(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004052
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】加工支援システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240109BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20240109BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B23Q15/00 301C
G05B19/4155 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103498
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】疋田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】磯村 和秀
【テーマコード(参考)】
3C100
3C269
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA57
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
3C269AB07
3C269BB03
3C269BB05
3C269CC01
3C269MN44
(57)【要約】
【課題】一組の入力因子情報を入力するだけで、複数組の出力因子情報を出力する加工支援システムを提供する。
【解決手段】知識モデルMを活用した加工支援システム1であって、前記知識モデルMを用いて演算する演算処理装置3を備える。前記演算処理装置3は、一組の基本入力因子情報を取得する基本入力因子情報取得部3aと、前記一組の基本入力因子情報に基づいて、複数組のバリエーション入力因子情報を生成する入力因子情報生成部3bと、前記知識モデルMに基づいて、一組の基本出力因子情報と、複数組のバリエーション出力因子情報と、を生成する出力因子情報生成部3cと、前記複数組のバリエーション出力因子情報から少なくとも一組の教示用出力因子情報を選定する選定部3dと、前記一組の基本出力因子情報を教示するとともに、選定された少なくとも前記一組の教示用出力因子情報を教示する教示処理部3eと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置による工作物の加工における因子同士の関係性を定義した知識モデルを活用した加工支援システムであって、
前記知識モデルを格納する記憶装置と、
前記知識モデルを用いて演算する演算処理装置と、
を備え、
前記演算処理装置は、
一組の基本入力因子情報を取得する基本入力因子情報取得部と、
前記一組の基本入力因子情報に基づいて、前記一組の基本入力因子情報と異なる複数組のバリエーション入力因子情報を生成する入力因子情報生成部と、
前記知識モデルに基づいて、前記一組の基本入力因子情報に対応する一組の基本出力因子情報と、前記複数組のバリエーション入力因子情報に対応する複数組のバリエーション出力因子情報と、を生成する出力因子情報生成部と、
前記複数組のバリエーション出力因子情報から少なくとも一組の教示用出力因子情報を選定する選定部と、
前記一組の基本出力因子情報を教示するとともに、選定された少なくとも前記一組の教示用出力因子情報を教示する教示処理部と、
を備える、加工支援システム。
【請求項2】
前記選定部は、前記複数組のバリエーション出力因子情報のうち前記工作物の加工精度の予測値が変化する予測値変化点を基準に、少なくとも前記一組の教示用出力因子情報を選定する、請求項1に記載の加工支援システム。
【請求項3】
前記選定部は、前記予測値変化点の前後における、少なくとも前記一組の教示用出力因子情報を選定する、請求項2に記載の加工支援システム。
【請求項4】
前記一組の基本入力因子情報は、目標加工精度を含み、
前記選定部は、前記複数組のバリエーション出力因子情報のうち前記目標加工精度を基準に少なくとも前記一組の教示用出力因子情報を選定する、請求項1に記載の加工支援システム。
【請求項5】
前記選定部は、前記目標加工精度の前後における、少なくとも前記一組の教示用出力因子情報を選定する、請求項4に記載の加工支援システム。
【請求項6】
前記一組の基本入力因子情報は、目標サイクルタイムを含み、
前記複数組のバリエーション入力因子情報は、前記一組の基本入力因子情報と異なる目標サイクルタイムを含む、請求項1に記載の加工支援システム。
【請求項7】
前記一組の基本入力因子情報は、前記加工装置の機械構成情報を含み、
前記複数組のバリエーション入力因子情報は、前記一組の基本入力因子情報とは異なる他の加工機の機械構成情報を含む、請求項1に記載の加工支援システム。
【請求項8】
入力された前記一組の基本入力因子情報を訓練データとして、機械学習により知識モデルにおける少なくとも前記一組の教示用出力因子情報の選定基準が更新される、請求項1に記載の加工支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業機械における加工条件を決定するために、熟練者の知識をデータベース化し、当該データベースを活用することが知られている。例えば、特許文献1には、データベース化された知識モデルについて記載されている。知識モデルは、種々の技術用語により定義された複数の因子と、因子同士の関係とにより構成されたモデルである。そして、知識モデルを用いて、加工条件の最適化を図ることができるとされている。
【0003】
