(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040600
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】衣類ハンガー
(51)【国際特許分類】
A47F 5/00 20060101AFI20240318BHJP
G07G 1/01 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A47F5/00 E
G07G1/01 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145045
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】596116846
【氏名又は名称】濱田プレス工藝株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】濱田 恵
(72)【発明者】
【氏名】田島 祐治
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真治
【テーマコード(参考)】
3B118
3E142
【Fターム(参考)】
3B118FA01
3B118FA11
3E142GA20
(57)【要約】
【課題】 電子的に価格等を表示することができるディスプレイが破損したり、離脱したりするのを防止できる、衣類ハンガーを提供する。
【解決手段】 衣類ハンガー(10)は本体(12)を含み、この本体(12)は、基幹部分から肩先へ延びる肩を有し、衣類はその肩に掛けられる。フック(16)が本体(12)に取り付けられ、ハンガーラック(32)の横杆(38)に掛けられる湾曲部(20)を有する。ディスプレイ(14)は、本体(12)の基幹部分に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基幹部分から肩先へ延びる肩を有し、前記肩に衣類が掛けられる衣類ハンガーであって、
前記衣類ハンガーに掛けられた衣類に関する価格を含む情報を表示するディスプレイを前記基幹部分に設けたことを特徴とする、衣類ハンガー。
【請求項2】
前記ディスプレイは、衣類ハンガーに衣類が掛けられた際にもその表示面が露出していることを特徴とした、請求項1記載の衣類ハンガー。
【請求項3】
前記基幹部分から上方に延設されたフックをさらに備え、
前記フックには前記ディスプレイを駆動する電力を受電するための受電部が設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の衣類ハンガー。
【請求項4】
前記基幹部分に内蔵され、前記受電部が受電した電力によって駆動される前記ディスプレイの表示を制御する電子回路をさらに備える、請求項3記載の衣類ハンガー。
【請求項5】
衣類ハンガーと前記衣類ハンガーを掛けるハンガーラックとを備える、ハンガーシステムであって、
前記衣類ハンガーは、
基幹部分とその基幹部分から延びた衣服を掛ける肩、
表示面が前記基幹部分に設けられた、その衣類ハンガーに掛けられた衣類に関する価格を含む情報を表示するディスプレイ、
前記基幹部分から上方に延設されたフック、
前記フックに設けられ、前記ディスプレイを駆動する電力を受電する受電部を備え、
前記ハンガーラックは、
前記フックを掛ける横杆、および
前記横杆に設けられて前記フックの受電部に電力を供給する給電部を備える、衣類ハンガーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衣類ハンガーに関し、特にたとえば、価格を電子的に表示できるディスプレイを本体に設けた、新規な衣類ハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハンガーに、アイシーチップなどの情報回路を組み込み、また、表面にはキューアールコードやバーコードあるいは動画や広告を表示可能とした表示板を、一体または着脱自在にとりつけた、情報機能付き衣類ハンガーが開示されている。具体的には、特許文献1では、表示板として支柱(6)に取り付けたタグ形式のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の先行技術では、衣類ハンガーと表示板とが別体構成であるため、表示板の表示状態が見にくかったり、取り扱い方によっては、破損したり、ハンガーから離脱したりしてしまう可能性がある。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、衣類ハンガーを提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、電子的に価格等を表示することができるディスプレイを見やすくして表示内容を確実に確認できるようにするとともに、ディスプレイが破損したり、離脱したりするのを防止できる、衣類ハンガーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、この発明の理解を助けるために記述する実施形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の実施例は、基幹部分から肩先へ延びる肩を有し、肩に衣類が掛けられる衣類ハンガーであって、衣類ハンガーに掛けられた衣類に関する価格を含む情報を表示するディスプレイを基幹部分に設けたことを特徴とする、衣類ハンガーである。
