(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040389
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ハイブリッド線量計
(51)【国際特許分類】
G01T 1/06 20060101AFI20240315BHJP
G01T 1/16 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G01T1/06
G01T1/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019863
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2022114428の分割
【原出願日】2012-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】504385339
【氏名又は名称】山本 和浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 和浩
(57)【要約】
【課題】 放射線量情報の把握が容易であるとともに破損や故障等に対する信頼性を向上するのに好適なハイブリッド線量計を提供する。
【解決手段】 電子式線量計220は、放射線量を測定する測定部10と、記憶部12と、測定部10で測定した放射線量に基づいて積算放射線量情報を記憶部12に記録する演算部14と、測定部10で測定した放射線量に基づいて放射線量情報を表示する表示部16と、ガラス線量計230が受けた積算放射線量を取得する放射線量取得部18とを備える。演算部14は、復元要求を入力したときは、放射線量取得部18で取得した積算放射線量に基づいて記憶部12の積算放射線量情報を復元する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子式線量計及びガラス線量計を備えるハイブリッド線量計の放射線量情報管理システムであって、
前記電子式線量計は、記憶手段と、放射線量を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した放射線量に基づいて放射線量情報を通知する通知手段と、前記測定手段で測定した放射線量に基づいて積算放射線量情報を前記記憶手段に記録する第1記録手段とを備え、
前記ガラス線量計が受けた積算放射線量を取得する取得手段と、
前記取得手段で取得した積算放射線量に基づいて積算放射線量情報を前記記憶手段に記録する第2記録手段とを備えることを特徴とする放射線量情報管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記記憶手段の積算放射線量情報を取得する放射線量情報取得手段と、
前記放射線量情報取得手段で取得した積算放射線量情報から得られる積算放射線量と、前記取得手段で取得した積算放射線量とが所定関係を満たしているかを判定する判定手段とを備えることを特徴とする放射線量情報管理システム。
【請求項3】
電子式線量計及びガラス線量計を備えるハイブリッド線量計の放射線量情報管理システムであって、
前記電子式線量計は、記憶手段と、放射線量を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した放射線量に基づいて放射線量情報を通知する通知手段と、前記測定手段で測定した放射線量に基づいて積算放射線量情報を前記記憶手段に記録する第1記録手段とを備え、
前記ガラス線量計が受けた積算放射線量を取得する取得手段と、
前記記憶手段の積算放射線量情報を取得する放射線量情報取得手段と、
前記放射線量情報取得手段で取得した積算放射線量情報から得られる積算放射線量と、前記取得手段で取得した積算放射線量とが所定関係を満たしているかを判定する判定手段とを備えることを特徴とする放射線量情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式線量計及びガラス線量計を備えるハイブリッド線量計の放射線量情報管理システムに係り、特に、放射線量情報の把握が容易であるとともに破損や故障等に対する信頼性を向上するのに好適なハイブリッド線量計に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年の福島第一原発の事故に起因して福島県を中心に、広範囲に放射性汚染及び環境の空間線量率の上昇が生じている。環境汚染のレベルは地域によって異なるが、汚染レベルと人体への影響を調査・探究するためには、住民の健康状態を長期間にわたって観察していく必要があると国は認識している。
