IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040428
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020231
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2022065139の分割
【原出願日】2017-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】石田 智之
(72)【発明者】
【氏名】神谷 寿
(72)【発明者】
【氏名】小佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(57)【要約】
【課題】作業性の向上を図ること。
【解決手段】走行車体を操舵操作する操舵部材と、走行車体の位置座標を取得する位置情報取得装置と、操舵部材を作動させて走行車体を自動走行させる自動走行装置と、各部の制御を行う制御装置とを備える作業車両において、圃場の一点で登録される第1基準位置と該圃場の他点で登録される第2基準位置を登録することができ、第1基準位置と第2基準位置を結んだ線が、走行の基準となる走行基準データであり、自動走行の入り切り操作を行う操作部を設け、操作部はレバー部材であり、走行基準データが登録されている場合、前記レバー部材を一方側へ操作すると前記自動走行が「入」になり、第2基準位置を登録する際に、第1基準位置を取得した位置からの距離が所定距離未満であるときは、第2基準位置を登録しないことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体を操舵操作する操舵部材と、
前記走行車体の位置座標を取得する位置情報取得装置と、
前記操舵部材を作動させて前記走行車体を自動走行させる自動走行装置と、各部の制御を行う制御装置とを備える作業車両において、
圃場の一点で登録される第1基準位置と該圃場の他点で登録される第2基準位置を登録することができ、
前記第1基準位置と前記第2基準位置を結んだ線が、走行の基準となる走行基準データであり、
前記自動走行の入り切り操作を行う操作部を設け、
前記操作部はレバー部材であり、
前記走行基準データが登録されている場合、前記レバー部材を一方側へ操作すると前記自動走行が「入」になり、
前記第2基準位置を登録する際に、前記第1基準位置を取得した位置からの距離が所定距離未満であるときは、前記第2基準位置を登録しないことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記レバー部材を他方側へ所定時間操作すると、前記登録した第1基準位置と第2基準位置を結んだ線を削除することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記走行車体に装着され、圃場で作業を行う作業装置を備え、
前記位置情報取得装置により、圃場における作業の最終工程である枕地作業であることを認識すると前記登録した第1基準位置と第2基準位置を結んだ線を削除することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、走行車体で圃場内を走行しながら走行車体に装着された作業装置で対地作業を行う作業車両には、作業開始と作業終了の位置情報を作業装置が入切されたときに取得し、取得した作業開始位置および作業終了位置から基準線を作成し、作成した基準線に沿ってハンドルを自動操舵する機能を有するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる作業車両では、作業装置が入切された位置を作業開始位置および作業終了位置として取得するため、作業開始位置および作業終了位置を取得する操作が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-21890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の作業車両は基準線を作成する工程で、誤操作する可能性があることを考慮していない。
【0006】
たとえば、作業者が意図せず自動直進設定部材に触れ基準線が短くなる問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業性の向上を図ることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の作業車両は、走行車体(2)を操舵操作する操舵部材(35)と、前記走行車体(2)の位置座標を取得する位置情報取得装置(200)と、前記操舵部材(35)を作動させて前記走行車体(2)を自動走行させる自動走行装置(205)と、各部の制御を行う制御装置(100)とを備える作業車両(1)において、圃場の一点で登録される第1基準位置(A)と該圃場の他点で登録される第2基準位置(B)を登録することができ、前記第1基準位置(A)と前記第2基準位置(B)を結んだ線が、走行の基準となる走行基準データであり、前記自動走行の入り切り操作を行う操作部を設け、前記操作部はレバー部材であり、前記走行基準データが登録されている場合、前記レバー部材を一方側へ操作すると前記自動走行が「入」になり、前記第2基準位置(B)を登録する際に、前記第1基準位置(A)を取得した位置からの距離が所定距離未満であるときは、前記第2基準位置(B)を登録しないことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の作業車両は、請求項1に記載の作業車両において、前記レバー部材を他方側へ所定時間操作すると、前記登録した第1基準位置(A)と第2基準位置(B)を結んだ線を削除することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の作業車両は、請求項1または2に記載の作業車両において、前記走行車体に装着され、圃場で作業を行う作業装置を備え、前記位置情報取得装置(200)により、圃場における作業の最終工程である枕地作業であることを認識すると前記登録した第1基準位置(A)と第2基準位置(B)を結んだ線を削除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る作業車両によれば、自動直進走行基準の登録や削除における作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、作業車両の左側面図である。
図2図2は、作業車両の平面図である。
図3図3は、走行車体の構成を示す要部平面図である。
図4図4は、操舵部材を含む操縦部の構成を示す要部背面図である。
図5A図5Aは、操舵部材の自動操舵装置の構成を示す要部背面図である。
図5B図5Bは、操舵部材の自動操舵装置の構成を示す要部左側面図である。
図6図6は、各種制御に関連する部材を示す機能ブロック図である。
図7図7は、取得した位置座標を補正する制御を示すフローチャートである。
図8図8は、自動操舵装置による自動直進制御を示すフローチャートである。
図9図9は、自動直進設定部材の操作による第1基準位置および第2基準位置の取得と自動直進制御の入切を示すフローチャートである。
図10図10は、第1基準位置および第2基準位置の消去操作を示すフローチャートである。
図11図11は、第1基準位置取得後のハンドル操作により第1基準位置を消去する制御を示すフローチャートである。
図12図12は、第1基準位置、第2基準位置、基準線および目標位置を示す模式作業説明図である。
図13図13は、圃場の枕地走行により第1基準位置、第2基準位置および基準線を消去する制御を示すフローチャートである。
図14図14は、基準線を自動消去する制御を示すフローチャート(その1)である。
図15図15は、基準線を自動消去する制御を示すフローチャート(その2)である。
図16図16は、基準線を自動消去する制御を示すフローチャート(その3)である。
図17図17は、基準線を自動消去する制御を示すフローチャート(その4)である。
図18図18は、作業車両の他の例を示す左側面図である。
図19A図19Aは、アンテナフレームの説明図(その1)である。
図19B図19Bは、アンテナフレームの説明図(その2)である。
図20A図20Aは、アンテナフレームの正面図である。
図20B図20Bは、アンテナフレームの斜視図である。
図20C図20Cは、アンテナフレームの下方よりの斜視図である。
図21図21は、モニタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1および図2を参照して実施形態に係る作業車両(苗移植機)1の全体構成について説明する。図1は、作業車両(苗移植機)1の左側面図である。図2は、作業車両(苗移植機)1の平面図である。なお、図2においては、説明の便宜上、車輪(前輪、後輪)などを省略している。また、以下では、作業車両1として、圃場内を走行しながら、圃場に苗を植え付ける苗移植機を例に説明する。
【0015】
また、以下の説明において、前後方向とは、作業車両(以下、苗移植機という)1の直進時における進行方向であり、進行方向前方側を「前」、後方側を「後」と規定している。なお、苗移植機1の進行方向とは、直進時において、操縦席41から操舵部材(以下、ハンドルという)35に向かう方向である(図1参照)。
【0016】
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定している。すなわち、作業者(操縦者ともいう)が操縦席41に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。また、上下方向と
は、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交している。
【0017】
なお、これらの方向は、説明をわかりやすくするために便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、苗移植機1を指して機体という場合がある。
【0018】
実施形態に係る作業車両として図2に示す乗用型の苗移植機1は8条植えの構成であるが、かかる構成を異なる植付条数の田植機に用いても構わない。苗移植機1は、図1および図2に示すように、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して、苗タンク53から苗を取って複数の苗植付装置55で圃場に苗を植え付ける苗植付部や、種子を供給する播種装置等、あるいは圃場を耕耘するロータリ等の作業装置4を昇降可能に設け、該走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分を配置している。
【0019】
まず、走行車体2を構成するメインフレーム15について説明する。図3に示すように、該メインフレーム15は、機体前部の前側梁フレーム16と、機体後部の後側梁フレーム17と、該前側梁フレーム16と後側梁フレーム17の前後間に中央梁フレーム18を設け、該前側梁フレーム16と中央梁フレーム18を左右一対の前側連結フレーム19,19で連結すると共に、該中央梁フレーム18と後側梁フレーム17を左右一対の後側連結フレーム20,20で連結する。
【0020】
なお、前側梁フレーム16と中央梁フレーム18と後側梁フレーム17は左右方向を長手方向とし、前側連結フレーム19と後側連結フレーム20は前後方向を長手方向とする。該左右の前側連結フレーム19,19と後側連結フレーム20,20の左右間隔は略同じ間隔とする。また、前記中央梁フレーム18と後側梁フレーム17の左右長さは前側梁フレーム16の左右長さよりも長く構成する。なお、左右の前側連結フレーム19,19と後側連結フレーム20,20は中央梁フレーム18の下部で溶接するものであるので、左右の前側連結フレーム19,19と後側連結フレーム20,20を一体の金属製の角材で構成してもよい。
【0021】
前記前側梁フレーム16と中央梁フレーム18と左右の前側連結フレーム19,19が形成する空間部には、左右の前輪10,10や後輪11,11、作業装置4等に駆動力を伝動するミッションケース13と、エンジン30から供給される駆動力を該ミッションケース13に出力する油圧式の無段変速装置(HST)14を設ける。そして、前記後側梁フレーム17の後部に、左右の持上フレーム21,21を左右の後側連結フレーム20,20の左右間隔よりも狭い間隔で且つ後方に突出させて設け、該左右の持上フレーム21,21の下部に後部支持フレーム22を装着する。
【0022】
該後部支持フレーム22の左右両側には、走行車体2の左右の後輪11,11を各々駆動させる後輪伝動ケース11a,11aを設け、該後部支持フレーム22の上部には、前記昇降リンク機構3を支持する左右のリンクフレーム23,23を上方に向けて設ける。
【0023】
前記昇降リンク機構3は、左右のリンクフレーム23,23の下部側で且つ左右間に左右一対のロワリンクアーム24,24を設け、該左右のロワリンクアーム24,24の左右間に昇降シリンダ25を設けると共に、該昇降シリンダ25の上方にアッパリンクアーム26を設けて構成する。なお、該左右のロワリンクアーム24,24と昇降シリンダ25とアッパリンクアーム26の走行車体2とは反対側の端部は、作業装置4の機体前側に装着する。
【0024】
さらに、前記中央梁フレーム18の左右両端部の前方と左右の前側連結フレーム19,19の左右外側に、走行車体2の左右の前輪10,10に各々伝動する前輪伝動ケース1
0a,10aを各々設けると共に、該中央梁フレーム18と後側梁フレーム17の左右端部を左右の延長フレーム27,27で各々連結する。該左右の延長フレーム27,27は前後方向を長手方向とする。
【0025】
また、前記中央梁フレーム18と後側梁フレーム17と後部支持フレーム22の下部に前後方向の中央連結フレーム28を設け、前記中央梁フレーム18と後側梁フレーム17の前後間で且つ左右の後側連結フレーム20,20の左右間にエンジン30を支持する前後の支持プレート29,29を設ける。
【0026】
該前後の支持プレート29,29には、中央連結フレーム28の左右両側でエンジン30を受ける受けプレート29aが各々設けられている。そして、前記前後の支持プレート29,29の左右両側に、後側梁フレーム17の下方を通過して後方に突出する左右の補助フレーム31,31を設け、該左右の補助フレーム31,31の後部を左右方向の後部補助フレーム32で連結する。なお、該左右の補助フレーム31,31の後端部は、前記左右の後輪伝動ケース11a,11aに連結する。
【0027】
上記により、メインフレーム15が構成される。該メインフレーム15のうち、前側梁フレーム16から後側梁フレーム17までの前後幅、および左右の前側連結フレーム19,19および後側連結フレーム20,20の左右幅を、作業者が搭乗するフロアステップ33で覆う。該フロアステップ33は一体形成して強度を向上させたり部品数を減らしたりするものや、前側と後側、左側と右側で各々分割可能に構成し、着脱を容易にするものを用いる。
【0028】
上記では、図3に示すように、前記中央梁フレーム18と後側梁フレーム17の左右両側端部の周辺と、左右の延長フレーム27,27がフロアステップ33に覆われず、露出する。このとき、前記フロアステップ33を拡大してメインフレーム15の全体を覆う構成としてもよいが、大きさや植付作業条数の異なる機体間でのフロアステップ33の共用化を図るべく、フロアステップ33の左右両側に、左右の延長ステップ34,34を各々配置する構成とする。
【0029】
上記構成により、メインフレーム15は複数のフレーム構成体を連結して構成しているので、従来に比べて強度の向上が図られている。また、エンジン30を搭載する前後の支持プレート29,29の下部に中央連結フレーム28を配置すると共に、前後の支持プレート29,29を左右の後部補助フレーム32,32と連結したことにより、重量物であるエンジン30を強固に保持することができる。
【0030】
前記走行車体2の前側には、図1および図2に示すように、上部に機体を操舵するハンドル35、無段変速装置14や作業装置4を操作する変速操作レバー36、走行車体2の走行伝動を切り替える副変速切替装置(図示省略)を操作する副変速操作レバー37および機体各部の操作を行う操縦パネル38を上部に備えるボンネット39を設ける。該ボンネット39の前側には開閉可能なフロントカバー40を設け、該フロントカバー40の内部には、燃料タンクやバッテリ、前記ハンドル35の操舵に前記左右の前輪10,10、および左右の前輪伝動ケース10a,10aの下部側を回動させる連動機構(図示省略)を内装する。
【0031】
また、前記フロントカバー40の前方には、作業装置4の作業状態や作業時に消費される作業資材の減少、および後述する自動操舵装置205の作動、非作動等の各種情報をLED等の点灯で表示するセンターマスコット70を設ける。該センターマスコット70は、たとえば、側面視において、機体下部側で且つ機体後側に配置される作業表示部71と、機体上部側で且つ機体前側に配置される自動直進表示部72で構成される。
【0032】
そして、前記ボンネット39よりも機体後側で、且つ前記エンジン30の上方に、エンジン30の上方および側方を覆うエンジンカバー30aを設け、該エンジンカバー30aの上部に作業者が着座する操縦席41を設ける。
【0033】
さらに、該操縦席41の後側で、具体的にはメインフレーム15の後端側に前記施肥装置5を積載する。該施肥装置5の駆動力は、左右の後輪伝動ケース11aの左右一側から施肥装置5に向かって配置される施肥伝動機構5aによって伝動される。
【0034】
前記ミッションケース13の前側には、前記左右の前輪伝動ケース10a,10aに伝動する前側伝動シャフト(図示省略)と、ミッションケース13の後部には、前記左右の後輪伝動ケース11a,11aに伝動する左右のドライブシャフト42,42を設ける。該左右のドライブシャフト42,42よりも伝動方向上手側には、左右のドライブシャフト42,42への伝動を入切するサイドクラッチ機構43,43が配置されており、前記ハンドル35を切操作して走行車体2を旋回操作させると、旋回内側に位置するサイドクラッチ機構43が切状態になり、旋回内側の後輪11への伝動を停止させる構成としている。
【0035】
図3に示すように、前記ミッションケース13の後側の左右中央付近に左右のクラッチ入切軸44,44を上下方向に設け、該左右のクラッチ入切軸44,44の上部に機体外側に向かうクラッチ入切アーム45,45を各々設ける。そして、前記操縦席41の前側下部で且つ左右一側には、左右のサイドクラッチ機構43,43を入切操作するサイドクラッチペダル43a,43aを設ける。
