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特開2024-40563基板対基板コネクタの接続方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040563
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】基板対基板コネクタの接続方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/26 20060101AFI20240318BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20240318BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240318BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01R43/26
H05K13/08 Q
B25J13/08 A
H05K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144991
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 友紀
【テーマコード(参考)】
3C707
5E063
5E353
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707AS08
3C707BS10
3C707DS03
3C707KS03
3C707KS34
3C707KS36
3C707KT02
3C707KT06
3C707KV11
3C707KW03
3C707KX06
3C707LS14
3C707LV04
3C707LV07
3C707NS17
5E063KA01
5E063XA05
5E353BB06
5E353BC03
5E353JJ07
5E353JJ25
5E353JJ48
5E353JJ50
5E353KK02
5E353KK12
5E353LL03
5E353QQ12
5E353QQ15
(57)【要約】
【課題】基板対基板コネクタの一方のコネクタが実装された柔軟物をロボットハンドで保持して、他方のコネクタに接続する方法を提供する。
【解決手段】先端部の片面に基板対基板コネクタの第1部品が実装された柔軟物を撮像して前記先端部に設定された被保持部の位置および向きを算出する第1計測工程と、算出された前記被保持部の位置および向きに基づいて、ロボットハンドで前記被保持部を保持する保持工程と、前記第1部品の第1方向の位置を計測する第2計測工程と、前記第1部品の第2方向の位置を計測する第3計測工程と、前記第2計測工程および前記第3計測工程で算出された前記第1部品の位置に基づいて、前記基板対基板コネクタの第2部品に前記第1部品を接続する接続工程とを有する基板対基板コネクタの接続方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部の片面に基板対基板コネクタの第1部品が実装された柔軟物を撮像して第1画像を取得し、前記第1画像に基づいて、前記柔軟物の前記先端部に設定された被保持部の位置および向きを算出する第1計測工程と、
前記第1計測工程で算出された前記被保持部の位置および向きに基づいて、ロボットハンドを動作させて、該ロボットハンドが備える保持部によって前記被保持部を保持する保持工程と、
前記第1部品の第1方向の位置を計測する第2計測工程と、
前記第1部品の第2方向の位置を計測する第3計測工程と、
前記第2計測工程および前記第3計測工程で算出された前記第1部品の位置に基づいて、前記基板対基板コネクタの第2部品に前記第1部品を接続する接続工程と、
を有する基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項2】
前記第2計測工程は、前記第1部品の先端面を撮像して第2画像を取得し、前記第2画像に基づいて、前記第1部品の前記第1方向の位置を計測し、
前記第3計測工程は、距離センサを用いて前記第1部品の先端面の前記第2方向の位置を計測することにより、前記第1部品の前記第2方向の位置を計測する、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項3】
前記第2計測工程は、距離センサを用いて前記第1部品の側端面の前記第1方向の位置を計測することにより、前記第1部品の前記第1方向の位置を計測し、
前記第3計測工程は、前記第1部品の側端面を撮像して第3画像を取得し、前記第3画像に基づいて、前記第1部品の前記第2方向の位置を計測する、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項4】
前記第2計測工程は、前記第1部品の先端面を撮像して第2画像を取得し、前記第2画像に基づいて、前記第1部品の前記第1方向の位置を計測し、
前記第3計測工程は、前記第1部品の側端面を撮像して第3画像を取得し、前記第3画像に基づいて、前記第1部品の前記第2方向の位置を計測する、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項5】
前記第2計測工程は、第1距離センサを用いて前記第1部品の側端面の前記第1方向の位置を計測することにより、前記第1部品の前記第1方向の位置を計測し、
前記第3計測工程は、第2距離センサを用いて前記第1部品の先端面の前記第2方向の位置を計測することにより、前記第1部品の前記第2方向の位置を計測する、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項6】
前記保持部は、吸着ノズルおよび一対の幅方向規制部材を有し、
前記保持工程において、前記被保持部を前記吸着ノズルによって吸着保持した後、前記一対の幅方向規制部材で前記被保持部を前記第1方向の両側から挟み込むことにより、前記被保持部が前記第1方向に位置決めされる、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項7】
前記保持部は、吸着ノズルおよび先端規制部材を有し、
前記保持工程において、前記被保持部を前記吸着ノズルによって吸着保持した後、前記先端規制部材を前記被保持部に先端側から押し付けることにより、前記被保持部が前記第2方向に位置決めされる、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項8】
前記第2部品を撮像して第2部品画像を取得し、前記第2部品画像に基づいて、前記第2部品の位置および向きを算出する第2部品計測工程をさらに有し、
前記接続工程において、前記第1部品および前記第2部品の位置および向きに基づいて、前記第2部品に前記第1部品が接続される、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項9】
前記柔軟物がフレキシブルプリント配線板またはフレキシブルフラットケーブルであり、
前記被保持部が、前記フレキシブルプリント配線板またはフレキシブルフラットケーブルの、前記第1部品と反対面に形成された補強板であり、
前記第1計測工程が、前記第1画像中で前記補強板の領域を識別して、該補強板の位置および向きを算出する工程であり、