上記の知識モデルを利用した加工支援システムを用いて、工作物情報、目標サイクルタイム、目標加工精度等を入力因子情報として入力すると、サイクルタイム、加工条件、加工精度予測が、出力因子情報として出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術によれば、工作物情報、目標サイクルタイム、目標加工精度等を含む一組の入力因子情報を入力したとき、この一組の入力因子情報に対応する出力因子情報が一組しか出力されない。このため、複数パターンの加工条件が必要とされる場合や、顧客の要望が変化した場合には、複数組の入力因子情報を入力することになるので、入力作業が煩わしい。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、一組の入力因子情報を入力するだけで、複数組の出力因子情報を出力する加工支援システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
加工装置による工作物の加工における因子同士の関係性を定義した知識モデルを活用した加工支援システムであって、
前記知識モデルを格納する記憶装置と、
前記知識モデルを用いて演算する演算処理装置と、
を備え、
前記演算処理装置は、
一組の基本入力因子情報を取得する基本入力因子情報取得部と、
前記一組の基本入力因子情報に基づいて、前記一組の基本入力因子情報と異なる複数組のバリエーション入力因子情報を生成する入力因子情報生成部と、
前記知識モデルに基づいて、前記一組の基本入力因子情報に対応する一組の基本出力因子情報と、前記複数組のバリエーション入力因子情報に対応する複数組のバリエーション出力因子情報と、を生成する出力因子情報生成部と、
前記複数組のバリエーション出力因子情報から少なくとも一組の教示用出力因子情報を選定する選定部と、
前記一組の基本出力因子情報を教示するとともに、選定された少なくとも前記一組の教示用出力因子情報を教示する教示処理部と、
を備える、加工支援システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、入力された一組の入力因子情報に対応する一組の出力因子情報と、少なくとも一組の教示用出力因子情報と、が表示される。これにより、一組の入力因子情報を入力するだけで、複数組の出力因子情報を得ることができるので、入力因子情報の入力作業を省力化できる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、一組の入力因子情報を入力するだけで、複数組の出力因子情報を出力する加工支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る加工支援システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態1に係る演算処理装置、記憶装置、入力装置、および表示装置を示す図である。
【
図3】知識モデルを表現した知識ネットワーク図を示す図である。
【
図6】加工支援システムのメインルーチンを示すフローチャートである。
【
図7】出力因子情報生成処理を示すフローチャートである。
【
図9】基本入力因子、バリエーション入力因子、基本出力因子、バリエーション出力因子、および教示用出力因子の関係を示す図である。
【
図10】荒仕上分割の態様による、サイクルタイムと振れの変化を示すグラフである。
【
図11】実施形態2に係る加工支援システムにおける、選定処理を示すフローチャートである。
【
図12】真円度が変化する前後で選定される教示用出力因子情報を示すグラフである。
【
図13】実施形態5に係る加工支援システムのメインルーチンを示すフローチャートである。
【
図14】機械学習処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
1.加工支援システムの構成
実施形態1の加工支援システムの構成について
図1~
図2を参照して説明する。加工支援システムは、工作物を加工する機械加工分野に適用される。機械加工分野には、例えば、切削加工、研削加工、放電加工、プレス加工などが含まれる。本形態に係る加工支援システムは、機械加工分野において、熟練者による技術情報に関する知識を記述した知識モデルを活用するシステムである。
【0012】
加工支援システム1は、
図1に示すように、記憶装置2と、演算処理装置3と、を備える。演算処理装置3には、入力装置4および表示装置5が接続されている。加工支援システム1は、複数の加工装置6とネットワークを構成する。つまり、複数の加工装置6と加工支援システム1とは、相互に通信可能に構成されている。
【0013】
記憶装置2は、知識モデルM、加工装置6の機械構成情報などを格納する。演算処理装置3は、知識モデルMを用いた演算処理を行う。加工装置6は、例えば、研削盤、旋盤、マシニングセンタ、フライス盤、歯車加工機、ボーリング加工機などである。本形態では研削盤を例にして説明する。
【0014】
加工支援システム1は、知識モデルMを用いて、加工装置6の操作の支援、動作条件の決定、機械状態の判定、工作物Wの状態の判定などを行う。
【0015】
一般に、機械加工分野においては、作業者は、工作物Wの材質、工具の材質、工作物W品質、加工サイクルタイムなどの種々の情報を考慮して、加工条件としての切削速度や単位時間当たりの切込量などを決定する。この場合、作業者が種々の入力情報を取得して加工条件を決定するに際して、作業者の思考過程をモデル化したものが、知識モデルMである。
【0016】
つまり、知識モデルMは、工作物Wの材質、工具の材質、工作物Wの品質、加工サイクルタイム、切削速度、切込量などに加えて、作業者の思考過程において登場する産業技術要素のそれぞれを因子として定義され、因子同士の関係性が定義されている。
【0017】
例えば、加工支援システム1は、加工装置6の加工条件の決定に際して、工作物Wの材質や工作物Wの品質などを入力因子として取得した場合に、知識モデルMを用いることにより、出力因子としての切削速度や切込量などの加工条件を出力することができる。
【0018】
