(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040554
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】燃料電池システム、及び、燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240318BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240318BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240318BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240318BHJP
H01M 8/04119 20160101ALI20240318BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20240318BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/0438
H01M8/0432
H01M8/04 Z
H01M8/04119
B60L58/30
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144968
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】井上 智之
(72)【発明者】
【氏名】中谷 優斗
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BD07
5H125BD12
5H125EE32
5H125EE64
5H125EE65
5H125FF09
5H127AB04
5H127AC04
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127BB39
5H127DB26
5H127DB92
5H127DC22
5H127DC32
5H127DC38
5H127DC57
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料電池システムの掃気時において、コンプレッサのサージングを抑制することにより、騒音、振動等の発生を回避する。
【解決手段】燃料電池システム10では、制御部18は、燃料電池スタック12から排出される空気が流通する排気路42に設けられた排気弁50を制御して、排気弁50の開度を、少なくとも全開状態よりも小さくし、燃料電池スタック12を迂回して、給気路と排気路とを繋ぐバイパス路46に設けられたバイパス弁48を制御して、バイパス弁48の開度を、少なくとも全閉状態よりも大きくし、コンプレッサ36を制御して燃料電池スタック12に供給される空気が流通する給気路40に空気を吐出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックのアノードに燃料ガスとして水素を供給し、前記燃料電池スタックのカソードに酸化剤ガスとして空気を供給することにより、前記燃料電池スタックにおいて化学反応をさせて、発電を行う燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックに供給される前記空気が流通する給気路と、
前記燃料電池スタックから排出される前記空気が流通する排気路と、
前記燃料電池スタックから排出される水分が流通する排水路と、
前記燃料電池スタックを迂回して、前記給気路と前記排気路とを繋ぐバイパス路と、
前記バイパス路に設けられ、前記バイパス路における前記空気の流量を調整するバイパス弁と、
前記排気路において前記燃料電池スタックと前記バイパス路との間に設けられ、前記排気路における前記空気の流量を調整する排気弁と、
前記給気路に前記空気を吐出するコンプレッサと、
前記コンプレッサ、前記バイパス弁及び前記排気弁を制御する制御部と、
を有し、
前記燃料電池スタック内の掃気が行われる場合、前記制御部は、
前記排気弁を制御して、前記排気弁の開度を、少なくとも全開状態よりも小さくし、
前記バイパス弁を制御して、前記バイパス弁の開度を、少なくとも全閉状態よりも大きくし、
前記コンプレッサを制御して、前記給気路に前記空気を吐出する、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記給気路及び前記排気路において、前記バイパス路と前記燃料電池スタックとの間に設けられ、前記燃料電池スタックから排出された前記空気の水分により、前記燃料電池スタックに供給される前記空気の加湿を行う加湿器を有し、
