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  • 特開-バイオマス成形材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040535
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】バイオマス成形材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/02 20060101AFI20240318BHJP
   B27N 3/02 20060101ALI20240318BHJP
   B27N 3/04 20060101ALI20240318BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20240318BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20240318BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240318BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08L1/02
B27N3/02 B
B27N3/04 B
C08L97/00 ZAB
C08L29/04 B
C08K5/053
C08J3/20 Z CEP
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144937
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰
(72)【発明者】
【氏名】大石 悠矢
【テーマコード(参考)】
2B260
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
2B260AA20
2B260BA07
2B260BA18
2B260BA19
2B260CD30
2B260DA08
2B260EA05
2B260EB02
4F070AA01
4F070AA26
4F070FA01
4F070FA02
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC03
4J002AB011
4J002AH001
4J002AH002
4J002BE023
4J002EC056
(57)【要約】
【課題】プラスチック代替材として活用できるバイオマス成形材、及び射出成形法で生産性よく製造できるバイオマス成形材の製造方法を提供する。
【解決手段】粉体状又は繊維状のセルロース材料とリグニンとを含有する加圧成形体であるように構成したバイオマス成形材により上記課題を解決した。このバイオマス成形材は、リグニンでコーティングした粉体状又は繊維状のセルロース材料と、所定の温度で液状化する液状化材料とを混合して混合材料とする工程と、前記所定の温度に加温して前記液状化材料を液状化し、前記セルロース材料を該液状化材料中に分散させる工程と、前記液状化材料中に分散した前記セルロース材料を、前記所定の温度以上の成形温度で加圧して所定形状に成形する工程と、を有する方法により製造する。液状化材料は、グリセリンを含有したポリビニルアルコール溶液であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状又は繊維状のセルロース材料とリグニンとを含有する加圧成形体である、ことを特徴とするバイオマス成形材。
【請求項2】
前記セルロース材料は、木質又は植物等の天然由来の材料である、請求項1に記載のバイオマス成形材。
【請求項3】
リグニンでコーティングした粉体状又は繊維状のセルロース材料と、所定の温度で液状化する液状化材料とを混合して混合材料とする工程と、前記所定の温度に加温して前記液状化材料を液状化し、前記セルロース材料を該液状化材料中に分散させる工程と、前記液状化材料中に分散した前記セルロース材料を、前記所定の温度以上の成形温度で加圧して所定形状に成形する工程と、を有する、ことを特徴とするバイオマス成形材の製造方法。
【請求項4】
前記セルロース材料は、木質又は植物等の天然由来の材料である、請求項3に記載のバイオマス成形材の製造方法。
【請求項5】
前記液状化材料は、グリセリンを含有したポリビニルアルコール溶液である、請求項4に記載のバイオマス成形材の製造方法。
【請求項6】
前記セルロース材料は、木質又は植物等の天然由来の材料である、請求項4又は5に記載のバイオマス成形材の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス成形品及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、プラスチック代替材として活用できるバイオマス成形材、及び射出成形法で生産性よく製造できるバイオマス成形材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