図2に示すように、演算処理装置3は、基本入力因子情報取得部3aと、入力因子情報生成部3bと、出力因子情報生成部3cと、選定部3dと、教示処理部3eと、を備える。
【0019】
基本入力因子情報取得部3aは、入力装置4から、基本入力因子情報を取得する。基本入力因子情報は、複数の入力因子情報が一組にまとめられたものである。基本入力因子情報は、工作物情報(工作物Wの形状、材質等)、目標サイクルタイム、目標加工精度(目標真円度、目標びびり、目標振れ、目標位相角、目標焼け等)等を含む。
【0020】
入力因子情報生成部3bは、一組の基本入力因子情報から、一組の基本入力因子情報と異なる複数組のバリエーション入力因子情報を生成する。バリエーション入力因子情報は、複数の入力因子情報が一組にまとめられたものである。バリエーション入力因子情報は、基本入力因子情報と異なっている。つまり、バリエーション入力因子情報胃含まれる少なくとも一つの入力因子情報は、基本入力因子情報を構成する入力因子情報と異なっている。
【0021】
出力因子情報生成部3cは、記憶装置2に格納された知識モデルMに基づいて、一組の基本出力因子情報と、複数組のバリエーション出力因子情報と、を生成する。基本出力因子情報は、複数の出力因子情報が一組にまとめられたものであり、上記した一組の基本入力因子情報に対応するものである。また、バリエーション出力因子情報は、複数の出力因子情報が一組にまとめられたものであり、上記したバリエーション入力因子情報に対応するものである。基本出力因子情報、およびバリエーション出力因子情報は、サイクルタイム、加工条件(荒仕上分割の態様等)、加工装置6の機械構成情報、加工精度予測結果(真円度、びびり、振れ、位相角、焼け等)等を含む。
【0022】
選定部3dは、出力因子情報生成部3cが生成した複数組のバリエーション出力因子情報から少なくとも一組の教示用出力因子情報を選定する。選定部3dは、教示用出力因子情報を一組選定してもよいし、二組以上を選定してもよい。
【0023】
教示処理部3eは、一組の基本出力因子情報と、選定された少なくとも一組の教示用出力因子情報と、を表示装置5に表示させることにより、作業者に教示する。教示処理部3eは、印刷装置等の表示装置5とは異なる装置を介して、作業者に一組の基本出力因子情報および選定された少なくとも一組の教示用出力因子情報を作業者に教示してもよい。
【0024】
2.知識ネットワーク
図N
知識モデルMは、概念としては、ネットワーク形態で表現される。知識モデルMをネットワーク形態で表現した知識ネットワーク
図Nの例について、
図3を参照して説明する。つまり、知識ネットワーク
図Nは、知識モデルMをグラフィカルに表現したものである。本形態では、機械加工分野における知識モデルMに関する知識ネットワーク
図Nを例に挙げる。
【0025】
図3に示すように、知識ネットワーク
図Nは、複数のノード図形21と、ノード図形21同士を繋ぐリンク図形22とを備える。本形態では、ノード図形21は、四角形で囲まれた文字で表されている。本形態では、リンク図形22は、直線にて表されている。ただし、リンク図形22は、因子同士の定義の方向性を表すために矢印線で記載されてもよい。ノード図形21は、知識モデルMにおいて、産業技術用語により定義される因子を表す。
【0026】
複数の因子は、技術的な包含関係(上下関係、主従関係とも称する)を有する場合と、技術的な異種依存関係を有する場合とが存在する。つまり、因子同士の関係性は、上記の2種類に分類される。
【0027】
例えば、機械諸元は、剛性、機械制度、追従性および動作速度を包含する関係となる。つまり、技術的な包含関係を有する因子として、機械諸元を上位概念因子とし、剛性、機械制度、追従性および動作速度を下位概念因子とする。ただし、機械諸元に上記以外の因子が含まれる構成としてもよい。
【0028】
技術的に異種依存関係を有する因子として、例えば、剛性とサイクルタイムがある。以下において、技術的な包含関係を有する2つの因子の関係性を、単に包含関係と称し、技術的な異種依存関係を有する2つの因子の関係性を、単に異種依存関係と称する。
【0029】
リンク図形22は、ノード図形21同士の関係性を表す。リンク図形22は、知識モデルMにおいて、因子同士の関係性を表す。
【0030】
3.加工装置6
本形態に係る加工装置6について、
図4~
図5を参照して説明する。本形態においては、加工装置6として研削盤を例に説明する。ただし、加工装置6は研削盤に限られず、旋盤、マシニングセンタ、フライス盤、歯車加工機、ボーリング加工機等、任意の加工機を適宜に選択できる。
【0031】
加工装置6は、中心線Cを中心にして工作物Wを回転させ、回転体である工具としての砥石車16を回転させ、かつ、砥石車16を工作物Wに対して工作物Wの軸線に交差する方向に相対的に接近させることにより、工作物Wの外周面または内周面を研削する。加工装置6は、テーブルトラバース型の研削盤、砥石台トラバース型の研削盤などを適用可能である。また、加工装置6は、円筒研削盤、カム研削盤等を適用可能である。
【0032】
本形態においては、
図5に示すように、工作物Wは、例えば、軸状に形成されたカムシャフトとし、工作物Wの外周面が被加工部である場合を例にあげる。ただし、工作物Wの形状は、カムシャフトに限られず、円柱、内周面を有する筒状など、任意の形状とすることができる。工作物Wが筒状である場合は工作物Wの内周面を被加工部とすることができる。
【0033】
本形態においては、工作物Wは、略棒状であって両端において工作物支持部材により支持される。
【0034】
加工装置6の構成について、
図4を参照して説明する。本形態においては、加工装置6は、砥石台トラバース型のカム研削盤を例にあげる。ただし、加工装置6は、テーブルトラバース型を適用することもできる。加工装置6は、主として、ベッド11、主軸台12、心押台13、トラバースベース14、砥石台15、砥石車16、定寸装置17、砥石車修正装置18及びクーラント装置19を備える。
【0035】
