(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040602
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ベントピース、タイヤ加硫金型及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20240318BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20240318BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20240318BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
B29C35/02
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145050
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202AM32
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU07
4F203AA45
4F203AH20
4F203AM32
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
(57)【要約】
【課題】金型のサイズアップ回避に寄与し得るベントピース、タイヤ加硫金型及びタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤ加硫金型の成形面で開口する排気孔に装着され、エア抜き用の排気路21aを有するベントピース2aであって、その排気路21aの実質長さがベントピース2aの長さL2aよりも大きい。長さL2aが小さくても排気路21aの実質長さが確保されるため、ベントピース2aの長さL2aを従来よりも小さくできる。これにより、金型10のサイズアップ回避に寄与し得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ加硫金型の成形面で開口する排気孔に装着され、エア抜き用の排気路を有するベントピースであって、前記排気路の実質長さが前記ベントピースの長さよりも大きいことを特徴とするベントピース。
【請求項2】
前記排気路の実質長さが前記ベントピースの長さの1.1倍以上である請求項1に記載のベントピース。
【請求項3】
前記排気路が前記ベントピースの軸周りに沿って湾曲しながら延びている請求項1に記載のベントピース。
【請求項4】
前記排気路が長手方向に折り返して延びている請求項1に記載のベントピース。
【請求項5】
前記排気路が長手方向に沿って蛇行しながら延びている請求項1に記載のベントピース。
【請求項6】
長手方向に連接された複数の分割片により形成されている請求項1に記載のベントピース。
【請求項7】
タイヤの外表面に接する前記成形面と、前記成形面で開口する前記排気孔に装着された請求項1~6いずれか1項に記載のベントピースとを備えたタイヤ加硫金型。
【請求項8】
請求項1~6いずれか1項に記載のベントピースを備えたタイヤ加硫金型に未加硫のタイヤをセットし、そのタイヤに加熱加圧を施して加硫を行う工程を含むタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ加硫金型の成形面の排気孔に装着されるベントピースと、そのベントピースが装着されたタイヤ加硫金型と、それを用いたタイヤの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫金型では、タイヤの外表面を成形する成形面に多数の排気孔が設けられている。加硫成形時には、タイヤの外表面と成形面との間のエアが排気孔を通じて排出されるとともに、排気孔に流入したゴムによってスピューと呼ばれるゴム突起がタイヤの外表面に形成される。特許文献1,2に記載されているように、スピューのサイズ調整などを目的として、筒状のベントピースを排気孔に装着することが知られている。
【0003】
図12は、タイヤ加硫金型を構成するトレッド型の一例を示す断面図である。トレッド型90は、金型にセットされたタイヤのトレッドを成形する。トレッド型90は、図示しないコンテナに取り付けられており、そのコンテナの機構によって所定の方向に移動可能に構成されている。トレッド型90の内面には、タイヤの外表面を成形する成形面91が形成されている。成形面91では多数の排気孔94が開口しており、その各々に筒状のベントピース92が装着されている。ベントピース92は、直線状に延びたエア抜き用の排気路93を有している。
【0004】
ベントピース92の長さL92は、想定されているスピューの長さよりも大きく設定される。そのため、
図12の破線枠Fで示すように、トレッド型90をコンテナに取り付けるためのタップ加工部95にベントピース92が干渉したり、トレッド型90の外面からベントピース92が突出したりする場合は、その長さL92のベントピース92を使用できるよう、
図13のように金型をサイズアップせざるを得ない。しかし、そうするとコンテナを含む加硫機の大型化が避けられず、様々な不都合を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-30402号公報