年間800万トンのプラスチックごみが海へ流出し、劣化により微細化されてマイクロプラスチックとなって生態系を破壊する可能性が指摘されている(非特許文献1を参照)。こうした環境や生態系に関する問題に対し、プラスチック代替材の開発と普及が地球温暖化対策(CO2削減)とともに期待されている。代替材としては、再生可能で、潤沢な資源が求められることから、木質系のバイオマス材料を活用したものが期待されている。また、木質系のバイオマス材料の活用が普及するためには、加工性や量産性が良い製造方法が求められることから、プラスチック成形材と同様の射出成形法で製造できることが望ましい。
【0003】
こうした要求に対し、特許文献1では、プラスチックの使用量を大幅に削減し、環境負荷を低減することができる食品用器具又は包装容器が提案されている。この技術は、セルロースファイバー含有量が50重量%以上のセルロースファイバー高含有組成物を利用するというものであり、射出成形によりタンブラーを作製する例が提案されている。また、特許文献2では、透明性を有するパルプ成形品を実現可能とするための成形材料及びこの成形材料の製造方法並びにパルプ成形品及びこのパルプ成形品の製造方法が提案されている。この技術は、パルプ及び澱粉系結合剤を主成分とし、前記パルプとして針葉樹パルプ及び広葉樹パルプを含有する成形材料を利用するというものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】山本智之,「海のプラスチックごみ、2050年までに世界中の魚の重量を 超える恐れも」,朝日新聞社、https://miraimedia.asahi.com/plastic_garbage/
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-158751号公報
【特許文献2】特開2022-27398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、ポリプロピレン等のプラスチックが使用されていることから、地球温暖化問題やマイクロプラスチック問題が依然として課題として残るであろう。特許文献2の技術では、でんぷんが利用されていることから、食糧の供給問題と競合する可能性がある。また、でんぷんは水溶性であるため、高温多湿に弱いという問題が生じるおそれもある。したがって、プラスチック代替材としては、プラスチックを使用せず、非可食資源を活用することが求められる。
【0007】
本発明の目的は、プラスチック代替材として活用できるバイオマス成形材、及び射出成形法で生産性よく製造できるバイオマス成形材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明にかかるバイオマス成形材は、粉体状又は繊維状のセルロース材料とリグニンとを含有する加圧成形体である、ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、プラスチック材を使用していないバイオマス成形材を、プラスチック代替材とすることができる。その結果、地球温暖化問題やマイクロプラスチック問題の解決に貢献できるとともに、食糧の供給問題とも競合しないという効果がある。また、加圧成形体となっているので、プラスチック成形材と同様の生産性で得ることが可能である。リグニンは、粉体状又は繊維状のセルロース材料にコーティングされてセルロース材料に親水性を付与可能な物質であり、加圧成形によりセルロース材料同士の密着性と接着性を向上させる役割を担っている。
【0010】
本発明に係るバイオマス成形材において、前記セルロース材料は、木質又は植物等の天然由来の材料である。
【0011】
(2)本発明に係るバイオマス成形材の製造方法は、リグニンでコーティングした粉体状又は繊維状のセルロース材料と、所定の温度で液状化する液状化材料とを混合して混合材料とする工程と、前記所定の温度に加温して前記液状化材料を液状化し、前記セルロース材料を該液状化材料中に分散させる工程と、前記液状化材料中に分散した前記セルロース材料を、前記所定の温度以上の成形温度で加圧して所定形状に成形する工程と、を有する、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、成形温度以下の温度で液状化した液状化材料中にセルロース材料が分散しているので、液状化材料中に分散したセルロース材料を所定の温度以上の成形温度で加圧成形することができる。その結果、生産性よくバイオマス成形材を得ることができる。
【0013】
本発明に係るバイオマス成形材の製造方法において、前記液状化材料は、グリセリンを含有したポリビニルアルコール溶液であることが好ましい。
【0014】
本発明に係るバイオマス成形材の製造方法において、前記粉体状又は繊維状のセルロース材料は、木質又は植物等の天然由来の材料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プラスチック代替材として活用できるバイオマス成形材、及び生産性よく製造可能なバイオマス成形材の製造方法を提供することができる。特に、プラスチック材を使用していないバイオマス成形材をプラスチック代替材とすることができるので、地球温暖化問題やマイクロプラスチック問題の解決に貢献できるとともに、食糧の供給問題とも競合しないという効果がある。また、加圧成形体となっているので、プラスチック成形材と同様の生産性で得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実験1で得られたバイオマス成形材の洗浄前(A)と洗浄後(B)の写真である。
