(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040608
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】シェルター
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20240318BHJP
E02B 3/10 20060101ALI20240318BHJP
A62B 99/00 20090101ALI20240318BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E02B3/10
A62B99/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145061
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】510302308
【氏名又は名称】株式会社クラミー技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(74)【代理人】
【識別番号】100100169
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 剛
(72)【発明者】
【氏名】倉本 俊司
【テーマコード(参考)】
2D118
2E139
2E184
【Fターム(参考)】
2D118FA01
2E139AB24
2E139AC26
2E184JA07
2E184KA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】入口の上端11Bより低い位置を含め、広い空間を避難空間13として利用できるようにする。また、高台から遠い位置でも避難空間を形成できるようにする。
【解決手段】入口11Aを除いて気密性と耐圧性を有する気密性材料で囲まれた空間である内部空間10を備え、内部空間10は、シェルター1への入口11Aを有する入口部11と、避難者9が避難するための避難空間13と、入口部11と避難空間13を接続する筒型通路12とを有し、筒型通路12は鉛直軸16を気密性材料で囲まれ、避難空間13は筒型通路12と入口11Aの上端11Bより低い位置を含み、入口11Aから水が内部空間10に流入した場合は、筒型通路12内の平面に水と空気を分ける境界面22が発生し、筒型通路12内に境界面22が存在する限り、水が避難空間13に流入することなく、避難空間13が避難可能な空間として機能する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
津波又は洪水から避難するためのシェルターであって;
入口を除いて気密性と耐圧性を有する気密性材料で囲まれた空間である内部空間を備え;
前記内部空間は、前記シェルターへの前記入口を有する入口部と、避難者が避難するための避難空間と、前記入口部と前記避難空間を接続する筒型通路とを有し、
前記筒型通路は鉛直軸を前記気密性材料で囲まれ、下側の前記入口部との接続開口及び上側の前記避難空間との接続開口のみに開放部分を有し、外部に面する外壁及び、前記避難空間との間を仕切る内壁は、前記気密性材料で形成され、前記入口部は外部への開放部分である前記入口及び前記筒型通路との接続開口のみに開放部分を有し、外部に面する外壁及び前記避難空間との間を仕切る内壁は前記気密性材料で形成され、前記避難空間は前記筒型通路との接続開口のみに開放部分を有し、外部に面する外壁及び前記筒型通路との間を仕切る内壁及び前記入口部との間を仕切る内壁は前記気密性材料で形成され、前記入口の上端より低い位置を含み、
前記入口から水が前記内部空間に流入した場合は、前記筒型通路内の平面に水と空気を分ける境界面が発生し、前記筒型通路内に前記境界面が存在する限り、前記水が前記避難空間に流入することなく、前記避難空間が避難可能な空間として機能する;
シェルター。
【請求項2】
前記避難空間内に常圧近傍の状態で閉鎖可能な常圧室が設けられる;
請求項1に記載のシェルター。
【請求項3】
堤防に隣接して又は堤防の内部に前記内部空間が設けられる:
請求項1又は請求項2に記載のシェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難者を津波・洪水又はその他の災害から守るシェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
地震が発生し津波が発生すると、時には津波が内陸深く進行して家屋が破壊され、持ち去られるとともに、高台に避難できない人は津波の犠牲となるということは、東日本大震災が示している。
【0003】
従来、津波・洪水など非常事態時の避難用シェルターは、例えば、避難床を入口の上端より高い位置に作らなければならないとされてきた。このため、入口の上端より低い位置を活用することができなかった。
【0004】
津波がさほど大きくなければ、シェルターの内部空間の水と空気の境界面は入口の上端よりさほど高くならないが、例えば高さ10m以上(30m以上になることもある)の大津波では、シェルター内部の水面が入口の上端より相当高くなってしまうという問題があった(特許文献1参照)。
