、その他の形態であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、任意の適切な材料で構成され得る。
【0216】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラスまたは透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO2および/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0217】
基材の形状は特に限定されない。また、本開示の表面処理剤によって形成された層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途および具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0218】
かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜または熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入または増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素-炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア-ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0219】
またあるいは、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi-H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0220】
次に、かかる基材の表面に、上記の本開示の表面処理剤の層を形成し、この層を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の表面処理剤から層を形成する。
【0221】
本開示の表面処理剤の層形成は、上記の表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法および乾燥被覆法を使用できる。
【0222】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングおよび類似の方法が挙げられる。
【0223】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVDおよび類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビームおよび類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ-CVD、光学CVD、熱CVDおよび類似の方法が挙げられる。
【0224】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0225】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本開示の表面処理剤の安定性および溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5~12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C6F13CH2CH3(例えば、AGC株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい)、あるいはCF3CH2OCF2CHF2(例えば、AGC株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)および/またはパーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)が特に好ましい。
【0226】
乾燥被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、または、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0227】
表面処理剤の層形成は、層中で本開示の表面処理剤が、加水分解および脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本開示の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本開示の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本開示の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本開示の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0228】
触媒には、任意の適切な酸または塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0229】
上記のようにして、基材の表面に、本開示の表面処理剤に由来する層が形成され、本開示の物品が製造される。これにより得られる上記層は、高い表面滑り性と高い摩擦耐久性の双方を有する。また、上記層は、高い摩擦耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0230】
すなわち本開示はさらに、本開示の表面処理剤に由来する層を最外層に有する光学材料にも関する。
【0231】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例えば、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0232】
本開示によって得られる層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。
【0233】
また、本開示によって得られる層を有する物品は、自動車内外装部材であってもよい。外装材の例には、次のものが挙げられる:ウィンドウ、ライトカバー、社外カメラカバー。内装材の例には、次のものが挙げられる:インパネカバー、ナビゲーションシステムタッチパネル、加飾内装材。
【0234】
また、本開示によって得られる層を有する物品は、医療機器または医療材料であってもよい。
【0235】
上記層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、上記層の厚さは、1~50nm、1~30nm、好ましくは1~15nmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性および防汚性の点から好ましい。
【0236】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0237】
以下、実施例を通じてより具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、以下に示される化学式はすべて平均組成を示し、パーフルオロポリエーテルを構成する繰り返し単位の存在順序は任意である。
【0238】
(実施例1)
CF
3O-(CF
2CF
2O)
n-(CF
2O)
m-CF
2CH
2CH=CH
2(n=22,m=22)で示される末端アリル化合物 4g, 1.0mmolをAK-225 8.0mLに溶解後、ブテン酸メチル 0.5g、グラブス触媒(第二世代)42mgを添加した。室温で一晩撹拌後、クロロホルムで洗浄後、濃縮乾固した。濃縮乾固で得られた組成物をシリカゲルカラムで精製することで、化合物1-1を2.1g得た。
(化合物1-1)
【化28】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 3.05-3.21 (m, 2 H), 3.30-3.45 (m, 2 H), 3.96 (s, 3 H), 5.80-5.90 (m, 1 H), 6.20-6.25 (m, 1 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.0, -55.7, -56.6, -57.5, -58.0, -58.5, -60.0, -72.5, -74.7, -83.7, -86.0, -87.7, -91.5, -93.0.
【0239】
化合物1-1 2.1gを2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール 10.0mLに溶解した後、パラジウム活性炭素0.5gをギ酸 3.0mL、水 1.0mLに懸濁したものを添加し、室温で一晩撹拌した。続いて、セライトろ過した後、濃縮乾固し、シリカゲルカラムで精製することで、化合物1-2を1.73g得た。
(化合物1-2)
【化29】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.90-2.10 (m, 2 H), 2.30-2.50 (m, 2 H), 2.57-2.62 (m, 2 H), 3.97 (s, 3 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.2, -55.8, -56.4, -57.5, -58.3, 60.0, -72.4, -74.5, -83.5, -87.4, -91.4, -92.8, -93.2.
【0240】
化合物1-2 1.72gをHFE7200 5.0mLに溶解し、0℃にまで冷却した後、アリルマグネシウムブロミド(約13%エチルエーテル溶液,約0.7mol/L) 1.84mLを滴下した。滴下後、翌朝まで撹拌した。続いて、反応溶液に塩酸を加えて撹拌後、塩酸相を分液で除去し、水で洗浄した。続いて、アセトンで洗浄し、濃縮乾固後、シリカゲルカラムで精製することで、化合物1-3を1.09g得た。
(化合物1-3)
【化30】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.50-2.00 (m, 6 H), 2.30-2.60 (m, 7 H), 5.30-5.50 (m, 4 H), 6.10-6.27 (m, 2 H).
