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特開2024-40653アキシャルギャップ型回転電機、ステータコア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040653
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ型回転電機、ステータコア
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20240318BHJP
   H02K 1/02 20060101ALI20240318BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
H02K1/02 Z
H02K21/24 G
H02K21/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145127
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】木下 創
【テーマコード(参考)】
5H601
5H621
【Fターム(参考)】
5H601AA25
5H601CC01
5H601CC05
5H601CC15
5H601DD09
5H601DD12
5H601EE19
5H601GA02
5H601GA50
5H601GB05
5H601GB13
5H601HH02
5H621BB01
5H621BB07
5H621GA04
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ステータコアでの各相の磁束の混在を低減することが可能なアキシャルギャップ型回転電機を提供することである。
【解決手段】アキシャルギャップ型回転電機100は、複数の駆動磁極26が設けられたマグネット24を有し、回転軸線Laを中心に回転可能なロータ2と、複数の駆動磁極26と回転軸線Laに平行な軸方向に対向するステータコア4と、ステータコア4に装着されるコイル8と、を備える。ステータコア4は、複数の駆動磁極26から供給される磁束Fを通過させるための磁路部43を複数有し、複数の磁路部43は、磁気的に互いに独立している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁極が設けられたマグネットを有し、回転軸線を中心に回転可能なロータと、前記複数の磁極と前記回転軸線に平行な軸方向に対向するステータコアと、前記ステータコアに装着されるコイルと、を備え、
前記ステータコアは、前記複数の磁極から供給される磁束を通過させるための磁路部を複数有し、
前記複数の磁路部は、磁気的に互いに独立している、アキシャルギャップ型回転電機。
【請求項2】
前記磁路部は、前記複数の磁極のうち、それぞれ異なる極性の磁極と対向する第1磁極対向部および第2磁極対向部と、前記第1磁極対向部および前記第2磁極対向部に接続される中間部と、を有する、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項3】
前記第1磁極対向部、前記第2磁極対向部および前記中間部は、軟磁性線材により構成される、請求項2に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項4】
前記第1磁極対向部、前記第2磁極対向部および前記中間部は、複数の軟磁性線材が束ねられた線材集合体で構成される、請求項2に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項5】
前記軟磁性線材は前記第1磁極対向部から前記第2磁極対向部まで連続している、請求項3に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項6】
前記第1磁極対向部および前記第2磁極対向部は、軸方向に延伸する軟磁性線材を含み、前記中間部は、軸方向に交差する方向に延伸する軟磁性線材を含む、請求項2に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項7】
前記軟磁性線材は、延伸方向に垂直な断面が円形または楕円形である、請求項3に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項8】
前記軟磁性線材は、延伸方向に垂直な断面が3角形、4角形または6角形である、請求項3に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項9】
ロータマグネットの複数の磁極と対向するステータコアであって、
前記複数の磁極から供給される磁束を通過させるための磁路部を複数有し、