前記排気弁は、前記バイパス路と前記加湿器との間に設けられる、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタック内の掃気を行う場合、前記制御部は、
前記排気弁及び前記バイパス弁を制御して、前記排気路における前記空気の流量よりも、前記バイパス路における前記空気の流量を多くする、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタック内の掃気を行う場合、前記制御部は、前記排気弁を制御して、前記排気弁を閉弁する、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の燃料電池システムにおいて、
大気圧を取得する大気圧取得部と、
前記コンプレッサが吸入する前記空気の温度を取得する温度取得部と、
を有し、
前記燃料電池スタック内の掃気を行う場合、前記制御部は、前記大気圧と、前記空気の温度とに基づいて、前記バイパス弁の開度を設定する、燃料電池システム。
【請求項6】
燃料電池スタックのアノードに燃料ガスを供給し、前記燃料電池スタックのカソードに空気を供給することにより、前記燃料電池スタックにおいて化学反応をさせて、発電を行う燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池システムは、
前記燃料電池スタックに供給される前記空気が流通する給気路と、
前記燃料電池スタックから排出される前記空気が流通する排気路と、
前記燃料電池スタックから排出される水分が流通する排水路と、
前記燃料電池スタックを迂回して、前記給気路と前記排気路とを繋ぐバイパス路と、
前記バイパス路に設けられ、前記バイパス路における前記空気の流量を調整するバイパス弁と、
前記排気路において前記燃料電池スタックと前記バイパス路との間に設けられ、前記排気路における前記空気の流量を調整する排気弁と、
前記給気路に前記空気を吐出するコンプレッサと、
を有し、
前記燃料電池スタック内の掃気が行われる場合、
前記排気弁の開度を、少なくとも全開状態よりも小さくし、
前記バイパス弁の開度を、少なくとも全閉状態よりも大きくし、
前記コンプレッサから前記給気路に前記空気を吐出する、燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、及び、燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、燃料電池システムが開示されている。当該燃料電池システムの運転時には、コンプレッサから湿度交換器を経由して燃料電池スタックに酸化剤ガスとして空気が送られる。燃料電池スタックから出てきた酸化剤オフガスは、湿度交換器を経由する第1排気管を通って燃料電池システムの外部に排出される。湿度交換器において、燃料電池スタックから出てきた湿潤な酸化剤オフガスの水分により、燃料電池スタックに送られる酸化剤ガスが加湿される。
【0003】
当該燃料電池システムの運転停止時には、燃料スタック内の掃気のため、コンプレッサから燃料電池スタックに空気が送られる。燃料電池スタックを通過した空気は、湿度交換器を経由しない第2排気管を通って燃料電池システムの外部に排出される。これにより、燃料電池スタック内の水分が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池スタックにおける発電停止時には、騒音、振動等を抑制するため、コンプレッサによる空気の吐出量は比較的少ない量に設定される。コンプレッサによる空気の吐出量が低下した場合、コンプレッサにサージングが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、燃料電池スタックのアノードに燃料ガスとして水素を供給し、前記燃料電池スタックのカソードに酸化剤ガスとして空気を供給することにより、前記燃料電池スタックにおいて化学反応をさせて、発電を行う燃料電池システムであって、当該燃料電池システムは、前記燃料電池スタックに供給される前記空気が流通する給気路と、前記燃料電池スタックから排出される前記空気が流通する排気路と、前記燃料電池スタックから排出される水分が流通する排水路と、前記燃料電池スタックを迂回して、前記給気路と前記排気路とを繋ぐバイパス路と、前記バイパス路に設けられ、前記バイパス路における前記空気の流量を調整するバイパス弁と、前記排気路において前記燃料電池スタックと前記バイパス路との間に設けられ、前記排気路における前記空気の流量を調整する排気弁と、前記給気路に前記空気を吐出するコンプレッサと、前記コンプレッサ、前記バイパス弁及び前記排気弁を制御する制御部と、を有し、前記燃料電池スタック内の掃気が行われる場合、前記制御部は、前記排気弁を制御して、前記排気弁の開度を、少なくとも全開状態よりも小さくし、前記バイパス弁を制御して、前記バイパス弁の開度を、少なくとも全閉状態よりも大きくし、前記コンプレッサを制御して、前記給気路に前記空気を吐出する。
