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特開2024-40621乗り物用シートのポケット構造及び乗り物用シート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040621
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】乗り物用シートのポケット構造及び乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20240318BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A47C7/62 A
B60N2/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145083
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】521452902
【氏名又は名称】アディエント ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】引頭 卓也
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA04
3B084JB06
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】後面に複数のポケットを有していても、その後面のデザイン自由度が高い乗り物用シートのポケット構造を提供する。
【解決手段】乗り物用シートのポケット構造(PK)は、乗り物用シート(ST)におけるシートバック(ST2)の後面にシートバック(ST2)の幅方向に並んで設けられた第1ポケット部(MA1)及び第2ポケット部(MA2)を備えている。第1ポケット部(MA1)と第2ポケット部(MA2)とは、後方側から視認不能な仕切部(18)で仕切られている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物用シートにおけるシートバックの後面に前記シートバックの幅方向に並んで設けられた第1ポケット部及び第2ポケット部を備え、
前記第1ポケット部と前記第2ポケット部とは、後方側から視認不能な仕切部で仕切られている乗り物用シートのポケット構造。
【請求項2】
前記仕切部は、前記幅方向に所定の幅を有し上端部の前記幅方向の中央部が最も上方に位置していることを特徴とする請求項1記載の乗り物用シートのポケット構造。
【請求項3】
内側部材と、前記内側部材に対し後側に位置する後側部材と、前記後側部材の後方側に位置する外側部材とを有し、
前記第1ポケット部及び前記第2ポケット部の収容空間は、前記内側部材と前記後側部材との間に形成され、
前記仕切部は、前記内側部材と前記後側部材とが縫合されて形成されている請求項1又は請求項2記載の乗り物用シートのポケット構造。
【請求項4】
シートバックと、
前記シートバックの後面に設けられた、幅方向に並ぶ第1ポケット部及び第2ポケット部を有するポケット構造と、
を備え、
前記第1ポケット部と前記第2ポケット部とは、後方側から視認不能な仕切部で仕切られている乗り物用シート。
【請求項5】
前記仕切部は、前記幅方向に所定の幅を有し上端部の前記幅方向の中央部が最も上方に位置していることを特徴とする請求項4記載の乗り物用シート。
【請求項6】
前記ポケット構造は、内側部材と、前記内側部材に対し後側に位置する後側部材と、前記後側部材の後方側に位置する外側部材とを有し、
前記第1ポケット部及び前記第2ポケット部の収容空間は、前記内側部材と前記後側部材との間に形成され、
前記仕切部は、前記内側部材と前記後側部材とが縫合されて形成されている請求項4又は請求項5記載の乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗り物用シートのポケット構造及び乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、シートバックの背面(後面)に、その幅方向に配列された複数のポケットを有する車両用シートが記載されている。