【0036】
また、図1および図2に示すように、作業装置4の下方には、圃場面に接地して滑走するセンターフロート62Cと左右のサイドフロート62L,62Rを設けると共に、該センターフロート62Cと左右のサイドフロート62L,62Rよりも機体前側に、圃場面の凹凸を整地する整地ロータ63を設ける。該整地ロータ63への駆動力は、左右一側の後輪伝動ケース11aに設ける整地伝動シャフト65により伝動される。また、左右一側の後輪伝動ケース11aには、整地ロータ63への伝動を入切する整地クラッチを設ける。
【0037】
前記センターフロート62Cには、該センターフロート62Cの回動角度を検知する回動ポテンショメータ64(図6参照)を設け、該回動ポテンショメータ64の回動角度が所定角度以上変化すると圃場の深さが変化したと判断し、制御装置100が前記昇降シリンダ25を伸縮させて昇降リンク機構3を上下回動させ、作業装置4の上下高さ、即ち作業位置を圃場の深さに対応させる構成とする。
【0038】
圃場内で前記作業装置4を用いて苗の植付や種子の播種作業、あるいは苗の生育後の追肥や除草等の作業を行うときは、圃場の一側から他側に向かって走行車体2を直進走行させることが一般的である。しかしながら、走行車体2は、圃場の耕盤の凹凸や表土の粘性により車輪が直進方向からずれた方向を向くと、次第にずれた方向に移動してしまうことがある。また、作業者の操縦技術によっては、走行車体2を直進方向に合わせられず、直進からずれた方向に移動させてしまうことがある。
【0039】
これにより、苗の植付や播種、除草や追肥等の作業軌跡が斜め方向になり、本来苗の植付や播種が可能な個所が空きスペースとなり、後から作業者が手作業で植付や播種を行う必要が生じ、作業者に余分な労力を生じさせることや、苗の植付条間や播種条間が作業装置4の条間よりも狭くなり、風通しが悪くなって病虫害が発生することがある。あるいは、除草作業や追肥作業等の、植付や播種の後工程の作業を行う際、苗を踏み潰してしまい、収量の低下を招くことや、苗を踏み潰さないように操縦することにより、作業能率を低下させる問題が生じることがある。
【0040】
これらの問題を解決するには、作業者の手によらず、走行車体2を自動操舵させ、直進走行姿勢を維持させる、いわゆる自動直進システムを搭載することが考えられる。
【0041】
まず、図1および図2に示すように、走行車体2に、位置情報取得装置としてのGPS(GNSS)アンテナ200を装着するアンテナフレーム201を設ける。該アンテナフレーム201は、前記メインフレーム15の前側に設ける左右のアンテナステー202,202に左右の基部を装着する、正面視で門型の前側フレーム201aと、該前側フレーム201aの左右中央部から機体後方に向かい、走行車体2の後側の左右中央部に向かう後側フレーム201bで構成する。なお、門型の該前側フレーム201aの空間部の後方には、前記ボンネット39や操縦席41が位置するものとする。
【0042】
また、前記アンテナフレーム201の上下高さは、機体中最も高くする。作業者がフロアステップ33上に立った状態で頭をぶつけることを防止しつつ、且つ受信精度を向上させるべく、アンテナフレーム201の上端部は、地表から2.5~3.5m程度に位置するものとする。これにより、作業者はフロアステップ33上を移動しやすく、作業能率が向上すると共に、GPSアンテナ200を地表から上方に離間させることができるので、受信精度の向上が図られる。
【0043】
該前側フレーム201aと後側フレーム201bの接続部付近には、前記GPSアンテナ200を装着する。なお、前側フレーム201aと後側フレーム201bの接続部は、ボンネット39と操縦席41の前後間附近であり、前記走行車体2の前後方向の中央部付近である。
【0044】
上記により、GPSアンテナ200の取付位置が機体の前後および左右方向の中央部付近になるので、取得される機体の座標が実際の機体の位置から離れたものとなりにくく、自動直進システムによる直進走行位置の設定が適切になり、作業精度が向上する。
【0045】
また、前側フレーム201aの空間部の後方に操縦席41が位置することにより、アンテナフレーム201が作業者の視界を遮ることを防止できるので、視認性が向上し、直進走行前の位置合わせが正確になると共に、機体前方の圃場の状態や障害物を早めに見つけられるので、作業者による手動操作に切り替えて安全且つ作業位置のずれを抑えることができる。なお、GPSアンテナ200は、単独測位方式、DGPS(相対測位)方式、RTK(干渉測位)方式等のうち、作業をする地域に適したものを用いるとよい。
【0046】
しかしながら、機体の傾斜や振動の影響によりGPSアンテナ200の地上高が変動すると、実際の機体位置と異なる座標位置が測定され、受信精度が低下すると共に、直進からずれた方向に機体が走行してしまう問題が生じる。
【0047】
これを防止すべく、図6に示すように、GPSアンテナ200に加えて、IMU(慣性計測装置)203を設ける。該IMU203は、走行車体2が傾斜姿勢になるときの地表からGPSアンテナ200までの高さと、傾斜していないときの地表からGPSアンテナ200までの高さの差に基づき、GPSアンテナ200が取得した位置座標を制御装置100に修正させるものである。
【0048】
なお、地表からGPSアンテナ200までの高さは、前記走行車体2の傾斜等の挙動を、IMU203に内蔵される三軸の加速度センサと角速度センサで計測して割り出すものとする。
【0049】
これに加えて、自動直進システムによる機体の走行方向が正しいかどうかをより確実に制御装置100に判定させるべく、方位センサ204を設ける。なお、このときの位置座標の補正については、図7のS101~S105に示すとおりである。これにより、機体の進路を計測される方位により定めることができるので、直進走行の精度がいっそう向上する。
【0050】
前記GPSアンテナ200が取得する位置情報は、IMU203と方位センサ204が検出する情報に基づき、制御装置100により補正される。そして、制御装置100は、現在の位置情報と先に取得されている位置情報を比較し、位置情報の相違が許容範囲を超えていると、機体を直進走行位置に戻すべく、左右の前輪10,10を左右方向に操舵させる。
【0051】
上記の左右の前輪10,10の操舵、あるいはクローラ等の信地旋回を自動化すべく、前記ハンドル35を操舵アクチュエータ206で回動させる自動操舵装置205を設ける。該自動操舵装置205は、図8のS201~S204に示すとおり、前記制御装置100が算出した現在の位置情報のX座標と、先に取得されている基準となる位置情報のX座標の差異に基づき、操舵アクチュエータ206の作動量が変動されることで、機体を直進走行位置に向かわせるべく、ハンドル35を左右に切ると共に、直進走行位置に来ると操舵アクチュエータ206を停止させてハンドル35の自動操舵を停止させるものである。
【0052】
なお、操舵アクチュエータ206は、電動や油圧式のモータ、あるいはシリンダで構成する。
【0053】
上記構成により、算出された位置情報のX座標の差異に合わせてハンドル35が自動的に操舵され、機体を直進走行位置に自動的に合わせることができるので、作業装置4による作業位置が左右方向にずれることが防止され、圃場内に作業が行われない箇所が発生しにくくなる。これにより、作業が行われなかった箇所に、後から人手で作業を行う必要が無くなり、作業者の労力が軽減される。
【0054】
また、前工程の作業条と現在の作業条の作業位置が重複することを防止できるので、苗、種子や肥料等の作業資材を余分に消費することが防止され、作業コストの低減が図られると共に、作業資材の過剰供給による生育不良の発生が防止される。
【0055】
なお、耕耘機を装着したトラクタや、苗移植機や播種機は、作業条の圃場端まで走行し、約180度旋回して次の作業条に移動する。旋回走行中に自動直進システムが作動していると、機体が直進走行すべき位置からずれていると判断して操舵アクチュエータ206を作動させ、旋回軌跡を乱すおそれがある。したがって、自動直進システムは、機体を旋回させる際にオフにする構成とする必要がある。ハンドル35を旋回操作すると自動直進システムがオフになる構成とすることも考えられるが、圃場の状態等によって機体の進行方向が大幅にずれたり、障害物を回避すべく作業者がハンドル35を旋回操作と同等以上に大きく操作したりした際に自動直進システムがオフになるので、作業者が直進途中で自動操舵システムを再度オンにせねばならず、作業者の手間が増えると共に、自動直進システムがオフになったことに気付かず、作業位置がずれたまま機体が走行し、作業精度が低下する問題が生じる。
【0056】
また、ハンドル35を旋回から直進に戻す操作で自動直進システムをオンにすることが考えられるが、旋回から直進に戻る際、次の作業条における直進位置に機体を合わせるには、細かいハンドル35の操舵操作を行う必要がある。この操作中に自動操舵システムがオンになっていると、機体が直進走行位置からずれたと制御装置100が判断すると操舵
アクチュエータ206が作動してしまい、機体の位置が本来直進走行すべき位置に合わせられなくなる問題がある。
【0057】
このような問題の発生を防止し、機体を適切な方向に直進走行させると共に、適切な区間で作動することが可能な自動直進システムについて、図6、および図8図11を用いて説明する。なお、走行車体2の前後進方向の位置座標をY座標とすると共に、走行車体2の前後進方向と直交する方向、即ち左右方向の位置座標をX座標とする。
【0058】
まず、走行車体2に、自動直進の開始点である圃場の一側と自動直進の終了点である圃場の他側の座標を取得させると共に、自動直進システムを入切する、自動直進設定部材207を設ける。該自動直進設定部材207は、上下方向、左右方向、押込状態と戻り状態など、少なくとも二方向に操作可能な部材を少なくとも一つ装着するか、あるいは二つ以上の操作部材を装着するものとする。
【0059】
本実施形態では、自動直進設定部材207として、図4に示すように、上下方向に操作可能なフィンガアップレバーを装着するが、トグルスイッチやプッシュスイッチ、ジョイスティック等を用いてもよい。これにより、部品点数の削減が図られると共に、基準位置(第1基準位置A、第2基準位置B)の取得操作と、自動操舵装置205の入切操作を、同じ側の片方の手で自動直進設定部材207を操作すればよいので、操作性が向上する。
【0060】
図4に示すように、該自動直進設定部材207を第1の方向W1、本実施形態では機体上方に向けて操作すると、操作された位置で前記GPSアンテナ200が取得され、IMU203と方位センサ204の検出結果を用いて制御装置100が算出した位置座標が記録される。なお、自動直進設定部材207の第1の方向W1への操作が、基準位置取得部材の操作に該当する。
【0061】
前記自動直進設定部材207を操作したとき、図9のS301~S302に示すとおり、他の位置座標の記録が無いときは、算出した位置座標を第1基準点Aとして記録し、該第1基準点Aが記録されているときは、算出した位置座標を第2基準点Bとして記録する。該第1基準点Aと第2基準点Bが記録されているときに前記自動直進設定部材207が操作された時は、位置座標を記録しない。
【0062】
なお、圃場内の作業途中で、自動直進が精度よく行えなくなった時等には、第1基準点Aおよび第2基準点Bを取得し直す必要があるので、図10(S401~S406)に示すように、このときは前記自動直進設定部材207を所定時間(たとえば、2~3秒)に亘って第1の方向W1に操作すると、記録されている第1基準点Aおよび第2基準点Bが消去される設定とするとよい。あるいは、操作すると第1基準点Aおよび第2基準点Bが削除される、記録消去用のボタン(図示省略)を設けてもよい。
【0063】
自動直進システムの直進走行の基準位置となる前記第1基準点Aおよび第2基準点Bは、距離が近いほどX座標のズレは小さいが、二点間の距離が短ければ、自動直進を用いなくてもおおよそ直進走行は可能である。また、二点間の距離が短くなるときは、作業者が意図せず自動直進設定部材207に触れてしまい、第2基準点Bを取得するという状況が考えられる。
【0064】
このような問題の発生を防止すべく、前記自動直進設定部材207を操作して第2基準点Bを取得する際、第1基準点Aを取得した位置からの距離が所定距離未満、たとえば、8~12m未満であるときは、制御装置100は第2基準点Bを削除し、記録させないものとする。その後、再度自動直進設定部材207が操作され、第1基準点Aを取得した位置からの距離が所定距離以上であれば、制御装置100は第2基準点Bを記録させるもの
とする。
【0065】
なお、図11(S501~S505)に示すように、第1基準点Aを取得した状態で、第2基準点Bを取得せずにハンドル35を所定時間内に所定量以上に操作し、走行車体2を旋回させたとき、制御装置100は、記録した第1基準点Aを削除する。その後、前記自動直進設定部材207が第1の方向W1に操作されると、制御装置100は、GPSアンテナ200により取得したその場所の位置座標を、第1基準点Aとして記録し、第1基準点AのY座標と第2基準点BのY座標を結ぶ線が直線状にならなくなることを防止する構成としてもよい。
【0066】
これにより、圃場の一端と他端の所定位置、たとえば、直進走行を終えて走行車体2が旋回を開始する位置と、旋回終了後に作業装置4を下降させて直進走行を開始する位置に第1基準点Aと第2基準点Bを設定することができ、作業装置4を下降させて直進走行する位置で自動直進システムを作動させ、作業位置が進行方向に対して左右方向にズレない、高精度な作業が可能になる。
【0067】
また、作業者の誤操作により第2基準点Bが実際に設定すべき位置と異なることを防止できるので、次の作業条で第1基準点Aと第2基準点Bを取得し直す必要が無く、自動直進を用いる作業条を増やし、圃場内の作業精度を一層向上させることができる。
【0068】
なお、圃場に入ってから最初に作業を行う作業条では、所定位置で自動直進設定部材207を第1の方向W1に操作して、上記の第1基準点Aと第2基準点Bを取得する作業が必須になるので、自動直進を用いず、作業者がハンドル35を操作して、機体を直進走行させることになる。
【0069】
上記のとおり、自動直進設定部材207の操作によって第1基準点Aと第2基準点Bを取得していると、該第1基準点Aと第2基準点Bの各Y座標を結んだ基準線Rが、自動直進の目安となる線となり、走行中の機体の位置座標のX座標が、自動直進の目安となる線のX座標と合致しているか否かを判定し、合致していなければ自動操舵装置205により合致する方向にハンドル35を自動操舵させることで、自動直進走行を実現することができる。
【0070】
上記の自動直進走行は、第1基準点Aと第2基準点Bが記録されている状態で、自動直進設定部材207を第2の方向W2、本実施形態では機体下方に向けて操作することで開始される。自動直進設定部材207を第2の方向W2に操作すると、制御装置100は、GPSアンテナ200が取得する位置座標のY座標と基準線RのY座標を比較し、前記操舵アクチュエータ206を作動させてハンドル35を左右方向に回転させ、走行車体2を直進走行すべき位置に移動させる制御を開始する。なお、自動直進設定部材207の第2の方向W2への操作が、入切部材の操作に該当する。
【0071】
この自動操舵制御は、前記ハンドル35が所定の時間内に走行車体2を旋回させる角度まで操作されるか、前記自動直進設定部材207が第2の方向W2に操作されると終了する。前記ハンドル35の操舵角度は、ハンドルポテンショメータ35aによって検知するものとする。なお、第1基準点Aまたは第2基準点BのY座標と一致する場所に走行車体2が到達すると、自動直進制御が終了される構成としてもよい。
【0072】
上記のとおり、自動直進制御は、ハンドル35を旋回操作するか、圃場端における旋回走行の開始地点付近に到達することで終了される。走行車体2が旋回走行する位置は、圃場端に近い位置であるので、自動直進制御に任せて作業者が操縦以外の作業を行っていると、旋回操作が遅れると予定外の位置に苗の植付が行われると共に、走行車体2が圃場端
まで移動してしまい、旋回を行う位置まで後進が必要になり、作業能率が低下する問題が生じる。なお、図12は、第1基準位置A、第2基準位置B、基準線R、および目標位置と現在の機体の位置を示す模式図である。
【0073】
このような問題を防止すべく、図6などに示すように、前記整地クラッチの入(作動)および切(停止)による整地ロータ63の入切を検知する作業検知センサ209を設け、該作業検知センサ209が整地ロータ63の入(作動)を検知したとき、制御装置100は、走行車体2の位置座標(X座標およびY座標)である、目標位置座標(終了基準位置)を取得する。なお、該目標位置座標は、制御装置100、あるいは制御装置100に付随するメモリ領域に、少なくとも二ヵ所分を同時に保持可能とする。
【0074】
なお、作業検知センサ209による目標位置座標(終了基準位置)の取得は、整地ロータ63の入切の代わりに、作業装置4の上昇または下降、作業装置4への伝動の入または切、ハンドル35の旋回開始操舵または旋回終了操舵等を条件として行う構成としてもよい。
【0075】
そして、位置座標を取得した作業条の次の作業条において、前記自動操舵装置205を作動させて走行車体2を自動直進走行させるとき、制御装置100は、GPSアンテナ200が取得する現在位置座標のY座標から、直前の作業条(直近の作業条)で取得した目標位置座標のY座標までの距離を逐次算出する。このとき、制御装置100は、目標位置座標のX座標を現在位置座標のX座標に補正する構成としてもよい。
【0076】
そして、現在位置座標から目標位置座標までの距離が所定距離、たとえば、8~12mになる報知位置に走行車体2が到達すると、走行車体2が圃場端に接近しており、前記自動直進設定部材207を第2の方向W2に操作して自動直進制御を終了させる必要があることを作業者に知らせるべく、ブザーやランプ、あるいは画面上に数値や文字を表示する、報知装置208が作動する構成とする。
【0077】
なお、該報知装置208に数値や文字を表示するのは、走行車体2に表示パネル(図示省略)を設ける構成や、作業者が持ち込む情報端末(スマートフォン、タブレット等)に情報を送信して表示させる構成が考えられる。
【0078】
また、目標位置座標を取得していない作業条においては、走行車体2と目標位置までの距離を算出できないので、作業者は目視で圃場端を確認し、自動直進制御が不要と判断した位置で自動直進設定部材207を操作する必要がある。
