(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040652
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ステータコア、回転電機、ステータコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20240318BHJP
H02K 1/02 20060101ALI20240318BHJP
H02K 1/14 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H02K1/18 D
H02K1/02 A
H02K1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145126
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】木下 創
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601CC01
5H601CC02
5H601CC05
5H601CC13
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD23
5H601EE13
5H601GA45
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB20
5H601GB22
5H601GB33
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD13
5H601GD20
5H601HH02
5H601HH05
5H601KK14
5H601KK21
5H601KK30
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、生産性を高めることが可能なステータコアを提供することである。
【解決手段】ある態様のステータコア4は、軟磁性を有する磁性粉体46で構成される第1磁性体部5と、磁性粉体46とは異なる軟磁性材料47で構成される第2磁性体部6と、第1磁性体部5と第2磁性体部6を連結する連結手段7と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性を有する磁性粉体で構成される第1磁性体部と、
前記磁性粉体とは異なる軟磁性材料で構成される第2磁性体部と、
前記第1磁性体部と前記第2磁性体部を連結する連結手段と、
を備える、ステータコア。
【請求項2】
前記連結手段は、前記第1磁性体部と前記第2磁性体部との間に介在する磁性樹脂を含む、請求項1に記載のステータコア。
【請求項3】
前記連結手段は、前記第1磁性体部と前記第2磁性体部とに亘って堆積する前記磁性粉体を含む、請求項1に記載のステータコア。
【請求項4】
前記第1磁性体部を構成する前記磁性粉体の少なくとも一部は、前記第2磁性体部に付着した状態で固化している、請求項1に記載のステータコア。
【請求項5】
前記第1磁性体部を含む突極部と、
前記第2磁性体部を含み、前記突極部を支持するバックヨークと、
を有する、請求項1に記載のステータコア。
【請求項6】
前記第2磁性体部は、複数の軟磁性線材からなる線材集合体を含む、請求項1に記載のステータコア。
【請求項7】
複数の磁極が設けられたマグネットを有するロータと、
前記複数の磁極と対向するステータコアと、
前記ステータコアに装着されるコイルと、
を備え、
前記ステータコアは、
軟磁性を有する磁性粉体で構成される第1磁性体部と、
前記磁性粉体とは異なる軟磁性材料で構成される第2磁性体部と、
前記第1磁性体部と前記第2磁性体部を連結する連結手段と、
を有する、回転電機。
【請求項8】
前記コイルは、前記第1磁性体部を含む突極部に装着され、前記突極部は、前記第2磁性体部を含むバックヨークに連結され、前記第2磁性体部は、複数の軟磁性線材からなる線材集合体を含む、請求項7に記載の回転電機。
【請求項9】
軟磁性を有する磁性粉体で構成される第1磁性体部と、前記磁性粉体とは異なる軟磁性材料で構成される第2磁性体部と、を備えるステータコアの製造方法であって、
前記軟磁性材料で前記第2磁性体部を形成することと、
前記磁性粉体を熱溶射して前記第1磁性体部を形成することと、
熱溶射された前記磁性粉体を前記第2磁性体部に堆積させて前記第1磁性体部の少なくとも一部を覆うことと、