また、内部空間の気圧が、例えば1.3気圧以上になると、避難者に健康被害が生じ得るという問題があった。
【0005】
なお、発明者は、入口の扉を自動的に閉鎖することにより、内部空間の圧力上昇を抑え、また、内部空間に常圧室を設けて健康被害を防ぐ提案をした。しかし、依然として、入口の上端より低い位置を活用することができなかった(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実3188958号公報
【特許文献2】特6514917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、入口の上端より低い位置を含め、広い空間を避難空間として利用できるようにすることを目的とする。
また、高台から遠い位置でも避難空間を形成できれば、通常は避難が難しい人を含め、誰でもが逃げ込み易くなり、命拾いすることができるので、高台から遠い位置でも避難空間を形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るシェルター1は、例えば
図1に示すように、津波又は洪水から避難するためのシェルター1であって、
入口11Aを除いて気密性と耐圧性を有する気密性材料で囲まれた空間である内部空間10を備え、
内部空間10は、シェルター1への入口11Aを有する入口部11と、避難者9が避難するための避難空間13と、入口部11と避難空間13を接続する筒型通路12とを有し、
筒型通路12は鉛直軸16を気密性材料で囲まれ、下側の入口部11との接続開口及び上側の避難空間13との接続開口のみに開放部分を有し、外部に面する外壁及び避難空間13との間を仕切る内壁は気密性材料で形成され、入口部11は外部への開放部分である入口11A及び筒型通路12との接続開口のみに開放部分を有し、外部に面する外壁及び避難空間13との間を仕切る内壁18は気密性材料で形成され、避難空間13は筒型通路12との接続開口のみに開放部分を有し、外部に面する外壁2,3及び、筒型通路12との間を仕切る内壁18及び、入口部11との間を仕切る内壁18は、気密性材料で形成され、入口11Aの上端11Bより低い位置を含み、入口11Aから水が内部空間10に流入した場合は、筒型通路12内の平面に水と空気を分ける境界面22が発生し、筒型通路12内に境界面22が存在する限り、水が避難空間13に流入することなく、避難空間13が避難可能な空間として機能する。
【0009】
ここにおいて、気密性とは気体及び液体を通さないことをいい、耐圧性とは例えば高さ50mの津波で、絶対圧で6気圧の水圧を受けたときに破壊・損傷されないことをいう。また、気密性と耐圧性を有する材料としては、例えば機密に形成された鉄筋コンクリート、FRP(繊維強化プラスチック)等が挙げられる。また、避難空間13は、避難者9が収容される空間の他に、非常用品・備蓄食料等15を収容する予備空間14を含むものとする。避難空間13内において、避難者9が収容される空間と予備空間14との間に仕切りがあってもなくても良い。非常用品としては、例えば、情報通信機器・バッテリー・酸素ボンベ(代わりに酸素を製造するための過酸化水素水及び二酸化マンガンを備えても良い)等が挙げられる。避難者9及び車椅子が入口部11から避難空間13に行くには、入口部11及び/又は筒型通路12内の階段17・スロープ等が利用される。また、避難空間13に2層以上の多層床を設けると多人数を収容できる。
【0010】
本態様のように構成すると、避難空間13を入口11Aの上端11Bより低い位置にも設けることができるので、広い空間を避難空間として利用できる。また、高台から遠い位置でも避難空間を形成できるので、通常は避難が難しい人を含め、誰でもが逃げ込み易くなり、命拾いすることができる。
【0011】
また、本発明の第2の態様に係るシェルター1Aは、第1の態様において、例えば
図3に示すように、避難空間13内に常圧近傍の状態で閉鎖可能な常圧室28が設けられる。
【0012】
本態様のように構成すると、避難者9を常圧近傍の状態の常圧室28に導いて、高圧による避難者9の健康への悪影響を防止できる。
【0013】
また、本発明の第3の態様に係るシェルター1は、第1又は第2の態様において、例えば
図1に示すように、堤防に隣接して又は堤防の内部に内部空間10が設けられる。
ここにおいて、堤防に隣接してとは、例えば、堤防の上下、横に接して設けられる場合等をいう。
このように構成すると、堤防の堅固な構造を利用して、津波により位置ずれや傾斜しない安定なシェルターを建設できる。また、堤防工事に便乗してシェルターを建設でき、建設工事の費用を節約できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、避難空間を入口11Aの上端より低い位置にも設けることができるので、広い空間を避難空間として利用できる。また、高台から遠い位置でも避難空間を形成できるので、通常は避難が難しい人を含め、誰でもが逃げ込み易くなり、命拾いすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1におけるシェルターの模式的縦断面図である。