前記複数の磁路部は、磁気的に互いに独立している、ステータコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップ型回転電機およびステータコアに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータとステータとが軸方向に対向配置されたアキシャルギャップ型回転電機が知られている。例えば特許文献1には、ロータと、ロータに対して空隙を介して軸方向に対向配置されたステータとを備えるアキシャルギャップ型回転電機が記載されている。ステータは、周方向に配置された複数のステータコアと、各ステータコアの周囲に巻回された複数のコイルとを含む。ステータコアは、軟磁性材料からなる複数の線材が軸方向に沿って束ねられた束状コアと、複数の線材のうち少なくとも一部が傾斜した変形コアとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-69268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機の性能を向上する観点から、回転電機の鉄心材料として、透磁率が高く、鉄損が少なく、飽和磁束密度が高いなどの優れた磁気特性を備えた軟磁性材料が求められる。また、回転電機では、例えば3相電流を使用する場合、各相で生じた磁束がステータコア内で混在して磁束密度の粗密が容易に生じる。各相の磁束が混在すると効率の向上が難しい場合がある。しかし、ステータコアでの各相の磁束の混在を低減するという観点から、特許文献1は十分な開示がなされていない。
【0005】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、ステータコアでの各相の磁束の混在を低減することが可能なアキシャルギャップ型回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアキシャルギャップ型回転電機は、複数の磁極が設けられたマグネットを有し、回転軸線を中心に回転可能なロータと、複数の磁極と回転軸線に平行な軸方向に対向するステータコアと、ステータコアに装着されるコイルと、を備える。ステータコアは、複数の磁極から供給される磁束を通過させるための磁路部を複数有する。複数の磁路部は、磁気的に互いに独立している。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ステータコアでの各相の磁束の混在を低減することが可能なアキシャルギャップ型回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機を模式的に示す側面図である。
図2図1のアキシャルギャップ型回転電機のステータを示す平面図である。
図3図2のステータのステータコアを拡大して示す拡大図である。
図4図1のステータを展開して示す展開図である。
図5】第2実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータを示す平面図である。
図6図5のステータを展開して示す展開図である。
図7】第1変形例に係るアキシャルギャップ型回転電機を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[第1実施形態]
図面を参照して第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機100(以下、「回転電機100」ということがある)の構成を説明する。なお、本明細書では、回転部を有する電気機械を「回転電機」といい、回転電機は、電動機、発電機、電動機兼発電機を含む。この例の回転電機100は電動機、発電機または電動機兼発電機として使用できる。
【0013】
図1は、回転電機100の一例を模式的に示す側面図である。回転電機100は、ロータ2と、ステータ3を備える。ロータ2は、回転軸線Laを中心に回転可能に設けられる。以下、回転軸線Laに平行な方向を軸方向(図中で上下方向)といい、回転軸線Laと直交する平面において回転軸線Laに直交する方向を径方向といい、回転軸線Laを中心とする円の周方向を「周方向」という。図1で上側を「上」といい、その反対側を「下」ということがある。このような方向の表記は回転電機100の姿勢を制限するものではなく、回転電機100は任意の姿勢で使用されうる。
【0014】
図1の例では、回転電機100は、1つのロータ2と2つのステータ3を備えるいわゆるダブルステータ構造である。回転電機100では、2つのステータ3が1つのロータ2の上下両側に配置される。ロータ2は、軸受手段28によって、回転軸線Laを中心にして回転可能に支持されている。ロータ2とステータ3とは、軸方向にエアギャップを介して対向する。
【0015】
ロータ2は、ロータヨーク22と、円環状のマグネット24と、シャフト12とを有する。ロータヨーク22は、軟磁性を有する円板である。シャフト12は、回転軸線Laに沿った棒状のステンレス部材で、ロータヨーク22の中心を貫通して配置され、ロータヨーク22に固定される。
【0016】
マグネット24は、ロータヨーク22の上下両面に2つ設けられる。マグネット24は、ロータヨーク22に接着固定される。マグネット24は、ステータコア4と対向する対向面25に、周方向に所定の間隔で配置された複数(例えば10個)の駆動磁極26を有する。一例として、実施形態のマグネット24は、ネオジウム磁石である。マグネット24は、駆動磁極26からステータコア4の磁路に磁束(以下、単に「磁束F」という)を供給する。駆動磁極26は、磁束Fの矢印の出る側がN極であり、入る側がS極である。