【0241】
化合物1-3 0.53gをAK-225 5.0mLに溶解後、ヒューニッヒ塩基 0.16mLを添加した。続いて、メトキシエトキシメチルクロライド 75.0μlを添加し、35℃で4日間撹拌した。続いて、メタノール、アセトンで洗浄し、濃縮乾固することで、化合物1-4を0.54g得た。
(化合物1-4)
【化31】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.80-2.00 (m, 6 H), 2.40-2.55 (m, 2 H), 2.60-2.70 (m, 4 H), 3.65 (s, 3 H), 3.80-3.90 (m, 2 H), 4.05-4.10 (m, 2 H), 5.14 (s, 2 H), 5.30-5.45 (m, 4 H), 6.10-6.25 (m, 2 H).
【0242】
化合物1-4 0.56gをHFE7200 1.5mLに溶解後、カールシュテット触媒 40.0μl、アニリン 6.0μlを順に添加した。室温で30分撹拌後、トリメトキシシラン 0.2mLを添加し、室温で3時間撹拌した。濾過した後、濃縮乾固することで、化合物1-5を 0.56g得た。
(化合物1-5)
【化32】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 0.95-1.10 (m, 4 H), 1.85-2.10 (m, 14 H), 2.40-2.60 (m, 2 H), 3.66 (s, 3 H), 3.85-4.15 (m, 22 H), 5.11 (s, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.8, -56.2, -57.5, -58.2, -58.5, -60.0, -72.3, -75.3, -83.5, -86.0, -87.5, -91.1, -92.8, -93.1.
【0243】
(実施例2)
化合物1-3 0.507gをAK-225 5.0mLに溶解後、ヒューニッヒ塩基 0.304mLを添加した。続いて、メトキシメチルクロライド 80.0μlを添加し、35℃で5日間撹拌した。続いて、メタノール、アセトン、クロロホルムで洗浄した。濃縮乾固後、シリカゲルカラムで精製することで、化合物2-1を0.51g得た。
(化合物2-1)
【化33】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.80-2.00 (m, 6 H), 2.40-2.50 (m, 2 H), 2.65-2.70 (m, 4 H), 3.69 (s, 3 H), 5.05 (s, 2 H), 5.30-5.45 (m, 4 H), 6.15-6.25 (m, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.7, -56.5, -57.5, -58.3, -58.5, -60.0, -72.3, -74.5, -83.5, -86.0, -87.7, -91.1, -93.1.
【0244】
化合物2-1 0.58gをHFE7200 2.0mLに溶解後、カールシュテット触媒 40.0μl、アニリン 7.0μlを添加した。室温で30分撹拌後、トリメトキシシラン 0.2mL, 1.57mmolを添加し、室温で2.5時間撹拌した。濾過した後、濃縮乾固することで、化合物2-2を0.59g得た。
(化合物2-2)
【化34】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 0.95-1.10 (m, 4 H), 1.85-2.10 (m, 8 H), 1.70-2.10 (m, 14 H), 2.40-2.60 (m, 2 H), 3.70 (s, 3 H), 3.85-4.20 (s, 18 H), 5.01 (s, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.8, -57.5, -58.2, -58.3, -60.0, -72.3, -74.4, -83.5, -86.0, -87.7, -91.1, -92.8, -93.3.
【0245】
(実施例3)
CF
3O-(CF
2CF
2O)
n-(CF
2O)
m-CF
2CH
2CH=CH
2(n=22,m=22)で示される末端アリル化合物 2gをAK-225 3.0mLに溶解後、エチルアクリレート 0.544mL、グラブス触媒(第二世代) 21mgを添加した。室温で一晩撹拌後、クロロホルムで洗浄し、濃縮乾固した。シリカゲルカラムで精製することで、化合物3-1を1.86g得た。
(化合物3-1)
【化35】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.60 (t, 3 H), 3.15-3.35 (m, 2 H), 4.40-4.52 (m, 2 H), 6.30-6.50 (m, 1 H), 7.20-7.30 (m, 1 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.2, -55.8, -56.5, -57.5, -58.1, -58.3, -60.0, -71.8, -73.9, -74.7, -76.1, -83.5, -86.0, -87.7, -91.1, -93.1.
【0246】
化合物3-1 1.83gを2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール 12.0mLに溶解した後、パラジウム活性炭素 0.3gをギ酸 4.0mL、水 1.0mLに懸濁したものを添加し、室温で一晩撹拌した。続いて、セライトろ過した後、濃縮乾固することで、化合物3-2を1.69g得た。
(化合物3-2)
【化36】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.54 (t, 3 H), 2.20-2.30 (m, 2 H), 2.41-2.54 (m, 2 H), 2.57-2.70 (m, 2 H), 4.40-4.50 (m, 2 H).
【0247】
化合物3-2 1.69gをHFE7200 4.0mLに溶解した後、0℃にまで冷却し、アリルマグネシウムブロミド(約13%エチルエーテル溶液, 約0.7mol/L) 1.81mLを滴下した。滴下後、翌朝まで撹拌し、反応溶液に塩酸を加えて撹拌後、塩酸層を分液で除去し、水で洗浄した。続いて、メタノール、クロロホルムで洗浄し、濃縮乾固後することで、化合物3-3を1.69g得た。
(化合物3-3)
【化37】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.64 (br s, 1 H), 1.80-1.90 (m, 2 H), 2.00-2.10 (m, 2 H), 2.40-2.60 (m, 6 H), 5.40-5.50 (m, 4 H), 6.10-6.25 (m, 2 H) ;
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.8, -56.4, -57.5, -58.3, -58.7, -60.0, -72.3, -74.5, -85.6, -87.5, -91.1, -93.0.