ベッド11は、設置面上に固定されている。主軸台12は、ベッド11の上面において、X軸方向の手前側(
図4の下側)且つZ軸方向の一端側(
図4の左側)に設けられている。主軸台12は、工作物Wを中心線Cを中心としてZ軸回りに回転可能に支持する。工作物Wは、主軸台12に設けられたモータ12aの駆動により回転される。心押台13は、ベッド11の上面において、主軸台12に対してZ軸方向に対向する位置、すなわち、X軸方向の手前側(
図4の下側)且つZ軸方向の他端側(
図4の右側)に設けられている。つまり、主軸台12および心押台13が、工作物Wを回転可能に両端支持する。
【0036】
図5に示すように、工作物Wは、Z軸方向に長軸な円柱状をなす軸部30と、軸部30に配置された複数(本形態では5つ)のカム31~35と、を備える。複数のカムは、
図5において左側から順に、第1カム31、第2カム32、第3カム33、第4カム34および第5カム35とされる。第1~第5カム31~35は同形同大である。詳細には図示しないが、第1~第5カム31~35はZ軸方向から見て略卵形状をなしている。
【0037】
図4に示すように、トラバースベース14は、ベッド11の上面において、Z軸方向に移動可能に設けられている。トラバースベース14は、ベッド11に設けられたモータ14aの駆動により移動する。砥石台15は、トラバースベース14の上面において、X軸方向に移動可能に設けられている。砥石台15は、トラバースベース14に設けられたモータ15aの駆動により移動する。砥石車16は、砥石台15に回転可能に支持されている。砥石車16は、砥石台15に設けられたモータ16aの駆動により回転する。砥石車16は、複数の砥粒をボンド材により固定されて構成されている。
【0038】
定寸装置17は、工作物Wの寸法(径)を測定する。定寸装置17により、工作物Wにおける実切込み量を取得するための検出器20として機能する。
【0039】
砥石車修正装置18は、砥石車16の形状を修正する。砥石車修正装置18は、砥石車16のツルーイングを行う装置である。砥石車修正装置18は、ツルーイングに加えて、または、ツルーイングに代えて、砥石車16のドレッシングを行う装置としてもよい。さらに、砥石車修正装置18は、砥石車16の寸法(径)を測定する機能も有する。
【0040】
ここで、ツルーイングは、形直し作業であり、研削によって砥石車16が摩耗した場合に工作物Wの形状に合わせて砥石車16を成形する作業、片摩耗によって砥石車16の振れを取り除く作業等である。ドレッシングは、目直し(目立て)作業であり、砥粒の突き出し量を調整したり、砥粒の切れ刃を創成したりする作業である。ドレッシングは、目つぶれ、目詰まり、目こぼれ等を修正する作業であって、通常ツルーイング後に行われる。
【0041】
クーラント装置19は、クーラントノズルから砥石車16による工作物Wの研削点にクーラントを供給する。クーラント装置19は、回収したクーラントを、所定温度に冷却して、再度研削点に供給する。クーラント装置19は、クーラントの流量や供給タイミングの調整が可能となっている。なお、
図4において、符号19はクーラントノズルの位置を図示する。また、図示しないが、検出器20として、回収したクーラントの温度を取得する温度センサが備えられていてもよい。
【0042】
4.加工支援システム1の動作
続いて、加工支援システム1の動作について、
図6~
図8を参照しつつ説明する。
【0043】
4-1.入力処理(S1)
図6に示すように、加工支援システム1が始動されると、入力処理(S1)が実行される。入力処理(S1)においては、キーボード等の入力装置4を介して作業者から一組の基本入力因子情報が基本入力因子情報取得部3aに入力される。ただし、USBメモリ等の外部記憶装置から一組の基本入力因子情報が基本入力因子情報取得部3aに入力されてもよい。これにより基本入力因子情報取得部3aは、一組の基本入力因子情報を取得する。
【0044】
4-2.入力因子情報生成処理(S2)
次に、演算処理装置3は、入力因子情報生成処理(S2)を実行する。詳細に説明すると、入力因子情報生成部3bは、取得した一組の基本入力因子情報に含まれる各基本入力因子情報に基づいて、複数組のバリエーション入力因子情報を生成する。
【0045】
例えば、一組の基本入力因子情報が、基本入力因子情報の一つとして荒仕上分割の態様を含む場合について説明する。上記したように、本形態に係る工作物Wはカムシャフトである。カムシャフトに対して実施される荒仕上分割の態様としては、第1~第5カム31~35のそれぞれについて、荒仕上分割が実施されるか否かに対応して、25通りの態様が考えられる。入力因子情報生成部3bは、25通りの態様に対応する複数組のバリエーション入力因子情報を生成する。
【0046】
入力因子情報生成部3bは、一組の基本入力因子情報に含まれるすべての因子情報に対して、バリエーション入力因子情報を生成してもよいし、また、一部の因子情報に対して、バリエーション入力因子情報を生成してもよい。
【0047】
4-3.出力因子情報生成処理(S3)
次に、出力因子情報生成部3cは、出力因子情報生成処理(S3)を実行する。
図7に、出力因子情報生成処理のフローチャートを示す。
【0048】
出力因子情報生成部3cは、記憶装置2から、知識モデルMを取得する(S31)。続いて出力因子情報生成部3cは、一組の基本入力因子情報と、複数のバリエーション入力因子情報と、を取得する(S32)。
【0049】
続いて、出力因子情報生成部3cは、知識モデルMに基づいて、一組の基本入力因子情報から、一組の基本出力因子情報を生成する(S33)。また、出力因子情報生成部3cは、知識モデルMに基づいて、複数組のバリエーション入力因子情報から、複数組のバリエーション出力因子情報を生成する(S33)。
【0050】
以上により出力因子情報生成処理(S3)が終了する。出力因子情報生成処理(S3)が終了すると、選定処理(S4)が実行される。
【0051】