【0017】
上下2つのマグネット24の磁極は反対極性を有する。図1に示すように、上側のマグネット24の上面の磁極がS極である位置で、下側のマグネット24の下面の磁極はN極である。マグネット24の内部の磁束Fは、上側のマグネット24の内部と、ロータヨーク22と、下側のマグネット24の内部とを軸方向に連続して通過する。例えば、下側のマグネット24の外部の磁束Fは、マグネット24の下面のN極から出て、下側のステータコア4の磁路部43の一方端から他方端に通過し、マグネット24の下面のS極に入る。上側のマグネット24の外部の磁束Fは、マグネット24の上面のN極から出て、上側の磁路部43の一方端から他方端に通過し、マグネット24の上面のS極に入る。
【0018】
図2も参照してステータ3を説明する。図2は、回転電機100のステータ3を示す平面図である。この図は、下側のステータ3を上から見た図を示している。なお、上側のステータ3は、下側のステータ3と面対象であり、以下の説明は、上側のステータ3にも適用できる。ステータ3は、ステータ支持部材33と、複数のステータコア4と、複数のコイル8とを有する。ステータ支持部材33は、マグネット24と対向する対向側と反対向側とを有する円板状の部材であり、非磁性材料から構成される。この非磁性材料として、樹脂素材、炭素素材、ガラス素材、非磁性金属素材、セラミック素材などを採用できる。ステータ支持部材33の中心には軸受手段28が設けられ、軸受手段28にはシャフト12が上下に挿通される。軸受手段28は転がり軸受である。この構成により、ステータ3は、ロータ2を回転可能に支持できる。
【0019】
ステータコア4は、駆動磁極26から供給される磁束Fを通過させるための磁路部43を複数有する。複数の磁路部43は、U相、V相、W相の各相に設けられる。磁路部43の数は、相数3の整数倍である。一例として、実施形態の磁路部43の数は3であり、後述する第2実施形態の磁路部43の数は6である。複数の磁路部43は、周方向に所定の角度(例えば60°)ごとにステータ支持部材33に接着固定される。
【0020】
複数の磁路部43(各相の磁路部43)は、磁気的に互いに独立している。「磁気的に独立している」とは、それぞれに流れる磁束同士が概ね混ざり合わない程度に磁気的に絶縁されていることを意味する。磁気的に独立していることは、一の磁路部43から漏れた磁束が他の磁路部43に流れる程度の場合を含む。
【0021】
磁路部43は、それぞれ異なる極性の駆動磁極26と対向する第1磁極対向部431および第2磁極対向部432と、第1磁極対向部431および第2磁極対向部432に接続される中間部433と、を有する。この例では、第1磁極対向部431および第2磁極対向部432は、突出側Pから反突出側Qに向かって軸方向に伸びる棒状の部分である。第1磁極対向部431および第2磁極対向部432の突出側Pは、ステータ支持部材33に設けられた孔34に挿通され、ステータ支持部材33の対向側に突出する。第1磁極対向部431および第2磁極対向部432の各突出側Pは、一方がN極と対向するとき、他方はS極に対向するように配置される。
【0022】
中間部433は、第1磁極対向部431の反突出側Qと第2磁極対向部432の反突出側Qとに接続される棒状の部分である。この例の中間部433は、ステータ支持部材33と略平行に伸びる。磁路部43は、側面視で角張った横向きのC字形状を呈する。
【0023】
ステータコアを板材や箔材から製造する場合、加工困難性や鉄損増加等の問題を生じることがある。そこで、実施形態の第1磁極対向部431、第2磁極対向部432および中間部433は、軟磁性線材41を含んで構成される。
【0024】
軟磁性線材41は、所望の磁気特性を得る観点から、主成分の鉄(Fe)に所定の添加元素を含有できる。この添加元素としては、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)等が挙げられる。この例の軟磁性線材41は、主成分の鉄(Fe)に0.1質量%~6.0質量%のシリコン(Si)を含有する。添加元素の種類と含有率は、所望の特性に応じて、実験またはシミュレーションにより設定できる。
【0025】
軟磁性線材41は、素材を引き抜き加工などの塑性加工によって、所望の太さの線材に延伸して形成できる。軟磁性線材41の外径(断面の外面に外接する円の直径)は、大きすぎると渦電流損が増え、小さすぎると生産性が低下する。これらから、軟磁性線材41の外径は、所望の特性を得るように実験またはシミュレーションにより設定できる。軟磁性線材41の断面形状は、円形、楕円形、多角形等であってもよい。軟磁性線材41の外表面は、渦電流損を減らす観点から絶縁されてもよい。軟磁性線材41は、加工歪みを減らすため、延伸加工後に所定の熱処理が施される。
【0026】