前記保持工程が、前記補強板を前記ロボットハンドで保持する工程である、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項10】
前記ロボットハンドは、前記保持部を複数備える、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項11】
前記ロボットハンドは、前記保持部の前方を照らす照明部を備える、
請求項1に記載の基板対基板コネクタの接続方法。
【請求項12】
先端部の片面に基板対基板コネクタの第1部品が実装された柔軟物を撮像して第1画像を取得する第1カメラと、
前記柔軟物の前記先端部に設定された被保持部を保持するための保持部を備えるロボットハンドと、
前記第1部品の先端面を撮像して第2画像を取得する第2カメラ、または前記第1部品の側端面の位置を計測する第1距離センサと、
前記第1部品の側端面を撮像して第3画像を取得する第3カメラ、または前記第1部品の側端面の位置を計測する第2距離センサと、
前記第1画像に基づいて前記被保持部の位置および向きを算出し、前記第2画像または前記第1距離センサによる計測結果、および前記第3画像または前記第2距離センサによる計測結果から前記第1部品の位置を算出する演算部と、
を有する基板対基板コネクタの接続システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板対基板コネクタの接続に関し、より詳細には、フレキシブルプリント配線板(FPC)やフレキシブルフラットケーブル(FFC)などの柔軟物に実装された基板対基板コネクタを、ロボットを用いて接続する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部配線等に、銅配線を柔軟な樹脂フィルムで挟んだ帯状のFPCやFFCが用いられる。例えば、特許文献1には、フレキシブルケーブルの先端部をステレオカメラで撮像し、先端部に装着された被把持部材(オス型コネクタ)の位置姿勢を算出してロボットハンド先端のフィンガーで把持し、プリント基板上の接合部材(メス型コネクタ)に基板面と平行な方向から挿入して、被把持部材を接合部材に接合させる方法が記載されている。
【0003】
また、硬い板状の回路基板(以下において単に「回路基板」という)とFPCやFFCとの接続部を小型化するため、FPC等にはコネクタを装着せず、先端部に樹脂製などの補強板を貼付して、回路基板上のコネクタに直接FPC等を挿入して接続することが行われている。例えば、特許文献2には、端子パターンが形成された先端部に補強板が設けられたフラットケーブルを定位置にストックしておき、ハンド部の吸着部と把持爪とによってフラットケーブルを保持し、フラットケーブルの先端部を基板上のコネクタに、基板面と略平行でやや斜め上の方向から挿入して、フラットケーブルとコネクタを接続する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-107043号公報
【特許文献2】特開2016-209967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、回路基板の実装密度をさらに高めるために、回路基板とFPC等の接続に基板対基板コネクタが用いられることがある。基板対基板コネクタは、一対の嵌合するコネクタをその厚さ方向に重ねて接続するもので、BtoB(登録商標)コネクタやスタッキングコネクタとも呼ばれる。しかし、従来の方法では、ロボットを用いて回路基板とFPC等を基板対基板コネクタで接続することは難しかった。
【0006】
回路基板とFPC等を基板対基板コネクタで接続する場合、一対の嵌合するコネクタの一方、通常はメス型コネクタを回路基板上に実装し、FPC等の先端部にはFPC等本体の片面に補強板を貼付して、その反対面に他方のコネクタを実装する。そして、一対のコネクタを厚さ方向に重ねて、補強板を回路基板に向けて、回路基板に垂直な方向から押すことで両者を嵌合させて接続する。このとき、重ね合わせたコネクタが面方向にずれた状態で力を加えるとコネクタが斜めに嵌合したり、破損する恐れがあるので、一対のコネクタの面方向の位置を正確に合わせる必要があった。
【0007】
一般に基板対基板コネクタは小型で端子ピッチが非常に狭い上に、一対のコネクタの接続面を視認できない状況で接続作業が行われるため、両コネクタの面方向の位置を正確に合わせることが難しかった。
【0008】
特許文献1に記載された方法では、フィンガーが把持した被把持部材を接合部材に近づけ、被把持部材が接合部分の近傍に位置した状態を撮像して、画像処理によって被把持部材と接合部材の三次元位置状態を推定している。しかし、基板対基板コネクタを用いる場合は、一対のコネクタの接続面を近づけた状態を視認することができない。また、特許文献2に記載された方法は定位置にストックされたフラットケーブルを保持して定位置にあるコネクタに挿入するもので、特許文献2には両者の位置を合わせる方法は特に記載されていない。したがって、特許文献1または特許文献2に記載された方法によって、基板対基板コネクタの接続を行うことはできなかった。
【0009】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、基板対基板コネクタの一方のコネクタが実装されたFPC等の柔軟物をロボットハンドで保持して、当該一方のコネクタを他方のコネクタに接続する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基板対基板コネクタの接続方法は、先端部の片面に基板対基板コネクタの第1部品が実装された柔軟物を撮像して第1画像を取得し、前記第1画像に基づいて、前記柔軟物の前記先端部に設定された被保持部の位置および向きを算出する第1計測工程と、前記第1計測工程で算出された前記被保持部の位置および向きに基づいて、ロボットハンドを動作させて、該ロボットハンドが備える保持部によって前記被保持部を保持する保持工程と、前記第1部品の第1方向における位置を計測する第2計測工程と、前記第1部品の第2方向における位置を計測する第3計測工程と、前記第2計測工程および前記第3計測工程で算出された前記第1部品の位置に基づいて、前記基板対基板コネクタの第2部品に前記第1部品を接続する接続工程とを有する。
【0011】
ここで、基板対基板コネクタの第1部品と第2部品は、一対の嵌合するコネクタで、一方がオス型、他方がメス型である。柔軟物とは、面状で柔軟な基板または配線であって、柔軟物にはFPCおよびFFCが含まれる。第1方向とは第1部品において端子が並列する方向をいい、第2方向とは第1方向と直交する方向をいう。なお、以下において、第1方向のことを、第1部品の幅方向ということがある。
【0012】
この方法により、基板対基板コネクタの端子ピッチが狭い場合でも、ロボットハンドで柔軟物を保持して、保持した柔軟物に実装された第1部品を対となる第2部品に接続することができる。
【0013】
上記基板対基板コネクタの接続方法において、前記第2計測工程は、前記第1部品の先端面を撮像して第2画像を取得し、前記第2画像に基づいて、前記第1部品の前記第1方向の位置を計測し、前記第3計測工程は、距離センサを用いて前記第1部品の先端面の前記第2方向の位置を計測することにより、前記第1部品の前記第2方向の位置を計測するものであってよい。ここで、第1部品の先端面とは、第1部品の第1方向に延びる端面のうち、先端側の端面をいう。また、距離センサとは、測定対象までの距離を測定可能なセンサをいい、一般に距離計または変位計と呼ばれるものを含む。