【0003】
そこで、放射性物質による環境汚染(以下、「放射能汚染」という。)の可能性のある地域又は施設に居住又は滞在した者を含み、人がその生活行動において被曝したであろう放射線の線量の蓄積推移の把握を希望する者(以下、「被曝放射線量評価対象者」という。)は、個人線量計をストラップ等で首から提げ常時携行し、自己の被曝放射線量を測定することにより健康状態を管理している。
【0004】
従来の個人線量計としては、個人線量計が受ける放射線量を測定し、測定した放射線量を表示するものが知られている。また、測定した放射線量が所定値以上となったときは、警告を通知するものが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-101467号公報
【特許文献2】特開2006-350236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被曝放射線量評価対象者については、被曝放射線量を長期・継続的に測定する必要があるところ、従来の個人線量計及び特許文献1、2記載の線量計等の電子式線量計にあっては、破損や故障等が生じると、これまで記録していた積算放射線量情報が消失する可能性があった。一方、ガラス線量計は、電子式線量計に比して破損や故障等に対する耐性は高いものの、現在受けている放射線量(瞬間値)を把握することができない。また、積算放射線量も、ガラス線量計リーダを所持していなければ把握することができない。
【0007】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、放射線量情報の把握が容易であるとともに破損や故障等に対する信頼性を向上するのに好適なハイブリッド線量計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の放射線量情報管理システムは、電子式線量計及びガラス線量計を備えるハイブリッド線量計の放射線量情報管理システムであって、前記電子式線量計は、記憶手段と、放射線量を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した放射線量に基づいて放射線量情報を通知する通知手段と、前記測定手段で測定した放射線量に基づいて積算放射線量情報を前記記憶手段に記録する第1記録手段とを備え、前記ガラス線量計が受けた積算放射線量を取得する取得手段と、前記取得手段で取得した積算放射線量に基づいて積算放射線量情報を前記記憶手段に記録する第2記録手段とを備える。
【0009】
このような構成であれば、電子式線量計では、放射線を受けると、測定手段により、放射線量が測定され、通知手段により、測定された放射線量に基づいて放射線量情報が通知される。また、第1記録手段により、測定された放射線量に基づいて積算放射線量情報が記憶手段に記録される。
【0010】
また、ガラス線量計では、放射線を受けると、受けた放射線量に応じた積算放射線量情報が記録される。
【0011】
電子式線量計に破損や故障等が生じた場合は、新たな電子式線量計に交換する。そして、取得手段により、ガラス線量計が受けた積算放射線量が取得され、第2記録手段により、取得された積算放射線量に基づいて積算放射線量情報が記憶手段に記録される。したがって、新たな電子式線量計において、ガラス線量計が受けた積算放射線量に基づいて積算放射線量情報が復元される。
【0012】
ここで、ハイブリッド線量計とは、電子式線量計及びガラス線量計を組み合わせて一つの目的をなすものをいい、その目的は、使用者が被曝したとされる積算放射線量を2系統で測定することにある。この目的が達成される限り、電子式線量計及びガラス線量計は、一体で構成してもよいし、別体で構成してもよい。以下、発明3の放射線量情報管理システムにおいて同じである。
【0013】
また、通知手段は、放射線量情報を通知するようになっていればどのような構成であってもよく、例えば、視覚、聴覚、嗅覚、味覚及び触覚のいわゆる五感で知覚可能な通知方法により放射線量情報を通知することができる。この通知方法としては、例えば、発光、表示、印刷、発音、音声出力、振動又は発熱等を採用することができる。その他、メール送信又は通信等の通知方法を採用することもできる。以下、発明3の放射線量情報管理システムにおいて同じである。