【0009】
第1の実施例では、衣類ハンガー(10:実施例において対応する部分を例示する参照符号。以下同様。)は、基幹部分(13)から肩先へ延びる肩を有し、肩に衣類(17)が掛けられる。好ましくは液晶または有機ELのような薄型ディスプレイであるディスプレイ(14)が基幹部分に設けられる。ディスプレイは、衣類ハンガーに掛けられた衣類に関する価格を含む情報を表示する。
【0010】
第1の実施例によれば、電子的に価格等を表示することができるディスプレイを基幹部分に設けたので、ディスプレイを見やすくして表示内容を確実に確認できるようにするとともに、ディスプレイが破損したり、離脱したりするのを防止できる。
【0011】
第2の実施例は、第1の例に従属する衣類ハンガーであって、ディスプレイは、衣類ハンガーに衣類が掛けられた際にもその表示面が露出していることを特徴とする。
【0012】
第2の実施例によれば、ハンガーに衣類を掛けた状態でもディスプレイに表示されている価格等の情報を確実に確認することができる。
【0013】
第3の実施例は、第1の実施例または第2の実施例に従属する衣類ハンガーであって、基幹部分から上方に延設されたフックをさらに備え、フックにはディスプレイを駆動する電力を受電するための受電部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
第3の実施例では、フック(16)は、基幹部分(13)から上方に設けられ、フックには受電部(28a、28b、52、56)が設けられ、ディスプレイ(14)に電力を供給する。
【0015】
第3の実施例によれば、ディスプレイに必要な電力をフックを通して受電できるので、ディスプレイ当への安定的な給電ができる。
【0016】
第4の実施例は、第3の実施例に従属する衣類ハンガーであって、基幹部分に内蔵され、受電部が受電した電力によって駆動されるディスプレイの表示を制御する電子回路をさらに備える。
【0017】
第4の実施例では、電子回路(15)が内蔵され、受電部(28a、28b、52、56)から供給される電力を受けて、ディスプレイ(14)に画像ないし映像を表示させる。
【0018】
第4の実施例によれば、電子回路を内蔵したので、安定した動作が期待できる。
【0019】
第5の実施例は、衣類ハンガーと衣類ハンガーを掛けるハンガーラックとを備える、ハンガーシステムであって、衣類ハンガーは、基幹部分とその基幹部分から延びた衣服を掛ける肩、表示面が基幹部分に設けられた、その衣類ハンガーに掛けられた衣類に関する価格を含む情報を表示するディスプレイ、基幹部分から上方に延設されたフック、フックに設けられ、ディスプレイを駆動する電力を受電する受電部を備え、ハンガーラックは、フックを掛ける横杆、および横杆に設けられてフックの受電部に電力を供給する給電部を備える、衣類ハンガーシステムである。
【0020】
第5の実施例では、ハンガーシステムは、衣類ハンガー(10)およびハンガーラック(32)を備え、衣類ハンガーは、基幹部分(13)から肩先へ延びる肩を有し、肩に衣類(17)が掛けられる。好ましくは液晶または有機ELのような薄型ディスプレイであるディスプレイ(14)が基幹部分に設けられる。ディスプレイは、衣類ハンガーに掛けられた衣類に関する価格を含む情報を表示する。フック(16)は、基幹部分(13)から上方に設けられ、フックには受電部(28a、28b、52、56)が設けられ、ディスプレイ(14)に電力を供給する。ハンガーラックは、衣類ハンガー(10)のフック(16)が掛けられる横杆(38)を備える。その横杆には、フックの受電部(28a、28b、52、56)に接続されてその受電部に電力を供給する給電部(44a、44b)が設けられる。
【0021】
第5の実施例によれば、ハンガーラックにハンガーを吊るすという自然な状態でハンガーのディスプレイへの電力が供給されるので、維持管理が容易であ
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、値札や棚札などとして機能するディスプレイを基幹部分前面(顔と呼ばれることもある部分)に設けたので、ハンガーに衣類を掛けた状態でもディスプレイを確実に確認することができる。さらに、ディスプレイを基幹部分に設けたので、ディスプレイが破損したり、離脱したりするのを防止できる。
【0023】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1はこの発明の一実施例の衣類ハンガーを示す図解図であり、