【0014】
あるいは、上記基板対基板コネクタの接続方法において、前記第2計測工程は、距離センサを用いて前記第1部品の側端面の前記第1方向の位置を計測することにより、前記第1部品の前記第1方向の位置を計測し、前記第3計測工程は、前記第1部品の側端面を撮像して第3画像を取得し、前記第3画像に基づいて、前記第1部品の前記第2方向の位置を計測するものであってよい。ここで、第1部品の側端面とは、第1部品の第2方向に延びる端面をいう。
【0015】
あるいは、上記基板対基板コネクタの接続方法において、前記第2計測工程は、前記第1部品の先端面を撮像して第2画像を取得し、前記第2画像に基づいて、前記第1部品の前記第1方向の位置を計測し、前記第3計測工程は、前記第1部品の側端面を撮像して第3画像を取得し、前記第3画像に基づいて、前記第1部品の前記第2方向の位置を計測するものであってよい。
【0016】
あるいは、上記基板対基板コネクタの接続方法において、前記第2計測工程は、第1距離センサを用いて前記第1部品の側端面の前記第1方向の位置を計測することにより、前記第1部品の前記第1方向の位置を計測し、前記第3計測工程は、第2距離センサを用いて前記第1部品の先端面の前記第2方向の位置を計測することにより、前記第1部品の前記第2方向の位置を計測するものであってよい。
【0017】
好ましくは、前記距離センサがレーザー変位計である。計測対象が小さい場合にも測定が容易になる。
【0018】
好ましくは、上記いずれかの基板対基板コネクタの接続方法において、前記保持部は、吸着ノズルおよび一対の幅方向規制部材を有し、前記保持工程において、前記被保持部を前記吸着ノズルによって吸着保持した後、前記一対の幅方向規制部材で前記被保持部を前記第1方向の両側から挟み込むことにより、前記被保持部が前記第1方向に位置決めされる。これにより、柔軟物を保持した状態でロボットハンドを高速で動作させたときにも、被保持部が第1方向にずれることがなく、被保持部の位置が安定する。
【0019】
好ましくは、上記いずれかの基板対基板コネクタの接続方法において、前記保持部は、吸着ノズルおよび先端規制部材を有し、前記保持工程において、前記被保持部を前記吸着ノズルによって吸着保持した後、前記先端規制部材を前記被保持部に先端側から押し付けることにより、前記被保持部が前記第2方向に位置決めされる。これにより、柔軟物を保持した状態でロボットハンドを高速で動作させたときに、被保持部が第2方向にずれることがなく、被保持部の位置が安定する。
【0020】
好ましくは、上記いずれかの基板対基板コネクタの接続方法は、前記第2部品を撮像して第2部品画像を取得し、前記第2部品画像に基づいて、前記第2部品の位置および向きを算出する第2部品計測工程をさらに有し、前記接続工程において、前記第1部品および前記第2部品の位置および向きに基づいて、前記第2部品に前記第1部品が接続される。これにより、第2部品が供給される位置の精度が問題となるほどに、基板対基板コネクタの端子ピッチがさらに狭い場合でも、第1部品と第2部品の接続が可能となる。
【0021】
好ましくは、上記いずれかの基板対基板コネクタの接続方法において、前記ロボットハンドが力覚センサを備え、前記接続工程において、前記第1部品と前記第2部品の正常嵌合時に発生するクリック感の有無を前記力覚センサで確認することによって、前記第1部品と前記第2部品が正常に嵌合されたか否かが判定される。ここで、クリック感とは、スイッチを押したような手応えのことである。これにより、何らかの原因によって第1部品と第2部品が面方向にずれた状態で両者を接続しようとしても、接続作業を中止して第1部品または第2部品の破損を防止することができる。
【0022】
好ましくは、上記いずれかの基板対基板コネクタの接続方法において、前記基板対基板コネクタが低背型のコネクタである。本発明の基板対基板コネクタの接続方法は、高さの低い、すなわち薄型のコネクタに特に適する。
【0023】
好ましくは、上記いずれかの基板対基板コネクタの接続方法において、前記柔軟物がフレキシブルプリント配線板またはフレキシブルフラットケーブルであり、前記被保持部が、前記フレキシブルプリント配線板またはフレキシブルフラットケーブルの、前記第1部品と反対面に形成された補強板であり、前記第1計測工程が、前記第1画像中で前記補強板の領域を識別して、該補強板の位置および向きを算出する工程であり、前記保持工程が、前記補強板を前記ロボットハンドで保持する工程である。
【0024】
好ましくは、上記いずれかの基板対基板コネクタの接続方法において、前記ロボットハンドは、前記保持部を複数備える。これにより、異なるサイズのコネクタの接続作業を連続して行う場合に、ロボットハンドの移動量を少なく抑えることができる。
【0025】
好ましくは、上記いずれかの基板対基板コネクタの接続方法において、前記ロボットハンドは、前記保持部の前方を照らす照明部を備える。この照明部によって、ロボットハンドの作業対象となる柔軟物の被保持部や第2部品を照らすことができる。
【0026】
本発明の基板対基板コネクタの接続システムは、先端部の片面に基板対基板コネクタの第1部品が実装された柔軟物を撮像して第1画像を取得する第1カメラと、前記柔軟物の前記先端部に設定された被保持部を保持するための保持部を備えるロボットハンドと、前記第1部品の先端面を撮像して第2画像を取得する第2カメラ、または前記第1部品の側端面の位置を計測する第1距離センサと、前記第1部品の側端面を撮像して第3画像を取得する第3カメラ、または前記第1部品の側端面の位置を計測する第2距離センサと、前記第1画像に基づいて前記被保持部の位置および向きを算出し、前記第2画像または前記第1距離センサによる計測結果、および前記第3画像または前記第2距離センサによる計測結果から前記第1部品の位置を算出する演算部とを有する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の基板対基板コネクタの接続方法によれば、第1計測工程によって柔軟物の被保持部の位置および向きを計測してロボットハンドで保持するので、柔軟物の供給される位置が一定しない場合や、柔軟物が曲がったり捻じれたりした状態にある場合でも、ロボットハンドで保持することができる。そして、第2計測工程および第3計測工程によって、柔軟物に実装された第1部品の位置を計測するので、第1部品を対となる第2部品に正確に重ね合わせて、第1部品と第2部品を接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態の基板対基板コネクタの接続方法を実施する場面を示す図である。
図2】FPCと第1部品の構造を示す図であって、A:FPCを幅方向に二分した端面図、B:FPCを第1部品側から見た平面図、C:回路基板上の第2部品の平面図である。
図3】第1実施形態のロボットハンドの構造を示す図であって、A:FPCに相対する側から見た平面図、B:図3Aの下側面図、C:図3Aの左側面図である。
図4】第1実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の工程フロー図である。