【0014】
また、通知手段で通知する放射線量情報は、単位時間当たりの放射線量情報及び積算放射線量情報を含む概念である。以下、発明3の放射線量情報管理システムにおいて同じである。
【0015】
また、取得手段は、積算放射線量を取得するようになっていればどのような構成であってもよく、例えば、入力装置等から積算放射線量を入力するようになっていてもよいし、外部の端末等から積算放射線量を獲得又は受信するようになっていてもよいし、記憶装置や記憶媒体等から積算放射線量を読み取るようになっていてもよい。したがって、取得には、少なくとも入力、獲得、受信及び読出が含まれる。以下、取得の概念については同じである。
【0016】
また、電子式線量計及びガラス線量計は、本発明の構成要素ではない。以下、発明3の放射線量情報管理システムにおいて同じである。
【0017】
また、本システムは、単一の装置、端末その他の機器として実現するようにしてもよいし、複数の装置、端末その他の機器を通信可能に接続したネットワークシステムとして実現するようにしてもよい。後者の場合、各構成要素は、それぞれ通信可能に接続されていれば、複数の機器等のうちいずれに属していてもよい。以下、発明3の放射線量情報管理システムにおいて同じである。
【0018】
〔発明2〕 さらに、発明2の放射線量情報管理システムは、発明1の放射線量情報管理システムにおいて、前記記憶手段の積算放射線量情報を取得する放射線量情報取得手段と、前記放射線量情報取得手段で取得した積算放射線量情報から得られる積算放射線量と、前記取得手段で取得した積算放射線量とが所定関係を満たしているかを判定する判定手段とを備える。
【0019】
このような構成であれば、測定の適否を確認する場合は、取得手段により、ガラス線量計が受けた積算放射線量が取得され、放射線量情報取得手段により、記憶手段の積算放射線量情報が取得される。そして、判定手段により、放射線量情報取得手段で取得された積算放射線量情報から得られる積算放射線量と、取得手段で取得された積算放射線量とが所定関係を満たしているかが判定される。
【0020】
ここで、所定関係を満たすこととしては、例えば、放射線量情報取得手段で取得した積算放射線量情報から得られる積算放射線量(この段落において「第1積算放射線量」という。)と、取得手段で取得した積算放射線量(この段落において「第2積算放射線量」という。)とが一致していること、第1積算放射線量を用いて所定演算式により演算を行った結果と第2積算放射線量とが一致していること、第2積算放射線量を用いて所定演算式により演算を行った結果と第1積算放射線量とが一致していること、第1積算放射線量を用いて所定演算式により演算を行った結果と第2積算放射線量を用いて所定演算式により演算を行った結果とが一致することが挙げられる。また、第1積算放射線量と第2積算放射線量との差分が所定以下又は所定範囲内であること、第1積算放射線量を用いて所定演算式により演算を行った結果と第2積算放射線量との差分が所定以下又は所定範囲内であること、第2積算放射線量を用いて所定演算式により演算を行った結果と第1積算放射線量との差分が所定以下又は所定範囲内であること、第1積算放射線量を用いて所定演算式により演算を行った結果と第2積算放射線量を用いて所定演算式により演算を行った結果との差分が所定以下又は所定範囲内であることが挙げられる。以下、発明3の放射線量情報管理システムにおいて同じである。
【0021】
〔発明3〕 さらに、発明3の放射線量情報管理システムは、電子式線量計及びガラス線量計を備えるハイブリッド線量計の放射線量情報管理システムであって、前記電子式線量計は、記憶手段と、放射線量を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した放射線量に基づいて放射線量情報を通知する通知手段と、前記測定手段で測定した放射線量に基づいて積算放射線量情報を前記記憶手段に記録する第1記録手段とを備え、前記ガラス線量計が受けた積算放射線量を取得する取得手段と、前記記憶手段の積算放射線量情報を取得する放射線量情報取得手段と、前記放射線量情報取得手段で取得した積算放射線量情報から得られる積算放射線量と、前記取得手段で取得した積算放射線量とが所定関係を満たしているかを判定する判定手段とを備える。