図3は、ステータコア4を拡大して示す拡大図である。この例のステータコア4は、巻コア42を有する。巻コア42は、第1磁極対向部431および第2磁極対向部432の各突出側Pに巻回される軟磁性線材41で構成される。巻コア42を有することにより、マグネット24との対向面積を増やし、より多くの磁束Fをステータコア4に取り込むことができる。巻コア42を構成する軟磁性線材41は、線材の延伸方向に交差する方向(例えば直交する方向)磁化容易方向が存在してもよい。この磁化容易方向は、軟磁性線材を変態点を超える温度で熱処理することで実現できる。
【0027】
渦電流損は小さい方が望ましい。そこで、実施形態では、第1磁極対向部431、第2磁極対向部432および中間部433は、複数の軟磁性線材41が束ねられた線材集合体で構成される。この場合、大径の単一の線材で構成する場合に比べて渦電流損を低減可能であり、加工も容易である。
【0028】
第1磁極対向部431、第2磁極対向部432および中間部433を別々に形成すると、これらの接続ための製造工数が余計にかかり、製造コストの点で不利である。そこで、実施形態では、軟磁性線材41は第1磁極対向部431から第2磁極対向部432まで連続している。この場合、これらを別々に形成する場合よりも、製造工数が減り、各接続部の磁気抵抗も小さい。
【0029】
軟磁性線材41の磁化容易方向が線材の延伸方向に存在する場合、磁路部43の各部の延伸方向は、磁束Fの通る方向に沿っていることが望ましい。そこで、実施形態では、第1磁極対向部431および第2磁極対向部432は、軸方向に延伸する軟磁性線材41を含み、中間部433は、軸方向に交差する方向に延伸する軟磁性線材41を含む。この場合、これらの各部の延伸方向が磁束Fの通る方向に一致するため、磁路部43の磁気抵抗を低減できる。各中間部433は、軸方向に直交する平面上に延伸してもよい。
【0030】
軟磁性線材41の延伸方向に垂直な断面(以下、単に「断面」という)が複雑な輪郭を有する場合、加工が難しい。そこで、実施形態では、軟磁性線材41は、延伸方向に垂直な断面が円形または楕円形である。この場合、断面輪郭が単純であるため、容易に加工できる。
【0031】
複数の軟磁性線材41の間の隙間は小さいことが望ましい。このため、軟磁性線材41は、延伸方向に垂直な断面が3角形、4角形または6角形に形成されてもよい。この場合、断面が円形の場合と比較して、複数の軟磁性線材41の間の隙間を容易に小さくできる。
【0032】
図4は、ステータ3を展開して示す展開図である。この図では、巻コア42の記載を省略している。コイル8は、第1磁極対向部431および第2磁極対向部432の各突出側Pに設けられる三相電機子巻線である。この例のコイル8は、樹脂被覆された銅線が巻コア42の外周に巻回された巻線ある。コイル8は、複数(この例は3つ)のペアコイルU1、U2、V1、V2、W1、W2を含む。ペアコイルU1、U2は直列に接続されてU相の電機子巻線を形成する。コイルU1は第1磁極対向部431に設けられ、コイルU2は第2磁極対向部432に設けられる。ペアコイルV1、V2は直列に接続されてV相の電機子巻線を形成する。コイルV1は第1磁極対向部431に設けられ、コイルV2は第2磁極対向部432に設けられる。ペアコイルW1、W2は直列に接続されてW相の電機子巻線を形成する。コイルW1は第1磁極対向部431に設けられ、コイルW2は第2磁極対向部432に設けられる。
【0033】
第1磁極対向部431および第2磁極対向部432の突出側Pは、エアギャップを挟んで複数の駆動磁極26と対向する。磁路部43は、駆動磁極26からの磁束Fの磁路(磁束Fの通り路)を構成する。複数のコイル8は、磁路部43を通る磁束Fと鎖交する。磁路部43とコイル8は電磁石として機能する。
【0034】
このように構成された回転電機100の動作を説明する。回転電機100が電動機である場合、コイル8には図示しない駆動回路から三相駆動電流が供給される。これにより、第1磁極対向部431および第2磁極対向部432の突出側Pには回転磁界が発生し、この回転磁界とロータ2の駆動磁極26との相互作用により、ロータ2に回転トルクが出力される。
【0035】
回転電機100が発電機である場合、ロータ2が回転すると、駆動磁極26と磁路部43との位置関係が順次変化する。このことにより、駆動磁極26から磁路部43に供給される磁束量(コイル8との磁束鎖交数)が正弦波状に変化し、コイル8から三相交流電圧が出力される。
【0036】
以上のように構成された回転電機100の特徴を説明する。回転電機において、各相の磁路部43が独立していないステータコアでは、コイル8に3相駆動電流が流れるとき、各相で生成された磁束がステータコア内で混在する。各相の磁束が混在すると、互いに干渉して磁束密度の粗密が容易に生じ、回転電機の効率の向上を阻害することがある。このため、各相の磁束の混在は低減されることが望ましい。
【0037】
そこで、実施形態の回転電機100は、複数の駆動磁極26が設けられたマグネット24を有し、回転軸線Laを中心に回転可能なロータ2と、複数の駆動磁極26と回転軸線Laに平行な軸方向に対向するステータコア4と、ステータコア4に装着されるコイル8と、を備える。ステータコア4は、複数の駆動磁極26から供給される磁束Fを通過させるための磁路部43を複数有し、複数の磁路部43は、磁気的に互いに独立している。