【0008】
本発明の第2の態様は、燃料電池スタックのアノードに燃料ガスを供給し、前記燃料電池スタックのカソードに空気を供給することにより、前記燃料電池スタックにおいて化学反応をさせて、発電を行う燃料電池システムの制御方法であって、前記燃料電池システムは、前記燃料電池スタックに供給される前記空気が流通する給気路と、前記燃料電池スタックから排出される前記空気が流通する排気路と、前記燃料電池スタックから排出される水分が流通する排水路と、前記燃料電池スタックを迂回して、前記給気路と前記排気路とを繋ぐバイパス路と、前記バイパス路に設けられ、前記バイパス路における前記空気の流量を調整するバイパス弁と、前記排気路において前記燃料電池スタックと前記バイパス路との間に設けられ、前記排気路における前記空気の流量を調整する排気弁と、前記給気路に前記空気を吐出するコンプレッサと、を有し、前記燃料電池システムの制御方法は、前記燃料電池スタック内の掃気が行われる場合、前記排気弁の開度を、少なくとも全開状態よりも小さくし、前記バイパス弁の開度を、少なくとも全閉状態よりも大きくし、前記コンプレッサから前記給気路に前記空気を吐出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、燃料電池システムの掃気時において、コンプレッサのサージングを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、制御部において実行される掃気制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
[燃料電池システムの構成]
図1は、燃料電池システム10の模式図である。燃料電池システム10は、例えば、燃料電池車両等に搭載される。
【0012】
燃料電池システム10は、燃料電池スタック12、酸化剤ガス給排部14、燃料ガス給排部16及び制御部18を有する。
図1では、燃料ガス給排部16の構成は省略されている。
【0013】
燃料電池スタック12は、積層された複数の発電セル20を有する。各発電セル20は、電解質膜・電極構造体22、一対のセパレータ24(セパレータ24a、セパレータ24b)を有する。電解質膜・電極構造体22は、一対のセパレータ24により挟持される。
【0014】
電解質膜・電極構造体22は、電解質膜26、カソード28及びアノード30を有する。カソード28は、電解質膜26の一方の面に設けられる。アノード30は、電解質膜26の他方の面に設けられる。
【0015】
セパレータ24aには、電解質膜・電極構造体22の一方の面に酸化剤ガスを流通させる酸化剤ガス流路32が形成される。セパレータ24bには、電解質膜・電極構造体22の他方の面に燃料ガスを流通させる燃料ガス流路34が形成される。
【0016】
燃料電池スタック12には、酸化剤ガス給排部14により酸化剤ガスが供給される。酸化剤ガスは、各発電セル20の酸化剤ガス流路32に流入する。酸化剤ガスは、カソード28における化学反応に使用される。使用された酸化剤ガス(酸化剤オフガス)は、燃料電池スタック12から酸化剤ガス給排部14に排出される。
【0017】
燃料電池スタック12には、燃料ガス給排部16により燃料ガスが供給される。燃料ガスは、各発電セル20の燃料ガス流路34に流入する。燃料ガスは、アノード30における化学反応に使用される。使用された燃料ガス(燃料オフガス)は、燃料電池スタック12から燃料ガス給排部16に排出される。
【0018】
酸化剤ガス給排部14は、コンプレッサ36、加湿器38、給気路40、排気路42、排水路44、バイパス路46を有する。
【0019】
コンプレッサ36は、給気路40に酸化剤ガスとして空気を吐出する。給気路40に吐出された酸化剤ガスは、加湿器38により加湿されて、燃料電池スタック12に供給される。カソード28における化学反応により水分が生成される。生成された水分は、燃料電池スタック12から排水路44に送られる。排水路44に送られた水分は、燃料電池システム10の外部に排出される。生成された水分の一部は、酸化剤オフガスに含まれる。酸化剤オフガスは、燃料電池スタック12から排気路42に送られる。排気路42に送られた酸化剤オフガスは、加湿器38において吸湿されて、燃料電池システム10の外部に排出される。