【0022】
このような構成であれば、電子式線量計では、放射線を受けると、測定手段により、放射線量が測定され、通知手段により、測定された放射線量に基づいて放射線量情報が通知される。また、第1記録手段により、測定された放射線量に基づいて積算放射線量情報が記憶手段に記録される。
【0023】
また、ガラス線量計では、放射線を受けると、受けた放射線量に応じた積算放射線量情報が記録される。
【0024】
測定の適否を確認する場合は、取得手段により、ガラス線量計が受けた積算放射線量が取得され、放射線量情報取得手段により、記憶手段の積算放射線量情報が取得される。そして、判定手段により、放射線量情報取得手段で取得された積算放射線量情報から得られる積算放射線量と、取得手段で取得された積算放射線量とが所定関係を満たしているかが判定される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、発明1の放射線量情報管理システムによれば、電子式線量計では、測定された放射線量に基づいて放射線量情報が通知されるので、放射線量情報の把握が容易となるという効果が得られる。また、電子式線量計に破損や故障等が生じた場合は、交換した新たな電子式線量計において、ガラス線量計が受けた積算放射線量に基づいて積算放射線量情報が復元されるので、破損や故障等に対する信頼性を向上することができるという効果が得られる。
【0026】
さらに、発明2又は3の放射線量情報管理システムによれば、電子式線量計の積算放射線量とガラス線量計の積算放射線量とが所定関係を満たしている場合は、2系統での測定が適正に行われていることを確認することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施の形態に係るシステムの全体構成の概要を示す図である。
【
図2】演算部14で実行されるパルス演算処理を示すフローチャートである。
【
図3】演算部14で実行される放射線量演算処理を示すフローチャートである。
【
図4】演算部14で実行される復元処理を示すフローチャートである。
【
図5】判定部34で実行される適正判定処理を示すフローチャートである。
【
図6】電子式線量計220の積算パルス数を定期的にサーバ等に記録する場合の復元方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず、本実施の形態に係るシステムの構成を説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係るシステムの全体構成の概要を示す図である。
被曝放射線量評価対象者200は、
図1に示すように、ハイブリッド線量計210をストラップ等で首から提げ、常時携行している。ハイブリッド線量計210は、電子式線量計220及びガラス線量計230を対にしてストラップ等で連結したものである。ここで、被曝放射線量評価対象者200は、狭義には放射能汚染の可能性のある地域又は施設に居住又は滞在した者を指すが、被曝放射線量評価対象者200が識別カード等を所持することにより、差別等を受けることがないように、また、対照群として機能するように、放射能汚染の可能性のない地域の住民も対象者に含めてもよい。ハイブリッド線量計210は、ハイブリッド線量計210が受けた放射線量を測定するものであって、被曝放射線量評価対象者200が密着携行していることから、ハイブリッド線量計210で測定した放射線量は、被曝放射線量評価対象者200が被曝した被曝放射線量と同等であるとみなすことができる。ハイブリッド線量計210は、放射線量を測定することができればどのような方式・構造のものであってもよく、例えば、公知の線量計を採用することができる。電子式線量計220には、ガイガーミュラー管式、pinフォトダイオード式、シンチレーション式、半導体検出方式を含む。ガラス線量計230には、蛍光ガラス線量計、フィルム線量計、熱ルミネンス線量計、物質が受けた放射線量に比例して変化し、放射線量を蓄積させる線量計を含む。
【0030】
次に、電子式線量計220の構成を説明する。
電子式線量計220は、例えば、電池等の電源で駆動する個人線量計として構成することができる。電子式線量計220は、