特許文献1に記載された車両用シートは、複数のポケットの間の仕切りが、高さ方向に縫いつけられて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6017397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車両用シートは、複数のポケットの間の仕切りが、縫い目として表面に露出し外部から視認され得る。そのため、この技術を搭載した車両用シートを含む乗り物用シートにおいて、背面のデザイン自由度が抑制される。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、後面に複数のポケットを有していても、その後面のデザイン自由度が高い乗り物用シートのポケット構造及び乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) 乗り物用シートにおけるシートバックの後面に前記シートバックの幅方向に並んで設けられた第1ポケット部及び第2ポケット部を備え、
前記第1ポケット部と前記第2ポケット部とは、後方側から視認不能な仕切部で仕切られている乗り物用シートのポケット構造である。
2) 前記仕切部は、前記幅方向に所定の幅を有し上端部の前記幅方向の中央部が最も上方に位置していることを特徴とする1)に記載の乗り物用シートのポケット構造である。
3) 内側部材と、前記内側部材に対し後側に位置する後側部材と、前記後側部材の後方側に位置する外側部材とを有し、
前記第1ポケット部及び前記第2ポケット部の収容空間は、前記内側部材と前記後側部材との間に形成され、
前記仕切部は、前記内側部材と前記後側部材とが縫合されて形成されている1)又は2)に記載の乗り物用シートのポケット構造である。
4) シートバックと、
前記シートバックの後面に設けられた、幅方向に並ぶ第1ポケット部及び第2ポケット部を有するポケット構造と、
を備え、
前記第1ポケット部と前記第2ポケット部とは、後方側から視認不能な仕切部で仕切られている乗り物用シートである。
5) 前記仕切部は、前記幅方向に所定の幅を有し上端部の前記幅方向の中央部が最も上方に位置していることを特徴とする4)に記載の乗り物用シートである。
6) 前記ポケット構造は、内側部材と、前記内側部材に対し後側に位置する後側部材と、前記後側部材の後方側に位置する外側部材とを有し、
前記第1ポケット部及び前記第2ポケット部の収容空間は、前記内側部材と前記後側部材との間に形成され、
前記仕切部は、前記内側部材と前記後側部材とが縫合されて形成されている4)又は5)に記載の乗り物用シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、後面に複数のポケットを有していても、その後面のデザイン自由度が高い、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る乗り物用シートのポケット構造の実施例1であるポケット構造PKを搭載した乗り物用シートSTを左後斜め上方から見た斜視図である。
図2図2は、ポケット構造PKを示す後面図である。
図3A図3Aは、ポケット構造PKの第1表皮部材11の平面図である。
図3B図3Bは、ポケット構造PKの第2表皮部材12の平面図である。
図3C図3Cは、ポケット構造PKの仕切りパッチ15の平面図である。
図4A図4Aは、ポケット表皮体1の形成過程における第1の中間縫合体である第1縫合体T1を示す部分平面図である。
図4B図4Bは、ポケット表皮体1の形成過程における第2の中間縫合体である第2縫合体T2を示す部分平面図である。
図4C図4Cは、ポケット表皮体1を示す部分平面図である。
図5図5は、図2におけるS5-S5位置での断面図である。
図6図6は、図2におけるS6-S6位置での断面図である。
図7図7は、図2におけるS7-S7位置での断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る乗り物用シートのポケット構造の実施例2であるポケット構造PKBを搭載した乗り物用シートSTBを左後斜め上方から見た斜視図である。
図9図9は、ポケット構造PKBを示す後面図である。
図10A図10Aは、ポケット表皮体1Bの第1表皮部材11Bの平面図である。
図10B図10Bは、ポケット表皮体1Bの第1内地部材13B,第2内地部材14Bの平面図である。
図10C図10Cは、ポケット表皮体1Bの第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bの平面図である。