を含む、ステータコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコア、回転電機およびステータコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータとステータとが対向配置された回転電機が知られている。例えば特許文献1には、ロータと、ロータに対して空隙を介して対向配置されたステータとを備える回転電機が記載されている。ステータは、周方向に配置された複数のステータコアと、各ステータコアの周囲に巻回された複数のコイルとを含む。ステータコアは、軟磁性材料からなる複数の線材が軸方向に沿って束ねられた束状コアと、複数の線材のうち少なくとも一部が傾斜した変形コアとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機の性能を向上する観点から、ステータコアの材料として、透磁率が高く、鉄損が少なく、飽和磁束密度が高いなどの優れた磁気特性を備えた軟磁性材料が求められる。また、回転電機では、ステータコアの望ましい形状が複雑化することがあるが、形状が複雑なステータコアは生産性が低い問題がある。しかし、ステータコアの生産性を高めるという観点から、特許文献1は十分な開示がなされていない。
【0005】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、生産性を高めることが可能なステータコアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のステータコアは、軟磁性を有する磁性粉体で構成される第1磁性体部と、磁性粉体とは異なる軟磁性材料で構成される第2磁性体部と、第1磁性体部と第2磁性体部を連結する連結手段と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生産性を高めることが可能なステータコアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るステータコアを備える回転電機を模式的に示す側面図である。
【
図2】
図1の回転電機のステータコアを示す斜視図である。
【
図3】
図2のステータコアの突極部の周辺を示す側面図である。
【
図4】
図2のステータコアの突極部の周辺を示す平面部である。
【
図5】実施形態に係るステータコアの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
図面を参照して実施形態に係るステータコア4を備える回転電機100の構成を説明する。なお、本明細書では、回転部を有する電気機械を「回転電機」といい、回転電機は、電動機、発電機、電動機兼発電機を含む。この例の回転電機100は電動機、発電機または電動機兼発電機として使用できる。
【0013】
図1は、回転電機100の一例を模式的に示す側面図である。回転電機100は、ロータ2と、ステータ3を備える。ロータ2は、回転軸線Laを中心に回転可能に設けられる。以下、回転軸線Laに平行な方向を軸方向(図中で上下方向)といい、回転軸線Laと直交する平面において回転軸線Laに直交する方向を径方向といい、回転軸線Laを中心とする円の周方向を「周方向」という。
図1で上側を「上」といい、その反対側を「下」ということがある。このような方向の表記は回転電機100の姿勢を制限するものではなく、回転電機100は任意の姿勢で使用されうる。
【0014】
図1の例では、回転電機100は、ステータ3の径方向内側にロータ2が配置されるインナーロータ型のラジアルギャップ型構造を有する。ロータ2とステータ3とは、径方向にエアギャップを介して対向する。
【0015】
ロータ2は、ロータヨーク22と、円環状のマグネット24と、シャフト12とを有する。ロータヨーク22は、軟磁性を有するカップ状の部材である。シャフト12は、回転軸線Laに沿った棒状のステンレス部材で、ロータヨーク22の中心を貫通して配置され、ロータヨーク22に固定される。マグネット24は、ロータヨーク22の外周に接着固定される。マグネット24は、ステータコア4と対向する外周面25に、周方向に所定の間隔で配置された複数(例えば10個)の駆動磁極26(以下、単に「磁極26」ということがある)を有する。一例として、実施形態のマグネット24は、ネオジウム磁石である。マグネット24は、磁極26からステータコア4の突極部43に磁束(以下、単に「磁束F」という)を供給する。磁極26は、磁束Fの矢印の出る側がN極であり、入る側がS極である。
【0016】
ステータ3は、ステータ支持部材33と、複数の磁極26と対向するステータコア4と、ステータコア4に装着されるコイル8と、を備える。ステータ支持部材33は、ステータコア4を下方から支持する板状の部材であり、非磁性材料から構成される。この非磁性材料として、樹脂素材、炭素素材、ガラス素材、非磁性金属素材、セラミック素材などを採用できる。ステータ支持部材33の中心には軸受手段28が設けられ、軸受手段28にはシャフト12が上下に挿通される。軸受手段28は転がり軸受である。この構成により、ステータ3は、ロータ2を回転可能に支持できる。
【0017】
図2も参照する。
図2は、ステータコア4を示す斜視図である。ステータコア4は、複数(この例では6つ)の突極部43と、複数の突極部43を支持するバックヨーク44と有する。複数の突極部43は、U相、V相、W相の各相に設けられる。複数の突極部43は、周方向に所定の角度(例えば60°)ごとに配置され、後述する第2磁性体部6を含むバックヨーク44に連結される。