図1に示すように、放射線量を測定する測定部10と、積算放射線量情報を記憶する記憶部12と、測定部10で測定した放射線量に基づいて積算放射線量を演算する演算部14と、演算部14での演算で得られた放射線量に基づいて放射線量情報を表示する表示部16と、ガラス線量計230が受けた積算放射線量を取得する放射線量取得部18と、記憶部12の積算放射線量情報を出力する出力部20とを有して構成されている。
【0031】
測定部10は、例えば、pinフォトダイオードからなるサーベイメータとして構成することができ、放射線を受けると、放射線を検出したことを示すパルス(以下、「測定パルス」という。)を出力する。
【0032】
記憶部12は、例えば、不揮発性メモリとして構成することができ、積算放射線量情報として積算パルス数を記憶する。
【0033】
演算部14は、例えば、マイクロプロセッシングユニットとして構成することができ、測定部10から測定パルスを入力したときは、記憶部12の積算パルス数をカウントアップする。
【0034】
表示部16は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)として構成することができる。
【0035】
放射線量取得部18は、例えば、ガラス線量計リーダとして構成することができる。ガラス線量計230のガラスに紫外線を当てると、そのガラスで受けた積算放射線量に応じた光量の光を発光する現象(ラジオフォトルミネッセンス)を利用し、ガラス線量計230のガラスから光量を読み取り、読み取った光量に基づいて積算放射線量を算出する。
【0036】
出力部20は、例えば、USB(Universal Serial Bus)等のインターフェースとして構成することができ、記憶部12の積算パルス数を出力する。
【0037】
次に、演算部14の処理を説明する。
図2は、演算部14で実行されるパルス演算処理を示すフローチャートである。
【0038】
演算部14は、電源が投入されると、記憶部12において積算パルス数を記憶するための第1積算カウンタの値及び積算時間を記憶するための第2積算カウンタの値を初期化し、その後は、所定周期(例えば、200[ms])ごとに、
図2のフローチャートに示すパルス演算処理を実行する。
【0039】
演算部14では、パルス演算処理が実行されると、
図2に示すように、まず、ステップS100に移行する。
【0040】
ステップS100では、測定部10から測定パルスを入力したか否かを判定し、測定パルスを入力したと判定したとき(YES)は、ステップS102に移行して、第1積算カウンタの値をカウントアップすることにより積算パルス数を「1」カウントアップし、ステップS104に移行する。
【0041】
ステップS104では、測定パルス波形を表示部16に表示し、ステップS106に移行して、第1積算カウンタの値に基づいて積算パルス数を表示部16に表示し、ステップS108に移行して、第2積算カウンタの値に基づいて積算時間を表示部16に表示し、ステップS110に移行する。
【0042】
ステップS110では、第1積算カウンタの値に基づいて積算パルス数が所定以上であるか否かを判定し、所定以上であると判定したとき(YES)は、ステップS112に移行して、警告を表示部16に表示し、一連の処理を終了する。
【0043】
一方、ステップS110で、積算パルス数が所定以上でないと判定したとき(NO)、及びステップS100で、測定パルスを入力しないと判定したとき(NO)はいずれも、一連の処理を終了する。
【0044】
なお、第2積算カウンタの値は、所定周期(例えば、1[s])ごとにカウントアップする。
【0045】
図3は、演算部14で実行される放射線量演算処理を示すフローチャートである。
演算部14は、
図2のフローチャートに示すパルス演算処理と並列に、所定周期(例えば、1[s])ごとに、
図3のフローチャートに示す放射線量演算処理を実行する。
【0046】
演算部14では、放射線量演算処理が実行されると、
図3に示すように、まず、ステップS200に移行する。
【0047】
ステップS200では、単位時間当たり(例えば、現在から1分前まで)の積算パルス数[cpm]を取得し、ステップS202に移行して、取得した単位時間当たりの積算パルス数に所定の係数を乗じて単位時間当たりの放射線量[mSv/h]を算出し、ステップS204に移行して、算出した単位時間当たりの放射線量を表示部16に表示し、一連の処理を終了する。
【0048】
図4は、演算部14で実行される復元処理を示すフローチャートである。