図11A図11Aは、ポケット表皮体1Bの形成過程における第1の中間縫合体である第1縫合体TB1の平面図である。
図11B図11Bは、図11AにおけるS11B-S11B位置での断面図である。
図12図12は、ポケット表皮体1Bの形成過程における第2の中間縫合体である第2縫合体TB2を示す平面図である。
図13図13は、ポケット表皮体1Bの形成過程における第3の中間縫合体である第3縫合体TB3を示す平面図である。
図14図14は、ポケット表皮体1Bの形成過程における第4の中間縫合体である第4縫合体TB4を示す部分平面図である。
図15図15は、ポケット表皮体1Bを示す部分平面図である。
図16図16は、図9におけるS16-S16位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る乗り物用シート及び乗り物用シートのポケット構造を、実施例1の乗り物用シートST及びポケット構造PK、並びに、実施例2の乗り物用シートSTB及びポケット構造PKBによって説明する。説明における上下左右前後の各方向は、該当する図に矢印で規定する。
【0010】
(実施例1)
まず、実施例1のポケット構造PKを搭載した乗り物用シートSTの構成の概要を図1及び図2を参照して説明する。図1は、乗り物用シートSTを左後斜め上方から見た斜視図である。図2は乗り物用シートSTのポケット構造PKを含む部分を示す後面図である。
【0011】
ポケット構造PKは、上方が開放された袋状であって上方から物を入れることができる二つのポケット部である第1ポケット部MA1及び第2ポケット部MA2を形成する構造である。以下、第1ポケット部MA1及び第2ポケット部MA2は、単にそれぞれポケット部MA1及びポケット部MA2とも称する。
ポケット部MA1及びポケット部MA2は、乗り物用シートSTの幅方向(左右方向)に並んで形成されている。この例では、ポケット部MA1が左側、ポケット部MA2が右側で左右対称形状とした場合を説明するが、左右対称形状であることに限定されない。すなわち、ポケット部MA1の幅とポケット部MA2の幅とが異なっていてもよい。
【0012】
図1に示されるように、乗り物用シートSTは、自動車などの乗り物に搭載されるシートであり、シートクッションST1,シートバックST2,及びヘッドレストST3を有する。シートバックST2の後面には、ポケット部MA1,MA2が設けられている。
ポケット部MA1とポケット部MA2とは、この例において左右方向の中央に設けられた仕切部18によって左右に区分されている。
【0013】
シートバックST2は、柔軟性を有するパッド(不図示)を覆う樹脂製又は皮製の表皮部材としての、表皮基部61,表皮背部62,及びポケット表皮体1を有する。
表皮基部61は、シートバックST2における、上部、並びに、左側部及び右側部(左右側部)の上部を覆う一体的な表皮となる部材である。
表皮背部62は、シートバックST2の後面(背面)における中央から下部にかけての表皮となる部材である。
ポケット表皮体1は、シートバックST2の後面の一部を覆う上部の表皮となる部材を含んだ縫合体である。
【0014】
図1及び図2に示されるように、ポケット表皮体1は、表皮基部61に対し、上部において第2表皮部材12が、また左部及び右部において第2表皮部が、基本縫合部711で縫合される。
また、表皮背部62に対し、第1表皮部材11の左下部は左下縫合部712で縫合され、右下部は右下縫合部714で縫合され、下部は中央下縫合部713で縫合される。
これにより、表皮基部61,表皮背部62,及びポケット表皮体1は、表皮として一体化されている。
ポケット表皮体1は、シートバックST2の外観における、ポケット部MA1,MA2を閉じた状態で、第1表皮部材11及び第2表皮部材12が視認される。
【0015】
次に、図3A図3C及び図5図7を主に参照してポケット表皮体1の構成部材及びその構成を説明する。
図3Aは、ポケット構造PKの第1表皮部材11の平面図であり、図3Bは、ポケット構造PKの第2表皮部材12の平面図であり、図3Cは、ポケット構造PKの仕切りパッチ15の平面図である。また、図5は、図2におけるS5-S5位置での断面図であり図6は、図2におけるS6-S6位置での断面図であり、図7は、図2におけるS7-S7位置での断面図である。
【0016】
ポケット構造PKにおけるポケット表皮体1は、第1表皮部材11,第2表皮部材12,及び仕切りパッチ15を有する。
【0017】