【0018】
この例のコイル8は、樹脂被覆された銅線が突極部43に巻回された巻線であり、第1磁性体部5を含む突極部43に装着される。周方向に互いに180°離れて配置される2つのコイル8が直列に接続されて、U相、V相、W相の電機子巻線を形成する。
【0019】
図3、
図4も参照して、ステータコア4を説明する。
図3は、ステータコア4の突極部43の周辺を示す側面図である。
図4は、ステータコア4の突極部43の周辺を示す平面部である。例えば、電磁鋼板を積層してステータコアを形成する場合、一定の平面形状を有するものは形成できるが、三次元的に複雑な形状を形成することは困難である。また、軟磁性線材の集合体でステータコアを形成することも考えられるが、この場合も形成可能な形状は制限される。これらから、発明者は、部分ごとに異なる軟磁性材料で形成する、いわゆるハイブリッド構造に着目した。ハイブリッド構造は、電磁鋼板または同等の磁気特性を有する軟磁性材料で形成した単純な形状の部分(例えば、バックヨーク)と、軟磁性粉体で形成した三次元的な形状の部分(例えば、突極部)とをそれぞれ形成した後、これらを連結することによって構成できる。
【0020】
本実施形態のステータコア4は、軟磁性を有する磁性粉体46で構成される第1磁性体部5と、磁性粉体46とは異なる軟磁性材料47で構成される第2磁性体部6と、第1磁性体部5と第2磁性体部6を連結する連結手段7とを備える。この場合、複雑な部分と単純な部分とを有するステータコアの生産性を向上できる。
【0021】
図3、
図4において、突極部43は、第1磁性体部5を含み、バックヨーク44は、第2磁性体部6を含む。突極部43は、径方向に延在する略棒状の部分で、ティース先端部431と、ティース基部432と、ティース凹部433とを有する。ティース基部432は、径方向に延在する断面が略矩形の柱状の部分である。ティース基部432は、側面視で先端に向かって徐々に拡形する台形輪郭を有し、平面視で先端に向かって徐々に縮形する台形輪郭を有する。この形状により、巻線時にコイル8のコイルワイヤが径方向で中央に寄って巻かれ、ワイヤの密度を高めることができる。
【0022】
電磁鋼板を積層して形成された突極部では、断面の角部が鋼板のエッジで構成されるため、巻線時にコイルワイヤがエッジで傷つけられることがある。傷付きを防止するために、巻線時のコイルワイヤのテンションを低く設定し、巻き付け回転数を減らすなどの対策が考えられるが、この場合、コイル密度が低下し、生産性は低下する。このため、実施形態のティース基部432は、形状自由度が高いため、コイル8を装着するために適した形状を採用している。ティース基部432の断面は、角部を丸めた四角形状または円を含む楕円形状を採用している。この形状のティース基部432によれば、コイル密度が向上し、コイルワイヤの損傷が減り、生産性は向上する。
【0023】
ティース先端部431は、ティース基部432の径方向内端に設けられる部分である。ティース先端部431は、
図3、
図4に示すように、周方向および上下方向にティース先端部431から張り出す傘形状を有する。傘形状を有することにより、磁極26に面する面積が大きくなり、磁束Fを効率的に受け取れる。ティース凹部433は、ティース基部432の径方向外側端面から内側に向かって凹む凹部である。ティース凹部433の断面は略矩形であってもよい。ティース凹部433には、バックヨーク44の接続用凸部441が嵌め込まれる。
【0024】
第1磁性体部5(突極部43)は、例えば、軟磁性を有する磁性粉体46を熱溶射することによって形成できる。熱溶射は、スプレーフォーミングの一種であり、磁性粉体46を加熱溶融し、窒素ガスなどの不活性ガスで噴霧化し、急冷しながら表面に絶縁層を形成し、所定の基板上に堆積させることによって実現できる。所定の基板は金型であってもよい。
【0025】
バックヨーク44は、突極部43を支持すると共に、突極部43の径方向外側を環囲する略環状の部分で、接続用凸部441と、環状部442とを有する。環状部442は、外周部に上下に突出する環状壁部45を有する。環状部442は、周方向に延びる円環状の部分である。接続用凸部441は、環状部442の内周面から内側に突出する部分である。接続用凸部441の断面は略矩形であってもよい。接続用凸部441は、突極部43のティース凹部433に嵌め込まれる。
【0026】
第2磁性体部6(バックヨーク44)は、電磁鋼板で形成されてもよいし、軟磁性線材で形成されてもよいし、これらを組み合わせて形成されてもよい。実施形態の第2磁性体部6は、複数の軟磁性線材41からなる線材集合体42を含む。バックヨーク44は、一体的に形成されてもよいし、周方向に複数に分割した分割体を形成し、複数の分割体を連結して形成されてもよい。この例のバックヨーク44は、複数の分割体が連結されている。
【0027】