【0248】
化合物3-3 0.62gをHFE7200 1.2mLに溶解後、カールシュテット触媒 35.0μl、アニリン 5.6μlを添加した。室温で30分撹拌後、トリメトキシシラン 0.138mLを添加し、室温で3時間撹拌した。続いて、クロロホルムで洗浄し、濃縮乾固することで、化合物3-4を0.64g得た。
(化合物3-4)
【化38】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 0.95-1.10 (m, 4 H), 1.67 (br s, 1 H), 1.80-2.20 (m, 12 H), 3.90-4.10 (s, 18 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -55.8, -56.4, -57.5, -58.0, -58.3, -60.0, -72.4, -74.5, -86.0, -87.7, -91.1, -92.8, -93.2.
【0249】
(実施例4)
化合物3-3 0.577gをAK-225 2.0mLに溶解後、ヒューニッヒ塩基 148.0μlを添加した。続いて、メトキシメチルクロライド 46.0μlを添加し、37℃で二晩撹拌した。続いて、メタノール、アセトン、クロロホルムで洗浄した。濃縮乾固後、シリカゲルカラムで精製することで、化合物4-1を0.554g得た。
(化合物4-1)
【化39】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.80-2.05 (m, 2 H), 2.05-2.15 (m, 2 H), 2.30-2.45 (m, 2 H), 2.65-2.70 (m, 4 H), 3.70 (s, 3 H), 5.04 (s, 2 H), 5.30-5.45 (m, 4 H), 6.15-6.25 (m, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.3, -55.8, -56.5, -57.5, -58.2, -58.3, -60.0, -72.3, -74.5, -86.0, -87.8, -91.2, -93.2.
【0250】
化合物4-1 0.554gをHFE7200 1.0mLに溶解後、カールシュテット触媒 35.0μl、アニリン 5.6μlを添加した。室温で30分撹拌後、トリメトキシシラン 88.0μlを添加し、室温で2.5時間撹拌した。濾過した後、濃縮乾固することで、化合物4-2を0.59g得た。
(化合物4-2)
【化40】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 0.95-1.10 (m, 4 H), 1.80-2.05 (m, 12 H), 1.70-2.10 (m, 14 H), 2.30-2.50 (m, 2 H), 3.70 (s, 3 H), 3.85-4.20 (s, 18 H), 5.01 (s, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.8, -54.0, -56.0, -56.5, -57.5, -58.2, -58.3, -60.0, -72.5, -74.8, -83.5, -86.0, -87.8, -91.0, -92.8, -93.2.
【0251】
(実施例5)
CF
3O-(CF
2CF
2O)
n-(CF
2O)
m-CF
2CH
2CH=CH
2(n=22,m=22)で示される末端アリル化合物 5.32gをAK-225 25.0mLに溶解後、ペンテン酸エチル 1.89mL、グラブス触媒(第二世代)0.113gを添加した。35℃で一晩撹拌後、アセトン、クロロホルムで洗浄後、濃縮乾固した。シリカゲルカラムで精製することで、化合物5-1を2.71g得た。
(化合物5-1)
【化41】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.53 (t, 3 H), 2.60-2.80 (m, 4 H), 3.00-3.20 (m, 2 H), 4.40-4.50 (m, 2 H), 5.70-5.90 (m, 1 H), 6.00-6.10 (m, 1 H).
【0252】
化合物5-1 2.7gを2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール10.0mLに溶解した後、パラジウム活性炭素 0.3gをギ酸 2.0mL、水 1.0mLに懸濁したものを添加し、室温で一晩撹拌した。続いて、ろ過、濃縮乾固し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄した。Na
2SO
4で乾燥後、ろ過し、濃縮乾固することで、化合物5-2を2.58g得た。
(化合物5-2)
【化42】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.54 (t, 3 H), 1.65-1.80 (m, 2 H), 1.85-2.10 (m, 4 H), 2.30-2.50 (m, 2 H), 2.55-2.65 (m, 2 H), 4.40-4.50 (m, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.0, -54.2, -55.8, -56.4, -57.3, -58.1, -58.2, -60.0, -72.4, -74.5, -85.9, -87.4, -91.2, -92.8, -93.3.
【0253】
化合物5-2 2.58gをHFE7200 4.0mLに溶解した後、0℃にまで冷却し、アリルマグネシウムブロミド(約13%エチルエーテル溶液,約0.7mol/L) 2.3mLを滴下した。滴下後、翌朝まで撹拌した。反応溶液に塩酸を加えて撹拌後、塩酸層を分液で除去し、水、メタノール、アセトンで洗浄し、濃縮乾固後、シリカゲルカラムで精製することで、化合物5-3を2.24g得た。
(化合物5-3)
【化43】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.60-1.85 (m, 7 H), 1.90-2.00 (m, 2 H), 2.35-2.45 (m, 2 H), 2.40-2.50 (m, 4 H), 5.38-5.50 (m, 4 H), 6.15-6.25 (m, 2 H) ;
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.0, -54.2, -55.8, -56.4, -57.3, -58.1, -58.2, -60.0, -72.6, -74.5, -85.9, -87.6, -91.2, -93.0, -93.5.