図1(A)は前方から見た図であり、
図1(B)は後方から見た図である。
【
図2】
図2は
図1実施例のハンガーに衣類を掛けた状態を示す図解図である。
【
図3】
図3は
図1実施例のハンガーのフックの一例を取り出して示す図解図である。
【
図4】
図4は
図3に示すフックを本体に取り付けた状態を示す図解図である。
【
図5】
図5は
図1実施例の本体の内部構造および電気的接続状態を概略的に示す図解図である。
【
図6】
図6は
図1実施例のハンガーを掛けるハンガーラックの一例を示図解図である。
【
図7】
図7は実施例の電子回路の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図3は
図1実施例のハンガーのフックの他の例を取り出して示す図解図である。
【
図9】
図9は
図8実施例のフックを用いたハンガーを掛けるハンガーラックの一例を示図解図である。
【
図10】
図10は
図8のフックを
図9のハンガーラックに掛けたときの電気的接続状態を概略的に示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照して、この発明の一実施例の衣類ハンガー(単に、「ハンガー」ということがある)10は本体12を含む。本体12は、たとえばプラスチックで形成され、上方および後方へそれぞれ緩やかに湾曲した周知の形状を有し、基幹部分13から肩先へ延びる肩を有する周知の形状を有する本体12を含む。この本体12は、この実施例では、2つ割りのプラスチック成形品からなる前部分12aおよび後部分12bを有し、前部分12aおよび後部分12bは、たとえば
図1(B)で示す複数のビスで一体化されている。本体12は、中空状に形成される。これは、後述するように、本体12内に電子回路15などを収容するためである。
【0026】
ただし、本体12の前部分12aおよび後部分12bは、ビスではなく凹凸の嵌め合い構造として、接着するなどの方法で一体化するようにしてもよい。つまり、2つ割りの前部分12aおよび後部分12bを一体化する方法は任意に設計することができる。
【0027】
この本体12には、表示面が前面中央またはほぼ中央の「顔」とも呼ばれる基幹部分13に位置するように、たとえば液晶または有機ELのような薄型のディスプレイ14が設けられる。このディスプレイ14は、電子値札あるいは電子棚札などとして機能し、売り場において、たとえばバーコードやQRコード(商品名)を用いて、ハンガー10に掛けられた衣類の値段等を電子的に表示する。
【0028】
なお、ディスプレイ14は、基本的には、本体12の基幹部分13に固定的に設けられるのである。ただし、故障などによる交換等の必要から、ディスプレイ14は、取り外し可能とされる。
【0029】
なお、
図1では点線で示すディスプレイ14を制御する電子回路15(
図5)は、基幹部分13の内部に設けられる。そのため、基幹部分13の前部分および/または後部分には、図示しないが、その電子回路15を内部に固定するための固定部または収容部が形成される。
【0030】
ハンガー10の本体12は、
図1に示すような前部分12aと後部分12bとを合体させる構成に限らず、樹脂あるいは重厚性を持たすために樹木などで一体的な構成とし、基幹部分13をくり抜いて収納部を設け、そこに電子回路15などを収納するようにしてもよい。
【0031】
本体12の上端面(頭面)にはフック16が取り付けられ、本体12の底面にはメディアポート18が設けられる。
【0032】
フック16は、
図6に示すハンガーラック(ないしハンガーポール)32へハンガー12を掛けるために使用されるが、後述するように、そのハンガーラックないしハンガーポール32から供給を受ける電力(たとえば、直流5ボルト)を上述のディスプレイ14および電子回路15に供給する受電手段としても機能する。
【0033】
メディアポート18は、記憶媒体(メディア)、たとえばSDカードを利用可能にする。メディア50(
図7)は、ディスプレイ14の電子回路15へ、たとえば価格のデータや、商品説明や販売促進のためのデータ(静止画または動画)を供給する。
【0034】
この実施例のハンガー10によれば、
図2に示すように本体12に衣類17を掛けても、ディスプレイ14の画面は基幹部分13に設けられているため、その衣類17によって遮蔽されることなく、人は常に、ディスプレイ14に表示される価格などを目視確認することができる。
【0035】
図3はハンガー12のフック16を取り出して詳細に示す斜視図である。ここで、主として
図3‐
図5を参照してフック16と、そのフック16を本体12に取り付ける構造を説明する。
【0036】
この実施例では、フック16は、本体12と同様に、2つ割りのプラスチック成形品である右部分16aおよび左部分16bをたとえば接着によって一体化して、1つの中空状のフックとして形成される。これは、このフック16の中を給電線30aおよび30bを通すためである。
【0037】