演算部14は、所定周期(例えば、200[ms])ごとに、
図4のフローチャートに示す復元処理を実行する。復元処理の実行にあたっては、ガラス線量計230を放射線量取得部18にセットする。
【0049】
演算部14では、復元処理が実行されると、
図4に示すように、まず、ステップS300に移行する。
【0050】
ステップS300では、被曝放射線量評価対象者200が操作するための操作手段(不図示)等により積算放射線量情報の復元要求を入力したか否かを判定し、復元要求を入力したと判定したとき(YES)は、ステップS302に移行する。
【0051】
ステップS302では、放射線量取得部18によりガラス線量計230から積算放射線量を取得し、ステップS304に移行して、取得した積算放射線量に所定の係数を乗じて積算パルス数を算出し、ステップS306に移行して、算出した積算パルス数を第1積算カウンタに記録し、一連の処理を終了する。
【0052】
一方、ステップS300で、復元要求を入力しないと判定したとき(NO)は、一連の処理を終了する。
【0053】
次に、ガラス線量計230の構成を説明する。
ガラス線量計230は、例えば、蛍光ガラス線量計として構成することができる。ガラス線量計230は、銀活性化リン酸塩ガラス中での銀イオンの化学的変化を利用しているもので、放射線により生成した銀の二価イオン(Ag2+)又は銀粒子(Ag0)が作る蛍光中心が極めて安定しているので、積算放射線量情報の消失が年1%未満と極めて少ない。また、蛍光中心は、測定しても消滅せず、何度も繰り返し読み取ることができるので、測定の統計精度を上げ、安定した測定値を得ることができる。
【0054】
次に、検査装置240の構成を説明する。
検査装置240は、電子式線量計220及びガラス線量計230の2系統での測定が適正であるか否かを検査する装置であって、例えば、学校、病院、公共機関等に設置されるものである。
【0055】
検査装置240は、
図1に示すように、ガラス線量計230が受けた積算放射線量を取得する放射線量取得部30と、電子式線量計220から積算放射線量情報を入力する入力部32と、入力部32で入力した積算放射線量情報及び放射線量取得部30で取得した積算放射線量に基づいて適正判定を行う判定部34と、判定部34の判定結果に基づいて2系統での測定が適正又は不適正である旨を表示する表示部36とを有して構成されている。
【0056】
放射線量取得部30は、放射線量取得部18と同様に構成することができ、表示部36は、表示部16と同様に構成することができる。
【0057】
入力部32は、例えば、USB等のインターフェースとして構成することができ、出力部20から積算パルス数を入力する。
【0058】
判定部34は、例えば、マイクロプロセッシングユニットとして構成することができ、入力部32で入力した積算パルス数に相当する積算放射線量と、放射線量取得部30で取得した積算放射線量との差分が所定以下であるか否かを判定する。
【0059】
次に、判定部34の処理を説明する。
図5は、判定部34で実行される適正判定処理を示すフローチャートである。
【0060】
判定部34は、所定周期(例えば、200[ms])ごとに、
図5のフローチャートに示す適正判定処理を実行する。適正判定処理の実行にあたっては、電子式線量計220の出力部20と入力部32をケーブル等で接続し、ガラス線量計230を放射線量取得部30にセットする。
【0061】
判定部34では、適正判定処理が実行されると、
図5に示すように、まず、ステップS400に移行する。
【0062】
ステップS400では、放射線量取得部30によりガラス線量計230から積算放射線量を取得し、ステップS402に移行して、入力部32を介して電子式線量計220から積算パルス数を取得し、ステップS404に移行して、取得した積算パルス数に所定の係数を乗じて積算放射線量を算出し、ステップS406に移行する。
【0063】
ステップS406では、ステップS400で取得したガラス線量計230の積算放射線量と、ステップS404で算出した電子式線量計220の積算放射線量との差分が所定以下であるか否かを判定し、所定以下であると判定したとき(YES)は、ステップS408に移行する。
【0064】
ステップS408では、2系統での測定が適正である旨を表示部36に表示し、一連の処理を終了する。
【0065】