軟磁性線材41は、所望の磁気特性を得る観点から、主成分の鉄(Fe)に所定の添加元素を含有できる。この添加元素としては、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)等が挙げられる。この例の軟磁性線材41は、主成分の鉄(Fe)に0.1質量%~6.0質量%のシリコン(Si)を含有する。添加元素の種類と含有率は、所望の特性に応じて、実験またはシミュレーションにより設定できる。
【0028】
軟磁性線材41は、素材を引き抜き加工などの塑性加工によって、所望の太さの線材に延伸して形成できる。軟磁性線材41の外径(断面の外面に外接する円の直径)は、大きすぎると渦電流損が増え、小さすぎると生産性が低下する。これらから、軟磁性線材41の外径は、所望の特性を得るように実験またはシミュレーションにより設定できる。一例として、軟磁性線材41の延伸方向に垂直な断面は、円形、楕円形、3角形、4角形または6角形であってもよい。軟磁性線材41の外表面は、渦電流損を減らす観点から絶縁されてもよい。軟磁性線材41は、加工歪みを減らすため、延伸加工後に所定の熱処理が施される。
【0029】
一例として、
図3、
図4に示すように、連結手段7は、第1磁性体部5と第2磁性体部6との間に介在する磁性樹脂48を含んでもよい。磁性樹脂48は、磁性粒子を含有する磁性接着剤であってもよい。
【0030】
一例として、連結手段7は、第1磁性体部5と第2磁性体部6とに亘って堆積する磁性粉体46を含んでもよい。これは、熱溶射によって第1磁性体部5を形成するときに、噴霧化された磁性粉体46を第2磁性体部6上に堆積させることによって実現できる。この場合、第1磁性体部5を構成する磁性粉体46の少なくとも一部は、第2磁性体部6に付着した状態で固化している。
【0031】
図5を参照して、ステータコア4の製造工程S110を説明する。
図5は、製造工程S110を示すフローチャートである。
【0032】
まず、軟磁性材料47で第2磁性体部6を形成する(ステップS111)。具体的には、複数の軟磁性線材41からなる線材集合体42を用いてバックヨーク44を形成する。
【0033】
次に、軟磁性を有する磁性粉体46を熱溶射して第1磁性体部5を形成する(ステップS112)。具体的には、熱溶射された磁性粉体46を堆積させて、第1磁性体部5(突極部43)を形成する。
【0034】
次に、熱溶射された磁性粉体46を第2磁性体部6に堆積させて第1磁性体部5の少なくとも一部を覆う(ステップS113)。このステップで、突極部43をバックヨーク44に連結する。この例では、突極部43のティース凹部433に磁性樹脂48(接着剤)を塗布した後、バックヨーク44の接続用凸部441を挿入し、両者を連結する。この状態で、磁性粉体46を熱溶射し、磁性粉体46で両者の連結部を覆う。
【0035】
製造工程S110の各ステップは例示であり、各種の変形が可能である。製造工程S110によれば、単純形状の第2磁性体部6(バックヨーク44)と、三次元的形状を有する突極部43とを連結することによって、三次元的な形状のステータコア4を効率的に製造できる。また、ステータコア4の生産性を向上できる。磁性粉体46で突極部43とバックヨーク44の連結部を覆うことにより、連結部での磁気抵抗の増加を抑制できる。
【0036】
このように構成された回転電機100の動作を説明する。回転電機100が電動機である場合、コイル8には図示しない駆動回路から三相駆動電流が供給される。これにより、突極部43のティース先端部431には回転磁界が発生し、この回転磁界とロータ2の磁極26との相互作用により、ロータ2に回転トルクが出力される。
【0037】
回転電機100が発電機である場合、ロータ2が回転すると、磁極26と突極部43との位置関係が順次変化する。このことにより、磁極26から突極部43に供給される磁束量(コイル8との磁束鎖交数)が正弦波状に変化し、コイル8から三相交流電圧が出力される。
【0038】
以上のように構成されたステータコア4の特徴を説明する。実施形態のステータコア4は、軟磁性を有する磁性粉体46で構成される第1磁性体部5と、磁性粉体46とは異なる軟磁性材料47で構成される第2磁性体部6と、第1磁性体部5と第2磁性体部6を連結する連結手段7と、を備える。
【0039】
この構成によれば、単純形状の第2磁性体部6(バックヨーク44)と、三次元的形状を有する突極部43とを連結することによって、三次元的な形状の第1磁性体部5(ステータコア4)を効率的に製造できる。
【0040】
一例として、連結手段7は、第1磁性体部5と第2磁性体部6との間に介在する磁性樹脂48を含む。この場合、磁性樹脂48が接着剤として機能し、第1磁性体部5と第2磁性体部6の連結強度を向上できる。磁性樹脂48が第1磁性体部5と第2磁性体部6の隙間を埋めて、隙間による磁気抵抗の増加を抑制できる。
【0041】
一例として、連結手段7は、第1磁性体部5と第2磁性体部6とに亘って堆積する磁性粉体46を含む。この場合、磁性粉体46で第1磁性体部5と第2磁性体部6の連結部を覆うことにより、連結部での磁気抵抗の増加を抑制できる。
【0042】