フック16は適宜の曲率を有する円弧状の湾曲管部20と、その湾曲管部20の一端から延びる直管部22を有する。このフック16は、周知のように、その湾曲管部20でハンガーラック32(
図6)にハンガー10を掛ける役目をする。直管部22の下端部には取付け具24が装着される。
【0038】
取付け具24は、プラスチックの薄板からなる短筒状のプラスチック成形品であり、たとえば押出し成形した短筒の後加工によって形成される。取付け具24は、その上端において本体12の上端面から露出する径方向に膨出加工された上リング部24aおよび下端において本体12の内部に収容される径方向に膨出加工された下リング部24bを含む。上リング部24aと下リング部24bとの間には凹部24cが形成される。
【0039】
図5からよくわかるように、凹部24cがたとえば直管部22の外周面に密に嵌合する内周面を有する。
図4および
図5に示すように、本体12の右部分12aおよび左部分12bのそれぞれの上端の板状部12aaおよび12baがこの凹部24cに入り込んで、取付け具24を両側から挟むことによって、フック16が本体12から脱落するのが防止される。ただし、凹部24cの内周面と直管部22の外周面とを接着することが考えられてもよい。
【0040】
さらに、下端のリング24bの外周面には回転止め突起24dが設けられる。この回転止め突起24dは、このフック16を上述のようにして取付け具24によって本体12に取り付けたとき、たとえば
図4および
図5に示す本体12の前部分12aの内側に形成されている突起26に当たることによって、フック16が本体12に対して自由に回転するのを防止する。このように、フック16の回転を止めるのは、フック16に設けた受電端子28aおよび28bの位置を固定するためである。
【0041】
ただし、回転止めの構造はここで説明した構造以外の構造であってもよい。
【0042】
また、実施例において取付け具24は、プラスチックの薄板で形成したが、これと同じような寸法形状を有する、中実のプラスチックの成形品であってもよい。
【0043】
受電部として機能する受電端子28aおよび28bは、
図3‐
図5に示すように、フック16の湾曲管部20の下側外周面において露出するように、フック16の右部分16aおよび左部分16bによって固定的に保持される。そして、受電端子28aおよび28bには、フック16の内部において、受電線30aおよび30bがそれぞれ個別的に接続される。受電線30aおよび30bはフック16の直管部22の下端から引き出されて、ディスプレイ14のための電子回路15に接続される。したがって、電子回路15(およびディスプレイ14)にはこの受電線30aおよび30bから給電される。
【0044】
図6にはこのようなハンガー10に好適するハンガーラック32を示す。ハンガーラック32は、ベース34、ベース34から立ち上がる両端の縦杆36および縦杆36の上端に差し渡される横杆38を有する。横杆38の上端には、横杆38の長手方向に間隔を隔てて、複数の切込み40が形成される。
【0045】
なお、ハンガーラック32は全体としてプラスチック成形品で構成されてもよいが、安定性を確保するために、好ましくは、少なくともベース34は金属で形成される。
【0046】
また、縦杆36および横杆38は中実または中空に形成されるが、電源線42aおよび42bが、縦杆36の内部または外部を通って、横杆38まで引き込まれる。横杆38は絶縁性素材で構成されこの実施例では断面矩形であり、
図5に示すように、切込み40の位置において、他の部分より細くされている。そして、その切込み40の位置において、上端面の前後方向(奥行方向)両端の角には、給電部として機能する給電端子44aおよび44bが露出するように、形成されている。
【0047】
フック16をこのハンガーラック32の横杆38の切込み40に掛けることによって、ハンガー10をハンガーラック32に掛ける。このとき、フック16の受電端子28aおよび28bが給電端子44aおよび44bにそれぞれ接触するので、給電線42aおよび42bによって供給される、たとえば直流5ボルトの電力は、受電端子28aおよび28bを経て、受電線30aおよび30bから電子回路15に供給される。つまり、電子回路15すなわちディスプレイ14は、この実施例では、ハンガーラック32からフック16へ供給される電力によって動作する。この実施例では、電子回路15を本体12内に設けたので、ディスプレイ14を含めて、安定した動作が期待できる。
【0048】
基本的には、給電線42aおよび42bからは、常時給電されるが、ディスプレイ14によって何か表示する必要があるときだけ給電するようにしてもよい。
【0049】
このように、ハンガーラック32にハンガー10を吊るすという自然な状態でハンガー10のディスプレイ14への電力が供給されるので、ハンガー10およびディスプレイ14の維持管理、特に電気的な面でのメンテナンスが容易である。
【0050】
なお、
図6に示すようなハンガーラック32の切込み40において横杆38にフック16を掛ける場合は特に、あるいは後述の