【0079】
現在位置座標から目標位置座標までの距離については、前記左右の後輪11,11への左右のドライブシャフト42,42の回転を検知する後輪回転センサ210,210を設け、前記整地ロータ63を入にした位置から該後輪回転センサ210,210が検知した回転数を元に、制御装置100が移動距離を算出し、該移動距離と整地ロータ63を入にした位置のY座標位置までの距離を算出し、所定距離以内であれば報知装置208を作動させる構成としてもよい。
【0080】
しかしながら、報知装置208が作動しても、作業者が気付いて自動直進制御を終了させなければ、走行車体2を適切な位置で旋回させることはできない。これに対応すべく、前記報知装置208が作動してから所定距離(たとえば、2~5m)に亘って、自動直進設定部材207が第2の方向W2に操作されることなく走行車体2が前進走行したとき、前記制御装置100は、前記無段変速装置14のトラニオン軸14aを回動させ、走行車体2を減速させる。
【0081】
あるいは、距離でなく、前記報知装置208が作動してから所定時間(たとえば、2~5秒間)に亘って、自動直進設定部材207が第2の方向W2に操作されることなく走行車体2が前進走行したとき、前記制御装置100は、前記無段変速装置14の出力を低下させ、走行車体2を減速させる。
【0082】
上記の走行車体2の減速は、前記無段変速装置14のトラニオン軸14aをトラニオンアーム(図示省略)を介して回動させるHSTサーボモータ211を作動させ、該トラニオン軸14aを減速側に回動させることによって行われる。
【0083】
これにより、圃場端に接近すると走行車体2の走行速度が低下するので、作業者に圃場端の旋回位置が近付いていることを認識させることができ、適切な軌跡で旋回走行が行える。したがって、作業装置4が、圃場の外周の四辺、所謂枕地で重複して対地作業を行い、余分に作業資材(苗、肥料、薬剤等)を消費することが防止される。
【0084】
また、旋回後に整地ロータ63を入にして整地作業を開始する位置を、旋回前に整地作業を終了した位置に合わせることができるので、整地ロータ63による整地作業が行われない箇所の発生、および作業装置4による対地作業が行われない箇所の発生が防止される。これにより、整地作業が行われなかった箇所について、苗の植付深さが乱れる、肥料の浸透具合が異なる、走行が乱れるといった問題の発生が防止されると共に、対地作業が行われなかった位置について、作業者が手作業で作業を行う必要がなく、作業者の労力が軽減される。
【0085】
上記の自動減速は、時間経過により走行速度が漸減するものとし、緩やかに減速される制御構成とすると、作業装置4による対地作業精度、および整地ロータ63の整地精度が低下することや、作業者が揺さぶられることが防止される。あるいは、自動減速の開始後、一回、または所定時間ごとに複数回、急激な減速を行う制御構成とすると、走行車体2の揺れにより、作業者が圃場端の接近に気付きやすくなる。
【0086】
また、自動減速制御が行われている所定時間(第2所定時間)内に、前記自動直進設定部材207を操作して自動直進制御を解除すると、制御装置100は、その時点の走行速度を維持する構成としてもよい。これにより、作業走行が停止しないので、圃場端での旋回走行に速やかに移行することができ、作業能率の低下が防止される。
【0087】
あるいは、予め設定されている走行速度、または自動減速が開始された時点での走行速度に変速すべく、制御装置100は、無段変速装置14のHSTサーボモータ211を作動させて、トラニオン軸14aを増速側に回動させる構成としてもよい。走行速度が自動的に増速されることにより、作業者が変速操作レバー36を操作して走行速度を増速する必要がなくなるので、操作性が向上する。
【0088】
なお、報知装置208の作動に加えて、上記の走行車体2の自動減速制御により、走行車体2が圃場端、具体的には圃場端付近の旋回位置を認識することが期待されるが、作業者が別の作業に没入している、あるいは作業者が失神する等して、走行速度の自動減速にも気付かない可能性は想定される。
【0089】
したがって、前記走行車体2の自動減速制御は、前記無段変速装置14が前進、後進のいずれの走行速度も増減させない中立状態になるまで行われる。このとき、前記エンジン30は停止させない。これにより、その場に走行車体2を停止させることができるので、圃場端、所謂畦に機体が接触するまで前進することが防止され、機体の破損や、作業復帰するべく機体を後進させる距離が抑えられる。
【0090】
圃場端への接近により走行車体2の走行が自動停止したとき、走行車体2の走行速度の増減、および前後進を操作する変速操作レバー36を中立位置に戻すと、制御装置100は無段変速装置14による走行速度の増減操作を受け付ける状態にする。その上で、前記変速操作レバー36を前進側に操作すると、走行車体2の走行が再開される。当然のことではあるが、前記副変速操作レバー37を中立位置に操作し、駆動力が走行系統に伝動されない状態では、副変速操作レバー37を走行伝動が行われる位置に操作するまで、走行は開始されない。
【0091】
上記の自動直進制御の基準となる、第1基準点Aと第2基準点B、および第1基準点Aと第2基準点Bを結ぶ基準線Rは、圃場の一端から他端に向かう直進作業走行、および圃場の他端から一端に直進作業走行する際に必要である。
【0092】
しかしながら、圃場の四辺、いわゆる枕地の作業走行は、直進作業走行であるものの、上記の直進作業走行と異なる進行方向になる作業辺が一辺は存在し、その作業辺では前記基準線Rを用いても、自動直進制御を行うことはできない。
【0093】
また、圃場の外において、機体を移送用のトラックの荷台等に移動させるときや、納屋などに収納する際に、誤って自動直進設定部材207を第2の方向W2に操作して自動操舵装置205を作動可能な状態にしていると、機体を移動させる際に基準線RのX座標と機体のX座標が不一致となり、直進走行位置からずれていると判断され、自動操舵装置205がハンドル35を自動操舵させることが起こり得る。これにより、機体の進路が本来走行すべき進路からずれた位置になり、機体の積み込みや収納作業に余分な手間が生じることになる。
【0094】
これを防止するための一例として、圃場から機体が退出する前に、第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを消去するという方法がある。図6および図13(S601~S606)に示すように、走行車体2が圃場の四辺のうち、直進作業走行する進行方向に直交する進行方向を少なくとも一辺含む、三辺の走行が行われると、枕地作業が行われたと判断して、制御装置100が第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除させる。
【0095】
枕地での走行車体2の進行方向は、GPSアンテナ200が取得する走行車体2の位置座標のうち、X軸座標またはY軸座標の変化が連続することで判定される。これにより、圃場内を機体が走行している間に第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除することができるので、圃場外に出てから自動直進設定部材207を操作しても自動直進が行われることがなく、予定の進行方向からずれた方向に走行することが防止され、作業能率の低下が防止されると共に、作業の安全性が向上する。
【0096】
また、機体を別の圃場に移動させたとき、第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rが記録されていないことにより、作業中の圃場に適さない基準線Rに基づき自動直進制御が行われることを防止できるので、自動直進の精度が向上する。
【0097】
なお、圃場外に移動したときは、短時間で移送用のトラックに移動させる、あるいは納屋に移動させるべく、前記副変速操作レバー37を走行ポジションに操作する。この走行ポジションへの副変速操作レバー37の操作を検知する副変速位置検知スイッチ37aを設け、副変速位置検知スイッチ37aが走行ポジションに副変速操作レバー37が操作されたことを検知すると、第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除する構成としてもよい。
【0098】
第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rの削除を、圃場内では使用しない走行ポ
ジションへの副変速操作レバー37の操作に基づき行うことにより、枕地走行時に第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rが削除されていないとき、確実に削除することができるので、走行車体2の移動や別の圃場の作業時に自動直進制御が行われることがなく、作業精度の低下が防止される。
【0099】
また、副変速操作レバー37の誤操作により、圃場内で誤って第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除することを防止できるので、第1基準点Aと第2基準点Bを取得し直す作業条で自動直進が使えなくなることが防止され、作業精度が向上する。あるいは、前記IMU203や、走行車体2の前後および左右方向の傾斜を検知する傾斜センサ212を用いて、走行車体2が所定角度以上(たとえば、10~15度)前上がり傾斜姿勢になると、制御装置100は、第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除する構成としてもよい。
【0100】
圃場から出る際、圃場の出入口を通過する走行車体2は、作業中には略なり得ない角度の前上がり傾斜姿勢になるので、この傾斜角度が検知されたときは、圃場から出るときであると判断できる。これにより、枕地走行時に第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rが削除されていないとき、確実に削除することができるので、走行車体2の移動や別の圃場の作業時に自動直進制御が行われることがなく、作業精度の低下が防止される。
【0101】
なお、圃場や作業の内容によっては、走行車体2を後進させて出入口から出ることも考えられるので、前上がり傾斜角度だけでなく、後上がり傾斜角度に基づき第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除する制御構成としてもよい。
【0102】
また、圃場における作業終了後、他の圃場に移動して作業する場合、他の圃場における作業開始時には前の圃場の作業で使用した基準線R(すなわち、走行基準データ)が残っていると、たとえば、誤って自動操舵機能を入(オン)にすると作業中の圃場に適さない方向に走行するため、作業性が低下してしまう。また、機体が走行する方向は作業者の意図しない方向でもあるため、作業者が余分な操作を強いられることになる。
【0103】
これを防止するために、制御装置100は、所定の条件が満たされた場合に、自動的に基準線Rを消去する制御を行う。これから説明する基準線Rの自動消去制御では、上記した自動消去制御よりもより正確に枕地を検知することが可能である。次に、図14図17を参照して、基準線Rの自動消去について説明する。図14図17は、基準線(走行基準データ)を自動消去する制御を示すフローチャートである。なお、制御装置100による以下の制御は、機体が圃場内で対地作業を行っている場合の制御である。
【0104】
図14に示すように、制御装置100は、機体(走行車体2)の自動直進走行を検知する(ステップS701)。制御装置100は、機体が自動直進走行である場合(ステップS701:Yes)、機体の直進走行以外の走行状態を検知手段によって検知する(ステップS702)。制御装置100は、機体の直進走行以外の走行状態を検知手段によって検知すると(ステップS702:Yes)、取得した基準線Rを消去する制御を行う(ステップS703)。
【0105】
なお、ステップS701の処理において、制御装置100が機体の自動直進走行を検知しない場合(ステップS701:No)、自動直進走行を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS702の処理において、制御装置100が機体の直進走行以外の走行状態を検知しない場合(ステップS702:No)、直進走行以外の走行状態を検知するまでこの処理を繰り返す。
【0106】
かかる構成によれば、検知手段により機体の直進走行以外として設定された走行状態が
検知されると基準線Rを消去することで、他の圃場における作業で前の圃場の基準線Rを使用することがないため、作業中の圃場に適さない方向や作業者の意図しない方向に向けて自動操舵がはたらくのを防止することができる。これにより、作業性を向上させると共に、余分な操作の発生を防止して省力化を図ることができる。
【0107】
また、制御装置100は、たとえば、基準線Rからの機体のずれ角を検出することで、機体の直進走行以外の走行状態を検知する。この場合、制御装置100は、検知手段が基準線Rから所定値(たとえば、45度)以上のずれ角を検知した場合に上記した走行状態として判断する。
【0108】
この場合、図15に示すように、制御装置100は、機体が自動直進走行である場合(ステップS801:Yes)、基準線Rに対する所定値以上のずれ角を検知手段によって検知する(ステップS802)。制御装置100は、基準線Rに対する所定値以上のずれ角を検知手段によって検知すると(ステップS802:Yes)、取得した基準線Rを消去する制御を行う(ステップS803)。
【0109】
なお、ステップS801の処理において、制御装置100が機体の自動直進走行を検知しない場合(ステップS801:No)、自動直進走行を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS802の処理において、制御装置100が所定値以上のずれ角を検知しない場合(ステップS802:No)、直進走行以外の走行状態を検知するまでこの処理を繰り返す。
【0110】
また、制御装置100は、圃場において取得した基準線R以外にも、第1基準位置Aと第2基準位置Bとを消去してもよい。
【0111】
なお、基準線Rからの機体の所定値以上のずれ角を検知する検知手段としては、GPSアンテナ200で取得する位置情報から走行経路を割り出して判定する手段の他、方位センサ204、傾斜センサ212(図6参照)などを用いることができる。
【0112】
かかる構成によれば、基準線Rに対する機体の所定値以上のずれ角を検知することで、たとえば、圃場における植付作業の最終工程である圃場内の外縁を植える作業、いわゆる枕地植え作業を認識することができる。枕地植え作業を認識することで、作業中の圃場における機体の直進走行がもはや不要であることがわかるため、基準線Rを消去することで、他の圃場に移動中や他の圃場で作業中に、作業中の圃場に適さない方向や作業者の意図しない方向に向けて自動操舵がはたらくのを防止することができ、作業性を向上させることができる。また、基準線Rを手動で消去する必要がないため、基準線Rにかかる手間を省くことができる。これにより、操作性を向上させることができる。
【0113】
また、機体の走行状態以外で、機体が自動直進走行の場合に、作業装置4の作業状態を検知(認識)して基準線Rを消去してもよい。図16に示すように、制御装置100は、機体の自動直進走行を検知する(ステップS901)。制御装置100は、機体が自動直進走行である場合(ステップS901:Yes)、基準線Rに対する所定値以上のずれ角を検知手段によって検知すると(ステップS902:Yes)、作業装置の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知し(ステップS903)、作業装置4の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知すると(ステップS903:Yes)、取得した基準線Rを消去する制御を行う(ステップS904)。
【0114】
なお、ステップS901の処理において、制御装置100が機体の自動直進走行を検知しない場合(ステップS901:No)、自動直進走行を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS902の処理において、制御装置100が所定値以上のずれ角を検
知しない場合(ステップS902:No)、所定値以上のずれ角を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS903の処理において、制御装置100が作業装置4の作業状態を検知しない場合(ステップS903:No)、作業状態を検知するまでこの処理を繰り返す。
【0115】
かかる構成によれば、作業装置4の作業状態(枕地植え作業)を検知することで、圃場における植付作業の最終工程である圃場内の外縁を植える枕地植え作業を認識することができる。枕地植え作業を認識することで、作業中の圃場における走行車体2の直進走行がもはや不要であることがわかるため、基準線Rを消去することで、他の圃場に移動中や他の圃場で作業中に、作業中の圃場に適さない方向や作業者の意図しない方向に向けて自動操舵がはたらくのを防止することができ、作業性を向上させることができる。また、基準線Rを手動で消去する必要がないため、基準線Rの消去にかかる手間を省くことができる。これにより、操作性を向上させることができる。
【0116】
また、制御装置100は、作業装置4の作業状態を検知(認識)したうえで、機体の所定値以上の走行を検知して基準線Rを消去してもよい。図17に示すように、制御装置100は、機体が自動直進走行であるか否かを検知する(ステップS1001)。制御装置100は、機体が自動直進走行である場合(ステップS1001:Yes)、基準線Rに対する所定値以上のずれ角を検知手段によって検知すると(ステップS1002:Yes)、作業装置の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知する(ステップS1003)。制御装置100は、作業装置4の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知すると(ステップS1003:Yes)、機体の所定値(たとえば、5m)以上の継続した走行を検知する(ステップS1004)。制御装置100は、機体の所定値以上の継続した走行を検知すると(ステップS1004:Yes)、取得した基準線Rを消去する制御を行う(ステップS1005)。
【0117】