4-4.選定処理(S4)
続いて、
図6に示すように、選定部3dは、選定処理(S4)を実行する。
図8に選定処理のフローチャートを示す。選定処理(S4)が実行されると、選定部3dは、一組の基本入力因子情報の中から、目標加工精度を取得する(S41)。
【0052】
次に、選定部3dは、工作物Wの加工精度が変化する変化点を算出する(S42)。例えば、工作物Wの目標加工精度の一例として振れが含まれる場合、選定部3dは、例えば、上記した25通りの荒仕上分割の態様について、振れの予測値を算出する。そして、目標振れの前後における荒仕上分割の態様を選定する(S43)。
【0053】
さらに、工作物Wの目標加工精度の一例としてサイクルタイムが含まれる場合、選定部3dは、例えば、上記した25通りの荒仕上分割の態様について、サイクルタイムの予測値を算出する(S42)。そして、目標サイクルタイムの前後における荒仕上分割の態様を選定する(S43)。
【0054】
なお、本形態に係る選定基準においては、荒仕上分割が第1~第5カム31~35のすべてに実施される場合が、参照例として選定されるようになっている。
【0055】
以上により選定処理(S4)が終了する。選定処理(S4)が終了すると、教示処理(S5)が実行される。
【0056】
4-5.教示処理(S5)
続いて、
図6に示すように、教示処理部3eは、教示処理(S5)を実行する。具体的には、教示処理部3eは、一組の基本出力因子情報と、少なくとも一組の教示用出力因子情報とを、表示装置5に表示させる。これにより、一組の基本出力因子情報と、少なくとも一組の教示用出力因子情報とが、作業者に教示される。
【0057】
教示処理(S5)が終了すると、加工支援システム1の動作が終了する。
【0058】
5.処理中の入力因子および出力因子の関係
図9を参照して、各種処理中の入力因子および出力因子の関係について説明する。入力処理(S1)において、基本入力因子情報取得部3aは、一組の基本入力因子情報を取得する。
図9においては、四角形で囲まれた「In 1」によって、一組の基本入力因子情報が表されている。
【0059】
次に、入力因子情報生成処理(S2)において、入力因子情報生成部3bは、一組の基本入力因子情報から複数組のバリエーション入力因子情報を生成する。
図9においては、四角形で囲まれた「In 2」~「In 9」によって、8組のバリエーション入力因子情報が表されている。バリエーション入力因子情報の組数は8組に限定されず、任意の組数とすることができる。
【0060】
出力因子情報生成処理(S3)において、出力因子情報生成部3cは、一組の基本入力因子情報に基づいて、一組の基本出力因子情報を生成する。
図9においては、二重線の四角形で囲まれた「Out 1」によって、一組の基本出力因子情報が表されている。出力因子情報生成部3cは、複数組のバリエーション入力因子情報に基づいて、対応する複数組のバリエーション出力因子情報を生成する。
図9においては、二重線の四角形で囲まれた「Out 2」~「Out 9」によって、8組のバリエーション出力因子情報が表されている。バリエーション出力因子情報の個数は、バリエーション入力因子情報と同じである。
【0061】
選定処理(S4)において、選定部3dは、複数組のバリエーション出力因子情報から、少なくとも一組の教示用出力因子情報を選定する。
図9においては、二重線の四角形で囲まれた「Out 3」、「Out 4」、「Out 7」、および「Out 8」によって、4組の教示用出力因子情報が表されている。教示用因子情報の組数は4組に限定されず、任意の組数とすることができる。
【0062】
教示処理(S5)において、教示処理部3eは、一組の基本出力因子情報と、少なくとも一組の教示用出力因子情報とを、表示装置5に表示させる。
図9においては、二重線の四角形で囲まれた「Out 1」によって表される一組の基本出力因子情報と、選定処理(S4)において選定された4組の教示用出力因子情報(「Out 3」、「Out 4」、「Out 7」、および「Out 8」)と、が表示装置5に表示される。
【0063】
なお、
図9に表された内容は、各種処理中の入力因子および出力因子の関係について一般的に説明したものなので、以下に記載する入力因子情報の例、および出力因子情報の例についての説明を限定しない。
【0064】
6.入力因子情報の例、および出力因子情報の例
続いて、本形態に係る入力因子情報の例、および出力因子情報の例について説明する。ただし、入力因子情報、および出力因子情報の内容、種類は、以下の説明に限定されない。
【0065】
本形態においては、一組の基本入力因子情報は、目標サイクルタイム、目標振れ、を含む。他の基本入力因子情報については省略する。
【0066】
本形態においては、選定処理(S4)において、所定の選定基準に従い、以下の4つの態様が選定される。
・荒仕上分割が第1~第5カム31~35のすべてに実施される場合
・荒仕上分割が第2、第3および第4カム32,33,34にのみ実施される場合
・荒仕上分割が第3カム33にのみ実施される場合
・荒仕上分割が第1~第5カム31~35のすべてに実施されない場合
【0067】
荒仕上分割が第1~第5カム31~35のすべてに実施される場合、工作物Wの加工精度(例えば振れ)は向上するが、サイクルタイムは長くなる。また、工作物Wを研削盤によって加工する際、工作物WのうちZ軸方向について中央付近の領域は、研削加工時に加えられる荷重により撓みやすくなっている。このため、第1~第5カム31~35のうち、Z軸方向について中央付近に固定された第3カム33の加工精度を高めることにより、全体として工作物Wの加工精度を高めることができる。このため、一か所のみ荒仕上分割が実施される場合には第3カム33に実施されることが好ましい。また、複数個所に荒仕上分割が実施される場合には、第3カム33に実施されるとともに、第3カム33に対して対称になるように第2カム32および第4カム34に実施されることが好ましい。