【0254】
化合物5-3 0.42gをHFE7200 1.1mLに溶解後、カールシュテット触媒 25.0μl、アニリン 4.0μlを添加した。室温で30分撹拌後、トリメトキシシラン 0.1mLを添加し、室温で3.5時間撹拌した。濾過した後、濃縮乾固することで、化合物5-4を0.44g得た。
(化合物5-4)
【化44】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 0.95-1.10 (m, 4 H), 1.55-2.10 (m, 17 H), 2.35-2.50 (m, 2 H), 3.85-4.20 (s, 18 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.2, -55.8, -56.4, -57.6, -58.2, -58.3, -60.0, -72.3, -74.5, -85.8, -87.7, -91.1, -92.8, -93.1.
【0255】
(実施例6)
化合物5-3 0.668gをAK-225 3.0mLに溶解後、ヒューニッヒ塩基 0.17mL、DMAP、メトキシメチルクロライド 50.0μlを添加し、バス温度35℃で4日間撹拌した。続いて、反応溶液を濃縮乾固後、シリカゲルカラムで精製することで、化合物6-1を0.56g得た。
(化合物6-1)
【化45】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.50-2.10 (m, 8 H), 2.35-2.50 (m, 2 H), 2.60-2.70 (m, 4 H), 3.70 (s, 3 H), 5.05 (s, 2 H), 5.35-5.45 (m, 4 H), 6.15-6.30 (m, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.8, -56.4, -57.5, -58.1, -58.3, -60.0, -72.3, -74.4, -85.8, -87.5, -91.1, -92.8, -93.3.
【0256】
化合物6-1 0.56gをHFE7200 1.1mLに溶解後、カールシュテット触媒 24.7μl、アニリン 4.0μlを添加した。室温で30分撹拌後、トリメトキシシラン 98.7μlを添加し、室温で3.5時間撹拌した。濾過した後、濃縮乾固することで、化合物6-2を0.57g得た。
(化合物6-2)
【化46】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 0.95-1.10 (m, 4 H), 1.60-2.10 (m, 8 H), 1.70-2.10 (m, 16 H), 2.35-2.51 (m, 2 H), 3.71 (s, 3 H), 3.80-4.15 (s, 18 H), 5.02 (s, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.8, -56.4, -57.5, -58.1, -58.3, -60.0, -72.3, -74.5, -86.0, -87.7, -91.2, -92.8, -93.3.
【0257】
(実施例7)
β-プロピオラクトン 3.45gをメタノール 10.0mLに溶解後、ナトリウムメトキシド 0.53gを添加した。50℃で1時間半撹拌後、濃縮乾固した。濃縮乾固で得られた組成物にジエチルエーテルと水とを加えた後、分液し、濃縮乾固することで、化合物7-1を2.2g得た。
(化合物7-1)
【化47】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 1.60-1.85 (m, 7 H), 1.90-2.00 (m, 2 H), 2.35-2.45 (m, 2 H), 2.56-2.90 (m, 2 H), 3.72 (s, 3 H), 3.87 (m, 2 H)
【0258】
化合物7-1 2.2gをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF) 15.0mLに溶解後、氷浴で冷やした。10分後、イミダゾール 1.73g、tert-ブチルジメチルシリルクロリド 3.82gの順に添加し、翌朝まで撹拌した。反応溶液にジエチルエーテルと水とを加えた後、分液し、濃縮乾固後、カラム精製を行うことで化合物7-2を2.81g得た。
(化合物7-2)
【化48】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.04 (s, 6 H), 0.86 (s, 9 H), 2.35-2.45 (m, 2 H), 2.52 (t, 2 H), 3.67 (s, 3 H), 3.88 (t, 2 H)
【0259】
化合物7-2 2.71gをテトラヒドロフラン(THF) 8.0mLに溶解後、氷浴で冷やした。10分後、アリルマグネシウムブロマイド 39mLを添加し、翌朝まで撹拌した。反応溶液にジエチルエーテルと塩化アンモニウム水溶液とを加えた後、分液し、濃縮乾固後、カラム精製を行うことで化合物7-3を2.25g得た。
(化合物7-3)
【化49】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.04 (s, 6 H), 0.89 (s, 9 H), 1.69-1.73 (m, 2 H), 2.25-2.37 (m, 4 H), 3.81-3.94 (m, 3 H), 5.05-5.13 (m, 4 H), 5.84-5.91 (m, 2 H).
【0260】
化合物7-3 1.00gをジクロロメタン 5.0mLに溶解後、アリルジイソプロピルエチルアミン 1.89mL、メトキシメチルクロリド 0.56mLを添加し、4日間、室温で撹拌した。反応溶液に水を加えた後、分液し、濃縮乾固後、カラム精製を行うことで化合物7-4を0.96g得た。
(化合物7-4)
【化50】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 0.04 (s, 6 H), 0.88 (s, 9 H), 1.80-1.82 (m, 2 H), 2.29-2.37 (m, 4 H), 3.37 (s, 3 H), 3.71-3.75 (m, 2 H), 4.72 (s, 2 H), 5.04-5.09 (m, 4 H), 5.80-5.87 (m, 2 H).