図2】実験2で得られたバイオマス成形材の洗浄前(A)と洗浄後(B)の写真である。
図3】実験3で得られたバイオマス成形材の洗浄前(A)と洗浄後(B)の写真である。
図4】ポリビニルアルコールの液状化に関する形態例であり、(A)はポリビニルアルコールを180℃で3時間加熱したときの形態であり、(B)はポリビニルアルコール1重量部にグリセリン2重量部を配合して180℃で3時間加熱したときの形態であり、(C)はポリビニルアルコール1重量部にグリセリン2重量部を配合して160℃で3時間加熱したときの形態である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るバイオマス成形材及びその製造方法について図面を参照しつつ説明する。本発明は、その要旨に範囲内であれば、以下の実施形態に限定されない。
【0018】
[バイオマス成形材]
本発明に係るバイオマス成形材は、粉体状又は繊維状のセルロース材料とリグニンとを含有する加圧成形体であることに特徴がある。このバイオマス成形材は、プラスチック材を使用していないので、プラスチック代替材とすることができる。その結果、地球温暖化問題やマイクロプラスチック問題の解決に貢献できるとともに、食糧の供給問題とも競合しないという効果がある。また、加圧成形体となっているので、プラスチック成形材と同様の生産性で得ることも可能である。
【0019】
本発明の構成要素を詳しく説明する。
【0020】
(セルロース材料)
バイオマス成形材を構成するセルロース材料は、木質や植物等の天然由来の材料であり、特に限定されない。一例としては、スギやコットン、その他の木質や植物等の天然由来の材料を挙げることができる。バイオマス材料は粉体状又は繊維状であり、その大きさは特に限定されないが、平均最大長が0.2~2mm程度の範囲内の粉体状材料又は繊維状材料であればよい。粉体形状も特に限定されず、球形状でも異形形状でもよい。繊維形態も特に限定されず、所定の繊維長や所定のアスペクト比を有するものであってもよい。こうしたセルロース材料は天然物由来であるので、最終的に得られたバイオマス成形品が仮に廃棄されたとしても分解しやすく、環境破壊の要因になりにくいという利点がある。
【0021】
(リグニン)
リグニンは、セルロース材料をコーティングしてセルロース材料に親水性を付与可能な物質であり、加圧成形によりセルロース材料同士の密着性と接着性を向上させる役割を担っている。具体的には、後述した実験で使用した部分脱スルホン酸リグニンスルホン酸塩を用いることができるが、これに特に限定されず、それ以外でも同様の効果が得られるものであれば使用可能である。リグニンは、水に溶けにくい傾向があり、水溶液にしにくい。しかし、リグニンの種類によっては水に溶け易いものがあり、水溶液にし易いので、そうしたリグニンを選択することで、セルロース材料を容易にコーティングすることができる。水溶液中のリグニンは、粉体状又は繊維状のセルロース材料の表面に満遍なくコーティングされればよく、その濃度は特に限定されない。こうしたリグニンは、セルロース材料同士の密着性と接着性を向上させる役割を担う。リグニンは、分析することで、最終的に得られたバイオマス成形品から抽出することができる。
【0022】
(バイオマス成形材)
バイオマス成形材は、粉体状又は繊維状のセルロース材料とリグニンとを含有する加圧成形体である。このバイオマス成形材は、セルロース材料同士が密着且つ接着されて、熱に強く、水にも強いものであることが望ましい。加圧成形体であるか否かは、バイオマス成形材の各部で同一又は略同一の密度で粉体状又は繊維状のセルロース材料が成形されていることで判断できる。そうした密度は特に限定されない。また、バイオマス成形材は、粉体状又は繊維状のセルロース材料が脆く、個々の粉体がぼろぼろと崩壊したり、成形体に亀裂が生じたりしない成形体である。
【0023】
[バイオマス成形材の製造方法]
本発明に係るバイオマス成形材の製造方法は、リグニンでコーティングした粉体状又は繊維状のセルロース材料と、所定の温度で液状化する液状化材料とを混合して混合材料とする工程と、前記所定の温度に加温して前記液状化材料を液状化し、前記セルロース材料を該液状化材料中に分散させる工程と、前記液状化材料中に分散した前記セルロース材料を、前記所定の温度以上の成形温度で加圧して所定形状に成形する工程と、を有する。この製造方法によれば、成形温度以下の温度で液状化した液状化材料中にセルロース材料が分散しているので、液状化材料中に分散したセルロース材料を所定の温度以上の成形温度で加圧成形することができる。その結果、生産性よくバイオマス成形材を得ることができる。
【0024】
(混合材料とする工程)
この工程は、リグニンでコーティングした粉体状又は繊維状のセルロース材料と、所定の温度で液状化する液状化材料とを混合して混合材料とする工程である。粉体状又は繊維状のセルロース材料をリグニンでコーティングすることは上述したとおりであり、リグニンを水溶液としてセルロース材料と混合することにより、セルロース材料にコーティングすることができる。コーティング条件は特に限定されないが、後述の実験では、180℃で3時間混合してリグニンをセルロース材料にコーティングしている。