図9に示すハンガーラック32のように位置規制のないハンガーラック32にフック16を掛ける場合においても、回転止め突起24dと突起26とによる回転止めの構造は、フック16が本体12に対して回転するのを完全に防止するのではなく、ハンガー10による衣類の展示方向の自由度を増すために、ある程度の自由度、たとえば90°程度の回転を許容するものであってよい。
【0051】
電子回路15の一例が
図7に示される。この実施例では、受電線30aが直流の正極で受電線30bが負極に接続される。正極と負極との間に、電池部46およびマイコン48が接続される。電池部46は、いずれも詳細は図示しないが、適宜の電池、たとえばリチウムイオン電池46aを含むとともに、その電池46aへの充電(や放電)を制御する充電制御回路46bを含む。つまり、充電制御回路46bは、電圧と46aが満充電に達したら充電経路を遮断するなどの制御を実行する。
【0052】
図7の実施例では、受電線30aおよび30bと電子回路15との間に、ダイオードD1、D2、D3およびD4からなる両波整流回路30cを挿入する。このような両波整流回路30cを挿入することによって、ハンガー10をハンガーラック32の横杆38に掛けるとき、正(+)負(-)の方向性を考慮する必要がなくなる。
【0053】
受電線30aおよび30bを直接電子回路15に接続して、受電線30aを(+)に設定し、受電線30bを(-)に設定した場合、電子回路15に正しく給電するためには、フック16の受電端子28aを給電端子44aに接続させ、受電端子28bを給電端子44bに接続させる必要がある。つまり、フック16を横杆38に掛けるとき、正負の極性を確認する必要がある。
【0054】
これに対して、両波整流回路30cを介在させた場合には、電線30aを(+)に設定し、受電線30bを(-)に設定した場合、受電線30aは、ダイオードD1を通して電子回路15の(+)側に接続され、受電線30bは、ダイオードD2を通して電子回路15の(-)側に接続され、電子回路15に正しく給電することができる。
【0055】
また、電線30aを(-)に設定し、受電線30bを(+)に設定した場合、受電線30aは、ダイオードD3を通して電子回路15の(-)側に接続され、受電線30bは、ダイオードD4を通して電子回路15の(+)側に接続され、電子回路15に正しく給電することができる。
【0056】
つまり、両波整流器30cを介在させることによってハンガー10をラック32に掛ける際に、(+、-)の方向性を考える必要がなくなるので、使い勝手がよい。
【0057】
マイコン48は、たとえば汎用のマイコンであり、情報処理装置として機能する。マイコン48は、たとえばメディアポート18(
図1)へ装着されたメディア50からケーブル49を介して伝送されるデータ(表示データ)に従って、ディスプレイ14へ、ケーブル51を介してデータ送り、たとえば
図2に示すようにこのハンガー10に掛けられた衣類の価格の画像や、それに関連する商品説明やその他の販売促進のため静止画または動画を表示させる。ただし、情報処理装置としては、上述のマイコン48のほか、専用のICチップなどが利用可能である。
【0058】
なお、電池46aは、受電がない状態で1日(24時間)程度、上述のようにしてマイコン48がディスプレイ14に画像ないし映像を表示できる容量があればよい。
【0059】
この実施例によれば、ハンガーラック32の横杆38の切込み40の位置でのみ、給電端子44aおよび44bが露出するので、換言すれば、切込み40以外の場所では給電端子44aおよび44bが露出することがないので、店員などのユーザが不用意に給電端子44aおよび44bに触ることがなく、安全性が高い。
【0060】
また、フック16が切込み40の中に幾分沈むので、フック16が切込み40の中に安定的に保持されるとともに、フック16に接触したりして外力が加えられる可能性が減り、ハンガーラック32からのハンガー10の離脱を効果的に抑制することができる。
【0061】
さらに、この実施例の特徴の1つは、ハンガーラック32にハンガー10を吊るすだけでディスプレイ14に給電できる給電方式にある。先に挙げた特許文献1には、光充電、電池、無線充電などの記載はあるものの、その具体的な記載はなく、さらには、現実問題として、光充電、無線充電はパワー不足で現実には使用できず、また給電なしに動作させるように電池をハンガーに組み込むようにすると、電池のサイズ(容量)が大きくなってしまう。電池を小さくすると、頻繁に交換しなければならず、交換の頻度を考えるとこれも実用的とはいえない。
【0062】
これに対して、この発明の実施例では、ハンガーラック32からフック16を通して電子回路15に必要な電力を供給することができるので、電力不足の心配はなく、そのため、電池46aは必要最小のものでよい。
【0063】
図8は第2の実施例のフック16を取り出して示す図解図である。この実施例では、フック16は、全体として、導電性母材、たとえばアルミニウムのような金属からなる中空の金属管52によって形成され、先の実施例のフック16と同じように、全体として湾曲管部20および直管部22として形成される。この金属管52は導電部として機能する。