【0261】
化合物7-4 0.96gをTHF 10.0mLに溶解後、テトラブチルアンモニウムフルオライドのTHF溶液 3.97mLを添加し、室温で一晩撹拌した。反応溶液に塩化アンモニウム水溶液とクロロホルムとを加えた後、分液し、濃縮乾固後、カラム精製を行うことで化合物7-5を0.57g得た。
(化合物7-5)
【化51】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 1.80-1.87 (m, 2 H), 2.30-2.43 (m, 4 H), 3.39 (s, 3 H), 3.75-3.83 (m, 2 H), 4.76 (s, 2 H), 5.00-5.14 (m, 4 H), 5.79-5.88 (m, 2 H).
【0262】
化合物7-5 0.2gをTHF 5.0mLに溶解後、フタルイミド0.191g、トリフェニルホスフィン 0.341gの順に添加後、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート 0.683mLを添加した。室温で一晩撹拌後、反応溶液に水とジエチルエーテルを加えた後、分液し、濃縮乾固後、カラム精製を行うことで化合物7-6を0.288g得た。
(化合物7-6)
【化52】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 1.80-1.90 (m, 2 H), 2.30-2.50 (m, 4 H), 3.41 (s, 3 H), 3.70-3.83 (m, 2 H), 4.78 (s, 2 H), 5.05-5.20 (m, 4 H), 5.80-5.92 (m, 2 H), 7.69 (d, 2 H), 7.81 (d, 2 H).
【0263】
化合物7-6 0.288gをメタノール 5.0mLに溶解後、エチレンジアミン0.292mLを添加後、室温で一晩撹拌した。反応溶液に水とクロロホルムを加えた後、分液し、濃縮乾固することで化合物7-7を0.18g得た。
(化合物7-7)
【化53】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ: 1.73 (t, 2 H), 2.20-2.40 (m, 6 H), 2.80-2.88 (m, 2 H), 3.38 (s, 3 H), 4.73 (s, 2 H), 5.05-5.21 (m, 4 H), 5.75-5.82 (m, 2 H).
【0264】
CF
3O-(CF
2CF
2O)
n-(CF
2O)
m-CF
2COOCH
3(n=25,m=25)で示されるメチルエステル 1gおよび、化合物7-7 79.7mgをAK225 1.5mLに溶解後、室温で5時間撹拌した。反応溶液にパーフルオロヘキサンとアセトンとを加えた後、分液し、濃縮乾固することで化合物7-8を1.17g得た。
(化合物7-8)
【化54】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 2.12 (t, 2 H), 2.70-2.75 (m, 4 H), 3.73 (s, 3 H), 3.80-3.90 (m, 2 H), 5.11 (s, 2 H), 5.30-5.40 (m, 4 H), 6.00-6.20 (m, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.2, -55.8, -56.5, -57.5, -58.3, -60.0, -80.8, -82.5, -85.8, -87.5, -91.2, -92.8, -93.2.
【0265】
化合物7-8 0.99gをHFE7200 1.5mLに溶解後、カールシュテット触媒 44.2μl、アニリン 7.2μlを添加した。室温で30分撹拌後、トリメトキシシラン 0.126μlを添加し、室温で3時間撹拌した。濾過した後、濃縮乾固することで、化合物7-9を0.96g得た。
(化合物7-9)
【化55】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 0.95-1.05 (m, 4 H), 1.80-1.90 (m, 12 H), 2.02-2.15 (m, 6 H), 3.74 (s, 3 H), 3.85-4.10 (m, 20 H), 5.08 (s, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.2, -55.6, -56.5, -57.4, -58.3, -59.9, -80.5, -82.4, -85.8, -87.6, -91.2, -92.8, -93.2.