【0038】
この構成によれば、各相の磁路部43が独立していない場合に比べて、各相の磁束の混在を低減できる。この結果、回転電機100の効率向上が期待できる。
【0039】
以上が第1実施形態の説明である。
【0040】
[第2実施形態]
図5図6を参照して第2実施形態に係る回転電機100の構成を説明する。図5は、第2実施形態の回転電機100のステータ3を示す平面図であり、図2に対応する。図6は、第2実施形態のステータ3を展開して示す展開図であり、図4に対応する。第2実施形態では、磁路部43の数が6個で、コイル8の数が12個で、駆動磁極26の数が2倍(例えば20極)で、巻コアを備えない点で、第1実施形態と相違し、他の構成は同様である。したがって重複する説明を省き、相違点を重点的に説明する。
【0041】
第2実施形態では、12個のコイル8と、6個の磁路部43は、2つのグループに区分される。第1グループ35は、ペアコイルU1、U2と、ペアコイルV1、V2と、ペアコイルW1、W2と、これらが装着される3個の磁路部43を含む。第2グループ36は、ペアコイルU3、U4と、ペアコイルV3、V4と、ペアコイルW3、W4と、これらが装着される3個の磁路部43を含む。第1グループ35の各コイル8は、一方のグループの3個の磁路部43に装着され、第2グループ36の各コイル8は、他方のグループの3個の磁路部43に装着される。第1グループ35の磁路部43と、第2グループ36の磁路部43とは、互いに平面方向に離れている。このように、回転電機100は、3の整数倍の数の磁路部43を備えることができる。
【0042】
このように構成された第2実施形態の回転電機100は、第1実施形態の回転電機100と同様に動作し、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0043】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した各実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0044】
(変形例)
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0045】
[第1変形例]
上記の説明では、回転電機100がダブルステータ構造である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、回転電機は、1つのロータと1つのステータを備える構造であってもよい。図7は、1つのロータと1つのステータを備える第1変形例に係る回転電機100を模式的に示す側面図であり、図1に対応する。第1変形例の回転電機100は、上側のマグネット24と上側のステータ3を備えない点で第1実施形態の回転電機100と異なる。ロータヨーク22は、マグネット24のバックヨークとして機能し、駆動磁極26の磁束は、図7の矢印で示すように、ロータヨーク22を通過する。
【0046】
第1変形例の回転電機100では、ロータヨーク22内で各相の磁束の混在を生じるが、第1実施形態よりも構造が簡単であるため、製造コストの点で有利である。
【0047】
[その他の変形例]
上記の説明では、マグネット24が回転軸線Laを囲む円環部材である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、マグネットは、駆動磁極ごとに分割されたセグメント磁石であってもよい。セグメント磁石の形状としては、円形、楕円形、台形、扇形等を採用できる。
【0048】
上記の説明では、マグネット24がネオジウム磁石である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、マグネットは、ネオジウムとは別の希土類元素を主要な成分とする希土類磁石やフェライト磁石であってもよいし、プラスチック磁石であってもよい。
【0049】
上記の説明では、ステータ支持部材33は、非磁性材料からなる例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステータ支持部材は、電磁鋼板など軟磁性体を含んでもよい。
【0050】
上記の説明では、軸受手段28が転がり軸受である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸受手段は、含油メタル軸受等の滑り軸受であってもよい。
【0051】
これらの各変形例は、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0052】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0053】
2 ロータ、 3 ステータ、 8 コイル、 24 マグネット、 26 駆動磁極、 41 軟磁性線材、 42 巻コア、 43 磁路部、 431 第1磁極対向部、 432 第2磁極対向部、 433 中間部、 100 アキシャルギャップ型回転電機。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7