【0020】
燃料電池スタック12が発電を停止した状態において、各発電セル20のカソード28から水分を除去する掃気が行われる。掃気時には、コンプレッサ36は、給気路40に空気を吐出する。給気路40に吐出された空気は、燃料電池スタック12に供給される。各発電セル20のカソード28の水分は、燃料電池スタック12に供給された空気とともに、燃料電池スタック12から排水路44に送られる。排水路44に排出された水は、空気とともに燃料電池システム10の外部に排出される。
【0021】
バイパス路46は、燃料電池スタック12を迂回して、給気路40と排気路42とを繋ぐ。バイパス路46は、バイパス弁48を有する。バイパス弁48は、バイパス路46における空気の流量を調整する。
【0022】
加湿器38は、燃料電池スタック12から排気路42に送られた酸化剤オフガスに含まれる水分を吸収して、給気路40から燃料電池スタック12に供給される酸化剤ガスに水分を与える。加湿器38は、給気路40において、バイパス路46と燃料電池スタック12との間に設けられる。加湿器38は、排気路42において、バイパス路46と燃料電池スタック12との間に設けられる。
【0023】
排気路42は、排気弁50を有する。排気弁50は、排気路42において、燃料電池スタック12とバイパス路46との間に設けられる。排気弁50は、排気路42において、加湿器38とバイパス路46との間に設けられる。排気弁50は、排気路42における空気の流量を調節する。
【0024】
制御部18は、コンプレッサ36、バイパス弁48及び排気弁50を制御する。制御部18による制御については後に詳述する。
【0025】
[制御部の構成]
図2は、制御部18の構成を示すブロック図である。制御部18は、演算部52及び記憶部54を有する。演算部52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。演算部52は、発電状態判定部56、目標吐出量設定部58、コンプレッサ制御部59、大気圧取得部60、温度取得部64、目標開度設定部68及び弁制御部70を有する。発電状態判定部56、目標吐出量設定部58、コンプレッサ制御部59、大気圧取得部60、温度取得部64、目標開度設定部68及び弁制御部70は、記憶部54に記憶されているプログラムが演算部52によって実行されることによって実現される。発電状態判定部56、目標吐出量設定部58、コンプレッサ制御部59、大気圧取得部60、温度取得部64、目標開度設定部68及び弁制御部70の少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されてもよい。発電状態判定部56、目標吐出量設定部58、コンプレッサ制御部59、大気圧取得部60、温度取得部64、目標開度設定部68及び弁制御部70の少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0026】
記憶部54は、コンピュータ可読記憶媒体である、不図示の揮発性メモリ及び不図示の不揮発性メモリにより構成される。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)等である。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等である。データ等が、例えば、揮発性メモリに記憶される。プログラム、テーブル、マップ等が、例えば、不揮発性メモリに記憶される。記憶部54の少なくとも一部が、上述したプロセッサ、集積回路等に備えられていてもよい。記憶部54の少なくとも一部が、燃料電池システム10とネットワークによって接続された機器に搭載されていてもよい。
【0027】
発電状態判定部56は、燃料電池スタック12が、発電している状態である、又は、発電を停止している状態であることを判定する。
【0028】
目標吐出量設定部58は、コンプレッサ36から給気路40に吐出される単位時間当たり酸化剤ガス(空気)の体積の目標値を設定する。以下、コンプレッサ36から給気路40に吐出される単位時間当たり酸化剤ガス(空気)の体積を吐出量と記載することがある。また、吐出量の目標値を目標吐出量と記載することがある。
【0029】
掃気時において、目標吐出量は、所定吐出量に設定される。コンプレッサ36の吐出量が所定吐出量以下である場合、コンプレッサ36を比較的低回転とすることができる。これにより、コンプレッサ36の駆動に起因する騒音、振動等が抑制される。その結果、例えば、燃料電池車両が停車時において、車内の乗員に与える不快感が低減される。コンプレッサ制御部59は、目標吐出量に基づいてコンプレッサ36を制御する。
