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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004063
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】車両のセンタピラー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20240109BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B62D25/04 B
B60J5/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103512
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 政行
(72)【発明者】
【氏名】立神 清浩
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB55
3D203BB62
3D203CA25
3D203CA33
3D203CA53
3D203CB04
3D203CB09
3D203DA33
3D203DA34
(57)【要約】
【課題】車両のセンタピラーの耐衝突性に係る構造を改善する。
【解決手段】ロワピラーリインホースメント18の上端部とアッパピラーリインホースメント20の下端部は重ねられて接合されている。ロワピラーリインホースメント18には、側面衝突時にインパクトビーム12を受けるインパクトビーム受け部34が設けられている。アッパピラーリインホースメント20には、リアドアを支持するロワヒンジ22が固定された位置から下方に延びる舌片部32が設けられている。ロワピラーリインホースメント18には、インパクトビーム受け部34と舌片部32の間に、上下方向に延びる縦凹ビード42が形成されている。側面衝突時、ロワピラーリインホースメント18は、縦凹ビード42を起点に屈曲する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面のフロントドアとリヤドアの間に配置されたセンタピラーであって、
ロワピラーリインホースメントと、
前記ロワピラーリインホースメントの上端部に下端部が重ねられて接合されたアッパピラーリインホースメントと、
前記ロワピラーリインホースメントに設けられ、側面衝突時に前記フロントドア内のドアインパクトビームを受けるインパクトビーム受け部と、
前記アッパピラーリインホースメントに設けられ、前記リヤドアを支持するドアヒンジが固定されるドアヒンジ固定部と、
前記アッパピラーリインホースメントの一部であって、前記ドアヒンジ固定部から下方に延び、前記インパクトビーム受け部の後方に位置する舌片部と、
を備え、
前記ロワピラーリインホースメントの車両の外側を向く面には、前記インパクトビーム受け部と前記舌片部の間に、上下方向に延びる谷線が形成されている、
車両のセンタピラー。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のセンタピラーであって、前記ロワピラーリインホースメントの車両外側を向く面には、前記インパクトビーム受け部近傍の上方と下方をそれぞれ通って前後方向に延びる2つの谷線が形成されている、車両のセンタピラー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両のセンタピラーであって、前記アッパピラーリインホースメントは、前記ロワピラーリインホースメントより高強度の鋼板製である、車両のセンタピラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面のフロントドアとリヤドアの間に配置されたセンタピラーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両側面にフロントドアとリヤドアを備えたいわゆる4ドア車が知られている。4ドア車の多くは、フロントドアとリヤドアの間に、フロア側縁のロッカーとルーフ側縁のルーフサイドレールとをつなぐように配置されたセンタピラーを備える。特許文献1には、側面衝突に対する車両のセンタピラー構造の耐衝撃構造の例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/038505号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センタピラーは、側面衝突に関して重要な強度部材であり、その構造には改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両のセンタピラーは、ロワピラーリインホースメントと、ロワピラーリインホースメントの上端部に下端部が重ねられて接合されたアッパピラーリインホースメントと、ロワピラーリインホースメントに設けられ、側面衝突時にフロントドア内のドアインパクトビームを受けるインパクトビーム受け部と、アッパピラーリインホースメントに設けられ、リヤドアを支持するドアヒンジが固定されるドアヒンジ固定部と、アッパピラーリインホースメントの一部であって、ドアヒンジ固定部から下方に延び、インパクトビーム受け部の後方に位置する舌片部とを備える。さらに、ロワピラーリインホースメントの車両の外側を向く面には、インパクトビーム受け部と舌片部の間に、上下方向に延びる谷線が形成されている。