【特許文献2】特開2017-105126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金型のサイズアップ回避に寄与し得るベントピース、タイヤ加硫金型及びタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のベントピースは、タイヤ加硫金型の成形面で開口する排気孔に装着され、エア抜き用の排気路を有するベントピースであって、前記排気路の実質長さが前記ベントピースの長さよりも大きいものである。
【0008】
本開示のタイヤ加硫金型は、タイヤの外表面に接する前記成形面と、前記成形面で開口する前記排気孔に装着された上記のベントピースとを備えたものである。
【0009】
本開示のタイヤの製造方法は、上記のベントピースを備えたタイヤ加硫金型に未加硫のタイヤをセットし、そのタイヤに加熱加圧を施して加硫を行う工程を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示のタイヤ加硫金型の一例を概略的に示す断面図
【
図2】第1実施形態におけるベントピースを示す(A)平面図と(B)外観側面図
【
図4】第1実施形態におけるベントピースの変形例を示す(A)平面図と(B)外観側面図
【
図5】第1実施形態におけるベントピースの変形例を示す(A)平面図と(B)外観側面図
【
図6】第2実施形態におけるベントピースを示す三面図
【
図7】第2実施形態におけるベントピースの変形例を示す三面図
【
図8】第3実施形態におけるベントピースを示す(A)平面図と(B)外観側面図
【
図9】第3実施形態におけるベントピースの変形例を示す(A)平面図と(B)外観側面図
【
図10】第4実施形態におけるベントピースを示す(A)平面図と(B)外観側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
[タイヤ加硫金型]
まず、
図1を参照して、タイヤ加硫金型の構成について説明する。
図1は、タイヤ子午線断面に沿ったタイヤ加硫金型10(以下、単に「金型10」と呼ぶ場合がある)の断面を示す。タイヤ子午線断面は、タイヤTの中心軸を含む平面で切断した断面である。
図1に示す金型10は型閉め状態にある。タイヤTは、タイヤ軸方向を上下に向けて、金型10のキャビティ15にセットされる。
図1において、左方向はタイヤ径方向外側、右方向はタイヤ径方向内側である。金型10は、その金型10にセットされたタイヤTの外表面に接する成形面1を備える。
【0013】
金型10は、タイヤのトレッドを成形するトレッド型11と、タイヤのサイドウォールを成形するサイド型12,13と、タイヤのビード部が嵌合されるビードリング14,14とを備える。成形面1は、トレッド型11の内面と、サイド型12,13の内面とを含んでいる。図示を省略しているが、トレッド型11の内面には、タイヤのトレッドパターンを形成するための凹凸が設けられている。トレッド型11及びサイド型12は、図示しないコンテナに取り付けられており、金型10を開閉する際には、そのコンテナの機構によって所定の方向に移動する。
【0014】
成形面1には、金型10の内部(即ち、キャビティ15)と外部とを連通させる排気孔16が設けられている。加硫成形時には、この排気孔16を通じてタイヤTの外表面と成形面1との間のエアが排出される。
図1では、トレッド型11の内面で開口する1本の排気孔16しか描いていないが、実際には多数の排気孔が設けられており(
図12参照)、サイド型12,13の内面にも複数の排気孔が設けられている。排気孔16にはベントピース2が装着されている。ベントピース2は、ステンレス鋼などの金属材により形成されているが、これに限定されない。
【0015】
ベントピース2は、金型10の成形面1で開口する排気孔16に装着されている。ベントピース2は、排気孔16の内径よりも僅かに大きい外径を有し、締まり嵌めによって排気孔16に装着されている。ベントピース2は、その長手方向の一端をキャビティ15に向けて排気孔16に装着されている。したがって、排気孔16に装着されたベントピース2の長手方向は、その排気孔16の軸方向と一致する。
図1では図示していないが、ベントピース2は、非直線状に延びた排気路を有している。この排気路については、後ほど詳しく説明する。
【0016】
図1では、ベントプラグ2が、成形面1としてのトレッド型11の内面で開口する排気孔16に装着されているが、これに代えて、または加えて、サイド型12及び/またはサイド型13の内面で開口する排気孔に装着することも可能である。また、本実施形態では、トレッド型11と一対のサイド型12,13とを備えた金型構造を示しているが、これに限られず、例えばトレッド型の中央部で上下に二分割された金型構造でもよい。
【0017】
[ベントピースの第1実施形態]
次に、
図2~5を参照して、本開示のベントピースの第1実施形態について説明する。