【0068】
図10に、横軸をサイクルタイム、縦軸を振れとして、荒仕上分割の態様によって、サイクルタイムと振れがどのように変化するかを示す。
【0069】
第1~第5カム31~35のすべてに荒仕上分割が実施されない場合、工作物Wの振れの予測値は、加工後の工作物Wの振れの目標である目標振れとほぼ同じとなっている。工作物Wの予測値の上限および下限はエラーバーにより示されている。換言すると、工作物Wの振れの予測値は、上限値と下限値の間に振れの目標値を含んでいる。一方、サイクルタイムの予測値は、目標サイクルタイムよりも短くなっている。従来技術においては、振れの予測値の上限が目標振れよりも大きいため、第1~第5カム31~35のすべてに荒仕上分割が実施されない場合における出力因子情報は、そもそも計算されないようになっていた。本形態においては、第1~第5カム31~35のすべてに荒仕上分割が実施されない場合は、教示用出力因子情報に相当する。
【0070】
荒仕上分割が第3カム33にのみ実施された場合、工作物Wの振れの予測値は、上限および下限の双方が、目標振れよりも小さくなっている。一方、サイクルタイムの予測値は、目標サイクルタイムよりも短くなっている。従来技術においては、振れの予測値が目標振れよりも小さく、且つ、サイクルタイムの予測値が目標サイクルタイムよりも短いことから、荒仕上分割が第3カム33にのみ実施された場合が、計算され、且つ、作業者に教示されるようになっていた。本形態においては、荒仕上分割が第3カム33にのみ実施された場合が、基本出力因子情報に相当する。
【0071】
荒仕上分割が第2~第4カム34に実施された場合、工作物Wの振れの予測値は、上限および下限の双方が、目標振れよりも小さくなっている。一方、サイクルタイムの予測値は、目標サイクルタイムよりも長くなっている。従来技術においては、サイクルタイムの予測値が目標サイクルタイムよりも長いため、荒仕上分割が第2~第4カム34に実施された場合における出力因子情報は、そもそも計算されないようになっていた。本形態においては、荒仕上分割が第2~第4カム34に実施された場合は教示用出力因子情報に相当する。
【0072】
第1~第5カム31~35のすべてに荒仕上分割が実施された場合、工作物Wの振れの予測値は、上限および下限の双方が、目標振れよりも小さくなっている。一方、サイクルタイムの予測値は、目標サイクルタイムよりも長くなっている。従来技術においては、サイクルタイムの予測値が目標サイクルタイムよりも長いため、第1~第5カム31~35のすべてに荒仕上分割が実施された場合における出力因子情報は、そもそも計算されないようになっていた。本形態においては、第1~第5カム31~35のすべてに荒仕上分割が実施された場合は教示用出力因子情報に相当する。
【0073】
7.本実施形態の作用効果
本形態においては、入力された一組の入力因子情報に対応する一組の出力因子情報と、少なくとも一組の教示用出力因子情報と、が表示される。これにより、複数パターンの加工条件が必要とされる場合や、顧客の要望が変化した場合であっても、一組の入力因子情報を入力するだけで、複数組の出力因子情報を得ることができるので、入力因子情報の入力作業を省力化できる。
【0074】
本形態においては、一組の基本入力因子情報は、目標加工精度を含み、選定部3dは、複数組のバリエーション出力因子情報のうち目標加工精度を基準に少なくとも一組の教示用出力因子情報を選定する。
【0075】
目標加工精度を含む一組の入力因子情報の入力作業により、工作物Wの加工精度について教示用出力因子情報を得ることができる。これにより、工作物Wの加工精度について探索するために、複数組の入力因子情報を入力して試行錯誤する必要がないので、入力因子情報の入力作業を省力化できる。
【0076】
また、本形態においては、選定部3dは、目標加工精度の前後における、少なくとも一組の教示用出力因子情報を選定する。
【0077】
一組の入力因子情報の入力作業により、目標加工精度の前後における教示用出力因子情報を得ることができる。これにより、工作物Wの加工精度の前後における出力因子について探索するために、複数組の入力因子情報を入力して試行錯誤する必要がないので、入力因子情報の入力作業を省力化できる。
【0078】
(実施形態2)
続いて、実施形態2について
図11~
図12を参照して説明する。本形態においては、一組の基本入力因子情報は、工作物Wの真円度の目標値である目標真円度を含む。
【0079】
また、本形態においては、選定処理(S4)の構成が実施形態1と異なる。
図11に本形態に係る選定処理(S4)のフローチャートを示す。
【0080】
選定処理(S4)が実行されると、選定部3dは、一組の基本入力因子情報の中から、選定基準となる目標加工精度を取得する(S44)。本形態においては、演算処理装置3は、目標真円度を取得する。
【0081】
次に、選定部3dは、S45で、工作物Wの物性の予測値を算出する。本形態においては、演算処理装置3は、例えばサイクルタイムについて、下限(例えば20秒)から上限(例えば10000秒)まで、増加分1秒ごとに真円度の予測値を算出する。ただし、サイクルタイムの増加分は2秒以上の任意の値であってもよい。
【0082】
次に、選定部3dは、サイクルタイムの下限から上限の範囲内において、工作物Wの物性の予測値が変化する予測値変化点を算出する(S45)。本形態においては、真円度の予測値が急激に変化する予測値変化点を算出する。
【0083】
次に、選定部3dは、真円度の予測値変化点の前後に対応するサイクルタイムを選定する(S46)。つまり、真円度の予測値が急激に変化する前のサイクルタイムと、真円度の予測値が急激に変化した後のサイクルタイムと、を選定する。
【0084】
図12に、縦軸を真円度とし、横軸をサイクルタイムとしたときの、真円度の変化を表したグラフに示す。本形態においては、真円度が急激に低下する前の真円度R1およびサイクルタイムT1と、真円度が急激に低下した後の真円度R2およびサイクルタイムT2とが選定される。