【0006】
側面衝突時に、インパクトビーム受け部と舌片部の間の上下方向に延びる谷線を起点としてロワピラーリインホースメントが屈曲する。
【0007】
上記の車両のセンタピラーは、ロワピラーリインホースメントの車両外側を向く面に、前記インパクトビーム受け部近傍の上方と下方をそれぞれ通って前後方向に延びる2つの谷線が形成されているものとすることができる。
【0008】
上記の車両のセンタピラーは、アッパピラーリインホースメントが、ロワピラーリインホースメントより高強度の鋼板製であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
側面衝突時に、ロワピラーリインホースメントが、インパクトビーム受け部と舌片部の間の上下方向に延びる谷線を起点としてW字状に屈曲することにより、センタピラーの車両内側への進入量が抑制され、またロワピラーリインホースメントとピラーインナ部材との接合点の破断が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両のセンタピラーおよびフロントドア内に配置されたインパクトビームを示す図である。
図2】センタピラーの下端部を示す拡大図である。
図3図2のIII-III線によるセンタピラーの断面を模式的に示す図である。
図4図2のIV-IV線によるセンタピラーの断面を模式的に示す図である。
図5図2のV-V線によるセンタピラーの断面を模式的に示す図である。
図6】ロワピラーリインホースメントの断面形状の他の例を示す断面図である。
図7】側面衝突によるセンタピラーの変形の様子を示す断面図である。
図8】側面衝突によるセンタピラーの変形の様子を車両前方から見た状態を示す図である。
図9】側面衝突によるロワピラーリインホースメントの変形の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の相対位置および向きを表す語句は、車両に関する相対位置および向きを表す。また、車両の左右方向(幅方向)において車両の前後方向に延びる中心線に近い側を車幅方向内側、遠い側を車幅方向外側と記す。各図において、矢印FRの向きが前方、矢印UPの向きが上方、矢印LHの向きが左方、矢印OUTの向きが車幅方向外側である。
【0012】
図1,2は、車両のセンタピラー10とインパクトビーム12を模式的に示す図である。インパクトビーム12は、フロントドア(不図示)のドアパネル内に配置されている。図1,2は、車両の左側のセンタピラー10を示しており、右側のセンタピラーは、図示するセンタピラー10と左右対称である。図1,2においては、フロントドアのインパクトビーム12のみが示され、フロントドアの他の構成は省略されている。
【0013】
センタピラー10は、フロントドア(不図示)とリヤドア(不図示)の間に配置され、下端において、車両のフロアの側縁を前後方向に延びるロッカー14に結合され、上端において、ルーフ側縁を前後方向に延びるルーフサイドレール(不図示)に結合されている。センタピラー10は、上下2つの部分からなるピラーリインホースメント16を含む。下側の部分をロワピラーリインホースメント18、上側の部分をアッパピラーリインホースメント20と記す。ロワピラーリインホースメント18は、下端部においてロッカーに溶接等の手法により接合されている。ロワピラーリインホースメント18の上端部には、アッパピラーリインホースメント20の下端部が重ねられ、溶接等の手法により接合されている。図1において、ロワピラーリインホースメント18の上縁18aが破線で示され、アッパピラーリインホースメント20の下縁20aが実線で示されている。アッパピラーリインホースメント20は上端部において、ルーフサイドレールに結合されている。
【0014】
センタピラー10には、リヤドアを車体に対して開閉可能に支持する2つのドアヒンジ22,24が結合されている。下側に位置するヒンジをロワヒンジ22、上側に位置するヒンジをアッパヒンジ24と記す。ロワヒンジ22は、アッパピラーリインホースメント20の下端部、特に下縁20aの近傍に固定されている。ロワヒンジ22が固定されている部分をロワヒンジ固定部26(図5参照)と記す。ロワヒンジ固定部26は、アッパピラーリインホースメント20がロワピラーリインホースメント18と重ねられている範囲に位置する。ロワヒンジ22は、ロワおよびアッパピラーリインホースメント18,20を貫通するボルト28とナット30により、2箇所でセンタピラー10に固定されている。アッパヒンジ24は、アッパピラーリインホースメント20に、ボルトとナットにより固定されている。
【0015】
アッパピラーリインホースメント20は、下端部に、ロワヒンジ22が固定されたロワヒンジ固定部26から下方に延びる舌片部32を有している。舌片部32においても、アッパピラーリインホースメント20は、ロワピラーリインホースメント18に接合されている。また、ロワピラーリインホースメント18には、フロントドアを閉じたときのインパクトビーム12の後端部の車幅方向内側にインパクトビーム受け部34が設けられている。インパクトビーム受け部34は、側面衝突時、衝突荷重を受けて車幅方向内側に向けて移動するインパクトビーム12を受け、センタピラー10によってインパクトビーム12を支えてフロントドアの変形および移動を抑制する。