なお、ステップS1001の処理において、制御装置100が機体の自動直進走行を検知しない場合(ステップS1001:No)、自動直進走行を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS1002の処理において、制御装置100が所定値以上のずれ角を検知しない場合(ステップS1002:No)、所定値以上のずれ角を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS1003の処理において、制御装置100が作業装置4の作業状態を検知しない場合(ステップS1003:No)、作業状態を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS1004の処理において、制御装置100が機体の所定値以上の走行を検知しない場合(ステップS1004:No)、所定値以上の走行を検知するまでこの処理を繰り返す。
【0118】
なお、機体の所定値以上の走行を検知する検知手段には、後輪回転センサ210(図6参照)などを用いることができる。
【0119】
また、検知手段は、作業検知センサ209(図6参照)の入切によって作業装置4の作業状態を検知する。この場合、作業装置4の作業状態を検知する検知手段としては、たとえば、植付クラッチの入切を検出する植付クラッチ入切センサであることが好ましい。植付クラッチの入切センサが入になることで、上記した作業状態として枕地植え作業が開始された状態であることを認識することができる。
【0120】
また、制御装置100は、機体が自動直進走行である場合、機体の直進走行以外の走行状態を検知手段によって検知したうえで、作業装置4の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知すると、取得した基準線Rを消去してもよい。
【0121】
かかる構成によれば、作業装置4の作業状態を検知し、かつ、機体の所定値以上の走行
を検知することで、圃場における植付作業の最終工程である圃場内の外縁を植える枕地植え作業をより確実に認識することができる。枕地植え作業を認識することで、作業中の圃場における機体の直進走行がもはや不要であることがわかるため、基準線Rを消去することで、他の圃場に移動中や他の圃場で作業中に、作業中の圃場に適さない方向や作業者の意図しない方向に向けて自動操舵がはたらくのを防止することができ、作業性を向上させることができる。また、基準線Rを手動で消去する必要がないため、基準線Rの消去にかかる手間を省くことができる。これにより、操作性を向上させることができる。
【0122】
また、制御装置100は、基準線Rからの機体のずれ角を検知した場合、作業装置4の作業状態を検知した場合、あるいはこれらの双方を検知した場合に、所定値以上の走行を検知するために設定された走行距離を消去する。これにより、基準線Rを消去した後の作業における誤作動を防止することができる。
【0123】
また、制御装置100は、基準線Rを消去する場合に、報知装置208(図6参照)が、たとえば、所定時間(2秒程度)の報知音を発するよう制御してもよい。これにより、基準線Rが消去されたことを作業者が認識することができる。また、制御装置100は、基準線Rを消去する場合に、たとえば、モニタに文字などを表示するよう制御してもよい。これにより、基準線Rが消去されたことを作業者が認識することができる。
【0124】
なお、作業装置4において苗植付けや播種を複数条同時に行える構成としているが、作業条ごとに装置の作動の入切を行う部分条クラッチ(畦クラッチともいう)を複数設け、作業装置4の全ての作業条のうちの一部の駆動を停止させて残りの一部の作業条のみで作業を行うとき、検知手段により一部の部分条クラッチにより作動を切状態としていることを検知することに基づいて、基準線Rを消去する構成としてもよい。かかる構成における検知手段は、前述した検知手段の検知機能に加えて部分条クラッチの切状態も検知する構成としてもよい。
【0125】
また、図18を参照して、作業車両(苗移植機)の他の例について説明する。図18は、作業車両(苗移植機)の他の例を示す左側面図である。図18に示すように、他の例に係る苗移植機は、バックミラーなどに代えて、あるいは、バックミラーなどに加えて、バックカメラ400と、モニタ(タブレットモニタ)401とを備える。バックカメラ400は、GPSアンテナ200が取り付けられるアンテナフレーム201の後側フレーム201bに設けられる。モニタ401は、アンテナフレーム201の前側フレーム201aに設けられる。
【0126】
かかる構成によれば、機体後方の確認に加え、圃場における機体後方の植付跡や機体の直進状態を確認することができる。また、バックカメラ400で撮影した画像を処理することで、機体後方の連続欠株を認識することができる。なお、たとえば、連続欠株時には報知装置208(図6参照)が報知音を発するようにしてもよい。これにより、作業者が連続欠株が生じていることを認識することができる。
【0127】
また、他の例に係る苗移植機は、作業装置(植付装置)4に、積載された苗の減少を検知する苗減少スイッチ403を備える。機体の自動直進走行時、苗植え作業中に苗減少スイッチ403が苗の減少を検知すると、たとえば、制御装置100(図6参照)がHST(電動HST)14で機体を自動減速するように制御する。かかる構成によれば、機体が安全速(たとえば、0.3m/s以下の速度)として、苗補給を安全に行うことができる。
【0128】
また、他の例に係る苗移植機は、GPSアンテナ200において、たとえば、ジャイロセンサなどで機体のローリングを検知する。機体の自動直進走行時、苗植え作業中に圃場
の凹凸などで機体のローリングが所定値以上の場合は、たとえば、制御装置100がHST(電動HST)14で機体を所定速度(たとえば、0.5m/s)に自動減速するように制御する。かかる構成によれば、機体の直進安定性を向上させることができる。
【0129】
また、図3図4図5Aおよび図5Bに示すように、自動操舵装置205により、走行車体2を自動直進走行させているときであっても、作業装置4等が消費する作業資材の補充作業や、機体や圃場に何らかの問題が発生したとき等には、作業者が走行を停止させる必要がある。この走行停止操作は、変速操作レバー36を中立位置に操作して無段変速装置14を中立にする、ブレーキペダルを踏んでブレーキを利かせる、サイドクラッチペダル43aを踏んでサイドクラッチ機構43を切状態にする、という方法が考えられる。
【0130】
上記の何れかの方法で走行車体2の走行を停止させたときであっても、制御装置100は、自動操舵装置205を停止させない構成とする。これにより、変速操作レバー36を前進操作する、ブレーキペダルやサイドクラッチペダル43aの操作を解除するなどして、走行停止を解除すると、すぐに自動直進走行に復帰することが可能になり、作業能率の低下が防止される。
【0131】
しかしながら、停止中にハンドル35が手動操舵される、あるいは自動操舵装置205が作動してハンドル35が自動操舵されると、自動直進走行の再開時の進行方向が停止時の進行方向からずれてしまい、走行車体2の進行方向が直線状でなくなるおそれがある。とくに、走行車体2が停止していると、GPSアンテナ200が取得する位置座標は、地球の自転やGPS衛星の公転等の影響を受けやすく、実際の走行車体2が存在する位置とは異なる位置座標を取得することがあり、基準線Rから離れた位置にある、と誤認されやすくなる。
【0132】
これを防止すべく、変速操作レバー36の操作位置を検知するレバーポテンショメータ36a、ブレーキペダルやクラッチペダルの踏込操作を検知する踏込検知スイッチ213を設け、自動直進走行中に走行を停止させる操作が検知されると、制御装置100は、ハンドル35の操舵操作を反映しない、あるいはハンドル35を動かなくする構成とする。
【0133】
ハンドル35の操舵操作を反映しない構成とは、停車時の走行車体2の位置座標のX座標が基準線RのX座標から所定値以上ずれていても、操舵アクチュエータ206を作動させないことを意味する。また、ハンドル35を動かなくする構成とは、操舵アクチュエータ206の作動トルクを高くし、ハンドルロック状態にすることを意味する。
【0134】
上記構成により、走行再開後の進行方向がずれることを防止できるので、作業走行が直線状で行われ、作業精度の向上が図られる。
【0135】
ハンドル35は、自動直進走行中は操舵アクチュエータ206により自動操舵されるが、進路上の圃場の状態が自動直進走行に適さない(荒れている、圃場深度が深い、等)、障害物が存在する等の状況では、手動操作により回避行動をとる必要がある。操舵アクチュエータ206によるハンドル35の操舵操作は、次の構成により行われる。該ハンドル35の操舵操作に連動して回動するハンドル軸351の下部には入力ギア352を設け、操舵アクチュエータ206には出力ギア353を設ける。
【0136】
該入力ギア352と出力ギア353は、ハンドル35および操舵アクチュエータ206の下方に配置される操舵ギアケース354に内装される。そして、該入力ギア352と出力ギア353の間には、伝動比を変更して駆動力を伝動する中継ギア355を設ける。
【0137】
該入力ギア352、出力ギア353および中継ギア355のギア比は、ハンドル35の
手動操作を妨げることを防止すべく、操舵アクチュエータ206が作動していても、手動操作によるトルクが強くなるギア比とする。これにより、自動直進中であってもハンドル35の手動操作に要する力が増大することを防止できるので、操作性が向上すると共に、走行に影響し得る状態の圃場や障害物を確実に回避することができるので、作業の安全性が確保される。
【0138】
また、苗移植機1は、GPSアンテナ200(図1参照)を内蔵したGNSSユニットが走行車体2に配設されている。GNSSユニットは、GPSアンテナ200で時間的に所定の間隔でGNSS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得することができる。また、GNSSユニットには、GPSアンテナ200に加え、たとえば、ジャイロセンサや加速度センサを利用した慣性航法装置と、これらを制御する制御基板が内蔵される。
【0139】
図19Aおよび図19Bは、アンテナフレーム201の説明図である。なお、図19Aには、苗移植機1の正面を示し、図19Bには、苗移植機1の左側面を示している。また、図20Aは、アンテナフレーム201の正面図である。図20Bは、アンテナフレーム201の斜視図である。図20Cは、アンテナフレーム201の下方よりの斜視図である。
【0140】
図19Aおよび図19Bに示すように、GPSアンテナ200が内蔵されたGNSSユニットは、前輪10の車軸10bの直上方に位置するように、走行車体2の前端側に基端が連結されたアンテナフレーム201の頂部に取り付けられている。通常状態におけるアンテナフレーム201の高さは、標準的な一般男性がフロアステップ33上で起立しても頭部と干渉しない程度の高さに設定される。
【0141】
アンテナフレーム201は、図20A図20Cに示すように、左右の前側フレーム201aの下部(前側下部フレーム201aa)と、前側フレーム201aの上部(前側上部フレーム201ab)と、上部L形フレーム201cと、後側フレーム201bとから構成される。
【0142】
左右の前側下部フレーム201aa,201aaの基端部には、一対のブラケット201e,201eが設けられており、かかるブラケット201e,201eを介して前側下部フレーム201aaは走行車体2のバンパ500に取り付けられる。
【0143】
前側上部フレーム201abは、左右の前側下部フレーム201aa,201aaに回動連結具201f,201fを介してそれぞれ基端が回動自在に連結された左右の縦フレーム2011,2012を有する、平面視で略コ字状のフレームである。
【0144】
左右の回動連結具201f,201f同士は、図20A図20Cに示すように、ノブボルト201gで連結固定し、回動連結具201f,201fとフロントカバー40(図19B参照)との間には補強フレーム201h(図19B参照)を掛け渡している。このように、簡単な構成によって前側下部フレーム201aa,201aaや左右の縦フレーム2011,2012のガタツキを防止している。
【0145】
左右の前側下部フレーム201aa,201aaは、図19Aに示すように、上端側がフロントカバー40と接触しない程度まで内側へ向けて斜めに立設されている。そのため、操縦部41と機体左右側に配置された予備苗載台501,501との間には、たとえば、作業者Mが機体前方とフロアステップ33との間を移動できるだけのスペースが形成される。
【0146】
そして、左右の縦フレーム2011,2012の上部間に架け渡されたアルミブロック201i上にGNSSユニット(GPSアンテナ200)が配設されている。このように、GNSSユニットと鋼管製のアンテナフレーム201との間にアルミブロック201iを介在させることによって、GPSアンテナ200に直接取り付けるよりも受信感度を向上させている。
【0147】
上部L形フレーム201cは、先端部が前側上部フレーム201abの後端部に連接されており、GNSSユニットから延在するハーネスなどの配線が当該上部L形フレーム201cに沿って配索される。
【0148】
後側フレーム201bは、下端を操縦席41の後部側において、リアステップに連結される。操縦席41の後方には、施肥装置5の貯留ホッパ5bが左右にそれぞれ配設されているが、かかる左右の貯留ホッパ5bの間に後側フレーム201cを位置させているため、貯留ホッパ5bを開閉する場合に干渉することがない。
【0149】
このように、GNSSユニットを配設するためのアンテナフレーム201は、前側をバンパ500とフロントカバー40とに、後側をリアステップに連結しており、構造的に安定する3点支持としたため、きわめて安定した状態で走行車体2に取付けることができる。
【0150】
後側フレーム201bの上端部には、上部L形フレーム201cの他端部を着脱自在に連結する連結部201jが設けられており、上部L形フレーム201cを着脱自在に連結している。連結部201jは、たとえば、上部L形フレーム201cと後側フレーム201bとの連結端部に、それぞれ形成されたピン挿入孔(図示せず)と、かかるピン挿入孔に挿脱可能な締結ピン(図示せず)とにより構成するとよい。このように、簡単な構成によって、上部L形フレーム201cと後側フレーム201bとを着脱自在に連結することができる。
【0151】
こうして、上部L形フレーム201cを後側フレーム201bから離脱させ、図20Bに示すように、回動連結具201f,201fによって、前側下部フレーム201aa,201aaに対して前側上部フレーム201abおよび上部L形フレーム201cを後部下方に向けて回動させる簡単な操作によって、図19Bに示すように、アンテナフレーム201の高さを低くすることができる。
【0152】
したがって、たとえば、苗移植機1を輸送する場合や納屋などへ格納する場合に、GNSSユニットの厚みが高さ的な障害となる場合、GNSSユニットを取り外すことなく、全体車高を低くすることができる。
【0153】
また、アンテナフレーム201(前側上部フレーム201abおよび上部L形フレーム201c)を回動させる構成として、回動連結具201fを設けた簡単な構成としているため、コストの増加を抑制するとともに、アンテナフレーム201全体のガタツキを最小限にすることができる。しかも、回動操作を1アクションで行える利便性を有する。
【0154】
また、図19Bに示すように、後側フレーム201bの上端近傍に略Y字状に形成したフレーム受具201kを設けている。したがって、アンテナフレーム201を折り畳んで高さを低くする場合、上部L形フレーム201cをフレーム受具201kに係止することで安定保持することができる。
【0155】
また、図20Aおよび図20Bに示すように、アンテナフレーム201の前側フレーム201a,201aの上部、すなわち、前側上部フレーム201aa,201aaは、先
端側となる上部L形フレーム201c側に向けて正面視で間隔が狭くなるように形成されている。これにより、アンテナフレーム201の強度が高まる。
【0156】
また、苗移植機1は、上記した自動直進状態を作業者に知らせるモニタ300を操縦部に備える。図21は、モニタ300の説明図である。モニタ300は、機体が自動直進走行を行う場合に点灯する直進アシストランプ301と、A点ランプ302と、B点ランプ303とが配設されている。モニタ300は、かかる3つのランプ301,302,303の表示態様によって、自動直進状態にかかる各種情報を作業者に知らせる。このため、モニタ300をシンプルで安価に構成することができる。
【0157】
モニタ300では、たとえば、機体の向きが右側にずれている場合はA点ランプ302が点滅する。A点ランプ302を点滅させることで、作業者に左にハンドル35(図1参照)を切るように促す。また、モニタ300では、たとえば、機体の向きが左側にずれている場合はB点ランプ303が点滅する。B点ランプ303を点滅させることで、作業者に右にハンドル35を切るように促す。このように、A点ランプ302とB点ランプ303とを方向指示器と同様の表示態様とすることで、作業者にハンドル35を切る方向をわかりやすく伝えることができる。
【0158】
また、モニタ300では、機体が自動直進走行可能な状態にある場合にはA点ランプ302およびB点ランプ303が共に点灯する。また、自動直進走行を入にする場合は、たとえば、整地ロータ63が切の場合には自動直進走行を入にできないため、この場合にはたとえば報知装置208(図6参照)から報知音(警告音)を発するとともに、中央の直進アシストランプ301が、たとえば2回点滅する。かかる表示態様によって、作業者に自動直進走行不可であることを知らせる。このため、モニタ300をシンプルで安価に構成することができる。
【0159】
また、モニタ300では、機体が自動直進走行可能な状態にある場合にはA点ランプ302およびB点ランプ303が共に点灯し、さらに、自動直進走行を入にする場合は、たとえば、GPSアンテナ200によるGPS受信不良の場合には自動直進走行を入にできないため、この場合にはたとえば報知装置208(図6参照)から報知音(警告音)を発するとともに、中央の直進アシストランプ301が、たとえば3回点滅する。かかる表示態様によって、作業者に自動直進走行不可であることを知らせる。このため、モニタ300をシンプルで安価に構成することができる。また、直進アシストランプ301の点滅回数を他の警告時と変えることで、表示態様によって警告内容を作業者に知らせることができる。
【0160】