【
図2】実施例1におけるシェルターに水が侵入した場合の図である。
【
図3】実施例3におけるシェルターの斜視図である。
【
図4】実施例3におけるシェルターに水が侵入した場合の模式的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各実施例において同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【実施例0017】
実施例1では、堤防と一体的に建設されたシェルターの例を説明する。
【0018】
図1は実施例1における堤防と一体的に建設されたシェルター1の模式的縦断面図である。図において、1はシェルター、2は海側側壁(外壁)、3は陸側側壁(外壁)、4は基礎、5は床、6は天井であり、2から6はいずれも気密性・耐圧性のコンクリートである。4Aはシェルターを土地に固定するためのアンカーでコンクリート製である。7は道路、8は自動車、8Aは通行人、8Bはガードレールである。9は避難者である。10は内部空間で、入口部11、筒型通路12、避難空間13により構成される。入口部11及び筒型通路12の範囲は太い破線で囲んで示す。避難空間13は、避難者9が収容される空間の他に、非常用品・備蓄食料等15を収容する予備空間14を含む。避難空間13内に避難者9を収容する空間と予備空間14との間には仕切り(
図1では床5)があってもなくても良い。また、避難者9を収容する空間と予備空間14との間の仕切に蓋5Aが設けられ、非常用品・備蓄食料等15を避難者9が収容される空間に取り出せる。また、避難者9及び車椅子は入口11Aから入る。15は非常用品・備蓄食料等で、予備空間14に収納される。この例では入口11Aは開放され、入口11Aに扉を有さない。入口11Aの奥に表示された矩形部分は入口の枠である。非常用品としては、例えば、救急箱、乳幼児用器具、懐中電灯、酸素ボンベ(代わりに酸素を製造するための過酸化水素水及び二酸化マンガンを備えても良い)及び、バッテリー、情報通信機器、寝具等が挙げられる。平常時には、シェルター1内に水は侵入していない。ここでも、気密性が重要な要件である。シェルター内の空気漏れが僅かであっても、そこに水が来れば、水の侵入を止めることはできなくなる。
【0019】
また、シェルター1は、入口11Aを除いて気密性と耐圧性を有する気密性材料で囲まれた空間である内部空間10を備える。内部空間10は、シェルター1への入口11Aを有する入口部11と、避難者9が避難するための避難空間13と、入口部11と避難空間13を接続する筒型通路12とを有する。筒型通路12は鉛直軸16を気密性材料で囲まれ、下側の入口部11との接続開口及び上側の避難空間13との接続開口のみに開放部分を有し、外部に面する外壁2、3及び避難空間13との間を仕切る内壁18は気密性材料で形成される。入口部11は外部への開放部分である入口11A及び筒型通路12との接続開口のみに開放部分を有し、外部に面する外壁及び避難空間13との間を仕切る内壁18は気密性材料で形成される。避難空間13は筒型通路12との接続開口のみに開放部分を有し、外部に面する外壁2、3及び、筒型通路12との間を仕切る内壁18及び、入口部11との間を仕切る内壁18は、気密性材料で形成される。また、避難空間13は入口11Aの上端11Bより低い位置を含む。
【0020】
図2にシェルター1に水が侵入した場合の例を示す。入口11Aから水が内部空間10に流入した場合は、筒型通路12内の平面に水と空気を分ける境界面22が発生する。そして、境界面22が筒型通路12内に存在する限り、水が避難空間13に流入することなく、避難空間13が避難可能な空間として機能する。
図2において、21は海面、22は水と空気を分ける境界面22である。境界面22において、シェルター1内の空気圧と海水の圧力がバランスしているため、水はシェルター1内に侵入していない。このため、避難空間13内の入口11Aの上端11Bより低い部分であっても、水が浸入しない。海水中の水圧は海面から10m深くなるごとに1気圧上昇する。したがって、境界面22の海面21からの深さをH(m)とすると、境界面の海水の圧力は、H/10気圧となる。津波の高さが10mであれば、境界面22上の避難空間13の気圧は2気圧となり、体積は1/2になる。津波の高さが20mであれば、境界面22上の避難空間13の気圧は3気圧となり、体積は1/3になる。したがって、水と空気を分ける境界面22は、気密性材料で囲まれた避難空間13の体積減少につれて筒型通路12内を上昇する。しかし、境界面22が筒型通路12内に存在する限り、水が避難空間13に流入することなく、避難空間13が避難可能な空間として機能する。
【0021】
本実施例によれば、避難空間13を入口11Aの上端11Bより低い位置にも設けることができるので、広い空間を避難空間として利用できる。また、高台から遠い位置でも避難空間を形成できるので、通常は避難が難しい人を含め、誰でもが逃げ込み易くなり、命拾いすることができる。