【0085】
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0086】
本形態においては、選定部3dは、複数組のバリエーション出力因子情報のうち工作物Wの加工精度の予測値が変化する予測値変化点を基準に、少なくとも一組の教示用出力因子情報を選定する。
【0087】
一組の入力因子情報の入力作業により、工作物Wの加工精度の予測値が変化する予測値変化点における教示用出力因子情報を得ることができる。これにより、工作物Wの加工精度が変化する変化点を探索するために、複数組の入力因子情報を入力して試行錯誤する必要がないので、入力因子情報の入力作業を省力化できる。
【0088】
選定部3dは、予測値変化点の前後における、少なくとも一組の教示用出力因子情報を選定する。
【0089】
一組の入力因子情報の入力作業により、予測値変化点の前後における教示用出力因子情報を得ることができる。これにより、工作物Wの加工精度が変化する変化点の前後における出力因子情報を探索するために、複数組の入力因子情報を入力して試行錯誤する必要がないので、入力因子情報の入力作業を省力化できる。
【0090】
一組の基本入力因子情報は、目標サイクルタイムを含み、複数組のバリエーション入力因子情報は、一組の基本入力因子情報と異なる目標サイクルタイムを含む。
【0091】
一組の入力因子情報の入力作業により、複数の目標サイクルタイムを得ることができる。これにより、得られた複数の目標サイクルタイムに基づいて、出力因子情報として複数のサイクルタイムを得ることができる。この結果、サイクルタイムについて探索するために、複数組の入力因子情報を入力して試行錯誤する必要がないので、入力因子情報の入力作業を省力化できる。
【0092】
(実施形態3)
続いて、実施形態3について説明する。本形態においては、一組の基本入力因子情報として、例えば、表1に記載された因子情報が含まれる。
【0093】
【0094】
表1に示すように、本形態に係る一組の基本入力因子情報は、目標サイクルタイム(100秒)、目標真円度(2μm)および目標振れ(20μm)を含む。
【0095】
演算処理装置3は、教示処理(S5)により、表2に示す基本出力因子情報を表示装置5に表示させる。
【0096】
【0097】
表2に示すように、基本出力因子情報は、サイクルタイム予測値、真円度予測値、振れ予測値、インターバル予測値を含む。インターバル予測値に係るインターバルは、ツルーイングインターバルとしてもよいし、また、ドレスインターバルとしてもよい。
【0098】
基本出力因子情報に含まれる各予測値は、基本入力因子情報に含まれる各目標値に適合するように算出される。具体的には、サイクルタイム予測値(99秒)は、目標サイクルタイム(100秒)よりも短く、真円度予測値(1.0~1.5μm)は、目標真円度(2μm)よりも小さく、振れ予測値(3~10μm)は、目標振れ(20μm)よりも小さい。また、本形態に係る基本出力因子情報のインターバル予測値は50本とされる。
【0099】
さらに演算処理装置3は、記憶装置2に記憶された選定基準に基づいて、複数組のバリエーション出力因子情報から、表3~7に記載された教示用出力因子情報を選定し(S4)、教示処理(S5)により、教示用出力因子情報を表示装置5に表示させる。以下に、各表に記載された教示用出力因子情報と、選定基準について説明する。
【0100】
【0101】
表3に記載された教示用出力因子情報は、表2に係る基本出力因子情報に含まれるインターバル予測値よりも、所定量大きなインターバル予測値を含むバリエーション因子情報を選定するという選定基準に基づいて選定された。本形態では、基本出力因子情報に係るインターバル予測値(50本)よりも50本多い、100本のインターバル予測値を含む一組のバリエーション出力因子情報が選定された。
【0102】
表2に記載された基本出力因子情報と、表3に記載された教示用出力因子情報とを比較すると、表3に係るサイクルタイム予測値(109秒)は、表2に係るサイクルタイム予測値(99秒)よりも長い。
【0103】
【0104】
表4に記載された教示用出力因子情報は、表2に係る基本出力因子情報に含まれる振れ予測値よりも、所定量精度が向上された振れ予測値を含むバリエーション出力因子情報を選定するという選定基準に基づいて選定された。本形態では、表2に記載された基本出力因子情報に係るインターバル予測値(50本)と同じ、50本のインターバル予測値に対応する一組のバリエーション出力因子情報が選定された。
【0105】
表2に記載された基本出力因子情報と、表4に記載された教示用出力因子情報とを比較すると、表4に係るサイクルタイム予測値(109秒)は、表2に係るサイクルタイム予測値(99秒)よりも長い。また、表4に係る振れ予測値(0~3μm)は、表2に係る振れ予測値(3~10μ)よりも小さい。
【0106】
【0107】
表5に記載された教示用出力因子情報は、表2に係る基本出力因子情報に含まれる振れ予測値よりも、所定量精度が向上された振れ予測値を含むバリエーション出力因子情報を選定するという選定基準と、表2に記載されたインターバル予測値(50本)よりも50本多い、100本のインターバル予測値に対応する一組のバリエーション出力因子情報を選定するという選定基準と、に基づいて選定された。
【0108】
表2に記載された基本出力因子情報と、表5に記載された教示用出力因子情報とを比較すると、表5に係るサイクルタイム予測値(119秒)は、表2に係るサイクルタイム予測値(99秒)よりも長い。また、表5に係る振れ予測値(0~3μm)は、表2に係る振れ予測値(3~10μ)よりも小さい。また、表4に係るインターバル(100本)は、表2に係るインターバル(50本)よりも多い。
【0109】
【0110】