【0025】
液状化材料は、リグニンでコーティングしたセルロース材料を分散させることができるものである。例えば、後述の実験例で示すように、ポリビニルアルコールにグリセリンを加えたものを挙げることができる。この液状化材料は、所定の温度に加温することで液状化するので、液状化した液状化材料に、リグニンでコーティングしたセルロース材料が分散する。「所定の温度」は、後述の成形の際には液状になっている必要があるので、液状化する温度(所定の温度)が成形温度以下であることが望ましい。本発明に係るバイオマス成形材は、一般的に使用されているプラスチック成形材と同じ射出成形で生産性よく製造することが望ましいので、プラスチック成形材の射出成形温度と同様の160~220℃前後で液状化させることが望ましい。
【0026】
ポリビニルアルコールは、融点が160~220℃程度であり、融点と熱分解温度が接近している。融点と熱分解温度との温度差を増すことで、熱分解しない状態でポリビニルアルコールが融解して液状化することができる。融点と熱分解温度との温度差を増す手段としては、けん化度を調整して融点を下げたり、グリセリン等を配合して融点を下げたりすることができる。ポリビニルアルコールは親水性であるので、熱水洗浄によって最終的なバイオマス成形材から溶出させることができ、好ましい。なお、同様の役割を有するものであればポリビニルアルコールに限定されない。
【0027】
グリセリンは、上記のように、ポリビニルアルコールの融点を下げる効果があるので、ポリビニルアルコールに混合することが好ましい。図4(A)はポリビニルアルコールを180℃で3時間加熱したときの形態であり、図4(B)はポリビニルアルコール1重量部にグリセリン2重量部を配合して180℃で3時間加熱したときの形態であり、図4(C)はポリビニルアルコール1重量部にグリセリン2重量部を配合して160℃で3時間加熱したときの形態である。このように、グリセリンをポリビニルアルコールに配合することにより、ポリビニルアルコールの液状化温度を下げることができる。液状化温度を下げることができれば、液状化したポリビニルアルコールが熱分解しない成形温度で成形できるという利点がある。さらに、成形温度自体も下げることが可能となり、必ずしも耐熱性が高いとはいえないセルロース材料の機械的特性を変化させたり色調変化を生じさせにくくする点で望ましい。この「液状化」は、ポリビニルアルコールが液状に溶融又は分散している状態である。
【0028】
液状化材料を構成するポリビニルアルコールとグリセリンの配合比は、上記した液状化材料の役割を発揮できる範囲であれば特に限定されないが、例えば、1重量部のポリビニルアルコールに対し、2~10重量部配合することができる。
【0029】
(セルロース材料を液状化材料中に分散させる工程)
この工程は、所定の温度に加温して液状化材料を液状化し、そのセルロース材料を液状化材料中に分散させる工程である。液状化材料は、例えばポリビニルアルコールとグリセリンとの混合材料を挙げることができ、この混合材料を所定の温度に加温して液状化することで、その液中にセルロース材料を分散させることができる。
【0030】
「所定の温度」は、液状化する温度のことであり、成形温度以下であることにより、成形の際の成形温度で液状を維持でき、安定した成形を実現できる。なお、液状化温度をより下げることができれば、成形温度をさらに下げることができるので好ましい。
【0031】
(成形工程)
この工程は、液状となった液状化材料中に分散したセルロース材料を、前記した所定の温度以上の成形温度で加圧して所定形状に成形する工程である。「成形温度」は上記したとおり、プラスチック成形材の射出成形温度と同様の160~220℃前後の温度であることが好ましい。こうした温度で成形することができれば、一般的に使用されているプラスチック成形材と同じ射出成形で生産性よく製造することができるが、上記のように、液状化温度を下げて成形温度を下げることが好ましい。その結果、必ずしも耐熱性が高いとはいえないセルロース材料の機械的特性を変化させたり色調変化を生じさせにくくすることができる。
【0032】
加圧成形手段は特に限定されず、工業的に使用されている射出成形手段であってもよいし、各種の加圧プレス手段であってもよく、特に限定されない。加圧成形時の圧力も特に限定されず、原料となるセルロース材料や、得られるバイオマス成形材の用途等によって任意に選択される。微細なセルロース材料を用い、高圧で加圧成形した場合には、機械的強度の高い成形品や、液漏れしない容器等として利用できる。一方、やや大きめのセルロース材料を用いたり、適度な圧力で加圧成形した場合には、機械的強度はそれほど高くない成形品や、液を浸透するような成形品等として利用できる。
【0033】
以上説明したように、プラスチック代替材として活用できるバイオマス成形材、及び生産性よく製造可能なバイオマス成形材の製造方法を提供することができる。特に、プラスチック材を使用していないバイオマス成形材をプラスチック代替材とすることができるので、地球温暖化問題やマイクロプラスチック問題の解決に貢献できるとともに、食糧の供給問題とも競合しないという効果がある。また、加圧成形体となっているので、プラスチック成形材と同様の生産性で得ることも可能である。