図3Aに示されるように、第1表皮部材11は、左右対称形状で下方側が広がる概ね台形形状を呈する。第1表皮部材11は、革を模した模様を有する薄い表皮部とスポンジ状の発泡部との二層で一体形成されている。第1表皮部材11は、表皮部が表面11a側、発泡部が裏面11b(図5参照)側となっている。図3Aは、裏面11bが紙面手前側となっている。
【0018】
第1表皮部材11の左縁部11c1と右縁部11c2は、外方に凸となる曲線状に形成されている。左縁部11c1の上端よりも上部には、左外上方に突出した左鍔部11c3が形成されている。右縁部11c2の上端よりも上部には、右外上方に突出した右鍔部11c4が形成されている。
第1表皮部材11の上方には、矩形形状に延出した第1延出部11c5が形成されている。第1延出部11c5と左鍔部11c3及び右鍔部11c4とは、弧状接続部11c6,11c7で弧状に接続される。
【0019】
図3Bに示されるように、第2表皮部材12は左右に細長く上方側がすぼまる概ね台形形状の基部121と、基部121の下縁から概ね矩形形状で下方に延出した第2延出部122とを有して、左右対称形状に形成されている。第2延出部122と基部121とは、弧状接続部122a,122bによって弧状に接続される。
第2表皮部材12は、革を模した模様を有する薄い表皮部と厚手の基部との二層で一体形成されており、第1表皮部材11よりも薄い部材である。第2表皮部材12は、表皮部が表面12a側、基部が裏面12b(図5参照)側となっている。
【0020】
第1延出部11c5と第2延出部122とを重ねたときに、第2表皮部材12の弧状接続部122a,122bと第1表皮部材11の弧状接続部16c,17cとは形状が合致し、第1延出部11c5の方が第2延出部122よりも長く延出する。
【0021】
図3Cに示されるように、仕切りパッチ15は、一方の端部が円弧状の弧状端部15aとされた所定の幅で細長い短冊状の部材であり、例えばフェルト生地で形成されている。
【0022】
上述の第1表皮部材11,第2表皮部材12,及び仕切りパッチ15を用い、次の方法でポケット表皮体1を形成する。説明において図4A図4Cを参照する。図4A図4Cに示される左右方向は、ポケット表皮体1が搭載された乗り物用シートSTの左右方向に対応している。
【0023】
まず、図4Aに示されるように、第1表皮部材11について、左鍔部11c3及び右鍔部11c4の下側の根本部を結ぶ左右に延びる谷折りの折り曲げ線LN1(図3A)を折り目とし、第1延出部11c5を含む上側の部分を手前側下方に谷折りする(矢印DRa参照)。次いで折り曲げ線LN1のすぐ下側を、折り返し部分と平行に縫合し袋先端縫合部715を形成する。
これにより、第1縫合体T1が形成される。
第1延出部11c5を含む、折り曲げLN1で折り返した部分を、折り返し部11dとする。また、折り返しの根元の縁部は、ポケット開口縁部M1となる。
【0024】
次に、図4Bに示されるように、第1縫合体T1の、折り返し部11dに対し、第2表皮部材12を重ね合わせる。この重ね合わせは、弧状接続部11c6と弧状接続部122aとを合致させるようにして行う。
第2表皮部材12は、裏面12bが紙面手前となる向きである。すなわち、第1縫合体T1の第1延出部11c5と第2表皮部材12とは、それぞれ表面11aと表面12aとが向い合せとなる。
そして、第1縫合体T1として折り返された第1延出部11c5に対し、第2表皮部材12を、弧状接続部122aと下縁とに沿って縫合し、袋内縫合部716を形成する。また、折り返し部11dの下方となる第1延出部11c5の先端部分を、先端縁部に沿って第1表皮部材11の折り返していない部分と縫合しポケット底縫合部720を形成する
これにより、第2縫合体T2が形成される。
【0025】
次に、図4Cに示されるように、第2縫合体T2の左右方向の中央位置に、仕切りパッチ15を縫合する。詳しくは、仕切りパッチ15は、上下方向を長手方向として弧状端部15aが上方となる向きとし、他端部15bを第1縫合体T1の第1延出部11c5の縁部と一致させる。仕切りパッチ15の周縁に沿って縫合し、パッチ縫合部717を形成する。これにより、ポケット表皮体1が得られる。
【0026】
ポケット表皮体1は、図1及び図5に示されるように、シートバックST2の表皮基部61,表皮背部62に対し縫合される。