表6に記載された教示用出力因子情報は、表2に係る基本出力因子情報に含まれるサイクルタイム予測値よりも、所定量短くされたサイクルタイム予測値を含むバリエーション出力因子情報を選定するという選定基準に基づいて選定された。表6においては、表2に記載されたサイクルタイム予測値(99秒)よりも10秒短い、89秒のサイクルタイム予測値に対応する一組のバリエーション出力因子情報が選定された。
【0111】
表2に記載された基本出力因子情報と、表6に記載された教示用出力因子情報とを比較すると、表6に係るサイクルタイム予測値(89秒)は、表2に係るサイクルタイム予測値(99秒)よりも短い。
【0112】
【0113】
表7に記載された教示用出力因子情報は、表2に係る基本出力因子情報に含まれるサイクルタイム予測値よりも、所定量短くされたサイクルタイム予測値を含むバリエーション出力因子情報を選定するという選定基準に基づいて選定された。表7においては、表2に記載されたサイクルタイム予測値(99秒)よりも20秒短い、79秒のサイクルタイム予測値に対応する一組のバリエーション出力因子情報が選定された。
【0114】
表2に記載された基本出力因子情報と、表7に記載された教示用出力因子情報とを比較すると、表7に係るサイクルタイム予測値(79秒)は、表2に係るサイクルタイム予測値(99秒)よりも短い。また、表7に係る真円度予測値(1.5~2.0μm)は表2に係る真円度予測値(1.0~1.5μm)よりも大きい。また、表7に係るインターバル予測値(30本)は、表2に係るインターバル予測値(50本)よりも少ない。
【0115】
本形態においては、入力された一組の入力因子情報に対応する一組の出力因子情報と、少なくとも一組の教示用出力因子情報と、が表示される。これにより、複数パターンの加工条件が必要とされる場合や、顧客の要望が変化した場合であっても、一組の入力因子情報を入力するだけで、複数組の出力因子情報を得ることができるので、入力因子情報の入力作業を省力化できる。
【0116】
(実施形態4)
続いて、実施形態4について説明する。本形態においては、入力因子情報生成処理(S2)の動作が実施形態1と異なる。
【0117】
本形態に係る入力因子情報生成処理(S2)において、入力因子情報生成部3bは、一組の基本入力因子情報を取得する。次に、入力因子情報生成部3bは、記憶装置2から、一組の基本入力因子情報に含まれる加工装置6の機械構成情報とは異なる、他の加工装置6の機械構成情報を取得する。
【0118】
次に、入力因子情報生成部3bは、一組の基本入力因子情報に含まれる加工装置6の機械構成情報を、他の加工装置6の機械構成情報と置き換えることにより、複数組のバリエーション入力因子情報を生成する。
【0119】
本形態においては、一組の基本入力因子情報は、加工装置6の機械構成情報を含み、複数組のバリエーション入力因子情報は、一組の基本入力因子情報とは異なる他の加工機の機械構成情報を含む。
【0120】
一組の入力因子情報の入力作業により、入力された加工装置6とは異なる他の加工装置6を用いた場合の教示用出力因子情報を得ることができる。これにより、加工装置6を変更した場合の出力因子情報を探索するために、複数組の入力因子情報を入力して試行錯誤する必要がないので、入力因子情報の入力作業を省力化できる。
【0121】
(実施形態5)
続いて、実施形態5について
図13~
図14を参照して説明する。
図13に、本形態に係る加工支援システム1のフローチャートを示す。
【0122】
図13に示すように、本形態に係る加工支援システム1が始動されると、入力処理(S1)が実行される。入力処理においては、キーボード等の入力装置4を介して作業者から一組の基本入力因子情報が演算処理装置3に入力される。
【0123】
次に、機械学習処理(S6)が実行される。
図14に示すように、機械学習処理(S6)が実行されると、演算処理装置3は、一組の基本入力因子情報を取得する。次に、演算処理装置3は、記憶装置2から、選定処理(S4)において演算処理装置3がバリエーション出力因子情報から教示用出力因子情報を選択する際に用いられる選定基準を取得する。
【0124】
次に、演算処理装置3は、一組の基本入力因子情報を訓練データとして、機械学習を実行する。これにより、知識モデルMにおける少なくとも一組の教示用出力因子情報の選定基準が更新される。演算処理装置3は、更新された選定基準を記憶装置2に記憶させる。これにより、機械学習処理(S6)が終了する。
【0125】
図13に示すように、機械学習処理(S6)が終了すると、入力因子情報生成処理(S2)が実行される。以降の処理は、実施形態1と同様なので、説明を省略する。
【0126】
本形態においては、入力された一組の基本入力因子情報を訓練データとして、機械学習により知識モデルMにおける少なくとも一組の教示用出力因子情報の選定基準が更新される。
【0127】
加工支援システム1に入力される一組の基本入力因子情報は、加工支援システム1を使用するユーザの要望に沿ったものとなっている。このため、ユーザから要望された一組の基本入力因子情報が学習されることによって知識モデルMにおける少なくとも一組の教示用出力因子の選定基準が更新されることにより、ユーザの要望により適応した教示用出力因子を、精度よく得ることができる。
【0128】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0129】
工作物Wの加工精度の予測値が変化する変化点を基準にして教示用出力因子情報を選定する際、工作物Wの加工精度の種類は、真円度、振れ、表面粗さ等、任意のものを選択できる。
【0130】
工作物WのCP値を基準にして選定されたCP値の予測値を、教示用出力因子情報として教示する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 加工支援システム、2 記憶装置、3 演算処理装置、3a 基本入力因子情報取得部、3b 入力因子情報生成部、3c 出力因子情報生成部、3d 選定部、3e 教示処理部、6 加工装置、M 知識モデル、W 工作物