一方、ステップS406で、ガラス線量計230の積算放射線量と電子式線量計220の積算放射線量との差分が所定以下でないと判定したとき(NO)は、ステップS410に移行して、2系統での測定が不適正である旨を表示部36に表示し、一連の処理を終了する。
【0066】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
電子式線量計220では、放射線を受けると、測定部10により測定パルスが出力される。演算部14では、測定パルスを入力すると、積算パルス数がカウントアップされるとともに、測定パルス波形が表示部16に表示される。表示部16では、測定パルス波形の他に、積算パルス数及び積算時間などが表示される。また、操作手段等を操作することにより単位時間当たりの放射線量も表示される。そして、積算パルス数又は単位時間当たりの放射線量が所定以上となると、警告が表示される。
【0067】
ガラス線量計230では、ガラスで放射線を受けると、受けた放射線量に応じた積算放射線量情報が記録される。
【0068】
電子式線量計220に破損や故障等が生じた場合は、新たな電子式線量計220に交換する。そして、ガラス線量計230を放射線量取得部18にセットし、操作手段等により復元要求を入力すると、放射線量取得部18によりガラス線量計230から積算放射線量が取得され、取得された積算放射線量に基づいて積算パルス数が算出され、算出された積算パルス数が記憶部12に記録される。したがって、新たな電子式線量計220において、記憶部12の積算パルス数に相当する積算放射線量と、ガラス線量計230の積算放射線量が同一となるように積算放射線量情報が復元される。
【0069】
次に、2系統での測定の適否を確認する場合は、検査装置240において、電子式線量計220の出力部20と入力部32をケーブル等で接続し、ガラス線量計230を放射線量取得部30にセットすると、放射線量取得部30によりガラス線量計230から積算放射線量が取得され、入力部32を介して電子式線量計220から積算パルス数が取得される。そして、取得された積算パルス数に基づいて積算放射線量が算出され、ガラス線量計230の積算放射線量と、電子式線量計220の積算放射線量との差分が所定以下であるか否かが判定される。その結果、差分が所定以下であると判定されると、2系統での測定が適正である旨が表示部36に表示される。これに対し、差分が所定以下でないと判定されると、2系統での測定が不適正である旨が表示部36に表示される。
【0070】
このようにして、本実施の形態では、電子式線量計220は、放射線量を測定する測定部10と、記憶部12と、測定部10で測定した放射線量に基づいて積算放射線量情報を記憶部12に記録する演算部14と、測定部10で測定した放射線量に基づいて放射線量情報を表示する表示部16と、ガラス線量計230が受けた積算放射線量を取得する放射線量取得部18とを備え、演算部14は、復元要求を入力したときは、放射線量取得部18で取得した積算放射線量に基づいて記憶部12の積算放射線量情報を復元する。
【0071】
これにより、電子式線量計220では、測定された放射線量に基づいて放射線量情報が表示されるので、放射線量情報の把握が容易となる。また、電子式線量計220に破損や故障等が生じた場合は、交換した新たな電子式線量計220において、ガラス線量計230が受けた積算放射線量に基づいて積算放射線量情報が復元されるので、破損や故障等に対する信頼性を向上することができる。
【0072】
さらに、本実施の形態では、検査装置240は、ガラス線量計230が受けた積算放射線量を取得する放射線量取得部30と、記憶部12の積算放射線量情報を取得する入力部32と、入力部32で取得した積算放射線量情報から得られる積算放射線量と、放射線量取得部30で取得した積算放射線量との差分が所定以下であるかを判定する判定部34とを備える。
【0073】
これにより、電子式線量計220の積算放射線量とガラス線量計230の積算放射線量との差分が所定以下である場合は、2系統での測定が適正に行われていることを確認することができる。電子式線量計220の放射線量(瞬間値)とガラス線量計230の積算放射線量とを常に、または1時間ごと、または24時間ごと、またはガラス線量計から信頼できる測定値を得られる期間ごとに比較する構成とすれば、電子式線量計220の放射線量(瞬間値)が合っているかどうかを判定することができる。その結果、瞬間値、または積算放射線量が合っていないと判定した場合は、電子式線量計220の故障等を発見することができ、信頼性が向上する。また瞬間値によるアラームの信頼性も向上することができる。