具体的には、ポケット表皮体1は、仕切りパッチ15を縫合した側である図4Cの手前側の面をシートバックST2の内側を向く面とし、第2表皮部材12の上部から左部及び右部にかけての縁部を、表皮基部61に対し、基本縫合部711と左下縫合部712及び右下縫合部714とにおいて縫合する。また、第2表皮部材12を表皮背部62に対し、中央下縫合部713で縫合する。
これにより、ポケット表皮体1を含むポケット構造PKを搭載した乗り物用シートSTが得られる。
【0027】
図1図5図7から明らかなように、ポケット構造PKを備えた乗り物用シートSTは、シートバックST2の背面に、シートバックST2の幅方向に並ぶ二つのポケット部MA1,MA2を有する。ポケット部MA1,MA2それぞれの空間V1,V2は、外側の内面を構成する第1表皮部材11の折り返し部11dと、第2表皮部材12との間に形成される。ポケット部MA1とポケット部MA2とは、仕切りパッチ15を用いて折り返し部11dと第2表皮とが縫合されて形成された部分である仕切部18によって区分される。
【0028】
図5に示されるように、ポケット構造PKは、内側に位置する内側部材K1である第2表皮部材12と、内側部材K1である第2表皮部材12に対し後側に位置する後側部材K2である折り返し部11dと、後側部材K2である折り返し部11dの後方側に位置する外側部材K3である第1表皮部材11とを有する。
第1ポケット部MA1及び第2ポケット部MA2の収容空間である空間V1,V2は、内側部材K1である第2表皮部材12と後側部材K2である折り返し部11dとの間に形成されている。
仕切部18は、内側部材K1である第2表皮部材12と後側部材K2である折り返し部11dとが縫合されて形成されている。
【0029】
仕切りパッチ15の縁部に沿ってパッチ縫合部717がアーチ状に形成されているので、仕切りパッチ15の短手幅が、実質的に仕切部18の幅となっている。そのため、仕切りパッチ15の弧状端部15aに対応した弧状形状が仕切部18の先端形状となっている。すなわち、仕切部18は、所定の幅を有し、上端部の幅方向に中央部が最も上方に位置するように形成されている。
これにより、ポケット部MA1又はポケット部MA2に物を入れようとした際に、仮に仕切部18に引っ掛かってもいずれかのポケット部に滑らかに収めることができる。
ポケット構造PKは、仕切部18の縫合であるパッチ縫合部717がポケット開口縁部M1から上方に形成されてなく、ポケット開口縁部M1よりも下側のポケット内に露出するように形成されて外部から見えない視認不能の態様になっている。
そのため、ポケット構造PK及びポケット構造PKを有する乗り物用シートSTは、背面に複数のポケットを有していても、その背面のデザインの自由度が高く、外観品位も高い。
【0030】
仕切部18は、仕切りパッチ15を用いることなく、折り返し部11dと第2表皮部材12とを縫合して形成してもよい。この場合、パッチ縫合部717を上下方向に延びる直線状として、仕切部18をパッチ縫合部717に対向した上下方向に延びる直線状に形成してもよい。
仕切部18を上下方向に延びる直線状に形成した場合も、パッチ縫合部717は、外部に露出しないので、乗り物用シートSTの背面のデザインの自由度は高く、外観品位も高く維持される。
【0031】
(実施例2)
次に実施例2のポケット構造PKBを搭載した乗り物用シートSTBの概要を図8及び図9を参照して説明する。図8は乗り物用シートSTBを左後斜め上方から見た斜視図である。図9は乗り物用シートSTBのポケット構造PKBを含む部分を示す後面図である。
【0032】
ポケット構造PKBは、上方が開放された袋状であって上方から物を入れることができる二つのポケット部である第1ポケット部MB1及び第2ポケット部MB2を形成する構造である。以下、第1ポケット部MB1及び第2ポケット部MB2は、単にそれぞれポケット部MB1及びポケット部MB2とも称する。
ポケット部MB1及びポケット部MB2は、乗り物用シートSTBの幅方向(左右方向)に並んで形成されている。この例では、ポケット部MB1が左側、ポケット部MB2が右側で左右対称形状とした場合を説明するが、左右対称形状であることに限定されない。すなわち、ポケット部MB1の幅とポケット部MB2の幅とは異なっていてもよい。
【0033】
図8に示されるように、乗り物用シートSTBは、自動車などの乗り物に搭載されるシートであり、シートクッションSTB1,シートバックSTB2,及びヘッドレストSTB3を有する。シートバックST2の後面には、ポケット部MB1,MB2が設けられている。