【0030】
大気圧取得部60は、大気圧測定部62から大気圧を取得する。大気圧測定部62は、例えば、燃料電池車両等に設けられる。大気圧測定部62は、車外の大気圧を測定する。
【0031】
温度取得部64は、温度測定部66から空気の温度を取得する。温度測定部66は、例えば、燃料電池車両等に設けられる。温度測定部66は、車外の空気の温度を測定する。温度測定部66は、コンプレッサ36の空気の吸入口における空気の温度を測定してもよい。
【0032】
目標開度設定部68は、バイパス弁48の目標開度を設定する。掃気時におけるバイパス弁48の目標開度は、大気圧取得部60が取得した大気圧、及び、温度取得部64が取得した空気の温度に基づいて設定される。大気圧が大きいほど、バイパス弁48の目標開度は大きく設定される。空気の温度が低いほど、バイパス弁48の目標開度は大きく設定される。すなわち、コンプレッサ36に吸入される空気の密度(単位体積当たりの質量)が大きいほど、バイパス弁48の目標開度は大きく設定される。
【0033】
弁制御部70は、排気弁50及びバイパス弁48を制御する。掃気時において、弁制御部70は、排気弁50を制御して、排気弁50を閉弁する。掃気時において、弁制御部70は、バイパス弁48を制御して、バイパス弁48の開度を、目標開度設定部68で設定された目標開度にする。バイパス弁48の開度が調整されることにより、コンプレッサ36における実際の吐出量の低下を抑制する。これにより、コンプレッサ36のサージングが抑制される。
【0034】
[掃気制御処理]
図3は、制御部18において実行される掃気制御処理の流れを示すフローチャートである。掃気制御処理は、燃料電池スタック12において発電が停止した後に1回又は複数回実行される。
【0035】
ステップS1において、発電状態判定部56は、燃料電池スタック12において発電が停止したか否かを判定する。燃料電池スタック12において発電が停止した場合(ステップS1:YES)には、ステップS2へ移行する。燃料電池スタック12が発電している場合(ステップS1:NO)には、掃気制御処理を終了する。燃料電池スタック12において発電が停止した場合、弁制御部70は、バイパス弁48を制御して、バイパス弁48を開弁させる。
【0036】
ステップS2において、目標吐出量設定部58は、コンプレッサ36の目標吐出量を所定吐出量に設定する。その後、ステップS3へ移行する。
【0037】
ステップS3において、弁制御部70は、バイパス弁48の開度が所定開度以上であるか否かを判定する。バイパス弁48の開度が所定開度以上である場合(ステップS3:YES)には、ステップS4へ移行する。バイパス弁48の開度が所定開度未満である場合(ステップS3:NO)には、ステップS3の判定を繰り返す。
【0038】
ステップS4において、弁制御部70は、排気弁50を閉弁させる。その後、ステップS5へ移行する。なお、弁制御部70は、排気弁50の全閉状態とはせずに、排気弁50の開度を全開よりも小さくしてもよい。
【0039】
ステップS5において、目標開度設定部68は、大気圧取得部60が取得した大気圧、及び、温度取得部64が取得した空気の温度に基づいて、バイパス弁48の目標開度を設定する。その後、ステップS6へ移行する。
【0040】
ステップS6において、コンプレッサ制御部59は、設定された目標吐出量に基づいて、コンプレッサ36を駆動させる。その後、ステップS7へ移行する。
【0041】
ステップS7において、弁制御部70は、設定された目標開度に基づいて、バイパス弁48を開弁させる。その後、ステップS8へ移行する。
【0042】
ステップS8において、コンプレッサ制御部59は、コンプレッサ36を駆動させてから所定時間経過したか否かを判定する。所定時間経過した場合(ステップS8:YES)には、ステップS9へ移行する。所定時間経過していない場合(ステップS8:NO)には、ステップS8の判定を繰り返す。コンプレッサ36を駆動させてから所定時間経過した場合、燃料電池スタック12内の掃気が完了したと判定される。
【0043】
ステップS9において、コンプレッサ制御部59は、コンプレッサ36を停止させる。その後、ステップS10へ移行する。
【0044】
ステップS10において、弁制御部70は、バイパス弁48及び排気弁50を開弁する。その後、掃気制御処理を終了する。弁制御部70は、バイパス弁48及び排気弁50を閉弁してもよい。弁制御部70は、バイパス弁48及び排気弁50の一方を開弁し、他方を閉弁してもよい。
【0045】
[作用効果]