図5】第1実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の第1計測工程を説明するための図である。
図6】第1実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の保持工程を説明するための図である。
図7】第1実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の保持工程における幅方向規制部材および先端規制部材の動作を説明するための、A:平面図、B:図7Aの右側面図である。
図8】第1実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の第2計測工程と第3計測工程を説明するための図である。
図9】第1実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の第2計測工程と第3計測工程を説明するための、A:平面図、B:図9Aの右側面図である。
図10】第1実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の第2部品計測工程を説明するための図である。
図11】第1実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の接続工程を説明するための図である。
図12】力覚センサでクリック感を検出する方法を説明するための図である。
図13】他のロボットハンドの構造を示す平面図である。
図14】第2実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の第2計測工程と第3計測工程を説明するための平面図である。
図15】第3実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の第2計測工程と第3計測工程を説明するための平面図である。
図16】第4実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の第2計測工程と第3計測工程を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の基板対基板コネクタの接続方法の第1実施形態を図1~13に基づいて説明する。本実施形態では、先端部の片面に基板対基板コネクタの第1部品が実装されたFPC(柔軟物)をロボットハンドで保持して、回路基板に実装された基板対基板コネクタの第2部品に第1部品を接続する。
【0030】
図1を参照して、本実施形態の基板対基板コネクタの接続方法を実施するためのシステム10は、ロボットハンド80、第1カメラ31、第2カメラ32、距離センサ33、第2部品撮像用カメラ34および演算部30を有する。ロボットハンド80はロボット20のアームの先端に装着されている。第1カメラ31、第2カメラ32、距離センサ33および第2部品撮像用カメラ34の位置は固定されている。FPC40は先端部の片面に基板対基板コネクタの第1部品50を実装し、回路基板60上に基板対基板コネクタの第2部品70が実装されている。ロボット20は、ロボットハンド80によってFPC40を保持して、第1部品と第2部品を接続する。なお、以下においてロボットハンドを単に「ハンド」ということがある。
【0031】
FPC40は、電子機器の筐体61と回路基板60との間から立ち上がっている。FPC40の基端部は筐体61の図示しない内部に固定され、FPCの先端は空中にあって自由端となっている。自由端とは、FPCの端部が拘束されておらず、移動したり捩じれたり曲がったりできる状態にあることをいう。
【0032】
図2Aを参照して、FPC40は、FPC本体41と補強板46からなる。FPC本体41は、銅箔をエッチング加工等して形成した銅配線43をポリイミド等の樹脂フィルム42、44で挟んで形成される。FPCの先端部は片面の樹脂フィルム44が除去されて、銅配線43が櫛歯状に露出した電極部(図2Bの45)を形成している。この電極部に基板対基板コネクタの第1部品50が実装されている。FPCの第1部品と反対側の面には補強板46が貼付されている。本実施形態では、補強板46を被保持部として、FPCを保持する。
【0033】
補強板46としては、ステンレス鋼、ポリイミド、PETなどの薄い板が用いられる。FPC本体41は柔軟で曲がりやすいため、補強板46によって、第1部品との接合不良や、応力集中による第1部品の剥離等が防止される。なお、図2の縮尺は説明を容易にするために正確ではなく、典型的には、FPC本体41の厚さが数十μm、補強板46の厚さが数十~200μm程度である。
【0034】
図2AおよびBを参照して、第1部品50は平面視で略長方形で、長辺をFPC40の幅方向に合わせて実装されている。第1部品は、第2部品70と接続される接続面51に、略長方形の突条52を有している。この突条52は、第1部品を長辺方向に二分する断面に、2本の突起として現れている(図2A)。端子53は、FPC電極部45の銅配線43と一対一にはんだ付け等で接合され、突条52の一方の側面から頂部を超えて反対側の側面に亘って延びている。本実施形態の第1部品は基板対基板コネクタのオス型コネクタで、ヘッダー、プラグなどとも呼ばれる。
【0035】
本明細書において、第1部品50において端子53が並列する方向Wを第1方向、または第1部品の幅方向といい、第1方向と直交する方向Lを第2方向という。また、第1部品の端面で、第1方向に延びる端面のうち、先端側の端面を先端面54といい、第1部品の端面で、第2方向に延びる端面を側端面55という。
【0036】
図2Cを参照して、回路基板60に実装された基板対基板コネクタの第2部品70は平面視で略長方形で、第1部品50と接続される接続面71に略長方形の突条72を有している。端子74はそれぞれ回路基板60の図示しない配線にはんだ付け等で接合され、突条72の一方の側面から頂部を超えて反対側の側面に亘って延びている。突条72の内側には、第1部品の突条52がちょうど嵌る大きさの窪み73が設けられており、この窪み73に第1部品の突条52が嵌ることによって、端子53と端子74が接触して、第1部品50と第2部品70が接続される。
【0037】
基板対基板コネクタの大きさは用途に応じて様々であるが、回路基板とFPCの接続に用いられるものの大きさは、典型的には、短辺(図2の左右方向の幅)が約2~5mm、端子数が6~数十、端子ピッチが約0.3~0.8mm、高さが第1部品と第2部品を嵌合した状態での全体高さで約0.5~3mmである。回路基板同士の接合にはより大きなものが用いられるが、本実施形態の基板対基板コネクタ接続方法は、上記のような嵌合状態での全体高さが3mm以下であるような低背型のコネクタに適し、全体高さが2mm以下の低背型コネクタに特に適する。
【0038】
図1に戻って、ロボット20は多関節ロボットである。ロボット20は、複数のリンク22と関節23が連結されて構成されるアーム21と、ロボット制御部28とを有する。アーム21の先端には、FPC40を保持するためのエンドエフェクタであるハンド80が装着されている。
【0039】
ロボット制御部28はアーム21およびハンド80を含むロボット20全体の動作を制御する。例えば、ロボット制御部は後述する演算部30からの指示を受けて、指示された動作に必要な各関節23の回転角度を算出してハンド80を目標位置まで移動させ、また、FPC40の保持、解放などをハンド80に行わせる。