【実施例0034】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明を詳しく説明する。
【0035】
[実験1]
セルロース材料として、スギの木粉(株式会社島田小割製材所、「おがくず(すぎ)、平均最長径:1mm以下)5gを準備した。この木粉5gと、リグニン水溶液(水10gにリグニン0.5gを配合)とを180℃で3時間混合して、木粉にリグニンをコーティングした。次に、液状化材料として、ポリビニルアルコール(完全けん化型、クラレボバールPVA-117、株式会社クラレ製)0.5g、水10g及びグリセリン5g重量部を配合したものを準備した。この液状化材料とリグニンがコーティングされた木粉とを混合して混合材料とした。リグニンは、日本製紙株式会社製の「バニレックスN」(部分脱スルホン酸リグニンスルホン酸塩)を用いた。
【0036】
次に、得られた混合材料を160℃に加温することで液状化材料が液状化(図4(C)を参照)するので、撹拌して、リグニンがコーティングされた木粉を、液状になった液状化材料中に均一に分散させた。その後、この分散液を成形型に注入し、160℃で熱プレスし、バイオマス成形材を成形した。次いで、100℃で熱水洗浄してバイオマス成形材を得た。得られたバイオマス成形材は、図1に示すように、洗浄前後のいずれの場合も、セルロース材料がぼろぼろと崩壊したり、成形体に亀裂が生じたりしていなかった。
【0037】
[実験2]
この実験は、木粉にリグニンをコーティングしていない場合である。すなわち、セルロース材料として、スギの木粉(株式会社島田小割製材所、「おがくず(すぎ)、平均最長径:1mm以下)5gを準備した。液状化材料として、ポリビニルアルコール(完全けん化型、クラレボバールPVA-117、株式会社クラレ製)0.5g、水10g及びグリセリン5g重量部を配合したものを準備した。この液状化材料に木粉5gを混合して混合材料とした。
【0038】
次に、得られた混合材料を160℃に加温することで液状化材料が液状化(図4(C)を参照)するので、撹拌して、木粉を、液状になった液状化材料中に均一に分散させた。その後、この分散液を成形型に注入し、160℃で熱プレスし、バイオマス成形材を成形した。次いで、100℃で熱水洗浄してバイオマス成形材を得た。得られたバイオマス成形材は、図2に示すように、洗浄前ではセルロース材料がぼろぼろと崩壊したり、成形体に亀裂が生じたりしていなかったが、洗浄後の成形体に亀裂が生じていた。
【0039】
[実験3]
この実験も、木粉にリグニンをコーティングしていないが、成形温度を180℃に上げた場合である。すなわち、セルロース材料として、スギの木粉(株式会社島田小割製材所、「おがくず(すぎ)、平均最長径:1mm以下)5gを準備した。液状化材料として、ポリビニルアルコール(完全けん化型、クラレボバールPVA-117、株式会社クラレ製)0.5g、水10g及びグリセリン5g重量部を配合したものを準備した。この液状化材料に木粉5gを混合して混合材料とした。
【0040】
次に、得られた混合材料を160℃に加温することで液状化材料が液状化(図4(C)を参照)するので、撹拌して、木粉を、液状になった液状化材料中に均一に分散させた。その後、この分散液を成形型に注入し、180℃で熱プレスし、バイオマス成形材を成形した。次いで、100℃で熱水洗浄してバイオマス成形材を得た。得られたバイオマス成形材は、図3に示すように、洗浄前後のいずれの場合も、セルロース材料がぼろぼろと崩壊したり、成形体に亀裂が生じたりしていなかった。
【0041】
以上の実験1~3の結果より、木粉にリグニンをコーティングすることで、160℃の成形温度であっても、得られたバイオマス成形材は、セルロース材料がぼろぼろと崩壊したり、成形体に亀裂が生じたりしていなかった。一方、木粉にリグニンをコーティングしない場合は、160℃の成形温度では不十分であり、180℃の成形温度が必要であることがわかった。
【0042】
[実験4]
この実験は、木粉にリグニンをコーティングせず、さらにポリビニルアルコールにグリセリンを加えない場合である。すなわち、セルロース材料として、スギの木粉(株式会社島田小割製材所、「おがくず(すぎ)、平均最長径:1mm以下)5gを準備した。液状化材料として、ポリビニルアルコール(完全けん化型、クラレボバールPVA-117、株式会社クラレ製)0.5gと水10gを配合したものを準備した。この液状化材料に木粉5gを混合して混合材料とした。
【0043】
次に、得られた混合材料を180℃に加温しても液状化材料は液状化(図4(A)を参照)しなかった。したがって、木粉は液状化材料中に十分に分散させることはできなかった。その後、成形型に入れて、180又は200℃で熱プレスし、バイオマス成形材を成形した。次いで、100℃で熱水洗浄してバイオマス成形材を得た。得られたバイオマス成形材は、200℃で熱プレスしたものは形状が保持されていたが、180℃で熱プレスしたものはぼろぼろと崩壊し、成形体に亀裂が生じていた。
【0044】
この実験4の結果より、液状化材料にグリセリンを配合しない場合には、180℃に加温してもポリビニルアルコールは液状化できず、セルロース材料を十分に分散させることはできなかった。


図1
図2
図3
図4