また、モニタ300には、GPSランプ304が設けられる。GPSランプ304は、3つの表示ランプを有し、GPS受信状態にあわせて表示ランプの数を変更する。モニタ300では、かかる表示態様によって作業者にGPS受信状態を知らせる。このため、GPS受信不良の状態での自動直進走行を防ぐことができる。なお、以上説明した各ランプ301,302,303,304や報知装置208などは、制御装置100(図6参照)によって制御される。
【0161】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0162】
1 作業車両(苗移植機)
2 走行車体
35 ハンドル(操舵部材)
100 制御装置
200 GPSアンテナ(位置情報取得装置)
205 自動操舵装置(自動直進装置)
A 第1基準位置
B 第2基準位置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図21
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体を操舵操作する操舵部材と、
前記走行車体の位置座標を取得する位置情報取得装置と、
前記操舵部材を作動させて前記走行車体を自動走行させる自動走行装置と、各部の制御を行う制御装置とを備える作業車両において、
圃場の一点で登録される第1基準位置と該圃場の他点で登録される第2基準位置を登録することができ、
前記第1基準位置と前記第2基準位置を結んだ線が、走行の基準となる走行基準データであり、
前記自動走行の入り切り操作を行う操作部を設け、
前記操作部はレバー部材であり、
前記走行基準データが登録されている場合、前記レバー部材を第1の方向に操作すると前記自動走行が「入」になり、
前記第2基準位置を登録する際に、前記第1基準位置を取得した位置からの距離が所定距離未満であるときは、前記第2基準位置を登録しないことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記レバー部材を第2の方向に所定時間操作すると、前記登録した第1基準位置と第2基準位置を結んだ線を削除することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記走行車体に装着され、圃場で作業を行う作業装置を備え、
前記位置情報取得装置により、圃場における作業の最終工程である枕地作業であることを認識すると前記登録した第1基準位置と第2基準位置を結んだ線を削除することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、走行車体で圃場内を走行しながら走行車体に装着された作業装置で対地作業を行う作業車両には、作業開始と作業終了の位置情報を作業装置が入切されたときに取得し、取得した作業開始位置および作業終了位置から基準線を作成し、作成した基準線に沿ってハンドルを自動操舵する機能を有するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる作業車両では、作業装置が入切された位置を作業開始位置および作業終了位置として取得するため、作業開始位置および作業終了位置を取得する操作が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-21890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の作業車両は基準線を作成する工程で、誤操作する可能性があることを考慮していない。
【0006】
たとえば、作業者が意図せず自動直進設定部材に触れ基準線が短くなる問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業性の向上を図ることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の作業車両は、走行車体(2)を操舵操作する操舵部材(35)と、前記走行車体(2)の位置座標を取得する位置情報取得装置(200)と、前記操舵部材(35)を作動させて前記走行車体(2)を自動走行させる自動走行装置(205)と、各部の制御を行う制御装置(100)とを備える作業車両(1)において、圃場の一点で登録される第1基準位置(A)と該圃場の他点で登録される第2基準位置(B)を登録することができ、前記第1基準位置(A)と前記第2基準位置(B)を結んだ線が、走行の基準となる走行基準データであり、前記自動走行の入り切り操作を行う操作部を設け、前記操作部はレバー部材であり、前記走行基準データが登録されている場合、前記レバー部材を第1の方向に操作すると前記自動走行が「入」になり、前記第2基準位置(B)を登録する際に、前記第1基準位置(A)を取得した位置からの距離が所定距離未満であるときは、前記第2基準位置(B)を登録しないことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の作業車両は、請求項1に記載の作業車両において、前記レバー部材を第2の方向に所定時間操作すると、前記登録した第1基準位置(A)と第2基準位置(B)を結んだ線を削除することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の作業車両は、請求項1または2に記載の作業車両において、前記走行車体に装着され、圃場で作業を行う作業装置を備え、前記位置情報取得装置(200)により、圃場における作業の最終工程である枕地作業であることを認識すると前記登録した第1基準位置(A)と第2基準位置(B)を結んだ線を削除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る作業車両によれば、自動直進走行基準の登録や削除における作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、作業車両の左側面図である。
図2図2は、作業車両の平面図である。
図3図3は、走行車体の構成を示す要部平面図である。
図4図4は、操舵部材を含む操縦部の構成を示す要部背面図である。
図5A図5Aは、操舵部材の自動操舵装置の構成を示す要部背面図である。
図5B図5Bは、操舵部材の自動操舵装置の構成を示す要部左側面図である。
図6図6は、各種制御に関連する部材を示す機能ブロック図である。
図7図7は、取得した位置座標を補正する制御を示すフローチャートである。
図8図8は、自動操舵装置による自動直進制御を示すフローチャートである。
図9図9は、自動直進設定部材の操作による第1基準位置および第2基準位置の取得と自動直進制御の入切を示すフローチャートである。
図10図10は、第1基準位置および第2基準位置の消去操作を示すフローチャートである。
図11図11は、第1基準位置取得後のハンドル操作により第1基準位置を消去する制御を示すフローチャートである。
図12図12は、第1基準位置、第2基準位置、基準線および目標位置を示す模式作業説明図である。
図13図13は、圃場の枕地走行により第1基準位置、第2基準位置および基準線を消去する制御を示すフローチャートである。
図14図14は、基準線を自動消去する制御を示すフローチャート(その1)である。
図15図15は、基準線を自動消去する制御を示すフローチャート(その2)である。
図16図16は、基準線を自動消去する制御を示すフローチャート(その3)である。
図17図17は、基準線を自動消去する制御を示すフローチャート(その4)である。
図18図18は、作業車両の他の例を示す左側面図である。
図19A図19Aは、アンテナフレームの説明図(その1)である。
図19B図19Bは、アンテナフレームの説明図(その2)である。
図20A図20Aは、アンテナフレームの正面図である。
図20B図20Bは、アンテナフレームの斜視図である。
図20C図20Cは、アンテナフレームの下方よりの斜視図である。
図21図21は、モニタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1および図2を参照して実施形態に係る作業車両(苗移植機)1の全体構成について説明する。図1は、作業車両(苗移植機)1の左側面図である。図2は、作業車両(苗移植機)1の平面図である。なお、図2においては、説明の便宜上、車輪(前輪、後輪)などを省略している。また、以下では、作業車両1として、圃場内を走行しながら、圃場に苗を植え付ける苗移植機を例に説明する。
【0015】
また、以下の説明において、前後方向とは、作業車両(以下、苗移植機という)1の直進時における進行方向であり、進行方向前方側を「前」、後方側を「後」と規定している。なお、苗移植機1の進行方向とは、直進時において、操縦席41から操舵部材(以下、ハンドルという)35に向かう方向である(図1参照)。
【0016】
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定している。すなわち、作業者(操縦者ともいう)が操縦席41に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。また、上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交している。
【0017】
なお、これらの方向は、説明をわかりやすくするために便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、苗移植機1を指して機体という場合がある。
【0018】
実施形態に係る作業車両として図2に示す乗用型の苗移植機1は8条植えの構成であるが、かかる構成を異なる植付条数の田植機に用いても構わない。苗移植機1は、図1および図2に示すように、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して、苗タンク53から苗を取って複数の苗植付装置55で圃場に苗を植え付ける苗植付部や、種子を供給する播種装置等、あるいは圃場を耕耘するロータリ等の作業装置4を昇降可能に設け、該走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分を配置している。
【0019】
まず、走行車体2を構成するメインフレーム15について説明する。図3に示すように、該メインフレーム15は、機体前部の前側梁フレーム16と、機体後部の後側梁フレーム17と、該前側梁フレーム16と後側梁フレーム17の前後間に中央梁フレーム18を設け、該前側梁フレーム16と中央梁フレーム18を左右一対の前側連結フレーム19,19で連結すると共に、該中央梁フレーム18と後側梁フレーム17を左右一対の後側連結フレーム20,20で連結する。
【0020】
なお、前側梁フレーム16と中央梁フレーム18と後側梁フレーム17は左右方向を長手方向とし、前側連結フレーム19と後側連結フレーム20は前後方向を長手方向とする。該左右の前側連結フレーム19,19と後側連結フレーム20,20の左右間隔は略同じ間隔とする。また、前記中央梁フレーム18と後側梁フレーム17の左右長さは前側梁フレーム16の左右長さよりも長く構成する。なお、左右の前側連結フレーム19,19と後側連結フレーム20,20は中央梁フレーム18の下部で溶接するものであるので、左右の前側連結フレーム19,19と後側連結フレーム20,20を一体の金属製の角材で構成してもよい。
【0021】
前記前側梁フレーム16と中央梁フレーム18と左右の前側連結フレーム19,19が形成する空間部には、左右の前輪10,10や後輪11,11、作業装置4等に駆動力を伝動するミッションケース13と、エンジン30から供給される駆動力を該ミッションケース13に出力する油圧式の無段変速装置(HST)14を設ける。そして、前記後側梁フレーム17の後部に、左右の持上フレーム21,21を左右の後側連結フレーム20,20の左右間隔よりも狭い間隔で且つ後方に突出させて設け、該左右の持上フレーム21,21の下部に後部支持フレーム22を装着する。
【0022】
該後部支持フレーム22の左右両側には、走行車体2の左右の後輪11,11を各々駆動させる後輪伝動ケース11a,11aを設け、該後部支持フレーム22の上部には、前記昇降リンク機構3を支持する左右のリンクフレーム23,23を上方に向けて設ける。
【0023】
前記昇降リンク機構3は、左右のリンクフレーム23,23の下部側で且つ左右間に左右一対のロワリンクアーム24,24を設け、該左右のロワリンクアーム24,24の左右間に昇降シリンダ25を設けると共に、該昇降シリンダ25の上方にアッパリンクアーム26を設けて構成する。なお、該左右のロワリンクアーム24,24と昇降シリンダ25とアッパリンクアーム26の走行車体2とは反対側の端部は、作業装置4の機体前側に装着する。
【0024】
さらに、前記中央梁フレーム18の左右両端部の前方と左右の前側連結フレーム19,19の左右外側に、走行車体2の左右の前輪10,10に各々伝動する前輪伝動ケース10a,10aを各々設けると共に、該中央梁フレーム18と後側梁フレーム17の左右端部を左右の延長フレーム27,27で各々連結する。該左右の延長フレーム27,27は前後方向を長手方向とする。
【0025】
また、前記中央梁フレーム18と後側梁フレーム17と後部支持フレーム22の下部に前後方向の中央連結フレーム28を設け、前記中央梁フレーム18と後側梁フレーム17の前後間で且つ左右の後側連結フレーム20,20の左右間にエンジン30を支持する前後の支持プレート29,29を設ける。
【0026】
該前後の支持プレート29,29には、中央連結フレーム28の左右両側でエンジン30を受ける受けプレート29aが各々設けられている。そして、前記前後の支持プレート29,29の左右両側に、後側梁フレーム17の下方を通過して後方に突出する左右の補助フレーム31,31を設け、該左右の補助フレーム31,31の後部を左右方向の後部補助フレーム32で連結する。なお、該左右の補助フレーム31,31の後端部は、前記左右の後輪伝動ケース11a,11aに連結する。
【0027】
上記により、メインフレーム15が構成される。該メインフレーム15のうち、前側梁フレーム16から後側梁フレーム17までの前後幅、および左右の前側連結フレーム19,19および後側連結フレーム20,20の左右幅を、作業者が搭乗するフロアステップ33で覆う。該フロアステップ33は一体形成して強度を向上させたり部品数を減らしたりするものや、前側と後側、左側と右側で各々分割可能に構成し、着脱を容易にするものを用いる。
【0028】
上記では、図3に示すように、前記中央梁フレーム18と後側梁フレーム17の左右両側端部の周辺と、左右の延長フレーム27,27がフロアステップ33に覆われず、露出する。このとき、前記フロアステップ33を拡大してメインフレーム15の全体を覆う構成としてもよいが、大きさや植付作業条数の異なる機体間でのフロアステップ33の共用化を図るべく、フロアステップ33の左右両側に、左右の延長ステップ34,34を各々配置する構成とする。
【0029】
上記構成により、メインフレーム15は複数のフレーム構成体を連結して構成しているので、従来に比べて強度の向上が図られている。また、エンジン30を搭載する前後の支持プレート29,29の下部に中央連結フレーム28を配置すると共に、前後の支持プレート29,29を左右の後部補助フレーム32,32と連結したことにより、重量物であるエンジン30を強固に保持することができる。
【0030】
前記走行車体2の前側には、図1および図2に示すように、上部に機体を操舵するハンドル35、無段変速装置14や作業装置4を操作する変速操作レバー36、走行車体2の走行伝動を切り替える副変速切替装置(図示省略)を操作する副変速操作レバー37および機体各部の操作を行う操縦パネル38を上部に備えるボンネット39を設ける。該ボンネット39の前側には開閉可能なフロントカバー40を設け、該フロントカバー40の内部には、燃料タンクやバッテリ、前記ハンドル35の操舵に前記左右の前輪10,10、および左右の前輪伝動ケース10a,10aの下部側を回動させる連動機構(図示省略)を内装する。
【0031】
また、前記フロントカバー40の前方には、作業装置4の作業状態や作業時に消費される作業資材の減少、および後述する自動操舵装置205の作動、非作動等の各種情報をLED等の点灯で表示するセンターマスコット70を設ける。該センターマスコット70は、たとえば、側面視において、機体下部側で且つ機体後側に配置される作業表示部71と、機体上部側で且つ機体前側に配置される自動直進表示部72で構成される。
【0032】
そして、前記ボンネット39よりも機体後側で、且つ前記エンジン30の上方に、エンジン30の上方および側方を覆うエンジンカバー30aを設け、該エンジンカバー30aの上部に作業者が着座する操縦席41を設ける。
【0033】
さらに、該操縦席41の後側で、具体的にはメインフレーム15の後端側に前記施肥装置5を積載する。該施肥装置5の駆動力は、左右の後輪伝動ケース11aの左右一側から施肥装置5に向かって配置される施肥伝動機構5aによって伝動される。
【0034】
前記ミッションケース13の前側には、前記左右の前輪伝動ケース10a,10aに伝動する前側伝動シャフト(図示省略)と、ミッションケース13の後部には、前記左右の後輪伝動ケース11a,11aに伝動する左右のドライブシャフト42,42を設ける。該左右のドライブシャフト42,42よりも伝動方向上手側には、左右のドライブシャフト42,42への伝動を入切するサイドクラッチ機構43,43が配置されており、前記ハンドル35を切操作して走行車体2を旋回操作させると、旋回内側に位置するサイドクラッチ機構43が切状態になり、旋回内側の後輪11への伝動を停止させる構成としている。
【0035】
図3に示すように、前記ミッションケース13の後側の左右中央付近に左右のクラッチ入切軸44,44を上下方向に設け、該左右のクラッチ入切軸44,44の上部に機体外側に向かうクラッチ入切アーム45,45を各々設ける。そして、前記操縦席41の前側下部で且つ左右一側には、左右のサイドクラッチ機構43,43を入切操作するサイドクラッチペダル43a,43aを設ける。
【0036】
また、図1および図2に示すように、作業装置4の下方には、圃場面に接地して滑走するセンターフロート62Cと左右のサイドフロート62L,62Rを設けると共に、該センターフロート62Cと左右のサイドフロート62L,62Rよりも機体前側に、圃場面の凹凸を整地する整地ロータ63を設ける。該整地ロータ63への駆動力は、左右一側の後輪伝動ケース11aに設ける整地伝動シャフト65により伝動される。また、左右一側の後輪伝動ケース11aには、整地ロータ63への伝動を入切する整地クラッチを設ける。