【0040】
図3を参照して、ロボットハンド80は、ベース部材81と、その片面に設けられた保持部82からなる。保持部82は、吸着ノズル83と、一対の幅方向規制部材86、86と、先端規制部材89とを有する。
【0041】
吸着ノズル83は、先端面84が平坦に形成されて、吸着穴85が形成されている。吸着穴は図示しない減圧源26に連通し、FPCの先端を図3AおよびBの左側に向けて、補強板46を吸着して保持する。吸着穴の個数や配置は特に限定されず、補強板の形状や大きさに合わせて設計することができる。また、本実施形態のハンド80では、作業を容易にするために、アーム21との連結部の軸から吸着ノズル83を偏心させている(図1参照)。
【0042】
また、吸着ノズル83は、吸着した補強板46を押して第1部品50を第2部品70に接続する。吸着ノズル83の先端面84は、第1部品と第2部品の接続時に、第1部品全体にできるだけ均等に力がかかるように、平面視で第1部品と略同寸法の長方形であることが好ましい。吸着ノズル83の先端には、弾性素材からなる吸盤を装着してもよい。吸着ノズルに吸盤を装着する場合は、保持したFPC40の吸着ノズル83と直交する方向への変位が過大にならないよう、変形が少ない材質や形状の吸盤を採用することが好ましい。
【0043】
一対の幅方向規制部材86は、吸着ノズル83を挟んで、第1方向の両側に向かい合って配置され、第1方向に直線的に移動可能である。これにより、吸着ノズル83に補強板46が吸着された状態で、一対の幅方向規制部材がスライダ88に沿って互いに接近して、補強板46を第1方向の両側から挟み込むことにより、補強板を幅方向に位置決めできる。幅方向規制部材86の先端部87は、吸着ノズルの先端面84からわずかに突出している。幅方向規制部材の先端部87の吸着ノズル先端面84からの突出量は、第1部品50と第2部品70の接続時に第2部品その他の部材と干渉しない程度に小さいことを要する。当該突出量は、好ましくは、補強板46の厚さの100%~200%とする。なお、幅方向規制部材はバネ等を使って垂直方向(第1部品と第2部品の接続方向)に移動可能にしてもよい。こうすることで、もし接続時に他の部材と干渉した場合でも垂直方向に逃げ動作を行うことで接続動作を阻害しない。幅方向規制部材86は省略することもできるが、幅方向規制部材を用いて補強板46の幅方向の位置を規制することによって、FPC40を保持した状態でハンド80を高速で動作させたときにも、補強板がずれることがない。
【0044】
先端規制部材89は、吸着ノズル83の近傍に、第2方向の先端側に配置され、第2方向に直線的に移動可能である。これにより、吸着ノズル83に補強板46が吸着された状態で、先端規制部材89をスライダ91に沿って補強板に向けて移動させ、補強板46に先端側から押し付けることにより、補強板を第2方向に位置決めできる。先端規制部材89の先端部90は、吸着ノズルの先端面84からわずかに突出している。先端規制部材の先端部90の吸着ノズル先端面84からの突出量は、幅方向規制部材と同様に、第1部品50を第2部品70の接続時に第2部品その他の部材と干渉しない程度に小さいことを要し、好ましくは、補強板46の厚さの100%~200%とする。なお、幅方向規制部材と同様に先端規制部材も垂直方向に可動できるようにしてもよい。先端規制部材89は省略することもできるが、先端規制部材を用いて補強板46の長手方向の位置を規制することによって、FPC40を保持した状態でハンド80を高速で動作させたときにも、補強板がずれることがない。
【0045】
図1に戻って、ハンド80は、アーム21との連結部に力覚センサ92を備える。力覚センサ92は、第1部品50と第2部品70の接続時に、吸着ノズル83が補強板46を押す力を計測するために、吸着ノズルに平行な方向の力を検知可能とする。力覚センサ92の装着位置は、吸着ノズル83が補強板46を押す力を計測できれば特に限定されず、例えば吸着ノズル83のベース部材81への取付部に装着してもよい。
【0046】
第1カメラ31は、FPC40の先端部を補強板46が写る方向から撮像して第1画像を取得する(図5参照)。第1カメラは、好ましくは、撮像対象の3次元情報を含む3次元画像を取得可能な3次元カメラである。3次元カメラとしては、3次元画像が取得できればその種類は特に限定されないが、好ましくは、ステレオカメラを用いる。第1カメラが取得した第1画像は、演算部30に送信され、演算部が補強板46の位置および向きを算出する。また、第1カメラは、好ましくは、色情報または輝度情報を取得可能なものを用いる。色情報や輝度情報を利用することによって、演算部30が第1画像中でFPC本体41と補強板46を識別することが容易になる。
【0047】
第2カメラ32は、ハンド80に保持された第1部品50の先端面54を撮像して第2画像を取得する(図8参照)。第2カメラ32は、好ましくは2次元カメラを用いる。一般に、同じ価格であれば2次元カメラの方が3次元カメラより解像度の高い画像が得られるので、第1部品の位置をより高精度で求められるからである。第2カメラが取得した第2画像は、演算部30に送信され、演算部が第1部品50の第1方向の位置を算出する。
【0048】
距離センサ33は、ハンド80に保持された第1部品50の先端面54までの距離を計測する(図8参照)。距離センサは、第1部品50の先端面上の1点の位置を求められるものであれば、その形式は特に限定されない。好ましくは、レーザーを利用して距離を計測するものが好ましい。第1部品の先端面54のように微小な領域に対しても、正確にレーザーを照射して、測定することが容易だからである。距離センサによる計測結果は演算部30に送信され、演算部が第1部品50の第2方向の位置を算出する。
【0049】
第2部品撮像用カメラ34は、回路基板60に実装された基板対基板コネクタの第2部品70の接続面71を撮像して、第2部品画像を取得する。第2部品撮像用カメラ34は、好ましくは2次元カメラを用いる。一般に、同じ価格であれば2次元カメラの方が3次元カメラより解像度の高い画像が得られるので、第2部品の位置をより高精度で求められるからである。第2部品撮像用カメラが取得した第2部品画像は、演算部30に送信され、演算部が第2部品70の位置を算出する。
【0050】
第2部品撮像用カメラ34は、使用される基板対基板コネクタの端子ピッチの大きさによっては、省略することができる。第2カメラ32で撮像する第1部品50は、ハンド80が保持する補強板46とは別個の部材として補強板の反対面に実装されているので、製造誤差によって、面方向の位置が補強板とずれている。また、第1部品は、自由端の状態にあるFPC40がハンド80に吸着する瞬間に動くことによって、ハンド80との相対位置の誤差が大きくなりやすい。これに対して、第2部品70は、回路基板60に実装されて所定の位置に供給されるので、第1部品に比べて位置および向きの誤差が小さい。このため、使用される基板対基板コネクタの端子ピッチがある程度大きければ、第2部品画像を利用しなくても、第1部品と第2部品を接続することができる。ただし、回路基板上への第2部品の実装位置、回路基板の供給位置にも誤差を含むので、基板対基板コネクタの端子ピッチが0.4mmより狭い場合は、第2部品撮像用カメラを用いることが好ましい。