【0064】
そして、湾曲管部20の先端側のおよそ半分52aを残して、金属管52の外周面に直管部22の端部まで連続する絶縁材料(たとえばプラスチック)からなる絶縁膜54が形成される。その絶縁膜54の先端を54aで示すが、その先端54aから一定距離後退した位置に先端56aが位置するように、その絶縁膜54のさらに外側に、導電材料からなる導電被覆56を形成する。この導電被覆56は、たとえば導電プラスチックまたは金属からなるが、絶縁膜54と同じように直管部22の端部まで連続して形成する。
【0065】
このようにして、湾曲管部20の先端側から順に、金属管52からなる導電部、絶縁膜54からなる絶縁部および導電膜56からなる導電部が形成される。つまり、金属管52からなる導電部と導電膜56からなる導電部が絶縁膜54からなる絶縁部で絶縁されている。この絶縁部を挟む2つの導電部が先の実施例の受電端子28aおよび28bと同様の受電部として機能する。
【0066】
そして、接続部56bにおいて、たとえばスポット溶接のような適宜の方法で、受電線30aが導電膜56に接続される。さらに、接続部52bにおいて、たとえばスポット溶接のような適宜の方法で、受電線30bが金属管52に接続される。つまり、絶縁膜54で絶縁された2つの導電部に受電線30aおよび30bが接続される。
【0067】
図9にはこのようなフック16を有するハンガー10に好適するハンガーラック32を示す。ハンガーラック32は、先の実施例のものと同じように、ベース34、ベース34から立ち上がる両端の縦杆36および縦杆36の上端に差し渡される横杆38を有する。
【0068】
また、縦杆36および横杆38は中実または中空に形成されるが、電源線42aおよび42bが、縦杆36の内部または外部を通って、横杆38まで引き込まれる。横杆38はこの実施例では断面矩形であり、
図9および
図10に示すように、その前後方向(奥行方向)両端角に、長手方向に延びる給電端子44aおよび44bが露出して形成される。
【0069】
このようなハンガーラック32の横杆38に、
図8に示すフック16を掛けると、
図10の状態となる。金属管52からなる導電部が給電端子44aに接触し、導電膜56からなる導電部が給電端子44bに接触する。したがって、給電線42aおよび42bから供給される、たとえば直流5ボルトの電源が、給電端子44a、導電膜56および受電線30aならびに給電端子44b、金属管52および受電線30bを通して、電子回路15に供給される。電子回路15の構成および動作は
図7を参照して先に説明した通りである。したがって、マイコン48は、メディアポート18(
図1)へ装着されたメディア50から伝送されるデータ(表示データ)に従って、ディスプレイ14へ適宜の画像を表示させる。
【0070】
この実施例では、給電端子44aおよび44bが横杆38の長手方向に連続して露出しているので、先の
図6の実施例では切込み40の位置だけにハンガーを掛けることができたのに対して、
図9に示すように、ハンガー10を横杆38の任意の位置に掛けることができるという利点がある。
【0071】
なお、給電端子44aおよび44bが露出して人の接触の可能性があるが、直流5ボルトのような小電力なので、感電するような危険性はない。
【0072】
また、
図6および
図9に示すハンガーラック32の横杆38としては断面矩形のものを採用したが、断面円形のパイプなども採用可能である。その際、給電端子44aおよび44bと受電端子28aおよび28b(
図5の場合)または受電端子52および56(
図10の場合)との電気的な接触を確保するためにパイプから突出するような給電端子を採用することが考えられる。
【0073】
さらに、上述の実施例では、本体12に内蔵した電子回路15によってディスプレイ14での表示を制御するようにしたが、表示データはブルートゥース(商品名)のような無線方式に従ってディスプレイ14に送信するようにしてもよい。
【0074】
また、上述の実施例では、フック16に設けた受電部(第1の実施例では受電端子28a、28b、第2の実施例では金属管52、導電膜56)にハンガーラック32から給電するようにしたが、これに限らず、たとえばフック16の受電部を挟むクリップなどを用いて、これらの受電部に直接電力を投入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 …ハンガー
12 …本体
14 …ディスプレイ
15 …電子回路
16 …フック
18 …メディアポート
24 …取付け具
26 …回転止め突起
28a、28b …受電端子
44a、44b …給電端子
30a、30b …受電線
32 …ハンガーラック
38 …横杆
40 …切込み
42a、42b …給電線
46a …電池
48 …マイコン
50 …メディア
52 …金属管(受電端子)
54 …絶縁膜
56 …導電膜(受電端子)