【0266】
(比較例1)
WO2017/212850の実施例1に記載の方法に従って、化合物C-1を得た(n:m=53:47、n+m=43)。
(化合物C-1)
【化56】
【0267】
<表面処理層の形成>
実施例1~7、比較例1で得られたフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を、濃度0.06質量%となるようにNovec 7200(3M社製、エチルパーフルオロブチルエーテル)で希釈し、表面処理剤を調製した。その後、表面を大気圧プラズマで処理した化学強化ガラス(コーニング社製 Gorilla 3)を基材として、基材上にスプレー塗布装置を用いて上記で調製した表面処理剤を塗布した。塗布量は表面処理剤60g/m2とした。続いて、表面処理剤が塗布された基材を大気圧下、140℃で30分間加熱処理し、表面処理層を形成した。
【0268】
<水の静的接触角の測定方法>
静的接触角の測定は、全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学社製)を用いた。具体的には、測定対象の表面処理層を有する基材を水平に静置し、その表面にマイクロシリンジから水を2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより静的接触角を測定した。水の静的接触角は、基材の表面処理層の異なる5点において測定し、その平均値を算出した値を用いた。
【0269】
<消しゴム耐久性評価>
(初期評価)
初期評価(消しゴム摩擦回数0回)として、表面処理層の形成後、表面上の余剰分を拭き上げたのちに、水の静的接触角を測定した。
(消しゴム耐久性試験後の評価)
形成された表面処理層に対して、ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、下記条件で往復回数2500回毎に水の静的接触角を測定し、10,000回まで測定した。試験環境条件は25℃、湿度40%RHであった。
消しゴム:Raber Eraser(Minoan社製)
接地面積:6mmφ
移動距離(片道):40mm
移動速度:3,600mm/分
荷重:1kg/6mmφ
【0270】
結果を表1に示す。
【0271】
【0272】
(合成例1)
CF
3O-(CF
2CF
2O)
n-(CF
2O)
m-CF
2COOH(n=25,m=25)で示されるカルボン酸 4.57gをメタキシレンヘキサフロライド(mXHF) 6.0mLに溶かした後、DMF 25μl、塩化チオニル 0.3mLを添加し、室温で撹拌した後、90℃で3時間撹拌した。3時間後、反応溶液を濃縮乾固することでCF
3O-(CF
2CF
2O)
n-(CF
2O)
m-CF
2COCl(n=25,m=25)で示される酸クロライドを得た。
上記で合成した酸クロライドにAK-225 6.0mLおよびクロロホルム1.0mLの混合溶媒に溶解させた後、N,O-ジメチルヒドロキシアミンの塩酸塩 0.205gを添加した。続いて、ピリジン 0.323mLを滴下した後、60℃で一晩撹拌した。反応溶液を塩酸で洗浄した後、水で洗浄した。続いて、メタノール、アセトンで洗浄し、濃縮乾固することで、以下の化合物1A-1を4.60g得た。
(化合物1A-1)
【化57】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 3.55 (s, 3 H), 4.08 (s, 3 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.0, -55.8, -56.3, -57.5, -58.0, -58.3, -60.0, -76.8, -78.8, -86.0, -88.8, -91.0, -93.0.
【0273】
化合物1A-1 5.10gをHFE7200 20.0mLに溶解した後、反応溶液を0℃まで冷却した。続いて、1mol/Lの水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H) 2.46mLを滴下した後、一晩撹拌した。続いて塩酸を反応溶液に入れ撹拌した後、分液により塩酸相を除去した。続いて、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムにより乾燥した。続いて、溶液をろ過した後、濃縮乾固した。濃縮乾固で得られた組成物をメタノール、クロロホルムで洗浄し、濃縮乾固することで、化合物1A-2を5.1g得た。
(化合物1A-2)
【化58】
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.2, -55.5, -56.0, -57.5, -58.0, -58.3, -60.0, -83.5, -85.8, -86.0, -88.8, -91.0, -93.8.
【0274】
化合物1A-2 5.1gをHFE7200 16.0mLに溶解した後、エチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテート 0.816gを室温で添加した。続いて、THF 5mL、ジクロロメタン(DCM) 10mLを加えて、室温で一晩撹拌した。反応溶液にパーフルオロヘキサンを加え、メタノール、アセトン、クロロホルムの順に洗浄し、濃縮乾固することで、化合物1A-3を5.2g得た。
(化合物1A-3)
【化59】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.60 (t, 3 H), 4.53-4.59 (m, 2 H), 6.79-6.83 (m, 1 H), 7.14-7.18 (m, 1 H)
【0275】
化合物1A-3 5.1gを2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール 16.0mLに溶解した後、パラジウム活性炭素 1gをギ酸 5.0mL、水 1.0mLに懸濁したものを添加し、室温で一晩撹拌した。セライトろ過した後、濃縮乾固し、得られた組成物をmXHFに溶解し、アミノシリカゲルを通じて得られた溶液をろ過し、濃縮乾固することで、化合物1A-4を4.59g得た。
(化合物1A-4)
【化60】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.55 (t, 3 H), 2.80-2.87 (m, 4 H), 4.46-4.52 (m, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.2, -55.8, -56.5, -57.5, -58.0, -58.3, -60.0, -73.1, -75.0, -86.0, -88.7, -91.3, -93.0.
【0276】
化合物1A-4 4.52gをHFE7200 10.0mLに溶解した後、0℃でアリルマグネシウムブロミド (約13%エチルエーテル溶液,約0.7mol/L) 4.24mLを滴下した。滴下後、翌朝まで撹拌し、反応溶液に塩酸を加えて撹拌後、塩酸相を分液で除去し、水で洗浄した。続いて、メタノール、アセトン、クロロホルムの順で洗浄し、ろ過後、この溶液を濃縮乾固することで、化合物1A-5を4.60g得た。
(化合物1A-5)
【化61】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.86 (br s, 1 H), 2.10-2.12 (m, 2 H), 2.50-2.66 (m, 6 H), 5.40-5.48 (m, 4 H), 6.10-6.18 (m, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.0, -55.8, -56.3, -57.5, -58.0, -58.3, -60.0, -76.8, -78.8, -86.0, -88.8, -91.0, -93.0.