【0051】
演算部30はシステム10の全体を制御する。具体的には、各カメラへの撮像指示、距離センサ33への計測指示を行う。また、演算部は、第1カメラ31が取得した第1画像に基づいて補強板46の位置および向きを算出し、第2カメラ32が取得した第2画像および距離センサの計測結果に基づいて第1部品50の位置を算出し、第2部品撮像用カメラ34が取得した第2部品画像に基づいて第2部品70の位置を算出するなどの各種画像処理および演算を行う。そして、これらの算出値に基づいて、ロボット20の動作、ハンド80による把持動作、ハンド80上の幅方向規制部材および先端規制部材の動作などをロボット制御部28に指示する。
【0052】
演算部30の物理的な構成は特に限定されない。演算部30は物理的に1台の装置であってもよいし、担当する処理を分散して、複数台の装置から構成されていてもよい。また、演算部30とロボット制御部28を、物理的に1台の装置で構成してもよい。
【0053】
次に、本実施形態の基板対基板コネクタ接続方法を図4の工程フローに沿って説明する。
【0054】
(S1)第1計測工程
図5を参照して、第1カメラ31で第1部品50が実装されたFPC40の先端部を撮像して第1画像を取得する。第1画像はFPC先端部の3次元情報を含む3次元画像である。第1画像を取得する目的はハンド80が保持する被保持部である補強板46の位置および向きを求めることであるから、第1カメラは、補強板が写る方向から撮像できる位置に予め配置しておく。
【0055】
演算部30は、第1カメラ31から第1画像を受信し、第1画像に基づいて補強板46の3次元座標系における位置および向きを算出する。ここでの補強板の「向き」とは、補強板46の3次元空間内での向きである。例えば、第1カメラがステレオカメラであれば、第1画像は異なる視点から撮像された2枚の画像からなる。演算部は、2枚の画像上で計測したい点の対応点を求め、各画像上の対応点および2枚の画像の視点間の距離から3角測量の原理によって計測点の3次元座標を算出する。第1カメラ31は、位置を固定して設置されているので、演算部30は、例えば世界座標系やロボット座標系での補強板46の位置を算出することができる。
【0056】
第1画像が色情報を含む場合は、FPC本体41と補強板46の色の違いを利用して、第1画像上で補強板を識別することができる。第1カメラ31がステレオカメラである場合は、カラー画像を取得可能なカメラを用いることによって、色情報を含む第1画像を取得できる。ステレオカメラを用いた3次元計測では、2枚の画像上で対応点を探索するマッチング処理が測定誤差の原因となるプロセスであるが、補強板の幅はFPC本体部の幅と略同一とすることが通常であり、特徴となる点が少なく対応点の探索が難しい。色情報を利用して第1画像中で補強板46の領域を識別できれば、その領域の角などを特徴点として、マッチング処理を行うことができる。
【0057】
また、第1画像が輝度情報を含む場合は、FPC本体41と補強板46の光学特性、例えば反射率の違いを利用して第1画像上で補強板を識別することができる。補強板が反射率の高い金属製であれば、強い照明を当ててFPC40の先端部を撮像しておくことで、第1画像中での輝度の違いによって補強板46の領域を識別できる。
【0058】
色情報や輝度情報によって第1画像中で補強板46の領域を識別することが難しい場合は、例えば、FPC40の位置と向きを変えた複数の参照画像やCADデータを用意して、第1画像とのパターンマッチングによって補強板とFPC本体部を識別できる。あるいは、FPC先端部の角や辺を手掛かりにして先端部の輪郭を抽出して、補強板の2つの辺や3つの角等を特定することによって補強板を識別できる。後者の方法の詳細は、本出願人による特開2020-037147号公報、特開2020-041862号公報に開示されている。
【0059】
(S2)保持工程
図6を参照して、演算部30は、算出した補強板46の位置および向きに基づいて、ロボット制御部28に指示して、ハンド80に補強板を保持させる。ハンド80は、補強板46に垂直な方向から接近して、吸着ノズル83で補強板を吸着して保持する。
【0060】
図7を参照して、補強板46が吸着ノズル83に吸着された状態で、一対の幅方向規制部材86、86で補強板46を第1方向の両側から挟み込むことにより、補強板を第1方向において位置決めする。さらに、先端規制部材89を補強板46に先端側から押し付けることにより、補強板を第2方向において位置決めする。なお、幅方向規制部材と先端規制部材を動作させる順番は特に限定されず、先に第2方向を位置決めして、次に第1方向を位置決めしてもよい。
【0061】
(S3)第2計測工程
図8および図9を参照して、演算部30は、ロボット制御部28に指示して、補強板46を保持したハンド80を、所定の位置に所定の姿勢で移動させて、第1部品50の先端面54を第2カメラ32および距離センサに向けさせる。第2カメラ32は第1部品の先端面54を撮像して第2画像を取得する。
【0062】
第2画像は、前述のとおり、3次元画像である必要はなく、むしろ解像度の高い2次元画像であることが好ましい。第2画像の解像度は、1つの画素の大きさが端子ピッチの1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましい。これにより、第1部品の位置を十分に高い精度で計測することが可能となり、第1部品と第2部品の接続に失敗する確率を極めて低く抑えることができる。第2画像の解像度は、第2カメラ32の仕様と、第2画像撮像時の撮像距離によって調節することができる。
【0063】
演算部30は、第2カメラ32から第2画像を受信し、第2画像に基づいて、第1部品の第1方向Wにおける位置を算出する。第1部品の位置は、例えば、第2画像撮像時と同じ距離から第1部品の先端面54を撮像した参照画像を用意しておき、第2画像と参照画像とのパターンマッチング処理を行うことによって決定することができる。第2画像からは、ハンド80に対する第1部品50の第1方向の位置が直接的に求められる。演算部は第2カメラおよびハンド80の位置および向きを知っているので、第2画像に基づいて、世界座標系やロボット座標系での第1部品の第1方向の位置を算出できる。あるいは、パターンマッチング以外の手法として、例えば第2画像に対してエッジ検出を行い、検出した特定のエッジの位置(例えば先端面54の第1方向における端部)で第1方向の位置を判定してもよい。
【0064】
(S4)第3計測工程
距離センサ33から第1部品50の先端面54までの距離(図9Aの第2方向Lにおける距離)を計測する。演算部30は距離センサおよびハンド80の位置および向きを知っているので、距離センサの計測結果に基づいて、ハンドに対する第1部品の第2方向Lにおける位置や、世界座標系やロボット座標系での第1部品の第2方向における位置を算出することができる。
【0065】
第2計測工程(S3)と第3計測工程(S4)の結果から、第1部品50の位置が決定できる。なお、第1部品の向きは補強板46の向きとほぼ一致するため、第1計測工程以降は既知とみなせる。
【0066】
(S5)第2部品計測工程