ポケット部MB1とポケット部MB2とは、この例において左右方向の中央に設けられた仕切部18Bによって左右に区分されている。
【0034】
シートバックSTB2は、柔軟性を有するパッド(不図示)を覆う樹脂製又は皮製の表皮部材としての、表皮基部61,表皮背部62,及びポケット部MB1,MB2が形成されたポケット表皮体1Bを有する。
表皮基部61は、シートバックSTB2における、上部、並びに、左側部及び右側部(左右側部)の上部を覆う一体的な表皮となる部材である。
表皮背部62は、シートバックSTB2の後面(背面)における中央から下部にかけての表皮となる部材である。
ポケット表皮体1Bは、シートバックSTB2の後面の一部を覆う上部の表皮となる部材を含んだ縫合体である。
【0035】
図8及び図9に示されるように、ポケット表皮体1Bは、表皮基部61に対し、上部において第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bが、また左部及び右部において第1表皮部材11Bが、基本縫合部711で縫合されている。
また、表皮背部62に対し、第1表皮部材11Bの左下部は左下縫合部712で縫合され、右下部は右下縫合部714で縫合され、下部は中央下縫合部713で縫合されている。
これにより、表皮基部61,表皮背部62,及びポケット表皮体1Bは、表皮として一体化されている。
【0036】
ポケット表皮体1Bは、シートバックSTB2の外観において、ポケット部MB1,MB2を閉じた状態で、第1表皮部材11Bと、第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bとが視認される。
【0037】
次に、図10A図10Cを参照してポケット表皮体1Bの構成部材を説明する。
図10Aは、ポケット表皮体1Bの第1表皮部材11Bの平面図であり、図10Bは、ポケット表皮体1Bの第1内地部材13B及び第2内地部材14Bの平面図であり、図10Cは、ポケット表皮体1Bの第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bの平面図である。
【0038】
図10Aに示されるように、第1表皮部材11Bは、左右対称形状で下方側が広がる概ね台形形状の基部11B1と、基部11B1の下縁に接続し、下方に向かうに従って幅が小さくなるよう延出した第1延出部11B2とを有する。
基部11B1の上部の左右縁部それぞれに、左右方向の幅が狭くなって括れた括れ部11B3が形成されている。左右の括れ部11B3を繋ぐ仮想線は、山折りの折り曲げ線LN1とされる。
【0039】
第1表皮部材11Bは、革を模した模様を有する薄い表皮部とスポンジ状の発泡部との二層で一体形成されている。第1表皮部材11Bは、表皮部が表面11Ba側、発泡部が裏面11Bb(図16参照)側となっている。図10Aは、表面11Baが紙面手前側となっている。
第1表皮部材11Bは、図8及び図9にも示されるように、ポケット部MB1,MB2の表地となる部材である。
【0040】
図10Bに示されるように、第1内地部材13Bと第2内地部材14Bとは左右対称形状で形成されている。第1内地部材13B及び第2内地部材14Bは、フェルトで形成されている。代表として第1内地部材13Bの形状を説明すると、第1内地部材13Bは、概ね矩形形状の基部13B1と、基部13B1の下部において左方に延出した第2延出部13B2とを有する。
基部13B1の右下部には、わずかに右方に延出した略三角形状の三角突出部13B3が形成されている。
【0041】
第2内地部材14Bは、第1内地部材13Bにおける基部13B1,第2延出部13B2,及び三角突出部13B3に対し、それぞれ左右対称形状で対応した基部14B1,第2延出部14B2,及び三角突出部14B3を有する。
【0042】
第1内地部材13Bの左下の角部13B4及び第2内地部材14Bの右下の角部14B4を、図10Bに示された姿勢から上下反転させてそれぞれ第1表皮部材11Bの左右の括れ部11B3,11B3に位置合わせする。この位置合わせにより、第1内地部材13Bの右側の縁部13B5と第2内地部材14Bの左側の縁部14B5とを、縫い代分が重複した状態で第1表皮部材11Bに重ねることができる。
【0043】
第1内地部材13B及び第2内地部材14Bは、ポケット部MB1,MB2の裏地となる部材である。
【0044】
図10Cに示されるように、第2表皮部材16Bと第3表皮部材17Bとは、左右対称形状に形成されている.