【0277】
化合物1A-5 0.8gをAK-225 1.5mLに溶解後、ヒューニッヒ塩基 0.149mLを添加した。続いて、メトキシメチルクロライド 39.5μlを添加し、室温で2日間、35℃でさらに3日間撹拌した。続いて、反応溶液メタノール、アセトン、クロロホルムの順に洗浄し、濃縮乾固することで、化合物1A-6を0.8g得た。
(化合物1A-6)
【化62】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 2.15-2.25 (m, 2 H), 2.50-2.70 (m, 6 H), 3.68 (s, 3 H), 5.04 (s, 2 H), 5.30-5.45 (m, 4 H), 6.05-6.20 (m, 2 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.5, -56.0, -57.7, -58.2, -58.5, -60.0, -72.7, -75.5, -83.5, -86.0, -87.7, -91.5, -93.0.
【0278】
(合成例2)
化合物3-3 1.27gをAK-225 3.0mL、DMF 0.7mLの混合溶媒に溶解後、イミダゾール 67.0mgを添加した。続いて、トリメチルシリルクロライド 64.0μlを添加し、室温で一晩撹拌した。続いて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、メタノールで洗浄後、濃縮乾固することで、化合物2A-1を0.71g得た。
(化合物2A-1)
【化63】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 0.49 (s, 9 H), 1.86-1.95 (m, 2 H), 2.05-2.15 (m, 2 H), 2.35-2.50 (m, 2 H), 2.55-2.70 (m, 4 H), 5.35-5.45 (m, 4 H), 6.15-6.30 (m, 2 H).
【0279】
(合成例3)
CF
3O-(CF
2CF
2O)
n-(CF
2O)
m-CF
2CH
2OH(n=25,m=25)で示されるアルコール 1.71gをAK-225 3.0mL、DMF 0.4mLの混合溶媒に溶解後、水素化ナトリウム 23mgを添加し、室温下、30分撹拌した。続いて、クロロ酢酸メチル 0.112mL、テトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI) 15.7mgを添加し、80℃で一晩撹拌した。反応溶液に塩酸を加えて撹拌後、塩酸層を分液で除去し、水、アセトンで洗浄した。濃縮乾固後、シリカゲルカラムで精製し、化合物3A-1を0.93g得た。
(化合物3A-1)
【化64】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 4.03 (s, 3 H), 4.32-4.40 (m, 2 H), 4.52 (s, 2 H).
【0280】
化合物3A-1 1.34gをHFE7200 4.0mLに溶解した後、0℃にまで冷却し、アリルマグネシウムブロミド (約13%エチルエーテル溶液, 約0.7mol/L) 1.44mLを滴下した。滴下後、翌朝まで撹拌した。続いて、反応溶液に塩酸を加えて撹拌後、塩酸層を分液で除去し、水、アセトンで洗浄した。濃縮乾固後することで、化合物3A-2を1.36g得た。
(化合物3A-2)
【化65】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 2.35 (br s, 1 H), 2.55-2.70 (m, 4 H), 3.80-3.90 (m, 2 H), 4.15-4.30 (m, 2 H), 5.37-5.50 (m, 4 H), 6.15-6.30 (m, 2 H) ;
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.8, -56.5, -57.5, -58.3, -58.7, -60.0, -75.8, -80.5, -82.7, -86.0, -87.7, -89.7, -91.1, -92.8, -93.5.
【0281】
化合物3A-2 0.56gをAK-225 1.3mLに溶解後、ヒューニッヒ塩基 74.0μlを添加した。続いて、メトキシメチルクロライド 22.0μlを添加し、37℃で一晩撹拌した。続いて、ヒューニッヒ塩基 74.0μl、メトキシメチルクロライド 23.0μlを添加し、5日間撹拌した。反応溶液をメタノール、アセトン、クロロホルムで洗浄した。この溶液を濃縮乾固後、シリカゲルカラムで精製することで、化合物3A-3を0.597g得た。
(化合物3A-3)
【化66】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 2.65-2.70 (m, 4 H), 3.67 (s, 3 H), 3.98 (s, 2 H), 4.10-4.30 (s, 2 H), 5.13 (s, 2 H), 5.37-5.55 (m, 4 H), 6.15-6.25 (m, 2 H).
【0282】
(合成例4)
CF
3O-(CF
2CF
2O)
n-(CF
2O)
m-CF
2CH
2CH=CH
2(n=22,m=22)で示される末端アリル体化合物 4.0g、p-ブロモ安息香酸メチル 0.43g、Pd(OAc)
2 22.5mg、トリフェニルホスフィン 52.4mg、mXHF 6.0mL、DMF 1.0mL、トリエチルアミン 0.307mLを室温で添加し、100℃で一晩撹拌した。続いて、メタノール、アセトン、クロロホルムで洗浄し、濃縮乾固した後、シリカゲルカラムにより精製することで、化合物4A-1を1.63g得た。
(化合物4A-1)
【化67】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 3.25-3.40 (m, 2 H), 4.18 (s, 3 H), 6.50-6.63 (m, 1 H), 6.80-6.96 (m, 1 H).