図2は、ベントピース2の一つの形態であるベントピース2aを示している。ベントピース2aは、エア抜き用の排気路21aを有する。排気路21aは、ベントピース2aの長手方向LDの両端に形成された開口22a,23aを繋ぐようにして形成されている。開口22a,23aのうち一方は排気路21aの入口となり、他方は排気路21aの出口となる。本実施形態では採用していないが、脱型時のスピュー切れを抑制する観点から、排気路21aの入口となる開口に座ぐりを設けてもよい。
【0018】
このベントピース2aでは、排気路21aの実質長さがベントピース2aの長さL2aよりも大きい。排気路21aの実質長さは、排気路21aの一端から他端まで(即ち、開口22aから開口23aまで)を排気路21aの経路に沿って測定した長さである。長さL2aは、長手方向LDにおけるベントピース2aの全体の長さである。かかる構成によれば、ベントピース2aの長さL2aが小さくても排気路21aの実質長さが確保される。したがって、例えば、想定されているスピューの長さと同じかそれ以下の大きさに長さL2aを設定することも可能である。これにより、金型10のサイズアップ回避に寄与し得る。
【0019】
図12のベントピース92に代えてベントピース2aをトレッド型90に適用した例を
図3に示す。ベントピース2aの長さL2aはベントピース92の長さL92よりも小さいが、ベントピース2aの排気路21a(
図3では図示せず)の実質長さは、ベントピース92の排気路93の長さ(即ち、長さL92)と同等に確保されているため、加硫成形に支障はない。また、このベントピース2aは、タップ加工部95に干渉したり、トレッド型90の外面から突出したりしていないため、金型のサイズアップ、延いてはコンテナを含む加硫機の大型化を回避できる。これにより、金型の予熱時間の短縮、製造コストの低減、省スペース化、搬送作業の軽減などのメリットが得られる。
【0020】
排気路21aの実質長さを適度に確保する観点から、排気路21aの実質長さはベントピース2aの長さL2aの1.1倍以上であることが好ましく、1.25倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましく、2.0倍以上であることが尚更に好ましい。また、特に限定されるものではないが、金型10のサイズアップ回避に寄与しやすくなるよう、ベントピース2aの長さL2aは9.0mm以下であることが好ましい。ベントピース2aの長さL2aは、そのベントピース2aの外径EDよりも大きい。
【0021】
図2に示すように、第1実施形態では、排気路21aがベントピース2aの軸周り(中心軸線CLの周り)に沿って湾曲しながら延びている。このように排気路21aを湾曲させることにより、その実質長さを確保しやすい。排気路21aは、中心軸線CLの周りを回転しながら長手方向LDに延在している。つまり、排気路21aは、コイルばねのように螺旋状に延びている。開口22a,23aは、それぞれベントピース2aの中心軸線CLからずれた位置に設けられており、このことは排気路21aを螺旋状に形成するうえで都合がよい。
【0022】
図2では、開口22aから開口23aに至るまでに排気路21aが1.5周する例を示す。
図2に示すベントピース2aの具体的な寸法例において、長さL2aは9.0mm、排気路21aの実質長さは17.1mmである。尚、外径EDは3.0mm、想定されているスピューの長さは9~13mmであり、これは後述する他の寸法例でも同様である。
図4は、排気路21aが3周する変形例を示す。
図4に示すベントピース2aの具体的な寸法例において、長さL2aは9.0mm、排気路21aの実質長さは20.4mmである。排気路21aは1周以上することが好ましいが、1周未満でも構わない。
【0023】
排気路21aは、ベントピース2aを貫通する貫通孔によって形成されている。但し、この貫通孔は、従来のような直線状に延びた貫通孔ではなく、非直線状に延びた貫通孔である。したがって、排気路21aの実質長さは、開口22aと開口23aとの間の直線距離よりも長い。このような排気路21aを有するベントピース2aは、例えば3次元造形装置(3Dプリンタ)やロストワックス製法などによって作製できる。また、後述する第4実施形態のようにベントピース2が複数の分割片により形成されているときは、切削加工によって比較的容易に作製できる場合もある。
【0024】
ベントピース2aは、排気路21aを内部に有する筒状体により形成されているが、これに限られない。例えば、
図5のように排気路21aを外面に有する柱状体により形成されていてもよく、これによりベントピース2aの作製が容易になる。ベントピース2aの外面には、その軸周りに沿って湾曲しながら延びた凹溝24が形成されている。凹溝24は、排気孔16の内面で包囲されることにより排気路21aとして機能する。
図5のベントピース2aでは排気路21a(凹溝24)が螺旋状に2周しており、その具体的な寸法例において長さL2aは6.0mm、排気路21aの実質長さは18.8mmである。
【0025】
[ベントピースの第2実施形態]
次に、
図6,7を参照して、本開示のベントピースの第2実施形態について説明する。第2実施形態としてのベントピース2bは、以下に説明する構成の他は、第1実施形態としてのベントピース2aと同様に構成できるため、共通点を省略して主に相違点について説明する。第1実施形態で既に説明した構成には同一の符号を用いて説明し、重複した説明を省略する。
【0026】