【0037】
前記センターフロート62Cには、該センターフロート62Cの回動角度を検知する回動ポテンショメータ64(図6参照)を設け、該回動ポテンショメータ64の回動角度が所定角度以上変化すると圃場の深さが変化したと判断し、制御装置100が前記昇降シリンダ25を伸縮させて昇降リンク機構3を上下回動させ、作業装置4の上下高さ、即ち作業位置を圃場の深さに対応させる構成とする。
【0038】
圃場内で前記作業装置4を用いて苗の植付や種子の播種作業、あるいは苗の生育後の追肥や除草等の作業を行うときは、圃場の一側から他側に向かって走行車体2を直進走行させることが一般的である。しかしながら、走行車体2は、圃場の耕盤の凹凸や表土の粘性により車輪が直進方向からずれた方向を向くと、次第にずれた方向に移動してしまうことがある。また、作業者の操縦技術によっては、走行車体2を直進方向に合わせられず、直進からずれた方向に移動させてしまうことがある。
【0039】
これにより、苗の植付や播種、除草や追肥等の作業軌跡が斜め方向になり、本来苗の植付や播種が可能な個所が空きスペースとなり、後から作業者が手作業で植付や播種を行う必要が生じ、作業者に余分な労力を生じさせることや、苗の植付条間や播種条間が作業装置4の条間よりも狭くなり、風通しが悪くなって病虫害が発生することがある。あるいは、除草作業や追肥作業等の、植付や播種の後工程の作業を行う際、苗を踏み潰してしまい、収量の低下を招くことや、苗を踏み潰さないように操縦することにより、作業能率を低下させる問題が生じることがある。
【0040】
これらの問題を解決するには、作業者の手によらず、走行車体2を自動操舵させ、直進走行姿勢を維持させる、いわゆる自動直進システムを搭載することが考えられる。
【0041】
まず、図1および図2に示すように、走行車体2に、位置情報取得装置としてのGPS(GNSS)アンテナ200を装着するアンテナフレーム201を設ける。該アンテナフレーム201は、前記メインフレーム15の前側に設ける左右のアンテナステー202,202に左右の基部を装着する、正面視で門型の前側フレーム201aと、該前側フレーム201aの左右中央部から機体後方に向かい、走行車体2の後側の左右中央部に向かう後側フレーム201bで構成する。なお、門型の該前側フレーム201aの空間部の後方には、前記ボンネット39や操縦席41が位置するものとする。
【0042】
また、前記アンテナフレーム201の上下高さは、機体中最も高くする。作業者がフロアステップ33上に立った状態で頭をぶつけることを防止しつつ、且つ受信精度を向上させるべく、アンテナフレーム201の上端部は、地表から2.5~3.5m程度に位置するものとする。これにより、作業者はフロアステップ33上を移動しやすく、作業能率が向上すると共に、GPSアンテナ200を地表から上方に離間させることができるので、受信精度の向上が図られる。
【0043】
該前側フレーム201aと後側フレーム201bの接続部付近には、前記GPSアンテナ200を装着する。なお、前側フレーム201aと後側フレーム201bの接続部は、ボンネット39と操縦席41の前後間附近であり、前記走行車体2の前後方向の中央部付近である。
【0044】
上記により、GPSアンテナ200の取付位置が機体の前後および左右方向の中央部付近になるので、取得される機体の座標が実際の機体の位置から離れたものとなりにくく、自動直進システムによる直進走行位置の設定が適切になり、作業精度が向上する。
【0045】
また、前側フレーム201aの空間部の後方に操縦席41が位置することにより、アンテナフレーム201が作業者の視界を遮ることを防止できるので、視認性が向上し、直進走行前の位置合わせが正確になると共に、機体前方の圃場の状態や障害物を早めに見つけられるので、作業者による手動操作に切り替えて安全且つ作業位置のずれを抑えることができる。なお、GPSアンテナ200は、単独測位方式、DGPS(相対測位)方式、RTK(干渉測位)方式等のうち、作業をする地域に適したものを用いるとよい。
【0046】
しかしながら、機体の傾斜や振動の影響によりGPSアンテナ200の地上高が変動すると、実際の機体位置と異なる座標位置が測定され、受信精度が低下すると共に、直進からずれた方向に機体が走行してしまう問題が生じる。
【0047】
これを防止すべく、図6に示すように、GPSアンテナ200に加えて、IMU(慣性計測装置)203を設ける。該IMU203は、走行車体2が傾斜姿勢になるときの地表からGPSアンテナ200までの高さと、傾斜していないときの地表からGPSアンテナ200までの高さの差に基づき、GPSアンテナ200が取得した位置座標を制御装置100に修正させるものである。
【0048】
なお、地表からGPSアンテナ200までの高さは、前記走行車体2の傾斜等の挙動を、IMU203に内蔵される三軸の加速度センサと角速度センサで計測して割り出すものとする。
【0049】
これに加えて、自動直進システムによる機体の走行方向が正しいかどうかをより確実に制御装置100に判定させるべく、方位センサ204を設ける。なお、このときの位置座標の補正については、図7のS101~S105に示すとおりである。これにより、機体の進路を計測される方位により定めることができるので、直進走行の精度がいっそう向上する。
【0050】
前記GPSアンテナ200が取得する位置情報は、IMU203と方位センサ204が検出する情報に基づき、制御装置100により補正される。そして、制御装置100は、現在の位置情報と先に取得されている位置情報を比較し、位置情報の相違が許容範囲を超えていると、機体を直進走行位置に戻すべく、左右の前輪10,10を左右方向に操舵させる。
【0051】
上記の左右の前輪10,10の操舵、あるいはクローラ等の信地旋回を自動化すべく、前記ハンドル35を操舵アクチュエータ206で回動させる自動操舵装置205を設ける。該自動操舵装置205は、図8のS201~S204に示すとおり、前記制御装置100が算出した現在の位置情報のX座標と、先に取得されている基準となる位置情報のX座標の差異に基づき、操舵アクチュエータ206の作動量が変動されることで、機体を直進走行位置に向かわせるべく、ハンドル35を左右に切ると共に、直進走行位置に来ると操舵アクチュエータ206を停止させてハンドル35の自動操舵を停止させるものである。
【0052】
なお、操舵アクチュエータ206は、電動や油圧式のモータ、あるいはシリンダで構成する。
【0053】
上記構成により、算出された位置情報のX座標の差異に合わせてハンドル35が自動的に操舵され、機体を直進走行位置に自動的に合わせることができるので、作業装置4による作業位置が左右方向にずれることが防止され、圃場内に作業が行われない箇所が発生しにくくなる。これにより、作業が行われなかった箇所に、後から人手で作業を行う必要が無くなり、作業者の労力が軽減される。
【0054】
また、前工程の作業条と現在の作業条の作業位置が重複することを防止できるので、苗、種子や肥料等の作業資材を余分に消費することが防止され、作業コストの低減が図られると共に、作業資材の過剰供給による生育不良の発生が防止される。
【0055】
なお、耕耘機を装着したトラクタや、苗移植機や播種機は、作業条の圃場端まで走行し、約180度旋回して次の作業条に移動する。旋回走行中に自動直進システムが作動していると、機体が直進走行すべき位置からずれていると判断して操舵アクチュエータ206を作動させ、旋回軌跡を乱すおそれがある。したがって、自動直進システムは、機体を旋回させる際にオフにする構成とする必要がある。ハンドル35を旋回操作すると自動直進システムがオフになる構成とすることも考えられるが、圃場の状態等によって機体の進行方向が大幅にずれたり、障害物を回避すべく作業者がハンドル35を旋回操作と同等以上に大きく操作したりした際に自動直進システムがオフになるので、作業者が直進途中で自動操舵システムを再度オンにせねばならず、作業者の手間が増えると共に、自動直進システムがオフになったことに気付かず、作業位置がずれたまま機体が走行し、作業精度が低下する問題が生じる。
【0056】
また、ハンドル35を旋回から直進に戻す操作で自動直進システムをオンにすることが考えられるが、旋回から直進に戻る際、次の作業条における直進位置に機体を合わせるには、細かいハンドル35の操舵操作を行う必要がある。この操作中に自動操舵システムがオンになっていると、機体が直進走行位置からずれたと制御装置100が判断すると操舵アクチュエータ206が作動してしまい、機体の位置が本来直進走行すべき位置に合わせられなくなる問題がある。
【0057】
このような問題の発生を防止し、機体を適切な方向に直進走行させると共に、適切な区間で作動することが可能な自動直進システムについて、図6、および図8図11を用いて説明する。なお、走行車体2の前後進方向の位置座標をY座標とすると共に、走行車体2の前後進方向と直交する方向、即ち左右方向の位置座標をX座標とする。
【0058】
まず、走行車体2に、自動直進の開始点である圃場の一側と自動直進の終了点である圃場の他側の座標を取得させると共に、自動直進システムを入切する、自動直進設定部材207を設ける。該自動直進設定部材207は、上下方向、左右方向、押込状態と戻り状態など、少なくとも二方向に操作可能な部材を少なくとも一つ装着するか、あるいは二つ以上の操作部材を装着するものとする。
【0059】
本実施形態では、自動直進設定部材207として、図4に示すように、上下方向に操作可能なフィンガアップレバーを装着するが、トグルスイッチやプッシュスイッチ、ジョイスティック等を用いてもよい。これにより、部品点数の削減が図られると共に、基準位置(第1基準位置A、第2基準位置B)の取得操作と、自動操舵装置205の入切操作を、同じ側の片方の手で自動直進設定部材207を操作すればよいので、操作性が向上する。
【0060】
図4に示すように、該自動直進設定部材207を第1の方向W1、本実施形態では機体上方に向けて操作すると、操作された位置で前記GPSアンテナ200が取得され、IMU203と方位センサ204の検出結果を用いて制御装置100が算出した位置座標が記録される。なお、自動直進設定部材207の第1の方向W1への操作が、基準位置取得部材の操作に該当する。
【0061】
前記自動直進設定部材207を操作したとき、図9のS301~S302に示すとおり、他の位置座標の記録が無いときは、算出した位置座標を第1基準点Aとして記録し、該第1基準点Aが記録されているときは、算出した位置座標を第2基準点Bとして記録する。該第1基準点Aと第2基準点Bが記録されているときに前記自動直進設定部材207が操作された時は、位置座標を記録しない。
【0062】
なお、圃場内の作業途中で、自動直進が精度よく行えなくなった時等には、第1基準点Aおよび第2基準点Bを取得し直す必要があるので、図10(S401~S406)に示すように、このときは前記自動直進設定部材207を所定時間(たとえば、2~3秒)に亘って第1の方向W1に操作すると、記録されている第1基準点Aおよび第2基準点Bが消去される設定とするとよい。あるいは、操作すると第1基準点Aおよび第2基準点Bが削除される、記録消去用のボタン(図示省略)を設けてもよい。
【0063】
自動直進システムの直進走行の基準位置となる前記第1基準点Aおよび第2基準点Bは、距離が近いほどX座標のズレは小さいが、二点間の距離が短ければ、自動直進を用いなくてもおおよそ直進走行は可能である。また、二点間の距離が短くなるときは、作業者が意図せず自動直進設定部材207に触れてしまい、第2基準点Bを取得するという状況が考えられる。
【0064】
このような問題の発生を防止すべく、前記自動直進設定部材207を操作して第2基準点Bを取得する際、第1基準点Aを取得した位置からの距離が所定距離未満、たとえば、8~12m未満であるときは、制御装置100は第2基準点Bを削除し、記録させないものとする。その後、再度自動直進設定部材207が操作され、第1基準点Aを取得した位置からの距離が所定距離以上であれば、制御装置100は第2基準点Bを記録させるものとする。
【0065】
なお、図11(S501~S505)に示すように、第1基準点Aを取得した状態で、第2基準点Bを取得せずにハンドル35を所定時間内に所定量以上に操作し、走行車体2を旋回させたとき、制御装置100は、記録した第1基準点Aを削除する。その後、前記自動直進設定部材207が第1の方向W1に操作されると、制御装置100は、GPSアンテナ200により取得したその場所の位置座標を、第1基準点Aとして記録し、第1基準点AのY座標と第2基準点BのY座標を結ぶ線が直線状にならなくなることを防止する構成としてもよい。
【0066】
これにより、圃場の一端と他端の所定位置、たとえば、直進走行を終えて走行車体2が旋回を開始する位置と、旋回終了後に作業装置4を下降させて直進走行を開始する位置に第1基準点Aと第2基準点Bを設定することができ、作業装置4を下降させて直進走行する位置で自動直進システムを作動させ、作業位置が進行方向に対して左右方向にズレない、高精度な作業が可能になる。
【0067】
また、作業者の誤操作により第2基準点Bが実際に設定すべき位置と異なることを防止できるので、次の作業条で第1基準点Aと第2基準点Bを取得し直す必要が無く、自動直進を用いる作業条を増やし、圃場内の作業精度を一層向上させることができる。
【0068】
なお、圃場に入ってから最初に作業を行う作業条では、所定位置で自動直進設定部材207を第1の方向W1に操作して、上記の第1基準点Aと第2基準点Bを取得する作業が必須になるので、自動直進を用いず、作業者がハンドル35を操作して、機体を直進走行させることになる。
【0069】
上記のとおり、自動直進設定部材207の操作によって第1基準点Aと第2基準点Bを取得していると、該第1基準点Aと第2基準点Bの各Y座標を結んだ基準線Rが、自動直進の目安となる線となり、走行中の機体の位置座標のX座標が、自動直進の目安となる線のX座標と合致しているか否かを判定し、合致していなければ自動操舵装置205により合致する方向にハンドル35を自動操舵させることで、自動直進走行を実現することができる。
【0070】
上記の自動直進走行は、第1基準点Aと第2基準点Bが記録されている状態で、自動直進設定部材207を第2の方向W2、本実施形態では機体下方に向けて操作することで開始される。自動直進設定部材207を第2の方向W2に操作すると、制御装置100は、GPSアンテナ200が取得する位置座標のY座標と基準線RのY座標を比較し、前記操舵アクチュエータ206を作動させてハンドル35を左右方向に回転させ、走行車体2を直進走行すべき位置に移動させる制御を開始する。なお、自動直進設定部材207の第2の方向W2への操作が、入切部材の操作に該当する。
【0071】
この自動操舵制御は、前記ハンドル35が所定の時間内に走行車体2を旋回させる角度まで操作されるか、前記自動直進設定部材207が第2の方向W2に操作されると終了する。前記ハンドル35の操舵角度は、ハンドルポテンショメータ35aによって検知するものとする。なお、第1基準点Aまたは第2基準点BのY座標と一致する場所に走行車体2が到達すると、自動直進制御が終了される構成としてもよい。
【0072】
上記のとおり、自動直進制御は、ハンドル35を旋回操作するか、圃場端における旋回走行の開始地点付近に到達することで終了される。走行車体2が旋回走行する位置は、圃場端に近い位置であるので、自動直進制御に任せて作業者が操縦以外の作業を行っていると、旋回操作が遅れると予定外の位置に苗の植付が行われると共に、走行車体2が圃場端まで移動してしまい、旋回を行う位置まで後進が必要になり、作業能率が低下する問題が生じる。なお、図12は、第1基準位置A、第2基準位置B、基準線R、および目標位置と現在の機体の位置を示す模式図である。
【0073】
このような問題を防止すべく、図6などに示すように、前記整地クラッチの入(作動)および切(停止)による整地ロータ63の入切を検知する作業検知センサ209を設け、該作業検知センサ209が整地ロータ63の入(作動)を検知したとき、制御装置100は、走行車体2の位置座標(X座標およびY座標)である、目標位置座標(終了基準位置)を取得する。なお、該目標位置座標は、制御装置100、あるいは制御装置100に付随するメモリ領域に、少なくとも二ヵ所分を同時に保持可能とする。
【0074】
なお、作業検知センサ209による目標位置座標(終了基準位置)の取得は、整地ロータ63の入切の代わりに、作業装置4の上昇または下降、作業装置4への伝動の入または切、ハンドル35の旋回開始操舵または旋回終了操舵等を条件として行う構成としてもよい。
【0075】
そして、位置座標を取得した作業条の次の作業条において、前記自動操舵装置205を作動させて走行車体2を自動直進走行させるとき、制御装置100は、GPSアンテナ200が取得する現在位置座標のY座標から、直前の作業条(直近の作業条)で取得した目標位置座標のY座標までの距離を逐次算出する。このとき、制御装置100は、目標位置座標のX座標を現在位置座標のX座標に補正する構成としてもよい。
【0076】
そして、現在位置座標から目標位置座標までの距離が所定距離、たとえば、8~12mになる報知位置に走行車体2が到達すると、走行車体2が圃場端に接近しており、前記自動直進設定部材207を第2の方向W2に操作して自動直進制御を終了させる必要があることを作業者に知らせるべく、ブザーやランプ、あるいは画面上に数値や文字を表示する、報知装置208が作動する構成とする。
【0077】
なお、該報知装置208に数値や文字を表示するのは、走行車体2に表示パネル(図示省略)を設ける構成や、作業者が持ち込む情報端末(スマートフォン、タブレット等)に情報を送信して表示させる構成が考えられる。
【0078】
また、目標位置座標を取得していない作業条においては、走行車体2と目標位置までの距離を算出できないので、作業者は目視で圃場端を確認し、自動直進制御が不要と判断した位置で自動直進設定部材207を操作する必要がある。
【0079】
現在位置座標から目標位置座標までの距離については、前記左右の後輪11,11への左右のドライブシャフト42,42の回転を検知する後輪回転センサ210,210を設け、前記整地ロータ63を入にした位置から該後輪回転センサ210,210が検知した回転数を元に、制御装置100が移動距離を算出し、該移動距離と整地ロータ63を入にした位置のY座標位置までの距離を算出し、所定距離以内であれば報知装置208を作動させる構成としてもよい。
【0080】