燃料電池スタック12において発電が停止している場合、燃料電池システム10から供給される電力により駆動する機器は停止していることが多い。他の機器が停止している状態において、コンプレッサ36の駆動に起因する騒音、振動は、ユーザが感じ取りやすく、ユーザは不快に感じやすい。
【0046】
そのため、燃料電池スタック12において発電が停止している状態である掃気時には、コンプレッサ36の目標吐出量は、所定吐出量に設定される。コンプレッサ36の吐出量が所定吐出量以下である場合、コンプレッサ36を比較的低回転とすることができる。これにより、コンプレッサ36の駆動に起因する騒音、振動等が抑制される。その結果、ユーザに与える不快感が抑制される。
【0047】
一方、掃気時において、コンプレッサ36の吐出量が少ないため、燃料電池スタック12に供給される空気の体積が少なく、各発電セル20内の酸化剤ガス流路32における圧力が低い。その結果、カソード28の水分の除去に長時間要する問題がある。
【0048】
そこで、本実施形態の燃料電池システム10では、燃料電池スタック12内の掃気が行われる場合、制御部18は、排気弁50を制御して、排気弁50の開度を少なくとも全開状態よりも小さくする。これにより、排気路42における抵抗が大きくなるため、各発電セル20内の酸化剤ガス流路32における圧力を高くできる。その結果、燃料電池システム10は、カソード28の水分を短時間で除去できる。
【0049】
各発電セル20内の酸化剤ガス流路32の圧力が高くなりことに伴い、給気路40内の圧力が高くなる場合、コンプレッサ36の空気の吐出量が少なくなる。掃気時には、コンプレッサ36の目標吐出量が比較的小さく設定されており、この状態において、コンプレッサ36の吐出量が少なくなる場合、コンプレッサ36にサージングが生じやすい。そこで、本実施形態の燃料電池システム10では、燃料電池スタック12内の掃気が行われる場合、制御部18は、バイパス弁48を制御して、バイパス弁48の開度を、少なくとも全閉状態よりも大きくする。これにより、コンプレッサ36の空気の吐出量がコンプレッサ36のサージングを避ける領域に調整されつつ、燃料電池スタック12に供給される空気の量が調整される。その結果、燃料電池システム10は、コンプレッサ36のサージングを抑制できる。
【0050】
本実施形態の燃料電池システム10では、排気弁50は、排気路42においてバイパス路46と加湿器38との間に設けられる。仮にバイパス弁48が閉弁された状態で、排気弁50が開弁された場合、排気路42の抵抗が低下し、排気路42における空気の流量を増加させることが可能である。そのため、排気弁50を開弁させることにより、コンプレッサ36の空気の吐出量の低下が抑制される。しかし、排気路42には加湿器38が設けられるため、排気弁50を開弁しても、排気路42における抵抗を十分に低下させることができないおそれがある。本実施形態の燃料電池システム10では、加湿器38が設けられる排気路42の排気弁50ではなく、バイパス路46のバイパス弁48によりコンプレッサ36の空気の吐出量の低下が抑制される。これにより、燃料電池システム10は、コンプレッサ36のサージングを抑制できる。
【0051】
本実施形態の燃料電池システム10では、燃料電池スタック12内の掃気を行う場合、制御部18は、排気弁50及びバイパス弁48を制御して、排気路42における酸化剤ガスの流量を、バイパス路46における酸化剤ガスの流量よりも多くする。これにより、燃料電池システム10は、コンプレッサ36のサージングを抑制できる。
【0052】
本実施形態の燃料電池システム10では、燃料電池スタック12内の掃気を行う場合、制御部18は、排気弁50を制御して、排気弁50を閉弁する。これにより、排気路42から空気が排出されないため、各発電セル20内の酸化剤ガス流路32における圧力を高くできる。その結果、燃料電池システム10は、カソード28の水分を短時間で除去できる。
【0053】
本実施形態の燃料電池システム10では、燃料電池スタック12内の掃気を行う場合、制御部18は、大気圧取得部60が取得した大気圧と、温度取得部64が取得した空気の温度とに基づいて、バイパス弁48の目標開度を設定する。これにより、燃料電池スタック12に供給される空気の質量が過大になることを抑制できる。そのため、燃料電池スタック12内の酸化剤ガス流路32における圧力が過大になることを抑制できる。その結果、燃料電池システム10は、コンプレッサ36のサージングを抑制できる。
【0054】
〔実施形態から得られる発明〕
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0055】