図6は、ベントピース2の一つの形態であるベントピース2bを示している。ベントピース2bは、エア抜き用の排気路21bを有する。排気路21bは、ベントピース2bを貫通する非直線状の貫通孔によって形成されている。排気路21bは、ベントピース2bの長手方向LDの両端に形成された開口22b,23bを繋ぐようにして形成されている。このベントピース2bが有する排気路21bの実質長さはベントピース2bの長さL2bよりも大きく、上述のように金型10のサイズアップ回避に寄与し得る。
【0027】
図6に示すように、第2実施形態では、排気路21bが長手方向LDに折り返して延びている。このように排気路21bを折り返すことにより、その実質長さを確保しやすい。
図6(B)のように、排気路21bは、開口22bから開口23bに至る途中の2箇所で長手方向LDに折り返している。排気路21bは、開口22b,23bの各々から長手方向LDに延びた部分と、それらを連通させるように長手方向LDに対して傾斜して延びた部分とを有する。開口22b,23bは、それぞれベントピース2bの中心軸線CLからずれた位置に設けられており、このことは折り返し形状を有する排気路21bを設けるうえで都合がよい。
【0028】
図6に示すベントピース2bの具体的な寸法例において、長さL2bは9.0mm、排気路21bの実質長さは16.4mmである。
図7は、折り返し形状を有する排気路21bの変形例を示す。この排気路21bは、
図7(B)のように開口22bから開口23bに至る途中の2箇所で長手方向LDに折り返してループ状をなす。かかる構成によれば、折り返しが比較的緩やかになるため脱型時にスピューが円滑に抜けやすい。
図7に示すベントピース2bの具体的な寸法例において、長さL2bは9.0mm、排気路21bの実質長さは16.8mmである。
【0029】
[ベントピースの第3実施形態]
次に、
図8,9を参照して、本開示のベントピースの第3実施形態について説明する。第3実施形態としてのベントピース2cは、以下に説明する構成の他は、第1実施形態としてのベントピース2aと同様に構成できるため、共通点を省略して主に相違点について説明する。第1実施形態で既に説明した構成には同一の符号を用いて説明し、重複した説明を省略する。
【0030】
図8は、ベントピース2の一つの形態であるベントピース2cを示している。ベントピース2cは、エア抜き用の排気路21cを有する。排気路21cは、ベントピース2cを貫通する非直線状の貫通孔によって形成されている。排気路21cは、ベントピース2cの長手方向LDの両端に形成された開口22c,23cを繋ぐようにして形成されている。このベントピース2cが有する排気路21cの実質長さはベントピース2cの長さL2cよりも大きく、上述のように金型10のサイズアップ回避に寄与し得る。
【0031】
図8に示すように、第3実施形態では、排気路21cが長手方向LDに沿って蛇行しながら延びている。このように排気路21cを蛇行させることにより、その実質長さを確保しやすい。また、前述の実施形態と比べて脱型時にスピューが円滑に抜けやすい。排気路21cは、ベントピース2cの径方向に振幅を有した波状に延びている。
図8に示すベントピース2cの具体的な寸法例において、長さL2cは9.0mm、排気路21cの実質長さは10.6mmである。
図9は、排気路21cの蛇行周期(ピッチ)を短くした変形例を示す。
図9に示すベントピース2cの具体的な寸法例において、長さL2cは9.0mm、排気路21cの実質長さは16.7mmである。
【0032】
[ベントピースの第4実施形態]
次に、
図10,11を参照して、本開示のベントピースの第4実施形態について説明する。第4実施形態としてのベントピース2dは、以下に説明する構成の他は、第1実施形態としてのベントピース2aと同様に構成できるため、共通点を省略して主に相違点について説明する。第1実施形態で既に説明した構成には同一の符号を用いて説明し、重複した説明を省略する。
【0033】
図10は、ベントピース2の一つの形態であるベントピース2dを示している。ベントピース2d、エア抜き用の排気路21dを有する。排気路21dは、ベントピース2dを貫通する非直線状の貫通孔によって形成されている。排気路21dは、ベントピース2dの長手方向LDの両端に形成された開口22d,23dを繋ぐようにして形成されている。このベントピース2dが有する排気路21dの実質長さはベントピース2dの長さL2dよりも大きく、上述のように金型10のサイズアップ回避に寄与し得る。
【0034】
図10に示すように、第4実施形態では、ベントピース2dが、長手方向LDに連接された複数の分割片25により形成されている。これにより、ベントピース2dを比較的簡単な加工によって作製できる。この例では、ベントピース2dが三つの分割片25により形成されているが、これに限られない。隣り合う分割片25は互いに接着されていてもよいが、それらを接着せずに別個の部材のまま排気孔16に装着することも可能である。その場合、複数の分割片25を順次に排気孔16に圧入していくことにより、それらが排気孔16の中で連接されてベントピース2dが形成される。
【0035】
本実施形態では、