【0283】
化合物4A-1 1.61gを2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール 15.0mLに溶解した後、パラジウム活性炭素 0.6gをギ酸 5.0mL、水 1.0mLに懸濁したものを添加し、室温で一晩撹拌した。続いて、セライトろ過した後、濃縮乾固後、シリカゲルカラムにより精製することで、化合物4A-2を0.9g得た。
(化合物4A-2)
【化68】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 2.15-2.30 (m, 2 H), 2.30-2.50 (m, 2 H), 3.00-3.10 (m, 2 H), 4.20 (s, 3 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -54.0, -55.8, -56.5, -57.5, -58.0, -58.3, -60.0, -72.4, -74.0, -88.7, -91.0, -93.0.
【0284】
化合物4A-2 0.94gをHFE7200 5.0mLに溶解した後、0℃にまで冷却し、アリルマグネシウムブロミド(約13%エチルエーテル溶液,約0.7mol/L) 1.0mLを滴下した。滴下後、翌朝まで撹拌した。続いて、反応溶液に塩酸を加えて撹拌後、塩酸層を分液で除去し、水、メタノール、アセトンで洗浄し、濃縮乾固後、シリカゲルカラムにより精製することで、化合物4A-3を0.551g得た。
(化合物4A-3)
【化69】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 2.20-2.30 (m, 2 H), 2.30-2.50 (m, 3 H), 2.75-2.85 (m, 2 H), 2.90-3.00 (m, 4 H), 5.28-5.40 (m, 4 H), 5.90-6.10 (m, 2 H) ;
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.8, -56.5, -57.5, -58.3, -58.7, -60.0, -72.5, -74.5, -86.0, -87.6, -89.7, -91.2, -93.0, -93.1.
【0285】
化合物4A-3 0.53gをAK-225 3.0mLに溶解後、ヒューニッヒ塩基 0.135mLを添加した。続いて、メトキシメチルクロライド 39.9μlを添加し、37℃で4日間撹拌した。反応溶液をメタノール、クロロホルムで洗浄し、濃縮乾固後、シリカゲルカラムで精製することで、化合物4A-4を0.55g得た。
(化合物4A-4)
【化70】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 2.15-2.30 (m, 2 H), 2.35-2.50 (m, 2 H), 2.90-3.10 (m, 6 H), 3.70 (s, 3 H), 4.92 (s, 2 H), 5.20-5.40 (m, 4 H), 5.90-6.10 (m, 2 H).
【0286】
(合成例5)
CF
3O-(CF
2CF
2O)
n-(CF
2O)
m-CF
2CH
2CH=CH
2(n=22,m=22)で示される末端アリル化合物 6.2gをAK-225 12mLに溶解後、ヘキセン酸メチル 2.18mL、グラブス触媒(第二世代) 65.8mgを添加した。室温で一晩撹拌後、メタノール、アセトンで洗浄後、濃縮乾固し、シリカゲルカラムで精製することで、化合物5A-1を2.64g得た。
(化合物5A-1)
【化71】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.90-2.10 (m, 2 H), 2.30-2.45 (m, 2 H), 2.50-2.60 (m, 2H), 3.00-3.20 (m, 2 H), 3.96 (s, 3 H), 5.70-5.80 (m, 1 H), 5.95-6.10 (m, 1 H).
【0287】
化合物5A-1 2.63gを2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール10.0mLに溶解した後、パラジウム活性炭素 0.48gを添加した。続いて、水素ガス雰囲気下、室温で一晩撹拌し、ろ過、濃縮乾固し、化合物5A-2を2.58g得た。
(化合物5A-2)
【化72】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.60-1.80 (m, 4 H), 1.84-2.04 (m, 4 H), 2.30-2.50 (m, 2 H), 2.59 (t, 2 H), 3.96 (s, 3 H);
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.6, -56.4, -57.5, -58.1, -58.3, -60.0, -72.3, -74.5, -85.9, -87.5, -91.2, -92.8, -93.2.
【0288】
化合物5A-2 2.57gをHFE7200 5.0mLに溶解した後、0℃にまで冷却し、アリルマグネシウムブロミド(約13%エチルエーテル溶液,約0.7mol/L) 2.75mLを滴下した。滴下後、翌朝まで撹拌した。反応溶液に塩酸を加えて撹拌後、塩酸相を分液で除去し、水、メタノール、アセトンで洗浄した。濃縮乾固後、シリカゲルカラムで精製することで、化合物5A-3を1.99g得た。
(化合物5A-3)
【化73】
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ: 1.60-2.00 (m, 10 H), 2.33-2.45 (m, 2 H), 2.45-2.60 (m, 4 H), 5.38-5.45 (m, 4 H), 6.15-6.30 (m, 2 H) ;
19F NMR (mXHF, 400 MHz) δ: -53.9, -54.2, -55.8, -56.4, -57.5, -58.1, -58.3, -60.0, -72.3, -74.4, -85.9, -87.5, -91.2, -93.0, -93.1.
本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、種々多様な基材、特に摩擦耐久性が求められる光学部材の表面に、表面処理層を形成するために好適に利用され得る。