図10を参照して、第2部品撮像用カメラ34は回路基板60上の基板対基板コネクタの第2部品70の接続面71を上方から撮像して、第2部品画像を取得する。第2画像撮像時にハンド80またはFPC40が第2部品70を第2部品撮像用カメラ34から隠す位置になければ、第2画像の撮像と第2部品画像の撮像は同時に実施することができる。第2部品画像も第2画像と同様に、3次元画像である必要はなく、むしろ解像度の高い2次元画像であることが好ましい。第2部品画像の好ましい解像度も第2画像と同様である。
【0067】
演算部30は、第2部品撮像用カメラ34から第2部品画像を受信し、第2部品画像に基づいて、第2部品70の位置および向きを算出する。ここでの第2部品の「向き」とは、回路基板60に平行な面内での第2部品の向きである。第2部品の位置は、第2部品画像撮像時と同じ距離から第2部品の接続面71を撮像した参照画像を用意しておき、第2部品画像と参照画像とのパターンマッチング処理を行うことによって決定することができる。演算部は、第2部品撮像用カメラの位置および向きを知っているので、第2部品画像に基づいて、世界座標系やロボット座標系での第2部品の位置および向きを算出できる。
【0068】
(S6)接続工程
図11を参照して、演算部30は、第2計測工程(S3)および第3計測工程(S4)で算出した第1部品の位置、ならびに第2部品計測工程(S5)で算出した第2部品の位置に基づいて、ロボット制御部28に指示して、第1部品50を第2部品70に挿入させる。具体的には、ハンド80を移動させて第1部品の接続面51と第2部品の接続面71の位置を合わせて第1部品を第2部品に重ねた後、ハンド80で第1部品50を回路基板60と垂直に下向きに押して、第1部品50の突条52を第2部品70の窪み73に挿入する。
【0069】
第1部品50を第2部品70に挿入する際に、好ましくは、力覚センサ92によって、第1部品と第2部品との正常嵌合時に発生するクリック感の有無を確認する。力覚センサ92は、ハンド80が第1部品を第2部品に押し込む際に、ハンドが補強板46を吸着ノズル83の長さ方向に押す力を、その反力によって検知する。クリック感とは、スイッチを押したような手応えのことである。クリック感とは、より具体的には、ハンドが第1部品を第2部品に押し込むにつれて抵抗が大きくなり、第1部品があるところまで進むと一旦抵抗がなくなることである。基板対基板コネクタは、通常、正常嵌合時にクリック感が発生するように設計されている。
【0070】
図12に、実験で観測されたクリック感を示す。ハンド80を一定速度で降下させて、第1部品50を第2部品70に挿入した。第1部品と第2部品の面方向のずれが十分に小さく、両者が正常に嵌合した場合は、力覚センサの検出値(以下「力覚値」という)が約10Nまで増加したところで、一旦急激に下がり、その後ハンド80の進行につれて再び力覚値が増加した。この力覚値が一旦急激に下がることがクリック感を表している。第1部品と第2部品が正常に嵌合していない場合は(図12中に「異常」と表示した線)、力覚値は約15Nまで単調に増加した。
【0071】
力覚センサ92によってクリック感の有無を確認することにより、何らかの原因によって第1部品50と第2部品70が面方向にずれた状態で両者を接続しようとしても、接続作業を中止して、第1部品または第2部品の破損を防止できる。
【0072】
力覚センサ92がクリック感を検出し、第1部品50と第2部品70が正常に嵌合していることが確認できたら、第1部品をさらに押し込んで、接続を完了させる。基板対基板コネクタでは、接続時に押すべき力の大きさが仕様で定められている。例えば、図8の実験に用いた基板対基板コネクタでは、第1部品と第2部品を接続するのに50Nの力で押すことが求められている。図12では、第1部品と第2部品が正常に嵌合していなくても破損しない15Nで実験を終了したが、実際の接続作業では、約15Nまででクリック感の有無を確認して、クリック感が確認できたら、所定の力(50N)に達するまで、さらに第1部品を押すことになる。
【0073】
以上の各工程によって、基板対基板コネクタの接続が完了する。
【0074】
本実施形態の基板対基板コネクタの接続方法の効果を改めて説明する。
【0075】
製造誤差による第1部品50と補強板46の位置ずれの公差は0.1mm程度である。また、自由端の状態にあるFPC40は吸着ノズル83に吸着する瞬間にわずかに動き、そのことによる保持位置の設計位置からのずれは最大で0.2mm程度と考えられる。このうち、吸着する瞬間に生ずるずれは、幅方向規制部材および先端規制部材(以下両者を合わせて「規制部材」という)によって吸着後に補強板の位置を修正することで、ハンド80や規制部材の加工精度を考慮しても、かなりの部分を削減することができる。一方、第2部品70に関して、回路基板60への第2部品実装位置の誤差は最大0.1mm程度であり、接続作業時の回路基板の配置位置の誤差は、最大0.1mm程度である。
【0076】
このことから、第1部品50の位置を計測することなく第1部品50を第2部品70に接続しようとすると、両部品の接続面51、71のずれは、規制部材を用いなければ最大で0.5mm程度、規制部材を用いても最大で0.3mm程度となり、端子ピッチが0.6mm以下である場合には、接続に失敗する確率が高まる。これに対して、本実施形態の基板対基板コネクタの接続方法によれば、第2計測工程および第3計測工程によって第1部品の位置を計測して接続するので、端子ピッチが0.6mm以下であっても、接続に失敗する確率は極めて小さい。
【0077】
さらに、ハンド80に対する第1部品50の位置が正確に計測された場合でも、第2部品70の位置を計測することなく第1部品50と第2部品70を接続しようとすると、両部品の接続面51、71のずれは最大で0.2mm程度となり、端子ピッチが0.4mm以下になると、やはり接続に失敗する確率が高まる。これに対して、本実施形態の基板対基板コネクタの接続方法によれば、第2計測工程および第3計測工程に加えて、第2部品計測工程によって第2部品の位置を計測して接続するので、端子ピッチが0.4mm以下であっても、接続に失敗する確率は極めて小さくなる。
【0078】
次にロボットハンドの一変形例を説明する。
【0079】
図13を参照して、本変形例のロボットハンドは、複数の保持部を有する点と、照明部を備える点で図3に示したハンド80と異なる。ハンド80aは、ベース部材81と2つの保持部82、82aを有し、両保持部の間に照明部93を備える。ハンド80aは、両保持部の中間、すなわち照明部の裏側で、アーム21に連結される。
【0080】
一方の保持部82は、図3に示した保持部と同じである。他方の保持部82aは、吸着ノズル83aの先端面84aは略正方形状で、1つの吸着穴85aを有する。前述のとおり、吸着ノズルが備える吸着穴の個数や配置は特に限定されない。図13に示すハンド80aでは、両保持部82、82aがそれぞれ異なるサイズのFPCを保持できるように設計されている。これにより、1つの電子機器等の組み立て工程において、異なるサイズの基板対基板コネクタの接続を、ハンド80aを少し移動させるだけで連続して行うことができる。ハンドが有する保持部の数は、好ましくは2以下とする。ハンドが有する保持部の数が多すぎると、接続等の作業時に他の保持部が周囲と干渉しやすくなるからである。
【0081】