第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bは、第1表皮部材11Bと同じように、革を模した模様を有する薄い表皮部とスポンジ状の発泡部との二層で一体形成されている。
代表として第2表皮部材16Bの形状を説明すると、第2表皮部材16Bは、概ね矩形形状の基部16B1と、基部16B1の上下方向で中央から上部において左方に延出した第4延出部16B2を有する。
第3表皮部材17Bは、第2表皮部材16Bにおける基部16B1及び第4延出部16B2それぞれに左右対称形状で対応した基部17B1及び第5延出部17B2を有する。
【0045】
第2表皮部材16Bを上下反転させた姿勢での基部16B1の左右方向の幅及び左縁部の弧状形状と、第1内地部材13Bの基部13B1の左右方向の幅及び左縁部の弧状形状とは、ほぼ同じとなる。同様に、第3表皮部材17Bを上下反転させた姿勢での基部17B1の左右方向の幅及び右縁部の弧状形状と、第2内地部材14Bの基部14B1の左右方向の幅及び右縁部形状とは、ほぼ同じとなる。
【0046】
第1表皮部材11Bと、第1内地部材13B及び第2内地部材14Bと、第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bとを用い、次の方法でポケット表皮体1Bを形成する。この説明において図11A図16を参照する。
【0047】
図11Aは、ポケット表皮体1Bの形成過程における第1の中間縫合体である第1縫合体TB1の平面図であり、図11Bは、図11AにおけるS11B-S11B位置での断面図である。図12は、ポケット表皮体1Bの形成過程における第2の中間縫合体である第2縫合体TB2を示す平面図である。図13は、ポケット表皮体1Bの形成過程における第3の中間縫合体である第3縫合体TB3を示す平面図である。図14は、ポケット表皮体1Bの形成過程における第4の中間縫合体である第4縫合体TB4を示す部分平面図である。図15は、ポケット表皮体1Bを示す部分平面図であり、図16は、図9におけるS16-S16位置での断面図である。
【0048】
なお、図12図15に示される中間体における左右上下の方向は、ポケット表皮体1Bとして乗り物用シートSTBに取り付けられた状態での乗り物用シートSTBの方向に対応している。また、図13図15には、左右方向の中央位置に、上下方向に延びる中心線CLが記載されている。
【0049】
まず、図11A及び図11Bに示されるように、第1内地部材13Bと第2内地部材14Bとを、それぞれの三角突出部13B3,14B3の傾斜縁部を縫合して縫合部731を形成することで一体化する。これにより第1縫合体TB1を得る。
【0050】
次に、図12に示されるように、第1表皮部材11Bと第1縫合体TB1とを、第1表皮部材11Bの上縁部に第1縫合体TB1の下縁部を縫合して一体化する。また、第1縫合体TB1の縫合部731は、第1縫合体TB1の上下方向の幅全体にわたるように縫合を拡張する。これにより、第2縫合体TB2を得る。
【0051】
次に、第2縫合体TB2の第1表皮部材11Bについて、括れ部11B3,11B3を結ぶ折り曲げ線LN1でそれよりも上方の部位(縫合された第1内地部材13B及び第2内地部材14Bを含む)を、紙面手前側に谷折りする。
この谷折りの後、第2表皮部材16Bと第3表皮部材17Bとを、それぞれ第1内地部材13Bと第2内地部材14Bの上に側縁の弧状形状を合わせて重ね、縫合部731を挟むように第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bの縫い代を合わせて縫合し縫合部732を形成する。これにより、第2縫合体TB2と第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bとが縫合されて一体化した第3縫合体TB3を得る。縫合部732は、ポケット部MB1とポケット部MB2との間の仕切部18Bとなる。
【0052】
次いで、図14に示されるように、第2表皮部材16Bの下縁部及び側縁部を第1内地部材13Bと縫合し、第3表皮部材17Bの下縁部及び側縁部を第2内地部材14Bと縫合してポケット内縫合部719を形成し、第4縫合体TB4を得る。
【0053】
そして、図15に示されるように、自然状態で第1内地部材13B及び第2内地部材14Bよりも下方に延び出ている第1表皮部材11Bの下縁(一点鎖線)をたくし上げて下端を揃え、第1内地部材13B及び第2内地部材14Bと第1表皮部材11Bとを縫合してポケット底縫合部720形成する。
これにより、ポケット表皮体1Bを得る。
【0054】
ポケット表皮体1Bは、図8図9,及び図16に示されるように、シートバックSTB2の表皮基部61,表皮背部62に対し縫合される。
具体的には、ポケット表皮体1Bは、図15の紙面手前側をシートバックSTB2の内側を向く姿勢として、第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bの上部からそれぞれの側部にかけての縁部を、表皮基部61に対し、基本縫合部711と左下縫合部712及び右下縫合部714とにおいて縫合する。また、第1表皮部材11Bを表皮背部62に対し、中央下縫合部713で縫合する。