しかしながら、報知装置208が作動しても、作業者が気付いて自動直進制御を終了させなければ、走行車体2を適切な位置で旋回させることはできない。これに対応すべく、前記報知装置208が作動してから所定距離(たとえば、2~5m)に亘って、自動直進設定部材207が第2の方向W2に操作されることなく走行車体2が前進走行したとき、前記制御装置100は、前記無段変速装置14のトラニオン軸14aを回動させ、走行車体2を減速させる。
【0081】
あるいは、距離でなく、前記報知装置208が作動してから所定時間(たとえば、2~5秒間)に亘って、自動直進設定部材207が第2の方向W2に操作されることなく走行車体2が前進走行したとき、前記制御装置100は、前記無段変速装置14の出力を低下させ、走行車体2を減速させる。
【0082】
上記の走行車体2の減速は、前記無段変速装置14のトラニオン軸14aをトラニオンアーム(図示省略)を介して回動させるHSTサーボモータ211を作動させ、該トラニオン軸14aを減速側に回動させることによって行われる。
【0083】
これにより、圃場端に接近すると走行車体2の走行速度が低下するので、作業者に圃場端の旋回位置が近付いていることを認識させることができ、適切な軌跡で旋回走行が行える。したがって、作業装置4が、圃場の外周の四辺、所謂枕地で重複して対地作業を行い、余分に作業資材(苗、肥料、薬剤等)を消費することが防止される。
【0084】
また、旋回後に整地ロータ63を入にして整地作業を開始する位置を、旋回前に整地作業を終了した位置に合わせることができるので、整地ロータ63による整地作業が行われない箇所の発生、および作業装置4による対地作業が行われない箇所の発生が防止される。これにより、整地作業が行われなかった箇所について、苗の植付深さが乱れる、肥料の浸透具合が異なる、走行が乱れるといった問題の発生が防止されると共に、対地作業が行われなかった位置について、作業者が手作業で作業を行う必要がなく、作業者の労力が軽減される。
【0085】
上記の自動減速は、時間経過により走行速度が漸減するものとし、緩やかに減速される制御構成とすると、作業装置4による対地作業精度、および整地ロータ63の整地精度が低下することや、作業者が揺さぶられることが防止される。あるいは、自動減速の開始後、一回、または所定時間ごとに複数回、急激な減速を行う制御構成とすると、走行車体2の揺れにより、作業者が圃場端の接近に気付きやすくなる。
【0086】
また、自動減速制御が行われている所定時間(第2所定時間)内に、前記自動直進設定部材207を操作して自動直進制御を解除すると、制御装置100は、その時点の走行速度を維持する構成としてもよい。これにより、作業走行が停止しないので、圃場端での旋回走行に速やかに移行することができ、作業能率の低下が防止される。
【0087】
あるいは、予め設定されている走行速度、または自動減速が開始された時点での走行速度に変速すべく、制御装置100は、無段変速装置14のHSTサーボモータ211を作動させて、トラニオン軸14aを増速側に回動させる構成としてもよい。走行速度が自動的に増速されることにより、作業者が変速操作レバー36を操作して走行速度を増速する必要がなくなるので、操作性が向上する。
【0088】
なお、報知装置208の作動に加えて、上記の走行車体2の自動減速制御により、走行車体2が圃場端、具体的には圃場端付近の旋回位置を認識することが期待されるが、作業者が別の作業に没入している、あるいは作業者が失神する等して、走行速度の自動減速にも気付かない可能性は想定される。
【0089】
したがって、前記走行車体2の自動減速制御は、前記無段変速装置14が前進、後進のいずれの走行速度も増減させない中立状態になるまで行われる。このとき、前記エンジン30は停止させない。これにより、その場に走行車体2を停止させることができるので、圃場端、所謂畦に機体が接触するまで前進することが防止され、機体の破損や、作業復帰するべく機体を後進させる距離が抑えられる。
【0090】
圃場端への接近により走行車体2の走行が自動停止したとき、走行車体2の走行速度の増減、および前後進を操作する変速操作レバー36を中立位置に戻すと、制御装置100は無段変速装置14による走行速度の増減操作を受け付ける状態にする。その上で、前記変速操作レバー36を前進側に操作すると、走行車体2の走行が再開される。当然のことではあるが、前記副変速操作レバー37を中立位置に操作し、駆動力が走行系統に伝動されない状態では、副変速操作レバー37を走行伝動が行われる位置に操作するまで、走行は開始されない。
【0091】
上記の自動直進制御の基準となる、第1基準点Aと第2基準点B、および第1基準点Aと第2基準点Bを結ぶ基準線Rは、圃場の一端から他端に向かう直進作業走行、および圃場の他端から一端に直進作業走行する際に必要である。
【0092】
しかしながら、圃場の四辺、いわゆる枕地の作業走行は、直進作業走行であるものの、上記の直進作業走行と異なる進行方向になる作業辺が一辺は存在し、その作業辺では前記基準線Rを用いても、自動直進制御を行うことはできない。
【0093】
また、圃場の外において、機体を移送用のトラックの荷台等に移動させるときや、納屋などに収納する際に、誤って自動直進設定部材207を第2の方向W2に操作して自動操舵装置205を作動可能な状態にしていると、機体を移動させる際に基準線RのX座標と機体のX座標が不一致となり、直進走行位置からずれていると判断され、自動操舵装置205がハンドル35を自動操舵させることが起こり得る。これにより、機体の進路が本来走行すべき進路からずれた位置になり、機体の積み込みや収納作業に余分な手間が生じることになる。
【0094】
これを防止するための一例として、圃場から機体が退出する前に、第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを消去するという方法がある。図6および図13(S601~S606)に示すように、走行車体2が圃場の四辺のうち、直進作業走行する進行方向に直交する進行方向を少なくとも一辺含む、三辺の走行が行われると、枕地作業が行われたと判断して、制御装置100が第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除させる。
【0095】
枕地での走行車体2の進行方向は、GPSアンテナ200が取得する走行車体2の位置座標のうち、X軸座標またはY軸座標の変化が連続することで判定される。これにより、圃場内を機体が走行している間に第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除することができるので、圃場外に出てから自動直進設定部材207を操作しても自動直進が行われることがなく、予定の進行方向からずれた方向に走行することが防止され、作業能率の低下が防止されると共に、作業の安全性が向上する。
【0096】
また、機体を別の圃場に移動させたとき、第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rが記録されていないことにより、作業中の圃場に適さない基準線Rに基づき自動直進制御が行われることを防止できるので、自動直進の精度が向上する。
【0097】
なお、圃場外に移動したときは、短時間で移送用のトラックに移動させる、あるいは納屋に移動させるべく、前記副変速操作レバー37を走行ポジションに操作する。この走行ポジションへの副変速操作レバー37の操作を検知する副変速位置検知スイッチ37aを設け、副変速位置検知スイッチ37aが走行ポジションに副変速操作レバー37が操作されたことを検知すると、第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除する構成としてもよい。
【0098】
第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rの削除を、圃場内では使用しない走行ポジションへの副変速操作レバー37の操作に基づき行うことにより、枕地走行時に第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rが削除されていないとき、確実に削除することができるので、走行車体2の移動や別の圃場の作業時に自動直進制御が行われることがなく、作業精度の低下が防止される。
【0099】
また、副変速操作レバー37の誤操作により、圃場内で誤って第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除することを防止できるので、第1基準点Aと第2基準点Bを取得し直す作業条で自動直進が使えなくなることが防止され、作業精度が向上する。あるいは、前記IMU203や、走行車体2の前後および左右方向の傾斜を検知する傾斜センサ212を用いて、走行車体2が所定角度以上(たとえば、10~15度)前上がり傾斜姿勢になると、制御装置100は、第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除する構成としてもよい。
【0100】
圃場から出る際、圃場の出入口を通過する走行車体2は、作業中には略なり得ない角度の前上がり傾斜姿勢になるので、この傾斜角度が検知されたときは、圃場から出るときであると判断できる。これにより、枕地走行時に第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rが削除されていないとき、確実に削除することができるので、走行車体2の移動や別の圃場の作業時に自動直進制御が行われることがなく、作業精度の低下が防止される。
【0101】
なお、圃場や作業の内容によっては、走行車体2を後進させて出入口から出ることも考えられるので、前上がり傾斜角度だけでなく、後上がり傾斜角度に基づき第1基準点Aと第2基準点B、および基準線Rを削除する制御構成としてもよい。
【0102】
また、圃場における作業終了後、他の圃場に移動して作業する場合、他の圃場における作業開始時には前の圃場の作業で使用した基準線R(すなわち、走行基準データ)が残っていると、たとえば、誤って自動操舵機能を入(オン)にすると作業中の圃場に適さない方向に走行するため、作業性が低下してしまう。また、機体が走行する方向は作業者の意図しない方向でもあるため、作業者が余分な操作を強いられることになる。
【0103】
これを防止するために、制御装置100は、所定の条件が満たされた場合に、自動的に基準線Rを消去する制御を行う。これから説明する基準線Rの自動消去制御では、上記した自動消去制御よりもより正確に枕地を検知することが可能である。次に、図14図17を参照して、基準線Rの自動消去について説明する。図14図17は、基準線(走行基準データ)を自動消去する制御を示すフローチャートである。なお、制御装置100による以下の制御は、機体が圃場内で対地作業を行っている場合の制御である。
【0104】
図14に示すように、制御装置100は、機体(走行車体2)の自動直進走行を検知する(ステップS701)。制御装置100は、機体が自動直進走行である場合(ステップS701:Yes)、機体の直進走行以外の走行状態を検知手段によって検知する(ステップS702)。制御装置100は、機体の直進走行以外の走行状態を検知手段によって検知すると(ステップS702:Yes)、取得した基準線Rを消去する制御を行う(ステップS703)。
【0105】
なお、ステップS701の処理において、制御装置100が機体の自動直進走行を検知しない場合(ステップS701:No)、自動直進走行を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS702の処理において、制御装置100が機体の直進走行以外の走行状態を検知しない場合(ステップS702:No)、直進走行以外の走行状態を検知するまでこの処理を繰り返す。
【0106】
かかる構成によれば、検知手段により機体の直進走行以外として設定された走行状態が検知されると基準線Rを消去することで、他の圃場における作業で前の圃場の基準線Rを使用することがないため、作業中の圃場に適さない方向や作業者の意図しない方向に向けて自動操舵がはたらくのを防止することができる。これにより、作業性を向上させると共に、余分な操作の発生を防止して省力化を図ることができる。
【0107】
また、制御装置100は、たとえば、基準線Rからの機体のずれ角を検出することで、機体の直進走行以外の走行状態を検知する。この場合、制御装置100は、検知手段が基準線Rから所定値(たとえば、45度)以上のずれ角を検知した場合に上記した走行状態として判断する。
【0108】
この場合、図15に示すように、制御装置100は、機体が自動直進走行である場合(ステップS801:Yes)、基準線Rに対する所定値以上のずれ角を検知手段によって検知する(ステップS802)。制御装置100は、基準線Rに対する所定値以上のずれ角を検知手段によって検知すると(ステップS802:Yes)、取得した基準線Rを消去する制御を行う(ステップS803)。
【0109】
なお、ステップS801の処理において、制御装置100が機体の自動直進走行を検知しない場合(ステップS801:No)、自動直進走行を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS802の処理において、制御装置100が所定値以上のずれ角を検知しない場合(ステップS802:No)、直進走行以外の走行状態を検知するまでこの処理を繰り返す。
【0110】
また、制御装置100は、圃場において取得した基準線R以外にも、第1基準位置Aと第2基準位置Bとを消去してもよい。
【0111】
なお、基準線Rからの機体の所定値以上のずれ角を検知する検知手段としては、GPSアンテナ200で取得する位置情報から走行経路を割り出して判定する手段の他、方位センサ204、傾斜センサ212(図6参照)などを用いることができる。
【0112】
かかる構成によれば、基準線Rに対する機体の所定値以上のずれ角を検知することで、たとえば、圃場における植付作業の最終工程である圃場内の外縁を植える作業、いわゆる枕地植え作業を認識することができる。枕地植え作業を認識することで、作業中の圃場における機体の直進走行がもはや不要であることがわかるため、基準線Rを消去することで、他の圃場に移動中や他の圃場で作業中に、作業中の圃場に適さない方向や作業者の意図しない方向に向けて自動操舵がはたらくのを防止することができ、作業性を向上させることができる。また、基準線Rを手動で消去する必要がないため、基準線Rにかかる手間を省くことができる。これにより、操作性を向上させることができる。
【0113】
また、機体の走行状態以外で、機体が自動直進走行の場合に、作業装置4の作業状態を検知(認識)して基準線Rを消去してもよい。図16に示すように、制御装置100は、機体の自動直進走行を検知する(ステップS901)。制御装置100は、機体が自動直進走行である場合(ステップS901:Yes)、基準線Rに対する所定値以上のずれ角を検知手段によって検知すると(ステップS902:Yes)、作業装置の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知し(ステップS903)、作業装置4の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知すると(ステップS903:Yes)、取得した基準線Rを消去する制御を行う(ステップS904)。
【0114】
なお、ステップS901の処理において、制御装置100が機体の自動直進走行を検知しない場合(ステップS901:No)、自動直進走行を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS902の処理において、制御装置100が所定値以上のずれ角を検知しない場合(ステップS902:No)、所定値以上のずれ角を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS903の処理において、制御装置100が作業装置4の作業状態を検知しない場合(ステップS903:No)、作業状態を検知するまでこの処理を繰り返す。
【0115】
かかる構成によれば、作業装置4の作業状態(枕地植え作業)を検知することで、圃場における植付作業の最終工程である圃場内の外縁を植える枕地植え作業を認識することができる。枕地植え作業を認識することで、作業中の圃場における走行車体2の直進走行がもはや不要であることがわかるため、基準線Rを消去することで、他の圃場に移動中や他の圃場で作業中に、作業中の圃場に適さない方向や作業者の意図しない方向に向けて自動操舵がはたらくのを防止することができ、作業性を向上させることができる。また、基準線Rを手動で消去する必要がないため、基準線Rの消去にかかる手間を省くことができる。これにより、操作性を向上させることができる。
【0116】
また、制御装置100は、作業装置4の作業状態を検知(認識)したうえで、機体の所定値以上の走行を検知して基準線Rを消去してもよい。図17に示すように、制御装置100は、機体が自動直進走行であるか否かを検知する(ステップS1001)。制御装置100は、機体が自動直進走行である場合(ステップS1001:Yes)、基準線Rに対する所定値以上のずれ角を検知手段によって検知すると(ステップS1002:Yes)、作業装置の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知する(ステップS1003)。制御装置100は、作業装置4の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知すると(ステップS1003:Yes)、機体の所定値(たとえば、5m)以上の継続した走行を検知する(ステップS1004)。制御装置100は、機体の所定値以上の継続した走行を検知すると(ステップS1004:Yes)、取得した基準線Rを消去する制御を行う(ステップS1005)。
【0117】
なお、ステップS1001の処理において、制御装置100が機体の自動直進走行を検知しない場合(ステップS1001:No)、自動直進走行を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS1002の処理において、制御装置100が所定値以上のずれ角を検知しない場合(ステップS1002:No)、所定値以上のずれ角を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS1003の処理において、制御装置100が作業装置4の作業状態を検知しない場合(ステップS1003:No)、作業状態を検知するまでこの処理を繰り返す。また、ステップS1004の処理において、制御装置100が機体の所定値以上の走行を検知しない場合(ステップS1004:No)、所定値以上の走行を検知するまでこの処理を繰り返す。