【0016】
図3-5は、センタピラー10の下端部およびインパクトビーム12の図2に示すIII-III線、IV-IV線、およびV-V線による断面を模式的に示す図である。図1-5を参照して、インパクトビーム受け部34および舌片部32の周囲のセンタピラー10の構成を詳述する。
【0017】
図3に示されるように、ロワピラーリインホースメント18は、車幅方向外側に隆起する略ハット形状を有している。図示されていないがアッパピラーリインホースメント20も同様に外側に向けて隆起したハット形状を有する。ロワピラーリインホースメント18の開口を覆うようにピラーインナメンバ36が配置されている。ピラーインナメンバ36も略ハット形状を有し、ロワピラーリインホースメント18とは逆に車幅方向内側に隆起するハット形状である。ロワピラーリインホースメント18とピラーインナメンバ36の、それぞれのハット形状の鍔の部分であるフランジ38とフランジ40がスポット溶接によって接合されている。ピラーインナメンバ36は上方に延び、アッパピラーリインホースメント20とも両者のフランジにてスポット溶接によって接合されている。
【0018】
インパクトビーム受け部34は、ロワピラーリインホースメント18の車幅方向外方に向いた面の他の部分より車幅方向において外側に位置している。これにより、図3に示すように、インパクトビーム受け部34と舌片部32に対向する部分との間に段差が形成されている。
【0019】
ロワピラーリインホースメント18の車幅方向外側を向く面、つまりハット形状の頂面には、インパクトビーム受け部34と舌片部32の間を上下方向に延びる縦凹ビード42、並びにインパクトビーム受け部34の上方および下方をそれぞれ通り前後方向に延びる上側横凹ビード44および下側横凹ビード46が形成されている。上側および下側横凹ビード44,46は、ロワピラーリインホースメント18の頂面の全幅にわたって延び、上側横凹ビード44は舌片部32と交差し、下側横凹ビード46は舌片部32の下方を通っている。縦凹ビード42は、上端において上側横凹ビード44に接続し、下端において下側横凹ビード46に接続している。これにより、縦凹ビード42と上側および下側横凹ビード44,46は、概略的にエの字形に配置される。縦凹ビード42と、上側および下側横凹ビード44,46の底は谷線を形成し、センタピラー10が屈曲するとき、この谷線が屈曲の起点になる。また、谷線は、図6に示すように、段差の隅に形成される谷線48であってもよい。
【0020】
図7-9は、側面衝突時のセンタピラーの変形の様子を示す図である。図7-9において、変形後の構成要素には、変形前の構成要素の符号に「D」を付して示している。側面衝突において、センタピラー10のロワピラーリインホースメント18には、フロントドア内のインパクトビーム12からの荷重F1と、リアドアのロワヒンジ22からの荷重F2が入力する。インパクトビーム12からの荷重F1は、インパクトビーム受け部34に入力し、ロワヒンジ22からの荷重F2は、ロワヒンジ固定部26に入力する。ロワヒンジ固定部26に入力した荷重F2の一部(F2a)は、ロワヒンジ固定部26近傍の舌片部32を介して、舌片部32に対向するロワピラーリインホースメント18の領域に入力される。フロントドアからの荷重F1を前側衝突荷重F1、リアドアからの荷重F2aを後側衝突荷重F2aと記す。前側衝突荷重F1の入力位置と後側衝突荷重F2aの入力位置との間には、縦凹ビード42が設けられている。側面衝突時、前側および後側衝突荷重F1,F2aが入力すると、ロワピラーリインホースメント18は、縦凹ビード42の位置で屈曲し、図7に示すようにW字形に変形する。W字形に変形することによって、車幅方向内側への進入量が、一点鎖線で示すW字形の変形がない場合に比べ、図7においてdで示すように抑制される。また、またフランジ38,40の上下方向の延び(図8において矢印Tで示す方向の延び)も抑制され、フランジ38,40の接合点の破断が抑制される。図9は、ロワピラーリインホースメント18の側面衝突時の変形を示す図2のV-V線による断面図である。上側横凹ビード44と下側横凹ビード46が起点となって、ロワピラーリインホースメント18が屈曲する。
【0021】
側面衝突時、ロワヒンジ22からの入力をインパクトビーム受け部34の隣接領域に確実に伝えるため、ロワヒンジ固定部26およびロワヒンジ固定部26から延びる舌片部32の強度は高いことが望まれる。これは、例えば、ロワヒンジ固定部26および舌片部32が属するアッパピラーリインホースメント20を構成する鋼板を高強度のものとするこで実現される。センタピラー10においては、アッパピラーリインホースメント20を構成する鋼板の降伏応力を、ロワピラーリインホースメント18を構成する鋼板の降伏応力の3倍以上、好ましくは4倍以上として強度を高めている。
【符号の説明】
【0022】
10 センタピラー、12 インパクトビーム、16 ピラーリインホースメント、18 ロワピラーリインホースメント、20 アッパピラーリインホースメント、22 ロワヒンジ(ドアヒンジ)、26 ロワヒンジ固定部(ドアヒンジ固定部)、32 舌片部、34 インパクトビーム受け部、36 ピラーインナメンバ、42 縦凹ビード(谷線)、44 上側横凹ビード(谷線)、46 下側横凹ビード(谷線)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9