【0074】
本実施の形態において、測定部10は、発明1又は3の測定手段に対応し、記憶部12は、発明1乃至3の記憶手段に対応し、表示部16は、発明1又は3の通知手段に対応し、演算部14は、発明1若しくは3の第1記録手段、又は発明1の第2記録手段に対応している。また、放射線量取得部18、30は、発明1乃至3の取得手段に対応し、入力部32は、発明2又は3の放射線量情報取得手段に対応し、判定部34は、発明2又は3の判定手段に対応している。
【0075】
〔他の実施の形態〕
なお、上記実施の形態においては、新たな電子式線量計220において、記憶部12の積算パルス数に相当する積算放射線量と、ガラス線量計230の積算放射線量が同一となるように積算放射線量情報を復元するように構成したが、これに限らず、電子式線量計220の積算パルス数を定期的にサーバ等に記録する場合は、次のような構成を採用することもできる。
【0076】
図6は、電子式線量計220の積算パルス数を定期的にサーバ等に記録する場合の復元方法を説明するための図である。
【0077】
図6では、4/1において、電子式線量計220及びガラス線量計230による測定を同時に開始する。サーバには、電子式線量計220の積算パルス数を月初に送信し記録することにした場合、5/1において、4/1から4/30までの積算パルス数がサーバに記録される。そして、5/20(午前0時)において、電子式線量計220が破損したとする。この場合、新たな電子式線量計220に交換する。そして、ガラス線量計230を放射線量取得部18にセットし、操作手段等により復元要求を入力すると、サーバから4/1から4/30までの積算パルス数(A)が取得される。積算パルス数(A)は、例えば、1.0[mSv]に相当するものとする。次に、放射線量取得部18によりガラス線量計230から積算放射線量(例えば、1.5[mSv])が取得される。これは、4/1から5/19までの積算放射線量であるので、ガラス線量計230より取得された積算放射線量から、積算パルス数(A)に相当する積算放射線量を減算することにより5/1から5/19までの積算放射線量が算出され、算出された積算放射線量に基づいて積算パルス数(B)が算出される。積算パルス数(B)は、例えば、0.5[mSv]に相当する。そして、記憶部12には、積算パルス数(A)と積算パルス数(B)を加算した値が記録される。このような構成であっても、結果として、新たな電子式線量計220において、記憶部12の積算パルス数に相当する積算放射線量と、ガラス線量計230の積算放射線量が同一となるように積算放射線量情報が復元される。
【0078】
また、上記実施の形態並びにその変形例においては、放射線量取得部18及び演算部14の復元処理に係る機能を電子式線量計220に内蔵したが、これに限らず、ガラス線量計230若しくは検査装置240に内蔵し、又はその他の装置として構成することもできる。
【0079】
また、上記実施の形態並びにその変形例においては、放射線量取得部30、入力部32、判定部34及び表示部36を検査装置240として構成したが、これに限らず、電子式線量計220又はガラス線量計230に内蔵することもできる。電子式線量計220に内蔵する場合、放射線量取得部18、30は一つでよい。
【0080】
また、上記実施の形態並びにその変形例においては、判定部34の判定結果に基づいて2系統での測定が適正又は不適正である旨を表示するように構成したが、これに限らず、判定部34の判定結果に基づいて他の処理を行うように構成することもできる。他の処理としては、例えば、電子式線量計220の積算放射線量とガラス線量計230の積算放射線量との差分が所定以下である場合は、両者の平均値をデータベースに記録し、差分が所定以下でない場合は、ガラス線量計230の積算放射線量をデータベースに記録するなどの処理が考えられる。
【符号の説明】
【0081】
200…被曝放射線量評価対象者、 210…ハイブリッド線量計、 220…電子式線量計、 10…測定部、 12…記憶部、 14…演算部、 16…表示部、 18…放射線量取得部、 20…出力部、 230…ガラス線量計、 240…検査装置、 30…放射線量取得部、 32…入力部、 34…判定部、 36…表示部