一例として、第1磁性体部5を構成する磁性粉体46の少なくとも一部は、第2磁性体部6に付着した状態で固化している。この場合、固化した磁性粉体46により、第1磁性体部5と第2磁性体部6の連結強度を向上できる。
【0043】
一例として、ステータコア4は、第1磁性体部5を含む突極部43と、第2磁性体部6を含み、突極部43を支持するバックヨーク44と有する。この場合、三次元形状を有する突極部43を、第1磁性体部5を含んで構成でき、単純形状を有するバックヨーク44を、第2磁性体部6を含んで構成できる。
【0044】
一例として、第2磁性体部6は、複数の軟磁性線材41からなる線材集合体42を含む。この場合、軟磁性線材41を用いることにより、第2磁性体部6の磁気特性を改善できる。
【0045】
上記のように構成された回転電機100の特徴を説明する。実施形態の回転電機100は、複数の磁極26が設けられたマグネット24を有するロータ2と、複数の磁極26と対向するステータコア4と、ステータコア4に装着されるコイル8と、を備える。ステータコア4は、軟磁性を有する磁性粉体46で構成される第1磁性体部5と、磁性粉体46とは異なる軟磁性材料47で構成される第2磁性体部6と、第1磁性体部5と第2磁性体部6を連結する連結手段7と、を有する。
【0046】
この構成によれば、単純形状の第2磁性体部6(バックヨーク44)と、三次元的形状を有する第1磁性体部5(突極部43)とを連結することによって、三次元的な形状のステータコア4を効率的に製造できる。この結果、回転電機100の生産性を向上できる。
【0047】
一例として、コイル8は、第1磁性体部5を含む突極部43に装着され、突極部43は、第2磁性体部6を含むバックヨーク44に連結され、第2磁性体部6は、複数の軟磁性線材41からなる線材集合体42を含む。この場合、コイルワイヤを巻くのに適した形状を有する突極部43にコイル8を装着できる。
【0048】
以上が実施形態の説明である。
【0049】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した各実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0050】
(変形例)
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0051】
上記の説明では、バックヨーク44全体が線材集合体42で構成される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、環状壁部45は、電磁鋼板で構成され、他の部分は線材集合体42で構成されてもよい。例えば、環状壁部45は、軟磁性線材41が周方向に巻かれた巻コアとして形成されてもよい。
【0052】
上記の説明では、回転電機100がインナーロータ型である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、回転電機はアウターロータ型であってもよい。
【0053】
上記の説明では、回転電機100がラジアルギャップ型である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、回転電機はアキシャルギャップ型であってもよい。
【0054】
上記の説明では、マグネット24が回転軸線Laを囲む円環部材である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、マグネットは、駆動磁極ごとに分割されたセグメント磁石であってもよい。
【0055】
上記の説明では、マグネット24がネオジウム磁石である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、マグネットは、ネオジウムとは別の希土類元素を主要な成分とする希土類磁石やフェライト磁石であってもよいし、プラスチック磁石であってもよい。
【0056】
上記の説明では、ステータ支持部材33は、非磁性材料からなる例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステータ支持部材は、電磁鋼板など軟磁性体を含んでもよい。
【0057】
上記の説明では、軸受手段28が転がり軸受である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸受手段は、含油メタル軸受等の滑り軸受であってもよい。
【0058】
これらの各変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0059】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0060】
2 ロータ、 3 ステータ、 4 ステータコア、 5 第1磁性体部、 6 第2磁性体部、 7 連結手段、 8 コイル、 24 マグネット、 26 駆動磁極、 41 軟磁性線材、 42 線材集合体、 43 突極部、 44 バックヨーク、 46 磁性粉体、 47 軟磁性材料、 100 回転電機。