【0118】
なお、機体の所定値以上の走行を検知する検知手段には、後輪回転センサ210(図6参照)などを用いることができる。
【0119】
また、検知手段は、作業検知センサ209(図6参照)の入切によって作業装置4の作業状態を検知する。この場合、作業装置4の作業状態を検知する検知手段としては、たとえば、植付クラッチの入切を検出する植付クラッチ入切センサであることが好ましい。植付クラッチの入切センサが入になることで、上記した作業状態として枕地植え作業が開始された状態であることを認識することができる。
【0120】
また、制御装置100は、機体が自動直進走行である場合、機体の直進走行以外の走行状態を検知手段によって検知したうえで、作業装置4の作業中として設定された作業状態を検知手段によって検知すると、取得した基準線Rを消去してもよい。
【0121】
かかる構成によれば、作業装置4の作業状態を検知し、かつ、機体の所定値以上の走行を検知することで、圃場における植付作業の最終工程である圃場内の外縁を植える枕地植え作業をより確実に認識することができる。枕地植え作業を認識することで、作業中の圃場における機体の直進走行がもはや不要であることがわかるため、基準線Rを消去することで、他の圃場に移動中や他の圃場で作業中に、作業中の圃場に適さない方向や作業者の意図しない方向に向けて自動操舵がはたらくのを防止することができ、作業性を向上させることができる。また、基準線Rを手動で消去する必要がないため、基準線Rの消去にかかる手間を省くことができる。これにより、操作性を向上させることができる。
【0122】
また、制御装置100は、基準線Rからの機体のずれ角を検知した場合、作業装置4の作業状態を検知した場合、あるいはこれらの双方を検知した場合に、所定値以上の走行を検知するために設定された走行距離を消去する。これにより、基準線Rを消去した後の作業における誤作動を防止することができる。
【0123】
また、制御装置100は、基準線Rを消去する場合に、報知装置208(図6参照)が、たとえば、所定時間(2秒程度)の報知音を発するよう制御してもよい。これにより、基準線Rが消去されたことを作業者が認識することができる。また、制御装置100は、基準線Rを消去する場合に、たとえば、モニタに文字などを表示するよう制御してもよい。これにより、基準線Rが消去されたことを作業者が認識することができる。
【0124】
なお、作業装置4において苗植付けや播種を複数条同時に行える構成としているが、作業条ごとに装置の作動の入切を行う部分条クラッチ(畦クラッチともいう)を複数設け、作業装置4の全ての作業条のうちの一部の駆動を停止させて残りの一部の作業条のみで作業を行うとき、検知手段により一部の部分条クラッチにより作動を切状態としていることを検知することに基づいて、基準線Rを消去する構成としてもよい。かかる構成における検知手段は、前述した検知手段の検知機能に加えて部分条クラッチの切状態も検知する構成としてもよい。
【0125】
また、図18を参照して、作業車両(苗移植機)の他の例について説明する。図18は、作業車両(苗移植機)の他の例を示す左側面図である。図18に示すように、他の例に係る苗移植機は、バックミラーなどに代えて、あるいは、バックミラーなどに加えて、バックカメラ400と、モニタ(タブレットモニタ)401とを備える。バックカメラ400は、GPSアンテナ200が取り付けられるアンテナフレーム201の後側フレーム201bに設けられる。モニタ401は、アンテナフレーム201の前側フレーム201aに設けられる。
【0126】
かかる構成によれば、機体後方の確認に加え、圃場における機体後方の植付跡や機体の直進状態を確認することができる。また、バックカメラ400で撮影した画像を処理することで、機体後方の連続欠株を認識することができる。なお、たとえば、連続欠株時には報知装置208(図6参照)が報知音を発するようにしてもよい。これにより、作業者が連続欠株が生じていることを認識することができる。
【0127】
また、他の例に係る苗移植機は、作業装置(植付装置)4に、積載された苗の減少を検知する苗減少スイッチ403を備える。機体の自動直進走行時、苗植え作業中に苗減少スイッチ403が苗の減少を検知すると、たとえば、制御装置100(図6参照)がHST(電動HST)14で機体を自動減速するように制御する。かかる構成によれば、機体が安全速(たとえば、0.3m/s以下の速度)として、苗補給を安全に行うことができる。
【0128】
また、他の例に係る苗移植機は、GPSアンテナ200において、たとえば、ジャイロセンサなどで機体のローリングを検知する。機体の自動直進走行時、苗植え作業中に圃場の凹凸などで機体のローリングが所定値以上の場合は、たとえば、制御装置100がHST(電動HST)14で機体を所定速度(たとえば、0.5m/s)に自動減速するように制御する。かかる構成によれば、機体の直進安定性を向上させることができる。
【0129】
また、図3図4図5Aおよび図5Bに示すように、自動操舵装置205により、走行車体2を自動直進走行させているときであっても、作業装置4等が消費する作業資材の補充作業や、機体や圃場に何らかの問題が発生したとき等には、作業者が走行を停止させる必要がある。この走行停止操作は、変速操作レバー36を中立位置に操作して無段変速装置14を中立にする、ブレーキペダルを踏んでブレーキを利かせる、サイドクラッチペダル43aを踏んでサイドクラッチ機構43を切状態にする、という方法が考えられる。
【0130】
上記の何れかの方法で走行車体2の走行を停止させたときであっても、制御装置100は、自動操舵装置205を停止させない構成とする。これにより、変速操作レバー36を前進操作する、ブレーキペダルやサイドクラッチペダル43aの操作を解除するなどして、走行停止を解除すると、すぐに自動直進走行に復帰することが可能になり、作業能率の低下が防止される。
【0131】
しかしながら、停止中にハンドル35が手動操舵される、あるいは自動操舵装置205が作動してハンドル35が自動操舵されると、自動直進走行の再開時の進行方向が停止時の進行方向からずれてしまい、走行車体2の進行方向が直線状でなくなるおそれがある。とくに、走行車体2が停止していると、GPSアンテナ200が取得する位置座標は、地球の自転やGPS衛星の公転等の影響を受けやすく、実際の走行車体2が存在する位置とは異なる位置座標を取得することがあり、基準線Rから離れた位置にある、と誤認されやすくなる。
【0132】
これを防止すべく、変速操作レバー36の操作位置を検知するレバーポテンショメータ36a、ブレーキペダルやクラッチペダルの踏込操作を検知する踏込検知スイッチ213を設け、自動直進走行中に走行を停止させる操作が検知されると、制御装置100は、ハンドル35の操舵操作を反映しない、あるいはハンドル35を動かなくする構成とする。
【0133】
ハンドル35の操舵操作を反映しない構成とは、停車時の走行車体2の位置座標のX座標が基準線RのX座標から所定値以上ずれていても、操舵アクチュエータ206を作動させないことを意味する。また、ハンドル35を動かなくする構成とは、操舵アクチュエータ206の作動トルクを高くし、ハンドルロック状態にすることを意味する。
【0134】
上記構成により、走行再開後の進行方向がずれることを防止できるので、作業走行が直線状で行われ、作業精度の向上が図られる。
【0135】
ハンドル35は、自動直進走行中は操舵アクチュエータ206により自動操舵されるが、進路上の圃場の状態が自動直進走行に適さない(荒れている、圃場深度が深い、等)、障害物が存在する等の状況では、手動操作により回避行動をとる必要がある。操舵アクチュエータ206によるハンドル35の操舵操作は、次の構成により行われる。該ハンドル35の操舵操作に連動して回動するハンドル軸351の下部には入力ギア352を設け、操舵アクチュエータ206には出力ギア353を設ける。
【0136】
該入力ギア352と出力ギア353は、ハンドル35および操舵アクチュエータ206の下方に配置される操舵ギアケース354に内装される。そして、該入力ギア352と出力ギア353の間には、伝動比を変更して駆動力を伝動する中継ギア355を設ける。
【0137】
該入力ギア352、出力ギア353および中継ギア355のギア比は、ハンドル35の手動操作を妨げることを防止すべく、操舵アクチュエータ206が作動していても、手動操作によるトルクが強くなるギア比とする。これにより、自動直進中であってもハンドル35の手動操作に要する力が増大することを防止できるので、操作性が向上すると共に、走行に影響し得る状態の圃場や障害物を確実に回避することができるので、作業の安全性が確保される。
【0138】
また、苗移植機1は、GPSアンテナ200(図1参照)を内蔵したGNSSユニットが走行車体2に配設されている。GNSSユニットは、GPSアンテナ200で時間的に所定の間隔でGNSS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得することができる。また、GNSSユニットには、GPSアンテナ200に加え、たとえば、ジャイロセンサや加速度センサを利用した慣性航法装置と、これらを制御する制御基板が内蔵される。
【0139】
図19Aおよび図19Bは、アンテナフレーム201の説明図である。なお、図19Aには、苗移植機1の正面を示し、図19Bには、苗移植機1の左側面を示している。また、図20Aは、アンテナフレーム201の正面図である。図20Bは、アンテナフレーム201の斜視図である。図20Cは、アンテナフレーム201の下方よりの斜視図である。
【0140】
図19Aおよび図19Bに示すように、GPSアンテナ200が内蔵されたGNSSユニットは、前輪10の車軸10bの直上方に位置するように、走行車体2の前端側に基端が連結されたアンテナフレーム201の頂部に取り付けられている。通常状態におけるアンテナフレーム201の高さは、標準的な一般男性がフロアステップ33上で起立しても頭部と干渉しない程度の高さに設定される。
【0141】
アンテナフレーム201は、図20A図20Cに示すように、左右の前側フレーム201aの下部(前側下部フレーム201aa)と、前側フレーム201aの上部(前側上部フレーム201ab)と、上部L形フレーム201cと、後側フレーム201bとから構成される。
【0142】
左右の前側下部フレーム201aa,201aaの基端部には、一対のブラケット201e,201eが設けられており、かかるブラケット201e,201eを介して前側下部フレーム201aaは走行車体2のバンパ500に取り付けられる。
【0143】
前側上部フレーム201abは、左右の前側下部フレーム201aa,201aaに回動連結具201f,201fを介してそれぞれ基端が回動自在に連結された左右の縦フレーム2011,2012を有する、平面視で略コ字状のフレームである。
【0144】
左右の回動連結具201f,201f同士は、図20A図20Cに示すように、ノブボルト201gで連結固定し、回動連結具201f,201fとフロントカバー40(図19B参照)との間には補強フレーム201h(図19B参照)を掛け渡している。このように、簡単な構成によって前側下部フレーム201aa,201aaや左右の縦フレーム2011,2012のガタツキを防止している。
【0145】
左右の前側下部フレーム201aa,201aaは、図19Aに示すように、上端側がフロントカバー40と接触しない程度まで内側へ向けて斜めに立設されている。そのため、操縦部41と機体左右側に配置された予備苗載台501,501との間には、たとえば、作業者Mが機体前方とフロアステップ33との間を移動できるだけのスペースが形成される。
【0146】
そして、左右の縦フレーム2011,2012の上部間に架け渡されたアルミブロック201i上にGNSSユニット(GPSアンテナ200)が配設されている。このように、GNSSユニットと鋼管製のアンテナフレーム201との間にアルミブロック201iを介在させることによって、GPSアンテナ200に直接取り付けるよりも受信感度を向上させている。
【0147】
上部L形フレーム201cは、先端部が前側上部フレーム201abの後端部に連接されており、GNSSユニットから延在するハーネスなどの配線が当該上部L形フレーム201cに沿って配索される。
【0148】
後側フレーム201bは、下端を操縦席41の後部側において、リアステップに連結される。操縦席41の後方には、施肥装置5の貯留ホッパ5bが左右にそれぞれ配設されているが、かかる左右の貯留ホッパ5bの間に後側フレーム201cを位置させているため、貯留ホッパ5bを開閉する場合に干渉することがない。
【0149】
このように、GNSSユニットを配設するためのアンテナフレーム201は、前側をバンパ500とフロントカバー40とに、後側をリアステップに連結しており、構造的に安定する3点支持としたため、きわめて安定した状態で走行車体2に取付けることができる。
【0150】
後側フレーム201bの上端部には、上部L形フレーム201cの他端部を着脱自在に連結する連結部201jが設けられており、上部L形フレーム201cを着脱自在に連結している。連結部201jは、たとえば、上部L形フレーム201cと後側フレーム201bとの連結端部に、それぞれ形成されたピン挿入孔(図示せず)と、かかるピン挿入孔に挿脱可能な締結ピン(図示せず)とにより構成するとよい。このように、簡単な構成によって、上部L形フレーム201cと後側フレーム201bとを着脱自在に連結することができる。
【0151】
こうして、上部L形フレーム201cを後側フレーム201bから離脱させ、図20Bに示すように、回動連結具201f,201fによって、前側下部フレーム201aa,201aaに対して前側上部フレーム201abおよび上部L形フレーム201cを後部下方に向けて回動させる簡単な操作によって、図19Bに示すように、アンテナフレーム201の高さを低くすることができる。
【0152】
したがって、たとえば、苗移植機1を輸送する場合や納屋などへ格納する場合に、GNSSユニットの厚みが高さ的な障害となる場合、GNSSユニットを取り外すことなく、全体車高を低くすることができる。
【0153】
また、アンテナフレーム201(前側上部フレーム201abおよび上部L形フレーム201c)を回動させる構成として、回動連結具201fを設けた簡単な構成としているため、コストの増加を抑制するとともに、アンテナフレーム201全体のガタツキを最小限にすることができる。しかも、回動操作を1アクションで行える利便性を有する。
【0154】
また、図19Bに示すように、後側フレーム201bの上端近傍に略Y字状に形成したフレーム受具201kを設けている。したがって、アンテナフレーム201を折り畳んで高さを低くする場合、上部L形フレーム201cをフレーム受具201kに係止することで安定保持することができる。
【0155】
また、図20Aおよび図20Bに示すように、アンテナフレーム201の前側フレーム201a,201aの上部、すなわち、前側上部フレーム201aa,201aaは、先端側となる上部L形フレーム201c側に向けて正面視で間隔が狭くなるように形成されている。これにより、アンテナフレーム201の強度が高まる。
【0156】
また、苗移植機1は、上記した自動直進状態を作業者に知らせるモニタ300を操縦部に備える。図21は、モニタ300の説明図である。モニタ300は、機体が自動直進走行を行う場合に点灯する直進アシストランプ301と、A点ランプ302と、B点ランプ303とが配設されている。モニタ300は、かかる3つのランプ301,302,303の表示態様によって、自動直進状態にかかる各種情報を作業者に知らせる。このため、モニタ300をシンプルで安価に構成することができる。
【0157】
モニタ300では、たとえば、機体の向きが右側にずれている場合はA点ランプ302が点滅する。A点ランプ302を点滅させることで、作業者に左にハンドル35(図1参照)を切るように促す。また、モニタ300では、たとえば、機体の向きが左側にずれている場合はB点ランプ303が点滅する。B点ランプ303を点滅させることで、作業者に右にハンドル35を切るように促す。このように、A点ランプ302とB点ランプ303とを方向指示器と同様の表示態様とすることで、作業者にハンドル35を切る方向をわかりやすく伝えることができる。
【0158】
また、モニタ300では、機体が自動直進走行可能な状態にある場合にはA点ランプ302およびB点ランプ303が共に点灯する。また、自動直進走行を入にする場合は、たとえば、整地ロータ63が切の場合には自動直進走行を入にできないため、この場合にはたとえば報知装置208(図6参照)から報知音(警告音)を発するとともに、中央の直進アシストランプ301が、たとえば2回点滅する。かかる表示態様によって、作業者に自動直進走行不可であることを知らせる。このため、モニタ300をシンプルで安価に構成することができる。
【0159】
また、モニタ300では、機体が自動直進走行可能な状態にある場合にはA点ランプ302およびB点ランプ303が共に点灯し、さらに、自動直進走行を入にする場合は、たとえば、GPSアンテナ200によるGPS受信不良の場合には自動直進走行を入にできないため、この場合にはたとえば報知装置208(図6参照)から報知音(警告音)を発するとともに、中央の直進アシストランプ301が、たとえば3回点滅する。かかる表示態様によって、作業者に自動直進走行不可であることを知らせる。このため、モニタ300をシンプルで安価に構成することができる。また、直進アシストランプ301の点滅回数を他の警告時と変えることで、表示態様によって警告内容を作業者に知らせることができる。
【0160】
また、モニタ300には、GPSランプ304が設けられる。GPSランプ304は、3つの表示ランプを有し、GPS受信状態にあわせて表示ランプの数を変更する。モニタ300では、かかる表示態様によって作業者にGPS受信状態を知らせる。このため、GPS受信不良の状態での自動直進走行を防ぐことができる。なお、以上説明した各ランプ301,302,303,304や報知装置208などは、制御装置100(図6参照)によって制御される。
【0161】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0162】
1 作業車両(苗移植機)
2 走行車体
35 ハンドル(操舵部材)
100 制御装置
200 GPSアンテナ(位置情報取得装置)
205 自動操舵装置(自動直進装置)
A 第1基準位置
B 第2基準位置