照明部93は、保持部82、82aの間に設けられて、保持部の前方を照らす。これにより、第1画像を撮像する際に補強板46を照らすことや、第2部品画像を撮像する際に回路基板60や第2部品70を照らすことができる。照明部としては、パネル型の照明を好適に用いることができる。ハンドが照明部を備えない場合は、特に、第2部品計測工程で第2部品を照らすために、リング照明やフラットドーム照明を第2部品撮像用カメラ34と第2部品の間に差し入れることになる。ハンドが備える照明部が撮像対象を照らすことによって、リング照明等の差し入れ・抜き出しにかかる時間を省略して、作業時間を短縮することができる。
【0082】
照明部93は、保持部がFPCを保持したときに、撮像対象がFPC本体41に遮られない位置に設ける。なお、1つの保持部を有するハンド、例えば図3のハンド80に照明部93を設けてもよい。
【0083】
次に、本発明の基板対基板コネクタの接続方法の第2実施形態を図14を参照して説明する。以下に第2計測工程および第3計測工程について説明する。その他の点は第1実施形態と同様である。
【0084】
第2計測工程において、第1実施形態では、第1部品50から見て第2方向Lに位置する第2カメラ32を用いて、第1部品の先端面54を撮像した第2画像に基づいて第1部品の第1方向Wにおける位置を計測した。これに対して、本実施形態では、第1部品50から見て第1方向Wに位置する距離センサ37を用いて、第1部品の側端面55までの距離を計測することにより、第1部品の第1方向Wの位置を計測する。
【0085】
第3計測工程において、第1実施形態では、第1部品50から見て第2方向Lに位置する距離センサ33を用いて、第1部品の先端面54までの距離を計測することにより、第1部品の第2方向Lにおける位置を計測した。これに対して、本実施形態では、第1部品50から見て第1方向Wに位置する第3カメラ36を用いて、第1部品の側端面55を撮像した第3画像に基づいて第1部品の第2方向Lの位置を計測する。
【0086】
次に、本発明の基板対基板コネクタの接続方法の第3実施形態を図15を参照して説明する。以下に第2計測工程および第3計測工程について説明する。その他の点は第1および第2実施形態と同様である。
【0087】
第2計測工程は、第1実施形態と同様に、第1部品50から見て第2方向Lに位置する第2カメラ32を用いて、第1部品の先端面54を撮像した第2画像に基づいて第1部品の第1方向Wにおける位置を計測する。第3計測工程は、第2実施形態と同様に、第1部品50から見て第1方向Wに位置する第3カメラ36を用いて、第1部品の側端面55を撮像した第3画像に基づいて第1部品の第2方向Lの位置を計測する。
【0088】
次に、本発明の基板対基板コネクタの接続方法の第4実施形態を図16を参照して説明する。以下に第2計測工程および第3計測工程について説明する。その他の点は第1ないし第3実施形態と同様である。
【0089】
第2計測工程は、第2実施形態と同様に、第1部品50から見て第1方向Wに位置する第1距離センサ38を用いて、第1部品の側端面55までの距離を計測することにより、第1部品の第1方向Wの位置を計測する。第3計測工程は、第1実施形態と同様に、第1部品50から見て第2方向Lに位置する第2距離センサ39を用いて、第1部品の先端面54までの距離を計測することにより、第1部品の第2方向Lにおける位置を計測した。
【0090】
本発明は、上記実施形態には限定されず、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0091】
例えば、上記各実施形態はワークがFPC40であるとして説明したが、ワークはFFCであってもよい。FPCとFFCは製造方法が異なるものの、基板対基板コネクタの第1部品が実装される部分に関しては、類似の構造を有する。したがって、本発明の基板対基板コネクタの接続方法は、FPCまたはFFCである柔軟物に対して、同様に適用することができる。さらに、本発明は、先端部の片面に基板対基板コネクタの第1部品が実装された柔軟物であれば、FPCおよびFFC以外の柔軟物に対しても適用することができる。
【0092】
また、上記各実施形態ではFPC40に貼付された補強板46を被保持部として作業を実施したが、本発明は補強板が貼付されていないFPCにも適用することができる。通常はFPCまたはFFCの第1部品と反対の面に補強板が貼付されているが、何らかの理由によって補強板が貼付されていない場合であっても、第1部品が実装された部分は、第1部品の剛性によって変形が抑えられ、実質的に補強板が形成された状態と同じであるので、FPCまたはFFCの第1部品の背面にあたる部分を被保持部として基板対基板コネクタの接続作業を行うことができる。
【0093】
また、上記各実施形態では、ハンド80はFPC40を吸着によって保持したが、保持方法はこれには限られない。例えば、ロボットハンドはFPCの側端部(エッジ)を挟持して保持してもよい。その場合は、第1計測工程において、被保持部であるFPCのエッジの位置および向きを計測する。
【0094】
また、上記各実施形態では、第2部品70が回路基板60に実装されている例を示したが、これには限られず、第2部品は例えば他の柔軟物に実装されていてもよい。
【0095】
また、上記各実施形態では、算出された第1部品50の位置に基づいて、第1部品が実装されたFPC40を保持したハンド80を動作させて、対となる第2部品70と接続したが、可能であれば、第2部品を移動させることによって第1部品と第2部品を接続してもよい。例えば、第2部品が実装された回路基板や他の柔軟物を別のロボットハンド等で保持して、ハンド80に保持された第1部品に近付けて接続してもよい。または、第2部品が実装された回路基板を、コネクタの接続方向と垂直な方向に移動可能なXYステージ等で位置を微調しながら接続してもよい。
【0096】
また、各カメラや距離センサの設置位置は特に限定されず、固定式でも可動式でも良い。例えば、第2カメラ32と距離センサ33をハンド80に据え付けてもよいし、ハンド80とは別のロボットハンドに据え付けてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10 基板対基板コネクタ接続システム
20 ロボット
21 アーム
22 リンク
23 関節
26 減圧源
28 ロボット制御部
30 演算部
31 第1カメラ
32 第2カメラ
33 距離センサ
34 第2部品撮像用カメラ
36 第3カメラ
37 距離センサ
38 第1距離センサ
39 第2距離センサ
40 FPC(柔軟物)
41 FPC本体
42 樹脂フィルム
43 銅配線
44 樹脂フィルム
45 電極部
46 補強板(被保持部)
50 基板対基板コネクタの第1部品
51 接続面
52 突条
53 端子
54 先端面
55 側端面
60 回路基板
61 電子機器の筐体
70 基板対基板コネクタの第2部品
71 接続面
72 突条
73 窪み
74 端子
80、80a ロボットハンド
81 ベース部材
82、82a 保持部
83、83a 吸着ノズル
84、84a 先端面
85、85a 吸着穴
86 幅方向規制部材
87 幅方向規制部材先端部
88 スライダ
89 先端規制部材
90 先端規制部材先端部
91 スライダ
92 力覚センサ
93 照明部
W 第1方向
L 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
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図16