図11に示す分割片25を用いてベントピース2dが形成されている。分割片25には、その両端面で開口する貫通孔26が形成されている。貫通孔26は直線状に延びているため、加工が容易である。貫通孔26は、ベントピース2dの長手方向LDに対して傾斜して延びている。複数の貫通孔26を連ねることにより、
図10の如く屈曲線状に延びた排気路21dが形成される。排気路21dは軸周りに1周しているが、これに限られない。
図10に示すベントピース2dの具体的な寸法例において長さL2dは9.0mm、排気路21dの実質長さは9.9mmである。
【0036】
[タイヤの製造方法]
最後に、タイヤの製造方法について説明する。ベントピース2を備える金型10を用いたタイヤの製造方法は、金型10に未加硫のタイヤTをセットし、そのタイヤTに加熱加圧を施して加硫を行う工程を含む。タイヤTは、ブラダーと呼ばれるゴムバッグの膨張によって拡張変形し、その外表面が成形面1に押し当たる。その過程で、タイヤTと成形面1との間のエアが、ベントピース2の排気路を通じて排出される。既述の通り、ベントピース2の長さが小さくても排気路の実質長さが確保されることから、ベントピース2の長さを小さく設定することが可能となり、金型10のサイズアップ回避に寄与し得る。
【0037】
[1]
以上のように、本開示のベントピース2(ベントピース2a~2d)は、タイヤ加硫金型10の成形面1で開口する排気孔16に装着され、エア抜き用の排気路(排気路21a~21d)を有するベントピース2であって、その排気路の実質長さはベントピース2の長さ(長さL21a~L21d)よりも大きい。かかる構成によれば、ベントピース2の長さが小さくても排気路の実質長さが確保されることから、金型10のサイズアップ回避に寄与し得る。
【0038】
[2]
排気路21a~21dの実質長さを適度に確保する観点から、上記[1]のベントピース2(ベントピース2a~2d)において、排気路の実質長さがベントピース2の長さの1.1倍以上であることが好ましい。
【0039】
[3]
上記[1]または[2]のベントピース2(ベントピース2a)において、排気路21aがベントピース2aの軸周りに沿って湾曲しながら延びているものでもよい。かかる構成によれば、排気路21aの実質長さを確保しやすい。
【0040】
[4]
上記[1]または[2]のベントピース2(ベントピース2b)において、排気路21bが長手方向LDに折り返して延びているものでもよい。かかる構成によれば、排気路21bの実質長さを確保しやすい。
【0041】
[5]
上記[1]または[2]のベントピース2(ベントピース2c)において、排気路21cが長手方向LDに沿って蛇行しながら延びているものでもよい。かかる構成によれば、排気路21cの実質長さを確保しやすい。
【0042】
[6]
上記[1]~[5]いずれか1つのベントピース2(ベントピース2d)は、長手方向LDに連接された複数の分割片25により形成されているものでもよい。かかる構成によれば、長さよりも排気路の実質長さが大きいベントピース2を比較的簡単な加工によって作製できる。
【0043】
[7]
本開示のタイヤ加硫金型10は、タイヤTの外表面に接する成形面1と、その成形面1で開口する排気孔16に装着された上記[1]~[6]いずれか1つのベントピース2とを備えたものである。上記の如きベントピース2が排気孔16に装着されていることにより、金型10のサイズアップ回避に寄与し得る。
【0044】
本開示のタイヤ加硫金型10は、排気孔16に装着されるベントピース2を上記の如く構成したこと以外は、通常のタイヤ加硫金型と同等であり、従来公知の形状や材質、機構などは何れも採用することができる。
【0045】
[8]
本開示のタイヤの製造方法は、上記[1]~[6]いずれか1つのベントピース2を備えたタイヤ加硫金型10に未加硫のタイヤTをセットし、そのタイヤTに加熱加圧を施して加硫を行う工程を含むものである。上記の如きベントピース2を備えた金型10を用いることにより、金型10のサイズアップ回避に寄与し得る。
【0046】
本開示のタイヤの製造方法は、タイヤ加硫金型10の排気孔16に上記の如きベントピース2を装着していること以外は、通常のタイヤの製造方法と同等であり、従来公知の工程や加硫条件などは何れも採用することができる。
【0047】
以上、本開示の実施形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく、特許請求の範囲によって示され、更には特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0048】
本開示のベントピース、タイヤ加硫金型及びタイヤの製造方法は、いずれも上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。また、上述した第1~第4実施形態で採用されている各構成を、任意に組み合わせて採用することが可能である。したがって、例えば、第1実施形態に係るベントピースが、第4実施形態のように複数の分割片により形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 成形面
2 ベントピース
2a ベントピース
2b ベントピース
2c ベントピース
2d ベントピース
10 タイヤ加硫金型
16 排気孔
21a 排気路
21b 排気路
21c 排気路
21d 排気路
25 分割片