燃料電池スタック(12)のアノード(30)に燃料ガスとして水素を供給し、前記燃料電池スタックのカソード(28)に酸化剤ガスとして空気を供給することにより、前記燃料電池スタックにおいて化学反応をさせて、発電を行う燃料電池システム(10)であって、当該燃料電池システムは、前記燃料電池スタックに供給される前記空気が流通する給気路(40)と、前記燃料電池スタックから排出される前記空気が流通する排気路(42)と、前記燃料電池スタックから排出される水分が流通する排水路(44)と、前記燃料電池スタックを迂回して、前記給気路と前記排気路とを繋ぐバイパス路(46)と、前記バイパス路に設けられ、前記バイパス路における前記空気の流量を調整するバイパス弁(48)と、前記排気路において前記燃料電池スタックと前記バイパス路との間に設けられ、前記排気路における前記空気の流量を調整する排気弁(50)と、前記給気路に前記空気を吐出するコンプレッサ(36)と、前記コンプレッサ、前記バイパス弁及び前記排気弁を制御する制御部(18)と、を有し、前記燃料電池スタック内の掃気が行われる場合、前記制御部は、前記排気弁を制御して、前記排気弁の開度を、少なくとも全開状態よりも小さくし、前記バイパス弁を制御して、前記バイパス弁の開度を、少なくとも全閉状態よりも大きくし、前記コンプレッサを制御して、前記給気路に前記空気を吐出する。これにより、燃料電池システムは、コンプレッサのサージングを抑制できる。
【0056】
上記の燃料電池システムは、前記給気路及び前記排気路において、前記バイパス路と前記燃料電池スタックとの間に設けられ、前記燃料電池スタックから排出された前記空気の水分により、前記燃料電池スタックに供給される前記空気の加湿を行う加湿器(38)を有し、前記排気弁は、前記バイパス路と前記加湿器との間に設けられてもよい。これにより、燃料電池システムは、コンプレッサのサージングを抑制できる。
【0057】
上記の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池スタック内の掃気を行う場合、前記制御部は、前記排気弁及び前記バイパス弁を制御して、前記排気路における前記空気の流量よりも、前記バイパス路における前記空気の流量を多くしてもよい。これにより、燃料電池システムは、コンプレッサのサージングを抑制できる。
【0058】
上記の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池スタック内の掃気を行う場合、前記制御部は、前記排気弁を制御して、前記排気弁を閉弁してもよい。これにより、燃料電池システムは、カソードの水分を短時間で除去できる。
【0059】
上記の燃料電池システムは、大気圧を取得する大気圧取得部(60)と、前記コンプレッサが吸入する前記空気の温度を取得する温度取得部(64)と、を有し、前記燃料電池スタック内の掃気を行う場合、前記制御部は、前記大気圧と、前記空気の温度とに基づいて、前記バイパス弁の開度を設定してもよい。これにより、燃料電池システムは、コンプレッサのサージングを抑制できる。
【0060】
燃料電池スタックのアノードに燃料ガスを供給し、前記燃料電池スタックのカソードに空気を供給することにより、前記燃料電池スタックにおいて化学反応をさせて、発電を行う燃料電池システムの制御方法であって、前記燃料電池システムは、前記燃料電池スタックに供給される前記空気が流通する給気路と、前記燃料電池スタックから排出される前記空気が流通する排気路と、前記燃料電池スタックから排出される水分が流通する排水路と、前記燃料電池スタックを迂回して、前記給気路と前記排気路とを繋ぐバイパス路と、前記バイパス路に設けられ、前記バイパス路における前記空気の流量を調整するバイパス弁と、前記排気路において前記燃料電池スタックと前記バイパス路との間に設けられ、前記排気路における前記空気の流量を調整する排気弁と、前記給気路に前記空気を吐出するコンプレッサと、を有し、前記燃料電池システムの制御方法は、前記燃料電池スタック内の掃気が行われる場合、前記排気弁の開度を、少なくとも全開状態よりも小さくし、前記バイパス弁の開度を、少なくとも全閉状態よりも大きくし、前記コンプレッサから前記給気路に前記空気を吐出する。これにより、燃料電池システムは、コンプレッサのサージングを抑制できる。
【0061】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0062】
10…燃料電池システム 12…燃料電池スタック
18…制御部 28…カソード
30…アノード 36…コンプレッサ
38…加湿器 40…給気路
44…排水路 46…バイパス路
50…排気弁 60…大気圧取得部
64…温度取得部