これにより、ポケット表皮体1Bを含むポケット構造PKBを搭載した乗り物用シートSTBが得られる。
【0055】
図16などに示されるように、ポケット構造PKBは、内側部材K1,後側部材K2.及び外側部材K3を有する。
内側に位置する内側部材K1は、第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bである。後側部材K2は、第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bのそれぞれに対し後側に位置する第1内地部材13B及び第2内地部材14Bである。外側部材K3は、第1内地部材13B及び第2内地部材14Bの後方側に位置する第1表皮部材11Bである。
第1ポケット部MB1の収容空間である空間VB1は、第3表皮部材17Bと第2内地部材14Bとの間に形成され、第2ポケット部MB2の収容空間である空間VB2は、第2表皮部材16Bと第1内地部材13Bとの間に形成されている。
仕切部18Bは、内側部材K1である第2表皮部材16B及び第3表皮部材17Bに後側部材K2である第1内地部材13B及び第2内地部材14Bが縫合されて形成されている。
【0056】
乗り物用シートSTB及びポケット構造PKBは、仕切部18Bで仕切られた二つのポケット部MB1,MB2を有する。ポケット部MB1の袋となる内部空間は、第2表皮部材16Bと第1内地部材13Bとの間に形成される空間VB1であり、ポケット部MB2の袋となる内部空間は、第3表皮部材17Bと第2内地部材14Bとの間に形成される空間VB2である。
ポケット部MB1とポケット部MB2とを仕切る仕切部18Bは、縫合部732として形成されるので、縫合部732で縫合されない第1表皮部材11Bは仕切部18Bに含まれない。すなわち、仕切部18Bは袋が形成されている部分において外部に露出しない視認不能に形成されている。
そのため、ポケット構造PKB及びポケット構造PKBを有する乗り物用シートSTBは、背面に複数のポケットを有していても、その背面のデザインの自由度が高く、外観品位も高い。
【0057】
本発明は、以上説明した実施形態及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0058】
シートバックST2の後面における、ポケット表皮体1の上下方向の取り付け位置は、上述のように上部に限定されるものではなく、中央部或いは中央部よりも下方であってもよい。
【0059】
乗り物用シートST,STBとしてポケット部を二つ有する例を説明したが、三つ以上であってもよい。
すなわち、実施例1のポケット構造PKにおいては、仕切りパッチ15をn(nは1以上の整数)個用いて仕切部18をn箇所形成することで、n+1個のポケット部を形成することができる。
実施例2のポケット構造PKBにおいては、表皮部材及び内地部材をそれぞれm(mは2以上の整数)枚用い、仕切部18Bをm-1箇所形成することで、m個のポケット部を形成することができる。
ポケット構造PK,PKBにおける各縫合部は、縫い合わせではない他の方法で二つの部材を接続する部分であってもよい。例えば、溶着で二つの部材表皮を接続する部分であってもよい。
乗り物は、自動車、鉄道などの車両のみならず、船舶、航空機などの飛行体などを含み、人を乗せて移動する移動体を意味する。
【符号の説明】
【0060】
1,1B ポケット表皮体
11,11B 第1表皮部材
11a,11Ba 表面
11b,11Bb 裏面
11c1 左縁部
11c2 右縁部
11c3 左鍔部
11c4 右鍔部
11c5 第1延出部
11c6,11c7 弧状接続部
11d 折り返し部
11B1 基部
11B2 第1延出部
11B3 括れ部
12 第2表皮部材
12a 表面
12b 裏面
121 基部
122 第2延出部
122a,122b 弧状接続部
13B 第1内地部材
14B 第2内地部材
13B1,14B1 基部
13B2,14B2 第2延出部
13B3,14B3 三角突出部
13B4,14B4 角部
13B5,14B5 縁部
15 仕切りパッチ
15a 弧状端部
15b 他端部
16B 第2表皮部材
16B1 基部
16B2 第4延出部
17B 第3表皮部材
17B1 基部
17B2 第5延出部
18,18B 仕切部
61 表皮基部
62 表皮背部
711 基本縫合部
712 左下縫合部
713 中央下縫合部
714 右下縫合部
715 袋先端縫合部
716 袋内縫合部
717 パッチ縫合部
719 ポケット内縫合部
720 ポケット底縫合部
731,732 縫合部
CL 中心線
K1 内側部材
K2 後側部材
K3 外側部材
LN1 折り曲げ線
MA1,MA2,MB1,MB2 ポケット部
M1 ポケット開口縁部
PK,PKB ポケット構造
ST,STB 乗り物用シート
ST1 シートクッション
ST2,STB2 シートバック
ST3 ヘッドレスト
T1,TB1 第1縫合体
T2,TB2 第2縫合体
TB3 第3縫合体
TB4 第4縫合体
V1,V2,VB1,VB2 空間
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16